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【発明の名称】 生育部材の製造方法
【発明者】 【氏名】鈴木 裕明

【氏名】小堺 規行

【氏名】久恒 成史

【氏名】三上 光司

【氏名】遠藤 和教

【要約】 【課題】藻類が活着しやすく且つ取り扱い易い藻類増殖部材2を、簡易に製造する。

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類を生育するための生育部材本体を有する生育部材の製造方法において、
前記生育部材本体を樹脂にて成形する生育部材本体成形工程と、
前記生育部材本体成形工程により成形した生育部材本体の表面に粗面処理を施す粗面処理工程とを有することを特徴とする生育部材の製造方法。
【請求項2】
前記粗面処理工程が、刃物処理、サンドペーパー処理、ブラスト処理、バレル処理又は薬品処理により前記生育部材本体の表面に粗面処理を施す工程であることを特徴とする請求項1記載の生育部材の製造方法。
【請求項3】
前記生育部材本体成形工程又は前記粗面処理工程において、前記生育部材本体の表面を凸部を有する凹凸形状とすることを特徴とする請求項1又は2記載の生育部材の製造方法。
【請求項4】
前記凸部を、3面以上の面部からなる凸部とすることを特徴とする請求項3記載の生育部材の製造方法。
【請求項5】
前記粗面処理工程が、刃物を用いて前記生育部材本体の表面に溝を設けることにより、前記生育部材本体の表面を凹凸形状の粗面とする工程であることを特徴とする請求項3又は4記載の生育部材の製造方法。
【請求項6】
前記粗面処理工程が、前記生育部材本体の表面に凹凸形状の型を加熱した状態で押しつけることにより、前記生育部材本体の表面を凹凸形状の粗面とする工程であることを特徴とする請求項3乃至5記載の生育部材の製造方法。
【請求項7】
前記粗面処理工程が、前記生育部材本体を凹凸形状の加圧面を有するローラにより加圧して、前記生育部材本体の表面を凹凸形状の粗面とする工程であることを特徴とする請求項3乃至6記載の生育部材の製造方法。
【請求項8】
前記粗面処理工程が、前記生育部材本体を水中に吊り下げる吊下げ具を当該生育部材本体の表面に添接させる添接路を避けた面に粗面処理を施す工程であることを特徴とする請求項1乃至7記載の生育部材の製造方法。
【請求項9】
前記生育部材本体成形工程が、樹脂製の生育部材本体を、射出成形、押出成形又は加圧成形により成形する工程であることを特徴とする請求項1乃至8記載の生育部材の製造方法。
【請求項10】
前記生育部材本体成形工程が、前記生育部材本体を水中に吊り下げるための吊下げ具を取り付けるための取付部を有する生育部材本体を成形する工程であることを特徴とする請求項1乃至9記載の生育部材の製造方法。
【請求項11】
前記生育部材本体成形工程が、藻類の胞子等を付着させた種糸を掛け回すための突起部を有する生育部材本体を成形する工程であることを特徴とする請求項1乃至10記載の生育部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、藻場を形成する藻類を生育するための生育部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磯焼けなどにより消失した藻場をより効率よく回復し、あるいは従前は藻場が存在しなかった箇所に新たに藻場を造成して優良な漁場を創出する方策として、主として藻類の生育機能と海底に固定するための台座機能とを分けて考慮し、生育部材と台座部材とを着脱可能に取り付けられるようにしたいわゆる着脱式藻場増殖礁が考えられている。この着脱式藻場増殖礁では、生育部材を用いて生育に適した生育ゾーンで藻類を胞子から初期培養し或いは幼芽から中間培養し、藻類がある程度まで成育すれば藻場を造成すべき造成ゾーンに生育部材を移設して台座部材に取り付けることによって藻場増殖礁を形成するようにしたものである。(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3532865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記生育部材はコンクリートにて形成されることが多く、量産性等に劣るという不具合がある。例えば、コンクリートの流し込み成形では成形に要する時間はコンクリートの硬化時間に依存するため、通常、1個を製造するために1日程度もかかってしまう。更に、量産に際しては10個から1000個というような相当数の型枠を使用しなくてはならないため、煩雑な製造作業を強いられていた。
【0004】
また、当該生育部材を、例えば、生育部材をロープ等に括りつけ海中に吊り下げて藻類を胞子から初期培養し、ある程度まで生育するような垂下式中間育成システム等に採用する場合には、当該生育部材がコンクリート製であるがゆえ重く扱いづらかった。
【0005】
一方、前記生育部材は海中に設置するため、藻類が海流に流されず良好に育つためには、当該藻類が生育部材上に好適に活着する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の生育部材は、藻類を生育するための生育部材本体を有する生育部材の製造方法において、前記生育部材本体を樹脂にて成形する生育部材本体成形工程と、前記生育部材本体成形工程により成形した生育部材本体の表面に粗面処理を施す粗面処理工程とを有することを特徴とする。
【0007】
このように生育部材本体を樹脂にて成形することで、製造の簡便性および取り扱いの利便性を向上することができるばかりか、平滑面となりがちな樹脂製の部材に粗面処理を施すことにより藻類の活着性をも飛躍的に向上させた生育部材を実現することができる。
【0008】
つまり、前記生育部材本体を射出成形等により簡易に製造することが可能となり、また、硬化時間も短くて済むため通常1個につき1分程度で製造することができ量産性を高めることができる。加えて、用意する型枠は、通常1個で済むため作業効率を上げることができる。更に、前記生育部材本体を海中での耐食性に優れ、軽量でありながら機械的強度が高い部材とすることが可能となる。よって、取り扱い性に優れ、例えば垂下式中間育成システム等にも好適に利用することができる。
【0009】
加えて、樹脂にて成形した部材の表面は平滑になりがちであるが、樹脂にて成形した生育部材本体の表面を粗面処理することで、藻類が着き易く且つ剥がれ難い生育部材となり、藻類の良好な生育環境を確保することが可能となる。
【0010】
