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【発明の名称】 藻類栽培装置及び藻類栽培方法
【発明者】 【氏名】鈴木 鐵也

【要約】 【課題】海水に二酸化炭素を供給して海藻Sの栽培を効率化させると共に、二酸化炭素を供給した際に生じる不具合を解消することである。

【構成】海藻Sを栽培するための栽培槽2と、前記栽培槽2内の海水に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給機構3と、前記栽培槽2内の海水を電気分解する電気分解機構4と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を貯えて藻類を栽培するための栽培槽と、
前記栽培槽内の海水に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給機構と、
前記栽培槽内の海水を電気分解する電気分解機構と、を備えている藻類栽培装置。
【請求項2】
前記電気分解機構が、前記海水のpHを7.5〜8.5に調節することを特徴とする請求項1記載の藻類栽培装置。
【請求項3】
前記電気分解機構が、前記海水に浸漬される電極と、その電極に電流を流す電源とを備えている請求項1又は2記載の藻類栽培装置。
【請求項4】
前記電源が、太陽電池や風力発電機などの自然力を利用して発電するものであることを特徴とする請求項3記載の藻類栽培装置。
【請求項5】
前記二酸化炭素供給機構が、液化した二酸化炭素を供給するものである請求項1、2、3又は4記載の藻類栽培装置。
【請求項6】
前記二酸化炭素供給機構が、前記二酸化炭素をナノバブル又はマイクロバブルにして供給するためのバブル発生器を備えていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の藻類栽培装置。
【請求項7】
海水を貯えて藻類を栽培するための栽培槽に二酸化炭素を供給するとともに、前記栽培槽内の海水を電気分解して海水中のpHを調整することを特徴とする藻類栽培方法。
【請求項8】
前記二酸化炭素が液化二酸化炭素であることを特徴とする請求項7記載の藻類栽培方法。
【請求項9】
前記二酸化炭素をナノバブル又はマイクロバブルにして供給することを特徴とする請求項7又は8記載の藻類栽培方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、藻類を栽培するための藻類栽培装置及びその藻類栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、海藻に二酸化炭素を供給して栽培を促成する方法が考えられている。
【0003】
しかしながら、本発明者は単純に二酸化炭素を供給、溶解するものであると、海水のpHが酸性になってしまい、藻類が枯れてしまうという問題があることを発見した。
【特許文献1】特開2002−262858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、海水に二酸化炭素を供給して藻類の栽培を効率化させると共に、二酸化炭素を供給した際に生じる不具合を解消した藻類栽培装置及びその方法を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明に係る藻類栽培装置は、海水を蓄えて藻類を栽培するための栽培槽と、前記栽培槽内の海水に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給機構と、前記栽培槽内の海水を電気分解する電気分解機構と、を備えていることを特徴とするものである。ここで「海水」とは、海から採取した天然海水及び人工的に生成した人工海水を含む概念である。「藻類」とは、主として海水に生息する海藻であり、例えば、コンブ、ワカメ、ヒジキやモズク等の褐藻類、アサクサノリやテングサ等の紅藻類、アオサやアオノリ等の緑藻類がある。
【0006】
このようなものであれば、海水に二酸化炭素を供給するので、藻類の成長を促進することができる。また、海水に二酸化炭素を溶解させることによって、海水のpHが酸性になってしまうが、海水を電気分解することによって、このpHを海水のpHである弱アルカリに維持することができるようになる。したがって、海水に二酸化炭素を供給して藻類の栽培を効率化させると共に、二酸化炭素を供給した際に生じる不具合を解消することができる。
【0007】
ここで、二酸化炭素が海水中に溶解したときの化学反応式を以下に示す。まず、海水中に溶解した二酸化炭素は、海水中に解離し、水素イオンを放出して炭酸水素イオン(HCO)あるいは炭酸イオン(CO2−)になる。このことから、海水に二酸化炭素を溶解させると海水中に水素イオンが増加して、そのpHが酸性に変化することがわかる。
【0008】
CO+HO→HCO ・・・(1)
CO →H+HCO ・・・(2)
HCO →H+CO ・・・(3)
【0009】
具体的には、前記電気分解機構が前記海水のpHを藻類の生長に適したpH7.5〜8.5に調節することが望ましい。
【0010】
前記電気分解機構の具体的な実施の態様としては、前記電気分解機構が、前記海水に浸漬される電極と、その電極に電流を流す電源とを備えていることが考えられる。
【0011】
