トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業

【発明の名称】 乗用芝刈機
【発明者】 【氏名】辻 英和

【氏名】榎本 和加雄

【氏名】吉木 晋也

【要約】 【課題】機体全体の前後方向の長さをコンパクト化したフロントモーアを備えた乗用芝刈機を提供する。

【解決手段】前輪3,3の間に配置したブロア17を内装したブロアケース18の斜め後方にダクト20を接続し、該ダクト20は操縦席11の側方を通り、ダクト20を経由して機体2の後方にあるコレクタ16に刈り取った芝草等を収納できる。そのため、芝刈り機の全体の高さを比較的低く抑えることができると同時に芝草等の気流搬送部が操縦席11と干渉することを防ぐことができる。またブロア17とダクト20が操縦席11と左右方向で重ならないため、機体の前後方向でブロア17とダクト20を操縦席11とほぼ同じ位置に配置でき、従来技術に比べて機体の全長が短縮化できると同時に操縦席11のスペースも拡大できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体(2)と、該機体(2)の前進方向である前方に配置した草を刈り取るためのモーア(6)と、前記モーア(6)で刈り取った後の草を送風搬送するためのブロア(17)を収納したブロアケース(18)と、機体(2)の中央部に設けた操縦席(11)を備えた乗用芝刈機において、
ブロア(17)を機体(2)の中央部に配置し、ブロアケース(18)の入口部にはモーア(6)の出口部(6b)を支持したシュータ(21)を接続し、該ブロアケース(18)の排出口を操縦席(11)の機体前進方向に向かって左右いずれかの側方に向けて配置し、該ブロアケース(18)の排出口に接続したダクト(20)を操縦席(11)の隣接位置を経由させて機体(2)の後方に設けたコレクタ(16)に接続したことを特徴とする乗用芝刈機。
【請求項2】
モーア(6)を機体(2)に対して上昇させる機構を備え、モーア(6)の最上昇位置ではモーア(6)の出口部(6b)をシュータ(21)及びブロア(17)と略直線上に配置させることを特徴とする請求項1記載の乗用芝刈機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、芝刈りなどの対地作業を行うモーアを機体の下方に搭載した乗用芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用芝刈機は、芝刈機(モーア)で刈り取った芝草をシュータ及びダクトを介して機体後部のコレクタバックに集草する構成としている。また、コレクタバックへ刈り取った芝草をエアー搬送するために設けたブロアと機体を走行させるためにエンジンからの動力を変速する変速装置が用いられる。
【0003】
芝刈機(モーア)を機体前部に装着した、いわゆるフロントモーア型乗用芝刈機がEP0,800,759(A1)号公報とEP0,840,998(B1)号公報などに開示されている。これらの先行技術は機体の後部に位置させたエンジンからミッションケース及びブロアへの伝動機構を備えている。
また、米国特許第5,761,891号明細書にはブロアをモーアに接近させた位置に配置し、あるいは適宜後方に離れた位置に配置した構成が示されている。
【特許文献1】EP0,800,759(A1)号公開公報
【特許文献2】EP0,840,998(B1)号特許公報
【特許文献3】米国特許第5,761,891号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2記載の発明の乗用芝刈機では、ミッションケースの後方にブロアが配置されているため、乗用芝刈機の全長が長くなり、モーアとエンジン上方に位置させたコンテナとの中間部にブロアとシュータを配置することになり、比較的長い搬送路を搬送する構成のため、この搬送途中に刈り取った草がブロア又はシュータ内で詰まることがある。また、上記特許文献3記載の発明の乗用芝刈機では、走行系やPTO系の伝動構成が開示されていない。
