| 【発明の名称】 |
建物の樹木固定構造および構造設計方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】村松 浩
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、建物の常時荷重安全性、耐風安全性、地震安全性を高めることができ、植栽した樹木の転倒、建物からの落下及び飛散を防止することができる建物の樹木固定構造を提供することを目的とする。
【構成】本発明に係る建物の樹木固定構造の第一の構成は、建物100の梁1に立設した柱脚2と、柱脚2の上に固定した格子枠3と、柱脚2又は格子枠3の上に固定した底板12と、底板12に支承されかつ底板12の上の土壌7に埋設される樹木5の根鉢6を格子枠3に固定し得る結束手段8と、を有することを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 建物の梁に立設した柱脚と、 該柱脚の上に固定した格子枠と、 前記柱脚又は前記格子枠の上に固定した底板と、 該底板に支承されかつ該底板の上の土壌に埋設される樹木の根鉢を前記格子枠に固定し得る結束手段と、を有することを特徴とする建物の樹木固定構造。 【請求項2】 前記結束手段は、第1の結束手段と、第2の結束手段と、を有し、 前記第1の結束手段は、前記根鉢に掛け渡して前記根鉢を前記格子枠に固定するベルトと、該ベルトを締めて前記根鉢を前記格子枠に緊結する緊結手段と、を有し、 前記第2の結束手段は、前記根鉢に掛け渡して前記根鉢を前記格子枠に固定するベルトと、前記緊結手段が破壊された後にも前記ベルトを締めて前記根鉢を前記格子枠に結束する長期耐久性に優れた結束部材と、からなることを特徴とする請求項1または2に記載の建物の樹木固定構造。 【請求項3】 前記緊結手段は、前記ベルトを巻き上げる回転軸と、前記回転軸の反転を防止する反転防止機構と、を有することを特徴とする請求項1に記載の建物の樹木固定構造。 【請求項4】 前記結束部材の耐用年数は、建物の構成部材の耐用年数と同程度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建物の樹木固定構造。 【請求項5】 前記格子枠又は前記柱脚の上に周壁を固定して、前記根鉢や前記土壌などを収納する有底の箱体を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の建物の樹木固定構造。 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の建物の樹木固定構造の構成部材の合計荷重を前記梁にかかる積載荷重とし、 地震力は前記積載荷重が地震層せん断力を生むものとし求め、 風圧力は、前記樹木の輪郭形状を球状とみなして求め、 前記積載荷重、前記地震力、前記風圧力に基づいて、請求項1〜5のいずれかに記載の建物の樹木固定構造の構造設計を行うことを特徴とする建物の樹木固定構造の構造設計方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、樹木の荷重を建物の梁に伝達するようにした建物の樹木固定構造、およびその構造設計方法に関する。 【0002】 より具体的には、建物の梁に立設した鉄骨に樹木を固定した建物の樹木固定構造、および樹木をモデル化して行う構造設計方法に関する。 【背景技術】 【0003】 近年、建物の屋上またはバルコニーに草花や樹木を植えて緑化することにより、植栽のある自然景観を身近にすることが好まれている。この、いわゆる建物緑化は都市の温暖化を軽減する効果もあり広く奨励されている。 【0004】 ところで、建物の屋上またはバルコニーには直射日光を遮るものがないことが多く、人が居続けて憩う環境としてはあまり良くない。 【0005】 このため、建物の屋上またはバルコニーに樹木を植栽して日陰(木陰)を作ることにより、直射日光を遮り、かつ、床からの照り返しを軽減して、心地よい環境を作る考えがある。 