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【発明の名称】 温度補償型水晶発振モジュール
【発明者】 【氏名】向井 祐介

【氏名】池本 伸郎

【要約】 【課題】実用に伴う接着剤の変形や、水晶片からのガスの離脱や吸着を抑え、発振周波数の安定性の高い温度補償型水晶発振モジュールの提供を図る。

【解決手段】接着剤を配した水晶振動子42およびサーミスタ43を配線パターン上に搭載したセラミック基板41に樹脂基板49を接合し、樹脂基板49にベース基板48を接合する。接続用電極51Aを、電極45にはんだ52Aにより接続し、接続用電極51Bを、金属ピン端子46にはんだ52Bにより接続する。そして、接続用電極51Aと接続用電極51Bとを接続することによりセラミック基板41の配線パターンと金属ピン端子46とを熱的に離間した温度補償型水晶発振モジュール50を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子およびサーミスタを配線パターン上に搭載するセラミック基板と、金属ピン端子を備えるとともに前記セラミック基板を搭載するベース基板と、を備えた温度補償型水晶発振モジュールであって、
前記セラミック基板と前記ベース基板との間に樹脂基板を備え、
前記樹脂基板に第1の接続用電極と第2の接続用電極とをそれぞれ離間して設け、
第1の接続用電極に、前記配線パターンに接続して前記セラミック基板に設けた電極を接続し、第2の接続用電極に前記金属ピン端子を接続し、前記配線パターンと前記金属ピン端子とを第1の接続用電極と第2の接続用電極とを介して導通させたことを特徴とする温度補償型水晶発振モジュール。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、サーミスタを用いて水晶振動子の温度補償を行う水晶発振モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負特性のサーミスタを含むサーミスタ回路と水晶振動子とを一枚の基板上に配置して発振周波数の温度補償を行う温度補償型の水晶発振モジュールが用いられている。この温度補償型水晶発振モジュールの場合、基板やケースとして熱伝導率の高いアルミナ系セラミックなどが用いられる。また、一般に水晶振動子はセラミックケースに設けられ、導電性の接着剤でセラミックケース内部に固定される。このようにしてサーミスタ回路の温度変化に対する応答性を高めた水晶発振モジュールが提供されている。ここで一般的なサーミスタ回路による温度補償型水晶発振モジュール(TCXO)の構成例を図1(A)に示す。セラミック基板1上にセラミックケースに入った水晶振動子2やサーミスタ3やトランジスタ4などが配され、セラミック基板1の底面にはこの温度補償型水晶発振モジュール10自体の実装用の電極5が設けられている。このような温度補償型水晶発振モジュール10は携帯電話端末の基準信号源などとして従来は用いられている。
【0003】
他にも、水晶振動子のパッケージの固定のために接着剤を用いる場合(特許文献1参照。)や、水晶発振モジュールとして、セラミック基板上の素子をシールドケースやガラスなどで封入したハーメチックシール構造の水晶発振モジュールとする場合(特許文献2参照。)もある。
【0004】
ここでこの特許文献2に記載されたハーメチックシール構造の温度補償型水晶発振モジュールの構成例を図1(B)に示す。セラミック基板1上には、セラミックケースに入った水晶振動子2やサーミスタ3やトランジスタ4やIC(図示せず。)などが配線パターン上に配され、セラミック基板1の底面にはベース基板8と熱伝導性の高い中間伝熱材9とを接合している。また、セラミック基板1のスルーホールにより、この温度補償型水晶発振モジュール10自体の実装用の金属ピン端子6と前記配線パターンとを導通させている。このようなハーメチックシール構造の温度補償型水晶発振モジュール10はセラミック基板1上の素子の酸化を防ぐとともに耐湿性を高め、また、中間伝熱材9により、ICから発生する熱の放熱効果を高めている。
【特許文献1】特開2001−177345号公報
【特許文献2】特開2002−374127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、携帯電話の端末などよりも高性能な温度補償の性能を必要とする場合、例えば携帯電話の基地局などの基準信号源などの場合には、温度変化に対する応答性だけではなく経時変化・経年変化が小さく安定性の高い基準信号源が求められる。そのため、TCXOではなく恒温槽型の水晶発振モジュール(以下、OCXO。)が基準信号源として用いられる。このOCXOは、恒温槽により水晶発振回路が常に一定温度に保たれるため、温度変化だけではなく経時変化・経年変化についても比較的安定した信号源である。
