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【発明の名称】 コルピッツ型発振器
【発明者】 【氏名】笠原 憲司

【要約】 【課題】主振動(Cモード)での安定発振を得ながら、不要振動(Bモード)を確実に抑圧した発振を得る。

【解決手段】圧電振動子X1とトランジスタQ1および分割容量成分C1,C2を含むコルピッツ型発振器において、容量成分C1と容量成分C2との接続中点とトランジスタのエミッタとの間に容量成分C3とインダクタL1の直列接続から成る帰還回路を挿入し、容量成分C2と並列にインダクタL2を挿入し、容量成分C2とインダクタL2の並列共振周波数を当該発振器の発振周波数近傍に設定することにより、圧電振動子から見た回路側の負性抵抗となる周波数帯域を、所望する周波数のみを含む狭帯域に設定して当該発振器の不要振動を抑圧する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、
この圧電振動子にベースが接続された発振増幅用トランジスタと、
前記圧電振動子と前記トランジスタのベースとの接続点と接地との間に設けられた、容量成分C1及び容量成分C2を直列に接続した直列回路と、
前記容量成分C1と容量成分C2との接続点と前記トランジスタのエミッタとの間に設けられた、容量成分C3及びインダクタL1を直列に接続し帰還回路と、
前記容量成分C2と並列に接続されたインダクタL2と、を備え、
前記容量成分C2及びインダクタL2を並列に接続した並列回路の並列共振周波数を当該発振器の発振周波数近傍に設定したことを特徴とするコルピッツ型発振器。
【請求項2】
前記圧電振動子は、SCカット水晶振動子、又はITカット水晶振動子であり、発振器の発振周波数はCモードにおける周波数であることを特徴とする請求項1に記載のコルピッツ型発振器。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水晶を圧電振動子とする圧電発振器に係り、特に主振動で安定発振し、不要振動の抑圧を図ったコルピッツ型発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電発振器は、周波数安定度が高いことから移動体通信基地局など多くの電子機器に使用されている。圧電発振器の圧電振動子にSCカット水晶振動子またはITカット水晶振動子を用いると、ATカット水晶波動子を用いた場合に比べて応力感度特性や耐衝撃特性等に優れることから、近年では多数使用されている。
【0003】
図7はSCカット振動子の共振特性を示す図で、横軸が周波数、縦軸がリアクタンスである。同図から明らかなように、主振動であるCモード(厚みすべり振動)の他にAモード(厚み縦振動)とBモード(厚み捻れ振動)が存在する。特に、主振動であるCモードに隣接するBモードは、Cモードから約9%高域側に近接しており、主振動であるCモードより強勢的な場合もある。
【0004】
そのため、発振器では不要振動であるBモードでの発振が問題となり、または発振器の発振周波数が主振動であるCモードから不要振動であるBモードへ変化する周波数ジャンプが問題となる。
【0005】
この問題を解消しようとする発振器が種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1のものは、図8に回路構成を示すように、コルピッツ型発振器の発振用水晶振動子X1とは別に、分割容量成分C1,C2の直列回路の中点(分割点)と、トランジスタQ1のエミッタと帰還抵抗R3の接続点との間にATカット水晶振動子X2を介挿し、この水晶振動子X2の直列共振周波数を主振動(Cモード)による発振周波数にほぼ一致するように設定する。また、その変形例として、図9に回路構成を示すように、水晶振動子X2に代えて、インダクタL1と容量成分C3の直列回路から成る帰還回路を設けた構成としている。この図9の構成における負性抵抗特性を図10に示す。
【0006】
特許文献2のものは、図11に回路構成を示すように、帰還回路として、帰還抵抗R4に並列に分割容量成分C3,C4を設け、分割容量成分C3,C4の接続点からインダクタL1と可変リアクタンスZを設けた構成としている。この図11の構成における負性抵抗特性を図12に示す。
【0007】
