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【発明の名称】 植物種子
【発明者】 【氏名】勝田 純郎

【氏名】中山 幸治

【氏名】徐 子成

【氏名】陳 思浩

【氏名】徐 菁利

【要約】 【課題】人畜に対する安全性や環境保全性にすぐれ、鼠害を防除もしくは低減可能であり、且つ発芽が良好な植物種子の提供。

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
播種される植物種子であって、該種子の表面が鼠の摂食を忌避し且つ発芽率を向上する物質を含むコーティング剤で被覆されていることを特徴とする、鼠害を防除可能で且つ発芽が良好な植物種子。
【請求項2】
上記の鼠の摂食を忌避し且つ発芽率を向上する物質は、一般式(I)
【化1】


(式中、Rは炭素数7〜12のアルキル基又はアルケニル基を表す。)で表されるカプサイシン類からなる、請求項1に記載の植物種子。
【請求項3】
前記播種される植物種子は、土壌に播種されると発芽し生育することができる種子であって、穀類、綿花、蔬菜、樹木及び草からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の植物種子。
【請求項4】
上記の鼠の摂食を忌避し且つ発芽率を向上する物質は、植物種子の総質量に基づいて、0.01質量%乃至0.15質量%の量にて配合されている、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の植物種子。
【請求項5】
上記コーティング剤は、上記の鼠の摂食を忌避し且つ発芽率を向上する物質、並びに、種子表面に付着するための結合剤を含有する、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の植物種子。
【請求項6】
上記結合剤は、塗膜剤及び界面活性剤の混合物からなる、請求項5に記載の植物種子。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鼠害を防除もしくは低減可能で、且つ発芽が良好な植物種子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、農作地に播種された植物種子が、ノネズミなどによる鼠害を受け、農作物に甚大な被害をこうむっている。ハウスや育苗箱を用いた栽培であれば、柵を設けるなどして物理的対策を講じることもできるが、近年普及している空中播種においては種子が直ちに鼠類の食用に晒され、播種された種子のおよそ半分が被害を受けているという報告もある。このように事態は深刻であるにもかかわらず、有効な防除方法がなく、その対策が急がれている。
【0003】
ところで、唐辛子の主要成分として知られるカプサイシン類は、その骨格にバニリルアミド構造を有するアルカロイドである。天然カプサイシンの外、安価で辛さの点でも天然品を凌ぐ合成カプサイシン、例えば、N−ノナノイルバニリルアミド(合成アリシン)が実用化に至り、ネズミ類の摂食忌避剤として広く使用されている。例えば、特許第3053480号公報に、カプサイシン類をメラミン樹脂膜で被覆したマイクロカプセルを含有してなる動物咬害防止用塗料組成物、具体的には防鼠電線、防鼠ケーブル等が開示されている。また、特許第2594485号には、ヒマワリの種子、アワ、大麦、小麦などを含む鳥餌に、カプサイシンまたはその誘導体もしくは類似体を処理し、ゲッ歯類動物が食するのを撃退する鳥餌が記載されている。
しかしながら、これらの公報に開示されているのは、カプサイシン類を含む材料や食品であって、農作地に播種される種子とは使用される条件が大いに異なる。すなわち、本発明が対象とする種子は、自然環境下で発芽し生育することができるものなので、その鼠害防除対策を講ずるにあたっては、前記公報の記載内容をそのまま転用できず、発芽への影響試験など、新しい観点から種々検討を必要としている。
【特許文献1】特許第3053480号公報
【特許文献2】特許第2594485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、人畜に対する安全性や環境保全性にすぐれ、鼠害を防除もしくは低減可能であり、しかも発芽が良好な植物種子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、植物種子の表面を、鼠の摂食を忌避し且つ発芽率を向上する物質を含むコーティング剤で被覆することによって、上記課題を解決し得ることを知見し本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、次のような構成を採用する。
(1)播種される植物種子であって、該種子の表面が鼠の摂食を忌避し且つ発芽率を向上する物質を含むコーティング剤で被覆されていることを特徴とする、鼠害を防除可能で且つ発芽が良好な植物種子。
(2)上記の鼠の摂食を忌避し且つ発芽率を向上する物質は、一般式(I)
【化1】


