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【発明の名称】 生分解性樹脂からなるコード式草刈機に用いられるコード
【発明者】 【氏名】田中 一也

【氏名】味原 祐二

【氏名】熊谷 文一

【要約】 【課題】コード式草刈機を使用する際に安全性を確保し、かつ、コードが切断、脱落、飛散した場合でも自然環境中で分解し、かつ必要な切断力を有するコード式草刈機に用いられるコードを提供する。

【構成】JIS K7127に基づく23℃における引張弾性率が10MPa以上1000MPa以下である生分解性樹脂からなるコード式草刈機に用いられるコードを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K7127に基づく23℃における引張弾性率が10MPa以上1000MPa以下である生分解性樹脂からなるコード式草刈機に用いられるコード。
【請求項2】
上記生分解性樹脂が、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステル、及び、ジオールとジカルボン酸と乳酸とのポリエステルから選ばれる少なくとも1種類の生分解性樹脂組成物を含有することを特徴とする請求項1記載のコード式草刈機に用いられるコード。
【請求項3】
上記生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンアジペート・テレフタレート、及び、1,4−ブタンジオールとコハク酸と乳酸とのポリエステルから選ばれる少なくとも1種類以上の生分解性樹脂組成物からなることを特徴とする請求項2に記載のコード式草刈機に用いられるコード。
【請求項4】
上記生分解性樹脂が、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステル、ジオールとジカルボン酸と乳酸系樹脂とのポリエステルから選ばれる少なくとも1種類以上からなる生分解性樹脂組成物と、上記生分解性樹脂全体に対して1質量%以上40質量%以下の割合となる乳酸系樹脂とを配合したものである請求項1乃至3のいずれかに記載のコード式草刈機に用いられるコード。
【請求項5】
上記生分解性樹脂100質量部に対して、粒状フィラー、板状フィラー又はその両方からなるフィラーを1質量部以上、20質量部以下の割合で配合した、請求項1乃至4のいずれかに記載のコード式草刈機に用いられるコード。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のコード式草刈機に用いられるコードを用いた、コード式草刈機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、生分解性を有するコード式草刈機に用いられるコードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、草刈機の切断を行う部品としては、回転する金属刃が取り付けられていたが、取り扱う際に脚部等に接触すると傷つけてしまう危険を伴うため、図1のようなコード式草刈機が開発された。これは柄13で取っ手14と連結された回転盤11に、金属刃の代わりに、ナイロン製のコード12を切断部品として用い、このコード12を回転させて草を払い切るものである。誤って人体の脚部等に接触しても質量や切断力が金属刃よりも小さいため、人体に接触しても重傷となることを避けることができる。
【0003】
このナイロン製のコードは、強度的に優れており、草刈機としては十分に切断力を有するが、それでも使用中にこのコード自体が切断される可能性が皆無ではなかった。ところがこのナイロン製コードは自然界ではほとんど分解しないため、切断されたコードが脱落、飛散すると、半永久的に放置されるおそれがあり、環境保護の観点から優れた材料であるとは言い難かった。
【0004】
これに対して、特許文献1に記載のような、生分解性樹脂又は光分解性樹脂を含有した樹脂製回転草刈刃が提案されている。このような樹脂製の回転草刈刃は、刃が欠けて破片が飛散しても、その破片は自然界で分解し、環境保護の観点からは優れたものである。
【0005】
また、コード式草刈機に用いられるコードとして、ポリ乳酸などの生分解性樹脂からなる材料を押出成形し、延伸加工、さらに熱加工処理してなる草刈機に用いられるモノフィラメントが、特許文献2に開示されている。これはコードが切断、飛散しても、その切断された部分は自然界で分解するため、同様に環境保護の観点からは優れたものである。
【0006】
【特許文献1】特開平7−184446号公報
【特許文献2】特開2002−105750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のような樹脂製回転草刈刃は、金属刃に近い切断力があるため、同様に取り扱いに危険を伴い、人体に接触すると重傷となるおそれがあった。
【0008】
また、特許文献2に記載のモノフィラメントの中でも、生分解性樹脂の中でも特にポリ乳酸のような硬質の樹脂を加工して得られるモノフィラメントは、引張弾性率が高すぎるため、コード式であっても人体に接触すると重傷となるおそれがあった。
【0009】