【特許文献1】特許第3268726号
【特許文献2】特許第3283493号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8に示す特許文献1の発振器回路では、発振用水晶振動子X1とは別に、Bモード抑圧用水晶振動子X2を必要とし、水晶振動子を2個必要とするため、高価になるという問題があった。
【0009】
この点、図9に示す発振器回路(特許文献1の変形例)では、Bモード抑圧用水晶振動子X2が不要になる。しかし容量成分C3とインダクタL1との直列回路を設けた場合には、水晶振動子に比べて、共振特性が急峻でないために、水晶振動子X2の周波数選択特性と同等の特性を得るのが難しくなる。主振動の周波数が高い場合には、Cモードに対応する周波数とBモードに対応する周波数との差が大きいため、共振回路の急峻さは問題とならないが、主振動の周波数が低い場合には、Cモードに対応する周波数とBモードに対応する周波数との差が小さいため、周波数選択用共振回路の共振特性の急峻さが問題となる。この回路構成の場合、負性抵抗特性を図10に示すように、主振動(Cモード)周波数での負性抵抗値に対して、不要振動(Bモード)周波数でも同等レベルの負性抵抗値を呈し、不要振動の抑圧が期待できない。
【0010】
図11に示す特許文献2の発振器回路では、コルピッツ発振器の基本回路に、分割容量成分C3,C4とインダクタンス(L1+Z)で構成する帰還回路を介挿することにより、Cモードの周波数に対してはパスとなり、Bモードの周波数に対しては減衰を得ようとしている。この構成による負性抵抗特性は、図12に示すように、図10に比べてBモードの周波数での負性抵抗値に改善が見られる。
【0011】
しかし、図12の例では、Bモードの周波数でも負性抵抗値が「−45Ω」となって比較的高い値になり、この負性抵抗値によって、使用する水晶振動子X1の圧電特性の違い、および発振器回路の実装構造によってはBモードの不要振動をまねくおそれがある。
【0012】
また、図11において、可変リアクタンスZは、実装に際して回路要素がもつ定数誤差の発生に対して発振周波数ずれを調整可能とするほか、そのリアクタンス分調整によって、負性抵抗値のピークをCモードよりも低い周波数に設定することで、Bモードの負性抵抗値を小さくすることができる。しかし、この周波数調整法では、Cモードでの負性抵抗値も小さくなるし、Bモードでの負性抵抗値を正の値にまで高めるのが難しく、不要振動を確実に抑圧できるものでなかった。
【0013】
本発明の目的は、不要振動(例えばBモード)抑圧用水晶振動子を不要にし、主振動(例えばCモード)の周波数での負性抵抗値を低下させることなく、不要振動周波数の負性抵抗値として絶対値の小さな値が得られるかまたは正の値を得ることができ、主振動での安定発振を得ながら不要振動を確実に抑圧できるコルピッツ型発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、コルピッツ型発振器において、
圧電振動子と、
この圧電振動子にベースが接続された発振増幅用トランジスタと、
前記圧電振動子と前記トランジスタのベースとの接続点と接地との間に設けられた、容量成分C1及び容量成分C2を直列に接続した直列回路と、
前記容量成分C1と容量成分C2との接続点と前記トランジスタのエミッタとの間に設けられた、容量成分C3及びインダクタL1を直列に接続し帰還回路と、
前記容量成分C2と並列に接続されたインダクタL2と、を備え、
前記容量成分C2及びインダクタL2を並列に接続した並列回路の並列共振周波数を当該発振器の発振周波数近傍に設定したことを特徴とする。
【0015】
前記圧電振動子は、例えばSCカット水晶振動子、又はITカット水晶振動子であり、発振器の発振周波数は例えばCモードにおける周波数である。このような構成とすることにより、圧電振動子から見た回路側の負性抵抗となる周波数帯域が所望する発振周波数のみを含む狭帯域になり、当該発振器の不要振動を抑圧することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によれば、コルピッツ型発振器において、容量成分C1と容量成分C2との接続中点と、トランジスタのエミッタと、の間に、容量成分C3及びインダクタL1の直列回路を挿入し、容量成分C2と並列にインダクタL2を挿入するのみで、主振動である例えばCモードの周波数での負性抵抗値が低下することなく、不要振動である例えばBモードの周波数に正の負性抵抗値を得ることができ、不要振動を抑圧してCモードによる安定した発振を得ることができるという優れた効果がある。
