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【発明の名称】 植物育成用照明装置
【発明者】 【氏名】石渡 正紀

【要約】 【課題】植物育成用照明装置において、花の咲いている開花期間を長くする。

【構成】植物育成用照明装置は、植物1に対して光を照射する光源部3を備える。光源部3により照射される光は、300〜800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450〜500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率が45%以上となるようにされている。これにより、このような光が照射される植物1は、生長が抑制されて蕾の開花が遅くなると共に、開花中の花の老化が抑制される。この結果、花を長期間咲かし続けることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の生育を調整するため、植物に対して光を照射制御する照射手段を備えた植物育成用照明装置において、
前記照射手段は、植物に照射される光が、300乃至800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450乃至500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率が45%以上となるように波長成分を制御することを特徴とする植物育成用照明装置。
【請求項2】
植物の頂上部付近にある生長点の高さに、地面と平行に想定され、その面積が、植物を上方から見たときの植物の大きさと略同じである仮想面において、平均の水平面照度が1000ルクス以上となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の植物育成用照明装置。
【請求項3】
前記照射手段は、人が植物を鑑賞しているとき、照射される光のうち450乃至500nmの波長域の光の光量を、人が植物を鑑賞していないときに比べて減らすことにより、照射される光が略白色に見えるように波長成分を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物育成用照明装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生育を制御するため、植物に対して光を照射する植物育成用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の植物育成用照明装置として、植物に照射する光の波長成分が制御される植物育成用蛍光ランプが知られている(例えば、特許文献1参照)。この植物育成用蛍光ランプにおいては、発光波長450〜700nmの範囲における光エネルギの強度比が、450〜500nm未満で30〜63%、500〜600nm未満で10〜20%、600〜700nmで24〜56%で、かつ青色成分(450〜500nm未満)及び赤色成分(600〜700nm)中に占める青色成分比が0.37〜0.70である。この植物育成用蛍光ランプによれば、ビタミンCと地上部新鮮重量のバランスが取れた植物を育成することができる。
【0003】
また、上記植物育成用蛍光ランプと同様に、出射する光の波長成分が制御される照明装置として、ケーシングの内部に配置された複数の蛍光ランプと、これらの蛍光ランプのそれぞれの発光出力及び発光時間を設定する調光手段とを備えた調光用照明装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この調光用照明装置においては、上記蛍光ランプのそれぞれが、可視光領域のほぼ全域を含む光の波長領域を少なくとも2つに分割した波長帯域のいずれかに光量が集中した光を発生する。このため、各波長帯域での発光出力が可変とされるので、本装置によれば、光の波長や照度を変えて行なわれる植物の育成状況の調査を簡単に実施できる。
【特許文献1】特開2002−360067号公報
【特許文献2】特開平10−22号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人が植物を室内で育成したり、花が咲いている状態を観賞のために持続させたいと願ったりする場合、植物育成用照明装置から植物に照射される光が不適当であるために植物が短期で枯死することは望ましくない。また、反対に植物が勢いよく育ち過ぎることも望ましくない。特に、花卉類は、花が蕾であるときに購入され、時間の経過と共に少しずつ開花してゆく花を観賞者が観賞するものであるため、日光が積極的に照射されたときや人工光により補光が行われたときに植物の生育が促されることにより、開花が促進されると共に、花の枯れる時期が早くなり、開花期間が短くなることは望ましくない。観賞者が、咲いた花を観賞できる期間が短くなるからである。従って、花を咲かす植物の育成において望ましいことは、花を長期間咲かし続けるように植物を育成することである。