【0006】 しかし、植栽する土壌の深さは、建物の積載荷重の制約から、軽量土壌が使われる事が多く、樹木の根を押える力が弱い。また、樹木を植栽した初期には根鉢が球形であり、根が十分に繁茂していない。このため、一般的に風当たりが強く、地震のゆれの大きい建物の屋上やバルコニーでは、樹木が倒れ易い。 【0007】 さらに、根入れの深さの確保を要する背丈が中程度以上の比較的高い樹木(いわゆる中木や高木)を植栽する際は、樹木や土壌などが建物に及ぼす全体的な積載荷重が増加することへの対策、および局所的な集中荷重を支承するための対策が必要である。 【0008】 これに対し、特許文献1には、植栽する土壌の深さが制約される建物の樹木固定構造において、風や地震に抗して植栽樹木を永続的に自立させるために、植栽樹木の根鉢をベルトやベース機材で締結する方法が開示されている。 【0009】 また、特許文献2には、植栽樹木の下に敷設した鋼製アングルと植栽樹木の中間部とをワイヤーで緊結する方法が開示されている。 【0010】 また、特許文献3には、建物とは別体の大型プランターを建物の梁の真上に載置して、そのプランターに植栽する方法が開示されている。 【0011】 【特許文献1】特開2000−23579号公報 【特許文献2】登録実用新案第3022801号公報 【特許文献3】実開平06−058056号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 しかしながら、上記特許文献1〜3に開示された方法では、植栽樹木、結束・固定機材または土壌などの重量物が建物の梁などの骨格に固定されず、且つ構造設計に反映されていない。そのため、載置された重量物が建物へ設計外の局部集中的な荷重を与え、たとえば、建物骨格の変形・ひずみにより建物が損傷するおそれがある。その結果、建物の常時荷重に対する安全性、地震や台風などに対する安全性などが懸念される。 【0013】 また、特許文献1に開示された方法では、根鉢を固定する肩当て部材が土壌中でボルト固定されており、植栽樹木の成長に伴って肩当て部材の位置を定期的に再調整しなければ、根鉢の固定が不十分になったりする可能性があり、樹木の安全な固定状態を維持していく点(長期耐久性)に問題がある。 【0014】 また、特許文献2に開示された方法では、植栽樹木の根鉢を固定していないため、風や地震などにより植栽樹木が倒れるおそれがある。 【0015】 また、特許文献3に開示された方法では、建物に緊結されない大型プランターが風や地震などで横転し、場合によっては植栽樹木と一緒に建物から落下したり、近隣家屋に飛散する、などのおそれがある。 【0016】 そこで本発明は、建物の常時荷重安全性、耐風安全性、地震安全性を高めることができ、植栽した樹木の転倒、建物からの落下及び飛散を防止することができる建物の樹木固定構造を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0017】 (1)上記課題を解決するために本発明に係る建物の樹木固定構造の第一の構成は、建物の梁に立設した柱脚と、該柱脚の上に固定した格子枠と、前記柱脚又は前記格子枠の上に固定した底板と、該底板に支承されかつ該底板の上の土壌に埋設される樹木の根鉢を前記格子枠に固定し得る結束手段と、を有することを特徴とする。 【0018】 (2)また、本発明に係る建物の樹木固定構造の第二の構成は、前記第一の構成の建物の樹木固定構造において、前記結束手段は、第1の結束手段と、第2の結束手段と、を有し、前記第1の結束手段は、前記根鉢に掛け渡して前記根鉢を前記格子枠に固定するベルトと、該ベルトを締めて前記根鉢を前記格子枠に緊結する緊結手段と、を有し、前記第2の結束手段は、前記根鉢に掛け渡して前記根鉢を前記格子枠に固定するベルトと、前記緊結手段が破壊された後にも前記ベルトを締めて前記根鉢を前記格子枠に結束する長期耐久性に優れた結束部材と、からなることを特徴とする。 【0019】 (3)また、本発明に係る建物の樹木固定構造の第三の構成は、前記第一または第二の構成の建物の樹木固定構造において、前記緊結手段は、前記ベルトを巻き上げる回転軸と、前記回転軸の反転を防止する反転防止機構と、を有することを特徴とする。 