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【発明の名称】 プラズマとコールドスプレーとを組み合わせた方法および装置
【発明者】 【氏名】ロナルド・ジェイ・モルツ

【氏名】デヴィッド・ホーリー

【氏名】リチャード・マカルー

【要約】 【課題】圧縮応力を有した被膜を形成し得る、プラズマとコールドスプレーとを組み合わせた方法および装置を提供すること。

【解決手段】後方ガンチャンバ91は、3つのカソードと、1つのガス注入リングと、を備えている。第1ニュートロードセグメント92は、短い初期アーク長さを可能とするための適切なアーク形状を有している。複数のニュートロードセグメント93は、ガス流量が増加した際に、より長いアーク経路を提供し得るように、機能する。アノードセグメント99は、ノズルとして機能し、アークを着座させるための段部94と、ガスを加速するための超音速縮径/拡径ノズル部95と、を備えている。ノズル部95の出口穴を超えたところに、粉末注入器97が配置されている。ノズル部95は、小さなマッハ数のためのものである。粉末原材料を加速し、600〜2000m/secという粒子速度を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に対して被膜を形成するための方法であって、
被膜を形成するためのイオン化と加速とを行い得るような十分に大きな流量でもって、熱スプレーガン内へと、プロセスガスを導入し;
1つまたは複数のカソードと1つまたは複数のアノードとの間に発生する1つまたは複数の電気アークを使用して、前記プロセスガスをイオン化し、これにより、2000℃を超える温度にまで前記ガスを加熱し;
アーク結合部分よりも下流側に位置したノズル部分でありかつスロート部を構成することとなる縮径/拡径部を備えたノズル部分によって、前記イオン化したプラズマガスを、超音速にまで加速し;
得られた高速高温ガス流/プラズマ流内へと、前記ノズルの前記スロート部よりも下流側のところで、前記ノズルの穴の内部においてあるいは前記ノズルの出口のところにおいて、供給原材料を注入し;
前記高速高温ガス流/プラズマ流によって、前記供給原材料を加速し、これにより、600〜2000m/secという粒子速度を得る;
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記方法を、大気圧から、大気圧から50mBarだけ低い圧力まで、といったような範囲の雰囲気圧力条件下において実施することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、
前記方法を、エア雰囲気下においてまたは不活性ガス雰囲気下において実施することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、
前記プロセスガスを、エアと、アルゴンと、窒素と、ヘリウムと、水素と、酸素と、これらの任意の混合ガスと、の中の1つとすることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、
前記1つまたは複数の電気アークを、40ボルトDCを超えるような電位差を生成し得るよう、十分な長さのものとすることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、
前記1つまたは複数の電気アークを、80ボルトDCを超えるような電位差を生成し得るよう、十分な長さのものとすることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、
前記供給原材料を、5μm以上という粒子サイズを有した粉末とすることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、
前記供給原材料を、30〜75μmという範囲の粒子サイズを有した粉末とすることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、
前記供給原材料を、液体ベースの供給原材料とすることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、
前記供給原材料を、1μm〜75μmという範囲の粒子サイズを有したようななおかつ液体を付帯した懸濁状態の粒子からなる供給原材料とすることを特徴とする方法。
【請求項11】
熱スプレーによって被膜を形成するための装置であって、
電気アークを形成するためのエミッタとして使用される1つまたは複数のカソードであるとともに、イオン化を起こすのに適したガスを通過させ得るようにして配置された1つまたは複数のカソードと;
電気的に中性とされた穴部であるとともに、点火時には電流の一部を通過させ得るような穴部であり、さらに、前記アークを延ばして電圧を増大させるよう作用する穴部と;
前記電気アークの他端を着座させるための段部またはエッジ部を備えているとともに、前記アークの長さを安定化させるよう作用する、アノード部と;
