| 【発明の名称】 |
カキ苗の周年生産方法及び苗 |
| 【発明者】 |
【氏名】脇坂 勝
【氏名】杉村 輝彦
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| 【要約】 |
【課題】従来の接木では、露地に播種後、夏・秋期に芽接ぎし翌年に新梢発生させるか、1年間栽培し春期に休眠枝を穂木として切接ぎすることにより生産される。しかし、上記技術では播種から接木まで2年にまたがり、穂木を使用する場合も切接ぎは休眠枝しか使用できないため穂木の採取時期が冬季に限定され、屋外で作業する必要があった。
【構成】セルトレー、ポット等で栽培された培土を有する播種ないし培養した台木の本体を使用し、子葉上部もしくは下部で切断し、切断後縦に切り込みを入れ当年枝、休眠枝もしくは冷蔵処理を行った当年枝を形成層が合うように差し込みテーピングを行う接木方法により生産した接木苗を接木直後から給水装置および排水装置等を備えた接木部より下部もしくは底面からの給水方法により管理を行い、癒合に成功した接木苗に至るまで育成を行う。前記給水方法の上部には遮光設備、雨よけ保温設備を設置する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カキ台木にカキの当年枝または休眠枝を穂木として年間を通して接木し、その後接木苗を育成することを特徴とするカキ苗の周年生産方法。 【請求項2】 前記カキ苗は根域制限下のカキ台木を使用することを特徴とする請求項1に記載のカキ苗の周年生産方法。 【請求項3】 前記カキの当年枝を冷蔵処理し使用することを特徴とする請求項1または2に記載のカキ苗の周年生産方法。 【請求項4】 前記冷蔵処理は5℃以上10℃以下で30日以上100日以下で行うことを特徴とする請求項3記載のカキ穂木の生産方法。 【請求項5】 請求項1、2、3または4記載のカキの接木苗を接木部より下部もしくは底面からの給水を行い育成することを特徴とするカキ苗の周年生産方法。 【請求項6】 請求項1、2、3、4または5のいずれかに記載の方法により得られたカキ苗。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、ポット・セルトレイ等で育成したカキの台木を使用し、常温もしくは温度管理下で年間を通して接木が可能で、接木部より下部もしくは底面からの給水で給水を行う管理下でその後の接木苗の育成を可能とし、苗を周年供給可能な農業分野に有用な育苗と接木方法及び接木に用いる休眠枝の保存が難しく当年枝が接木しにくい9月以降に、当年枝を冷蔵処理後に使用する穂木の状態に関する。 【背景技術】 【0002】 従来のカキの接木に用いる台木及び穂木の形状は、露地に春(3月頃)播種し、休眠に入る8月から9月に芽接ぎする、もしくは1年間育成後の翌年3月〜5月に、休眠枝を穂木として割接ぎすることにより生産されたものである。 【0003】 しかし、従来の方法では苗木生産に2年かかること、接木時期が3〜5月か8〜9月に限定されていること、また切接ぎの一種である割接ぎを行う場合、穂木が休眠枝に限定されており、確保する時期が12月〜3月の冬季〜早春に限られていること等の問題点がある。 【0004】 カンキツ類では幼苗における接木方法について、特開2001−275486カンキツ類の幼実生台木への幼梢接木の方法が記載されている。しかしながら、この方法は自発休眠を伴わない常緑果樹であるカンキツに特化しており、種子を残した幼実生に硬化していない枝を掘り上げ後接木している。 【0005】 しかし、自発休眠を行うカキ等落葉果樹の場合、従来の方法では接木時期が限定され、流通等には一度掘り上げなければならず、苗の傷みもあって活着が悪い等の問題がある。 【0006】 接木の活着方法及びその装置については、特開平7−250565接木の活着方法及びその装置の方法が記載されている。しかしながら、この方法では培土を有しない台木によって活着促進装置に入れる必要があり、その後もう一度培土に移植しなおさなければならない問題がある。 【0007】 また、苗の接木方法については、特許2561755苗の接ぎ木方法に記載されている。しかしながら、この方法では接木部に保持具を使用すること、マメガキ台木を用いた場合、挿し木したものを使用しているが、実際栽培ではほとんど行われていないこと、接木後養生させるため温度、湿度、光量等を設定した施設内に導入する必要があり、上記特許を含め、一般に養生時における接木苗等の湿度については70〜100%の高湿度下で管理することが前提とされている問題がある。 