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【発明の名称】 配線基板
【発明者】 【氏名】宮下 拓也

【氏名】岡田 正史

【氏名】松本 憲治

【要約】 【課題】接点部の酸化や腐食、マイグレーション発生を防止でき、かつ接点部において良好な導通接続状態を得ることができる配線基板を提供する。

【解決手段】外部接続用の接点部を含む金属配線パターンが基板上に形成された配線基板において、シランを含有する有機薄膜を金属配線パターンを覆って基板上に形成し、接点部はその有機薄膜を介して導通接続されるものとする。従来のように接点部に形成した樹脂保護膜が接続時に破られ、あるいは削り取られるものと異なり、例えば、弱接触圧の外部部品であっても導通接続が可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部接続用の接点部を含む金属配線パターンが基板上に形成された配線基板において、
シランを含有する有機薄膜が上記金属配線パターンを覆って上記基板上に形成され、
上記接点部は上記有機薄膜を介して導通接続されることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板において、
上記有機薄膜がポリエステル系シランもしくはポリビニル系シランよりなることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板において、
上記有機薄膜は膜厚が5μm未満とされていることを特徴とする配線基板。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は配線パターンが基板上に形成されてなる配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に金属の配線パターンが形成された配線基板においては、外部との接続を担う部分(接点部)を除いて樹脂コーティングや絶縁フィルムで配線パターンを被覆するといったことが一般に行われ、このような被覆により配線パターンが保護されるものとなっているものの、接点部は露出した状態となっているため、例えば湿気などによって酸化や腐食さらにはマイグレーションが発生する虞れがあり、これにより接続(接触)不良が発生したり、隣接配線パターン間が短絡するといった問題が起こりうるものとなっていた。
このような問題に対処すべく、接点部にも保護膜を形成するといったことが従来提案されており、例えば特許文献1には相手方コネクタの端子によって突き破ることができる程度の膜厚の樹脂保護膜を形成することが記載されており、また特許文献2には相手方コネクタの端子によって削り取られる程度の硬度のふっ素系樹脂薄膜を形成することが記載されている。
【特許文献1】特開2002−109997号公報
【特許文献2】特許第3518023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、従来においてはマイグレーション等の発生を防止するために、樹脂保護膜を接点部に形成するといった構成を採用しているものの、この樹脂保護膜は導通接続時に破られ、あるいは削り取られるものであって、つまり接続部分において保護膜は除去されて接点部が露出されるものであって、そのような露出した接点部における腐食の進行は免れえないものとなっていた。加えて、一旦露出した接点部は露出状態のままとなるため、例えば着脱が繰り返し行われると露出部分が増大し、保護効果が大きく損われるものとなっていた。
【0004】
さらに、導通接続時に樹脂保護膜が破られたり、削り取られたりするものであるため、その際に生じる樹脂粉等による汚染により接触不良が生じる可能性があった。
また、例えば接触圧が弱い場合には保護膜を良好に破ることができず、また削り取れないといった状況が生じうるため、弱接触圧の外部部品を導通接続することができないという問題もあった。
この発明の目的はこのような状況に鑑み、接点部の酸化、腐食やマイグレーション発生を防止でき、かつ弱接触圧の外部部品でも導通接続可能で、さらに導通接続時に従来のような汚染による接触不良も生じることがない配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によれば、外部接続用の接点部を含む金属配線パターンが基板上に形成された配線基板において、シランを含有する有機薄膜が金属配線パターンを覆って基板上に形成され、接点部は有機薄膜を介して導通接続されるものとされる。
請求項2の発明では請求項1の発明において、有機薄膜がポリエステル系シランもしくはポリビニル系シランよりなるものとされる。
