トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業

【発明の名称】 植物の播種前処理方法
【発明者】 【氏名】谷脇 憲

【氏名】若松 俊男

【氏名】山下 正照

【氏名】光瀬 愛子

【要約】 【課題】播種前の種子類に適切かつ簡易に行える前処理を施すことにより、種子類の性状を回復して発芽率,発芽勢,育勢等を向上するとともに、発芽後の育勢をより強化することができる植物の播種前処理方法を提供する。

【解決手段】所定間隔を隔てて配置された一対の電極11,12間に電位を印加して上記電極11,12間内に電界を形成し、発芽育成対象とする植物の種子類を、播種に先立って上記電極11,12間の電界内に所定時間保持したのち播種する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔を隔てて配置された一対の電極間に電位を印加して上記電極間内に電界を形成し、発芽育成対象とする植物の種子類を、播種に先立って上記電極間の電界内に所定時間保持する植物の播種前処理方法。
【請求項2】
発芽育成対象とする植物の種子類を、上記電極間の電界内に保持する前に、−10℃〜−30℃の低温に所定時間保持する植物の播種前処理方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、播種前の種子類に対して前処理を行うことにより、発芽ないしは発芽後の育勢を強化する植物の播種前処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
良質の種子類を確保し、それを良好な状態で保存管理することが、良好な発芽ないしは発芽後の育勢にとって重要な要件とされている。
【0003】
良い種子類の確保と、良い状態の種子類の保存管理が最大の課題であり、「苗半作」といわれるように、良い苗を育てることがその種子類の播種後の自立育勢を強く支え、収穫にも良い結果が現われる。種苗の良否は、その後の自立生育過程での干ばつ,冷害等に対する耐性等に大きく影響し、収量や品質の善し悪しを決める大きな要因になる。
【0004】
従来、良質の種子類を確保するために、種子類に外傷をつけないように細心の注意をはらって取り扱い、また、殺虫,殺菌,防黴のための薬品処理、X線や紫外線処理等の物理処理を施し、種子類の乾燥度を所定値に乾燥させ、場合によっては窒素ガスや不活性ガスを種子類の容器内に充填して、適温,適湿および遮光調整をして保存庫や倉庫等に保管されている。
【0005】
上記のように管理ないしは処理された種子類であっても、種子類の粒全てに対して均一にしかも確実な処理が尽くされないために、播種後の発芽率や初期育勢が不完全なものとなっている。例えば、未発芽や不揃いの発芽等が発生すると、そのような不成績の箇所を是正するために、多くの労力と経費が費やされている。
【0006】
また、苗床等で育苗したものを移植作付けする場合でも、上記の不十分な処理により発芽不良や育勢不良が発生し、良質の移植用の苗が満足に得られないという問題がある。このような問題を回避するための方策として、ハウス栽培,育苗器の使用,温床の使用、さらには温度管理,水分管理,日照調整,薬品の使用管理等が行なわれている。上記薬品としては、例えば、エチレン,ジベレリン,サイトカイニン,アブシジン酸等の植物ホルモンが用いられている。
【0007】
そして、種子類は、播種から結花,登熟収穫まで科族品種により様々な経緯をとるが、大方は1年のサイクルで完結される。このような状況から1年のサイクルに合った種子類の保存が必要になってくる。さらに、1年以上保管された種子類は、一般に発芽率が低下し、育勢も低下する現象が見られる。
【0008】
上記の1年以上保管された種子類の発芽率の低下や育勢の低下等は、植物の生理現象である生理代謝が進行していることに起因していると考えられ、このような現象を抑制するために、種子類の保存時に酸素を断つとともに低温で保存し、代謝活動を押えて種子類の鮮度の低下を低減させている。上記のような生理代謝の進行は、1年以内の保存期間であっても同様に進行しているとされ、この保存中の種子類の鮮度劣化を播種前に何らかの方法で回復できれば、発芽率,育勢等の改善が可能であると期待できる。
【0009】