【0008】 カキの接木方法については、従来の割接ぎ方法の他、芽接ぎを行う方法が農業および園芸第60巻第3号(1985年)カキの秋接に関する研究で発表されているが、これについてもマメガキ実生を1年以上栽培したものを前提としており、台木の育成期間が長く、また接木期間が秋に限定される問題がある。 【0009】 以上に加えて、一般にカキの接木苗は移植及びその後の管理が難しいという従来の観点から、ポット・セルトレイ等で生育させて台木生産を短期間に行い、そのまま培土の付いた状態で接木、管理する方法は検討されていない。その結果、地植えで生産して販売時に掘り上げるため、根圏を十分確保できない状態で提供されている。 【0010】 【特許文献1】特開2001−275486 【特許文献2】特開平7−250565 【特許文献3】特許2561755 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 そこでこの発明は、播種もしくは組織培養等で増殖後から根域制限下のポット・セルトレイ等で管理し、播種もしくは組織培養等で増殖後台木が接木可能な太さになればその都度接木を行うことができ、しかも使用する穂木が限定されず、培土を有した状態で接木及びその後の管理が可能なカキ接木苗の周年生産方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明は、第1にカキ台木にカキの当年枝または休眠枝を穂木として年間を通して接木し、その後接木苗を育成することを特徴とするカキ苗の周年生産方法、第2に前記カキ苗は根域制限下のカキ台木を使用することを特徴とする請求項1に記載のカキ苗の周年生産方法、第3に前記カキの当年枝を冷蔵処理し使用することを特徴とする請求項1または2に記載のカキ苗の周年生産方法、第4に前記冷蔵処理は5℃以上10℃以下で30日以上100日以下で行うことを特徴とする請求項3記載のカキ穂木の生産方法、第5に請求項1、2、3または4記載のカキの接木苗を接木部より下部もしくは底面からの給水を行い育成することを特徴とするカキ苗の周年生産方法、第6に請求項1、2、3、4または5のいずれかに記載の方法により得られたカキ苗を提供するものである。 【発明の効果】 【0013】 請求項1〜5に係る本発明の方法によれば、施設条件下で短期間に年間を通して接木苗を生産、販売することができる。 特に請求項1〜5に係る本発明の方法によれば、従来では2年以上かかった苗生産が1年未満で完成し、小型化するため低コストで集約的に生産でき、輸送等のコストも削減することができる。その上、施設条件で管理するため、露地での接木や掘り上げ等の作業も必要なく、作業性も大幅に向上することができる上、年間を通して販売出荷が可能となる。 【0014】 請求項6に係る本発明によれば、低コストで小型化し、しかも根圏を十分に確保した苗が提供される。 特に請求項6に係る本発明によれば、従来の掘り上げした接木苗に比べて根圏が十分に確保され、培土を有した状態で低コストで小型化された状態の苗が提供される。 【0015】 本発明においては台木材料が早く育成でき、穂木も採取後速やかに使用できることから、新品種や優良系統の速やかな適応性試験や増殖が可能となる。このため、農業での育種作業の効率化や新品種の速やかな普及、さらに小型化されているため従来では難しかった環境制御下での試験実施ができる等の効果も期待できる。 【0016】 また、苗が小型化し根圏を十分に有しているため、従来の接木苗よりも販売時や購入後の管理が簡単であることから、本来の果樹栽培の用途に加え鉢植え等観葉植物的な利用等も考えられ、従来では考えられなかった様々な市場が開拓できる効果も期待できる。 従って、本発明は根圏及び培土を有しているために管理作業が簡単で、定植も簡単な苗として農業分野をはじめとして各種分野で利用することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 次に、本発明の基本方法について図1で示す。 カキ苗の周年生産方法では、セルトレー、ポット等で栽培された培土を有する播種ないし培養した台木の本体1を使用し、子葉上部もしくは下部2aで切断し、切断後カミソリ等で縦に切り込み2bを入れ当年枝3a、休眠枝3bもしくは冷蔵処理を行った当年枝3cを形成層が合うように差し込み、ビニールテープ、パラフィンフィルム等でテーピング2cを行う接木方法2により生産した接木苗4を用い、接木直後から給水装置5aおよび排水装置5b等を備えた接木部より下部もしくは底面からの給水方法5により管理を行い、癒合に成功した接木苗4aに至るまで育成を行う。