さらに、特許文献2には可塑剤を配合することにより軟質化する手法が記載されているが、可塑剤を配合すると結晶化速度が向上するとともに、可塑剤が成形体外へブリードアウトするために、生分解性樹脂の結晶化度が向上するため、時間経過とともに剛性が向上していき、やがて危険な強度になる場合があった。
【0010】
そこでこの発明は、使用時における安全性を確保し、かつ、切断、脱落、飛散した場合にも自然環境中で分解し、環境保護の観点からも優れたコード式草刈機に用いられるコードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、JIS K7127に基づく23℃における引張弾性率が10MPa以上1000MPa以下である生分解性樹脂からなるコード式草刈機に用いられるコードにより、上記の課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかるコード式草刈機に用いられるコードは、上記の弾性率である生分解性樹脂を使用することで、草刈機使用時における安全性を確保するとともに、十分な切断力を有するものとなる。また、生分解性樹脂からなるため、切断、脱落、飛散した場合にも自然環境中で分解し、環境保護の観点からも優れたコード式草刈機に用いられるコードとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、JIS K7127に基づく23℃における引張弾性率が所定の値の範囲である生分解性樹脂からなるコード式草刈機に用いられるコードである。このコード式草刈機とは、図1のように、回転盤から外方向に延びたコード12が、回転盤11の回転とともに周囲の草に当たることで、その草を切断する草刈機である。
【0014】
上記の引張弾性率は、10MPa以上である必要があり、100MPa以上であると好ましく、200MPa以上であるとより好ましい。10MPa未満であると、草に当たっても切断することがほとんどできなくなってしまい、草刈機に用いても草刈機としての機能を十分に発揮できないものとなってしまう。一方で、1000MPa以下であることが必要であり、900MPa以下であると好ましく、800MPa以下であるとより好ましい。1000MPaを上回ると、剛性が高すぎるために、回転時に人体に接触すると、身体に重傷を負わせるなど、安全性が懸念される場合がある。
【0015】
このような生分解性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステル、及び、ジオールとジカルボン酸と乳酸とのポリエステル等が挙げられ、これらから選ばれる一種類、又は複数種類からなる生分解性樹脂組成物を用いるとよい。
【0016】
上記の脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸以外のポリヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合して得られる脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステルなどが挙げられる。なお、上記のポリ乳酸以外の、とは、D−乳酸、L−乳酸又はこれらの両方のみからなるポリ乳酸を含まないことを意味し、構成単位の一部に乳酸単位を有する脂肪族ポリエステルは含むことをいう。これは、乳酸のみからなるポリ乳酸は引張弾性率が高すぎ、1000MPaを超えるため、単独では上記生分解性樹脂として好ましくないためである。
【0017】
上記「ポリヒドロキシカルボン酸」としては、例えば、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体や共重合体が挙げられる。
【0018】
上記の「脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル」としては、例えば、次に挙げる脂肪族ジオール及び脂肪族ジカルボン酸の中からそれぞれ1種類或いは2種類以上選んで縮合するか、又は、その縮合したものを必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップして所望のポリマーとして得ることができる重合体を挙げることができる。
【0019】
ここで、上記の「脂肪族ジオール」としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、上記の「脂肪族ジカルボン酸」としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等を挙げることが出来る。
【0020】
上記の「環状ラクトン類を開環縮合した脂肪族ポリエステル」に用いる環状ラクトン類としては、例えば、環状モノマーであるε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等が挙げられ、その脂肪族ポリエステルは、これら環状モノマーから1種類又は2種類以上を選択して重合することにより得ることができる。
【0021】
上記の「合成系脂肪族ポリエステル」としては、例えば、環状酸無水物とオキシラン類とのポリエステルを挙げることができ、このオキシラン類としては例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピオンオキサイドが挙げられる。