スロート部を構成する縮径/拡径部を備えたノズルであるとともに、前記縮径/拡径部の形状が、1.0を超えるマッハ数を生成し得るようなものとされたような、ノズルと;
供給原材料を注入するための1つまたは複数の注入器と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11記載の装置において、
前記1つまたは複数の電気アークを、40ボルトDCを超えるような電位差を生成し得るよう、十分な長さのものとすることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、
前記1つまたは複数の電気アークを、80ボルトDCを超えるような電位差を生成し得るよう、十分な長さのものとすることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項11記載の装置において、
前記供給原材料注入器が、5μm以上という粒子サイズを有した粉末を供給し得るものとされていることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14記載の装置において、
前記供給原材料注入器が、30〜75μmという範囲の粒子サイズを有した粉末を供給し得るものとされていることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項11記載の装置において、
前記供給原材料注入器が、液体ベースの供給原材料を供給し得るものとされていることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項11記載の装置において、
前記供給原材料注入器が、1μm〜75μmという範囲の粒子サイズを有したようななおかつ液体を付帯した懸濁状態の粒子からなる供給原材料を供給し得るものとされていることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項11記載の装置において、
前記各カソードが、電流供給源を備えたものとされていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項11記載の装置において、
前記アノード部が、前記ノズルの一部とされていることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項11記載の装置において、
前記アノード部が、前記ノズルとは別の部材とされていることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項11記載の装置において、
前記供給原材料注入器が、前記スロート部よりも下流側において、前記ノズルの穴内に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項11記載の装置において、
前記供給原材料注入器が、前記ノズルの出口のところに配置されていることを特徴とする装置。
【請求項23】
プラズマとコールドスプレーとを組み合わせたシステムであって、
(a)ガンであるとともに、
電気アークを形成するためのエミッタとして使用される1つまたは複数のカソードと;
点火時には電流の一部を通過させ得るような穴部であるとともに、前記アークを延ばして電圧を増大させるよう作用する穴部と;
前記電気アークを着座させるための段部またはエッジ部を備えているアノード部と;
スロート部を構成する縮径/拡径部を備えたノズルであるとともに、前記縮径/拡径部の形状が、1.0を超えるマッハ数を生成し得るようなものとされたような、ノズルと;
供給原材料を注入するための1つまたは複数の注入器と;
を備えたガンと、
(b)エアと、アルゴンと、窒素と、ヘリウムと、水素と、酸素と、これらの任意の混合ガスと、の中の1つとされたガスであるとともに、前記カソードを通過するものとされた、ガスと、
を具備し、
前記ガスが、前記カソードを通過することによりイオン化されて、イオン化したプラズマガスを形成するものとされ、
さらに、前記イオン化したプラズマガスが、超音速にまで加速され、
さらに、このような高速のものとされたイオン化プラズマガス内に注入された供給原材料を、基体に向けて加速するものとされていることを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項23記載のシステムにおいて、
前記のようにして加速された前記供給原材料が前記基体に対して衝突することにより、圧縮応力を有した被膜を形成するものとされていることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条第e項に基づき、2005年12月21日付けで出願された特許文献1の優先権を主張するものである。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、超音速ガス流を使用して被膜を形成するための方法および装置に関するものである。より詳細には、本発明は、プラズマ技術とコールドスプレーコーティング技術との組合わせを使用して被膜を適用するような方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