本発明の課題は、機体全体の前後方向の長さをコンパクト化した、フロントモーアを備えた乗用芝刈機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、機体(2)と、該機体(2)の前進方向である前方に配置した草を刈り取るためのモーア(6)と、前記モーア(6)で刈り取った後の草を送風搬送するためのブロア(17)を収納したブロアケース(18)と、機体(2)の中央部に設けた操縦席(11)を備えた乗用芝刈機において、ブロア(17)を機体(2)の中央部に配置し、ブロアケース(18)の入口部にはモーア(6)の出口部(6b)を支持したシュータ(21)を接続し、該ブロアケース(18)の排出口を操縦席(11)の機体前進方向に向かって左右いずれかの側方に向けて配置し、該ブロアケース(18)の排出口に接続したダクト(20)を操縦席(11)の隣接位置を経由させて機体(2)の後方に設けたコレクタ(16)に接続した乗用芝刈機である。
【0006】
請求項2記載の発明は、モーア(6)を機体(2)に対して上昇させる機構を備え、モーア(6)の最上昇位置ではモーア(6)の出口部(6b)をシュータ(21)及びブロア(17)と略直線上に配置させる請求項1記載の乗用芝刈機である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、ブロア(17)とダクト(20)が操縦席(11)と左右方向で重ならないため、機体(2)の前後方向でブロア(17)とダクト(20)を操縦席(11)とほぼ同じ位置に配置でき、従来技術に比べて機体(2)の全長が短縮化できると同時に操縦席(11)のスペースも拡大できる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、モーア(6)の最上昇位置では、モーア(6)の出口部(6b)、シュータ(21)及び/又はブロア(17)のいずれかに詰まった草を掻き出し易くなり、草の気流搬送路の清掃がし易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
本実施例の乗用芝刈機の要部左側面図を図1に示し、本実施例の乗用芝刈機の正断面図を図2に示し、モーアと前輪駆動部の平面図を図3に示す。なお、本発明では芝刈機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左側、右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側ということにする。
【0010】
走行機体2の前部と後部にそれぞれ前輪3、3と後輪4、4を備え、機体2の前部の下方には縦軸回りに回転するカッター5を有するモーア6が設けられる。
【0011】
機体2の前部上方のフロア7にはステアリングコラム8を立設し、該コラム8の上部にはハンドル10が設けられている。またハンドル10の後方には操縦席11を設け、該操縦席11の後方にエンジン12及びラジエータ13及びこれらを覆うボンネット14が配置されており、該ボンネット14上方にコレクタ16が設けられている。
前記モーア6は機体2に端部が回動自在に取り付けられ、前側が上下に昇降自在の構成となっているのでモーア6の昇降を行うことができる。
【0012】
上記概略の構成部材を備えたモーア(芝刈機)6の作動機構などを図4の動力伝達機構を示す側面図で説明する。
エンジン12の出力軸12aをエンジン12の前方に出し、自在継手軸15を介して該出力軸12aからミッションケース24内の動力伝達機構Aに動力を伝達するためのミッション入力軸25に動力が伝達される。該入力軸25にはプーリ26が一体に設けられる。すなわち、入力軸25と自在継手軸15とのジョイント部15aの外周を覆う入力軸25の端部のラッパ状部分25aにプーリ26が形成されている。そして、入力軸25と機体2の前後方向のほぼ同一位置に配置されたモーア用PTO軸28上のプーリ29に前記プーリ26からベルト30を介して動力が伝達され、これらモーア用PTO軸28、プーリ29及びベルト30をモーア動力伝達機構ということにする。
【0013】
上記構成においては、動力伝達機構Aの入力軸25に一体的に設けられたプーリ26を有するラッパ状の部材25aが該入力軸25と自在継手軸15とのジョイント部15aを覆う位置にあるので芝刈り機の全長を従来より短縮できる。
【0014】
また、ミッションケース24内に設けられた入力軸25に伝達されたエンジン動力は動力伝達機構Aのブロア駆動系Bと走行駆動系Cにそれぞれ動力が分配される。
ブロア駆動系Bは、前記入力軸25にカップリング25bを介して入力軸25と一体の回転軸25cに設けられ、ブロア駆動系Bへのエンジン動力を入切するブロア駆動用クラッチ32と該クラッチ32からの動力を順次伝達するクラッチ出力ギヤ33、中間伝動ギヤ34、入力ギア35及び該入力ギア35を軸上に設けたブロア駆動軸36の組合せからなる。