【0020】 ここで、上記(2)(3)に記載するベルトは、化学繊維などの材料で所定の破断強度が確保され、建物の構成部材の耐用年数と同程度の耐久性能が確保されたものを用いる。 【0021】 また一般にベルトは、帯状の長尺ものであるが、本発明にいうベルトは、根鉢に掛け渡して前記根鉢を前記格子枠に固定することができればよく、帯状の長尺もの以外にも綱(ロープ)状の長尺ものなども含まれる。例えば鋼製ワイヤーなどである。この場合には、第1の結束手段の緊結手段、および第2の結束手段の結束部材は、そのような綱状の長尺ものに対応可能なものを使用する。 【0022】 (4)また、本発明に係る建物の樹木固定構造の第四の構成は、前記第一〜第三のいずれかの構成の建物の樹木固定構造において、前記結束部材の耐用年数は、建物の構成部材の耐用年数と同程度であることを特徴とする。 【0023】 (5)また、本発明に係る建物の樹木固定構造の第五の構成は、前記第一〜第四のいずれかの構成の建物の樹木固定構造において、前記格子枠又は前記柱脚の上に周壁を固定して、前記根鉢や前記土壌などを収納する有底の箱体を設けたことを特徴とする。 【0024】 (6)また、本発明に係る建物の樹木固定構造の構造設計方法の構成は、前記第一〜第五のいずれかに記載の建物の樹木固定構造の構成部材の合計荷重を前記梁にかかる積載荷重とし、地震力は前記積載荷重が地震層せん断力を生むものとし求め、風圧力は、前記樹木の輪郭形状を球状とみなして求め、前記積載荷重、前記地震力、前記風圧力に基づいて、前記第一〜第五のいずれかに記載の建物の樹木固定構造の構造設計を行うことを特徴とする。 【発明の効果】 【0025】 (1)前記第一の構成により、植栽した樹木の転倒、建物からの落下及び飛散を防止することができ、建物の常時荷重安全性、耐風安全性、地震安全性を高めることができる。 【0026】 (2)また、前記第二の構成により、土中における腐食による請求項2に記載の緊結手段の破壊後も長期にわたって、植栽した樹木の転倒、建物からの落下及び飛散を回避できる。すなわち、植栽樹木の成長に伴って根鉢の固定が不十分になることを防止でき、樹木の安全な固定状態を維持していく長期耐久性を高めることができる。 【0027】 (3)また、前記第三の構成により、簡単かつ強固に根鉢を固定することができ、建物が地震や台風などにあったとき植栽した樹木の転倒、建物からの落下または飛散をより確実に防止することができる。 【0028】 (4)また、前記第四の構成により、建物の構成部材の耐用年数と同じ年月の間植栽した樹木の転倒、建物からの落下及び飛散を回避できる。 【0029】 (5)また、前記第五の構成により、樹木の根部の平面的な横広がりを箱体内に限定できるため、樹木の根の占有面積を小さくすることができる。また、時間の経過とともに樹木が成長・繁茂すると、根部が箱体内部に密生して圧密状態となり箱体の側板に挟持されて根鉢が箱体内で回転したり移動することが防止され、樹木がより転倒し難い建物の樹木固定構造が得られる。 【0030】 (6)また、前記建物の樹木固定構造の構造設計方法の構成により、常時荷重安全性、耐風安全性、地震安全性、及び長期耐久性を確保した樹木固定構造を有する建物の構造設計を行うことができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0031】 本発明に係る建物の樹木固定構造および建物の樹木固定構造の構造設計方法の実施形態について、図を用いて説明する。図1は植栽樹木を固定した建物の樹木固定構造Sを示す模式図である。図2は箱体10の平面図である。図3は建物に植栽樹木を固定して根鉢6を結束する構造を示す模式図である。 【0032】 図1に示すように、本実施形態の建物の樹木固定構造Sは、建物100の屋上またはバルコニーに設けられている。樹木固定構造Sは、梁1、柱脚2、箱体10、結束手段8を有している。 【0033】 梁1は、建物100の躯体の、床4の下に位置する梁を用いている。