トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業

【発明の名称】 熱帯低気圧の制御システム
【発明者】 【氏名】新野 正之

【氏名】木皿 且人

【氏名】森 雅裕

【氏名】初田 洋司雄

【要約】 【課題】発達の初期段階における熱帯低気圧を好適に消滅させるか、またはその進路を変更させることにより、気象災害を大幅に低減させることが出来る熱帯低気圧の制御システムを提供する。

【解決手段】熱帯低気圧1の発達の初期段階において、気象観測航空機2等の観測手段から送信される観測データを基に地上局3の計算機によってその将来の規模を予測し、超巨大な規模に発達する可能性があると予想される発達の初期段階の熱帯低気圧に対しては、レーザー照射衛星4等のエネルギー注入手段によるレーザー光や電波ビームによって、その適当な箇所にエネルギー注入を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱帯低気圧を詳細に観測する観測手段と、該観測結果に基づいて前記熱帯低気圧の時系列変化を予測すると共に該予測結果に基づき該熱帯低気圧に最良の変化を引き起こす方法を決定する予測手段と、該予測手段からの指令に基づき上空から該熱帯低気圧の最適な部位にエネルギーを注入するエネルギー注入手段とから成ることを特徴とする熱帯低気圧の制御システム。
【請求項2】
前記予測手段は、前記熱帯低気圧が巨大化して甚大な気象災害をもたらすと予測した場合には、該熱帯低気圧の発達の初期段階において、該熱帯低気圧に対し局所的なエネルギー注入を行った際の該熱帯低気圧の変化を計算し、該計算結果に基づいて該熱帯低気圧の構造を変えて消滅させるか或いは進路を変更させるエネルギー注入量を決定するように構成されている請求項1に記載の熱帯低気圧の制御システム。
【請求項3】
前記予測手段は、前記エネルギー注入手段による前記熱帯低気圧に対するエネルギー注入の後に、前記観測手段から出力される観測データと該熱帯低気圧の時間的変化の予想値との差異を算出し、該差違が最小となる新たなエネルギー注入量を決定するように構成されている請求項1又は2に記載の熱帯低気圧の制御システム。
【請求項4】
前記予測手段は、超高速・高解像度のシミュレータから構成されている請求項1から3の何れかに記載の熱帯低気圧の制御システム。
【請求項5】
前記観測手段は、人工衛星に搭載された観測機器、航空機の搭載された観測機器、船舶に搭載された観測機器、陸上に設置された複数の観測機器、又はこれらの組み合わせから構成されている請求項1から4の何れかに記載の熱帯低気圧の制御システム。
【請求項6】
前記エネルギー注入手段は、エネルギー注入に関しレーザー光を用いるように構成されている請求項1から5の何れかに記載の熱帯低気圧の制御システム。
【請求項7】
前記エネルギー注入手段は、航空機または人工衛星に搭載されたレーザー装置から構成されている請求項6に記載の熱帯低気圧の制御システム。
【請求項8】
前記エネルギー注入手段は、電波ビーム発射装置を搭載した航空機から構成されている請求項1から3の何れかに記載の熱帯低気圧の制御システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱帯低気圧の制御システム、特に、熱帯低気圧の発達の初期段階において詳細に観測を行い、その観測データから対象となる熱帯低気圧の発達の将来予測を行い、時間とともに巨大化して、甚大な気象災害を起こすおそれの有るものに対しては、航空機または人工衛星からエネルギー注入を行って、その規模や進路を変更することにより、気象災害を大幅に低減することを目的とする熱帯低気圧の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱帯低気圧は、低緯度の海域上で発生した積乱雲の塊から発生する。低緯度海域では、海から空中へ熱と水分とが絶え間なく供給されていて、この空気が上昇すると、その中に含まれていた水蒸気が凝結して雨や雲となる。この際に空気に対して凝結潜熱が放出され、温度があがった空気は浮力を増し、さらに上昇してゆく。
このような低気圧の自己増幅型フィードバックにより、単なる積乱雲の塊は熱帯低気圧へと組織化して勢力を増してゆき、やがて、中心部に「眼」が形成される。1960年代には、この凝結過程を変化させて、熱帯低気圧を弱める事が試みられた。
当時の現実的な天侯改変の手段である、沃化銀等の微粒子の散布による過冷却状態の水蒸気の人工降雨を、発達の初期段階の熱帯低気圧の「眼」の周辺で起こして、「眼」の付近の水蒸気を使い切らせることにより、勢力を弱めようとした。しかし、発達の初期段階の熱帯低気圧においては、予想とは異なって「眼」付近の空気が過冷却の水蒸気をあまり含んでいないため、これらの実験は効果をあげなかった。