プラズマ熱スプレープロセスは、何年にもわたって、コーティング産業において使用されてきた。プラズマ熱スプレープロセスにおいては、基本的に、基体上へと、溶融させた材料あるいは加熱軟化させた材料を、スプレーする。典型的には粉末状のものとされる供給原料を、高温のプラズマフレーム内へと注入する。これにより、供給原料は、急速に加熱されるとともに、高速度にまで加速される。プラズマガンは、6000℃を超えるようなガス/プラズマ温度を容易に生成することができる。電気エネルギーから熱エネルギーへの転移は、あまり効率的ではなく、廃熱として生成されるほとんどすべての損失は、温度のためのまたガスが存在しないことのために、ノズルおよび電極のところから逃げてしまう。
【0004】
コールドスプレーという概念は、プラズマ技術とは異なり、最初は20世紀初頭に特許化されている。コールドスプレー技術の市販的応用は、産業的には、ずっと最近になってからである。コールドスプレーは、最小の熱入力でもって冷たい被膜を生成するという利点を有している。そのため、原材料自体の特性に似通ったコーティング材料を得ることができる。コールドスプレー被膜の重要な特徴点は、被膜内に結果的に存在する圧縮応力である。供給原料の溶融または部分的溶融の結果として被膜を生成する古典的な熱スプレープロセスにおいては、被膜が冷却されて収縮する際に、引っ張り応力が発生する。このような引っ張り応力は、多くの場合、被膜にクラックを引き起こす。これは、特に、厚い層を形成したときや、互いに性質の異なる複数の層からなる積層体を形成したときに、顕著である。
【0005】
プラズマガンに関する最近の進展は、ハイブリッド(組合せ)プロセスの実現を可能とした。例えば、縦列接続された複数のプラズマガンは、プラズマアークの実用的な拡張および全体的口径長さによって、ガンの動作電圧を増大させ、これにより、ガスに対しての熱伝達の効率を増大させた。また、これにより、プラズマ生成とガス動力学との分離可能性をもたらした。また、プラズマガンのの部分のところに段部または不連続部を設けることによってノズルの基部のところにアークを発生させることにより、アーク自体から、ガス動力学を分離させることができる。この場合、ガスの加速方法としてノズルとは別体の熱源として、プラズマ生成を利用することができる。他の進展は、延伸ノズルの構成である。これにより、ノズルに対して縮径部/拡径部を導入することができ、これにより、プラズマアークによってガスが加熱された後に、高温ガス/プラズマを超音速へと加速することができる。
【0006】
プラズマガン内における超音速は、従来技術による様々な構成によって得ることができる。しかしながら、このような構成における速度は、標準的な動作環境下においては、約マッハ1に制限されている。より大きな速度は、例えば真空下での動作や大量のガス(例えば、ヘリウム)の使用といったようなコスト高のプロセス条件を必要とする構成において、得られている。これら従来技術においては、ガス温度/粒子温度が高すぎて、材料の融点をはるかに超えたものとなる。加えて、プラズマプロセスにおいては、高速酸素燃料(HVOF)プロセスにおいてさえ、また、コールドスプレープロセスにおいては、動作効率および予想されるハードウェア寿命が、ガス速度の増大化につれて、急速に低減する。これは、従来技術によるプラズマガンを使用したガス加熱に関連してガスを加速させるという構成の特性のためである。また、従来技術によるプラズマガンにおいては、ガスが流れるにつれて、また、圧力が増大するにつれて、アークの安定度が低減するとともに、アークが圧縮されたものとなる。
【0007】
よって、上記事情に鑑み、当該技術分野においては、コールドスプレー被膜における圧縮応力という利点を享受し得るとともに、なおかつ、粒子速度と粒子温度との双方に関して、従来技術によるコールドスプレー技術やプラズマ技術の場合と比較して、より広範な動作範囲を提供し得るような、被膜成膜プロセスが要望されている。なお、本出願人の知る限りにおいては、本出願に関連性を有する先行技術文献は存在しない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コールドスプレープロセスによって形成された被膜と同様の望ましい応力状態を有した稠密な被膜を、より大きなプロセス効率でもって、なおかつ、よる小さなガス消費でもって、形成するための方法および装置を提供するものである。本発明による方法は、ガス加熱のためのプラズマプロセス方法の特徴点と、ガスを加速するためのコールドスプレープロセスの特徴点と、を組み合わせるものである。成膜プロセスにおいては、ガス流内において供給原材料を溶融させるものではない。成膜プロセスにおいては、縮径/拡径ノズルを使用することによって、加熱されたガスを、超音速にまで加速する。供給原材料は、ノズルの拡径部を超えたところにおいて、超音速ガス流内へと、導入される。その結果、本発明においては、コールドスプレーコーティングにおける望ましい特徴点を有した被膜を形成するためのより効率的な機構を提供するとともに、粒子速度の動作範囲を潜在的により広範なものとし得るような、さらに、従来技術によるプラズマ技術やコールドスプレー技術においては利用できなかった温度にまで動作範囲を潜在的により広範なものとし得るような、機構を提供する。
