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【発明の名称】 対地作業車両の作業機昇降装置
【発明者】 【氏名】鎌田 稔

【要約】 【課題】対地作業車両の作業機昇降装置において、電磁制御弁と、電磁制御弁のスプールによって押し開くことができる逆止制御弁とを組み合わせる複合制御弁について、電磁制御弁の寸法精度のばらつきを吸収することである。

【構成】複合制御弁70は、ソレノイド74によってスプール78を軸方向に駆動し、入力油圧があるときはその油圧を減圧して下降弁に供給し、入力油圧がないときはスプールの先端を入力油圧があるときの最大ストロークよりさらに所定の突出量で突き出させる電磁制御弁80と、シリンダの油圧を保持する保持位置と、シリンダの油圧を抜く油圧抜き位置とを取る逆止制御弁90とから構成される。逆止制御弁90の逆止弁ハウジング82は筐体72に対し軸方向移動可能で、調整ネジ94によって、電磁制御弁80と逆止制御弁90との間の軸方向の隙間ΔSを調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機昇降用の油圧シリンダの油をタンクに戻す通路に設けられる下降弁と、
下降弁の作動を制御する複合制御弁と、
を備え、
複合制御弁は、
ソレノイドによってスプールを軸方向に駆動し、入力油圧があるときはスプールとスリーブとの協働によってその油圧を減圧して下降弁に供給し、入力油圧がないときはスプールの先端を入力油圧があるときの最大ストロークよりさらに所定の突出量で突き出させる電磁制御弁と、
電磁制御弁と同軸に配置され、シリンダの油圧を保持する保持位置と、シリンダの油圧を抜く油圧抜き位置とを取る逆止弁と、
を含み、
逆止弁は、
電磁制御弁と同軸の案内穴を有する逆止弁ハウジングと、
逆止弁ハウジングの案内穴に摺動自在に挿入され、軸方向に沿って一方向に向かって止まり位置を有する逆止弁体と、
逆止弁体をシリンダの油圧に抗して止まり位置に向かって押し付けることでシリンダの油圧を保持するスプリング部材と、
逆止弁ハウジングに対し、スプリング部材の押付力に抗する軸方向の付勢力を与える付勢手段と、
電磁制御弁のスプールが最大ストローク以内の位置にあるときには、逆止弁体が止まり位置をとるように、電磁制御弁のスプールが所定の突出量で突き出すときには、逆止弁体を移動させてシリンダの油圧を抜くように、電磁制御弁に対する逆止弁ハウジングの軸方向位置を調整する調整手段と、
を有することを特徴とする対地作業車両の作業機昇降装置。
【請求項2】
請求項1に記載の対地作業車両の作業機昇降装置において、
調整手段は、
電磁制御弁に対し逆止弁ハウジングを保持する保持部と、
保持部に設けられたネジ部に少なくとも一部が噛み合い、先端部が逆止弁ハウジングに接触する調整ネジと、
を有することを特徴とする対地作業車両の作業機昇降装置。
【請求項3】
請求項1に記載の対地作業車両の作業機昇降装置において、
調整手段は、
電磁制御弁に対し逆止弁ハウジングを保持する保持部と、
保持部に設けられたネジ部に少なくとも一部が噛み合い、先端部が中間体を介して逆止弁ハウジングに接触する調整ネジと、
を有することを特徴とする対地作業車両の作業機昇降装置。
【請求項4】
作業機昇降用の油圧シリンダの油をタンクに戻す通路に設けられる下降弁と、
下降弁の作動を制御する複合制御弁と、
を備え、
複合制御弁は、
ソレノイドによってスプールを軸方向に駆動し、入力油圧があるときはスプールとスリーブとの協働によってその油圧を減圧して下降弁に供給し、入力油圧がないときはスプールの先端を入力油圧があるときの最大ストロークよりさらに所定の突出量で突き出させる電磁制御弁と、
電磁制御弁と同軸に配置され、シリンダの油圧を保持する保持位置と、シリンダの油圧を抜く油圧抜き位置とを取る逆止弁と、
電磁制御弁と逆止弁とを同軸に配置して一体的に保持する筐体と、
を含み、
逆止弁は、
電磁制御弁と同軸の案内穴を有し、筐体に対し軸方向に移動可能な逆止弁ハウジングと、
逆止弁ハウジングの案内穴に摺動自在に挿入され、軸方向に沿って一方向に向かって止まり位置を有する逆止弁体と、
逆止弁体をシリンダの油圧に抗して止まり位置に向かって押し付けることでシリンダの油圧を保持するスプリング部材と、
逆止弁ハウジングに対し、スプリング部材の押付力に抗する軸方向の付勢力を与える付勢手段と、
筐体に設けられ、電磁制御弁のスプールが最大ストローク以内の位置にあるときには、逆止弁体が止まり位置をとるように、電磁制御弁のスプールが所定の突出量で突き出すときには、逆止弁体を移動させてシリンダの油圧を抜くように、電磁制御弁に対する逆止弁ハウジングの軸方向位置を調整する調整手段と、
を有することを特徴とする対地作業車両の作業機昇降装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の対地作業車両の作業機昇降装置において、
付勢手段は、軸方向に変位して付勢力を発生する板バネであることを特徴とする対地作業車両の作業機昇降装置。
【請求項6】
請求項5に記載の対地作業車両の作業機昇降装置において、
板バネは、軸方向に垂直な面に対し波形の初期形状を有する波形板バネであることを特徴とする対地作業車両の作業機昇降装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、対地作業車両の作業機昇降装置に係り、特に、油圧を用いて作業機の昇降を行なう対地作業車両の作業機昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地面に対し作業を行なう車両、例えば、トラクタ等は、ロータリ耕うん機等の作業機を地面に対し昇降するために、油圧シリンダが主に用いられる。その場合の昇降装置としては、車両のエンジンによって作動する油圧ポンプと、昇降用の油圧シリンダとの間に上昇弁を設けると共に、大気に開放されているタンクと、昇降用の油圧シリンダとの間に下降弁を設け、そして上昇弁と下降弁をそれぞれ、例えば比例減圧弁式の電磁制御弁で駆動制御することによって作業機を緩急自在な速度で昇降させることが行なわれる。ここで、電磁制御弁は、油圧ポンプから供給される油の油圧をソレノイドによって電気的に圧力制御するものであり、上昇弁、下降弁は、電磁制御弁によって制御されたパイロット油圧によって例えば油の流れる方向を切り換える流体制御弁である。このように、上昇弁、下降弁を電磁制御弁とせずに、パイロット油圧によって制御される切換弁とすることで、電磁制御弁そのものが小型化され、市販されている低コストのものを利用できる。
【0003】
ところで、電磁制御弁を用いて下降弁を制御すると、エンジンを駆動して油圧ポンプを作動させないと、パイロット油圧が得られない。つまり、一旦エンジンを停止させてから作業機を下降させていないことに気づいても、エンジンを停止させたままでは作業機を下降させることができず、一々エンジンを始動させなければならない。これを避けるためには、エンジンを停止させたまま油圧シリンダの油を抜くことができればよい。