【0015】
また、走行駆動系Cは入力軸25に固着された走行用ギア31からの動力が伝達されるカウンタギア37と該カウンタギア37と噛合するHST入力用ギア38、該HST入力用ギア38の固着したHSTポンプ駆動軸39から成る。
【0016】
さらに入力軸25の下方に静油圧無段変速装置(HST)(41,42)が配置され、上記HSTポンプ駆動軸39で駆動するHSTポンプ41、HSTポンプ41からの油圧動力で駆動するHSTモータ42、該HSTモータ42の出力軸(油圧モータ軸)43、出力軸43上のドライブピニオン44に噛合うベベルギア45、このベベルギヤ45と並列状に設けられる連動ギヤ46、ベベルギヤ45と連動ギヤ46を支持する中間軸47からなる伝達機構と、連動ギヤ46と噛合するギア48が設けられている。ギヤ48の回動軸49のミッションケース24から左右外部に突出した突出軸部にスプロケット50L,50Rが設けられ、該スプロケット50L,50Rからチェン52L,52Rとスプロケット54L,54Rを介して左右の前輪駆動軸53L,53Rにそれぞれ動力伝達可能になっている。左右前輪駆動軸53L,53Rが駆動すると左右の前輪3L,3Rが回転する。
【0017】
上記スプロケット50L,50R及びチェン52L,52Rはミッションケース24の左右両側面に装着する車軸伝動ケース23L,23R内に設けられ、これらミッションケース24と左右車軸伝動ケース23L,23Rとにより門型フレームが構成される。
【0018】
また、HST用入力ギヤ38を用いてHSTモータ軸43を左右後輪4L,4Rの車軸55L,55Rの入力軸56L,56Rと同じ位置となるようにHST41,42を配置する。
【0019】
さらに、走行用ギヤ31、カウンタギヤ37及びHST用入力ギヤ38のギヤ群を経てHSTポンプ軸39が駆動されるが、HSTポンプ軸39の入力回転をエンジン回転より高くなるよう設定することができるのでエンジン12自体の回転数を低くでき、低騒音化できる。
【0020】
また上記構成からなる走行駆動系Cを用いてHST41,42をエンジン12より低い位置に配置出来るため、後輪4の車軸55の入力軸56とHSTモータ軸43を同軸化することができ、4WD入力の簡素化が可能となる。
【0021】
また、前輪駆動軸53を駆動するためにチェン52を用いる伝動系は前記のとおり、ミッションケース24と左右車軸伝動ケース23L,23Rとにより門型フレームとし、いわゆるポータルミッションタイプの動力伝動機構を採用しているため、前記ブロワ17を前輪駆動軸53,53間に配置することで、前輪3,3間にブロワ17を配置することができ、ブロア17とモーア6の距離が近くなり、刈り取った芝草などの搬送性能が向上する。
【0022】
さらに動力伝動機構Aへの入力軸25の前方にブロア駆動用クラッチ32を設け、また静油圧無段変速装置(HST)41,42への走行伝動系Cのギア群とブロア伝動系Bのギア群の間にギア群(44,45,46、48)などを配置することで、芝刈り機の前後長を短縮しつつ、動力伝動機構Aの地上からの高さをできるだけ高く維持することができる。
【0023】
また、後輪駆動軸55の入力軸56をHSTモータ軸43と同軸としているので後輪4の駆動系が簡素となり、後輪駆動軸56とHST油圧モータ軸43の連結部に自在継手を用いる必要がなく、簡素な動力伝達系統が得られる。
【0024】
繰り返すと、動力伝動機構ケース24の後方面にエンジン12からの入力軸25を設け、入力軸25の下方に2軸型のHST41,42を配置し、HST41,42への動力伝達用の走行伝動系Cのギヤ列(31、37,38)によりHST41,42に動力を伝達させ、動力伝動機構Aへの入力軸25の前方にブロア駆動用クラッチ32を設け、該クラッチ32からの動力をHSTポンプ入力軸39と略同一高さ位置のブロワ軸36へ伝達するブロア伝動系Bのギヤ列(33,34,35)を設けている。
【0025】
上記動力伝達系統の配置により、ブロア駆動用クラッチ32をブロア伝動系Bとの動力伝達機構Aの上方部へ配置することにより、ブロワ駆動用ギア群のギア列(33,34,35)と走行伝動系Cのギヤ列(31、37,38)と間にスペースが生じるため、このスペースに前輪駆動用のギア群(44,45,46,48)などを配置することができ、動力伝達系統の地上高を下げることなく、動力伝達系統の前後長を短縮できる。