なお、本実施形態の躯体は柱梁を組み、床(屋根)パネル、外壁パネルで覆われる鉄骨軸組構造である。 【0034】 柱脚2は、各梁1の上面にボルト固定して立設している。柱脚2の長さ(高さ)を変えることで樹木固定構造Sの高さを変えることができる。 【0035】 図1、図2に示すように、箱体10は、格子枠3、底面となる底板12、周壁となる第1側板19a、第2側板19bにて、上端を開口した有底の箱形状に形成されている。箱体10は、樹木5の根鉢6、結束手段8および根鉢6を埋設する土壌7などを収納する。 【0036】 格子枠3は、柱脚2の上にボルト固定した四角形の枠部材であり、柱脚2を結ぶ4本の中空棒状の角材にて形成されている。また、格子枠3の四隅の上部には、アイボルト16が固定されている。 【0037】 底板12は、樹木5と土壌7を支える強度を持つ4角形の板材であり、格子枠3内に挿入され、柱脚2の上にボルト固定している。なお、底板12は格子枠3の上にボルト固定してもよい。 【0038】 底板12の上には、保水マット11を敷設し、保水マット11の上に樹木5の根鉢6を固定する。箱体10の底に敷設した保水マット11は保水機能と共に余剰水の排水機能を有し、箱体10に充填された土壌7中の水分を適宜維持する。 【0039】 底板12には、通気・排水孔13が設けられており、さらに箱体10の下に空間9を設けている。通気・排水孔13は、箱体10に充填された土壌7の最下部に位置して、樹木5の根に通気し且つ余剰の潅水を排水する。 【0040】 箱体10の下の空間9は、通気・排水孔13の開口部を空中に保持している。これにより、箱体10の底が建物の床4に密着するよりも、箱体10の底の通気・排水機能が良好に維持され、樹木5の長期的に安定な成長・繁茂が促進される。 【0041】 第1側板19aは、左右の辺を直角に折り曲げた略コ字状に形成された平板である。第2側板19bは、第1側板19aと同じ高さの平板である。第1側板19aと第2側板19bは、下端を格子枠3にボルト固定している。 【0042】 第1側板19aと第2側板19bは、コーナー屈曲部でなく直線辺において突き合わせて連結されている。このように、コーナー屈曲部を避けて連結することにより、突き合わせ部の連結構造が簡単になるだけでなく、平板状の第2側板19bの長さ(横幅)を長短各種取り揃えて第1側板19aと組合わせることにより、箱体10の容積を増減させたり、平面形状を正方形や矩形など任意に選択できる。 【0043】 結束手段8は、底板12(保水マット11)上に支承した状態で土壌7に埋設した樹木5の根鉢6を格子枠3に固定している。図3に示すように、結束手段8は、第1の結束手段8a、第2の結束手段8bを有している。 【0044】 第1の結束手段8aは、根鉢6に掛け渡して根鉢6を格子枠3に固定する引き上げベルト20と、引き上げベルト20を締めて根鉢6を格子枠3に緊結する緊結手段8cと、を有している。緊結手段8cとしてベルトウインチ15が使われる。 【0045】 図4はベルトウインチ15を示す図である。図4に示すように、ベルトウインチ15は、環状部15a、回転軸15b、反転防止機構(歯車15c、ストッパ15d)を有している。環状部15aには、樹木5の幹に巻回する幹巻ベルト17が通されている。回転軸15bには、一端をベルトウインチ15に固定してアイボルト16を通した引き上げベルト20の他端が巻きつけられている。 【0046】 回転軸15bをレンチで回転することで引き上げベルト20を巻き取り、根鉢6を締め付ける。この時、歯車15cは、バネにより歯車15c側に付勢されたストッパ15dを押し上げて回転するようになっている。レンチを外した状態で、歯車15cは、ストッパ15dと噛み合って締め付け方向と逆方向には回転しないようになっており、根鉢6を締め付けた状態を維持できる。 【0047】 このように、ベルトウインチ15は、根鉢6を格子枠3に緊結することにより、樹木5の転倒を防止でき、根鉢6を含む樹木5が底板12の支承部から飛散することを防止し得る。