このようなものであれば、陽極及び陰極ではそれぞれ以下の電極反応が生じ、海水をpH7.5〜8.5に調節することができるようになる。
【0012】
陽極の電極反応:
2HO=O+4H+4e ・・・(4)
2Cl=Cl+2e ・・・(5)
2HOCl+2H+2e=Cl+2HO ・・・(6)
【0013】
陰極の電極反応:
2HO+2e=H+2OH ・・・(7)
+2HO+2e=H+2OH ・・・(8)
+2e=2OH ・・・(9)
【0014】
微量な電流であっても電気分解を行うことができることを考慮すると、前記電源の具体的な実施の態様としては、前記電源が太陽電池や風力発電機などの自然力を利用して発電するものであることが望ましい。
【0015】
海水に二酸化炭素を供給して藻類が生長しやすくするだけでなく、さらに海水の温度を低下させて藻類が生長するのに好適な水温にするためには、前記二酸化炭素供給機構が、液化した二酸化炭素を供給するものであることが望ましい。これならば、液化二酸化炭素自体の温度によって、供給途中で温度が上昇するとはいっても依然として低い温度なので、海水の温度上昇を防ぐこと、又は水温を低下させることができる。
【0016】
二酸化炭素を海水中に溶解しやすくするためには、前記二酸化炭素供給機構が、前記海水に供給される二酸化炭素をナノバブル又はマイクロバブルにするバブル発生器を備えていることが望ましい。また、マイクロバブルとは直径が50μm以下の微小気泡をいい、ナノバブルとは直径が1μmに満たない超微小気泡をいう。マイクロバブル及びナノバブルには、藻類細胞中への気体吸収率の向上作用だけでなく、殺菌作用や水質浄化作用がある。したがって、分子状二酸化炭素を海水中に分散しやすくすることにより細胞への二酸化炭素の取り込みを促進し、光合成を活性化させるだけでなく、藻類の栽培環境をクリーンにすることができる。
【0017】
また、本発明に係る藻類栽培方法は、海水を貯えて藻類を栽培するための栽培槽に二酸化炭素を供給するとともに、前記栽培槽内の海水を電気分解して海水中のpHを調整することを特徴とする。
【0018】
このようなものであれば、海水に二酸化炭素を供給することによって、藻類の栽培を促進することができるとともに、二酸化炭素を供給することで海水が酸性になってしまい、藻類が枯れてしまうことを防ぐことができる。
【0019】
栽培方法に用いる二酸化炭素としては、液化した二酸化炭素が好ましい。これによって、海水の温度を低下させることができ、藻類の生長に好適な環境にすることができる。
【0020】
また、二酸化炭素の具体的な供給方法としては、前記二酸化炭素をナノバブル又はマイクロバブルにして供給することが望ましい。このようなものであれば、分子状二酸化炭素を海水中に分散しやすくなり、藻類細胞に吸収利用されやすくなる。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明によれば、海水に二酸化炭素を供給するので、藻類の成長を促進することができる。また、海水に二酸化炭素を溶解させることによって、海水のpHが酸性になり藻類が枯れてしまうが、海水を電気分解することによって、このpHを海水のpHである弱アルカリに維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明に係る藻類栽培装置の一実施形態ついて図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態の藻類栽培装置1は、図1に示すように、ワカメ等の海藻Sを栽培するための栽培槽2と、前記栽培槽2内の海水に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給機構3と、前記栽培槽2内の海水を電気分解する電気分解機構4と、を備えている。
【0024】
栽培槽2は海藻Sを栽培するものであり、海水を貯めるとともに海藻Sを収容している。そして栽培槽2は例えば海中あるいは海上に設置される。なお、海藻Sは、栽培槽2から外部に取り出し可能な栽培床SHに保持されている。
【0025】
栽培槽2に収容された海藻Sの上部あるいは下部には、赤色、緑色、青色のLED群51を有する照明装置5が設けられている。これによって、太陽光とLED等の人工光との併用あるいは閉鎖系では太陽光を用いることなく人工光のみによって海藻Sを栽培することができる。また、栽培槽2の外部に設けたLED等の人工光源からの人工光又は太陽光を、光ファイバを用いて栽培槽2内に導光して照射するようにしても良い。
【0026】
さらに、栽培槽2の底には、LED群51からの光を検出する光検出器6が設けられている。この光検出器6は、光検出信号を制御装置7の光制御部71(図2参照)に出力する。そして、光制御部71はその光検出信号に基づいて、照明装置5のLED群51の光量などを調節する。
【0027】
二酸化炭素供給機構3は、液体二酸化炭素を貯蔵する液体二酸化炭素貯蔵タンク31と、そのタンク31から液体二酸化炭素を栽培槽2に流通させる流通管32と、その流通管32上に設けられ、二酸化炭素をナノバブルにして供給するバブル発生器33とを備えている。流通管32上には、液体二酸化炭素をタンク31から栽培槽2に流通させるためのポンプ34が設けられている。
【0028】