【0004】
例えば、特許文献1には、トラクタの作業機昇降装置において、ソレノイドによって油圧シリンダの油圧を抜く下降弁を設け、さらに、この下降弁の作動によってチェックボール式の逆止弁を押し開き、油圧シリンダの油圧を抜くことができる作業機昇降装置が開示されている。この技術によれば、ソレノイドの操作のみで油圧シリンダの油圧を抜くことができ、例えば、作業機を下降させたいときに一々エンジンを駆動して油圧ポンプを作動させる必要がない。
【0005】
また、特許文献2には、特許文献1における課題として、チェックボール式の逆止弁を用いているので、この逆止弁を押し開くと、油がスプリングの隙間を通って流れるため、大きな圧力損失が生じることを指摘している。そこで、油圧ポンプが作動していないときには、電磁パイロットバルブの鉄心に接続されたロッドがポペット弁を押し開く構成とし、ポペット弁のバネを油が抜ける通路の外に設けることが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−32409号公報
【特許文献2】特公平6−68338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来技術によれば、ソレノイドで駆動される電磁制御弁と、そのソレノイドで駆動される移動体によって押し開かれる弁とを組み合わせることで、油圧が供給されていないときでも、シリンダの油を抜くことができる。
【0008】
そこで、製品仕様に合う電磁制御弁を用い、そのスプールの動作点に合わせて、スプールによって押し開かれる弁を組み合わせた複合弁の設計が行われる。ところが、電磁制御弁の寸法精度によって、スプールの動作点がばらつき、これによってスプールによって押し開かれる弁の動作がばらついて、場合によっては、シリンダの油を抜くタイミングがずれることがある。
【0009】
本発明の目的は、電磁制御弁と、電磁制御弁のスプールによって押し開くことができる逆止弁とを組み合わせる複合制御弁について、電磁制御弁の寸法精度のばらつきを吸収することができる対地作業車両の作業機昇降装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る対地作業車両の作業機昇降装置は、作業機昇降用の油圧シリンダの油をタンクに戻す通路に設けられる下降弁と、下降弁の作動を制御する複合制御弁と、を備え、複合制御弁は、ソレノイドによってスプールを軸方向に駆動し、入力油圧があるときはスプールとスリーブとの協働によってその油圧を減圧して下降弁に供給し、入力油圧がないときはスプールの先端を入力油圧があるときの最大ストロークよりさらに所定の突出量で突き出させる電磁制御弁と、電磁制御弁と同軸に配置され、シリンダの油圧を保持する保持位置と、シリンダの油圧を抜く油圧抜き位置とを取る逆止弁と、を含み、逆止弁は、電磁制御弁と同軸の案内穴を有する逆止弁ハウジングと、逆止弁ハウジングの案内穴に摺動自在に挿入され、軸方向に沿って一方向に向かって止まり位置を有する逆止弁体と、逆止弁体をシリンダの油圧に抗して止まり位置に向かって押し付けることでシリンダの油圧を保持するスプリング部材と、逆止弁ハウジングに対し、スプリング部材の押付力に抗する軸方向の付勢力を与える付勢手段と、電磁制御弁のスプールが最大ストローク以内の位置にあるときには、逆止弁体が止まり位置をとるように、電磁制御弁のスプールが所定の突出量で突き出すときには、逆止弁体を移動させてシリンダの油圧を抜くように、電磁制御弁に対する逆止弁ハウジングの軸方向位置を調整する調整手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、調整手段は、電磁制御弁に対し逆止弁ハウジングを保持する保持部と、保持部に設けられたネジ部に少なくとも一部が噛み合い、先端部が逆止弁ハウジングに接触する調整ネジと、を有することが好ましい。
【0012】
また、調整手段は、電磁制御弁に対し逆止弁ハウジングを保持する保持部と、保持部に設けられたネジ部に少なくとも一部が噛み合い、先端部が中間体を介して逆止弁ハウジングに接触する調整ネジと、を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る対地作業車両の作業機昇降装置は、作業機昇降用の油圧シリンダの油をタンクに戻す通路に設けられる下降弁と、下降弁の作動を制御する複合制御弁と、を備え、複合制御弁は、ソレノイドによってスプールを軸方向に駆動し、入力油圧があるときはスプールとスリーブとの協働によってその油圧を減圧して下降弁に供給し、入力油圧がないときはスプールの先端を入力油圧があるときの最大ストロークよりさらに所定の突出量で突き出させる電磁制御弁と、電磁制御弁と同軸に配置され、シリンダの油圧を保持する保持位置と、シリンダの油圧を抜く油圧抜き位置とを取る逆止弁と、電磁制御弁と逆止弁とを同軸に配置して一体的に保持する筐体と、を含み、逆止弁は、電磁制御弁と同軸の案内穴を有し、筐体に対し軸方向に移動可能な逆止弁ハウジングと、逆止弁ハウジングの案内穴に摺動自在に挿入され、軸方向に沿って一方向に向かって止まり位置を有する逆止弁体と、逆止弁体をシリンダの油圧に抗して止まり位置に向かって押し付けることでシリンダの油圧を保持するスプリング部材と、逆止弁ハウジングに対し、スプリング部材の押付力に抗する軸方向の付勢力を与える付勢手段と、筐体に設けられ、電磁制御弁のスプールが最大ストローク以内の位置にあるときには、逆止弁体が止まり位置をとるように、電磁制御弁のスプールが所定の突出量で突き出すときには、逆止弁体を移動させてシリンダの油圧を抜くように、電磁制御弁に対する逆止弁ハウジングの軸方向位置を調整する調整手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、付勢手段は、軸方向に変位して付勢力を発生する板バネであることが好ましい。また、板バネは、軸方向に垂直な面に対し波形の初期形状を有する波形板バネであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成の少なくとも1つにより、複合制御弁を構成する逆止弁は、逆止弁体がスプリング部材で一方向に向かって止まるように逆止弁ハウジングの案内穴に挿入されており、その逆止弁ハウジングの軸方向位置が、軸方向付勢手段と軸方向調整手段によって調整される。調整は、電磁制御弁のスプールが最大ストローク以内の位置にあるときには、逆止弁体が止まり位置をとるように、電磁制御弁のスプールが所定の突出量で突き出すときには、逆止弁体を移動させてシリンダの油圧を抜くように、行われる。この調整手段によって、複合制御弁の作動において、電磁制御弁の寸法精度のばらつきを吸収することができる。