【0006】
しかし、このOCXOはTCXOに比べ高価なものである。そのため高価なOCXOに代えて安価なTCXOを基地局などの基準信号源として用いようとした場合、サーミスタ回路の調整によって、より高性能な温度補償を行うことは可能であるが、サーミスタ回路の高度化のみでは、発振周波数の経時変化・経年変化が抑えられず、基地局の基準信号源としての要求性能を満足することができなかった。
【0007】
このTCXOの発振周波数が経時変化・経年変化する問題は、TCXOを実装基板に実装する際やTCXOのモジュールを製造する際に、コテ付けはんだ法やフローはんだ法、または一部のリフローはんだ法などにより、実装基板やベース基板の底面を加熱したり、底面に溶融させたはんだを溶着したりすることで、はんだ付けによる熱が水晶振動子内の水晶片を固定する接着剤、および水晶片にまで伝達されることによって生じる。
【0008】
すると、セラミックの熱伝導性の高さにより、熱が接着剤および水晶片にまで伝達されるが、この熱によって接着剤に熱変形が生じたり水晶片からのガスの離脱,吸着が生じたりする。このように接着剤に熱変形が生じると、その後の実用に従って熱変形がしだいに開放され接着剤が元の形状に復元していく。また、水晶片からのガスの離脱,吸着が生じた場合も、その後の実用に従って逆にガスが再び吸着したり離脱したりしていく。このように、接着剤の変形やガスの離脱,吸着などが、実用に伴い緩やかに生じることで発振周波数が変化してしまうことが原因であった。
【0009】
そこで本発明の目的は、この問題点を解決し、発振周波数の安定性の高い温度補償型水晶発振モジュールを提供することにある。すなわち、実用に伴う接着剤の変形や開放、および水晶片へのガスの吸着や離脱を抑えた温度補償型水晶発振モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため本発明は、水晶振動子およびサーミスタを配線パターン上に搭載するセラミック基板と、金属ピン端子を備えるとともに前記セラミック基板を搭載するベース基板と、を備えた温度補償型水晶発振モジュールであって、前記セラミック基板と前記ベース基板との間に樹脂基板を備え、前記樹脂基板に第1の接続用電極と第2の接続用電極とをそれぞれ離間して設け、第1の接続用電極に、前記配線パターンに接続して前記セラミック基板に設けた電極を接続し、第2の接続用電極に前記金属ピン端子を接続し、前記配線パターンと前記金属ピン端子とを第1の接続用電極と第2の接続用電極とを介して導通させた構成を望ましい態様としている。
【0011】
この水晶振動子としては、セラミックケースの中で水晶片を導電性接着剤で固定しているものでもよく、また水晶片を直接セラミック基板上に導電性接着剤で固定しているものでも良い。
【0012】
このような態様とすることにより、サーミスタ回路と水晶振動子とを熱伝達性の高いセラミック基板に設けた場合であっても、熱伝達性の低い樹脂基板を用いて、さらに第1の接続用電極と第2の接続用電極とを介して熱的に離間しながら配線パターンと前記金属ピン端子とを導通させることにより、はんだ付けによる熱が熱伝導の大きいセラミック基板や接続配線を介して接着剤や水晶片に直接伝達することを抑制できる。
【0013】
例えば、このモジュールをコテ付けはんだ法やフローはんだ法などによってはんだ付けする場合では、コテ付け熱やはんだ熱などによる接着剤の熱変形や開放を小さくすることができる。また、水晶片からのガスの離脱や吸着を抑制することができる。すると、接着剤の変形や開放、および水晶片へのガスの吸着や離脱が小さく、当然、その後の実用において発振周波数に経時変化・経年変化がほとんど生じない、安定性の高い温度補償型水晶発振モジュールを提供できる。
【0014】
なお、このような構造としては第1の接続用電極と第2の接続用電極とを配線パターンで接続した構成が本発明の実施に好適である。また、1つの広面積の電極の端部に配線パターンとの接続用のスルーホールなどを接続して第1の接続用電極として用い、前記広面積の電極の別の端部に金属ピン端子を接続して第2の接続用電極として用いても好適である。
【発明の効果】
【0015】
以上詳記したとおり、本発明は、接着剤および、水晶片への熱の伝達の防止に係るものであり、本発明により奏せられる効果は次のとおりである。
【0016】
