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【発明の名称】 刈払機
【発明者】 【氏名】松本 敏生

【要約】 【課題】エンジンから操作棹に伝達される振動に抗して接続状態を強固に維持でき、更に前記振動が操作棹に伝達されることを抑制又は防止する接続分離構造を有する刈払機を提供する。

【解決手段】接続分離構造は、差込コネクタ1の外周面に周溝15を設け、筒状ソケット2の外周面に前記筒状ソケット2の突出方向に付勢された筒状スライダ3を装着し、筒状ソケット2の内周面から一部が突出する係合ボール24を前記筒状ソケット2及び筒状スライダ3の間に介装した着脱手段を構成する刈払機において、筒状ソケット2はコネクタ用コイルバネ21を内蔵してなり、前記筒状ソケット2に差し込んで係合ボール24を周溝15に係合させた差込コネクタ1を前記コネクタ用コイルバネ21により押し、前記係合ボール24を位置拘束させる刈払機である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に回転刃を取り付けた操作棹とエンジンとを接続分離自在にした刈払機であって、
動力伝達軸を内蔵する操作棹の差込コネクタを、エンジンの動力出力軸を内蔵する筒状ソケットに差し込む接続分離構造を有してなり、接続分離構造は、差込コネクタの外周面に周溝を設け、筒状ソケットの外周面に前記筒状ソケットの突出方向に付勢された筒状スライダを装着し、筒状ソケットの内周面から一部が突出する係合ボールを前記筒状ソケット及び筒状スライダの間に介装した着脱手段を構成する刈払機において、筒状ソケットはコイルバネを内蔵してなり、前記筒状ソケットに差し込んで係合ボールを周溝に係合させた差込コネクタを前記コイルバネにより押し、前記係合ボールを位置拘束させることを特徴とする刈払機。
【請求項2】
差込コネクタは外周面に環状押圧フランジを設けて、筒状ソケットに内蔵したコイルバネを前記環状フランジに押し当てる請求項1記載の刈払機。
【請求項3】
差込コネクタは外周面にコネクタ構成パイプを装着して、コネクタ構成パイプは周溝を設けた環状中間フランジと環状押圧フランジとを設け、前記環状中間フランジと環状押圧フランジとの間でコネクタ構成パイプの外周面に環状ダンパを装着する請求項2記載の刈払機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に回転刃を取り付けた操作棹とエンジンとを接続分離自在にした刈払機に関する。
【背景技術】
【0002】
簡易な刈払機は、エンジンを利用者が背負い、動力伝達軸を内蔵する操作棹の先端に回転刃を取り付けて、前記操作棹をエンジンにフレキシブルシャフトを介して間接的に接続した構成(いわゆる背負い式刈払機)と、動力伝達軸を内蔵する操作棹の先端に回転刃を取り付け、後端にエンジンを直接接続し、前記操作棹を肩掛ベルトにより利用者の肩に吊り下げる構成(いわゆる肩掛け式刈払機)とに大別される。両者は、それぞれ操作棹にループハンドル、ツーグリップハンドル又は両手ハンドルのいずれかを備え、操作棹又は各ハンドルのグリップにスロットル(例えばスロットルレバー)が設けられる。利用者は、前記各ハンドルを持って操作棹の上下又は左右の姿勢を調整し、スロットルの操作により回転刃の回転及び停止を制御する。
【0003】
背負い式刈払機は、操作棹とエンジンとにフレキシブルシャフトを接続分離自在とし、また肩掛け式刈払機は操作棹とエンジンとを接続分離自在として、それぞれ操作棹、エンジン、そしてフレキシブルシャフトとを分離することにより、梱包、保管又は搬送に際し、必要な収納空間を小さくできる。ここで、背負い式刈払機の場合、フレキシブルシャフトが緩衝部位となり、エンジンから操作棹に振動が伝達されにくい。しかし、肩掛け式刈払機の場合、操作棹を直接エンジンに接続することから、エンジンから操作棹に振動が伝達されやすく、この振動に抗して接続状態を強固に維持でき、好ましくは前記振動が操作棹に伝達されることを抑制又は防止する接続分離構造が必要となる。