【0016】
また、調整手段は、電磁制御弁に対し逆止弁ハウジングを保持する保持部に設けられたネジ部に少なくとも一部が噛み合い、先端部が逆止弁ハウジングに接触する調整ネジを有するので、調整ネジの保持部に対する噛み合い長さを調整することで、電磁制御弁の寸法精度のばらつきを吸収することができる。
【0017】
また、調整ネジの先端部と逆止弁ハウジングとの間に中間体を設けるので、電磁制御弁と逆止弁の長さに関わらず、複合制御弁の全体の長さを任意に設定でき、例えば、複合制御弁の全長を標準化できる。
【0018】
また、上記構成の少なくとも1つにより、電磁制御弁と逆止弁とが筐体に一体的に保持される。そして、複合制御弁を構成する逆止弁は、逆止弁体がスプリング部材で一方向に向かって止まるように逆止弁ハウジングの案内穴に挿入されており、その逆止弁ハウジングは、軸方向付勢手段と軸方向調整手段によって筐体に対し軸方向に移動して調整される。調整は、電磁制御弁のスプールが最大ストローク以内の位置にあるときには、逆止弁体が止まり位置をとるように、電磁制御弁のスプールが所定の突出量で突き出すときには、逆止弁体を移動させてシリンダの油圧を抜くように、行われる。この調整手段によって、複合制御弁の作動において、電磁制御弁の寸法精度のばらつきを吸収することができる。
【0019】
また、付勢手段は、軸方向に変位して付勢力を発生する板バネとする。これにより、例えばコイルバネ等と比較して、軸方向変位に対するヒステリシス等を少なくし、逆止弁ハウジングの軸方向位置を精度よく調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。なお、以下では、対地作業車両として、耕うん機を引くトラクタを説明するが、地面に対する作業を行なう作業機について油圧を用いて昇降する車両であれば、それ以外のものであってもよい。例えば、地ならし作業機を有する車両、穴掘り作業機を有する車両、苗植え作業機を有する車両、草刈作業機を有する車両等であってもよい。また、以下で説明する油圧制御回路は、説明のための一例であり、作業機を下降させるために、複合制御弁、すなわち、電磁制御弁と、電磁制御弁のスプールによって押し開くことができる逆止弁とを組み合わせる複合制御弁を用いるための油圧制御回路であれば、説明する構成以外の油圧制御回路であってもよい。
【0021】
図1は、作業機の下降に複合制御弁を用いる作業機昇降装置を備える対地作業車10の構成を示す図である。対地作業車10は、作業機30としての耕うん機を備え、作業機を昇降でき、また地表を走行できる車両である。作業機30及び作業機昇降装置を備える対地作業車10は、車両の走行駆動源等として用いられるエンジン12と、エンジン出力を駆動輪に伝達するためのトランスミッション14と、伝達機構16を介しエンジン12の出力によって作動する油圧ポンプ18と、図示されていないが、油圧ポンプ18からフィルタ20等を介して油圧が供給される油圧制御回路と、油圧制御回路に含まれる昇降シリンダ22と、作業機30の傾きを制御するための傾斜シリンダ24と、作業者によって操作される作業機昇降レバー26と、昇降シリンダ22及び傾斜シリンダ24の動作を作業機30の昇降動作及び傾斜動作に変換する取付ヒッチ28を含んで構成される。なお、昇降シリンダ22に関連して、下降弁の制御に用いられる複合制御弁70も図示されている。油圧制御回路の詳細は後述する。
【0022】
作業機昇降装置とは、油圧ポンプ18の油圧を用いて作業機30を昇降するために必要な要素を含んで構成されるもので、図1においては、油圧ポンプ18、フィルタ20、昇降シリンダ22、傾斜シリンダ24、取付ヒッチ28が図示されている。
【0023】
図2は、対地作業車10の作業機昇降装置11の構成を主に油圧制御回路13を中心にして示す図である。作業機昇降装置11は、図1に示されている油圧ポンプ18、フィルタ20、複合制御弁70を含む油圧制御回路13、これに関連するタンク32,34,36、昇降シリンダ22、傾斜シリンダ24、取付ヒッチ28を含んで構成される。
【0024】
ここで、取付ヒッチ28は、昇降シリンダ22及び傾斜シリンダ24の直線運動を耕うん機である作業機の昇降運動及び傾斜運動に変換する機能を備えた作業機の連結機構で、複数の部材を組み合わせて構成される。具体的には、作業機である耕うん機の幅方向の両端に先端部がそれぞれ取り付けられる2本のロアリンク23,25と、2本のロアリンクの後端部を回転可能に支持するようにトラクタ後部に装着される軸支ピン27を含んで取付ヒッチ28が構成される。
【0025】
昇降シリンダ22は、油圧で駆動されるピストン・シリンダ機構で、油圧の制御によってピストンを前進または後退させてピストンの出力端に接続された取付ヒッチ28を駆動し、作業機である耕うん機を昇降させる機能を有する。供給される油圧の制御内容については後述する。
【0026】
具体的には、図2に示されるように、ピストンの出力端に連結された左右一対のリフトアーム21a,21bと2本のロアリンク23,25の各中間部との間に一種のリフトロッドを設け、ピストンが前進するときには、2本のロアリンク23,25の中間部を同時に上方に移動させ、ピストンの出力端が後退するときには、2本のロアリンク23,25の中間部を同時に下方に移動させる。これにより、ピストンの前進・後退運動を、2本のロアリンク23,25の先端部の上下運動に変換する。2本のロアリンク23,25の先端が同時に上下することで、その各先端部に取り付けられた作業機である耕うん機の幅方向の両端が同時に上下する。こうして、昇降シリンダ22の作動により、作業機である耕うん機を昇降させることができる。
【0027】
傾斜シリンダ24も、昇降シリンダ22と同様に、油圧で駆動されるピストン・シリンダ機構であり、油圧の制御によってピストンを前進または後退させてピストンの出力端に接続された取付ヒッチ28を駆動し、作業機である耕うん機を幅方向に沿って傾斜させる機能を有する。油圧は、ピストンを挟んだ両側の油圧室にそれぞれ別々に供給される。供給される油圧の制御内容については後述する。
【0028】
具体的には、図2に示されるように、2本のロアリンク23,25を上下させる一種のリフトロッドにおいて、一方側ロアリンク25の中間部のところに傾斜シリンダ24が配置される。そして、傾斜シリンダ24のピストンが下方に前進するときには、一方側ロアリンク25の中間部を下方に移動させ、ピストンの出力端が上方に後退するときには、一方側ロアリンク25の中間部を上方に移動させる。これにより、ピストンの前進・後退運動を、一方側ロアリンク25の先端部の上下運動に変換する。他方側ロアリンク23は傾斜シリンダ24に接続されていないので、その位置は変わらない。これにより、一方側ロアリンク25の先端部に取り付けられた作業機である耕うん機の片側のみが上下する。こうして、傾斜シリンダ24の作動により、作業機である耕うん機を幅方向に傾斜させることができる。