具体的には、前記粗面処理工程を、刃物処理、サンドペーパー処理、ブラスト処理、バレル処理又は薬品処理により前記生育部材本体の表面に粗面処理を施す工程とすることが望ましい。
【0011】
加えて、藻類の活着性能を増すためには、前記生育部材本体成形工程又は前記粗面処理工程において、前記生育部材本体の表面を凸部を有する凹凸形状とすることが考えられる。
【0012】
特に、前記凸部を3面以上の面部からなる凸部とすることで、藻類の活着性能を更に向上させることができる。
【0013】
加えて、前記生育部材本体の表面を凹凸形状としながら粗面処理を施すためには、前記粗面処理工程を、刃物を用いて前記生育部材本体の表面に溝を設けることにより、前記生育部材本体の表面を凹凸形状の粗面とする工程とすることが望ましい。
【0014】
更に、簡易に前記粗面処理を行うためには、前記粗面処理工程として、前記生育部材本体の表面に凹凸形状の型を加熱した状態で押しつけることにより、前記生育部材本体の表面を凹凸形状の粗面とする工程や、前記生育部材本体を凹凸形状の加圧面を有するローラにより加圧して、前記生育部材本体の表面を凹凸形状の粗面とする工程を採用することが考えられる。
【0015】
また、前記生育部材本体を水中に吊り下げる吊下げ具を当該生育部材本体の表面に添接させる添接路を避けた面に粗面処理を施すことにより、前記吊下げ具の良好な取付状態を実現できる。
【0016】
更に、樹脂製の生育部材本体を、射出成形、押出成形又は加圧成形により成形することで、所望の形状の生育部材本体を簡易に製作することができる。
【0017】
加えて、前記生育部材本体に、当該生育部材本体を水中に吊り下げるための吊下げ具を取り付けるための取付部を設けるように成形することで、例えば生育部材本体のみを海中に吊り下げて藻類を胞子から初期培養等し藻類をある程度まで生育するような方法を容易に実現し、藻類の生育を更に良好とすることができる。
【0018】
また、前記生育部材本体の表面上に突起部を形成し、これら突起部に藻類の胞子等を付着させた種糸を掛け回すことによって種糸を取り付けるように成形する構成することで、生育部材本体に藻類が着生し成育すると、藻類は生育部材本体に形成した突起部を抱きかかえるように根を張ることができるため、藻類を安定的に生育部材本体に活着させることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、生育部材本体を樹脂にて成形することで、製造の簡便性および取り扱いの利便性を向上することができるばかりか、平滑面となりがちな樹脂製の部材に粗面処理を施すことにより藻類の活着性をも飛躍的に向上させた生育部材を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
本発明の藻類増殖部材2(本発明の「生育部材」に相当する。)を採用した増殖礁Aは、海底に沈設して使用されるものであって、例えば、図1に示すように、アワビ、トコブシ、サザエ、ウニ等の磯根資源を稚体から成体まで成育・増殖させることを主目的とする磯根資源増殖ブロック1(本発明の「台座」に相当する。)と、アラメ、クロメ、カジメ等の藻類を生育・増殖させて藻場を形成することを主目的とする藻類増殖部材2と、藻類増殖部材2を磯根資源増殖ブロック1に着脱可能に取り付けるための止着具Xと、海底に接地されてこれら磯根資源増殖ブロック1及び藻類増殖部材2を支持するコンクリートベース3と、磯根資源増殖ブロック1とコンクリートベース3との間に配する中間取付部材4と、磯根資源増殖ブロック1及び藻類増殖部材2を覆うことで覆った内部空間に稚体の成育・増殖に適した磯根資源成育領域及び藻類の生育・増殖に適した藻類生育領域Pを形成する防護ネット装置5と、コンクリートベース3に設けた貫通孔に対して着脱可能な貫通孔用部材6とを具備して成る。以下、各部を具体的に説明する。
【0022】
磯根資源増殖ブロック1は、図1、図2に示すように、平面視ほぼ正方形の平板の下に、下面を上面よりも小さいほぼ正方形状とした正四角錐台を一体に連続させた形状をなすコンクリート製ブロックからなる本体部11を主体としている。そして、その上面に、藻類増殖部材2を取付可能に設定している。なお、当該上面に、さらに他の磯根資源増殖ブロック1を取り付けることもできる。また、この本体部11の下端部には、コンクリートベース3のブロック取付部(図示せず)に挿入するアンカー筋12を下方へ鉛直に突出させて埋設してある。すなわち、このアンカー筋12がブロック取付部内のバネワッシャに引っ掛かる構成により、磯根資源増殖ブロック1が中間取付部材4を介してコンクリートベース3に固定されることとなる。さらに、本体部11の上端部には、隣接する磯根資源増殖ブロック1に向けて突出する半球状の突起13が形成してあり、この突起13により隣接する本体部11同士が直接衝突して欠けたり割れたりすることを防止している。なお、この突起13は、ブロック取付部34に軸着された磯根資源増殖ブロック1が水平方向へ回転することを抑制する機能と、隣接する磯根資源増殖ブロック1の位置決め機能をも有している。また、本体部11の上面には、藻類増殖部材2を着脱可能に取り付けられるようにするために、複数(図示例では4本)のステンレス製のボルト14を起立姿勢で埋設してある。
【0023】
藻類増殖部材2は、図2に示すように、藻類を生育するための藻類増殖部材本体21(本発明の「生育部材本体」に相当する。)と、当該藻類増殖部材本体21に生育した藻類が根を張るための根張部221を有する根張用スペーサ22とを具備し、当該根張用スペーサ22を前記藻類増殖部材本体21と、当該藻類増殖部材本体21を海底Pに保持する重しとしてのアンカー機能を有する磯根資源増殖ブロック1との間に、着脱可能に介在させる構成としている。
【0024】
藻類増殖部材本体21は、後述する粗面処理を施すことでアラメ等の海藻B0が活着しやすいように構成されている円盤型プレートである。
【0025】
具体的には、図2に示すように、薄板状の基材部211の表面上に複数の突起部212を形成し、これら突起部212にアラメ等の海藻B0の胞子や遊走子等を付着させた種糸Yを掛け回して取り付ける構成を有している。
【0026】
更に、当該藻類増殖部材本体21は、図4に示すように、前記種糸Yを表面に巻き付けた状態で海中に吊り下げて海藻B0を育成する垂下式中間育成システムに適しているため、図5に示すように、その表面上に当該藻類増殖部材本体21を水中に吊り下げるための吊下げ具Hを構成するロープH1を当該藻類増殖部材本体212の表面に添接させる添接路213、214を形成すると共に、当該吊下げ具Hに当該藻類増殖部材本体212を取り付けるための吊下げ具取付部215を設けている。