さらに、種子類の保管庫の環境を適正化するものとして、マイナス電子を印加した空気を外部から保管庫内に供給して、布製袋等に収容した種子類にマイナス電子を帯電させ、マイナス電子による還元作用で種子類の酸化ないしは劣化を防止して品質の維持を図ることが知られている。
【特許文献1】特開平7−135899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のような良質な種子類の確保においては、種子類の粒全てに対して均一にしかも確実な処理が尽くされないために、発芽不良や育勢不良が高い確率で発生するという問題がある。特に、上記特許文献1のように、マイナス電子を印加した空気を保管庫内に循環させるものにおいては、空気流が流路抵抗の少ない箇所を流通するために、積み上げられた収納袋内の奥深くまで流れ込むことは期待できない。したがって、全ての種子粒が、気流に十分に曝されないので、種子類の変質を保管庫全域にわたって確実に防止することができない。しかも1年以上の長期間にわたってマイナス電子を印加した空気を保管庫内に循環させ続けなければならず、保管にかかるコストが大幅にアップしてしまう。
【0011】
上記のような事情により、発芽率や発芽勢が低下するのでこの低下分を見込んで、播種の粒数を所要株数の2ないし3倍とし、その中から良好な苗を選択するという、いわゆる歩留まりの悪い不経済な栽培を行なっている。これに伴って、発芽ないしは育苗のためのスペース確保や労力増大等の問題が不可避なものとなっている。
【0012】
さらに、上記のように、種子類の保管中に酸素を遮断するとともに、低温の保存環境を形成することは、設備規模が大きくなり、しかも消費電力の増大を招き、イニシャルおよびランニングコストが高騰している。
【0013】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、播種前の種子類に適切かつ簡易に行える前処理を施すことにより、種子類の性状を回復して発芽率,発芽勢,育勢等を向上するとともに、発芽後の育勢をより強化することができる植物の播種前処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の植物の播種前処理方法は、所定間隔を隔てて配置された一対の電極間に電位を印加して上記電極間内に電界を形成し、発芽育成対象とする植物の種子類を、播種に先立って上記電極間の電界内に所定時間保持することを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
上記植物の播種前処理方法によれば、播種前の種子類を電極間の電界内に所定時間保持することにより、上記電界中に保持された種子類の構成有機分子が電界によってコントロールされ、種子類の有機分子の生理代謝が回復すると考えられる。その結果、電界環境下において電子の挙動が抑制されるものであるから、種子類の全ての粒に関して休眠打破効果を得られ、発芽率,発芽勢,育勢等が向上し、種子類全体にわたってばらつきの少ない成長が得られる。
【0016】
本発明において、発芽育成対象とする植物の種子類を、上記電極間の電界内に保持する前に、−10℃〜−30℃の低温に所定時間保持する場合には、播種前の種子類を−10℃〜−30℃に冷却保持することで、種子類の有機分子の生理代謝が回復すると考えられる。この理由については、必ずしも明らかではないが、冷却による冷熱ショックで生理代謝が回復し、休眠打破効果を得られ、発芽率,発芽勢,育勢等が向上し、種子類全体にわたってばらつきの少ない成長が得られるものと考えられる。そして、上述した電界処理と組み合わせることにより、休眠打破効果が重畳的に作用し、発芽率,発芽勢,育勢等がさらに向上し、種子類全体にわたってばらつきの少ない成長が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
つぎに、本発明の植物の播種前処理方法を実施するための最良の形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の植物の播種前処理方法を実施するための装置の概略構成を示したものである。フレーム10に、鋼板製の第1電極11と第2電極12を所定間隔を隔てて対面させる。上記第1電極11と第2電極12同士の間に、第1電極11および第2電極12には直接接触しないように試料皿13を配置し、上記試料皿13に試料である播種前の植物の種子14を載置する。上記第1電極11と第2電極12間に電源装置15により電位を印加しうるようになっている。この例では、第2電極12は接地されている。