前記入力軸25とHST41,42が、機体前後方向で同じ位置の上下方向に配置されるため、走行駆動系Cとブロア駆動系Bの前後長が比較的短くて良い。
【0026】
また、ブロア駆動用クラッチ32を設けたことでブロア駆動系Bを走行駆動系Cとモーア動力伝達機構(モーア用PTO軸28、プーリ29、ベルト30など)の他の駆動系とは独立してオン/オフが可能となり、またモーア動力伝達機構の一部に駆動ベルト30を採用することによりブロワ17を避けた遠い位置まで単純な構成でモーア6への駆動伝達系を成立させることができる。
【0027】
また、ブロア17を内装したブロアケース18が操縦席11の下方で前輪3,3の間に配置されており、エンジン12の出力によりブロア17が作動する。ブロアケース18の上部にはブロアケース18とコレクタ16を繋ぐ芝草搬送用のダクト20が設けられている。さらに、ブロア17とモーア6の間には側面視後上がり形状のシュータ21が配置されていて、モーア6により刈り取られた芝草は、モーアデッキ6aの後部中央の排出口から短筒状の案内ガイド部(出口部)6b及び端部をこのガイド部6bに重合させて折曲姿勢可能に設ける前記シュータ21を経由してブロア17に送られ、さらにダクト20を経由して後方のコレクタ16に空気搬送される。なお、モーア6のカッタ5の回転によって起風されるので、該起風もブロア風による刈り取られた草のコレクタ16へ向けての空気搬送の一助となる。
【0028】
また、図2に示すように左右前輪伝動ケース23L,23Rの間にブロア17を配置し、該ブロア17の後方にダクト20を接続し、該ダクト20は操縦席11の側方を通りコレクタ16に刈り取った芝草等を収納できる構成になっている。
従って、容積の大きなブロア17を前輪3,3の間に配置することができ、芝刈り機の全体の高さを比較的低く抑えることができると同時に芝草等の気流搬送部が操縦席11と干渉することを防ぐことができる。
【0029】
またダクト20が操縦席11に対して左右方向に変位するため、機体2の前後方向でダクト20を操縦席11とほぼ同じ位置に配置でき、従来技術に比べて機体2の全長が短縮化できると同時に操縦席11のスペースも拡大できる。
【0030】
図1に芝刈り機の要部側面図を示すが、案内ガイド部6b、シュータ21及びブロア17によって作業姿勢では緩やかな傾斜案内通路を呈するようにして、モーア6を最上げ状態にした時(図9参照)にモーア6の案内ガイド部6b、シュータ21及びブロア17が略直線上に配列するような構成とする。このような構成により、モーア6の最上時に案内ガイド部6b、シュータ21及びブロア17に詰まった草を掻き出し易くなり、草の気流搬送路の清掃がし易い。
【0031】
図5に芝刈り機のシュータ21とブロアケース18の接続部の側面図(図5(a))と図5(a)の矢印A方向の矢視図(図5(b))を示すが、シュータ21のブロアケース18への挿入部の形状をを略球状とし、該略球状部の回動中心軸21aに支点を設けて回動可能としている。また、ブロアケース18のシュータ21との接点部分にはシール部材18aを配置することで、モーア6への追従性とブロアケース18とシュータ21の気密性を両立させることができる。なおシュータ21は樹脂製とすることで前記略球状の挿入部を容易に成形できる。
【0032】
上記ブロアケース18とシュータ21の気密状の連結部を採用することで、シュータ21が球状部の回動中心軸21aの周りに自由に上下回動できるため、モーア6とブロア17の間が近くてもシュータ21がモーア6の左右方向への揺れに伴う動きに追従できる。そのため、モーア6とブロア17の距離が近くでき、その上ブロア17とシュータ21の気密性が高いため、ブロア17の吸引力が損なわれず、モーア6とブロア17の間での草の搬送能力が従来より高くなる。
また、モーア6の案内ガイド部6bがシュータ21の内部に入り込むように接続しているのでブロア17による気流搬送下流側に案内ガイド部6bの端部より大きい径を有するシュータ21の内壁面との間に生じる段差部分に草が詰まることがない。
【0033】
図6にシュータ21とブロアケース18の接続部の左側面図を示すように、シュータ21の球状部の回動中心軸21aよりもモーア6側にブロアケース18の端面を配置することにより、モーア6を最下時に動かしてもシュータ21の端部がブロアケース18から飛び出すことがないので、草の気流搬送性能の低下を防止できる。
【0034】