【0004】
まず、特許文献1は、操作棹途中の接続分離構造であるが、確実な動力伝達軸の接続及び分離を実現する接続分離構造を開示している。特許文献1の接続分離構造は、動力伝達軸を内蔵する操作棹は突き合わせたフランジをクランプして密着固定し、分割される動力伝達軸の一方にカップジョイントを、残る他方にスプライン軸をそれぞれ設けて、カップジョイント及びスプライン軸を嵌合する構成(スプライン嵌合:対となる断面形状の内周面及び外周面を嵌合させる構造)である。後述する特許文献2及び特許文献3の各接続分離構造も、同様のスプライン嵌合を採用しているが、特許文献1の接続分離構造は、カップジョイントとスプライン軸とが確実に嵌合するように、コイルバネによりカップジョイントをスプライン軸に向けて押し付けている。
【0005】
次に、特許文献2は、簡易な着脱手段から構成される操作棹の接続分離構造を開示している。特許文献2の接続分離構造は、操作棹の外周面に形成した周溝に、前記操作棹を差し込むエンジン側の固定パイプの内周面から一部が突出する係合ボールを利用した着脱手段を構成している。係合ボールは、固定パイプに装着した摺動パイプの位置により保持状態及び自由状態が切り換わる。摺動パイプは、固定パイプと摺動パイプとの間に介装したコイルバネに付勢され、常態として係合ボールを保持状態にして、前記係合ボールの一部が固定パイプの内周面から突出させる位置にある。コイルバネに抗して摺動パイプを移動させると、係合ボールが自由状態となり、操作棹が固定パイプに差し込める。固定パイプに操作棹を差し込んだ後、摺動パイプをコイルバネの付勢により元の位置に復帰させると、前記摺動パイプが係合ボールを押し込んで保持状態にすると共に操作棹の周溝に係合させ、接続を完了させる。
【0006】
最後に、特許文献3は、エンジンから操作棹に伝達される振動を抑制又は防止する接続分離構造を開示している。特許文献3の接続分離構造は、エンジン側の固定パイプ内に差し込む操作棹を締め付けるホルダを保持するクランプの位置決め及び脱落防止を図る構成である。ここで、前記固定パイプ及びホルダの間にゴム製のダンパを介装することにより、特許文献3の接続分離構造は、エンジンから操作棹に伝達される振動を低減している。固定パイプに対する操作棹の接続は、ボルトの捻じ込みにより差し込まれた操作棹の操作棹を締め付けるホルダによる。ダンパは、前記ホルダを介して操作棹を支持し、クランプがホルダ及びダンパを一体に保持している。
【0007】
【特許文献1】実公昭62-007857号公報
【特許文献2】実開昭52-075647号公報
【特許文献3】特開平11-187738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
肩掛け式刈払機において、エンジンから操作棹に伝達される振動に対しても接続状態を強固に維持できる接続分離構造は、上記特許文献1〜特許文献3それぞれ単独又は組み合わせにより構成できるように見える。しかし、特許文献1又は特許文献3に見られるように、操作棹側の操作棹とエンジン側の固定パイプ等とが密に嵌合する接続分離構造は、ダンパの介装によりエンジンから操作棹に伝達される振動を低減できるが、簡易な接続及び分離を実現する接続分離構造とするため、特許文献2に見られる係合ボールを利用した着脱手段を構成する接続分離構造を組み合せると、前記係合ボールが操作棹の周溝に係合する部分でがたつき、ダンパの働きが相殺されてしまう問題がある。