【0022】
このような、上記の脂肪族ポリエステルの具体的な物質としては、コハク酸と1,4ブタンジオールとをエステル重合したポリブチレンサクシネートや、コハク酸と1,4ブタンジオールとアジピン酸とをエステル重合したポリブチレンサクシネート・アジペートが挙げられ、製品としては、昭和高分子(株)製の「ビオノーレ」シリーズが挙げられる。また、ε−カプロラクトンを開環縮合して得られるダイセル化学工業(株)製「セルグリーン」シリーズが商業的に入手可能である。
【0023】
また、この発明における他の生分解性樹脂組成物として用いられる上記の芳香族脂肪族ポリエステルとしては、脂肪族鎖の間に芳香環を導入することによって結晶性を低下させたものが挙げられる。例えば、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分、および脂肪族ジオール成分を縮合して得られる。
【0024】
ここで、上記の芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。また、上記の脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。さらに、上記の脂肪族ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。なお、これらの芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分あるいは脂肪族ジオール成分は、それぞれ2種類以上を用いてもよい。
【0025】
この発明において、最も好適に用いられる上記の芳香族ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、上記の脂肪族ジカルボン酸成分はアジピン酸であり、上記の脂肪族ジオール成分は1,4−ブタンジオールが挙げられる。これらはいずれも工業的商業的に入手しやすいため好ましい。これらから得られる上記の芳香族脂肪族ポリエステルは、ポリブチレンアジペート・テレフタレートとなる。
【0026】
このような上記の芳香族脂肪族ポリエステルとしては、上記の他に、例えば、テトラメチレンアジペートとテレフタレートとの縮合体、ポリブチレンアジペートとテレフタレートとの縮合体等が挙げられる。このうち、テトラメチレンアジペートとテレフタレートとの縮合体としては、例えば、Eastman Chemicals社製の「Eastar Bio」が商業的に入手することができる。また、ポリブチレンアジペートとテレフタレートとの縮合体としては、BASF社製の「エコフレックス」が商業的に入手することが出来る。
【0027】
また、この発明における他の生分解性樹脂組成物として用いられる、ジオールとジカルボン酸と乳酸とのポリエステルとは、ジオールとジカルボン酸とによるエステル重合部分と、乳酸がエステル重合した乳酸重合部分とが一つの重合体の中に混在しているものである。
【0028】
その混在の仕方としては、ジオールとジカルボン酸と乳酸とがランダムに重合したランダム重合体、ジオールとジカルボン酸との重合部分とポリ乳酸である重合部分とが交互に主鎖に現れるブロック的な重合体、ジオールとジカルボン酸との重合部分とポリ乳酸である重合部分の一方が主鎖を形成し、もう一方が側鎖として連結したグラフト的な重合体などが挙げられる。これらの中でも、特に耐衝撃性改良効果と透明性が高いために、ブロック的な重合体か、グラフト的な重合体を用いるとより好ましい。ランダム的な重合体の具体例としては、三菱化学(株)製「GS Pla」シリーズが挙げられる。また、ブロック的な重合体、又は、グラフト的な重合体の具体例としては、大日本インキ化学工業(株)製「プラメート」シリーズが挙げられる。
【0029】
上記のエステル重合部分と乳酸重合部分とを有する重合体のうち、乳酸重合部分の割合としては、10質量%以上であると好ましく、20質量%以上であるとより好ましい。10質量%未満であると耐熱性の維持が不十分となるおそれがあるためである。一方で、80質量%以下であると好ましく、70質量%以下であるとより好ましい。80質量%を超えると耐衝撃性付与効果が不十分となってしまい、よりはっきりとした効果を得るには70質量%以下であるとよい。
【0030】
このエステル重合部分と乳酸重合部分とを有する重合体の製造方法は特に限定されるものではないが、ジオールとジカルボン酸とを脱水縮合した構造を持つポリエステル、又は、ポリエーテルポリオールを、ラクチドと開環重合、又は、エステル交換反応させて得る方法や、ジオールとジカルボン酸とを脱水縮合した構造を持つポリエステル、又は、ポリエーテルポリオールを乳酸系樹脂と脱水・脱グリコール縮合や、エステル交換反応させて得る方法等が挙げられる。
【0031】
ここで用いる上記のジオールとしては、特に限定されないが、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ペプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖状ジオール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール等の分岐鎖状ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオールが挙げられる。