また、その他の対処方法としては、日経サイエンス誌2004年11月号の記事「台風をあやつる:夢でない天気の制御」にあるが如く、熱帯低気圧を制御する最善の策は、その発達の初期段階において、「眼」の近くの温度を出来るだけ大きく変化させることにあり、具体的方法として、熱帯低気圧の進路の海面に油を流して、海面からの水蒸気の蒸発を抑制する方法や、太陽光発電衛星からマイクロ波ビームを発射して熱帯低気圧の一部を加熱する方法が提案されている。
【0003】
【非特許文献1】R.N.ホフマン(大気環境研究所)著、「台風をあやつる:夢ではない天気の制御」、日経サイエンス2004年11月号、p.37−44
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、熱帯低気圧の進路の海面に油を流して、海面からの水蒸気の蒸発を抑制する方法は、大量の油を均一な厚さで数千平方kmの広さにわたり迅速に散布する必要があり、コストも掛かる上に、環境問題上も適切な方法とは言えない。また、太陽光発電衛星からマイクロ波ビームを発射して熱帯低気圧の一部を加熱する方法が提案されているが、静止軌道上の太陽光発電衛星から直径100mの巨大なアンテナで地上を照射したとしても、10GHzという短波長マイクロ波を使用して、低緯度域での地上付近の照射領域の大きさは約26kmとなり、たとえマイクロ波ビームのパワーが1GW(100万kW)と強力であっても、照射領域での平均パワー密度は6W/mと微弱なものとなって、赤道付近の太陽光照射強度である約1kW/mに比べて非常に小さく、とても対象となっている熱帯低気圧に影響を及ぼすことは出来ないと考えられる。
そこで、本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、熱帯低気圧の発達の初期段階において詳細に観測を行い、その観測データから対象となる熱帯低気圧の発達の将来予測を行い、時間とともに巨大化して、甚大な気象災害を起こすおそれの有るものに対しては、航空機または人工衛星からエネルギー注入を行って、その規模や進路を変更することにより、気象災害を大幅に低減することを目的とする熱帯低気圧の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために請求項1に記載の熱帯低気圧の制御システムでは、熱帯低気圧を詳細に観測する観測手段と、該観測結果に基づいて前記熱帯低気圧の時系列変化を予測すると共に該予測結果に基づき該熱帯低気圧に最良の変化を引き起こす方法を決定する予測手段と、該予測手段からの指令に基づき上空から該熱帯低気圧の最適な部位にエネルギーを注入するエネルギー注入手段とから成ることを特徴とする。
上記熱帯低気圧の制御システムでは、観測手段によって熱帯低気圧を発達の初期段階から詳細に観測し、そして予測手段によってその観測データに基づいて熱帯低気圧の発達の将来予測を実施し、予測した結果、時間と共に巨大化して甚大な気象災害を起こすおそれの有るものに対しては、上空からエネルギー注入を行って、その規模や進路を変更することにより、熱帯低気圧に係る気象災害を大幅に低減することが出来るようになる。
【0006】
請求項2に記載の熱帯低気圧の制御システムでは、前記予測手段は、前記熱帯低気圧が巨大化して甚大な気象災害をもたらすと予測した場合には、該熱帯低気圧の発達の初期段階において、該熱帯低気圧に対し局所的なエネルギー注入を行った際の該熱帯低気圧の変化を計算し、該計算結果に基づいて該熱帯低気圧の構造を変えて消滅させるか或いは進路を変更させるエネルギー注入量を決定するように構成されていることとした。
上記熱帯低気圧の制御システムでは、上記構成とすることにより、熱帯低気圧が発達し制御不能な台風級に成長する前に、熱帯低気圧を消滅させ或いは進路を変更させることが可能となり、その結果、甚大な気象災害を好適に防止することが出来るようになる。
【0007】
請求項3に記載の熱帯低気圧の制御システムでは、前記予測手段は、前記エネルギー注入手段による前記熱帯低気圧に対するエネルギー注入の後に、前記観測手段から出力される観測データと該熱帯低気圧の時間的変化の予想値との差異を算出し、該差違が最小となる新たなエネルギー注入量を決定するように構成されていることとした。
上記熱帯低気圧の制御システムでは、上記構成とすることにより、効率よく熱帯低気圧を好適に消滅させ、或いは進路を変更させることが出来るようになる。
【0008】