【0019】
上記装置により、本発明の植物の播種前処理方法は、所定間隔を隔てて配置された一対の電極11,12間に電位を印加して上記電極11,12間内に電界を形成し、発芽育成対象とする植物の種子14を、播種に先立って上記電極11,12間の電界内に所定時間保持したのち播種し、発芽させて育成する。
【0020】
上記両電極11,12間に印加する電源としては直流電源を用いてもよいし、交流電源を用いることもできる。直流電源を用いた場合、接地されていない第1電極11をマイナスにし、接地される第2電極12側をプラスとしてもよいし、反対に、接地されていない第1電極11をプラスにし、接地される第2電極12側をマイナスとすることもできる。
【0021】
上記両電極11,12間の電位差すなわち両電極11,12に印加する電圧は、直流の場合、1.3kV〜15kVの範囲で設定された最適静電界強度E〔V/m〕を印加するのが好ましい。上記最適静電界強度E〔V/m〕は、種子類の種類や量等によって最適値が設定されるものである。
【0022】
また、印加電流を交流にする場合は、交流電界は、種子14の誘電率ε〔F/m〕で決まる電気容量C〔F〕を持っており、そのため交流電界の周波数をf、電圧をVとすれば、W=2πfCVなる発熱を伴うので、電圧および周波数を大きくすることができない。したがって、500Hz以下の低周波,6KV以下の低電圧を印加して、最適交流電界強度E〔F/m〕とするのが好ましい。
【0023】
上記電界内での保持時間は、30秒以上とするのが好ましく、より好ましいのは60秒以上である。電界内での保持時間の上限は、特に限定するものではないが、あまり長くしても一定以上の効果が見込めなくなるため、生産性を考慮すると5分程度以下が好ましい範囲である。
【0024】
また、必要に応じて、発芽育成対象とする植物の種子14を、上記電極11,12間の電界内に保持する前に、−10℃〜−30℃の低温に所定時間保持する深冷処理が行われる。
【0025】
−10℃〜−30℃の低温に保持する深冷処理の保持時間としては、12時間以上とするのが好ましく、より好ましいのは20時間以上であり、最も好ましいのは24時間以上である。上記深冷処理の保持時間の上限は、特に限定するものではないが、あまり長くしても一定以上の効果が見込めなくなるため、生産性を考慮すると72時間程度以下が好ましい範囲である。
【0026】
このようにすることにより、上記電界中に保持された種子14の構成有機分子が電界によってコントロールされ、種子14の有機分子の生理代謝が回復すると考えられる。その結果、電界環境下において電子の挙動が抑制されるものであるから、種子14の全ての粒に関して休眠打破効果を得られ、発芽率,発芽勢,育勢等が向上し、種子14全体にわたってばらつきの少ない成長が得られる。
【0027】
この理由については、必ずしも明らかではないが、電界中の種子類の構成分子は分極作用を受け、電界に律される方向に配向する。この状態は、播種前に分子の自由度が抑えられてエントロピーが小さい状態となる。また、種子類中の生体水も電界中で一定の電界条件により分極作用を受け、タンパク質や細胞膜等のセルロースや油脂類が電界に律せられる方向に配向してエントロピーが小さくなる。これらのミクロ的な現象により、播種前の種子の有機分子に対して何らかのショックが与えられ、生理代謝が回復すると考えられるのである。
【0028】
また、発芽育成対象とする植物の種子14を、上記電極11,12間の電界内に保持する前に、−10℃〜−30℃の低温に所定時間保持することにより、種子類の有機分子の生理代謝が回復すると考えられる。この理由については、必ずしも明らかではないが、冷却による冷熱ショックで生理代謝が回復し、休眠打破効果を得られ、発芽率,発芽勢,育勢等が向上し、種子類全体にわたってばらつきの少ない成長が得られるものと考えられる。そして、上述した電界処理と組み合わせることにより、休眠打破効果が重畳的に作用し、発芽率,発芽勢,育勢等がさらに向上し、種子類全体にわたってばらつきの少ない成長が得られる。