【0029】
油圧ポンプ18は、図1で説明したように、伝達機構16を介してエンジン12によって作動する固定容量型のギアポンプである。油圧ポンプ18としては、回転軸であるポンプ軸の回転に応じて油圧室の容積が変化することで油圧を発生する可変容積型ポンプを用いることができる。例えば、ポンプ軸の回転に応じて作動するピストンを備える可変容積型アキシャルピストンポンプを用いることができる。あるいは、ポンプ軸に偏心して取り付けられる回転リングを用いる可変容積型ラジアルポンプを用いてもよい。
【0030】
フィルタ20は、流体圧を伝達する媒体である油の中のゴミ等の不純物を除去するためのものである。フィルタ20としては、適当な粗さを有するメッシュフィルタを用いることができる。
【0031】
タンク32,34,36は、油圧制御回路13において作動等に用いられた油を大気開放するための油容器である。タンクは1つで構成することもできるが、図2では、油圧ポンプ18の作動油として再び利用されるために油を回収するタンク32の他に、昇降シリンダ22系統の油圧の元圧制御のため等に用いるタンク34、上昇弁58と下降弁64系統において油圧を大気開放にするため等に用いるタンク36が示されている。
【0032】
油圧制御回路13は、油圧ポンプ18から供給される油圧に基づいて、昇降シリンダ22に供給する油圧の制御と、傾斜シリンダ24に供給する油圧の制御を行う油圧回路である。また、油圧制御回路13は、複合制御弁70の機能によって、油圧ポンプ18から油圧が供給されない場合に、昇降シリンダ22の油を抜く制御を行う。
【0033】
油圧制御回路13の構成は、大別して、傾斜シリンダ24に供給する油圧制御の部分と、昇降シリンダ22の作動に関する制御を行う部分とに区別することができる。最初に傾斜シリンダ24に関する部分を説明し、次に昇降シリンダ22に関する部分を説明する。
【0034】
油圧ポンプ18からの油は、フィルタ20を通り、絞り42を介して、方向制御弁44等の傾斜シリンダ24のため油圧制御部分に供給される。絞り42には並列に流量制御弁40が設けられ、これにより、予め設定された一定の流量の油が傾斜シリンダ24のために供給され、その一定流量を超える油は、昇降シリンダ22のための油供給路54に分配される。したがって、流量制御弁40と絞り42とは、油圧ポンプ18からの油を、傾斜シリンダ24のための油と、昇降シリンダ22のための油とに分配する機能を有する。
【0035】
方向制御弁44は、ソレノイドによって作動する電磁制御弁で、油圧ポンプ18から絞り42を経由した油を、傾斜シリンダ24のピストンの両側の油圧室にそれぞれ接続される2つの油供給路50,52のいずれに供給するかを切り換える機能を有する。また、そのときに、油圧ポンプ18から絞り42を経由した油が供給されない側の油供給路を、タンク32に向けて大気開放する機能を有する。なお、方向制御弁44と、油供給路50,52との間には、逆止弁46,48と、適当な絞りがそれぞれ設けられる。
【0036】
例えば、図2において、方向制御弁44は中立状態として示されているが、その状態からその右側の状態に移動すると、油圧ポンプ18から絞り42を経由した油は、油供給路50に供給され、同時に油供給路52は、タンク32に向けて大気開放される。すなわち、図2において、傾斜シリンダ24のピストンの下方側の油圧室に高圧の油が供給され、同時に傾斜シリンダ24のピストンの上方側の油圧室はタンク32に向けて大気開放される。これにより、傾斜シリンダ24のピストンは上方に後退し、作業機である耕うん機は、その幅方向の一方側が持ち上げられるようにして傾斜する。一方、方向制御弁44が中立状態からその左側の状態に移動すると、油圧ポンプ18から絞り42を経由した油は、油供給路52に供給され、同時に油供給路50は、タンク32に向けて大気開放される。すなわち、図2において、傾斜シリンダ24のピストンの上方側の油圧室に高圧の油が供給され、同時に傾斜シリンダ24のピストンの下方側の油圧室はタンク32に向けて大気開放される。これにより、傾斜シリンダ24のピストンは下方に前進し、作業機である耕うん機は、その幅方向の一方側が押し下げられるようにして傾斜する。
【0037】
このように、方向制御弁44の状態を変更することで、作業機である耕うん機の幅方向に沿った傾斜を制御することができる。なお、油供給路50側の絞りと、油供給路52側の絞りとを適当に調節して設定することで、一方方向の傾斜と他方方向の傾斜における作動時間をほぼ同じとなるようにすることができる。
【0038】
次に、油圧制御回路13における昇降シリンダ22に関する部分を説明する。流量制御弁40によって油供給路54に分配された油は、2つの電磁制御弁56,80と、上昇弁58と、アンロード弁60とに供給される。2つの電磁制御弁56,80は、それぞれ、油供給路54を流れる圧油を制御して、上昇弁58と下降弁64とにパイロット油圧を供給する機能を有する。
【0039】
上昇弁58は、電磁制御弁56によって作り出されたパイロット油圧によって作動する方向制御弁で、内部に適当な絞りを含んで構成されている。上昇弁58は、作業機を上昇させる場合において、昇降シリンダ22に接続される油供給路62の状態を変更する機能を有する。例えば、図2において上昇弁58は中立状態として、油圧ポンプから油供給路54を介して供給される高圧の油を遮断し、同時に昇降シリンダ22に接続される油供給路62が、タンク36に向けて大気開放される油開放路68に接続される様子が示されている。図2においてこの中立状態からすぐ右側の状態に移動すると、油圧ポンプから油供給路54を介して供給される高圧の油が、可変絞りを経由して油供給路62に供給される。したがって、可変絞りの絞り状態に応じ、昇降シリンダ22に加圧された油が供給されて、そのピストンが前進し、それによって作業機である耕うん機が次第に上昇する。
【0040】
その状態からさらに右側の状態に移動すると、油圧ポンプから油供給路54を介して供給される高圧の油が、固定絞りを経由して油供給路62に供給される。したがって、昇降シリンダ22に加圧された油が供給されて、そのピストンが前進し、それによって作業機である耕うん機が上昇する。
【0041】
アンロード弁60は、油供給路54における油の油圧を、予め定めたアンロード圧に保持する機能を有する制御弁である。アンロード圧としては、例えば0.5MPa程度とすることができる。図2に示されるように、昇降シリンダ22に接続される油供給路62における油圧と、油圧ポンプ18からの油が供給される油供給路54における油圧との差圧である差動圧がアンロード弁60に戻される。したがって、油が油供給路62に供給されるときの可変絞り又は固定絞りの前後にかかる圧力差は、アンロード弁60におけるアンロード圧となる。すなわち、作業機である耕うん機の重さ量等の負荷の大きさによらず、常にアンロード圧の圧力差が、可変絞り又は固定絞りの両端にかかることになる。