請求項4に記載の熱帯低気圧の制御システムでは、前記予測手段は、超高速・高解像度のシミュレータから構成されていることとした。
上記熱帯低気圧の制御システムでは、上記構成とすることにより、熱帯低気圧に対する高精度な成長または進路予測が可能となる。
【0009】
請求項5に記載の熱帯低気圧の制御システムでは、前記観測手段は、人工衛星に搭載された観測機器、航空機の搭載された観測機器、船舶に搭載された観測機器、陸上に設置された複数の観測機器、又はこれらの組み合わせから構成されていることとした。
上記熱帯低気圧の制御システムでは、上記構成とすることにより、熱帯低気圧を好適に観測することが出来るようになる。
【0010】
請求項6に記載の熱帯低気圧の制御システムでは、前記エネルギー注入手段は、エネルギー注入に関しレーザー光を用いるように構成されていることとした。
上記熱帯低気圧の制御システムでは、上記構成とすることにより、熱帯低気圧を好適に消滅させ、或いは進路を変更させることが出来るようになる。
【0011】
請求項7に記載の熱帯低気圧の制御システムでは、前記エネルギー注入手段は、航空機または人工衛星に搭載されたレーザー装置から構成されていることとした。
上記熱帯低気圧の制御システムでは、上記構成とすることにより、熱帯低気圧の最適な部位に対しエネルギーを注入することが出来るようになる。
【0012】
請求項8に記載の熱帯低気圧の制御システムでは、前記エネルギー注入手段は、電波ビーム発射装置を搭載した航空機から構成されているいることとした。
上記熱帯低気圧の制御システムでは、上記構成とすることにより、発達初期の熱帯低気圧に十分接近することが出来る場合に、熱帯低気圧に対し電波ビームによる高密度のエネルギー注入が可能となり、その結果熱帯低気圧に十分な局部的影響を与える事が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱帯低気圧の制御システムによれば、熱帯低気圧の発達の初期段階において、観測手段から送信される観測データを基に予測手段によってその将来の規模を予測し、超巨大な規模に発達する可能性があると予想される発達の初期段階の熱帯低気圧に対しては、エネルギー注入手段によるレーザー光や電波ビームによって、その適当な箇所にエネルギー注入を行うことにより、その熱帯低気圧を消滅させるか、または、その進行方向を変更させることがで出来るようになる。特に、超巨大な規模の熱帯低気圧により、低緯度から中緯度に存在する国々は、毎年のように甚大な災害を被っている。本発明により、災害の規模を大幅に縮小できる可能性があり、その経済的利益は非常に大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る熱帯低気圧の制御システム100を示す構成説明図である。
この熱帯低気圧の制御システム100は、制御対象である熱帯低気圧1を詳細に観測する観測手段としての観測機器を搭載した気象観測航空機2と、熱帯低気圧の発達の将来予測を行う予測手段としての計算機を備えた地上局3と、上空から熱帯低気圧1に局所的なエネルギーの注入を行うエネルギー注入手段としてのレーザー装置を搭載したレーザー照射衛星4とを具備して構成されている。
【0016】
熱帯低気圧1は、台風、ハリケーン又はサイクロンに発達する初期段階の低気圧レベルである。地上局3に設置された計算機は、気象観測航空機2に搭載された観測機器から出力される観測データを用いてその熱帯低気圧1の時間的変化を予測し、対処方法を決める予測手段であり、その熱帯低気圧が巨大化して甚大な気象災害をもたらすと予測される場合には、その熱帯低気圧に局所的なエネルギー注入を行った時に、その熱帯低気圧がどのように変化するのかを計算して、その熱帯低気圧に最良の変化を引き起こす方法を決定する。
【0017】
図1では、計算機が地上(地上局3)に設置された設置例を示している。すなわち、気象観測航空機2が取得した観測データは無線で地上局3の計算機に送信される。その観測データを受信した計算機はその熱帯低気圧1が巨大化して甚大な気象災害をもたらすと判断する場合には、その熱帯低気圧1の適当な部位に、レーザー照射衛星4に搭載のレーザー装置からレーザー光を上空から照射して、その熱帯低気圧の構造を変えて消滅させるか、または、進路を変更させるようにレーザー装置のエネルギー注入レベルを計算し、その指令をレーザー照射衛星4に送信する。
【0018】
また、レーザー照射衛星4は、レーザー装置を搭載した静止軌道上にある人工衛星である。従って、熱帯低気圧1に注入(照射)されるエネルギーの形態はレーザー光ビーム5であり、地上局3からの指令により、熱帯低気圧1の一部にレーザー照射衛星4からレーザー光ビーム5が注入される。なお、地上局3から人工衛星4に対する指令は無線によって送信される。