そこで、特に操作棹をエンジンに直接接続する肩掛け式刈払機を対象とし、エンジンから操作棹に伝達される振動に抗して接続状態を強固に維持でき、更に前記振動が操作棹に伝達されることを抑制又は防止する接続分離構造を有する刈払機について、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果、先端に回転刃を取り付けた操作棹とエンジンとを接続分離自在にした刈払機であって、動力伝達軸を内蔵する操作棹の差込コネクタを、エンジンの動力出力軸を内蔵する筒状ソケットに差し込む接続分離構造を有してなり、接続分離構造は、差込コネクタの外周面に周溝を設け、筒状ソケットの外周面に前記筒状ソケットの突出方向に付勢された筒状スライダを装着し、筒状ソケットの内周面から一部が突出する係合ボールを前記筒状ソケット及び筒状スライダの間に介装した着脱手段を構成する刈払機において、筒状ソケットはコイルバネを内蔵してなり、前記筒状ソケットに差し込んで係合ボールを周溝に係合させた差込コネクタを前記コイルバネにより押し、前記係合ボールを位置拘束させる刈払機を開発した。
【0010】
ここで、本発明の接続分離構造は、ダンパの有無やスプライン嵌合の有無又は具体的なスプライン嵌合の構造を限定しないが、特許文献1及び特許文献3を考慮すれば、ダンパを有する方が好ましく、またスプライン嵌合はカップジョイントとスプライン軸との組み合わせが好ましいことが理解される。この場合、本発明の接続分離構造における差込コネクタは、外周面に周溝を設けるほか、前記周溝を除く外周面に環状ダンパを装着し、差込コネクタの突出方向に付勢されたカップジョイントを動力伝達軸の端部に設けて構成される。また、本発明の接続分離構造における筒状ソケットは、外周面に前記筒状ソケットの突出方向に付勢された筒状スライダを装着し、内周面から一部が突出する係合ボールを前記筒状ソケットと筒状スライダとの間に介装するほか、スプライン軸を動力出力軸の端部に設けて構成される。
【0011】
本発明の刈払機は、特許文献2に見られる係合ボールを利用した着脱手段を構成する接続分離構造において、係合ボールが周溝に係合する部分ががたつくことを防止するため、筒状ソケットに内蔵させたコイルバネにより差込コネクタを押すことにより、周溝を係合ボールに圧接させ、前記係合ボールを位置拘束する。係合ボールは、特許文献2から明らかなように、周溝に係合する状態で、筒状スライダにより半径方向外向きへの移動が規制されている。筒状ソケットに内蔵させたコイルバネにより押された差込コネクタは、前記移動が規制された係合ボールに差込コネクタの差込方向、すなわち筒状スライダによる移動の規制方向とは異なる方向から周溝を圧接させて、係合ボールを位置拘束する。
【0012】
筒状ソケットに内蔵したコイルバネは、例えば前記コイルバネの端部にフランジを設け、差込コネクタの端面に前記フランジを当接させて、筒状ソケットに差し込んで係合ボールを周溝に係合させた差込コネクタを押すことができる。しかし、前記フランジがカップジョイントとスプライン軸との嵌合を阻害しない大きさ又は形状にする設計上の制約が生じてしまう。そこで、差込コネクタは外周面に環状押圧フランジを設け、筒状ソケットに内蔵したコイルバネを前記環状フランジに押し当てる構成にするとよい。
【0013】
この場合、差込コネクタは外周面にコネクタ構成パイプを装着し、コネクタ構成パイプは周溝を設けた環状中間フランジと環状押圧フランジとを設け、前記環状中間フランジと環状押圧フランジとの間でコネクタ構成パイプの外周面に環状ダンパを装着すると、環状中間フランジと環状押圧フランジとに挟まれた環状ダンパの位置ずれを防止できる。また、コネクタ構成パイプの外周面にリブを設けると前記環状ダンパの回り止めを図ることができ、更に筒状ソケットの内周面にリブを設け、環状ダンパの外周面に前記リブと係合する溝を設けると、環状ダンパを介して筒状ソケットに対する差込コネクタの周方向の位置決めを図ることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、本来相反して組み合せることの難しかった確実な接続及び分離を図る特許文献1及び特許文献3の接続分離構造と、簡易な着脱手段を構成する特許文献2の接続分離構造との組み合わせを可能にし、簡易かつ確実に接続及び分離できる接続分離構造を実現する。