【0042】
下降弁64は、電磁制御弁80によって作り出されたパイロット油圧によって作動する方向制御弁で、内部に適当な絞りを含んで構成されている。下降弁64は、作業機を下降させる場合に、昇降シリンダ22に接続される油供給路62の状態を変更する機能を有する。例えば、図2において下降弁64は中立状態として、昇降シリンダ22に接続される油供給路62が遮断されている様子が示されている。図2においてこの中立状態からすぐ左側の状態に移動すると、昇降シリンダ22に接続される油供給路62が、可変絞りを経由してタンク36に向けて大気開放される油開放路68に接続される。したがって、可変絞りの絞り状態に応じ、昇降シリンダ22にある油が油開放路68を経由してタンク36に抜かれ、作業機である耕うん機の重さ等によって、ピストンが後退し、作業機である耕うん機が次第に下降する。
【0043】
その状態からさらに左側の状態に移動すると、昇降シリンダ22に接続される油供給路62が、固定絞りを経由して油開放路68に接続される。したがって、昇降シリンダ22にある油が油開放路68を経由してタンク36に抜かれ、作業機である耕うん機の重さ等によって、ピストンが後退し、作業機である耕うん機が下降する。
【0044】
上記のように、下降弁64に用いられる電磁制御弁80は、電磁比例ソレノイド74によって作動する電磁制御弁であって、油圧ポンプ18から油供給路54を介して供給される油圧に基づいてパイロット油圧を生成し、油供給路66を介して下降弁64に供給する。なお、図2に示されるように、このパイロット油圧は、そのままアンロード弁60のバネ受けピストンに戻されるので、下降用の電磁制御弁80に対する必要圧を高めることができる。そこで、作業機である耕うん機の重さ等の負荷が大きいときは、作業機がすぐ下降し、負荷が小さいときは、作業機がゆっくり下降する。
【0045】
昇降シリンダに接続される油供給路62と、タンク36との間に設けられる逆止制御弁90は、油圧ポンプ18が作動せず、電磁制御弁80に油圧が供給されない場合に、油供給路62を、タンク36に向けて大気開放する油開放路68に接続する機能を有する。図2には逆止制御弁90の中立状態として、油供給路62と、タンク36との間が遮断されている様子が示されている。電磁制御弁80に油圧が供給されないときは、後述するように、電磁制御弁80のソレノイド74の動きに連動し、逆止制御弁90は、中立状態から図2における下の状態に移動する。そこでは、昇降シリンダ22に接続される油供給路62が、タンク36に向けて大気開放される油開放路68に接続され、昇降シリンダ22の油が抜かれる。
【0046】
このように、ソレノイドで駆動される電磁制御弁80と、そのソレノイドで駆動される逆止制御弁90とを組み合わせることで、油圧が供給されていないときでも、エンジンスタートキーをアクセサリ位置にしたうえで、作業機昇降レバー21を下降位置に置けば、昇降シリンダ22の油を抜くことができ、これによって作業機である耕うん機を下降させることができる。そこで、電磁制御弁80と、逆止制御弁90とを組み合わせて、1つの複合制御弁70とすることができる。
【0047】
図3は、電磁制御弁80と逆止制御弁90とを組み合わせた複合制御弁70の部分断面図である。図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0048】
複合制御弁70は、ソレノイド74によって作動制御される電磁制御弁80と、電磁制御弁80と同軸に配置される逆止制御弁90と、電磁制御弁80と逆止制御弁90との間の軸方向位置関係を調整する調整ネジ94を含んで構成される。これらの要素は、筐体72にそれぞれ保持される。
【0049】
筐体72は、複合制御弁70の各要素を保持する機能を有する部材である。複合制御弁70を1つの独立した製品としてまとめるときには、筐体72は、その製品の外形を形づくる部材となる。また、複合制御弁70を他の要素、例えば油圧制御回路13を構成する他の要素と共にまとめた製品とするときは、そのまとめられた製品の一部が複合制御弁70の筐体72として利用できる。したがって、筐体72は、広義において、複合制御弁70の各要素を保持する機能を有する保持部材ということになる。筐体72の構造については、調整ネジ94に関連して後に詳述する。
【0050】
ソレノイド74は、少なくとも一部が磁性体で構成される移動体と、移動体の周りに配置されたコイルを含んで構成される電磁アクチュエータであって、コイルに電気信号を与えることで、移動体を軸方向に移動駆動させる機能を有する。ソレノイド74は、適当な固定手段を用いて、筐体72に固定して取り付けられる。
【0051】
電磁制御弁80は、糸巻形状のスプール78と、スプール78の外形を保持するスリーブ76とを含んで構成されるいわゆるスリーブ・スプール型の流体制御弁である。スプール78は、ランドと呼ばれる大径部分と、ステムと呼ばれ隣り合うランドを接続する小径部分とを有する複数の段付の軸部材である。スプール78は、ソレノイド74の移動体に接続される。あるいはソレノイド74の移動体の一部としてもよい。スリーブ76は、スプール78のランドの外形を保持する内壁を有し、その内壁にむけて、油が出入りする3つのポートが設けられる筒状部材である。電磁制御弁80は、筐体72に対し位置決めされ固定されて保持される。例えば、筐体72の内壁形状をスリーブ76の外形に対応するものとし、その内壁形状に合わせて筐体72内に電磁制御弁80を挿入することで位置決めされ、適当な固定部材を用いて固定されて保持されるものとすることができる。
【0052】
スリーブ76に設けられる3つのポートは、図3において右側から、図2で説明された油供給路54に接続され入力油圧が供給される1次ポート、油供給路66に接続され、スリーブ76とスプール78の協働によって生成されたパイロット油圧が出力される2次ポート、油開放路68に接続され、タンク36に向けて大気開放されるタンクポートである。
【0053】
図3に示されるように、油供給路66に接続される2次ポートに対応するスプールのステムの両側のランドの外径が異なり、それに伴って、油圧を受ける受圧面積が異なるように設定されている。すなわち、油開放路68に接続されるタンクポート側のランドの受圧面積の方が、油供給路54に接続される1次ポート側のランドの受圧面積よりも大きい。
【0054】
ここで、逆止制御弁90の構成の説明等の前に、電磁制御弁80の動作について一通り説明する。図3は、電磁制御弁80の中立状態を示す図である。この状態においては、油供給路66に接続される2次ポートの位置に対応するスプールの両側のランドのうち、油供給路54に接続される1次ポート側のランドによって、1次ポートと2次ポートとの間が遮断され、一方、油開放路68に接続されるタンクポート側のランドによって、2次ポートとタンクポートとの間が連通される。すなわち、2次ポートは大気開放され、油供給路66にはパイロット油圧が生成されない。