しかしながら、特許文献1又は特許文献2に記載の技術では、花が咲いている開花期間を延長させることはできなかった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであり、花の咲いている開花期間を長くすることができる植物育成用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、植物の生育を調整するため、植物に対して光を照射制御する照射手段を備えた植物育成用照明装置において、前記照射手段は、植物に照射される光が、300乃至800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450乃至500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率が45%以上となるように波長成分を制御するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の植物育成用照明装置において、植物の頂上部付近にある生長点の高さに、地面と平行に想定され、その面積が、植物を上方から見たときの植物の大きさと略同じである仮想面において、平均の水平面照度が1000ルクス以上となるようにしたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の植物育成用照明装置において、前記照射手段は、人が植物を鑑賞しているとき、照射される光のうち450乃至500nmの波長域の光の光量を、人が植物を鑑賞していないときに比べて減らすことにより、照射される光が略白色に見えるように波長成分を制御するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、エネルギ比率が上記のような光が植物に照射されると、特に、太陽光が殆ど差し込まないような環境下においては、植物の生長が抑制され、蕾の開花も遅くなる。従って、開花中の花も老化が抑制され、結果的に、花の咲いている開花期間を長くすることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、植物の良好な生育状態を長期間維持できる。
【0011】
請求項3の発明によれば、人が植物を鑑賞するときに、観賞に適した光を植物に照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る植物育成用照明装置について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る植物育成用照明装置(以下、本装置)の構成を示す。本装置は、植物1が載置される植物載置台2と、この植物載置台2上に載置された植物1の生育を制御するため、植物1に対して光を照射する光源部3と、この光源部3を支持すると共に、その下部が植物載置台2に固定された支持壁4と、本装置のモードを切り替えるためにユーザにより操作される操作部5と、タイマ6と、を備える。このタイマ6は、光源部3が点灯している明期と、光源部3が消灯している暗期とを併せて1サイクルとしたとき、このサイクルを24時間周期で一回転させるために時刻を計測するものである。光源部3は、植物載置台2上に植物1が載置されたときにその植物1の上方となる位置に設けられる。
【0013】
本装置のモードは、植物の生育を制御するための生育制御モードと、ユーザが植物を観賞するときに植物を演出するための観賞モードとから成り、ユーザによる操作部5の操作に基づいて切り替えられる。この操作部5は、例えばスイッチを含み、本装置のモードは、ユーザによるこのスイッチの押下げ操作に従って切り替えられる。また、操作部5は、人感センサを含み、この人感センサにより、本装置の近傍に居る人の存否を確認し、人が近傍に居る間だけ自動で本装置のモードを観賞モードに遷移させても構わない。この場合、ユーザがわざわざスイッチ等を操作する手間を省くことができる。
【0014】
光源部3は、本装置の現状のモードに合わせて波長成分が制御された光を出射する。例えば、光源部3は、本装置が観賞モードのとき、植物演出用の略白色の光を出射し、本装置が生育制御モードのとき、300〜800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450〜500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率が45%以上となる光を出射する。この光が植物1に与える影響については後述する。なお、このような光を出射する光源部3は、植物の側方に設けられていてもよい。また、光源部3は、支持壁4ではなく、支持棒により支持されていても構わない。
【0015】
図2は、光源部3の構成を示す。同図に示される光源部3は、支持壁4により支持される光源支持台31と、この光源支持台31の同一面に取り付けられた白色光源7及び青色光源8と、を備える。白色光源7及び青色光源8から出射される光は調光制御されており、これらの光源7、8は、併せて、300〜800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450〜500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率が45%以上となる光を出射する。