【0019】
ところで、熱帯低気圧は、発達して超巨大台風と呼ばれる段階になると、そのパワーはとてつもなく巨大で1013〜1014Wに達し、外部からのエネルギー注入の影響を受け難いが、その発達の初期段階にある熱帯低気圧のパワーは10〜10W程度であり、レーザーや後述するマイクロ波のビームを用い、これらのエネルギーを発達の初期段階の熱帯低気圧の「眼」の近くの温度を大きく変化させるように局所的に注入することにより、熱帯低気圧の規模や進路の制御が可能となる。
【0020】
上記熱帯低気圧の制御システム100において、地上局3の計算機は、制御の対象となる発達の初期段階の熱帯低気圧1に対してレーザー照射衛星4がレーザー光ビーム5の注入を行った後で、気象観測航空機2を介して熱帯低気圧の詳細な観測データを得て、熱帯低気圧の時間的な変化の予想値と、観測データとの差違を算出して、その差違が最小となるように例えばフィードバック制御を行う。
上記の差異の一例として、台風の各種データの中で最も重要なものは、中心気圧Pと中心付近の最大風速Vmaxであるため、観測データと予測値との差異[Δ]は、中心気圧の差はΔPと、中心付近の最大風速Vmaxとの差をΔVmaxとすると下記のようになると考えられる。
[Δ]=A×ΔP+B×[ΔVmax]
ただし、AおよびBは定数で、観測データの積み重ねにより決定する。
また、差異[Δ]が最小になるように制御するには、各時刻において、シミュレーションによる予測値と、現実に制御を行った後の観測値とを比較することができるので、上記の差異[Δ]が発生した原因は究明可能である。従ってシミュレーションに、この原因による変更を加えて、差異[Δ]が最小になるように制御することが可能となる。
【0021】
図2は、熱帯低気圧を観測する観測手段の他の例を示す説明図である。
図1は、観測手段の例として観測機器を搭載した気象観測航空機2を示しているが、図2は、気象観測航空機2に加えて、観測機器を搭載した気象観測衛星6、観測機器を搭載した気象観測船7、並びに観測機器が設置された海洋上の気象観測島8の観測手段例を示している。これらの各種の観測手段は、組み合わせて用いることも可能である。地上局3はこれらの観測手段から送信される観測データを用いて熱帯低気圧の時間的変化を予測し、対処方法を決めるが、これら複数種類の観測手段からの観測データの収集を行うことも有り得る。
【0022】
図2においては、各種の観測手段と地上局3との通信は無線によって行われているが、特に気象観測島8と地上局3との通信はケーブルや光ファイバー等の有線によって行うことも可能である。
地上局3に設置された計算機の例としては、超高速のコンピュータで構成された、高解像度の気象シミュレータを用いることができる。図1および図2において計算機は陸上に設置されているが、計算機の小型軽量化が可能となれば、観測機器やレーザー装置と同じように航空機や人工衛星に搭載する事も考えられる。
【0023】
図3は、熱帯低気圧にレーザーエネルギーを注入するエネルギー注入手段の他の例を示す説明図である。図3では、静止軌道等からレーザーエネルギーを注入するレーザー照射衛星4の他に、飛行機からレーザーエネルギーを注入するレーザー航空機9、或いは飛行船からレーザーエネルギーを注入するレーザー飛行船10の例が示されている。従って、熱帯低気圧に対するレーザーエネルギーの注入は、これら3例の注入方法のいずれか、または、これらの組み合わせにより行われる。
【0024】
上記レーザー照射衛星4、レーザー航空機9およびレーザー飛行船10に搭載されるレーザー装置は、現在でも固体レーザーで商用機として100kW(=10W)程度のものが製作されている。近い将来には技術の進歩により1MW〜10MW(10W〜10W)に増力される見込みがあり、熱帯低気圧の規模や進路の制御に使用する事が可能と考えられる。レーザー光の特性として集光性の良いことが挙げられ、例えば静止衛星から地表まで3.6万kmを伝搬しても、直径1m程度の小型の光学系による照射でも、直径30m以下の円内に集光する事が可能である。この場合、レーザーパワーが1MWであっても、1平方メートル当たり1kW以上のパワー密度となり、熱帯低気圧に対して局所的に大きな影響を短時間で与えることが可能である。
【0025】