本発明によれば、セラミック基板を介して、および金属ピン端子からの接続配線を介してのコテ付けはんだ法やフローはんだ法などのはんだ付けによる熱が、接着剤や水晶片にまで伝達されることを抑制できる。そのため、実用において経時変化・経年変化がほとんど生じない安定性の高い温度補償型水晶発振モジュールを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の第1の実施形態について図2を基に詳述する。本実施形態の温度補償型水晶発振モジュール30では、略六面体形状のセラミック基板21のパーツ搭載面(図上面)に、サーミスタ23や水晶振動子22、トランジスタ24などを設け、配線パターンにより接続している。このサーミスタ23やセラミックケース入りの水晶振動子22の固定にははんだを、水晶振動子22内部の水晶片の固定には接着剤を用いている。以上のサーミスタ23・水晶振動子22などにより温度補償型の発振器を構成している。
【0018】
また、セラミック基板21内部にはパーツ搭載面に設けた配線パターンとその底面(図下面)の電極25とを導通するスルーホール(図示せず。)などの接続配線を設けている。そして、セラミック基板21のパーツ搭載面の底面の四隅に矩形状の電極25を設けている。
【0019】
また、略六面体形状の樹脂基板29の主面(図上面)の四隅にはそれぞれ、前述の電極25と対向する位置に矩形状の接続用電極31Aを設けている。そして、セラミック基板21の電極25と樹脂基板29の接続用電極31Aとをはんだ32Aにより接合している。
【0020】
また、樹脂基板29の主面の四隅には前述の接続用電極31Aと離間して接続用電極31Bも設けている。そして、隣接する接続用電極31Bと接続用電極31A同士を配線パターン(図示せず。)により接続している。接続用電極31Bには電極中央部分に主面から底面(図下面)までを貫通する貫通孔を設けている。この貫通孔には温度補償型水晶発振モジュール30自体を実装するための金属ピン端子26を挿入し、接続用電極31Bにはんだ32Bを用いて接続している。
【0021】
また、略六面体形状で金属製のベース基板28にも貫通孔を設け、金属ピン端子26を挿入している。そして、ベース基板28と金属ピン端子26との隙間に絶縁性の接着剤27を充填して、ベース基板28と金属ピン端子26とを固定している。なお、接着剤27としてはガラスや樹脂系接着剤などを用いると好適であるが、ベース基板28と金属ピン端子26とが導通しなければ、どのような接着剤でも良く、また、接着剤27を用いない固定方法であってもベース基板28と金属ピン端子26とが導通しなければ、どのような固定方法を用いてもよい。
以上のようにして、セラミック基板21と樹脂基板29とベース基板28とを接合している。
【0022】
この温度補償型水晶発振モジュール30を実装基板に載置してコテ付けはんだ法によりはんだ付けする場合でも、セラミック基板21と樹脂基板29とを接合し、樹脂基板29とベース基板28とを接合することで、熱伝導が大きいセラミック基板21にはベース基板28からの熱が直接伝達されず、熱伝導の小さな樹脂基板29を介して伝達される。そのため、サーミスタ23や水晶振動子22などの部品や、水晶振動子22内部での水晶片の固定に用いた接着剤や、水晶片への熱の伝達を抑制できる。
【0023】
このことにより、従来は接着剤の熱変形が次第に開放され起こっていた、また、水晶片へのガスの吸着や離脱などにより起こっていた、発振周波数の経時変化・経年変化が抑制でき、安定性の高い温度補償型水晶発振モジュール30を提供できる。
【0024】
なお、接続用電極31Aと接続用電極31Bとの間の接続は金属ピン端子26と電極25がはんだを介して直接接続されるようなことが無い限り、特に限定されない。熱が伝わりにくくするように形状を工夫するとより好適である。
【0025】
また、はんだ付け後に、モジュールに熱を加えておくエイジング処理などを行い、接着剤の熱変形を除去しても好適である。
【0026】
また、樹脂基板29自体の形状も、本実施形態で示した略六面体形状に限定されず、特に形状を問わない。
【0027】
また、接続用電極31A・31Bや電極25の、それぞれの形状も、矩形状に限定されず、それぞれの電極が他の接続配線と確実に導通するような形状でありさえすればよい。また、それらの数も限定されず、設計上の仕様に従うことができる。
【0028】
また、水晶振動子22やサーミスタ23、水晶振動子22内部の水晶片などの固定は、全てを接着剤によって行っても良く、また、一部のみを接着剤によって固定し、その他をはんだ付け等によって固定しても良い。
【0029】
次に第2の実施形態について図3に基づいて詳述する。本実施形態の温度補償型水晶発振モジュール50の構成は、第1の実施形態で示した温度補償型水晶発振モジュールにキャップ形状のシールドケース53を接着した構成である。この構成で、このシールドケース53とベース基板48により囲んだ空間を気密にしている。また、本実施形態ではこの気密した空間の気密性を高めるためにベース基板48と金属ピン端子46との貫通孔にガラス47を充填している。