【0016】
白色光源7の個数は例えば1個であり、この白色光源7は、光源支持台31の一面の中央付近に取り付けられる。また、青色光源8の個数は、例えば4個であり、これらの青色光源8は、白色光源7を中心とする円の外周上に、互いに略90度の角度をもって配置され、光源支持台31に固定されている。上記のように配置された白色光源7は、例えば、白熱電球、白色蛍光灯、白色のメタルハライドランプ、水銀灯、白色無電極ランプ、白色発光ダイオード(白色LED)又は白色光を出射する有機EL(Electro−Luminescence)等から成る。また、青色光源8は、例えば、青色電球、青色蛍光灯、青色のメタルハライドランプ、青色無電極ランプ、青色発光ダイオード(青色LED)又は青色光を出射する有機EL等から成る。なお、白色光源7及び青色光源8の配置や個数は上記に限られない。
【0017】
図3は、本装置の電気的構成を示す。本装置は、モードを切り替えるためにユーザが操作する操作部5と、時刻を計測するタイマ6と、白色光源7を調光点灯制御する調光点灯部7aと、青色光源8を調光点灯制御する調光点灯部8aと、操作部5及びタイマ6からの信号に応じて、調光点灯部7a、8aに制御信号を送信する制御部9と、を備える。上記各部5、7a、8a、9及びタイマ6は、植物載置台2、光源支持台31又は支持壁4内に収納される。なお、タイマ6は、植物載置台2、光源支持台31又は支持壁4の外面に取り付けられていても、又は植物載置台2、光源支持台31及び支持壁4から成る本体の外部に設置されていてもよい。外部に設置される場合、タイマ6は、例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブル等の伝送線を介して制御部9に時刻情報を送信する。
【0018】
調光点灯部7a、8aは、調光点灯回路から成り、この調光点灯回路によりそれぞれ、白色光源7又は青色光源8の発光量を増減して制御すると共に、これらの光源7a、8aの点灯/消灯制御を行なう。発光量制御及び点灯/消灯制御は、制御部9からの制御信号に応じてなされる。なお、上記の通り、白色光源7及び青色光源8は光源部3に含まれる。
【0019】
制御部9は、CPUを含むマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略す)から成り、このマイコンにより、白色光源7及び青色光源8の各種制御を調光点灯部7a、8aを用いて行なう。白色光源7及び青色光源8の各種制御は、独立して行なうことが可能であり、それらの制御は、制御内容に応じた制御信号が調光点灯部7a、8aに送信されることにより行なわれる。上記の各種制御には、植物の生育を調整するための白色光源7及び青色光源8の発光量制御が含まれる。
【0020】
例えば、制御部9は、ユーザが本装置のモードを生育制御モード/観賞モードに切り替えるために操作部5を操作したとき、操作部5からの信号に基づいて、白色光源7及び青色光源8の発光量をそれぞれ調光点灯部7a、8aにより制御する。この発光量の制御により、生育制御モード時には、白色光源7から出射された光と青色光源8から出射された光とが合成された光、すなわち光源部3全体から放射されて植物に照射される光において、300〜800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450〜500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率が45%以上となるように波長成分の制御が行なわれる。一方、観賞モード時には、光源部3から植物1に照射される光が略白色に見えるように波長成分が制御される。光を略白色とするこの波長成分制御は、例えば2つの方法によりなされる。その1つの方法は、光源部3から照射される光のうち450乃至500nmの波長域の光の光量を、ユーザが植物1を鑑賞していないときに比べて減らすことである。このために青色光源8の発光量が低減される。もう1つの方法は、白色光源7の発光量を増加させることである。ここで、ユーザが植物を鑑賞していないときとは、本装置のモードが生育制御モードであるときのことをいう。上記のようにして、白色光源7、青色光源8、調光点灯部7a、8a及び制御部9は照明手段を成す。
【0021】
さらに、制御部9が行なう各種制御には、白色光源7及び青色光源8の点灯/消灯制御が含まれる。この点灯/消灯制御は、タイマ6から送信される時刻情報に基づいて行なわれる。例えば、制御部9は、タイマ6により現在時刻を把握し、夜間の予め設定された時刻に白色光源7及び青色光源8を消灯する。また同様に、制御部9は、朝の予め設定された時刻に白色光源7及び青色光源8を点灯する。
【0022】