【0032】
また、ここで用いる上記のジカルボン酸としては、特に限定はされないが、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の直鎖状ジカルボン酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、エチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、2−エチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−エチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、2−エチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−エチルアジピン酸、メチルグルタル酸等の分岐状ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、ビスフェノールA、ビフェノール等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0033】
また、ジオールとジカルボン酸と乳酸とのポリエステルは、さらに、イソシアネート化合物やカルボン酸無水物を用いて分子を架橋し、所定の分子量に調整することが可能である。ただし、調整後の分子量は5万以上であると好ましく、10万以上であるとより好ましい。分子量が5万未満であると耐久性が不十分で、草刈機に用いられるコードとして用いてもすぐに切断されるおそれが高くなるためである。一方で、30万以下であると好ましく、25万以下であるとより好ましい。30万を超えると分子量が高すぎてコードに加工するのが困難になることがあるためである。また同時に、上記の引張弾性率の値を満たさない重合体を架橋することで、上記の引張弾性率の値を満たすものとしてもよい。
【0034】
ここまで列挙した上記生分解性樹脂組成物は1種類のみで用いても、それらの混合物で用いてもよいが、その中でも特に、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンアジペート・テレフタレートから選ばれる少なくとも一種類の樹脂、あるいはこれらの混合物を用いると、この発明の目的に適した引張弾性率を得やすいため、好ましい。
【0035】
またさらに、この発明で用いる上記生分解性樹脂として、上記生分解性樹脂組成物に乳酸系樹脂を混合してもよい。この発明にかかるコード式草刈機に用いられるコードは、切る対象である芝の種類によって、適切な長さや堅さが異なるため、JIS K7127に基づく23℃における引張弾性率が10MPa以上、1000MPa以下となる範囲において、弾性率の高い乳酸系樹脂を混合することで、上記生分解性樹脂組成物を単独で用いた場合よりも、弾性率を芝の種類に対応させてより高めたコードを得ることができる。
【0036】
この場合における上記乳酸系樹脂の配合量は、上記生分解性樹脂組成物と上記乳酸系樹脂とを合わせた上記生分解性樹脂全体中に占める上記乳酸系樹脂の割合が、1質量%以上であると好ましく、5質量%以上であるとより好ましく、10質量%以上であるとさらに好ましい。かかる範囲を下回る場合、上記乳酸系樹脂を配合することによる弾性率の向上効果は十分には得られなくなってしまう。一方で、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であるとより好ましく、20質量%以下であるとさらに好ましい。かかる範囲を上回る場合、弾性率が大きく向上してしまうため、使用時、及び、破損時における危険性が著しく高くなる場合がある。
【0037】
なお、ここで乳酸系樹脂とは、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸である、ポリ(DL−乳酸)やこれらの混合体をいい、さらには、これらと、α−ヒドロキシカルボン酸やジオール/ジカルボン酸との共重合体であってもよい。この時、乳酸系樹脂のD−乳酸とL−乳酸の比率は任意の割合を使用することができる。乳酸系樹脂の代表的なものとしては、三井化学(株)製「レイシア」シリーズ、Nature Works社製「Nature Works」シリーズなどが挙げられる。
【0038】
これらの乳酸系樹脂の重合法としては、縮重合法、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮重合法ではL−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成を持った乳酸系樹脂を得ることができる。
【0039】
また、開環重合法では乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、選ばれた触媒を使用してポリ乳酸系重合体を得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、結晶性をもつ乳酸系樹脂を得ることができる。