【0009】
本発明の一見地においては、プラズマ熱スプレープロセスに関連した熱エネルギーとコールドスプレープロセスにおける運動エネルギーとを組み合わせたハイブリッド型プロセスを使用した被膜形成方法を提供する。この方法における一ステップにおいては、被膜を形成するためのイオン化と加速とを行い得るような十分に大きな流量でもって、熱スプレーガン内へと、プロセスガスを導入する。次に、1つまたは複数のカソードと1つまたは複数のアノードとの間に発生する1つまたは複数の電気アークを使用して、プロセスガスをイオン化し、これにより、2000℃を超える温度にまでガスを加熱する。さらなるステップにおいては、アーク結合部分よりも下流側に位置したノズル部分でありかつスロート部を構成することとなる縮径/拡径部を備えたノズル部分によって、イオン化したプラズマガスを、超音速にまで加速する。最終ステップにおいては、得られた高速高温ガス流/プラズマ流内へと、ノズルのスロート部よりも下流側のところで、供給原材料を注入する。供給原材料は、ノズルの穴の内部においてあるいはノズルの出口のところにおいて、注入することができる。
【0010】
本発明の他の見地においては、被膜を形成するための装置であって、電気アークを形成するためのエミッタとして使用される1つまたは複数のカソードであるとともに、各々が、電流供給源を備えたものとされているような、1つまたは複数のカソードを具備した装置が提供される。カソードは、周囲チャンバに対して中央位置に配置され、イオン化を起こすのに適したガスが、カソードを通過しさらに電気アークを通過するようにして、導入される。装置は、電気的に中性とされた穴部であるとともに、点火時には電流の一部を通過させ得るような穴部であり、さらに、アークを延ばして、カソードとアノードとの間の電位差を増大させるよう作用する穴部を具備している。装置は、さらに、電気アークの他端を着座させるための段部またはエッジ部を備えているとともに、アークの長さを安定化させるよう作用し、さらに、ノズルの一部とし得るようなまたはノズルとは別部材とし得るような、アノード部を具備している。装置は、さらに、ノズルを具備している。ノズルは、スロート部を構成する縮径/拡径部を備えている。縮径/拡径部の形状は、加熱されたガスの速度を少なくとも1.2というマッハ数とし得るものとされる。最後に、装置は、供給原材料を注入するための1つまたは複数の注入器を具備している。供給原材料注入器は、ノズルの出口のところにおいてあるいはノズル出口を超えたところにおいて、スロート部よりも下流側において、ノズルの穴内に配置されている。
【0011】
本発明の追加的な見地および利点については、後述する。それらの一部は、以下の説明から明らかであろう、あるいは、本発明による開示によって明らかであろう。本発明における様々な見地および利点は、とりわけ後述するような様々な部材およびそれらの組合せによって、具現して達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
添付図面は、本発明のさらに明瞭な理解をもたらすためのものであって、本明細書の一部を構成するものである。これら添付図面は、本発明のいくつかの実施形態を図示するものであり、関連する説明と協働することにより、本発明のいくつかの原理を説明するよう機能するものである。
【0013】
以下においては、添付図面にいくつかの例が図示されているような、本発明のいくつかの好ましい実施形態について、詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明による組合せガンの一実施形態を示している。図1に示す組合せガンは、既存のプラズマガンの改良として説明されているけれども、説明された特徴点は、元々の工場施設に関しての使用を想定している。図において、電極10は、プラズマガンとして典型的なもののままであり、ガンの背面には、ガス注入口20が付設されている。ノズル30は、長尺形状のものとされているとともに、段部40と、縮径部/拡径部50と、を備えている。縮径/拡径超音速ノズル部50は、また、ノズル30のアノード部80から電気的に絶縁することもできる。これにより、超音速ノズル部50内へのアークの侵入防止を補助することができる。熱と蒸発との双方に対して耐え得るようなノズル穴壁として適切な材料構成が、ハードウェア寿命のために必要である。例えばランタン化されたまたはトリウム化されたタングステンといったような材料が、この用途においては、適切である。加えて、本発明におけるガン動作パワーは、典型的なプラズマガンの場合と比較して、より小さなものであり、ガス温度は、典型的には、9000°K以下である。粉末注入は、粉末注入ポート60として図示したような、内部に付設された穴を介して行うことも、また、粉末注入ポート70として図示したような、ノズル出口を超えて配置された穴を介して行うことも、できる。