【0027】
また、前記藻類増殖部材本体21の表面21Aを凹凸形状とすることで、図7に示すように、当該藻類増殖部材本体21の表面21Aに藻類を活着させるための凸部216を形成している。
【0028】
基材部211は、後述する突起部取付孔212C及び吊下げ具取付部215を開口した一定の厚みを有する円形の薄板材である。また、当該基材部211の表面、つまり、当該藻類増殖部材本体21の表面21Aには、後述する粗面処理工程S2により粗面処理を施している。
【0029】
突起部212は、藻類増殖部材本体21の表面21Aを凸の形状をなすように部分的に盛り上げる隆起部であり、前記添接路213、214を回避した位置に複数取り付けている。また、当該突起部212には、図7に示すように、掛け回した種糸Yの端部を差し込んで固定するための第一の切欠部212Aを設けている。
【0030】
当該第一の切欠部212Aは、前記突起部212の基端近傍に設けたものであり、前記突起部212の外周面側から中心に向って突起部212の一部を切り欠いて形成している。そして、開口させた外周面側から前記突起部212に掛け回された種糸Yを当該突起部212の中心に向って差し入れることで当該種糸Yの端部を固定できる構成としている。
【0031】
また、当該突起部212を前記基材部211に取り付けるための下向き凸部212Bを当該突起部212の下面に設けている。当該突起部212を前記基材部211に取り付ける際には、前記凸部212Bを前記基材部211に設けた突起部取付孔212Cに嵌合すると共に、当該突起部212の下面を基材部211の突起部取付面212Dに接着する。
【0032】
添接路213、214は、図4に示すように、複数の突起部212を避けた中央部に設けた藻類増殖部材本体21の平面的な表面上の部位であり、藻類増殖部材本体21を吊り
下げるロープH1を添接路213、214に添接させて取り付けた状態で海中に吊す際に、そのロープH1を前記表面に沿って幅方向に亘って通過させる。また、本実施の形態においては、藻類増殖部材本体21の中心位置にて直交する第一の添接路213と第二の添接路214とを形成している。
【0033】
吊下げ具取付部215は、前記藻類増殖部材本体21を前記吊下げ具Hに取り付けるための取付部である。本実施の形態においては、前記第一の添接路213と第二の添接路214とが交わる位置、つまり、当該藻類増殖部材本体21の略中央部に厚み方向に貫通する直径2cm程度の貫通孔であり、当該貫通孔に前記ロープH1を通すことで、藻類増殖部材本体21を吊下げ具Hに取り付けられるようにしている。
【0034】
また、当該吊下げ具取付部215は、前記藻類増殖部材本体21を磯根資源増殖ブロック1に取り付けるための取付部としての機能も有している。具体的には、吊下げ具取付部215である貫通孔に磯根資源増殖ブロック1上に設けたボルト14を挿通させた状態で止着具X及び薄肉略リング状を成すゴム製の弾性体(図示せず)を用いて藻類増殖部材本体21を磯根資源増殖ブロック1の上方に着脱可能に固定する。
【0035】
従って本実施形態の場合、当該吊下げ具取付部215を用いてロープH1に藻類増殖部材本体21を吊下げる垂下式中間育成システムを採用し、この藻類増殖部材本体21を、海藻B0が海底でウニ、巻貝、ウミウシ等の植食生物による食害被害に遭いにくくなる大きさ、すなわちフロロタンニン等の苦み成分を分泌できる大きさである目視により海藻B0が3〜10cmとなるまで生長させ、その後当該藻類増殖部材本体21を海中から引き上げて作業船上で当該藻類増殖部材本体21を磯根資源増殖ブロック1のボルト14に根張用スペーサ22を介在させた状態で着脱可能に取り付ける。
【0036】
凸部216は、複数の面部および角部を有する凸部あり、具体的には、一辺を3mmとする四角形の天面の周囲に1.5mmの高さを有する4面の側面を有する。
【0037】
また、当該凸部216は、前記藻類増殖部材本体21の表面21Aの一部、具体的には、前記突起部取付面212Dと前記止着具Xの取付面XAと前記添接路213・214とを避けた面に格子状に形成している。
【0038】
尚、前記突起部212や前記止着具Xの取付面212D・XAや前記添接路213・214は、各種取付性を考慮して平坦面としている。
【0039】
根張用スペーサ22は、垂下式中間育成システムにて前記藻類増殖部材本体21の上に育成した藻類の根を広げるために必要となる根張部221を確保するために、前記藻類増殖部材本体21と前記磯根資源増殖ブロック1とを離間させる機能を有するものであり、前記藻類増殖部材本体21と同様に、略中央部に厚み方向に貫通する直径2cm程度の貫通孔を形成し、当該貫通孔に前記磯根資源増殖ブロック1上に設けたボルト14を挿通させた状態で止着具Xを用いて前記藻類増殖部材本体21と前記磯根資源増殖ブロック1との間に着脱可能に固定される。また、当該根張用スペーサ22を手で取り扱い得る程度の大きさ及び重量(約1.5KG程度)を有するものとすることで、運搬等の取り扱い、メンテナンスの便を向上するようにしている。
【0040】
詳述すると、当該根張用スペーサ22は、図3、図7に示すように、上下左右対称形状を成すコンクリート製の円柱部材であり、前記藻類増殖部材本体21の下面と略同様の平面形状を有する上面と、当該上面と連続して設けた根張部221を形成する側周面と、当該側周面と連続して設けた下面とを有する。
【0041】
尚、根張用スペーサ22を藻類増殖部材本体21と前記磯根資源増殖ブロック1との間に固定した状態で、当該根張用スペーサ22の上面と前記藻類増殖部材本体21の下面、当該根張用スペーサ22の下面と磯根資源増殖ブロック1の上面とが当接するため、取付性(取り付けた時の座り等)を考慮して前記根張用スペーサ22の上下面及び前記藻類増殖部材本体21の下面21B、磯根資源増殖ブロック1の上面を平坦面としている。
【0042】
根張部221は、垂下式中間育成システムにて前記藻類増殖部材本体21の上に藻類を育成した後、当該藻類増殖部材本体21に育成した藻類の根を広げて藻類増殖部材2に根付かせるための部位であり、前記藻類増殖部材本体21に設けた藻類の育成面(上面)と段差無く連続するように形成している。
【0043】
止着具Xは、図3に示すように、握った状態で操作可能な操作部X2および前記磯根資源増殖ブロック1に設けたボルト14に取り付けるためのナット部X3を有し、前記ボルト14と前記ナット部X3とを螺合させた状態で前記操作部X2を操作することにより、前記藻類増殖部材本体21及び前記根張用スペーサ22を前記ボルト14に着脱可能に固定するものである。