【0055】
ここで、ソレノイド74によって、スプール78が図3において右方に移動駆動されると、ランドの外周とスリーブの内壁との位置関係が変化し、1次ポートと2次ポートとの間が連通し、2次ポートとタンクポートとの間が遮断される。これによって、2次ポートには、1次ポートに接続された油供給路54からの油が流れ込み、スプール78の移動量に応じたパイロット油圧が現れる。
【0056】
このときに、上記で説明したように、油開放路68に接続されるタンクポート側のランドの受圧面積の方が、油供給路54に接続される1次ポート側のランドの受圧面積よりも大きいので、2次ポートのパイロット油圧によって、スプール78はタンクポート側、すなわち図3における左側に押し戻される。したがって、油供給路54から油圧が1次ポートに供給される通常の場合には、ソレノイド74の駆動にもかかわらず、スプール78は、2次ポートとタンクポートとの間が遮断されるまでは図3において右方に移動するが、それ以上右側に移動しない。つまり、スプール78は、スリーブ76との相対的位置関係で定まる最大ストロークまでしか右方に移動することができない。
【0057】
このように、油圧ポンプ18から油供給路54を介して入力油圧が電磁制御弁80に供給されるときは、スプール78とスリーブ76との協働によって、その油圧を減圧して、2次ポートから油供給路66にパイロット油圧として出力し、下降弁に供給することができる。
【0058】
一方、油圧ポンプ18が停止しているような不使用時には、油供給路54を介して入力油圧が電磁制御弁80に供給されないので、ソレノイド74によってスプール78が図3における右方に移動駆動されても、2次ポートにパイロット油圧が現れず、したがって、スプール78がタンクポート側、すなわち図3における左側に押し戻されることがない。このときには、ソレノイド74によって、そのままスプールが移動駆動され、入力油圧があるときの最大ストロークを超えて、図3における右方に移動することになる。
【0059】
すなわち、電磁制御弁80に、油供給路54を介して入力油圧が供給されないときは、スプール78の先端が、入力油圧があるときの最大ストロークよりさらに突き出されることになる。その突出量は、ソレノイド74に与えられる制御信号によって定められ、その意味では、制御信号を定めれば、それに応じた所定の突出量で、スプール78の先端が突き出される。この突き出されたスプール78の先端は、後述するように、逆止制御弁90の逆止弁体84の軸部の先端によって受け止められる。
【0060】
次に、逆止制御弁90について説明する。逆止制御弁90は、昇降シリンダの油圧を保持する保持位置と、シリンダの油圧を抜く油圧抜き位置とを取る逆止弁として構成される。具体的には、逆止弁ハウジング82と、逆止弁体84と、逆止弁体84に押付力を与えるスプリング部材86とを含んで構成される。保持位置は、スプリング部材86が逆止弁体84を逆止弁ハウジング82に押し付けることで取ることができ、油抜き位置は、電磁制御弁80のスプール78が逆止弁体84を移動させることで取ることができる。
【0061】
逆止弁ハウジング82は、電磁制御弁80と同軸の案内穴を有する筒状部材で、後述するように、軸方向に移動自在として筐体72に保持される。電磁制御弁80と同軸とは、電磁制御弁80の移動体であるスプール78の中心軸と、逆止弁ハウジング82の案内穴の中心軸とが同軸、すなわち実質的に一直線に配置されることを意味する。
【0062】
逆止弁体84は、逆止弁ハウジング82の案内穴に摺動自在に挿入され、スプリング部材86の作用により、軸方向に沿い一方向に向かって止まり位置を有する部材である。逆止弁体84は、図3に示されるように、鍔部と、軸部とを有し、軸部と鍔部との間は細い軸径となっている。細い軸径の部分は、油開放路68に接続されるタンクポートに対応する部分で、昇降シリンダの油が抜ける際の流路となる。軸径を細くすることで、油が抜ける場合の抵抗を少なくできる。軸部の先端は、上記のように、電磁制御弁80に入力油圧が供給されないときに突き出されるスプール78の先端を受け止める機能を有する。
【0063】
そして、この逆止弁体84の形状に対応し、逆止弁ハウジング82は、鍔部を受け止める肩部を有する。肩部は、案内穴の段差部分であり、図3の場合は、逆止弁ハウジング82の端面がこの肩部として用いられている。逆止弁体84の鍔部はスプリング部材86の押付力を受けて軸方向に沿い一方向に移動しようとするが、この肩部で止められ、止まり位置となる。
【0064】
また、逆止弁体84の細い軸径の部分に対応し、逆止弁ハウジング82の内壁に向けて、油開放路68に接続されるタンクポートが設けられる。
【0065】
また、逆止弁体84の軸部の長さに応じて逆止弁ハウジング82の案内穴の長さが設定される。案内穴の長さ、特に、逆止弁体84の細い軸径の先の太い軸径の部分を案内する案内穴の長さは、逆止弁体84の軸方向に沿った油漏れを抑制するために、適度な長さが必要である。また、逆止弁体84の軸部の先端は、電磁制御弁80のスプール78の動きを受け止める機能を有するので、案内穴より十分に突き出す必要がある。すなわち案内穴の軸方向の全長は、逆止弁体84の全長よりも短く、逆止弁体84の太い軸の部分を案内する部分の長さは、油漏れを考慮して適当な長さとされる。
【0066】
スプリング部材86は、逆止弁体84を昇降シリンダの油圧に抗して止まり位置に向かって押し付けることで昇降シリンダの油圧を保持する機能を有する押し付けバネである。図3に示されるようにスプリング部材86は、逆止弁ハウジング82における肩部の外側に配置され、肩部によって止められる逆止弁体84の鍔部に押付力を与える。押付力の方向は、逆止弁体84を電磁制御弁80側に移動させる方向である。したがって、肩部は、押付力を受け止めるようにスプリング部材86に向かいあう受止面を有することになる。
【0067】
スプリング部材86は、このように逆止弁ハウジング82の外側に配置されるので、実際には筐体72に設けられる収納空間に配置される。その収納空間には、スプリング部材86と調整ネジ94との間に設けられる中間体96も配置される。そして、この収納空間に向けて、油供給路62に接続されるアクチュエータポートが設けられる。油供給路62は、図2で説明したように、昇降シリンダに接続されているので、アクチュエータポートには昇降シリンダの油圧が供給されることになる。収納空間は、筐体72の内壁と、逆止弁ハウジング82の肩部側の部分とで区画される空間であり、このアクチュエータポートと、肩部側の部分における案内穴を除いて油が漏れない構造とされている。
【0068】