【0015】
ある種の実施形態においては、組合せタイプのガンは、典型的なプラズマガンと同様にして動作することができる。しかしながら、相違点は、ノズルのスロート領域に比例させつつガス流を必要に応じて増大させることであり、これにより、超音速ガス流を生成することができる。(コールドスプレープロセスと比較して)プラズマが高温であることにより、必要とされるガス量は、典型的なコールドスプレーガンの場合と比較して少量であるとともに、なおかつ、粒子速度は、従来のプラズマガンの場合に得られるものよりも、はるかに高速である。圧縮性流体に関して古典的な等エントロピー流を使用することにより、ガス速度がガス温度の平方根に直接的に比例することのために、高温のガス温度が、臨界オリフィスを通しての実際の圧力または流れよりも、速度に対してより大きく貢献することがわかる。
【0016】
粒子に対しての熱エネルギーの伝達は、以下の理由のために制限される。すなわち、(a)基板を衝撃する前において、高温ガス/プラズマ内に滞留している持続時間(あるいは、滞留時間、ラテンシー)が非常に短いこと、(b)原材料の注入前において、ノズルの拡径部内で高温ガスが膨張する際に高温ガス内で発生する温度低下、および、(c)15μmよりも大きなサイズの粒子の使用。ある種の実施形態においては、約15μmよりも大きな粒子サイズを使用すべきであり、さらに他の実施形態においては、およそ30μm〜75μmというサイズ範囲の粒子を使用することができる。
【0017】
材料自体の融点以下の温度に粒子の温度を制御することは、使用しているスプレー距離と、ノズルの拡径部の長さおよび拡径角度と、材料注入の位置と、注入のタイプと、によって行うことができる。粒子の温度が非常に重要である場合には、液体懸濁液を使用することにより、粒子温度をさらに制限することによってプロセスを増強することができる。なぜなら、液体懸濁液を使用したときには、熱エネルギーの一部が、液体の沸騰によって消費されるからである。液体ベースの供給原料は、液体を付帯した懸濁状態の粒子や、液体前駆体や、溶解塩を含有した液体溶液、等とすることができる。
【0018】
従来的なプラズマガンの修正によって許容可能な結果を得ることができるけれども、より良好な結果は、本発明のいくつかの実施形態に基づく組合せプロセスの目的のために、ガン構成を最適化することによって、得ることができる。その理由は、典型的なプラズマガンにおいて(プラズマスプレーに関して)高速のための理想的な動作すなわち低温のための理想的な動作が得られないように、形状が制限されるからである。この制限は、プラズマガンの穴内において安定的なアークを形成し提示するという要求に起因する。これにより、高圧力における電流密度を十分に小さくし得るとともに、アークの長さを一定とすることができる。
【0019】
図2は、本発明において好適に使用し得るような、トリプルアーク縦列プラズマガンの一実施形態を示す断面図である。後方ガンチャンバ91は、3つのカソードと、1つのガス注入リングと、を備えている(明瞭化のために図示されていない)。第1ニュートロードセグメント92は、短い初期アーク長さを可能とするための適切なアーク形状を有している。これに対し、残りの複数のニュートロードセグメント93は、ガス流量が増加した際に、より長いアーク経路を提供し得るように、機能する。アノードセグメント99は、ノズルとして機能し、アークを着座させるための段部94と、ガスを加速するための超音速縮径/拡径ノズル部95と、を備えている。ノズル部95の出口穴を超えたところに、粉末注入器97が配置されている。図示されているノズル部95は、小さなマッハ数のためのものであって、ガスの総流量およびガンパワーに依存して400〜1000m/secという程度のガス速度を生成することができる。この構成においては、より大きなマッハ数のためのノズルを使用することができ、その場合には、ガス速度は、より高速のものとされる。
【0020】
縦列型のプラズマガン内においてアークの長さが延長されていることのために、また、互いの個別の3つのアークを使用していることのために、動作電圧がより大きなものとなり、ガス加熱全体にわたってのエネルギー密度がより一様なものとなる。より大きな電圧により、電流密度をより小さなものとすることができる。これにより、ハードウェアの寿命を延ばすことができ、高圧力状態において発生するアーク圧縮をオフセットすることができる。また、軸方向注入という形態でもって、ノズルのスロート部よりも前で、粉末の態様で供給原料を注入することも、可能である。しかしながら、この構成は、粒子温度を高くし、部分的な溶融を引き起こす。このため、得られる被膜が、コールドスプレーというよりも、高速酸素燃料(HVOF)プロセスにおいて得られるものに近いものとなる。また、軸方向注入は、スロート部を超えたところにおいて、行うこともでき、これにより、望ましい結果を得ることができる。