また、ベルトウインチ15により引き上げベルト20の張り具合(根鉢6の固定強度)を簡単に再調整することができる。 【0048】 第2の結束手段8bは、根鉢6に掛け渡して根鉢6を格子枠3に固定する引き上げベルト20と、緊結手段8cが破壊された後にも引き上げベルト20を締めて根鉢6を格子枠3に結束する長期耐久性に優れた結束部材8dとしての結束金具18と、を有している。引き上げベルト20aの一端は幹巻ベルト17に結ばれており、引き上げベルト20bの一端はアイボルト16に結ばれている。 【0049】 なお、上記ベルトは、化学繊維などの材料で所定の破断強度が確保され、建物の構成部材の耐用年数と同程度の耐久性能が確保されたものを用いる。また一般にベルトは、帯状の長尺ものであるが、本発明にいうベルトは、根鉢に掛け渡して前記根鉢を前記格子枠に固定することができればよく、帯状の長尺もの以外にも綱(ロープ)状の長尺ものなども含まれる。例えば鋼製ワイヤーなどである。この場合には、第1の結束手段の緊結手段、および第2の結束手段の結束部材は、そのような綱状の長尺ものに対応可能なものを使用する。 【0050】 図5(a)、図5(b)は結束金具18の斜視図、断面図である。図5に示すように、結束金具18は2枚の平板18a、18bからなり、各平板18a、18bには、スリット18a1、18a2、18b1、18b2が設けられている。 【0051】 平板18a、18bを重ねた状態で、幹巻ベルト17に結んだ引き上げベルト20aの先端をスリット18a1、18b1を通す。そして、平板18bの外側を通し、最初にスリット18a1に通した方向と逆方向からスリット18a1に通す。同様に、アイボルト16に結んだ引き上げベルト20bの先端をスリット18a2、18b2を通して再度スリット18b1に通す。最後に引き上げベルト20の先端を引っ張り、図5(b)に示すように、引き上げベルト20を締めて根鉢6をしっかり固定する。 【0052】 (建物への樹木固定方法) 次に、建物への樹木固定方法について説明する。図6は建物への樹木固定方法の説明図である。図6(a)に示すように、まず、建物100の床4下においてから突き出した梁1のフランジに柱脚2をボルト固定する。 【0053】 柱脚2を設置した後、箱体10の下の床(ベランダ・バルコニーまたは屋根面)4に防水シート4aなどの防水部材を2重貼りの補強して、バクテリア、カビ、または苔などによる防水部材の長期的な損傷・劣化による水漏れ等を予防する。これにより、人手が入りにくい箱体10の下の狭い空間での保守作業が回避でき、長期耐久性に優れた建物の樹木固定構造が得られる。 【0054】 次に、図6(b)に示すように、柱脚2の上に格子枠3をボルト固定し、格子枠3内に底板12を挿入して柱脚2の上にボルト固定する。底板12の上に保水マット11を載置する。図6(c)に示すように、格子枠3に第1側板19a、第2側板19bを取り付けて箱体10を組み立て、箱体10内の四隅にアイボルト16を固定する。 【0055】 第1の結束手段8a(引き上げベルト20)の一端をベルトウインチ15に固定し、引き上げベルト20の他端をアイボルト16を通して、回転軸15bに固定する。また、第2の結束手段8b(引き上げベルト20a)の一端をアイボルト16に固定し、引き上げベルト20aの他端を結束金具18に取り付ける。 【0056】 そして、根鉢6を箱体10内に入れ、根鉢6に被せるようにして、土壌7を箱体10内に充填する。幹巻ベルト17を環状部15aを通すようにして、箱体10に入れた樹木5の幹に巻回する。根鉢6の肩部と引き上げベルト20との間に保護パット14を当てて根鉢6を保護したうえでベルトウインチ15で引き上げベルト20を巻き上げ、根鉢6を格子枠3に緊結させて樹木5の転倒を防止する。 【0057】 さらに、第2の結束手段8b(引き上げベルト20b)の他端を幹巻ベルト17に接続して、建物の樹木固定を完了する。 【0058】 (耐用年数) ベルトウインチ15は、鉄製であり、土中における腐食を受ける状態での耐用年数は2〜5年である。 【0059】 結束金具18、箱体10は、土中における腐食の経年劣化を受け難い長期耐久性に優れたステンレス等で形成されている。