レーザー装置を航空機や飛行船などに搭載するときは高空から照射するので、伝搬距離は長くても20km程度となるため、0.5m程度の小型の光学系を使用しても、波長が1μmのレーザー光では、原理的には100km離れても10cm程度まで集光は可能である。そのため、100kW程度のレーザー装置を搭載した飛行船や飛行機によっても、熱帯低気圧の局所に高パワー密度でのエネルギー注入が可能であり、発達初期段階の熱帯低気圧の制御に有効と考えられる。
【実施例2】
【0026】
図4は、本発明の実施例2に係る熱帯低気圧の制御システム200を示す構成説明図である。
この熱帯低気圧の制御システム200は、熱帯低気圧1を観測する観測手段としての気象観測衛星6と、気象観測衛星6から送信される観測データに基づいて熱帯低気圧1の発達のシミュレーションを行うと共に熱帯低気圧1に注入するエネルギー注入レベルを計算し、その計算結果をエネルギー注入手段へ送信する地上局3と、エネルギー注入手段としての電波ビーム発射装置を搭載した電波ビーム航空機11とを具備して構成される。
本熱帯低気圧の制御システム200では、電波ビーム航空機11に搭載した電波ビーム発射装置により熱帯低気圧に対するエネルギー注入を行っている。航空機等であれば、制御対象である発達初期の熱帯低気圧1の「眼」に、10km程度までには接近可能である。そこから波長3cmのマイクロ波で10MWを開口径3mのアンテナで照射すれば、10km先では240m程度の広がりで済むため、1平方メートル当たり200Wの高密度エネルギー注入となり、十分に熱帯低気圧に局部的影響を与える事が可能である。
マイクロ波の利点は、レーザー光とは異なり、薄い雲では減衰を受けず、熱帯低気圧の雲の内部にエネルギーを注入できることである。エネルギーの注入方法としては、レーザーによるエネルギー注入手段と、電波ビームによる注入手段とを併用する事も可能である。電波ビーム発射装置を搭載する航空機として、成層圏を飛行する飛行船を用いることも考えられる。
【0027】
本発明の熱帯低気圧の制御システムによれば、熱帯低気圧の発達の初期段階において、気象観測航空機2等の観測手段から送信される観測データを基に地上局3の計算機によってその将来の規模を予測し、超巨大な規模に発達する可能性があると予想される発達の初期段階の熱帯低気圧に対しては、レーザー照射衛星4等のエネルギー注入手段によるレーザー光や電波ビームによって、その適当な箇所にエネルギー注入を行うことにより、その熱帯低気圧を消滅させるか、または、その進行方向を変更させることがで出来るようになる。特に、超巨大な規模の熱帯低気圧により、低緯度から中緯度に存在する国々は、毎年のように甚大な災害を被っている。本発明により災害の規模を大幅に縮小できる可能性があり、その経済的利益は非常に大きい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の熱帯低気圧の制御システムは、台風、ハリケーン、サイクロン等の気象災害で苦しむ地域における防災手段として好適に適用され気象災害を大幅に低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1に係る熱帯低気圧の制御システムを示す構成説明図である。
【図2】熱帯低気圧を観測する観測手段の他の例を示す説明図である。
【図3】熱帯低気圧にレーザーエネルギーを注入するエネルギー注入手段の他の例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例2に係る熱帯低気圧の制御システムを示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 発達の初期段階の熱帯低気圧
2 気象観測航空機
3 地上局
4 レーザー照射衛星
5 レーザー光ビーム
6 気象観測衛星
7 気象観測船
8 気象観測島
9 レーザー航空機
10 レーザー飛行船
11 電波ビーム航空機
100 熱帯低気圧の制御システム
【出願人】 【識別番号】503361400
【氏名又は名称】独立行政法人 宇宙航空研究開発機構
【出願日】 平成18年10月11日(2006.10.11)
【代理人】 【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信

【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男

【識別番号】100084607
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 文男


【公開番号】 特開2008−92845(P2008−92845A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−277435(P2006−277435)