【0021】
本願発明における追加的な実施形態および/または特徴点においては、(a)上記において特定された数とは異なる数のアークを使用することができ、および/または、(b)アーク結合段部を有したアノード部を、ノズル部から離間することができ、あるいは、各セグメントが各アークのためのものとされた3つの周縁アノードセグメントさえをも有したアノード部を、ノズル部から離間することができ、および/または、(c)高温ガス/プラズマの形状を、矩形のまたはスロット付きのコールドスプレーノズルと同様の長尺火炎とすることができ、および/または、(d)ノズル形状やノズル長さやガス流量を変更することによって、ガスのマッハ数を増減することができ、これにより、粒子速度を増減することができ、および/または、(e)アーク結合ポインのところにまでノズルに向けて後方ガスチャンバの直径を拡径することができ、これにより、複数のカソードの配置を変更することができ、これにより、アークの領域におけるガス速度を低減させることができ、これにより、ガスに対しての熱エネルギーの伝達を変更することができる。
【0022】
本発明のさらに他の実施形態においては、(f)大気圧から、大気圧から約50mBarだけ低い圧力まで、といったような範囲の雰囲気圧力条件下において本発明によるコーティングプロセスを実施することができ、および/または、(g)不活性ガス環境下において本発明によるコーティングプロセスを実施することができ、および/または、(h)プラズマ火炎の成形という目的で、また、プラズマ火炎をノズルのところにまで延ばすという目的で、ガス流/粒子流を包含するようなシュラウドガスを使用することができ、および/または、(i)エアとアルゴンと窒素とヘリウムと水素と酸素との中の1つまたは複数のものも含めた任意の適切なプロセスガスを、イオン化のために使用することができ、および/または、(l)40ボルトDCを超えるような、また実施形態によっては80ボルトDCを超えるような、電位差を生成し得るよう、十分な長さの1つまたは複数の電気アークを有することができ、および/または、(m)およそ5μm〜100μm超といったような、好ましくは30〜75μmという範囲の、粒子サイズを有した粉末状態の供給原材料を使用することができ、および/または、(n)およそ1μm〜100μm超といったような、好ましくは5〜75μmという範囲の、粒子サイズを有した液体を付帯した懸濁状態の粒子からなる供給原材料を使用することができる。
【0023】
図2に示す形状を有したトリプルアーク縦列プラズマガンに関し、コンピュータ支援流体動力学(CFD)によるモデル化を行った。このモデルにおいて、220psiという背圧でもって、固定されたガス加熱源を使用し、さらに、プロセスガスとしてアルゴンを使用し、3000°Kでもって、プラズマアークを発生させた。2400m/secを超えるガス速度が得られ(典型的には、コールドスプレープロセス)、なおかつ、出口温度は、293°Kという雰囲気条件に近いものであった。これにより、等エントロピー条件を確認した。さらに、ガス/プラズマ温度を6000°Kにまで増加させ、背圧を300psiにまで増加させ、アルゴンとヘリウムとの混合ガスを使用することにより、5000m/secを超えるガス速度を得た。ガスから粒子へと伝達される速度の比率を約30%とすれば、1500m/secを超えるような粒子速度を得ることができる。典型的なプラズマガンは、9000°Kを超えるようなプラズマ温度を生成する。よって、高マッハ数の超音速ノズルを使用した場合には、2000m/secを潜在的に超えるような粒子速度を得ることができる。加えて、より多くのエネルギーをプロセス内に導入するにつれて、出口温度は、雰囲気条件以下にまでさえ低減することとなる。これにより、例えば銅や亜鉛といったような低温で延性を有した材料に関して、真の意味でのコールドスプレー条件を得ることができる。
【0024】
最近になって開発したトリプルアーク縦列プラズマガンを、上述したような構成上の特徴点(例えば、縦列型プラズマガン、ノズル内に段部または不連続部を配置すること、延長したノズル)を使用することにより、動作させた。動作圧力およびプラズマガンの電流が増大するにつれて、ノズル出口のところにおけるガン前面から噴出する実際のプラズマ火炎が収縮し始めることに注意されたい。これは、プラズマガンの場合には、ガス流およびエネルギー入力(電流)が増大するにつれてエネルギー入力の増加に応じてプラズマ火炎がより大きくなるという通常の物理法則に反しているように思われる。このような大きなエネルギーパラメータの場合における被膜の適用により、圧縮応力を有した被膜が得られた。このことは、より低温での被膜形成を意味している。さらに、得られた基板温度は、プラズマスプレーコーティングの場合に予想されるものよりも、かなり低いものであった。発見事項の分析により、プラズマガンが、実際に、例えばHVOFや可能であればコールドスプレーといったようなプロセスの場合に想定される動作態様でもって動作していることが示された。