【0030】
このように、セラミック基板41上のサーミスタ43やセラミックケース入りの水晶振動子42、トランジスタ44などを気密した空間内に封入することにより、ハーメチックシール構造の温度補償型水晶発振モジュール50を構成している。このようにハーメチックシール構造をとることにより、セラミック基板41上に搭載した素子の耐湿性が向上するとともに酸化による性能の劣化を防止でき、より高性能でさらに発振周波数の経時変化・経年変化を抑制できる。
【0031】
また、はんだ付けに際して、ベース基板48底面のみを加熱するのではなく、加熱雰囲気中にこの温度補償型水晶発振モジュール50を置くことでベース基板48上面も過熱されるようなはんだ法を用いる場合であっても、このシールドケース53によって、水晶振動子42内で水晶片を固定する接着剤や水晶片に熱が伝達されることを防いで、発振周波数の経時変化・経年変化を抑制できる。
【0032】
また、本実施形態では樹脂基板49とシールドケース53とが、略はめ合わさるように樹脂基板49の外形寸法及びシールドケース53の内側の寸法を設定している。このように寸法を揃えることで、樹脂基板49をより確実に固定し、またシールドケース53の剛性も向上させることができる。熱伝導率の小さい樹脂基板49を用いているために、このようにシールドケース53と樹脂基板49とが接していても、シールドケース53の接着になどの際に熱が生じる場合でも、シールドケース53から樹脂基板49を介してセラミック基板41上に搭載した素子に熱が伝導することを抑制できる。
【0033】
なお、本実施形態では、シールドケース53の内側の寸法と樹脂基板49の外形寸法を揃えた例を示したが、このように寸法を揃えることは必ずしも必要ではなく、金属カバーの形状も本実施形態で示した形状で無く他の形状でも良い。セラミック基板41上の水晶振動子42やサーミスタ43などの素子を封入できれば構成を問わない。
【0034】
また、シールドケース53およびベース基板48で、樹脂基板49やセラミック基板41を囲うような構成としたが、必ずしもこのような構成には限らず、シールドケース53および樹脂基板49で、セラミック基板41のみを囲うような構成としてもよい。その場合には樹脂基板49に設けた貫通孔をガラスなどを接着剤として充填し金属ピン端子46を固定することで、シールドケース53と樹脂基板49とで囲んだ空間を気密するとよい。
【0035】
以上のような構成により、サーミスタ43や水晶振動子42などの接着に用いた接着剤の熱変形を抑制でき、従来は接着剤の熱変形が次第に開放され起こっていた、また、水晶片へのガスの吸着や離脱により起こっていた、温度補償型水晶発振モジュールの発振周波数の変化も抑制でき、第1の実施形態と同様な効果を奏し、安定性の高い温度補償型水晶発振モジュール50を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来の温度補償型水晶発振モジュールの構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態の温度補償型水晶発振モジュールの構成例を示す図である。
【図3】第2の実施形態の温度補償型水晶発振モジュールの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1、21、41−セラミック基板
2、22、42−水晶振動子
3、23、43−サーミスタ
4、24、44−トランジスタ
5、25、45−電極
6、26、46−金属ピン端子
27−接着剤
47−ガラス
8、28、48−ベース基板
29、49−樹脂基板
10、30、50−温度補償型水晶発振モジュール
11、31、51−接続用電極
12、32、52−はんだ
13、53−シールドケース
【出願人】 【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
【出願日】 平成17年6月30日(2005.6.30)
【代理人】 【識別番号】100084548
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 久夫

【識別番号】100123940
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 辰一


【公開番号】 特開2007−13651(P2007−13651A)
【公開日】 平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願番号】 特願2005−192457(P2005−192457)