(式中、Rは炭素数7〜12のアルキル基又はアルケニル基を表す。)で表されるカプサイシン類からなる(1)に記載の植物種子。
(3)前記播種される植物種子は、土壌に播種されると発芽し生育することができる種子であって、穀類、綿花、蔬菜、樹木及び草からなる群から選択される(1)または(2)に記載の植物種子。
(4)上記の鼠の摂食を忌避し且つ発芽率を向上する物質は、植物種子の総質量に基づいて、0.01質量%乃至0.15質量%の量にて配合されている(1)乃至(3)のうちいずれか一項に記載の植物種子。
(5)上記コーティング剤は、上記の鼠の摂食を忌避し且つ発芽率を向上する物質、並びに、種子表面に付着するための結合剤を含有する(1)乃至(4)のうちいずれか一項に記載の植物種子。
(6)上記結合剤は、塗膜剤及び界面活性剤の混合物からなる(5)に記載の植物種子。
【発明の効果】
【0007】
本発明の植物種子は、その表面が鼠の摂食を忌避し且つ発芽率を向上する物質(以後、活性物質と記載する。)を含む種子コーティング剤で被覆されており、人畜に対する安全性や環境保全性にすぐれ、鼠害を防除もしくは低減させる効果が高く、しかも発芽に全く影響を及ぼさないばかりか、発芽率向上効果をも有するのでその実用性は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の植物種子は、活性物質、結合剤(塗膜剤、界面活性剤)、溶剤及び消泡剤等を含む種子コーティング剤を、播種される種子の表面に被覆して製する。
本発明では活性物質としてカプサイシン類を主に用いる。カプサイシン類としては、一般式(I)
【化2】


(式中、Rは炭素数7〜12のアルキル基又はアルケニル基を表す。)で表されるカプサイシン類があげられ、炭素数7〜12のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖が挙げられ、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基及びドデシル基が挙げられ、炭素数7〜12のアルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖が挙げられ、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基及びドデセニル基等が挙げられる。
カプサイシン類の具体例としては、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、N−カプリロイルバニリルアミド、N−ノナノイルバニリルアミド(以降、NVAと称す)、N−デカノイルバニリルアミド(以降、DVAと称す)等があげられるが、これらに限定されない。そして、化合物の各々を単独で用いても、あるいは任意の混合物やトウガラシからの抽出混合物であっても構わない。なお、カプサイシン類の種子コーティング剤中における配合量は、
特に限定されないが、1.0〜15質量%程度が適当である。
カプサイシン類が鼠に対して忌避性を示し防鼠ケーブル用途に有用であることはよく知られていたが、農作地に播種される種子に適用することはこれまでほとんど着目されておらず、本発明は新規な用途開発といえる。
【0009】
本発明の植物種子は、自然環境下で、時にヘリコプターにより空中播種されるので、種子コーティング剤には塗膜剤が1.0〜5.0質量%配合される。塗膜剤は、種子の耐久性を高め、活性物質の効果を持続させるのに有用であるが、種子の発芽や生育に影響があってはならないため、本発明者らは種々検討を行った。その結果、塗膜剤として、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、アラビアゴムなど、環境で蓄積しない植物性のものが好ましかった。
【0010】
また、本発明の植物種子は、その発芽や生育を損なわないばかりか、発芽率向上作用をも示すのであるが、特に、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンを用いて処理した場合には、発芽率向上作用がより向上することも認められた。
【0011】
界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤が好適に用いられる。前者の代表例を示せば、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンフェニルフェノールエーテル誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル類などのエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類などの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンスチレン化フェノール、脂肪酸のポリアルカロールアミドなどがあげられる。一方、アニオン系界面活性としては、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アミン塩等があげられる。
界面活性剤は、活性物質や塗膜剤等を水中で均一に分散させる役目を有し、種子コーティング剤中に5〜30質量%程度配合すればよい。
【0012】
溶剤としては、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、グリコールエーテル類、ケトン類、エーテル類、芳香族又は脂肪族炭化水素などをあげることができる。更に、必要に応じて種々の補助剤、例えば、シリコン系の消泡剤、着色剤、分散剤、安定剤等を適宜配合してもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り、殺菌剤、成長調整剤等を添加し、他の効能・効果を付与させるようにしても構わない。
【0013】
種子コーティング剤は、前記活性物質、界面活性剤及び溶剤を混合、攪拌して得られる透明・均一な混合物に、塗膜剤、消泡剤等を加えて調製され、その外観は透明あるいは不透明の乳液状で、微粒子の大きさは1μ以下である。従来の種子コーティング剤に比べて微粒子の大きさが小さいので、種子内部への浸透性に優れ効果発現の面で有利となる。また、0〜55℃の範囲で液性は安定しており、2層に分離することはない。