【0025】
これにより、従来的な理解とは異なり、組合せ型の(あるいは、ハイブリッド型の)プラズマガンを使用することによって実際に『コールド』被膜を形成し得る程度にまで、動作ウィンドウを拡張し得るように、プラズマガンの動作を拡張できるという可能性が存在する。したがって、組合せ型のプラズマガンは、従来的なコールドスプレー装置の場合よりも、ずっと少量のガスしか使用することがなく、基板の前面に作用する弧状衝撃波が、かなり少ない。このため、基板に対する熱伝達が少なく、また、粒子の偏向も少ない。
【0026】
上述したような本発明のいくつかの実施形態においては、プロセスガスの供給源を加熱し得るよう、プラズマ熱スプレーガンによって生成されるプラズマアークの場合と同様に、プラズマアークを使用する。プロセスガスは、任意の不活性ガスともまた任意の反応性ガスともすることができ、電気アークによって容易にイオン化することができる。プラズマアークは、ガンの後方部分において発生する。このため、ガスは、ノズルに到達するよりも前に、アークによって加熱される。ノズルは、アークと結合するための不連続部と、超音速にまで高温ガス/プラズマを加速するための縮径部/拡径部と、を備えている。供給原材料は、プラズマ流/高温ガス流内へと、拡径ノズル部よりも下流側のところにおいてすなわち拡径ノズル部を超えたところにおいて、注入される。供給原材料は、注入後には、ガスによって超音速にまで加速される。
【0027】
本発明の一実施形態においては、典型的なプラズマ熱スプレーガンは、以下の特徴点を備えるように、修正することができる。
(1)プラズマガンが、超音速ノズルを通しての大きなガス速度を十分に支持し得るような大きな背圧を取り扱い得るように、増強されているという特徴点。この場合、背圧は、プラズマガンの内部において100psiにまで大きなものとすることができる。
(2)ノズルが、ノズルの縮径部分の開始地点においてプラズマアークを着座させ得るような段ぶを備えているように修正されているという特徴点。
(3)ノズルの長さが、延ばされており、ノズルの端部のところに縮径部/拡径部を備えているという特徴点。
これに代えて、装置は、元々の工場設備として上記特徴点を特定的に備えたものとして、製造することができる。
【0028】
図3は、プラズマ熱スプレープロセスに関連した熱エネルギーとコールドスプレープロセスの運動エネルギーとを組み合わせた本発明の実施形態に基づく組合せプロセスを使用した被膜形成のための方法300を示すフローチャートである。ステップS310においては、プロセスガスを(あるいは、複数のプロセスガスを)、被膜形成のためにイオン化されて加速され得るような十分な流量でもって、熱スプレーガン内へと、導入する。ステップS320においては、1つまたは複数のカソードと1つまたは複数のアノードとの間に発生する電気アークといったような1つまたは複数の電気アークを使用してプロセスガスをイオン化し、これにより、2000℃を超える温度にまでガスを加熱する。ステップS330においては、アーク結合部分よりも下流側に位置したノズル部分でありかつスロート部を構成することとなる縮径/拡径部を備えたノズル部分によって、イオン化したプラズマガスを、超音速にまで加速する。ステップS340においては、得られた高速高温ガス流/プラズマ流内へと、ノズルのスロート部よりも下流側のところで、ノズル穴の内部においてあるいはノズルの出口のところにおいて、供給原材料を注入する。最後に、ステップS350においては、高速高温ガス流/プラズマ流によって、供給原材料を加速し、これにより、600〜2000m/secという粒子速度を得る。
【0029】
『実験結果』
トリプルアーク縦列プラズマガンを、図2に示すように長尺ノズルが段部と縮径拡径部とを備えているように、修正した。ノズルのスロート部の直径は、5mmであり、拡径部の直径は、9mmであった。プラズマガンを、前もって、ガス注入方法の変更と冗長ガスシールとも含めて、ガン内においてより大きな背圧を取り扱い得るように、修正した。ガンに関するプラズマコントローラを、典型的なプラズマガンの場合よりもより大きなガス流量およびより大きなガス圧力を可能とし得るよう、さらに、電源からのより大きなアーク電圧を可能とし得るよう、修正した。周縁回りに配置された3つの注入器を使用することにより、ノズルの出口ポイントを超えたところにおいて、供給原材料を注入した。
【0030】
純粋なアルゴンを使用して、ガンを起動させ動作させた。その後、ガス流量を、100NLPM(normal litter per minute)のアルゴンと、200NLPMのヘリウムと、10NLPMの窒素と、に調節した。電流値を、450アンペアに調節した。その場合の電圧値は、192VDCであった。ガンのところにおいて測定された背圧は、80psiであった。短いプラズマ火炎の観測により、少なくとも4個のショックダイヤモンド400の存在が示された(図4に図示されている)。5μm〜31μmという粒子サイズ分布を有したタングステンカーバイドからなる供給原材料を、75g/minという供給速度でもって、高温ガス/プラズマ流内へと、注入した。測定された粒子速度は、700m/secを超えるものであり、粒子温度は、最低で1000℃まで測定可能な温度計では測定できないような低温であった。視覚的な観測により、ごくわずかの粒子成長しか示されなかった。このことは、古典的な熱スプレーの場合と比較して、また、典型的なプラズマスプレープロセスの場合と比較して、非常に低温であることを示している。パラメータを使用して、一組をなす被膜試料をスプレーし、以下の結果を得た。