またブロアケース18に接続する吐出側端にコレクタ16に向けダクト20を接続するが、ダクト20は操縦席11との干渉をさけて、その右側に配置されるように屈曲させた形状とし、かつ操縦席11の前端部右側から後方へ向けて傾斜させ、操縦席11の背もたれと側面視でほぼ重なる位置にダクト20を配置する。このようなダクト20の配置は前記機体2の短縮化に寄与すると同時に、オペレータが芝刈り機に乗降する際にダクト20が邪魔になるおそれもない。また上記ダクト20の配置により作業中にダクト20がオペレータの視界を妨げることがなく、作業中の各種操作レバー操作等の邪魔にならない。
【0035】
また、ダクト20の屈曲部分は、ブロア17による空気搬送で草がスムーズに流れるような形状とする。すなわちブロア20で発生する矢印A方向(図2))の気流の方向に沿って気流が流れるので、草が空気搬送中で詰まることがない。
【0036】
また、ダクト20は図1に示すようにフェンダ27の外側で、かつボンネット14上端より下方の部位20xで2分割する。これにより梱包時にダクト20の上部が取り外せるため、梱包寸法を小さくできる。芝刈り機の外装の外部で分割されているため、ダクト20などを取外し時と組付け時に外装を外す必要がないので、メンテナンス性に優れている。
【0037】
次にモーア6の昇降機構の構成について説明する。
図7には、モーア6の前部を持ち上げたときのモーア取付部の左側面図、図8には、モーア取付部の平面図、図9には、モーアを芝刈りが可能な状態に設置したときのモーア取付部の側面図、図10には、モーアの昇降リンクの平面図(図10(a))と側面図(図10(b))を示す。
【0038】
モーア6は機体2の前方に端部が回動自在に取り付けられ、前側が上下に昇降自在の構成となっているのでモーア6の昇降を行うことができる。なお、以下、左右一対設けれられる部材を左右を表す符号L,Rを使用しないことがある。
【0039】
図10(a)の平面図と図10(b)の側面図に示すように、モーア6の昇降リンク60は、左右一対が機体2の下側に形成された下方空間部62の両側に配置され、基部を前輪3を駆動するギアを配設した左右のファイナルケース64の合わせ面に共締めして設けた取付プレート65に枢着支持して設け、前方側に延長して前端部に左右一体のモーアデッキ6aの前側のゲージ輪69を支持する支持杆63と連結ピン66(又は78)で着脱自由に連結した構成としている。なお、モーアデッキ6aは、後端下部が後部リンク67で機体2側に着脱自由に連結され、前後に設けたゲージ輪69と共に、姿勢保持ができる構成としている。
【0040】
そして、昇降リンク60は、図8、図10に示すように、本実施例の場合、平面視で先端部分60aを左右の間隔が広い平行な一定長さに形成し、中間部から左右を内側に傾斜させた中間部分60bを形成し、それに連続させて平行な狭い間隔の基端部分60cを形成した杆から構成している。そして、L型連結杆70は、図10(a)に示すように、前記先端部分60aと中間部分60bとが接合する部位に形成されているコーナの内側に両端を溶接で固着して連結し、図7、図9及び図10に示すように、リフトロッド71を連結する取付部材73を枢着状態に連結支持した構成としている。そして、取付部材73は上側のリフトアーム74(後部が定位置の回動支点)の先端部に接続したリフトロッド71に着脱自在に連結して設け、後方に装備した昇降油圧シリンダ75から連動アーム77を介して左右一対の昇降リンク60を上下に昇降する構成としている。
【0041】
このように、昇降リンク60は、先端部分60aと中間部分60bとが接続する杆材の中間部位に形成したコーナ部にL型連結杆70を溶接で連結して補強し、モーアデッキ6aの吊り下げに充分耐える強度に強化すると共に、L型連結杆70を取付け支持部材として利用して取付部材73を連結した特徴がある。そして、昇降リンク60は、前述のとおり、基部を前輪3のファイナルケース64を利用して共締めした取付プレート65に支持する構成としたので、充分な強度が確保できると共に取付け支持の構成が簡単になった特徴がある。
【0042】