本発明における接続分離構造は、操作棹とエンジンとを接続分離自在にする肩掛け式刈払機だけでなく、操作棹とエンジンとにフレキシブルシャフトを接続分離自在とした背負い式刈払機にも適用できる。このように、本発明は、従来同種の接続分離構造に比べ、エンジンから操作棹に伝達される振動に対しても接続状態を強固に維持できる接続分離構造を有する肩掛け式刈払機及び背負い式刈払機が提供する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明を適用した肩掛け式刈払機の接続分離構造において、差込コネクタ1と筒状ソケット2とを完全に分離した段階を表した部分断面図、図2は本例の接続分離構造において、差込コネクタ1の外観を表した側面図、図3は本例の接続分離構造において、筒状ソケット2に対して筒状スライダ3を移動させて係合ボール24を自由状態にした段階を表した部分断面図、図4は本例の接続分離構造において、筒状スライダ3を移動させたまま差込コネクタ1を筒状ソケット2に差し込み始めた段階を表した部分断面図、図5は本例の接続分離構造において、筒状スライダ3を移動させたまま差込コネクタ1を筒状ソケット2に完全に差し込み終えた段階を表した部分断面図、そして図6は本例の接続分離構造において、差込コネクタ1と筒状ソケット2の接続完了段階を表した部分断面図である。
【0016】
初めに、本例の接続分離構造の構成について説明する。本例は、図1に見られるように、操作棹4の端部に構成された差込コネクタ1と、エンジンカバー5に設けられた筒状ソケット2とから構成される接続分離構造であり、肩掛け式刈払機に適用した例である。ここで、筒状ソケット2は内部にエンジンの動力出力軸52を有すればよいので、例えばフレキシブルシャフトを内蔵するフレキシブルケースの端部に筒状ソケット2を構成することもでき、本例の接続分離構造が背負い式刈払機にも適用できることが理解される。この場合、操作棹4の端部に差込コネクタ1、エンジン側に筒状ソケット2を割り当てると、フレキシブルシャフトを内蔵するフレキシブルケースの一端には操作棹4の差込コネクタ1に対応した筒状ソケット2、また前記フレキシブルケースの他端にはエンジン側の筒状ソケット2に対応した差込コネクタ1を設けることになる。
【0017】
差込コネクタ1は、操作棹4の端部にコネクタ構成パイプ11を装着して構成される。コネクタ構成パイプ11は、先端に環状押圧フランジ12を、中間付近に環状中間フランジ13を、そして後端に環状縁部フランジ14を形成しており、前記環状中間フランジ13の外周面に、半径方向外向きに開いた円弧状断面の周溝15を形成している。また、コネクタ構成パイプ11は、環状押圧フランジ12及び環状中間フランジ13の間にゴム製の前部環状ダンパ16を、環状中間フランジ13及び環状縁部フランジ14の間に同じくゴム製の後部環状ダンパ17をそれぞれ装着している。
【0018】
本例は、前記前部環状ダンパ16と後部環状ダンパ17との回り止めを防止するため、コネクタ構成パイプ11の外周面に周方向等間隔で4条のコネクタ側回り止めリブ19を設け、また筒状ソケット2に対する差込コネクタ1の周方向の位置決めを図るため、後部環状ダンパ17の外周面に、筒状ソケット2の内周面に設けたソケット側回り止めリブ27に係合する回り止めリブ係合溝18(図2参照)を、それぞれ設けている。図示は省略するが、例えば後部環状ダンパ17の外周面にリブを設け、筒状ソケット2の内周面に対応する溝を設けてもよい。このほか、前部環状ダンパ16と後部環状ダンパ17とは、外周面をそれぞれ先細りのテーパ面とし、差込コネクタ1を筒状ソケット2に抜き差ししやすくしている。
【0019】
このほか、本例の差込コネクタ1は、環状中間フランジ13に対して後部環状ダンパ17が段差を形成しており、後述する筒状ソケット2の内周面に形成された内環状段差22に後部環状ダンパ17を係合させて、筒状ソケット2に対する差込コネクタ1の差込量を制限できるようにしている。内環状段差22に対する後部環状ダンパ17の係合は、筒状ソケット2の係合ボール24に対する差込コネクタ1の周溝15を位置決めする働きのほか、差込コネクタ1が筒状ソケット2に対して過剰に差し込まれ、前部環状ダンパ16や後部環状ダンパ17が過剰に圧縮され、エンジンからの振動を減衰させる緩衝作用が発揮されなくなったり、差込コネクタ1が筒状ソケット2と緊密に嵌合して抜けなくなったりする事態を回避する働きを有している。