バブル発生器33としては、加圧溶解による方法(加圧して気体をより多く溶解した状態からキャビテーションなどを用いて発生させる方法)、超音波による方法(超音波を与えることにより気泡を加振させて分裂させる方法)、剪断による方法(激しい流れの中に気体を吹き込んで気体を引きちぎって気泡を細かくする方法)、衝撃波による方法(ベンチェリ管による衝撃波を用いて発生させる方法)を用いたものが考えられる。本実施形態では、微細孔のある中空構造体に二酸化炭素を通気させることによって、二酸化炭素をナノバブルにしている。
【0029】
そして二酸化炭素供給機構3は、栽培槽2内の海水中の水素イオン濃度を検出する水素イオン濃度検出器35を備えている。この水素イオン濃度検出器35は、濃度検出信号を制御装置7の濃度制御部72(図2参照)に出力する。濃度制御部72は、その濃度検出信号に基づいて二酸化炭素供給機構3のポンプ34を制御して二酸化炭素の供給量を制御する、あるいは電気分解機構4の電源42を制御する。さらに、水面直上の大気中の二酸化炭素濃度をモニターして、二酸化炭素の通気量を調節する。
【0030】
電気分解機構4は、栽培槽2内の海水を電気分解して、そのpHを弱アルカリ性に調節するものであり、栽培槽2内の海水に浸漬される一対の電極41と、その電極41に電流を流す電源42とを備えている。具体的には、海藻Sが成長するのに適したpH(pH7.5〜8.3)に調節する。
【0031】
本実施形態では、一対の電極41は陰極、陽極共に白金、イリジウム等の導電体を用いている。電源42は直流電源である太陽電池を用いている。これにより装置外部からの電力を必要とすることなく海藻Sを栽培することができる。また、直流電源を用いているので一対の電極41に直流電流を流すのに整流器を必要としない。
【0032】
以上のように、本実施形態の藻類栽培装置1によれば、海水に二酸化炭素を供給溶解させるので、海藻Sの成長を促進することができる。また、電気分解機構4によって、海水を電気分解して弱アルカリ性(pH7.5〜8.2)に調整しているので、海水に二酸化炭素を供給し過ぎることによって海藻Sが枯れてしまうことを防ぐことができる。
【0033】
さらに、二酸化炭素をナノバブルにして供給しているので、二酸化炭素の海水への分子状分散が促進され、二酸化炭素の藻類細胞への吸収、光合成効率を高めることができる。
【0034】
その上、電気分解機構4の電源42に太陽電池等の自然エネルギを利用した電源を用いているので、装置外部からの電力を必要とすることなく海藻Sを栽培することができる。
【0035】
加えて、液体二酸化炭素を用いているので、その二酸化炭素自体の温度によって海水の温度を低下させることができ、海藻Sの成長に適したものとなる。さらに加えて、栽培槽2内で栽培しているので、海藻Sを外敵から守ることもできる。
【0036】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0037】
例えば、前記実施形態では栽培槽2は、海中に設置して海藻Sを栽培するものであったが、その他にも陸上に設置して栽培するようにしても良い。
【0038】
また、前記実施形態では、電源は太陽電池であったが、その他にも、風力発電機、水力発電機又は潮の干満で海水が移動するエネルギを電力に変える潮力発電機等を用いたものであっても良い。あるいは商用電源を用いても良い。この場合には、交流電流を直流電流に変換する整流器が必要となる。
【0039】
さらに、前記実施形態では二酸化炭素は液体二酸化炭素であったが、その他にも排気二酸化炭素を用いるようにしても良い。これならば、大気中の二酸化炭素を減少させることができ、環境問題を解決することの一手となりうる。
【0040】
その上、前記実施形態のバブル発生器は、ナノバブルを生成するものであったがマイクロバブルを生成するものであっても良い。
【0041】
加えて、前記実施形態では、一対の電極は、陽極及び陰極共に白金、イリジウム等の導電体を用いていたが、陰極にマグネシウム合金(Mg)、陽極に塩化銀(AgCl)を用いることもできる。
【0042】
さらに加えて、前記実施形態では、バブル発生器と電気分解機構とを別々に設けるものであったが、前記実施形態におけるバブル発生器の中空構造体を導電性材料から形成して電極と兼用することもできる。
【0043】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る藻類栽培装置の概略構成図。
【図2】同実施形態における制御装置の機能構成図。
【符号の説明】
【0045】
1 ・・・藻類栽培装置
2 ・・・栽培槽
3 ・・・二酸化炭素供給機構
31・・・バブル発生器
32・・・流通管
33・・・バブル発生器
34・・・ポンプ
35・・・濃度検出器
4 ・・・電気分解機構
41・・・電極
42・・・電源(太陽電池)
5 ・・・照明装置
51・・・LED群
6 ・・・光検出器
7 ・・・制御装置
71・・・光制御部
72・・・濃度制御部
【出願人】 【識別番号】505125945
【氏名又は名称】学校法人光産業創成大学院大学
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平

【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子


【公開番号】 特開2008−22740(P2008−22740A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−197072(P2006−197072)