結束金具18、箱体10の土中における腐食を受ける状態での耐用年数は、約30年である。 【0060】 幹巻ベルト17、引き上げベルト20は、腐食の経年劣化を受け難い長期耐久性に優れたポリエステル等で形成されている。幹巻ベルト17、引き上げベルト20の土中における腐食を受ける状態での耐用年数は約30年である。 【0061】 樹木固定構造Sを形成して2〜5年経過後、ベルトウインチ15が土壌7や土壌7中の水分の作用で腐食を受けることにより、第1の結束手段8aの張力は徐々に低減し、長期的には根鉢6を格子枠3に緊結する機能を失う。ここで、長期耐久性の観点からは、耐用年数の長いベルトウインチ15を有するものを使用するのが理想的であるが、ベルトウインチ15は複雑な形状であるため、生産コスト等の観点からそのようなベルトウインチ15は生産されていない。 【0062】 そこで、結束金具18には、緊結する機能がないものの、腐食や経年劣化を受け難い長期耐久性に優れた材料(例えば、ステンレス鋼)で製作したものを使用する。 【0063】 これにより、ベルトウインチ15が根鉢6を緊結する機能を失った場合にも、結束金具18により根鉢6をアイボルト16に結束しておくことができる。従って、ベルトウインチ15により樹木5の転倒は防止できなくとも、結束金具18により長期間(少なくとも、建物が維持管理されている期間)、樹木5が根鉢ごと建物から飛び出して、地震や台風などにあっても、建物から落下したり、近隣家屋などに飛散することを避けることができる。 【0064】 また、根が繁茂することにより、第1の結束手段8aの張力が徐々に低減しても、樹木5は倒れ難くなる。よって、植栽樹木の成長に伴って根鉢の固定が不十分になることを防止でき、樹木の安全な固定状態を維持していく長期耐久性を高めることができる。 【0065】 建物の樹木固定構造の常時荷重安全性、耐風安全性、地震安全性、及び長期耐久性を確保するために、結束部材8dは、建物のいずれかの構成部材の耐用年数に合わせて「長期耐久性に優れた」ものを選定する。 【0066】 すなわちここで言う、「長期耐久性に優れた」とは、結束金具の耐用年数が建物の構成部材の耐用年数と同程度か、それよりも長いことをいう。「耐用年数」とは、部材の設計や生産段階において予定された耐用年数であり、一般的には、劣化促進試験などでその寿命を予測したものである。各部材は、劣化診断の促進試験等により耐用年数を予測した部材である。 【0067】 そして劣化診断の促進試験は、建物の基本躯体の耐候性試験、耐異物接触試験、環境負荷試験などをいう。例えば、鉄骨部材は錆びの進行を確認し、コンクリートは、鉄筋の中性化の進行状態を所定のコア抜きサンプルにより確認する。建物の外装である、外壁吹き付け材、屋根葺き材、または、防水シートについては、耐候性試験として表面変化、収縮量をメタルハライド、サンシャインウェザー、キセノンウェザーなどの試験機やアリゾナ集光機暴露などを用いて行われる。 【0068】 なお、促進試験の他に、コンピュータシミュレーションによって部材の劣化の進行具合を予測することも可能である。 【0069】 例えば、建物の基本躯体の構成部材である鉄骨の柱材や梁材などは、60年の耐用年数であるものが選定されており、結束部材8dの耐用年数は、基本躯体の構成部材である鉄骨の柱材や梁材と同程度とするのが好ましい。 【0070】 また、そのような長期間でなくともメンテナンスプログラムにより定期的に部材の交換や補修が計画された建物(特開2001年159190号公報参照)であれば、建物の外装の構成部材(防水シート、吹き付け材)は、15年、20年、または30年などの耐用年数の部材が選定されているので、結束部材の耐用年数を外装の構成部材と同程度として、外装と一緒に点検するのに便宜である。 【0071】 このように、結束部材8dの耐用年数を建物の耐用年数以上とすることにより、少なくとも建物が使用されている間(建物が維持管理されている期間)は、地震や台風のときにも樹木5が根鉢ごと建物から飛び出して、建物から落下したり、近隣家屋などに飛散することを避けることができる。 