【0017】
また、Bモード抑圧用水晶振動子が不要になり、しかも少ない回路要素の追加で済み、安価な発振器を実現できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態を示すコルピッツ型発振器の回路図である。
【0019】
発振増幅用素子としてのトランジスタQ1は、エミッタホロワ回路として構成され、そのベースに水晶振動子X1の一端を接続する。該水晶振動子X1の他端を可変容量成分CVを介して接地する。トランジスタQ1のベースと接地との間に分割容量成分C1,C2の直列回路を接続する。容量成分C1は一端をトランジスタQ1のベースに接続し、この容量成分C1と直列接続した容量成分C2の他端を接地する。トランジスタQ1のエミッタと接地との間に帰還抵抗R3を接続し、コレクタは電源Vcに直接接続する。分割容量成分C1とC2の中間点とトランジスタQ1のエミッタとの間に、容量成分C3とインダクタL1の直列回路を挿入し、分割容量成分C2と並列にインダクタL2を挿入する。そして、電源VcとトランジスタQ1のベースとの間にブリーダ抵抗R1を接続し、ベースとアースとの間にブリーダ抵抗R2を接続する。なお、出力端VOはトランジスタQ1のエミッタから得る。
【0020】
以上の構成になるコルピッツ型発振器は、SCカット水晶振動子を使用して水晶発振器を製作する際に、不要モードへの周波数ジャンプを生じさせないためのものである。即ち、発振器の帰還回路を、Cモードの周波数ではパスとなり、Bモードの周波数では減衰するような回路として構成するもので、図9と異なる回路構成としては容量成分C2に並列にインダクタL2を設けた点にある。
【0021】
図1のコルピッツ型発振器における、分割容量成分C1,C2、容量成分C3、インダクタL1、インダクタL2の回路を種々変えて回路のシミュレーションを行ったところ、C1=43pF,C2=470pF,C3=4700pF,L2=2.2μH,L1=10μHにて、図2に示す狭帯域の負性抵抗特性が得られた。図2の負性抵抗特性から、主振動であるCモード(5MHz)における周波数では十分に大きな負性抵抗が得られ、Bモード(約5.45MHz)では負性抵抗が正の値となっている。このことから、Bモードでの水晶振動子等価定数がどのような数値になっても発振条件を満たさないで、Cモードでのみ発振させる発振器の実現が期待できる。このとき、容量成分C2とインダクタL2によって決定される並列共振周波数がCモードの周波数にそれぞれほぼ一致することで、図2の負性抵抗特性が得られると考えられる。
【0022】
そこで、上記発振回路の負性抵抗特性を確認するため、上記の回路定数(C1=43pF,C2=470pF,C3=4700pF,L2=2.2μH,L1=10μH)をもつ回路要素を用いて発振器を試作し、この発振器の負性抵抗特性を測定した結果を図3に示す。図3の負性抵抗特性から、主振動であるCモード(5MHz)における周波数では十分に大きな負性抵抗が得られ、Bモード(約5.45MHz)では負性抵抗が正の値となっている。このことから、実機においてもCモードのみを発振させ、Bモードを完全に抑圧できることが確認された。
【0023】
本発明は、容量成分C2とインダクタL2から成る並列回路の並列共振周波数を当該発振器の発振周波数(主振動の周波数)近傍に設定することが条件の一つであり、このように設定することにより、主振動である例えばCモードでは発振し、不要振動である例えばBモードでは発振しない回路を構成することができる。しかし前記並列回路の並列共振周波数と当該発振器の発振周波数との周波数差がどの程度近くなると本発明の条件を満足するのかという点について、周波数差を数値で表すことはできない。何故なら、水晶振動子のCモードの等価抵抗及びBモードの等価抵抗と、発振回路のCモードの負性抵抗及びBモードの負性抵抗と、によって発振の有無が決まってくるからである。
【0024】