【0014】
本発明の植物種子は、前記種子コーティング剤を用い、次のような方法によって調製される。
(1)乾燥種子をコーティング機に入れ、種子質量に対して0.1〜5.0質量%程度の種子コーティング剤を加え、湿粉衣する。
(2)種子コーティング剤を10〜500倍程度希釈し、その希釈液に種子を浸漬する。(3)種子コーティング剤を10倍程度希釈し、その希釈液を吹付け処理により種子に均
一に付着させる。
上記方法のなかでは、(1)が取り扱いやすいが、いずれによっても、種子表面に被覆される活性物質(主にカプサイシン類)が種子質量あたり0.01〜0.15質量%、好ましくは0.02〜0.1質量%になるように調整し、必要に応じて、風乾、浸種の処理を施す。
本発明が適用される種子としては、穀類、綿花及び蔬菜などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
尚、穀類としては米、トウモロコシ、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、はと麦、キビ、アワ、ヒエ、モロコシ、小豆、大豆、リョクトウ、ソラマメ、蕎麦等が挙げられ、好ましい穀類としては米、トウモロコシ、小麦、大豆等が挙げられる。また、樹木としては、チョウセンマツ、ポプラ、サジーなど、草としてはヨモギやムレスズメ属の草などがあげられる。
【0015】
こうして得られた本発明の植物種子は、ヘリコプターにより広範囲に飛播される種子にも適用でき、撒いた種子がネズミから害を受けるのを持続的に防除するため、飛播成功率も高い。しかも、発芽に影響を及ぼさないばかりか、発芽率向上効果も有するのでその経済的効果は多大である。本発明の植物種子が発芽率向上効果を示すメカニズムは、はっきりと解明されているわけではないが、活性物質、特にカプサイシン類が有する刺激性や塗膜剤の性状等が関与しているものと推測される。
更に本発明の植物種子は、製剤化にあたり最新技術を取り入れ、施用量を抑えるとともに生産コストを下げることもでき、環境保護の面からも優れているので極めて有用なものである。
【実施例】
【0016】
次に、具体的実施例に基づいて、本発明の植物種子を更に詳細に説明するが、本発明はもちろんこれらに限定されるものではない。
実施例1
【0017】
天然カプサイシン3.0質量%、パールを含むピンク色の染料0.5質量%、塗膜剤としてのポリビニルピロリドン1.5質量%、非イオン界面活性剤7.0質量%、アニオン界面活性剤8.0質量%、溶剤18質量%、消泡剤1.0質量%及び残部を水とする種子コーティング剤を調製した。
大豆の乾燥種子100部に対して種子コーティング剤3部を用いて湿粉衣処理を施し、天然カプサイシンが種子質量あたり0.09質量%被覆された本発明の植物種子を得た。実施例2
【0018】
NVA 1.5質量%、黄色の染料0.5質量%、塗膜剤としてのポリビニルアルコー
ル1.5質量%、非イオン界面活性剤5.5質量%、アニオン界面活性剤6.0質量%、溶剤15質量%、消泡剤1.0質量%及び残部を水とする種子コーティング剤を調製した。
種子コーティング剤を20倍に希釈し、その希釈液にトウモロコシの乾燥種子を浸漬させて、NVAが種子質量あたり0.05質量%被覆された本発明の植物種子を得た。
効果試験例1
【0019】
実施例1に準じて調製した本発明の大豆及びとうもろこしの種子各々5粒と、非処理穀粒を飼育ケージ内に置いた後、ラットを1匹入れ、2週間にわたり経日的に摂食状況を観察した。試験は雄雌各3匹用いて6連行った。また、本発明の種子及び非処理穀粒は、摂食し尽くした場合や尿や水で濡れた場合、追加又は交換補給した。下記の基準に従い摂食阻止効果を評価し、その結果を表1に示す。
○;6匹全てが全く摂食しないか、あっても6匹のうちの1匹が限定的に僅かに摂食したに留まるもの、
△;6匹のうち少なくとも3匹以上が摂食しなかったもの、
×;ほとんど摂食を阻止できなかったもの。
【0020】
【表1】


【0021】
試験の結果、NVAを0.05質量%被覆させた本発明の大豆及びとうもろこしの種子は、鼠に対して高い摂食阻止効果を示した。
効果試験例2
【0022】
実施例1及び実施例2に準じて調製した本発明の大豆の種子を用い、種子の発芽状況を調べた。対照は種子コーティング剤で被覆していない種子を使用した。天然カプサイシンを3.0質量%含有する種子コーティング剤を用いた試験の結果を表2に、また、NVAを1.5質量%含有する種子コーティング剤を用いた試験の結果を表3示す。
【0023】
【表2】


【0024】
【表3】


【0025】
試験の結果、本発明の植物種子は高い発芽率向上効果を示すことが認められ、鼠害防除効果と相まって、その有用性は極めて高い。

【出願人】 【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
【識別番号】505118877
【氏名又は名称】上海工程技術大学
【出願日】 平成18年9月1日(2006.9.1)
【代理人】 【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫

【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫

【識別番号】100080908
【弁理士】
【氏名又は名称】舘石 光雄

【識別番号】100093193
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 壽夫

【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉

【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫

【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏

【識別番号】100093414
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 祐輔


【公開番号】 特開2008−5827(P2008−5827A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−238297(P2006−238297)