【0072】 (建物の樹木固定構造の構造設計方法) 次に、建物の樹木固定構造の構造設計方法について述べる。図7(a)〜図7(f)は一般的な樹木形態を枝葉の輪郭で分類した模式図である。図8は植栽する樹木の形態の代表モデルを示す模式図である。図9は建物の樹木固定構造を構造設計をする球形モデルの模式図である。 【0073】 樹木形態の代表的な形状は、図7(a)の円錐状、図7(b)の逆円錐状、図7(c)の円柱状、図7(d)の半球状、図7(e)の逆半球状、図7(f)の球状などとみなすことができる。これらの中から、まず建物躯体に加わる風圧・重量などが少ない負担で広い日陰(木陰)が効率的に作られる樹木形態を検討するとき、 屋上、ベランダまたはバルコニーに植栽するのに望ましい樹木形態としては、屋上、ベランダまたはバルコニーで憩う人が樹木の下に近づいて日陰(木陰)に入りやすい樹木形態が求められる。 【0074】 具体的には、図7(b)、図7(d)、図7(f)に示すような枝葉の輪郭の底部が水平でないものが好ましい。従って、逆円錐状、逆半球状、球状を屋上、ベランダまたはバルコニーの植栽に適した樹木形態として選定する。 【0075】 次に、樹木の形態の代表的な構造計算のためのモデル化について述べる。 【0076】 樹木の形態は、図8に示すように、樹木の幹部高さH1が同一長さとすれば、図8(a)の逆円錐状も図8(b)の逆半球状も実際は上部は水平であることはなく、球状に盛り上がっているので球状と考えることができる。従って、屋上、ベランダまたはバルコニーの植栽として適した樹木は球状モデルで代表的に表現できる。 【0077】 ここでは、樹木として、図9に示すように枝葉の輪郭が球状の中木を選定した。中木の屋上等への植栽に適した寸法は、樹木の根部高さHp:600mm程度、樹木の幹部高さH1:1000mm程度、枝葉の輪郭の底部高さHp+H1:1600mm程度、必要な枝葉の輪郭の最大直径D:2000mm程度である。枝葉の高さH2は、最大直径Dに等しいとみなして、樹木の高さH1+H2は3000mm程度である。なお、Hsは、50〜200mm程度である。 【0078】 中木が、柱脚2を介して建物の梁1に伝達される荷重および外力は、積載荷重W、地震力Q、風圧力Pの3種類である。 【0079】 積載荷重Wは、柱脚2、土壌7、樹木5、結束手段8、箱体10などの合計荷重であり、鉛直方向に梁1へ伝達される。 【0080】 地震力Qは、樹木5が剛体とみなされて格子枠3に緊結されていることから、格子枠3の上端で積載荷重Wが地震層せん断力を生む。 【0081】 風圧力Pは、下記のモデルを設定して建築基準法、及び建築基準法施行令等に準拠して構造設計する。 【0082】 速度圧q(N/m2)、風力係数Cf、樹木の受圧面積A(m2)とすると、風圧力P(N)は、次の式(1)となる P=q・Cf・A (1) 速度圧q(N/m2)はq=0.6EV02(2)である。Eは速度圧の高さ方向の分布を示す係数、V0はその地方における基準風速であり、それぞれ 大臣が算出する方法及び数値を規定するものである。 【0083】 樹木の受圧面積Aは、樹木5は直径Dの輪郭形状が球状とみなして次の式(3)となるA=π(D/2)2 (3) 【0084】 なお、式(1)の風力係数Cfの値は、風洞実験や大臣が定める数値によって決定され、本例において、風力係数Cfの値を導き出すのに、図9に示されたHc(地盤面から樹木の中心までの距離)の値およびH2(=D:樹木5の直径)の値が密接にかかわる係数である。すなわち、風力係数Cfの値は、HcおよびH2を使用して導き出す数値である(建築基準法施行令第87条および告示平12年建告第1454号参照)。 【0085】 このような建物の樹木固定構造の構造設計方法により、常時荷重安全性、耐風安全性、地震安全性、及び長期耐久性を確保した樹木固定構造を有する建物の構造設計を行うことができる。 【0086】 (効果) 本実施形態によれば、植栽樹木5、土壌7、柱脚2、箱体10などの重量物が建物100の梁1などの骨格に固定され、且つ構造設計に反映される。