次に、モーア6を用いて芝草刈取作業を行うときに昇降リンク60に折り畳むための延長アーム76について説明する。図10(a)の平面図と図10(b)の側面図に示すように、延長アーム76は、その横断面を昇降リンク60に重ね合わせて嵌合できる程度のコ字型に形成し、昇降リンク60の先端部分60aに下側から重ね合わせられる程度の長さとして、基部を昇降リンク60の先端部分(連結ピン66を挿通する支持部60dのすぐ後の位置)に枢着部Pとして昇降リンク60に重ね合わせて沿わせた状態と、前方側へ回動して延長する状態とに折り畳み自由に構成している。そして、延長アーム76は、図10(a)、図10(b)に実線で示す延長した状態で、先端側から順番に、連結孔76a、姿勢保持孔76b、延長位置固定孔76c(延長時には昇降リンク60の支持部60dに連結ピン66を挿入して支持する)を設けて構成している。
【0043】
以上のように構成した延長アーム76は、図10(b)の仮想線で示すように、モーア6による芝草刈取作業中でモーアデッキ6aを昇降動作させるときには、枢着部Pを支点に昇降リンク60に沿わせて基部側に折り畳んで、前記連結孔76aを昇降リンク60の止め孔60eに重ね合わせて、固定ピン78を挿し込んで固定し、さらに支持杆63の図示しない孔と昇降リンク60の支持部60dを一致させて、その一致した貫通孔部分に連結ピン66を挿入して昇降油圧シリンダ75によりモーア6を昇降させながら所定の芝草刈取作業を行う。
【0044】
つぎに、モーアデッキ6aをメンテナンスを行うなどのために起立するときには、まず、図8に示すようにモーアデッキ6aは、入力伝動ボックス79aのユニバーサルジョイント80を、モーア用PTO軸28から延長した伝動軸81の前端部から取り外して分離し、つぎに、昇降リンク60の前端の支持部60dから連結ピン66を抜き取ってモーア6と昇降リンク60を切り離す。
【0045】
なお、芝草刈取作業時には入力伝動ボックス79aからの駆動力は、入力伝動ボックス79bに伝達され、もう一方のモーアデッキ6aのカッター5を駆動させる。
更に、案内ガイド6bを機体2側から分離し、後部リンク67もモーア6から分離するして、モーア6の機体2との連結部を全て分離する。
【0046】
続いて、図10(a)、図10(b)に示すように、昇降リンク60から固定ピン78を抜き取って、延長アーム76を枢着部Pを支点にして前側に回動して延長状態に位置し、リンク60側の支持部60dにアーム76側の延長位置固定孔76cを重ね合わせて支持部60dに連結ピン66を挿し込んで延長状態に保持して固定する。
【0047】
そして、モーアデッキ6aは、作業車両を若干後退させて、相対的に延長アーム76の長さ程度、前側に移動させ、前側に伸ばしている延長アーム76の先端部の連結孔76aとモーア連結杆63の図示しない孔を一致させ、この一致した貫通孔部分にピン78を挿通して延長アーム76とモーア連結杆63と連結する。そして、モーア6を上昇移動させるが、図示を省略している昇降レバーを操作して、まず、昇降油圧シリンダ75に作動油を供給して伸長させる。すると、モーアデッキ6は、昇降油圧シリンダ75の伸長に伴って、連動アーム77、リフトアーム74、リフトロッド71、取付部材73、L型連結杆70を介して昇降リンク60が基部を支点にして前部が上昇し、機体2の前部機枠の前側に起立状態に姿勢が変更される。
【0048】
そして、モーア6が、図7に示すように後部のゲージ輪69が接地して起立状態に達したとき、オペレータは上昇操作を停止して、延長アーム76の姿勢保持孔76bをモーア側の係止孔(図示せず)に合わせて係止ピン(図示せず)を挿し通して起立姿勢を保持することができる。
【0049】
図7に示すように、モーア6は機体2の前部機枠の前側で起立状態に位置が固定されると、底面が前側に向いて内部(カッター5など)が露出状態になり、カッター5等の清掃やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0050】
なお、延長アーム76は、上記実施例においては、昇降リンク60の前部に折り畳み式に連結して構成したが、これを引き出し式に構成することは自由であって、昇降リンク60内部に収納する構成にすればよい。
【0051】
以上述べたように、本件発明の実施例は、モーアデッキ6aが作業姿勢にあるときには、モーアデッキ6aのほとんどの部分が、機体2の前部の下方空間部62内に位置するように、機体2側に装備しているため、モーアデッキ6aと機体2とを合わせた前後の長さを短くすることができる。したがって、フロントモーア6を装備した構成でありながら、そのモーア6の回転刈刃5の回転の外周が前部機枠の前端からやや前位となる程度に設定でき、作業車両は全長が短く、走行作業中に小回りが効いて、旋回等が楽にでき、作業を効率的に行うことができるものとなっている。
【0052】