上記構成によれば、本装置は、人が植物を観賞するとき、光源部3から放射される光が略白色に見えるように波長成分を制御する機能を有するので、人が植物1を鑑賞するときに観賞に適した光を植物1に照射することができる。さらに、制御部9がタイマ6により時刻を計測し、時刻に応じて白色光源7及び青色光源8の発光量制御及び点灯/消灯制御を行なうことにより、毎日ユーザが在宅している時間帯には、観賞モード時の光を植物1に照射し、ユーザが家を空けている時間帯には、生育制御モード時の光を植物1に照射し、夜間には白色光源7及び青色光源8を消灯して植物1を休ませることが可能となる。
【0023】
次に、光源部3から出射された光の水平面照度について、上記の各図に図4(a)(b)を加えて説明する。調光点灯部7a、8aは、制御部9からの制御信号に基づき、光源部3から出射された光(実線矢印で示す)が、植物1の頂上部付近にある生長点と略同じ高さに想定された仮想面100において、1000ルクス以上の平均水平面照度を有するように調光制御する。この仮想面100は、地面と平行に想定され、その面積が、植物1を上方から見たときの植物1の大きさと略同じである。上記調光制御は、本装置が生育制御モードにあるときも、また本装置が観賞モードにあるときも行なわれる。なお、仮想面100の高さは、頂上部付近にある生長点と略同じ高さに限定されず、他の位置にある生長点の高さであっても、また植物の頂点の高さであってもよい。
【0024】
上記構成により、太陽光が殆ど差し込まない室内においても、上記仮想面における平均の水平面照度が1000ルクス以上であるため、植物1は、良好な生育に適した照度の光を浴びることができる。また、水平面照度が1000ルクス以上に維持されるので、植物1の枯死を防ぎ、植物1の良好な生育状態を長期間維持できる。この効果は、特に、根付きの耐陰性が高い、スパティフィラム、カーネーション、ペンタス、サルビア、ミニバラ、トルコギキョウ、キク、グロキシニア、ガーベラ、カンパニュラ、ケイトウ、アゲラタム、シクラメン、ハナキリン、ベゴニア、エキザカム、インパチェンス、セントポーリア、カランコエ、パフィオペディラム、キンギョソウ、ハイドランジア、シネラリア、カルセオラリア、ブーゲンビレア、ストック、ポットマム、プリムラ、パンジー、グズマニア、ドラセナ等の植物に顕著に表れる。
【0025】
次に、本装置のモードが生育制御モードとなることにより得られる効果を、発明者により実施された実験の結果を参照して説明する。上述の通り、生育制御モード時には、300〜800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450〜500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率が45%以上である光が植物に照射される。これまで、400〜500nmの波長域を有する青色光が植物の生長を抑制することが一般に知られているものの、400〜500nm以外の波長を有する光が青色光と同時に植物に照射される場合に、花を長期間咲かし続けることが可能な分光分布に係る知見は存在しなかった。このため、本実験においては、波長域300〜800nmの光に含まれるエネルギに対する、波長域450〜500nmの光に含まれるエネルギの比率がパラメータとされた。また、本実験においては、上記パラメータが異なる後述の各種光源により植物に対して個別に光が照射され、時間の経過に伴う開花数の変動が計測された。
【0026】
図5は、この実験の際に用いられた各種(ここでは、下記第1乃至第4の4種)の光源から出射される光の波長成分を示す。同図において、横軸は、光の波長(nm)を示し、縦軸は、エネルギのピーク値に対する相対値である相対エネルギを示す。各種光源のうち、2種は白色光源と青色光源とを組み合わせたものであり、その他の2種は白色光源7のみからなるものである。
【0027】
本実験により使用された第1の光源は、青色蛍光灯と白色蛍光灯とを組み合わせたものであり、この光源からの出射光は、実線Aに示される波長分布を有していた。この波長分布によれば、波長が略435nmであるときに相対エネルギはピーク値を取ると共に、300〜800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450〜500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率は45%となる。このエネルギの比率は、同図において、波長域450〜500nmの相対エネルギの積分値を、波長域300〜800nmの相対エネルギの積分値で除することにより算出される。上記比率を百分率で表す場合、この算出された値に100が乗じられる(以下、同様)。
【0028】
また、第2の光源は、白色LEDのみから成るものであり、この光源からの出射光は、実線Bに示される波長分布を有していた。この波長分布によれば、波長が略460nmであるときに相対エネルギはピーク値を取ると共に、300〜800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450〜500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率は52%となる。