前記給水方法5の上部には遮光設備6、雨よけ保温設備7を設置したものである。 【0018】 次に、本発明について詳細に説明する。まず、請求項1記載の本発明においては、請求項2に記載の台木を使用するが、その生産はポット・セルトレイ等に播種、育成もしくは組織培養等で増殖後ポット等に移植し、苗の流通まで全ての期間を根域制限下で管理を行うことを特徴とするものである。 【0019】 慣行の台木生産の場合、芽接ぎでは播種後6ヶ月以降の夏・秋期に接木可能となるが、一部生育の良い台木に限られ、接木後も翌年以降しか新梢の伸長が得られず、また、切接ぎや割接ぎでは播種から接木まで1年以上要し、管理作業やコストの面から問題が大きい。その場合、請求項2記載のカキ台木を上記条件で生産すると、発芽後から一定以上太くなれば割接ぎで接木可能な苗が生産可能となり、接ぎ木後の新梢も随時発生させることが可能である。 【0020】 台木の培土は自作する場合、バーミキュライト:ピートモスの体積比が1:1の混合物を用いると生育がよく望ましい。 【0021】 接木に用いる台木の直径は、2bのようにカミソリ等で切り込みを入れることが可能な太さであれば実施できる。実際作業上、台木は接木部の直径が2mm程度以上あれば問題はなく、請求項2記載のカキ台木を用いることができる。 【0022】 請求項1記載の本発明においては、請求項2記載のカキ台木に当年枝3aもしくは冬季に採取した休眠枝3bを穂木として使用するが、その直径は台木の太さと同等以下であるのが望ましい。 【0023】 接木の方法については、基本的には切接ぎもしくは割接ぎが望ましいが、形成層部分を密着させることができればどのような方法でも可能である。 接木部位については子葉上部もしくは下部2aで可能であるが、生育期間が短い台木を用いる場合は子葉や本葉を残して接木すると活着後穂木からの新梢の発生がよく、処理としてはこの方が望ましい。 【0024】 なお、接木処理を行った接木部位は癒合を促進するためにビニールテープ、パラフィンフィルム等でテーピング2c及びロウ付け等の水分蒸散を防ぐような方法を行う。また、穂木部は過度の乾燥を防ぐために芽や上部切り口部分にロウ付けやパラフィンフィルムによるコーティング等の処理を行うことが望ましい。 【0025】 当年枝の穂木については、淡い黄緑色で柔らかい状態からやや硬化が始まったもの以降のものを使用し、葉は一部を切断もしくは削除することが望ましい。 【0026】 請求項1記載の本発明で使用する当年枝の場合、9月以降の発芽や癒合が困難になることがある。この場合、保存状態が良好であれば前年12月から3月の剪定時に採取した休眠枝を使用してもよいが、休眠枝についても保存期間が長いと発芽が困難になることが多い。その場合、請求項3記載の冷蔵処理を行った当年枝3cを使用することが好ましい。 【0027】 請求項3記載の本発明は、新梢の硬化が始まったものからほぼ硬化した状態から新梢伸長が停止する時期までの間に採取した穂木を使用する。しかし、接木をすると、癒合するものの、新梢が発芽伸長しない場合や癒合率そのものがやや低くなる場合がある。接木後すぐに新梢の発生が必要な場合や癒合率を上げたい場合、請求項4記載の当年枝を使用するとよい。 【0028】 請求項4記載の本発明の冷蔵温度は5〜10℃で30日〜100日間冷蔵処理を行うことが好ましい。採取する枝については充実し硬化が進んだものが望ましい。 冷蔵時はポリ袋等に入れ密閉保存することが望ましい。また、使用直前に袋から取り出し、速やかに接木処理を行うことが好ましい。 【0029】 請求項1、2、3または4記載の本発明実施後、接合部における導管部からの通水前に、従来の接木の養生で行われているミスト等の高湿度状態や上部からのかん水等により水分が穂木の芽に供給された場合、カキの穂木等木本性で癒合に時間がかかるものでは、癒合前に発芽、伸長が促進されカルス形成等ができず、発芽、伸長後必要な水分が確保できなくなる結果、枯死する問題が発生する。 【0030】 請求項5記載の本発明は、上記のような穂木の芽の不用意な発芽を押さえ、接合部における導管部からの通水で癒合を促進し活着率を上げるために、降雨等の影響がない施設下で接木後すぐに接木部より下部(底面)で給水し育成を行うことを特徴とするものである。 【0031】 施設については、図1の5の他に例として図2に示すとおりポット、セルトレイ等の下部もしくは接木部より下部から給水されるものであればよい。 光が強い場合や高温下での処理の場合、寒冷紗等の遮光資材で被覆する遮光設備6を設置することが望ましい。