【0040】
さらに、耐熱性を向上させるなどの必要に応じ、少量共重合成分として、テレフタル酸のような非脂肪族ジカルボン酸及び/又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオールを用いてもよい。さらにまた、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などを使用できる。
【0041】
上記の乳酸系樹脂に共重合される上記の他のヒドロキシ−カルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシn−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0042】
また、上記の乳酸系樹脂に共重合される上記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等があげられる。また、上記脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等が挙げられる。
【0043】
さらに、上記の乳酸系樹脂の重量平均分子量の好ましい範囲としては、5万から40万、より好ましくは10万から25万となる。この範囲を下回る場合は実用物性がほとんど発現されず、上回る場合には、溶融粘度が高すぎて成形加工性に劣ってしまう。
【0044】
さらに、この発明で用いる上記生分解性樹脂は、粒状フィラー、板状フィラー、又はその両方からなるフィラーを配合したものでもよい。これらのフィラーを配合することによって、引張弾性率を適宜調整することが出来、所望の切断力に合わせることが出来る。
【0045】
なお、ここで上記の粒状フィラー、及び板状フィラーの違いは、フィラー研究会編「フィラー活用辞典」の10〜16頁、および、23〜30頁に記載されている基準に準拠し、すなわち、2〜30のアスペクト比を有するものを板状フィラーとし、アスペクト比が2以下、又はアスペクト比を有しないものを粒状フィラーとする。
【0046】
このような上記板状フィラーの具体例としては、タルク、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、合成マイカ、モンモリロナイト、黒鉛、金属箔、板状炭酸カルシウム、板状アルミナなどが挙げられる。また、上記粒状フィラーの具体例としては、炭酸カルシウム、シリカ、アクリルビーズ等の有機ビーズ、各種バルーン、アルミナ、酸化チタン、グレー、金属粉、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、カーボンブラック、チタン酸バリウム、各種フェライトなどが挙げられる。この中でも特に、コスト、および、衝撃強度の面から、板状フィラーとしてはタルク、粒状フィラーとしては炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0047】
また、上記板状フィラー、および、上記粒状フィラーの表面を、高級脂肪酸、チタン酸、メタクリルシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシランなどのシランカップリング剤で処理することによって、フィラーの分散性、および、樹脂との密着性を向上させてもよい。
【0048】
上記板状フィラーの粒径としては、1.5μm以上であると好ましく、2.0μm以上であるとより好ましい。一方で、10.0μm以下であると好ましく、6.0μm以下であるとより好ましい。また、粒状フィラーの粒径としては、0.1μm以上であると好ましく、0.5μm以上であるとより好ましい。一方で、1.5μm以下であると好ましく、1.3μm以下であるとより好ましい。かかる範囲を下回ると、フィラーの凝集により草刈機に用いられるコードの強度低下を生じ、かかる範囲を上回ると、フィラーが破壊の開始点となるために草刈機に用いられるコードの著しい機械物性の低下を生じる。なお、ここで示した平均粒径の範囲の値はレーザー回折法により測定した値である。
【0049】
これらのフィラーの配合量としては、上記生分解性樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上の割合で配合すると好ましく、5質量部以上の割合で配合するとより好ましい。かかる範囲を下回る場合、弾性率の向上効果が得られない場合がある。一方で、20質量部以下の割合で配合すると好ましく、15質量%以下の割合で配合するとより好ましい。かかる範囲を上回る場合、草刈機に用いられるコードの弾性率は向上するものの、著しく脆くなってしまうため、実用上問題を生じる場合があるためである。
【0050】
また、この発明で用いる生分解性樹脂は、上記の生分解性樹脂組成物や上記乳酸系樹脂、上記のフィラー以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、顔料、染料、着色剤、滑剤、核剤、可塑剤等の添加剤を処方することができる。
【0051】