【0029】
また、第3の光源は、青色LEDと白色蛍光灯とを組み合わせたものであり、この光源からの出射光は、実線Cに示される波長分布を有していた。この波長分布によれば、波長が略465nmであるときに相対エネルギはピーク値を取ると共に、300〜800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450〜500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率は85%となる。
【0030】
また、第4の光源は、白色蛍光灯のみから成るものであり、この光源からの出射光は、破線Dに示される波長分布を有していた。この波長分布によれば、波長が略545nmであるときに相対エネルギはピーク値を取ると共に、300〜800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450〜500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率は19%となる。
【0031】
図6は、上記の各種の光源から植物に対して個別に光が照射されたときの時間経過に伴う開花数推移を示す。同図において、縦軸は、時間経過に伴って推移する開花数を実験初日の開花数で除することにより得られる値であり、開花数の相対値を示す。なお、本実験においては、植物が一般の花屋等から購入され、鉢ごとに蕾数が異なっていたため、開花数の最大値は植物育成用照明装置により光が照射される前の要件の影響が非常に大きい。このため、開花数の最大値は考察に含めない。
【0032】
上記実験において、光が照射される植物として、2号サイズの鉢に入ったミニバラが用いられた。このミニバラは、サイズが300mm×500mm×500mmで、且つ、上部が開口された遮光性を有する暗箱内に、後述の各種の光源と共に設置された。この実験は、次の複数の実験区で行なわれた。
(1)暗箱の開口が蓋により覆われ、外部からの入射光が完全に遮光された暗黒区R
(2)実験室の天井に設置された蛍光灯の光が暗箱内に入光し、植物の頂上部付近の生長点と略同じ高さで水平面照度が略300ルクスとなるようにされた居室区R
(3)白色蛍光灯を含むスタンドタイプの照明器具が設置され、植物の頂上部付近の生長点と略同じ高さで水平面照度が略2300ルクスとなるようにされた白色蛍光灯区R
【0033】
(4)白色蛍光灯を含むスタンドタイプの照明器具と、青色蛍光灯を含むスタンドタイプの照明器具とがそれぞれ1台ずつ設置されると共に、白色蛍光灯の発光量が調整されて頂上部付近の生長点と略同じ高さで水平面照度が略2300ルクスとなるようにされた青色蛍光灯及び白色蛍光灯区R
(5)青色蛍光灯を含むスタンドタイプの照明器具が2台設置され、植物の頂上部付近の生長点と略同じ高さで水平面照度が略1700ルクスとなるようにされた青色蛍光灯区R
(6)白色蛍光灯を含むスタンドタイプの照明器具と、電球型に加工された青色LEDランプ6個とが設置され、植物の頂上部付近の生長点と略同じ高さで水平面照度が略2300ルクスとなるようにされた青色LED及び白色蛍光灯区R
(7)ハイパワー白色LEDを含むスタンドタイプの照明器具が設置され、植物の頂上部付近の生長点と略同じ高さで水平面照度が略1700ルクスとなるようにされた白色LED区R
【0034】
上記実験においては、それぞれ実験区の暗箱に、温度を制御するために箱外の空気を吸引して箱内に流入させる小型ファンが設けられた。また、上記の各種光源のそれぞれの電源が、タイマからの時刻情報に基づいて12時間のサイクルでON/OFFされることにより、明期と暗期とが人工的に再現された。
【0035】
上記実験の結果、図6に示されるように、以下の項目(1)乃至(5)が確認された。
(1)暗黒区R、居室区R及び白色蛍光灯区Rでは、実験開始から5日程度で開花数が最大となった。
(2)450〜500nmの波長域の光に含まれるエネルギが300〜800nmの波長域に含まれる光のエネルギの45%程度である白色LED区Rでは、実験開始から9日程経過した後に開花数が最大となった。
(3)白色LED区Rと同様に波長域450〜500nmの光に含まれるエネルギ量が波長域300〜800nmの光に含まれるエネルギの45%以上である青色蛍光灯及び白色蛍光灯区Rと、青色蛍光灯区Rと、青色LED及び白色蛍光灯区Rとでは、白色LED区Rに比べて開花数が最大となる日がさらに3日延び、実験開始から12日程経過後に開花数が最大値に達した。
(4)暗黒区R及び居室区Rでは、実験開始日より開花数がゼロになるまでの期間が12日程度であった。
(5)白色蛍光灯区Rと、青色蛍光灯及び白色蛍光灯区Rと、青色蛍光灯区Rと、青色LED及び白色蛍光灯区Rと、白色LED区Rとでは、その期間が27日程度であった。
【0036】