ここで、逆止制御弁90の作用について説明する。電磁制御弁80に入力油圧が供給されている状態では、スプール78の先端は最大ストローク以内の範囲で作動するので、この最大ストロークのときに逆止弁体84の先端がスプール78の先端に接触しないようにすることで、逆止制御弁90の作動がスプール78の移動によって影響されないようにできる。このように電磁制御弁80と逆止制御弁90の軸方向の位置関係が設定されると、電磁制御弁80が通常動作のときには、逆止制御弁90において、スプリング部材86は、逆止弁体84の鍔部を逆止弁ハウジング82の肩部に押し付け、止まり位置とする。したがって、収納空間に油供給路62から供給される昇降シリンダの油圧は、他に漏れずに、そのまま保持される。
【0069】
一方、電磁制御弁80に入力油圧が供給されないときは、ソレノイド74の駆動によって、スプール78はその最大ストロークを超えて所定量突き出すので、そのときに逆止弁体84の先端がスプール78の先端に接触するようにすることで、スプール78の移動によって油抜きをすることができる。すなわち、この場合には、スプール78の移動に伴い、逆止弁体84がスプリング部材86及び昇降シリンダの油圧に抗して移動し、逆止弁ハウジング82の肩部と逆止弁体84の鍔部との間に隙間を生じる油抜き位置を取る。油抜き位置においては、肩部と鍔部との間の隙間を通り、収納空間の油が、タンクポートを通って油開放路68に流れ、昇降シリンダの油が抜かれる。このように、電磁制御弁80に入力油圧が供給されないときは、ソレノイド74、電磁制御弁80との協働作用によって、逆止制御弁90は、昇降シリンダの油を抜くことができる。
【0070】
次に、電磁制御弁80と逆止制御弁90の軸方向における位置関係の調整について説明する。最初に、位置関係の調整に関係する筐体72の構造について説明する。
【0071】
筐体72は、図3に示されるように、電磁制御弁80と逆止制御弁90とについて、これらが同軸になるように配置して保持する。ここで、上記のように、電磁制御弁80は筐体72に対して位置決めされ、固定手段によってその軸方向位置は固定されている。一方、逆止制御弁90は、逆止弁ハウジング82が筐体72に対し軸方向に移動可能に保持される。すなわち、逆止弁ハウジング82の外形に対応する筐体72の内壁形状は、径方向に逆止弁ハウジング82の外径よりやや大きめで、軸方向に逆止弁ハウジング82の全長よりも十分長い。したがって、逆止弁ハウジング82は、軸方向に摺動可能に、筐体72によって保持されている。
【0072】
バネ部材88は、逆止弁ハウジング82に対し、スプリング部材86の押付力に抗する軸方向の付勢力を与える機能を有する付勢手段である。具体的には、中央部に穴を有する金属製のリング部材に初期変位を与え、軸方向に付勢力を発生することができるリング状板バネを用いることができる。例えば、リング部分に波形の初期形状を与えた波形リング状板バネを用いることができる。この場合、リング状板バネの中心穴に逆止弁体84の軸部が通し、リング部分を筐体72に設けられた適当な受面によって受けることで、逆止弁ハウジング82に対し、軸方向の付勢力を与えることができる。もちろんこれ以外の構成のバネ部材を用いることができる。
【0073】
取付ナット92、調整ネジ94、中間体96は、バネ部材88と共に、電磁制御弁80と逆止制御弁90との間の軸方向の位置関係を調整するための調整手段を構成する。
【0074】
取付ナット92は、中心軸に沿って調整ネジ94が噛み合うメネジ部分を有し、外周の一部にオネジ部分を有し、先端部に中間体96を軸方向移動可能に保持する案内部を有する部材である。取付ナット92は、筐体72に調整ネジ94が噛み合うメネジ部を設けにくい場合、あるいは、複合制御弁70の軸方向の全長を、その仕様にかかわらず標準化したい場合等に用いられる調整部材である。したがって、筐体72に調整ネジ94が噛み合うメネジ部を設ける場合等にあっては、取付ナットの機能を筐体72の一部として構成することで、取付ナットを省略してもよい。
【0075】
調整ネジ94は、取付ナット92に設けられたメネジ部に噛み合うオネジ部を有するボルト部材である。中間体96は、スプリング部材86と調整ネジ94の先端との間に配置される部材で、先端にスプリング部材86を保持する有底穴を有する。中間体96は、複合制御弁70の寸法等において、その製品仕様あるいは構成要素の相違にかかわらず標準化したい場合に用いられる調整部材である。例えば、逆止制御弁90の各ポートの位置を標準化したい場合、あるいは複合制御弁70において各ポート間の位置関係を標準化したい場合、あるいは、逆止制御弁90の軸方向の全長を標準化したい場合等に、構成要素の寸法等に合わせ、適当な軸方向長さを有する中間体96を用いることができる。
【0076】
電磁制御弁80と逆止制御弁90の軸方向における位置関係の調整、具体的には、電磁制御弁80のスプール78の先端と、逆止制御弁90の逆止弁体84の先端との間の軸方向隙間ΔSの調整が必要な理由は、ソレノイド74及び電磁制御弁80の寸法精度のばらつきのためである。ここで、電磁制御弁80のスプール78の先端位置、特にその最大ストロークの位置は、スプール78のランド及びステムの配置位置の寸法と、これに対応するスリーブ76の内壁形状の寸法と、ソレノイド74のコイルの配置位置及び移動体の寸法等によって定まる。これら各寸法にはそれぞれ加工誤差及び組立誤差があり、それらの累積で、電磁制御弁80のスプール78の最大ストローク位置が定まる。したがって、電磁制御弁80の個体が異なれば、そのスプール78の最大ストローク位置も異なってくる。実際の例では、多くの電磁制御弁80の間のスプール78の最大ストローク位置の軸方向誤差は、約1mm以上ある場合がある。
【0077】
これに伴って、電磁制御弁80に入力油圧が供給されないときのスプール78の突出位置の誤差が生じる。最大ストローク位置からの突出量も、ソレノイド74の駆動性能の再現性等のばらつきによって誤差が生じる。先ほどの最大ストローク位置の誤差と、突出量のばらつきとを合わせると、電磁制御弁80に入力油圧が供給されないときのスプール78の作動位置の誤差は、約1mmから2mm程度となる場合がある。
【0078】
これに対し、逆止制御弁90における逆止弁としての機能は、逆止弁体84の軸方向の変位がごく僅か、例えば0.1mm以下でも、昇降シリンダの油を抜くことができる。したがって、軸方向の位置関係の調整を行わず、単純に、電磁制御弁80と逆止制御弁90とを筐体72に取り付けると、電磁制御弁80のスプール78の先端と、逆止制御弁90の逆止弁体84の先端との間の軸方向隙間ΔSが大きすぎ、あるいは少なすぎ、場合によっては最初から両者が接触することが起こる。図4には、電磁制御弁80のスプール78が最大ストロークの状態にあるときに、逆止制御弁90の逆止弁体84の先端に接触する様子を示す図である。この場合には、電磁制御弁80に入力油圧が供給されていて、通常のパイロット油圧生成が行われていても、逆止制御弁90において逆止弁体84の先端が移動し、昇降シリンダの油が抜かれてしまうという誤動作が生じる。