このような上記生分解性樹脂を用いたコードを、コード式草刈機に用いられるコードとして用いると、一般的な芝だけでなく、一部の特殊な芝に対しても有効な切断力を発揮するコードを得ることができ、また、作業中に人体に当たったとしても、重大な怪我に繋がる可能性を十分に抑えることができる。
【0052】
具体的な、この発明にかかるコード式草刈機に用いられるコードの製造方法は、上記生分解性樹脂組成物、及び必要に応じてその他の上記乳酸系樹脂やフィラー、添加剤等を十分に乾燥して水分を除去した後、単軸押出機、二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出して、空気中、冷水中、温水中、あるいは、冷却キャスト等で十分に冷却した後、巻き取り機にてストランド形状にした樹脂を巻き取ることにより草刈機に用いられるコードを作製する。このとき、上記生分解性樹脂の種類、及び、その他添加剤の配合量によって混合樹脂の溶融粘度が変化することを考慮して、溶融押出温度を適宜選択することが好ましい。
【0053】
例えば、ポリブチレンサクシネート・アジペートの場合は、160℃から230℃が好ましい温度範囲として選択される。また、ストランド形状に押出した際、0.1倍以上、6.0倍以下、より好ましくは、0.5倍以上、3.0倍以下、さらに好ましくは、1.0倍以上、2.5倍以下の倍率で延伸することにより、本発明の草刈機に用いられるコードの弾性率を任意に調整することができる。このときの延伸温度としては、生分解性樹脂の種類、その他添加剤の配合量、及び、延伸倍率等によって弾性率が変化するため適宜選択することが好ましい。例えば、ポリブチレンサクシネート・アジペートの場合は、80℃〜120℃の範囲が好ましい温度範囲として選択される。
【0054】
このようにして得られたコード式草刈機に用いられるコードの径は、1mm以上であると好ましい。一方で5mm以下であると好ましく、3mm以下であるとより好ましい。ただし、コードの断面は円状に限られることはなく、角形、星形等でもよい。コードの回転数は用途により適宜選択されるが、9000回転/分以上13000回転/分以下が、通常選択されうる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げてこの発明をより具体的に示す。まず、実施例中で用いる測定方法について説明する。
【0056】
<引張弾性率測定方法>
JIS K7127に基づき、長さ300mm、幅5mm、厚み0.2mmの短冊状試験片を用いて、(株)東洋精機製作所製:テンシロンII型万能試験機で温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で引張弾性率の測定を行った。
【0057】
<草刈性能測定方法>
(株)マキタ製草刈機:MUM252に直径2mmφ、長さ300mmの草刈機に用いられるコードを取り付け、幅50mm、長さ2000mmの雑草が約5cmに生茂った土地を長手方向に2往復した時に雑草が1cm以下まで刈取れた面積比率で評価した。1cm以下まで刈取れた面積比率が全体の70%以上であるものを合格とした。
【0058】
<生分解性測定方法>
生分解性の評価として、簡易コンポスト試験を実施した。市販されている家庭用コンポスターに、園芸用の腐葉土10kgに対し、市販されているドッグフード5kgを混合して投入し、さらに水500mlを加え、厚み200mmの埋土とした。直径2mm、長さ10cmのコード状サンプルを、外部と接触し、かつ、崩壊して散乱することを極力抑えるため、60mm×150mmの金網(3mm目)2枚で構成されるサンプルホルダーに挟み込んだ上、細い針金を網目に通してサンプルを綴じ込んだ。サンプルは、コンポスターの埋土中に垂直になるようにサンプルホルダーと共に埋設した。サンプルホルダーの下底辺は、埋土の表面から25mmの高さに、また上底辺は、埋土の底面から25mmの高さに配置した。コンポスターの温度は60℃一定とした。1週間後にサンプルを取り出し、状態を観察して崩壊の有無を確認した。サンプルの状態は以下のように評価し、完全に崩壊しているものを合格とした。
○:完全に崩壊
×:サンプルに亀裂が生じているが形状は保持、又は元の形態を保持
【0059】
(実施例1)
生分解性樹脂として昭和高分子(株)製:ビオノーレ1003(ポリブチレンサクシネート)を用い、40mmφ同方向二軸押出機にて200℃で混練した後、ストランドダイから押出した。次いで、20℃の恒温水槽にて冷却し、巻き取り機にて2mmφ×1000mmの草刈機に用いられるコードを巻き取った。なお、コードの回転数は10000回転/分とした。得られたコードを用いて、草刈性能、及び、生分解性の評価を行った。続いて、得られたコードを真空プレス(北川精機製 成型プレスVH1−1747)を用いて200℃、10.5MPaで厚みが0.2mmのシート状にプレスしたものを幅5mm、長さ300mmに切り出し、引張弾性率の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0060】
【表1】


【0061】
(実施例2)
生分解性樹脂として、三菱化学(株)製:GS Pla AZ91T(1,4−ブタンジオール、コハク酸、乳酸の共重合体)を用いた以外は、実施例1と同様の手順により、草刈性能、及び、生分解性の評価用として草刈機に用いられるコード、引張弾性率の評価用としてシートの作製を行った。得られたサンプルについて、引張弾性率、草刈性能、生分解性の評価を行った結果を表1に示す。