上記項目(1)乃至(3)を考察すると、植物に対して、波長域450〜500nmの光に含まれるエネルギの総和が波長域300〜800nmの光に含まれるエネルギの総和の45%以上である光を照射した場合、そうしなかった場合と比較して、開花数が最大となる日が延長されることがわかる。また、上記項目(4)及び(5)を考察すると、そのような光を出射する光源を含む上記各種光源から光を植物に照射した場合、そうしなかった場合と比べて、開花数がゼロとなるまでの期間が延長されることがわかる。
【0037】
従って、本装置は、波長域450〜500nmの光に含まれるエネルギが波長域300〜800nmの光に含まれるエネルギの45%以上である光を出射する光源部3を備え、この光源部3によりそのような光を植物に照射するので、太陽光が殆ど差し込まないような薄暗い環境に植物を置いた場合においても、植物の生長を抑制し、蕾の開花も遅らすことができる。従って、開花中の花も老化が抑制される。このため、大きさや美しさを維持しつつ、花の咲いている開花期間を長くすることができる。また、植物の生長が抑制されることにより、枝や葉の伸び過ぎを防げるので、これらの剪定等の煩わしい作業が不要になり、手間を減らせる。
【0038】
次に、本装置の第1の変形例について図7及び図8を参照して説明する。図7は、第1の変形例に係る光源部3の構成を示す。この光源部3は、図2に示される実施形態の構成と比較して、白色光源7の代わりに、緑色光源10及び赤色光源11を含む点で異なる。緑色光源10又は赤色光源11は、例えば、緑色又は赤色の光を出射する電球、蛍光灯、メタルハライドランプ、無電極ランプ、発光ダイオード(LED)又は有機EL等の光源から成る。青色光源8、緑色光源10及び赤色光源11はそれぞれ、例えば三角形の頂点の位置に配置され、互いに近接している。このように近接した青色光源8、緑色光源10及び赤色光源11から成る光源群20が、光源支持台31の同一表面に複数設けられている。光源群20の数は、例えば4つであり、隣り合う光源群20は互いに等間隔の距離を開けて配置されている。なお、光源群20は、光源支持台31の同一表面に散在していても構わない。また、光源群20の配置や個数は上記に限定されない。
【0039】
図8は、上記光源部3を有する本装置の電気的構成を示す。本装置は、図3に示される実施形態の構成と比較して、白色光源7及びその調光点灯部7aの代わりに、緑色光源10及びその調光点灯部10aと、赤色光源11及びその調光点灯部11aを備える点で異なる。上記の通り、光源部3は、青色光源8、緑色光源10及び赤色光源11で構成される。
【0040】
調光点灯部10a、11aは、調光点灯回路から成り、この調光点灯回路によりそれぞれ、緑色光源10又は赤色光源11の発光量を増減して制御すると共に、これらの光源10、11の点灯/消灯制御を行なう。発光量制御及び点灯/消灯制御は、制御部9からの制御信号に応じてなされる。
【0041】
制御部9は、青色光源8、緑色光源10及び赤色光源11の各種制御を調光点灯部8a、10a、11aを用いて行なう青色光源8、緑色光源10及び赤色光源11の各種制御は、独立して行なうことが可能であり、それらの制御は、制御内容に応じた制御信号が調光点灯部8a、10a、11aに送信されることにより行なわれる。上記の各種制御には、青色光源8、緑色光源10及び赤色光源11の発光量制御が含まれる。
【0042】
例えば、制御部9は、ユーザが本装置のモードを生育制御モード/観賞モードに切り替えるために操作部5を操作したとき、操作部5からの信号に基づいて青色光源8、緑色光源10及び赤色光源11の発光量をそれぞれ制御する。この発光量の制御により、生育制御モード時には、青色光源8、緑色光源10又は赤色光源11のそれぞれから出射された光が合成された光、すなわち光源部3全体から放射される光において、300〜800nmの波長域の光に含まれるエネルギに対する、450〜500nmの波長域の光に含まれるエネルギの比率が45%以上となるように波長成分の制御が行なわれる。一方、観賞モード時には、光源部3から植物1に照射される光が略白色に見えるように波長成分が制御される。光を略白色とするこの波長成分制御は、例えば2つの方法によりなされる。その1つの方法は、光源部3から照射される光のうち450乃至500nmの波長域の光の光量を、生育制御モード時に比べて減らすことである。このために青色光源8の発光量が低減される。もう1つの方法は、緑色光源10及び赤色光源11の発光量を増加させることである。
【0043】
さらに、制御部9が行なう各種制御には、青色光源8、緑色光源10及び赤色光源11の点灯/消灯制御が含まれる。この点灯/消灯制御は、タイマ6から送信される時刻情報に基づいて行なわれる。例えば、制御部9は、タイマ6により現在時刻を把握し、夜間の予め設定された時刻に青色光源8、緑色光源10及び赤色光源11を消灯する。また同様に、制御部9は、朝の予め設定された時刻に青色光源8、緑色光源10及び赤色光源11を点灯する。
【0044】