【0029】
通常、発芽に際しては、温度と水により酵素等が活性になって、タンパク質,糖質,脂肪,胚芽等の養分が加水分解され一連の代謝活動が盛んになり、種子類内に生理活性物質や植物ホルモンが生成されるのであるが、播種前の種子類を電界中に保持したり冷却することにより、上記生理活性物質や植物ホルモンの代謝が一層促進されて、発芽勢,育勢が強化される。
【実施例】
【0030】
試料として、収穫されてから4℃の冷温下で保管していた黒大豆を用い、図1に示す装置で播種前の電界環境保持処理を行った。そして、後述する各種条件の播種前処理を行い、発芽させてもやしの育成を行った。
【0031】
各種のサンプルの播種前処理としての深冷処理および電界処理条件を下記の表1に示す。
【0032】
【表1】


【0033】
実施例1−1、実施例2−1、実施例3−1、実施例4−1、実施例6−1は、それぞれ、−20℃で24時間の深冷処理を行った後、両電極11,12に直流電圧を印加した。第1試料である種子14の上側の第1電極11に+6kVの電圧を印加し、対極である第2電極12は接地した。第1電極11と第2電極12との電極間距離を15mmに設定した。電界内での保持時間は60秒とした。
【0034】
実施例2−2、実施例3−2、実施例4−2、実施例5−1、実施例6−2は、それぞれ、−20℃で24時間の深冷処理を行った後、第1電極11に−12kVの直流電圧を印加し、対極である第2電極12を接地した。電極間距離を25mmに設定し、電界内での保持時間は60秒とした。
【0035】
実施例1−2は、−20℃で24時間の深冷処理を行った後、両電極11,12間に1kVの交流電圧を印加した。電極距離を25mmに設定し、電界内での保持時間は60秒とした。実施例7−3は、−20℃で24時間の深冷処理を行った後、両電極11,12間に1kVの交流電圧を印加した。電極間距離を35mmに設定し、電界内での保持時間は60秒とした。交流電圧を印加したときは、片側電極の接地は行っていない。
【0036】
グループ1〜6は、それぞれ表1に示す前処理後に、同じ日時に同じ場所で播種を行い、同じ育成条件で育成状態を観察したグループであり、各グループ内の実施例と比較例により前処理の有無によって発芽状態および発芽後の育成状態に差があるか否かを観察した。なお、グループ1および2は、保管期間が約2年半の種子を用いたものであり、グループ3〜6は、保管期間が約1年半の種子を用いたものである。
【0037】
各グループ1〜6の前処理数および播種数は、それぞれ32粒とした。一方、図2に示すような等間隔に4列×4列の十字の切れ込み21を入れたウレタンマット20を準備し、各切れ込み21に各条件で前処理を行った種子14を保持させ、図示しないバットに並べて水を注ぎ入れ、常温の室内に放置して発芽させた。播種した全数の種子14に対する発芽数の累積をカウントするとともに、発芽後に育成した芽について、所定期間経過後(播種後4〜6日目)における平均長さを測定した。発芽数および平均長さの測定値を下記の表2に示す。また、播種後6日経過後の芽について、長さの長いものから順に並べて写真撮影を行った。その結果を図3〜図8に示す。なお、発芽率Gr(%)は、発芽した黒大豆の個数/播種個数×100として算出した。
【0038】
【表2】


【0039】
〔グループ1〕
グループ1では、表2からわかるように、最終的な発芽率は実施例1−1、実施例1−2、比較例1ともに100%で差が無いが、2日目の発芽数において、比較例1が4個であるのに対し、実施例1−1が15個、実施例1−2が11個と大幅に上回っており、発芽勢において各実施例が比較例よりも優れていることがわかる。
【0040】
また、5日目における平均長さは、比較例1が45.6mmであるのに対し、実施例1−1が63.7mm、実施例1−2が58.5mmと大幅に上回っており、育勢においても各実施例が比較例より優れていることがわかる。
【0041】
さらに、図3の写真からわかるように、成長度が少ない芽の数が、比較例よりも各実施例の方が少なく、特に交流による電界処理を行った実施例1−1において優れた結果を示している。
【0042】