請求項3の発明では請求項2の発明において、有機薄膜は膜厚が5μm未満とされる。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、金属配線パターンは接点部も含めてシランを含有する有機薄膜によって覆われた構造となっているため、接点部の酸化や腐食、マイグレーション発生を防止することができる。
また、接点部は有機薄膜を介して導通接続されるものとなっているため、従来のように接点部に形成した樹脂保護膜を接続時に破ったり、削り取ったりするもののように、樹脂粉等によって接点部が汚染される虞れもなく、よって接触不良も発生せず、かつ弱接触圧の外部部品であっても良好な導通接続状態を得ることができるものとなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明の実施形態を実施例により説明する。
実施例
基板上に配線パターンを形成し、その配線パターンを覆って基板上に有機薄膜を形成して配線基板を作製した。基板材料にはPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用い、配線材料にはAg(銀)ナノ粒子分散インクを用いた。また、有機薄膜材料にはポリエステル系シラン溶液を用いた。以下に作製方法の詳細を順を追って示す。
(1)Agナノ粒子分散インクによる配線パターン形成の前処理として、PETフィルム基板の表面を撥水処理加工した。
(2)描画機能付ディスペンサを使用して基板上にAgナノ粒子分散インクを吐出し、配線パターンを描画形成した。図1は基板上に配線パターンが描画形成された配線基板サンプルを示したものであり、基板11はこの例では幅3mm×長さ10mm×厚さ0.2mmとした。また、配線パターン12は幅(W)0.2mm×長さ10mm×厚さ2μmとし、配線パターン間スペース(S)を0.2mmとして6本形成した。
(3)描画された配線パターンを200℃/1h(200℃,1時間)焼成し、Ag配線パターンを形成した。
(4)Ag配線パターンが形成された基板上にポリエステル系シラン溶液をスプレーコートし、200℃/1h焼成してポリエステル系シランよりなる有機薄膜を形成した。有機薄膜の膜厚は1.2μmとした。
【0008】
〈抵抗評価〉
上記のようにして作製した配線基板の配線抵抗と配線間絶縁抵抗を抵抗率計で測定した。測定は有機薄膜の上から、つまり有機薄膜を介して行うものとし、測定時の荷重は0.5N程度とした。なお、比較のため、有機薄膜無しのAg配線パターンが露出したサンプルを用意し、同様に抵抗評価を行った。
*有機薄膜有り(実施例)
上記6本の配線パターンにおいて、パターン両端間の配線抵抗は平均2Ω、配線間絶縁抵抗は全て100MΩ以上であった。
*有機薄膜無し(比較例)
6本の配線パターンにおいて、配線抵抗は平均2Ω、配線間絶縁抵抗は全て100MΩ以上であった。
【0009】
この結果より、配線抵抗は有機薄膜を介しても有機薄膜がない場合と同じ値が得られ、つまりこの例では有機薄膜が介在した状態で良好な導通がとれていることがわかる。なお、測定後に測定箇所において有機薄膜下の配線パターンが露出していない(有機薄膜が破れていない)ことを確認した。
一方、配線間絶縁抵抗は全て100MΩ以上であり、隣接配線パターン間は良好に絶縁されていることを確認した。
【0010】
〈腐食評価〉
上記のような有機薄膜を備えた配線基板に対し、マイグレーション試験を実施した。試験条件は85℃、85%RHの雰囲気中で5V、500h通電とした。試験の結果、配線抵抗、配線間絶縁抵抗共に試験前後の変化はなく、良好な結果が得られた。
【0011】
有機薄膜の膜厚について
有機薄膜の膜厚のみ変え、他は上記実施例と同様にして配線基板を作製し、配線抵抗及び配線間絶縁抵抗を測定した。結果を図2の表1に示す。
表1より有機薄膜の膜厚が5μm未満の時、配線抵抗はいずれも2Ωであって、有機薄膜を介した導通が可能であることがわかる。一方、有機薄膜の膜厚をこれより厚く、5μm以上とすると、配線抵抗は100MΩ以上となり、つまり有機薄膜によって絶縁されて導通がとれなくなることがわかる。なお、配線間絶縁抵抗は全て100MΩ以上であった。
【0012】
有機薄膜の種類、基板・配線材料について
有機薄膜の種類、基板材料、配線材料及び配線工法を変えて各種配線基板サンプルを作製し、配線抵抗を測定した。配線パターンは上述した実施例と同様、図1に示した仕様とした。なお、配線パターン近傍の有機薄膜中の無機成分をXMAで分析した。作製仕様及び測定結果を図3の表2に示す。
【0013】