【0079】
そこで、調整ネジ94を用いて、電磁制御弁80と逆止制御弁90との間の軸方向における位置関係が調整される。具体的には、電磁制御弁80のスプール78の最大ストローク位置のときのその先端と、逆止制御弁90の逆止弁体84が止まり位置にあるときのその先端との間の軸方向隙間ΔSを所定の設定値になるように、調整ネジ94のねじ込み量を調整する。軸方向隙間ΔSの所定の設定値は、電磁制御弁80に入力油圧が供給されないときに、ソレノイド74による駆動によって、スプール78が最大ストローク位置からさらに突き出す所定の突出量より小さい値とすることができる。例えば、所定の突き出し量が約1.8mmとすると、調整ネジ94の調整による軸方向隙間ΔSの設定値を約1.5mmとすることができる。
【0080】
この軸方向隙間ΔSの調整において、実際の隙間測定が困難な場合は、調整対象の複合制御弁70を実際に作動させて、調整ネジ94のねじ込み量を決定することができる。その手順は次のようにして実行することができる。
【0081】
最初に、調整ネジ94のねじ込みを逆方向に十分戻し、ΔSを十分大きな量とする(戻し工程)。次に、電磁制御弁80の1次ポートに入力油圧を供給する。入力油圧は、実際の作動のときと同等の油圧であることが好ましい。また、逆止制御弁90のアクチュエータポートに適当な油圧を供給する。この油圧も、実際の作動のときと同等の油圧であることが好ましい(初期設定工程)。この状態で、ソレノイド74を駆動し、スプール78を最大ストロークの位置とし、そこでスプール78の位置を保持する(最大ストローク設定工程)。ここで、逆止制御弁90のタンクポートの状態を監視しながら、タンクポートに油が抜け出すまで、調整ネジ94を徐々にねじ込み、その状態でねじ込みを止める(油抜け設定工程)。そして、予め定めたΔSの設定値に相当する長さ分、調整ネジ94のねじ込みを戻す(調整工程)。例えば、上記の例で、ΔSの設定値を約1.5mmとし、調整ネジ94のネジピッチが3mmの場合には、およそ半回転分、ねじ込み量を戻す。これにより、電磁制御弁80と逆止制御弁90の間の軸方向の位置関係を適切に調整することができる。
【0082】
図5は、適切な調整が行われた複合制御弁70を用いて、電磁制御弁80に入力油圧が供給されない場合に、ソレノイド74を駆動したときの様子を示す図である。ここでは、軸方向隙間ΔSが約1.5mmに調整されており、ソレノイド74の駆動により電磁制御弁80のスプール78は約2mm突き出すので、スプール78の先端は逆止制御弁90の逆止弁体84の先端を押し、スプリング部材86と昇降シリンダの油圧に抗して、逆止弁ハウジング82の肩部と、逆止弁体84の鍔部との間に隙間を生じさせる。これにより、昇降シリンダの油は、タンクポートから油開放路68に抜かれる。このように、適切な調整を行うことで、ソレノイド74、電磁制御弁80等の寸法精度のばらつき、組立精度のばらつき等を吸収し、複合制御弁70の作動を正常なものとして確保できる。
【0083】
図6は、取付ナット及び中間体を省略して構成される複合制御弁100を示す図である。図3と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。ここでは、筐体72に設けられたメネジ部に少なくとも一部が噛み合うオネジ部を有する調整ネジ98が用いられる。調整ネジ98の先端には、スプリング部材86を保持する有底穴が設けられる。このように、調整ネジ98の先端が直接、逆止制御弁90の構成要素であるスプリング部材86に接触し、調整ネジ98を筐体72に対しねじ込むことで、逆止制御弁90を軸方向に移動させることができる。調整ネジ98を用いた軸方向隙間ΔSの調整方法は、図3に関連して説明したものと同じである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る実施の形態において、作業機の下降に複合制御弁を用いる作業機昇降装置を備える対地作業車の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、対地作業車の作業機昇降装置の構成を主に油圧制御回路を中心にして示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、複合制御弁の部分断面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の説明の一環として、電磁制御弁のスリーブが最大ストロークの状態にあるときに、制御弁の逆止弁体の先端に接触する様子を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、適切な調整が行われた複合制御弁を用いて、電磁制御弁に入力油圧が供給されない場合に、ソレノイドを駆動したときの様子を示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、別の調整手段を備える複合制御弁を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
10 対地作業車、11 作業機昇降装置、12 エンジン、13 油圧制御回路、14 トランスミッション、16 伝達機構、18 油圧ポンプ、20 フィルタ、21a,21b リフトアーム、22 昇降シリンダ、23,25 ロアリンク、24 傾斜シリンダ、26 作業機昇降レバー、27 軸支ピン、28 取付ヒッチ、30 作業機、32,34,36 タンク、40 流量制御弁、42 絞り、44 方向制御弁、46,48 逆止弁、50,52,54,62,66 油供給路、56,80 電磁制御弁、58 上昇弁、60 アンロード弁、64 下降弁、68 油開放路、70,100 複合制御弁、72 筐体、74 ソレノイド、76 スリーブ、78 スプール、82 逆止弁ハウジング、84 逆止弁体、86 スプリング部材、88 バネ部材、90 逆止制御弁、92 取付ナット、94,98 調整ネジ、96 中間体。
【出願人】 【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
【出願日】 平成18年9月6日(2006.9.6)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二

【識別番号】100096976
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 純


【公開番号】 特開2008−61551(P2008−61551A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−241957(P2006−241957)