そして、本実施例は、モーアデッキ6aを昇降時に前側に寄せる機構がきわめて簡単な収納・折り畳み式に設けた延長アーム76で構成されているため、収納位置と使用位置との切り替えが簡単にできる利点があると共に、使用時に嵩張ることがなく、昇降移動に何の支障にもならない優れたものとなった。
【0053】
また、本実施例は、モーアデッキ6aを前方側に寄せる機構を簡単な延長アーム76から構成し、この延長アーム76の不使用時には昇降リンク60の側に収納して芝草の刈取作業中といえども、ほとんど邪魔にならない。また延長時には上記延長アーム76を昇降リンク60から前方に延長して固定し、モーアデッキ6aを付け替えるだけの簡単な操作で、モーアデッキ6aを確実に前側に寄せることができて機体2の前部に起立状態でメンテナンスが容易にできる姿勢にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、家庭用、産業用の乗用芝刈機として有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例の乗用芝刈機の要部左側面図である。
【図2】図1の乗用芝刈機のブロア配置を説明する要部正断面図である。
【図3】図1の乗用芝刈機のモーアと前輪駆動部の平面図である。
【図4】図1の乗用芝刈機の動力伝達系統を説明する要部左側面図である。
【図5】図1の乗用芝刈機のシュータとブロアケースの接続部の側面図(図5(a))と図5(a)の矢印A方向の矢視図(図5(b))である。
【図6】図1の乗用芝刈機のシュータとブロアケースの接続部の左側面図である。
【図7】図1の乗用芝刈機のモーアの前部を持ち上げたときのモーア取付部の左側面図である。
【図8】図1の乗用芝刈機のモーア取付部の平面図である。
【図9】図1の乗用芝刈機のモーアを芝刈りが可能な状態に設置したときのモーア取付部の側面図である。
【図10】図1の乗用芝刈機のモーアの昇降リンクの平面図(図10(a))と側面図(図10(b))である。
【符号の説明】
【0056】
2 走行機体 3 前輪
4 後輪 5 カッター
6 モーア 6a モーアデッキ
6b 案内ガイド部 7 フロア
8 ステアリングコラム 10 ハンドル
11 操縦席 12 エンジン
12a エンジン出力軸 13 ラジエータ
14 ボンネット 15 自在継手軸
16 コレクタ 17 ブロア
18 ブロアケース 18a シール部材
20 ダクト 21 シュータ
23 前輪伝動ケース 24 ミッションケース
25 ミッション入力軸 25a ラッパ状部材
25b カップリング 25c 回転軸
26、29 プーリ 27 フェンダ
28 モーア用PTO軸 30 ベルト
31,33,34,35,48 ギア
32 ブロア駆動用クラッチ 36 ブロア駆動軸
37 カウンタギア 38 HST入力用ギア
39 HSTポンプ駆動軸 41 HSTポンプ
42 HSTモータ 43 HSTモータ軸
44 ドライブピニオン 45 ベベルギア
46 連動ギア 47 中間軸
49 回動軸 50L,50R スプロケット
52L,52R チェン 53L,53R 前輪駆動軸
54L,54R スプロケット 55 後輪駆動軸
56 後輪駆動入力軸 60 モーア昇降リンク
62 下方空間部 63 モーア支持杆
64 ファイナルケース 65 取付プレート
66 連結ピン 67 後部リンク
69 ゲージ輪 70 L型連結杆
71 リフトロッド 73 取付部材
74 リフトアーム 75 昇降油圧シリンダ
76 延長アーム 77 連動アーム
78 固定ピン 79 入力伝動ボックス
80 ユニバーサルジョイント 81 伝動軸
A 動力伝達機構 B ブロア駆動系
C 走行駆動系
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成18年10月31日(2006.10.31)
【代理人】 【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義

【識別番号】100133318
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 向日子


【公開番号】 特開2008−109914(P2008−109914A)
【公開日】 平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願番号】 特願2006−296537(P2006−296537)