サンプルAは上述した実施例において配線パターンの描画に描画機能付ディスペンサを使用していたのに代えて、インクジェット装置を用いたものであり、サンプルBはサンプルAに対し、基板材料をSi(シリコン)に変えたものである。また、サンプルCはサンプルBに対し、配線材料・工法を変え、配線パターンをAu(金)スパッタにより形成したものである。サンプルD〜FはそれぞれサンプルCに対し、有機薄膜の種類を変えたものである。
【0014】
表2より以下のことが言える。
・有機薄膜をポリエステル系シランやポリビニル系シランとすることにより、有機薄膜を介した導通が可能となる。これに対し、シランを含有しない場合は導通がとれない。
・配線材料はAgに限らず、Auであっても有機薄膜を介した導通が同様に可能となる。
・シランを含有する有機薄膜を形成した場合、配線パターン近傍の有機薄膜中から配線材料の金属元素が検出された。これに対し、シランを含有しない有機薄膜においてはそのような金属元素は検出されなかった。
【0015】
以上のことより、シランを含有する有機薄膜を配線パターン上に形成すると、配線材料の金属元素が有機薄膜中に拡散する現象が生じ、このような金属元素の拡散によって有機薄膜が導電性をもち、有機薄膜を介した導通接続が可能になると考えられる。なお、拡散の進行は表1に示した結果から多くても5μm程度と考えられ、有機薄膜の膜厚を5μm未満とすることで、このような導通接続が可能となる。
また、このような拡散の進行程度から、隣接配線パターン間のスペースは5μm以上あれば、有機薄膜を介して隣接配線パターンが導通するといったことを回避でき、つまり隣接配線パターン間の絶縁を確保できる。よって、極めて狭ピッチ(狭スペース)な配線パターンの配列を有する配線基板であっても、この発明を適用することができる。
【0016】
図4に示した写真はこの発明による配線基板において、配線抵抗を測定し、良好な導通状態を確認した後で表面状態を撮影したものであり、測定箇所における有機薄膜の変化はなく、有機薄膜下の配線パターンは露出していないことがこの写真より確認される。
また、図5は配線基板の断面サンプルにより有機薄膜中の無機成分をSEM−XMA分析した時のSEM写真の一例を示したものであり、ここでは配線材料をAg(厚さ:0.5μm程度)とし、有機薄膜をポリエステル系シラン(厚さ:10μm程度)としたサンプルを用いている。
【0017】
XMA分析により図5の写真中に示したように、有機薄膜中にAg成分が存在していることが確認された。
以上説明したように、この発明による配線基板によれば接点部は有機薄膜で覆われた構造となっているため、接点部の酸化や腐食さらにはマイグレーション発生を防止することができる。
また、接点部は有機薄膜を介して導通接続されるものとなっているため、従来のように接点部を覆う保護膜を接続時に接触によって強制的に除去することによって導通をとる構造と異なり、安定した導通状態が得られ、汚染等による接触不良も生じる虞れがなく、さらには例えば接触圧0.5N程度の弱接触圧の外部部品でも良好な導通接続状態を得ることができる。なお、この発明で用いるシランを含有する有機薄膜は比較的硬度が高く、通常のコネクタ接続等の接触圧では破損しないものとなっている。
【0018】
応用例
前述した実施例で用いたポリエステル系シラン溶液にCu(銅)製のコネクタ端子を浸し、表面に有機薄膜を形成する実験を行った。浸漬時間は1分とし、150℃/1h焼成してポリエステル系シラン膜を形成した。このコネクタ端子の導通評価を行った結果、導通が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】評価用配線基板の配線パターンを説明するための平面図。
【図2】有機薄膜の膜厚を変えたサンプルの抵抗評価結果を示す表。
【図3】有機薄膜の種類、基板材料、配線材料・工法を変えたサンプルの抵抗評価結果及びXMA分析結果を示す表。
【図4】配線抵抗測定後の有機薄膜表面状態を示す写真。
【図5】SEM−XMA分析を行った際の有機薄膜中のAg成分を示すSEM写真。
【出願人】 【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
【出願日】 平成17年6月22日(2005.6.22)
【代理人】 【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹

【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄

【識別番号】100066153
【弁理士】
【氏名又は名称】草野 卓


【公開番号】 特開2007−5467(P2007−5467A)
【公開日】 平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願番号】 特願2005−182130(P2005−182130)