また、写真のように長さの長いものから順に並べたときの双葉部分のなす傾斜角が小さいほうが成長度のばらつきが少なく良好であるといえるが、これについても、比較例よりも各実施例の方が良好な傾向を示しており、特に直流による電界処理を行った実施例1−1において良好な傾向を示している。
【0043】
〔グループ2〕
グループ2では、表2からわかるように、最終的な発芽率は実施例2−1、実施例2−2、比較例2ともに100%で差が無いが、2日目の発芽数において、比較例2が27個であるのに対し、実施例2−1が32個、実施例2−2が30個と若干上回っており、発芽勢において各実施例が比較例よりもやや優れていることがわかる。
【0044】
また、5日目における平均長さは、比較例2が68.8mmであるのに対し、実施例2−1が86.6mm、実施例2−2が90.7mmと大幅に上回っており、育勢においても各実施例が比較例より優れていることがわかる。
【0045】
さらに、図4の写真からわかるように、成長度が少ない芽の数が、比較例よりも各実施例の方が少なく、良好な結果を示している。また、成長度のばらつきについても、比較例よりも各実施例の方が良好な傾向を示している。
【0046】
〔グループ3〕
グループ3では、表2からわかるように、最終的な発芽率は実施例3−1が96.9%、実施例3−2が100%、比較例3が96.9%と大差無いが、3日目の発芽数において、比較例3が19個であるのに対し、実施例3−1が25個、実施例3−2が26個と若干上回っており、発芽勢において各実施例が比較例よりも優れていることがわかる。
【0047】
また、6日目における平均長さは、比較例3が59.4mmであるのに対し、実施例3−1が87.8mm、実施例3−2が84.8mmと大幅に上回っており、育勢においても各実施例が比較例より優れていることがわかる。
【0048】
さらに、図5の写真からわかるように、成長度が少ない芽の数が、比較例よりも各実施例の方が少なく、良好な結果を示している。また、成長度のばらつきについても、比較例よりも各実施例の方が良好な傾向を示している。
【0049】
〔グループ4〕
グループ4では、表2からわかるように、最終的な発芽率は実施例4−1が96.9%、実施例4−2が100%、比較例4が96.9%と大差無いが、2日目の発芽数において、比較例4が5個であるのに対し、実施例4−1が28個、実施例4−2が11個と大幅に上回っており、発芽勢において各実施例が比較例よりも優れていることがわかる。
【0050】
また、5日目における平均長さは、比較例4が36.6mmであるのに対し、実施例4−1が79.6mm、実施例4−2が57.8mmと大幅に上回っており、育勢においても各実施例が比較例より優れていることがわかる。
【0051】
さらに、図6の写真からわかるように、成長度が少ない芽の数が、比較例よりも各実施例の方が少なく、良好な結果を示している。また、成長度のばらつきについても、比較例よりも各実施例の方が良好な傾向を示し、特に実施例4−1において良好な結果が得られている。
【0052】
〔グループ5〕
グループ5では、表2からわかるように、最終的な発芽率は実施例5−1が100%、比較例5が93.8%と若干実施例の方が比較例よりも良好な結果が得られている。
【0053】
また、4日目における平均長さは、比較例5が58.6mmであるのに対し、実施例5−1が80.4mmと大幅に上回っており、育勢においても実施例が比較例より優れていることがわかる。
【0054】
さらに、図7の写真からわかるように、成長度が少ない芽の数が、比較例よりも実施例の方が少なく、良好な結果を示している。また、成長度のばらつきについても、比較例よりも各実施例の方が良好な傾向を示している。
【0055】
〔グループ6〕
グループ6では、表2からわかるように、最終的な発芽率は実施例6−1、実施例6−2、実施例6−3、比較例6ともに100%と差は無いが、2日目の発芽数において、比較例6が10個であるのに対し、実施例6−1が20個、実施例6−2が15個、実施例6−3が18個と大幅に上回っており、発芽勢において各実施例が比較例よりも優れていることがわかる。
【0056】
また、5日目における平均長さは、比較例6が54.7mmであるのに対し、実施例6−1が68.1mm、実施例6−2が62.3mm、実施例6−3が68.1mmと大幅に上回っており、育勢においても各実施例が比較例より優れていることがわかる。