【0020】
動力伝達軸41は、端部に設けたカップジョイント42を動力出力軸52のスプライン軸53と嵌合させ、前記動力出力軸52と接続される。カップジョイント42は、動力伝達軸41の端部に取り付けたジョイントケース43内に、ジョイント用コイルバネ45を介装してジョイント本体44を収納した構成で、スプライン軸53はジョイント本体44に差し込まれて嵌合する。厳密には、差込コネクタ1を筒状ソケット2に差し込んだ際、ジョイント本体44とスプライン軸53とはそれぞれのスプライン溝の山と谷とを互い違いの関係にしたときに嵌合するため、単にジョイント本体44とスプライン軸53との軸線が一致しただけではうまく嵌合できない。この結果、ジョイント本体44はジョイント用コイルバネ45に抗してスプライン軸53によりジョイントケース43内に押し込まれるが、動力出力軸52に従ってスプライン軸53が回転すると、前記スプライン溝の山と谷とが互い違いの関係になる瞬間が発生し、前記瞬間にジョイント用コイルバネ45がジョイント本体44を押し戻すことにより、嵌合させることができる。
【0021】
筒状ソケット2は、エンジンカバー5と一体に成形され、クラッチドラム51(エンジンに付随する部材として図示)側を密閉面、前記密閉面に対向する側を開放面とした円筒部材で、前記密閉面から中心軸線上に動力出力軸52を突出させ、前記動力出力軸52の端部にスプライン軸53を設けている。筒状ソケット2は、エンジンカバー5と別体に形成し、別途エンジンカバー5に取り付けてもよい。そして、筒状ソケット2は、内周面に沿って伸縮するコネクタ用コイルバネ21を前記密閉面に固定している。筒状ソケット2の内周面は、上述した差込コネクタ1の前部環状ダンパ16、環状中間フランジ13、そして後部環状ダンパ17の各周面に倣って、開放面から密閉面に向けて絞られたテーパ面になっており、差込コネクタ1を筒状ソケット2に抜き差ししやすくしている。
【0022】
係合ボール24は、上述した後部環状ダンパ17に係合する内環状段差22から密閉面寄りの位置に設けられた突出孔23に嵌め込まれている。突出孔23は、半径方向内向きに先細りである円錐断面の貫通孔で、周方向等間隔で4箇所設けている。これから、本例の筒状ソケット2は、着脱手段を担う係合ボール24が、周方向等間隔で4個あることになる。突出孔23は、筒状ソケット2の内周面に係合ボール24より小さな大きさで開口してあり、嵌め込まれた係合ボール24の一部を前記筒状ソケット2の内周面に突出させる。係合ボール24は、突出孔23の半径方向外向きに移動できるが、後述する筒状スライダ3により前記移動が制限されており、突出孔23から完全に外れてしまうことはない。
【0023】
筒状スライダ3は、筒状ソケット2に相似な円筒部材で、前記筒状ソケット2の外周面に摺接する規制環状リブ32とストッパ環状リブ33とを内周面に形成している。筒状ソケット2は、エンジン側に寄った外周面に外環状段差25を形成し、開放面に寄った外周面にバネ鋼からなるストッパリング26を装着している。筒状スライダ3は、常態として、前記外環状段差25と規制環状リブ32との間にスライダ用コイルバネ31を介装して筒状ソケット2の突出方向に付勢され、ストッパ環状リブ33をストッパリング26に掛止させた位置にあり、前記位置で規制環状リブ32を筒状ソケット2の突出孔23に一致させて、係合ボール24を半径方向外向きの移動が規制された保持状態にしている。しかし、筒状スライダ3は、前記スライダ用コイルバネ31を縮めて移動させ、係合ボール24を規制する位置から規制環状リブ32をずらし、規制環状リブ32とストッパ環状リブ33との隙間を筒状ソケット2の突出孔23に一致させることにより、前記係合ボール24を自由状態にできる。