1.スプレー開始直後においては、試料の温度は、典型的なプラズマ被覆形成の場合よりも、また、HVOF被覆形成の場合さえよりも、ずっと低いものであり、150℃であった。
2.スプレー時に固体支持体に対して固定された薄い基板上における被膜を目視観測することにより、凸状をなす曲がりの形跡が示された。このことは、被膜内における圧縮応力を示している。
3.研究室に提出された試料は、1%未満という空隙率を示した。これは、理想的な構造である。また、試料は、大きな硬度を示した。
【0031】
図5は、被膜構造の顕微鏡写真である。図5は、カーバイドが高密度であることを示している。このことは、プロセス内に導入された熱入力が非常に小さいことを意味している。この皮膜は、上記実験手順を使用して実際に形成されたタングステンカーバイド皮膜である。
【0032】
より大きな動作流量および動作圧力においては、チタンを含有した様々な材料に関して、900m/secを超える粒子速度が得られた。使用した最大のガス流量は、400NLPM未満であった。この流量は、同様の粒子速度を得るに際してコールドスプレー法において使用されるガス流量よりも、ずっと小さなものである。ガス流量およびパワーレベルをさらに増大させることにより、さらに大きな粒子速度を得ることができる。しかしながら、そのような場合には、それらの条件を取り扱い得るように制御装置(電源、および、ガス流通制御機器)を修正する必要があるとともに、ガン電圧を増大させ得るよう縦列部分を、より長いものとする必要がある。また、プラズマ火炎の観測により、より大きなガス圧力およびより大きなアークパワーがプロセスに対して導入された際には、コンピュータモデル化によって示されているように、プラズマ火炎がより小さなものとなること、および、明らかにより低温となること、が示された。
【0033】
同様に、より長いものとされたノズルを製造し、段部と、円形の拡径出口に代えて楕円形状の拡径出口と、を備えた同じガンにおいて、試験を行った。少なくとも4個のショックダイヤモンドが観測されるという点において、このノズルは、上記のノズルと同様に動作した。上記の場合と同様にして火炎内へと同じ粉末を注入することにより、円形のノズルの場合に得られたものと同様の特性が得られた。
【0034】
本発明の上記様々な見地および他の様々な利点は、添付図面を参照しつつ上述した特定の構造によって、実現して達成することができる。上記の一般的な説明と添付図面における詳細な例示との双方が、単なる例示に過ぎないこと、および、特許請求の範囲によって規定された本発明に対するさらなる説明を提供することを意図したものであることは、理解されるであろう。したがって、本発明の一般的概念からなる精神および範囲を逸脱することなく、様々な変形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に基づいて修正されたような、従来的なプラズマスプレーガンを概略的に示す図である。
【図2】本発明によるトリプルアーク縦列プラズマガンを概略的に示す断面図である。
【図3】本発明のいくつかの実施形態による組合せプロセスを使用した被膜成膜方法を示すフローチャートである。
【図4】プラズマ火炎内におけるいくつかのショックダイヤモンドとタングステンカーバイドの材料注入とを示す写真であって、注入された粒子が成長していないことに注意されたい。
【図5】被膜の構造を示す顕微鏡写真であって、カーバイドが高密度であることを示しており、このことは、プロセス内への熱入力が非常に小さいことを示している。
【符号の説明】
【0036】
30 ノズル
40 段部
50 縮径部/拡径部
60 粉末注入ポート(注入器)
70 粉末注入ポート(注入器)
80 アノード部
94 段部
95 超音速縮径/拡径ノズル部
97 粉末注入器
【出願人】 【識別番号】300047884
【氏名又は名称】サルツァー・メトコ(ユーエス)・インコーポレーテッド
【出願日】 平成18年12月20日(2006.12.20)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦

【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉


【公開番号】 特開2007−184269(P2007−184269A)
【公開日】 平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願番号】 特願2006−343398(P2006−343398)