【0057】
さらに、図8の写真からわかるように、成長度が少ない芽の数が、比較例よりも各実施例の方が少ない傾向を示し、良好な結果を示している。また、成長度のばらつきについても、比較例よりも各実施例の方が良好な傾向を示している。
【0058】
つぎに、前処理として深冷処理を行わず、DC、+6kV、電極間距離を15mmとし、保持時間を10秒、20秒、40秒、60秒、80秒として電界処理を行った種子を準備した。保持時間10秒のものをサンプル10、保持時間20秒のものをサンプル20、保持時間40秒のものをサンプル40、保持時間60秒のものをサンプル60、保持時間80秒のものをサンプル80とし、サンプル10〜80の種子を各32粒、図2に示すウレタンマット20にセットして播種を行い、サンプル10〜80について同時に同じ条件で発芽試験を行った。同様の発芽試験を3度繰り返し、それぞれグループ7、グループ8、グループ9とした。そして、発芽後に育成した芽について、所定期間経過後(播種後3〜7日目)における平均長さを測定した。
【0059】
各グループにおける各サンプルの平均長さの測定値を下記の表3に示す。
【0060】
【表3】


【0061】
グループ7の発芽試験では、サンプル10が68.4mm、サンプル20が71.8mm、サンプル80が61.3mmであるのに対し、サンプル40が82.6mm、サンプル60が83.6mmと良好な結果が得られた。
グループ8の発芽試験では、サンプル10が76.6mm、サンプル40が83.6mm、サンプル80が83.5mmであるのに対し、サンプル20が91.2mm、サンプル60が90.3mmと良好な結果が得られた。
グループ9の発芽試験では、サンプル10が45.2mm、サンプル20が71.5mm、サンプル40が67.3mmであるのに対し、サンプル60が85.3mm、サンプル80が73.6mmと良好な結果が得られた。
【0062】
このように、直流による電界に保持する場合、処理時間としては、最低でも20秒が必要なことがわかる。また、育成度のばらつきが少ない好ましい処理時間の範囲は40秒以上80秒以下であり、さらに好ましいのは40秒を超え80秒未満であることがわかる。
【0063】
上記実施例のように、もやし等の植物の製造にあたって、本発明の播種前処理を行うことにより、製造期間中の雑菌による汚染機会の減少により安定した生産が可能となり、もやし等の植物の製造期間を短縮することができ、生産効率を大幅に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、電界の作用で種子類の新鮮度維持や発芽,育勢が助成される。したがって、種々な種子類,穀類の播種前の前処理に多角的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】電界処理装置の概略を示す図である。
【図2】ウレタンマットを示す平面図である。
【図3】グループ1の実施例と比較例の成長状態を示す写真である。
【図4】グループ2の実施例と比較例の成長状態を示す写真である。
【図5】グループ3の実施例と比較例の成長状態を示す写真である。
【図6】グループ4の実施例と比較例の成長状態を示す写真である。
【図7】グループ5の実施例と比較例の成長状態を示す写真である。
【図8】グループ6の実施例と比較例の成長状態を示す写真である。
【符号の説明】
【0066】
10 フレーム
11 第1電極
12 第2電極
13 試料皿
14 種子
15 電源装置
20 ウレタンマット
21 切れ込み
【出願人】 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
【識別番号】302067903
【氏名又は名称】株式会社パイコーポレーション
【出願日】 平成18年10月16日(2006.10.16)
【代理人】 【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之


【公開番号】 特開2008−92903(P2008−92903A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−280953(P2006−280953)