【0044】
詳述すると、略円板状の台座部X1と、この台座部X1の上面側に設けた操作部X2とを具備するものである。また、図7に示すように、当該操作部X2の基端近傍には、前記藻類増殖部材本体21に掛け回した種糸Yの端部を差し込んで固定するための第二の切欠部X21を設けている。具体的には、前記操作部X2の外周面側から中心に向って操作部X2の一部を切り欠いて形成している。そして、開口させた外周面側から前記突起部212に掛け回された種糸Yを操作部X2の中心に向って差し入れることで当該種糸Yの端部を固定できる構成としている。
【0045】
操作部X2は、台座部X1の略中央部から起立する略円柱状の起立部X23と、この起立部X23を挟み込む位置に設けられ上方に向けて二股に分かれる一対の薄板状の鍔部X22とを具備して成るものであって、操作部X2全体を把持して操作することもできるし、操作部X2の一部(例えば、一方の鍔部X22)を把持して操作することもできる。
【0046】
また、本実施形態では、台座部X1の裏面から起立部X23の略中央高さ位置にかけてナット部X3を形成し、このナット部X3を利用してボルト14に螺着可能にしている。
【0047】
ここで、当該止着具X及び前記藻類増殖部材本体21の材質について詳述する。
【0048】
前記止着具X及び前記藻類増殖部材本体21は、樹脂からなり、本実施の形態においては加熱により融解し、冷却すると固化する熱可塑性樹脂を用いる。
【0049】
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ABS樹脂、AES樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステル、PEEK、PEN、パラフィンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、脂肪酸エステル、グリセライト、変性ワックス及びシラン変性ポリオレフィン重合体等、公知の熱可塑性樹脂の中から、耐海水性、耐候性、藻類との相性を鑑みて選定した樹脂を使用する。
【0050】
尚、特に好ましいものは、シンジオタクチックポリスチレン、AES樹脂である。
【0051】
本体を構成する樹脂部は、天然に産出される無機フィラーと、総容量に対し一定量以下の樹脂とを含有することが好ましい。
【0052】
具体的には、前記無機フィラーは通常の樹脂と比較して環境への負荷が小さいため、前記無機フィラーの含有率を、50重量%以上(好ましくは、60重量%以上、より好ましくは、70重量%以上)としている。当該無機フィラーの含有率は、例えば衝撃強度など、得られる成形品に必要な物性を鑑みて判断する。また、当該無機フィラーの粒径は、成形に支障が無い程度、例えば、平均粒径数百μm以下程度であれば良い。
【0053】
更に、当該無機フィラーは天然に産出される無機フィラーであり、特に前記止着具X及び藻類増殖部材本体21は、自然界、更には海中で使用されるため、当該無機フィラーを海中に存在する資源に由来する無機フィラーとすることが望ましい。
【0054】
ここで、天然に産出される無機フィラーとしては、珪石粉末、炭酸カルシウム粉末、石灰石粉末、シラス粉末、骨石粉末、珪藻土粉末、粘土粉末等が考えられる。また、海中に存在する資源に由来する無機フィラーとしては、牡蠣、ホタテ、サザエ、赤貝、つぶ貝、アサリ、しじみ等の貝殻粉末や、サンゴ粉末等が挙げられる。
【0055】
その他、強度向上のための添加物として、弾性率、強度、弾性回復率等の力学特性に優れた短繊維、ウィスカ、フィブリッド等の繊維状のものであり、例えばガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウムやホウ酸アルミニウム等のウイスカ、ボロン繊維やチタン繊維等の金属繊維、アラミド繊維等の有機繊維、ヤシ、もみがら、ケナフ、麻、木綿、絹や納豆等の天然由来の繊維状物質を止着具X及び前記藻類増殖部材本体21に混在することが考えられる。
【0056】
コンクリートベース3は、図1に示すように、海底において当該増殖礁Aを安定設置するためのアンカー機能を有する部材であって、コンクリートにより一体形成されたベース本体31及び三本の支持脚32から構成されるものを基本構成としている。
【0057】
中間取付部材4は、図1に示すように、平面視略矩形状を成す薄板状の基板部41と、この基板部41の上面に突設した4つの隙間調節用突起部42とを具備し、これら各部をコンクリートにより一体に形成したものである。
【0058】
防護ネット装置5は、図1に示すように、コンクリートベース3に立設した柱状部材51と、これら柱状部材51を利用して取り付けられる防護ネット52と、この防護ネット52を柱状部材51に留める留め具53とを具備して成るものである。なお、同図における防護ネット52及び留め具53は作図の都合上一部を省略して図示している。以下、各部をより具体的に説明する。
【0059】
防護ネット52は、可撓性を有する化繊製のものであって、図1に示すように、4つの柱状部材51の上端部間を結んでなる面と略同じ大きさを有する上面網521と、隣接する柱状部材51間にそれぞれ配される計4つの起立網522とを備えてなり、且つ、上面網521の各辺とこれら上面網521の各辺にそれぞれ隣接する起立網522の辺とを連続させた単一のものである。
【0060】
そして、上面網521の網目寸法を、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類が通過できない程度の大きさに設定している。また、起立網522を、上下2段を成すように構成し、下段側の網目寸法を、稚体の通過を妨げ得るとともにヒトデ、タコ等の肉食性海中動物の侵入を防ぎ得る程度に設定する一方、上段側の網目寸法を、下段側の網目寸法よりも拡開させつつ藻食性魚類が通過できない程度の大きさに設定している。さらに、フジツボや貝等の付着物が防護ネット52に付着することを防止するために防護ネット52全体にシリコンを塗布している。
【0061】
また、本実施形態では、留め具53として、いわゆるインシュロックタイプの結束バン
ドを用いている。そして、この留め具53は、カッターナイフや鋏等刃部を有する道具を用いて切断できるよう、一般的な合成樹脂製のものとしている。
【0062】
貫通孔用部材6は、図1に示すように、剛性のある平面視略矩形状の枠体とこの枠体に周縁部を支持させた化繊製の網部とを備えるものである。そして、当該貫通孔用部材6の網目寸法を、稚体の通過を妨げ得る程度に設定している。また、本実施形態では、フジツボや貝等の付着物が貫通孔用部材6に付着することを防止するために貫通孔用部材6全体にシリコンを塗布している。