模式的な例を挙げると、水晶振動子のCモードの等価抵抗及びBモードの等価抵抗が夫々120Ω及び100Ωである場合、発振回路のCモードの負性抵抗及びBモードの負性抵抗が夫々−200Ω及び−70Ωであれば、Cモードが発振条件を満足しかつBモードが発振条件を満足しないので、本発明の効果が得られる。しかし同じ水晶振動子を用いた場合であっても、発振回路のCモードの負性抵抗及びBモードの負性抵抗が夫々−100Ω及び−30Ωであれば、Cモード及びBモードのいずれもが発振条件を満足しないので
本発明の効果が得られなくなる。
【0025】
即ち、本発明の特徴は、図1に示すような回路構成を採用することにより、容量成分C2とインダクタL2から成る並列回路の並列共振周波数を調整することで、例えばCモードが発振条件を満足しかつ例えばBモードが発振条件を満足しない回路構成を得ることができるということである。そして、並列共振周波数を調整するとは、当該発振器の発振周波数近傍に設定するということであり、発振器の発振周波数近傍に設定するとは、前記並列回路の並列共振周波数と当該発振器の発振周波数とを近づけた結果、Cモードが発振条件を満足しかつBモードが発振条件を満足しないような負性抵抗が得られることを意味する。
【0026】
図4は、図1の回路を基にした具体的な発振器回路を示し、トランジスタQ1のエミッタ出力を、高周波増幅回路AMP(H)を介して取り出す構成になる。この回路構成は、図5に示す従来のオーバトーン用発振器回路とはインダクタL1の有無で異なるが、図4ではCモードでの安定発振を得ながらBモードでの不要振動を抑圧できることを実験で確認した。
【0027】
このときの負性抵抗特性を図6に示し、特性F(A)が図4に示す本発明回路の負性特性、特性F(B)が従来のオーバトーン用発振回路の負性特性を示す。これらの負性抵抗特性F(A)、F(B)から明らかなように、オーバトーン用発振回路では、広い帯域の周波数領域(7MHz〜10MHz程度)で負性抵抗が大きくなってその領域での不要発振が起きやすくなるのに対して、本発明では狭帯域の周波数領域(中心周波数5MHz)F(A)で負性抵抗が大きくなってその領域のみでの発振が可能となる。このように回路図からすると本発明の回路とオーバトーン用発振回路とでは、インダクタL1の有無だけが異なるが、インダクタL1を設けかつ容量成分C2とインダクタL2から成る並列回路の並列共振周波数を当該発振器の発振周波数近傍に設定することでオーバトーン用発振回路の動作とは全く異なった動作になることが理解される。
【0028】
なお、以上までは、SCカット水晶振動子を用いた水晶発振器における周波数ジャンプ現象、即ちBモード発振の抑圧について説明したが、ITカット水晶振動子など、他の圧電振動子を用いた発振器の不要振動抑圧に適用して同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態を示す回路図。
【図2】本実施形態の発振器のシミュレーションによる負性抵抗特性図。
【図3】本実施形態の試作機のシミュレーション結果を示す負性抵抗特性図。
【図4】本発明の実施形態を基にした具体的な発振器回路図。
【図5】従来のオーバトーン用発振器回路図。
【図6】オーバトーン用発振器と実施形態の発振器の負性抵抗特性図。
【図7】SCカット振動子の共振特性図。
【図8】従来の発振器回路図。
【図9】従来の他の発振器回路図。
【図10】図9の負性抵抗特性図。
【図11】従来の他の発振器回路図。
【図12】図11の負性抵抗特性図。
【符号の説明】
【0030】
Q1 発振増幅用トランジスタ
X1 発振用水晶振動子
R1,R2 ブリーダ抵抗
R3 帰還抵抗
CV 可変容量
C1,C2 分割容量
C3 容量
L1 インダクタ
L2 インダクタ


【出願人】 【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
【出願日】 平成18年6月2日(2006.6.2)
【代理人】 【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫


【公開番号】 特開2007−20158(P2007−20158A)
【公開日】 平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願番号】 特願2006−155243(P2006−155243)