第1の変形例においても、図2及び図3に示される本装置と同様に、花を長期間咲かし続けることができる効果と、植物の良好な生育状態を長期間維持できる効果と、人が植物を鑑賞するときに、観賞に適した光を植物に照射することができる効果とが得られる。
【0045】
次に、本装置の第2の変形例について図9及び図10を参照して説明する。図9は、第2の変形例に係る光源部3の構成を示す。この光源部3は、図2に示される実施形態の構成と比較して、青色光源8の代わりに、光学フィルタ12を含む点で異なる。この光学フィルタ12は、白色光源7と植物との間に配置され、白色光源7から出射された光を、波長域300〜800nmの光に含まれるエネルギに対する、波長域450〜500nmの光に含まれるエネルギの比率が45%以上である光にする。同図においては、白色光源7の例として白色蛍光灯を図示している。
【0046】
図10は、上記光源部3を有する本装置の電気的構成を示す。本装置は、図3に示される実施形態の構成と比較して、青色光源8及びその調光点灯部8aの代わりに、光学フィルタ12と、この光学フィルタ12を植物と白色光源7との間で抜き差しする駆動機構から成る駆動部12aを備える。この駆動部12aは、制御部9からの制御信号に応じて光学フィルタ12を抜き差しする。上記の通り、光源部3は、白色光源7及び光学フィルタ12で構成される。
【0047】
制御部9は、ユーザが本装置のモードを生育制御モード/観賞モードに切り替えるために操作部5を操作したとき、操作部5からの信号に基づいて光学フィルタ12の抜き差しを駆動部12aに指示する。この指示は制御信号の送信によりなされる。駆動部12aは、該制御信号をトリガとし、生育制御モード時には、光学フィルタ12を白色光源7と植物1との間に差し込む(破線ブロックで示す)。このため、白色光源7から出射された光(破線矢印で示す)は光学フィルタ12に入射し、この光学フィルタ12を透過した光(一点破線矢印で示す)は、300〜800nmの波長域の光のエネルギ総和に対する、450〜500nmの波長域の光のエネルギ総和の比率が45%以上となる。一方、観賞モード時には、駆動部12aは、白色光源7と植物1との間に差し込まれていた光学フィルタ12をそれらの間から抜く。このため、光源部3から植物1に照射される光が白色となる。
【0048】
第2の変形例においても、図2及び図3に示される本装置と同様に、花を長期間咲かし続けることができる効果と、植物の良好な生育状態を長期間維持できる効果と、人が植物を鑑賞するときに、観賞に適した光を植物に照射することができる効果とが得られる。
【0049】
本発明は、第1及び第2の変形例を含む上記実施形態の構成に限定されるものでなく、使用目的に応じ、様々な変形が可能である。例えば、光源部3を構成する各種光源は、白色光源7、青色光源8、緑色光源10及び赤色光源11に限定されず、他の色の光を出射する光源であってもよい。また、光学フィルタ12は、駆動部12aにより自動で抜き差しされるのではなく、手動で取り外し可能に設けられていても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る植物育成用照明装置の構成図。
【図2】上記装置の光源部の構成図。
【図3】上記装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】(a)は上記装置の光源部から出射される光の水平面照度を説明するための構成図、(b)は上記装置に載置された植物を上方から見たときの平面図。
【図5】各種光源から出射される光の波長成分を示す図。
【図6】上記各種光源により光が植物に個別に照射されたときの開花数推移を示す図。
【図7】上記装置の第1の変形例における光源部の構成図。
【図8】上記装置の第1の変形例の電気的構成を示すブロック図。
【図9】上記装置の第2の変形例における光源部の構成図。
【図10】上記装置の第2の変形例の電気的構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0051】
1 植物
2 植物載置台
3 光源部
7 白色光源(照明手段)
8 青色光源(照明手段)
7a、8a 調光点灯部(照明手段)
9 制御部(照明手段)
10 緑色光源
11 赤色光源
12 光学フィルタ
100 仮想面
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成18年7月18日(2006.7.18)
【代理人】 【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫

【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美

【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一


【公開番号】 特開2008−22711(P2008−22711A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−195216(P2006−195216)