【0063】
次に、藻類増殖部材2を磯根資源増殖ブロック1に取り付ける方法について説明する。
【0064】
なお、防護ネット52は、その一部又は全部が柱状部材51から取り外されており、作業者が、藻類増殖部材2及び磯根資源増殖ブロック1に容易にアクセスできるものとして説明を進めることとする。
【0065】
まず、図4に示すように、垂下式中間育成システムにて前記藻類増殖部材本体21の上に藻類を育成した後、当該藻類増殖部材本体21を海中から引き上げて吊下げ具Hから藻類増殖部材本体21を取り外す。そして、図2に示すように、当該藻類増殖部材本体21を磯根資源増殖ブロック1のボルト14に根張用スペーサ22を介在させた状態で貫通させる。
【0066】
その後、当該藻類増殖部材本体21の上から止着具Xをボルト14に嵌め、止着具Xの操作部X2を用いて止着具Xを締まる向きへ回すことで、ボルト14とナット部X3が螺着し、当該藻類増殖部材本体21を磯根資源増殖ブロック1に根張用スペーサ22を介在させた状態で固定することができる。
【0067】
次に、前記藻類増殖部材本体21を有する藻類増殖部材2の製造方法について、図9を参照して説明する。
【0068】
本実施の形態における藻類増殖部材2の製造方法は、前記藻類増殖部材本体21を樹脂にて成形する藻類増殖部材本体成形工程S1と、前記藻類増殖部材本体成形工程S1により成形した藻類増殖部材本体21の表面21Aに粗面処理を施す粗面処理工程S2とを有する。
【0069】
藻類増殖部材本体成形工程S1は、前記突起部取付孔212C及び吊下げ具取付部215を開孔した板状の基板部211と、当該基板部211に取り付ける前記突起部212とを、各々樹脂にて成形する工程である。
【0070】
当該藻類増殖部材本体21の成形方法としては、射出成形法、押出成形法、加圧成形法等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、公知の成形法を利用することができる。特に射出成形では、量産性に優れ、また製造時の作業が煩雑とならず、更に品質のばらつきが小さい部材を得ることができる。加えて、三次元の任意の形状に精度よく成形できるので、寸法精度の優れた良好な部品を製造することができる。
【0071】
尚、後の粗面処理工程S2にて粗面処理しない面(添接路213・214・突起部取付面212D・止着具取付面XA)に、粗面処理防止手段となる粗面処理防止材等を粗面処理を行う前に貼着しておく。
【0072】
粗面処理工程S2は、刃物処理、サンドペーパー処理、ブラスト処理、バレル処理又は薬品処理などにより前記藻類増殖部材本体21の表面21Aに粗面処理を施す工程である。
【0073】
本実施の形態においては、刃物を用いて前記藻類増殖部材本体21の表面21Aに溝を設けることにより、前記藻類増殖部材本体21の表面21Aを凹凸形状の粗面とする粗面処理工程S2について説明する。
【0074】
具体的には、ローラ状の刃R2を有する切削ローラ機Rを用いて、複数の第一溝21C1および当該第一溝21C1と直交する複数の第二溝21C2を形成することにより、前記藻類増殖部材本体21の表面21Aを3面以上の面部(本実施の形態においては、5面)からなる凸部216を有する凹凸形状の粗面21Cとする。
【0075】
切削ローラ機Rは、前記藻類増殖部材本体21を順に送り出すコンベアR1と、当該コンベアR1上の前記藻類増殖部材本体21の一部を切削するローラ状の刃R2と、当該ローラ状の刃R2と対向する位置に設けた支持ローラR3とを有している。
【0076】
ローラ状の刃R2は、厚さが2mmの刃物であり、当該ローラ状の刃R2で切削した箇所は、ザラザラの粗面21Cとなる。また、藻類増殖部材本体21の表面21Aを5mm間隔で切削できるように複数本の前記ローラ状の刃R2を前記コンベアR1に所定間隔を設けて平行に配置している。更に、前記藻類増殖部材本体21の表面21Aを1.5mmの深さで切削できるように、前記藻類増殖部材本体21の設置面から一部を突出した状態で前記ローラ状の刃R2を取り付けている。
【0077】
そして、当該ローラ状の刃R2により、前記藻類増殖部材本体21の表面21Aを切削することで、3mm角で1.5mmの高さを有する凸部216を、2mmの溝幅(第一溝21C1・第二溝21C2の溝幅)を隔てて複数形成する。
【0078】
詳述すると、直線状の第一溝21C1を形成する第一溝形成手順と、当該第一溝形成手順により第一溝21C1を形成した後に、当該第一溝21C1と直交する直線状の第二溝21C2を形成する第二溝形成手順により、前記溝(第一溝21C1・第二溝21C2)および凸部216を形成する。
【0079】
第一溝形成手順は、図9(a)に示すように、前記コンベアR1の上に前記藻類増殖部材本体21を下向け(ローラ状の刃R2向け)に設置した状態で、当該藻類増殖部材本体21を前記ローラ状の刃R2の方向に送り出す。その後、互いに逆回転するローラ状の刃R2と支持ローラR3により藻類増殖部材本体21の表面21Aを切削することで、当該表面21Aに第一溝21C1を形成する。
【0080】
第二溝形成手順は、図9(b)に示すように、第一製作手順にてコンベアR1の上に藻類増殖部材本体21を設置した向きから90度回転させて、前記コンベアR1の上に前記藻類増殖部材本体21を下向け(ローラ状の刃R2向け)に設置する。そして、当該藻類増殖部材本体21を前記ローラ状の刃R2の方向に送り出し、ローラ状の刃R2と支持ローラR3により藻類増殖部材本体21の表面21Aを切削することで、当該表面21Aに第二溝21C2を形成する。
【0081】
尚、前記凸部216等も粗面とするためには、サンドペーパー処理、ブラスト処理、薬品処理などの粗面処理を凸部を形成する前に施すことが望ましい。
【0082】
以上のように、藻類増殖部材本体21を樹脂にて成形することで、製造の簡便性および取り扱いの利便性を向上することができるばかりか、平滑面となりがちな樹脂製の部材に粗面処理を施すことにより藻類の活着性をも飛躍的に向上させた藻類増殖部材2を実現することができる。
【0083】
つまり、前記藻類増殖部材本体21を射出成形等により簡易に製造することが可能となり、また、硬化時間も短くて済むため通常1個につき1分程度で製造することができ量産性を高めることができる。加えて、用意する型枠は、通常1個で済むため作業効率を上げることができる。更に、前記藻類増殖部材本体21を海中での耐食性に優れ、軽量でありながら機械的強度が高い部材とすることが可能となる。よって、取り扱い性に優れ、例えば垂下式中間育成システム等にも好適に利用することができる。