【0024】
次に、本例の接続分離構造における接続手順を説明する。まず、図1に見られるように、差込コネクタ1を筒状ソケット2から分離した段階から、図3に見られるように、筒状ソケット2の外周面に装着した筒状スライダ3を、前記筒状ソケット2の突出方向とは逆に、本例で言えばエンジンカバー5側に押し込み、係合ボール24を自由状態にする。ここで、図3の上下方向が鉛直方向であるとすれば、筒状スライダ3の規制環状リブ32による支えを失った図2中下方の係合ボール24は下向き、すなわち半径方向外向きに突出孔23内で落ち込むことになる。筒状スライダ3は、例えば接続分離作業を実施する利用者が手により、スライダ用コイルバネ31に抗して移動させることができ、また前記移動した位置で保持される。
【0025】
係合ボール24を自由状態にしたまま、すなわち筒状スライダ3を移動させたまま、図4に見られるように、後部環状ダンパ17の外周面に設けた回り止めリブ係合溝18とソケット側回り止めリブ27とを一致させて、差込コネクタ1を筒状ソケット2に差し込んでいく。ここで、上述同様、図4の上下方向が鉛直方向であるとすれば、自由状態にある図4中上方の係合ボール24は前部環状ダンパ16の外周面に押されて上向き、すなわち半径方向外向きに突出孔23内に押し上げられる。このように、係合ボール24が自由状態にあれば、差込コネクタ1を筒状ソケット2に差し込む際に係合ボール24が邪魔になることがないことから、本発明の接続分離構造における接続作業は容易であることが理解される。
【0026】
動力伝達軸41のカップジョイント42は、この差込コネクタ1を筒状ソケット2に差し込んでいく過程で、前記筒状ソケット2内に突出するスプライン軸53に嵌合していく。実際には、既述したように、最初はスプライン軸53がジョイント本体44を押し込み、前記スプライン軸53の回転により初めてスプライン軸53が前記ジョイント本体44に嵌合するが、ここでは説明及び図示の便宜上、接続作業の過程でスプライン軸53がジョイント本体44に嵌合していくものとする。
【0027】
差込コネクタ1を筒状ソケット2に差し込んでいくと、図5に見られるように、やがて差込コネクタ1の環状押圧フランジ12が筒状ソケット2内に設けたコネクタ用コイルバネ21に達し、前記環状押圧フランジ12がコネクタ用コイルバネ21を圧縮することにより、圧縮されたコネクタ用コイルバネ21の復元力により、差込コネクタ1が押し返される。そして、差込コネクタ1の後部環状ダンパ17が筒状ソケット2の内環状段差22に係合したところで、筒状ソケット2に対する差込コネクタ1の差込が完了する。これまで筒状ソケット2に対して容易に差込コネクタ1を差し込めたところに、内環状段差22に対して後部環状ダンパ17が係合するため、この差込コネクタ1の差込の完了は、容易に感得できる。
【0028】
差込コネクタ1の差込が完了すると、差込コネクタ1の環状中間フランジ13に形成した周溝15が各突出孔23に一致する。この段階で、移動させた筒状スライダ3の保持をやめる(例えば筒状スライダ3を持つ手を離す)と、図6に見られるように、筒状スライダ3が元の位置に復帰して、規制環状リブ32が各突出孔23と一致する。これにより、係合ボール24は、半径方向外向きの移動が規制され、前記規制環状リブ32により半径方向内向きに押し込まれるため、突出孔23から一部を突出させて差込コネクタ1の周溝15に係合する。本例では、係合ボール24は周方向等間隔で4個設けられていることから、前記各係合ボール24の周溝15に対する係合は、全係合ボール24が差込コネクタ1を4方向から把持する働きも有する。
【0029】