また、グロースチェンバーや恒温庫等の施設で行う場合も、図3に示すとおりバット等を受け皿にし底面部から給水、もしくは接木部より下部からコップ、洗浄瓶等で給水等の方法をとることが望ましい。 【0032】 最終的に施設から搬出する場合は、台木と穂木の癒合が完成していることを確認後に行うことが望ましい。 【実施例】 【0033】 以下において、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0034】 実施例1(6、7、8月における休眠枝及び当年枝での接木方法) 穂木はカキ「富有」、台木は奈良県で主に用いられているカキ「法蓮坊」実生または、和歌山県で主に用いられているカキ「アオソ」(「青曽」)実生を2月にセルトレイに播種してその後ポットに移植し育成させたものを用いた。供試した各台木の個体数、茎長、葉数、茎径を表中に示す。 【0035】 【表1】
【0036】 「法蓮坊」は6、7、8月、「アオソ」は8月に地際部より1〜2cm上部を水平に切断し、切断面の中心をカミソリで縦に切り込みを入れた。穂木は形成層を1cm程度露出するように縦に削ぐように切り込みをいれ、癒合面を密着させてビニールテープで固定した後パラフィンで穂木と接木部を密栓した割接ぎを行った。接木後は底面給水の雨よけ遮光下、常温、自然通風状態で管理した。 【0037】 調査は発芽期、展葉期に達した個体数とその後の新梢伸長量並びに枯死個体は枯死確認時、その他は11月に癒合状態を確認し、接合部におけるカルス形成による癒合部の割合が50%以上のものを接ぎ木成功個体とした。 【0038】 表2は「法蓮坊」実生及び「アオソ」実生の両品種で、育成4〜6ヶ月後の苗を用いて6、7、8月に接木すると、休眠枝では60〜80%の高い確率で、また、当年枝でも接木が可能で、その場合は時期が遅いほど癒合率が高いことを示している。 【0039】 【表2】
実施例2(8、9、10月における冷蔵処理した当年枝を穂木として用いた接木方法) 7月22日に採取し8℃で冷蔵処理を33〜94日間行った穂木と接木当日採取の穂木を使用し、実施例1と同様の接木を行った。接木後8月24日、9月16日処理は常温下、10月24日処理のものは23℃定温下で、接木後はどちらも底面給水で管理を行った。なお、恒温庫内では底面給水のみで加湿は行わなかった。 調査は伸長停止期までに新梢を発生した個体率及び癒合率について行った。 なお、7月採取時の接木では癒合率は22.0%であった。 【0040】 実施例3(当年枝の冷蔵処理による癒合、新梢発生への効果) 表3は7、8、9月は常温下で、10月は加温した施設条件で接木が可能であること、7月採取の穂木を33日、55日、94日間冷蔵処理を行うと7月の接木と比べ癒合率が高まること、また、9月、10月に接木を行った場合、当日枝を採取し接木したものに比べ、冷蔵処理をしたものは新梢を発生する個体が確保でき、癒合率も向上することを示している。 【0041】 【表3】
【図面の簡単な説明】 【0042】 【図1】カキ苗の周年生産方法における一実施形態を示す説明図である。 【図2】接木部より下部もしくは底面からの給水方法を示す斜視図である。 【図3】グロースチェンバーや恒温庫等の施設で行う場合での給水方法の一実施形態を示す斜視図である。 【符号の説明】 【0043】 1 セルトレー、ポット等で栽培された培土を有する播種ないし培養した台木の本体 2 接木方法 3 当年枝、休眠枝もしくは冷蔵処理を行った当年枝 4 接木苗 5 接木部より下部もしくは底面からの給水方法 6 遮光設備 7 雨よけ保温設備
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| 【出願人】 |
【識別番号】000225142 【氏名又は名称】奈良県
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| 【出願日】 |
平成18年6月22日(2006.6.22) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2008−63(P2008−63A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月10日(2008.1.10) |
| 【出願番号】 |
特願2006−172268(P2006−172268) |
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