【0084】
加えて、樹脂にて成形した部材の表面21Aは平滑になりがちであるが、樹脂にて成形した藻類増殖部材本体21の表面21Aを粗面処理することで、藻類が着き易く且つ剥がれ難い藻類増殖部材2となり、藻類の良好な生育環境を確保することが可能となる。
【0085】
加えて、前記粗面処理工程S2において、前記藻類増殖部材本体21の表面21Aを3面以上の面部からなる凸部216を有する凹凸形状としているため、藻類の活着性能を更に増すことができる。
【0086】
加えて、ローラ状の刃R2を用いて前記藻類増殖部材本体21の表面21Aに溝を設けることにより、前記藻類増殖部材本体21の表面21Aを凹凸形状の粗面とする粗面処理工程S2を採用しているため、前記藻類増殖部材本体21の表面21Aを凹凸形状とすると同時に粗面処理を施すことが可能となる。
【0087】
また、前記藻類増殖部材本体21を水中に吊り下げる吊下げ具Hを当該藻類増殖部材本体21の表面21Aに添接させる添接路213・214を避けた面に粗面処理を施しているため、前記吊下げ具の良好な取付状態を実現できる。
【0088】
加えて、前記藻類増殖部材本体21に、当該藻類増殖部材本体21を水中に吊り下げるための吊下げ具Hを取り付けるための取付部215を設けるように成形していることにより、例えば藻類増殖部材本体21のみを海中に吊り下げて藻類を胞子から初期培養等し藻類をある程度まで生育するような方法を容易に実現し、藻類の生育を更に良好とすることができる。
【0089】
また、前記藻類増殖部材本体21の表面21A上に突起部212を形成し、これら突起部212に藻類の胞子等を付着させた種糸を掛け回すことによって種糸を取り付けるように成形する構成することで、藻類増殖部材本体21に藻類が着生し成育すると、藻類は藻類増殖部材本体21に形成した突起部212を抱きかかえるように根を張ることができるため、藻類を安定的に藻類増殖部材本体21に活着させることが可能となる。
【0090】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態を、図10乃至図12を参照して説明する。
【0091】
本発明の藻類増殖部材20(本発明の「生育部材」に相当する。)を採用した増殖礁Aは、海底に沈設して使用されるものであって、例えば、図10に示すように、アワビ、トコブシ、サザエ、ウニ等の磯根資源を稚体から成体まで成育・増殖させることを主目的とする磯根資源増殖ブロック1(本発明の「台座」に相当する。)と、ホンダワラ、アカモク等の藻類を生育・増殖させて藻場を形成することを主目的とする藻類増殖部材20と、藻類増殖部材20を磯根資源増殖ブロック1に着脱可能に取り付けるための止着具X0と、海底に接地されてこれら磯根資源増殖ブロック1及び藻類増殖部材20を支持するコンクリートベース3と、磯根資源増殖ブロック1とコンクリートベース3との間に配する中間取付部材4と、磯根資源増殖ブロック1及び藻類増殖部材20を覆うことで覆った内部空間に稚体の成育・増殖に適した磯根資源成育領域及び藻類の生育・増殖に適した藻類生育領域Pを形成する防護ネット装置5と、コンクリートベース3に設けた貫通孔に対して着脱可能な貫通孔用部材6とを具備して成る。尚、第一実施形態と同様の構成には、第一実施形態と同様の符号を付している。
【0092】
以下、前記第一実施形態と異なる構成について具体的に説明する。
【0093】
藻類増殖部材20は、図10に示すように、藻類を生育するための藻類増殖部材本体210(本発明の「生育部材本体」に相当する。)を具備し、当該藻類増殖部材本体210を海底Pに保持する重しとしてのアンカー機能を有する磯根資源増殖ブロック1に対して着脱可能に取り付ける構成としている。
【0094】
藻類増殖部材本体210は、図11、図12に示すように、後述する粗面処理を施すことでホンダワラ、アカモク等の海藻B00が幼胚から育ち仮根や仮盤状の付着器等にて活着しやすいように構成されている円盤型プレートである。具体的には、薄板状の基材部2110の表面上にホンダワラの幼胚等を付着させる構成を有している。
【0095】
更に、当該藻類増殖部材本体210は、海中に吊り下げて海藻B00を育成する垂下式中間育成システムに適しているため、当該藻類増殖部材本体210を水中に吊り下げるための吊下げ具Hを構成するロープH1に当該藻類増殖部材本体210を取り付けるための吊下げ具取付部2150を設けている。
【0096】
また、前記藻類増殖部材本体210の表面210Aを凹凸形状とすることで、当該藻類増殖部材本体210の表面210Aに藻類を活着させるための凸部2160や、複数の第一溝210C1および当該第一溝210C1と直交する複数の第二溝210C2からなる幼胚を落とし込むための凹部を形成している。
【0097】
基材部2110は、前記吊下げ具取付部2150を開口した一定の厚みを有する円形の薄板材である。また、当該基材部2110の表面、つまり、当該藻類増殖部材本体210の表面210Aには、前記第一実施形態と同様に粗面処理工程S2により粗面処理を施している。
【0098】
吊下げ具取付部2150は、前記藻類増殖部材本体210を前記吊下げ具Hに取り付けるための取付部である。本実施の形態においては、当該藻類増殖部材本体210の略中央部に厚み方向に貫通する直径2cm程度の貫通孔であり、当該貫通孔に前記ロープH1を通すことで、藻類増殖部材本体210を吊下げ具Hに取り付けられるようにしている。
【0099】
また、当該吊下げ具取付部2150は、前記藻類増殖部材本体210を磯根資源増殖ブロック1に取り付けるための取付部としての機能も有している。具体的には、吊下げ具取付部2150である貫通孔に磯根資源増殖ブロック1上に設けたボルト14を挿通させた状態で止着具X0及び薄肉略リング状を成すゴム製の弾性体(図示せず)を用いて藻類増殖部材本体210を磯根資源増殖ブロック1の上方に着脱可能に固定する。
【0100】
従って本実施形態の場合、当該吊下げ具取付部2150を用いてロープH1に藻類増殖部材本体210を吊下げる垂下式中間育成システムを採用し、この藻類増殖部材本体210を、海藻B00が海底でウニ、巻貝、ウミウシ等の植食生物による食害被害に遭いにくくなる大きさ、すなわちフロロタンニン等の苦み成分を分泌できる大きさである目視により海藻B00が3〜10cmとなるまで生長させ、その後当該藻類増殖部材本体210を海中から引き上げて作業船上で当該藻類増殖部材本体210を磯根資源増殖ブロック1のボルト14に着脱可能に取り付ける。
【0101】