そして、差込コネクタ1を筒状ソケット2に差し込む力をなくす(例えば差込コネクタ1又は操作棹4を持つ手を離す)と、差込コネクタ1がコネクタ用コイルバネ21に押し返され、係合ボール24に差込コネクタ1の周溝15が差込コネクタ1の差込方向から圧接する。これにより、係合ボール24は、筒状スライダ3の規制環状リブ32による半径方向外向きの移動規制と、前記周溝15による差込コネクタ1の差込方向の圧接とにより、がたつきが抑制又は防止された位置拘束を受ける。上述したように、各係合ボール24の周溝15に対する係合は、全係合ボール24が差込コネクタ1を4方向から把持する働きも有するから、こうして位置拘束を受けた全係合ボール24による差込コネクタ1の把持は非常に安定している。
【0030】
図示による説明は省略するが、本例の接続分離構造における分離手順は、上述までの接続手順の逆に従う。すなわち、筒状スライダ3を押し込むことにより規制環状リブ32による半径方向外向きの移動規制を解除し、係合ボール24を自由状態にした後、差込コネクタ1を筒状ソケット2から引き抜き、移動させた筒状スライダ3の保持をやめる(例えば筒状スライダ3を持つ手を離す)ことにより前記筒状スライダ3を元の位置に復帰させて、分離作業を完了する。このとき、差込コネクタ1はコネクタ用コイルバネ21により押し返されているため、自由状態の係合ボール24は周溝15の圧接により半径方向外向きに押し出され、差込コネクタ1は筒状ソケット2から抵抗少なく引き抜くことができる。更に、コネクタ用コイルバネ21を長くして差込コネクタ1を筒状ソケット2から押し出せるようにすると、事実上、筒状スライダ3を移動させるだけで分離作業を終えることができるようにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本例の接続分離構造において、差込コネクタと筒状ソケットとを完全に分離した段階を表した部分断面図である。
【図2】本例の接続分離構造において、差込コネクタの外観を表した側面図である。
【図3】本例の接続分離構造において、筒状ソケットに対して筒状スライダを移動させて係合ボールを自由状態にした段階を表した部分断面図である。
【図4】本例の接続分離構造において、筒状スライダを移動させたまま差込コネクタを筒状ソケットに差し込み始めた段階を表した部分断面図である。
【図5】本例の接続分離構造において、筒状スライダを移動させたまま差込コネクタを筒状ソケットに完全に差し込み終えた段階を表した部分断面図である。
【図6】本例の接続分離構造において、差込コネクタと筒状ソケットの接続完了段階を表した部分断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 差込コネクタ
11 コネクタ構成パイプ
12 環状押圧フランジ
13 環状中間フランジ
14 環状縁部フランジ
15 周溝
16 前部環状ダンパ
17 後部環状ダンパ
2 筒状ソケット
21 コネクタ用コイルバネ
22 内環状段差
23 突出孔
24 係合ボール
25 外環状段差
26 ストッパリング
3 筒状スライダ
31 スライダ用コイルバネ
32 規制環状リブ
33 ストッパ環状リブ
4 操作棹
41 動力伝達軸
42 カップジョイント
5 エンジンカバー
52 動力出力軸
53 スプライン軸
【出願人】 【識別番号】000104065
【氏名又は名称】カーツ株式会社
【出願日】 平成18年12月26日(2006.12.26)
【代理人】 【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎

【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫

【識別番号】100113181
【弁理士】
【氏名又は名称】中務 茂樹

【識別番号】100126697
【弁理士】
【氏名又は名称】齊宮 瑞枝


【公開番号】 特開2008−161058(P2008−161058A)
【公開日】 平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願番号】 特願2006−350642(P2006−350642)