そのため、載置された重量物の構造的影響が建物100に当初から想定されて設計されるので、局部集中的な荷重を与えることによる建物骨格の変形・ひずみ、損傷等を防止できる。その結果、建物の常時荷重安全性、地震安全性を高めることができる。 【0087】 また、結束手段8により、建物の耐風安全性を高めることができ、植栽した樹木の転倒、建物からの落下及び飛散を防止することができる。 【0088】 また、箱体10を設けたことにより、樹木5の根部の平面的な横広がりを箱体内に限定できるため、樹木5の根部の占有面積を小さくできる。また、時間の経過とともに樹木5が成長・繁茂すると、根が箱体内部に密生して圧密状態となり箱体10の側板に挟持されて根鉢6が箱体内で回転したり移動することが防止され、樹木5がより転倒し難い建物の樹木固定構造が得られる。 【0089】 (他の実施形態:箱体10なしの構造) なお、図10に示すように、箱体10(周壁となる第1側板19a、第2側板19b)を省略して、格子枠3、底板12のみ設け、保水マット11の上に根鉢6を載せて土壌7を盛った構成としてもよい。 【産業上の利用可能性】 【0090】 本発明の建物の樹木固定構造および建物の樹木固定構造の構造設計方法は、樹木を植栽して建物の屋上またはバルコニーを緑化する分野で好適に利用できる。 【図面の簡単な説明】 【0091】 【図1】植栽樹木を固定した建物の樹木固定構造を示す模式図である。 【図2】箱体の平面図である。 【図3】建物に植栽樹木を固定して根鉢を結束する構造を示す模式図である。 【図4】(a)緊結手段の平面図である。(b)緊結手段の断面図である。 【図5】(a)結束部材の斜視図である。(b)結束部材の断面図である。 【図6】建物の樹木固定方法の説明図である。 【図7】一般的な樹木形態を枝葉の輪郭で分類した模式図である。 【図8】植栽する樹木の形態の代表モデルを示す模式図である。 【図9】建物の樹木固定構造を構造設計をする球形モデルの模式図である。 【図10】他の実施形態に係る植栽樹木を固定した建物の樹木固定構造を示す模式図である。 【符号の説明】 【0092】 GL …地盤面 P …風圧力 Q …地震力 S …樹木固定構造 W …積載荷重 1 …梁 2 …柱脚 3 …格子枠 4 …床(ベランダ、バルコニーまたは屋根面) 4a…防水シート5 …樹木 6 …根鉢 7 …土壌 8 …結束手段 8a …第1の結束手段 8b …第2の結束手段 8c …緊結手段 8d …結束部材 9 …空間 10 …箱体 11 …保水マット 12 …底板 13 …通気・排水孔 15 …ベルトウインチ 16 …アイボルト 17 …幹巻ベルト 18 …結束金具 19a …第1側板 19b …第2側板 20 …引き上げベルト 100 …建物
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| 【出願人】 |
【識別番号】303046244 【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年7月11日(2006.7.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100095315 【弁理士】 【氏名又は名称】中川 裕幸
【識別番号】100134717 【弁理士】 【氏名又は名称】大石 裕司
【識別番号】100142158 【弁理士】 【氏名又は名称】岩田 啓
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| 【公開番号】 |
特開2008−17722(P2008−17722A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月31日(2008.1.31) |
| 【出願番号】 |
特願2006−190006(P2006−190006) |
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