凸部2160は、複数の面部および角部を有する凸部あり、具体的には、一辺を3mmとする四角形の天面の周囲に1.5mmの高さを有する4面の側面を有する。また、当該凸部2160は、前記藻類増殖部材本体210の表面210Aの一部、具体的には、前記止着具X0の取付面XA0を避けた面に格子状に形成している。
【0102】
尚、前記止着具X0の取付面XA0は、取付性を考慮して平坦面としている。
【0103】
止着具X0は、図10に示すように、握った状態で操作可能な操作部X20および前記磯根資源増殖ブロック1に設けたボルト14に取り付けるためのナット部X30を有し、前記ボルト14と前記ナット部X30とを螺合させた状態で前記操作部X20を操作することにより、前記藻類増殖部材本体210を前記ボルト14に着脱可能に固定するものである。
【0104】
詳述すると、略円板状の台座部X10と、この台座部X10の上面側に設けた操作部X20とを具備するものである。
【0105】
操作部X20は、台座部X10の略中央部から起立する略円柱状の起立部X230と、この起立部X230を挟み込む位置に設けられ上方に向けて二股に分かれる一対の薄板状の鍔部X220とを具備して成るものであって、操作部X20全体を把持して操作することもできるし、操作部X20の一部(例えば、一方の鍔部X220)を把持して操作することもできる。
【0106】
また、本実施形態では、台座部X10の裏面から起立部X230の略中央高さ位置にかけてナット部X30を形成し、このナット部X30を利用してボルト14に螺着可能にしている。
【0107】
尚、当該止着具X0及び前記藻類増殖部材本体210の材質は、前記第一実施形態における止着具X及び前記藻類増殖部材本体21の材質と同様である。
【0108】
次に、前記藻類増殖部材本体210を有する藻類増殖部材20の製造方法について、図13を参照して説明する。
【0109】
本実施の形態における藻類増殖部材20の製造方法は、前記藻類増殖部材本体210を樹脂にて成形する藻類増殖部材本体成形工程S1と、前記藻類増殖部材本体成形工程S1により成形した藻類増殖部材本体210の表面210Aに粗面処理を施す粗面処理工程S2とを有する。
【0110】
藻類増殖部材本体成形工程S1は、前記吊下げ具取付部2150を開孔した板状の基材部2110を樹脂にて成形する工程である。
【0111】
当該藻類増殖部材本体210の成形方法としては、射出成形法、押出成形法、加圧成形法等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、公知の成形法を利用することができる。特に射出成形では、量産性に優れ、また製造時の作業が煩雑とならず、更に品質のばらつきが小さい部材を得ることができる。加えて、三次元の任意の形状に精度よく成形できるので、寸法精度の優れた良好な部品を製造することができる。
【0112】
尚、後の粗面処理工程S2にて粗面処理しない面(止着具取付面XA0)に、粗面処理防止手段となる粗面処理防止材等を粗面処理を行う前に貼着しておく。
【0113】
粗面処理工程S2は、刃物処理、サンドペーパー処理、ブラスト処理、バレル処理又は薬品処理などにより前記藻類増殖部材本体210の表面210Aに粗面処理を施す工程である。
【0114】
本実施の形態においては、刃物を用いて前記藻類増殖部材本体210の表面210Aに溝を設けることにより、前記藻類増殖部材本体210の表面210Aを凹凸形状の粗面とする粗面処理工程S2について説明する。
【0115】
具体的には、ローラ状の刃R2を有する切削ローラ機Rを用いて、複数の第一溝210C1および当該第一溝210C1と直交する複数の第二溝210C2を形成することにより、前記藻類増殖部材本体210の表面210Aを3面以上の面部(本実施の形態においては、5面)からなる凸部2160を有する凹凸形状の粗面21Cとする。
【0116】
切削ローラ機Rは、前記藻類増殖部材本体210を順に送り出すコンベアR1と、当該コンベアR1上の前記藻類増殖部材本体210の一部を切削するローラ状の刃R2と、当該ローラ状の刃R2と対向する位置に設けた支持ローラR3とを有している。
【0117】
ローラ状の刃R2は、厚さが2mmの刃物であり、当該ローラ状の刃R2で切削した箇所は、ザラザラの粗面21Cとなる。また、藻類増殖部材本体210の表面210Aを5mm間隔で切削できるように複数本の前記ローラ状の刃R2を前記コンベアR1に所定間隔を設けて平行に配置している。更に、前記藻類増殖部材本体210の表面210Aを1.5mmの深さで切削できるように、前記藻類増殖部材本体210の設置面から一部を突出した状態で前記ローラ状の刃R2を取り付けている。
【0118】
そして、当該ローラ状の刃R2により、前記藻類増殖部材本体210の表面210Aを切削することで、3mm角で1.5mmの高さを有する凸部2160を、2mmの溝幅(第一溝210C1・第二溝210C2の溝幅)を隔てて複数形成する。
【0119】
詳述すると、直線状の第一溝210C1を形成する第一溝形成手順と、当該第一溝形成手順により第一溝210C1を形成した後に、当該第一溝210C1と直交する直線状の第二溝210C2を形成する第二溝形成手順により、前記溝(第一溝210C1・第二溝210C2)および凸部2160を形成する。
【0120】
第一溝形成手順は、図13(a)に示すように、前記コンベアR1の上に前記藻類増殖部材本体210を下向け(ローラ状の刃R2向け)に設置した状態で、当該藻類増殖部材本体210を前記ローラ状の刃R2の方向に送り出す。その後、互いに逆回転するローラ状の刃R2と支持ローラR3により藻類増殖部材本体210の表面210Aを切削することで、当該表面210Aに第一溝210C1を形成する。
【0121】
第二溝形成手順は、図13(b)に示すように、第一製作手順にてコンベアR1の上に藻類増殖部材本体210を設置した向きから90度回転させて、前記コンベアR1の上に前記藻類増殖部材本体210を下向け(ローラ状の刃R2向け)に設置する。そして、当該藻類増殖部材本体210を前記ローラ状の刃R2の方向に送り出し、ローラ状の刃R2と支持ローラR3により藻類増殖部材本体210の表面210Aを切削することで、当該表面210Aに第二溝210C2を形成する。
【0122】
尚、前記凸部2160等も粗面とするためには、サンドペーパー処理、ブラスト処理、薬品処理などの粗面処理を凸部を形成する前に施すことが望ましい。
【0123】
尚、本発明は上記したこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0124】