【0062】
(実施例3)
生分解性樹脂として、BASF社製エコフレックスF(ポリブチレンアジペート・テレフタレート)を用いた以外は、実施例1と同様の手順により、草刈性能、及び、生分解性の評価用として草刈機に用いられるコード、引張弾性率の評価用としてシートの作製を行った。得られたサンプルについて、引張弾性率、草刈性能、生分解性の評価を行った結果を表1に示す。
【0063】
(実施例4)
乳酸系樹脂として、Nature Works社製Nature Works 4032D(ポリ乳酸)を用い、上記生分解性樹脂組成物としてGS Pla AZ91T(1,4−ブタンジオール、コハク酸、乳酸の共重合体)を用いて、これらの生分解性樹脂組成物と乳酸系樹脂とを質量比90:10の割合でドライブレンドした後、40mmφ同方向二軸押出機にて200℃で混練して得られた生分解性樹脂について、実施例1と同様の方法で草刈性能、及び、生分解性の評価用として草刈機に用いられるコード、引張弾性率の評価用としてシートの作製を行った。得られたサンプルについて、引張弾性率、草刈性能、生分解性の評価を行った結果を表1に示す。
【0064】
(実施例5)
生分解性樹脂組成物として、GS Pla AZ91Tを用い、乳酸系樹脂としてNature Works 4032Dを用いて、これらを質量比70:30の割合でドライブレンドして実施例4と同様の方法で混練した生分解性樹脂について、実施例1と同様の方法で草刈性能、及び、生分解性の評価用として草刈機に用いられるコード、引張弾性率の評価用としてシートの作製を行った。得られたサンプルについて、引張弾性率、草刈性能、生分解性の評価を行った結果を表1に示す。
【0065】
(実施例6)
生分解性樹脂組成物として、GS Pla AZ91Tを用い、乳酸系樹脂としてエコフレックスFを用いて、これらを質量比80:20の割合でドライブレンドして実施例4と同様の方法で混練した生分解性樹脂について、実施例1と同様の方法で草刈性能、及び、生分解性の評価用として草刈機に用いられるコード、引張弾性率の評価用としてシートの作製を行った。得られたサンプルについて、引張弾性率、草刈性能、生分解性の評価を行った結果を表1に示す。
【0066】
(実施例7)
板状フィラーとして、日本タルク(株)製:ミクロエースL1(タルク、平均粒径4.9μm)を用い、生分解性樹脂としてGS Pla AZ91Tを用い、これと板状フィラーとを質量比100:20の割合でドライブレンドして、実施例1と同様の方法で草刈性能、及び、生分解性の評価用として草刈機に用いられるコード、引張弾性率の評価用としてシートの作製を行った。得られたサンプルについて、引張弾性率、草刈性能、生分解性の評価を行った結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
生分解性樹脂のかわりに(株)ユニチカ製:A1030BRT(ポリアミド6)を用い、混練温度を260℃とした以外は実施例1と同様の方法で草刈性能、及び、生分解性の評価用として草刈機に用いられるコード、引張弾性率の評価用としてシートの作製を行った。得られたサンプルについて、引張弾性率、草刈性能、生分解性の評価を行った結果を表1に示す。
【0068】
(比較例2)
この発明にかかる生分解性樹脂に含まれない、ポリ乳酸であるNature Works 4032Dのみを用いて、実施例1と同様の方法で草刈性能、及び、生分解性の評価用として草刈機に用いられるコード、引張弾性率の評価用としてシートの作製を行った。得られたサンプルについて、引張弾性率、草刈性能、生分解性の評価を行った結果を表1に示す。
【0069】
(比較例3)
生分解性樹脂組成物としてGS Pla AZ91Tを用い、乳酸系樹脂としてNature Works 4032Dを質量比30:70の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で草刈性能、及び、生分解性の評価用として草刈機に用いられるコード、引張弾性率の評価用としてシートの作製を行った。得られたサンプルについて、引張弾性率、草刈性能、生分解性の評価を行った結果を表1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】コード式草刈機の概略図
【符号の説明】
【0071】
11 回転盤
12 コード
13 柄
14 取っ手
【出願人】 【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二

【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久

【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由

【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳


【公開番号】 特開2008−46(P2008−46A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171401(P2006−171401)