例えば、前記実施形態においては、刃を用いて粗面処理を行っているが、前記粗面処理工程S2として、前記藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aに凹凸形状の型を加熱した状態で押しつけることにより、前記藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aを凹凸形状の粗面とする工程や、前記藻類増殖部材本体21、210を凹凸形状の加圧面を有するローラにより加圧して、前記藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aを凹凸形状の粗面とする工程を採用することが考えられる。
【0125】
具体的には、藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aに加熱した剣山等を押し付けることにより、前記藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aを凹凸形状の粗面とする工程や、前記藻類増殖部材本体21、210を凹凸形状の加圧面を有する加熱した状態の加熱ローラにより加圧して、前記藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aを凹凸形状の粗面とする工程を採用するとよい。
【0126】
更に、前記実施形態においては、前記粗面処理工程S2において、前記藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aを凸部216を有する凹凸形状としたが、前記藻類増殖部材本体成形工程S1において、前記藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aを凸部216を有する凹凸形状とすることも考えられる。
【0127】
具体的には、前記藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aを凹凸形状とする金型を用いて、前記増殖部材本体21、210を樹脂にて移出成型したり、凹凸形状にシボ加工を施した金型を用いて、前記を樹脂にて移出成型したりする。
【0128】
尚、前記藻類増殖部材本体成形工程S1において前記藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aを凹凸形状に成型した後には、刃物処理、サンドペーパー処理、ブラスト処理、バレル処理又は薬品処理により前記藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aに粗面処理を施す。
【0129】
また、前記実施形態においては、前記藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aにつける溝幅等を上記の寸法としているが、前記溝幅や凸部216の大きさには、特に制限は無く増殖部材本体21、210に活着させる藻類の種類や大きさ等により決定する。
【0130】
加えて、前記粗面処理工程S2に用いる刃物の種類、送り速さ、回転数等も、特に制限は無く増殖部材本体21、210に活着させる藻類の種類や大きさ等により決定する。
【0131】
更に、粗面処理した藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aに、藻類を活着させるに適当な粗面を形成する粗面用材を取り付けて、当該藻類増殖部材本体21、210の表面21A、210Aに、粗面層を形成することも考えられる。
【0132】
前記粗面用材としては、例えば、ホタテの貝殻を個々の粗面用材の最大寸法が1mm以上50mm以下になるまで粒状に砕いたものを利用する。
【0133】
尚、当該粗面用材の形状は、板状、棒状、偏平状、放射状又は針状等であってもよい。
【0134】
また、前記実施形態においては、止着具取付面XA、XA0などの粗面処理しない面を設けているが、当該粗面処理しない面を設けずに全面を粗面処理することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の第一実施形態に係る増殖礁を示す斜視図。
【図2】第一実施形態における止着具及び藻類増殖部材等の取付関係を示す斜視図。
【図3】第一実施形態における藻類増殖部材を磯根資源増殖ブロックに取り付けた状態を示す斜視図。
【図4】第一実施形態における藻類増殖部材の取り扱い方法を示す模式図。
【図5】第一実施形態における止着具及び藻類増殖部材の平面図。
【図6】第一実施形態における藻類増殖部材の平面図。
【図7】第一実施形態における止着具及び藻類増殖部材のA−A線断面図。
【図8】第一実施形態における止着具及び藻類増殖部材のB−B線断面図。
【図9】第一実施形態における藻類増殖部材本体の製造工程を示す模式図。
【図10】第二実施形態における止着具及び藻類増殖部材等の取付関係を示す斜視図。
【図11】第二実施形態における止着具及び藻類増殖部材の平面図。
【図12】第二実施形態における藻類増殖部材の平面図。
【図13】第二実施形態における藻類増殖部材本体の製造工程を示す模式図。
【符号の説明】
【0136】
B0・・・藻類(海藻)
B00・・・藻類(海藻)
H・・・吊下げ具
R2・・・刃物(ローラ状の刃R2)
Y・・・種糸
2・・・生育部材(藻類増殖部材)
21・・・生育部材本体(藻類増殖部材本体)
20・・・生育部材(藻類増殖部材)
21A・・・表面
21C・・・粗面
210・・・生育部材本体(藻類増殖部材本体)
210A・・・表面
210C・・・粗面
212・・・突起部
213・・・添接路(第一の添接路)
214・・・添接路(第二の添接路)
215・・・取付部(吊下げ具取付部)
216・・・凸部
2150・・・取付部(吊下げ具取付部)
2160・・・凸部
【出願人】 【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
【出願日】 平成18年9月5日(2006.9.5)
【代理人】 【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博

【識別番号】100118245
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬子


【公開番号】 特開2008−61535(P2008−61535A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−240742(P2006−240742)