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【発明の名称】 高周波共振器およびこれを用いた高周波発振器
【発明者】 【氏名】津留 正臣

【氏名】川上 憲司

【氏名】宮▲ざき▼ 守泰

【要約】 【課題】直列共振回路と並列共振回路とが交互に縦続接続された高周波共振器において、導体損による影響を受けない0次モード共振器を構成する際の、誘電体損による損失を低減すると共に、並列共振回路を構成するコンデンサの容量を大容量とすることを可能とする。

【解決手段】信号線路と地導体間を比誘電率の小さい空気層で形成すると共に、誘電体基板に連続して凸部を設け、この凸部と対向する位置の信号線路内にプレート状導体を形成することによりコンデンサを構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に凹部が形成され、該凹部の底面部に1または複数個の凸部が形成された誘電体基板と、
前記誘電体基板の少なくとも前記凹部底面部および前記凸部表面とにわたって形成された地導体と、
前記凹部に対向するとともに前記凸部頂面から所定間隔をおいて配設された誘電体からなる支持体と、
前記支持体に直列共振回路および並列共振回路を形成する信号線路とを備え、前記直列共振回路と前記並列共振回路とが所定数交互に縦続的に設けられた高周波共振器であって、
前記信号線路は、
前記凸部頂面に対向する部分の線幅を広げて所定面積を有するプレート状導体を形成し、このプレート状導体と前記凸部頂面の地導体間で前記並列共振回路のコンデンサを形成したことを特徴とする高周波共振器。
【請求項2】
前記並列共振回路のインダクタは、
前記信号線路と前記凹部の底面部における地導体とに跨って接続されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波共振器。
【請求項3】
前記並列共振回路のインダクタは、
前記信号線路と前記凸部頂面部における地導体とに跨って接続されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波共振器。
【請求項4】
前記誘電体基板の表面に少なくとも前記支持体との接合面に至る地導体を形成すると共に、前記支持体に前記地導体と接続されたグランド線路を形成し、前記並列共振回路のインダクタを前記信号線路とグランド線路とに跨って接続したことを特徴とする請求項1に記載の高周波共振器。
【請求項5】
前記信号線路の一部は高次モードの周波数の表皮深さよりも薄くなるように形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の高周波共振器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の高周波共振器と、
前記高周波共振器をゲート端子に接続した電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのソース端子に接続され、前記電界効果トランジスタが増幅した信号を反射する第1のリアクタンス回路と、
前記電界効果トランジスタのドレイン端子に接続され、前記電界効果トランジスタが増幅した信号を反射する第2のリアクタンス回路と、
を有することを特徴とする高周波発振器。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、主としてマイクロ波帯またはミリ波帯で用いられる高周波共振器およびこれを用いた高周波発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波発振器に用いられる高周波共振器は、マイクロストリップ線路からなる信号線路内に直列に接続された複数のコンデンサと、一端がこのコンデンサ間に接続され、他端が接地されるように設置されたインダクタと、で構成されていた。
【0003】
このような構成の高周波共振器は、信号線路内に直列に接続されたコンデンサと信号線路内のインダクタンス成分により直列共振回路が構成されると共に、信号線路に並列に接続されたインダクタと信号線路と地導体との浮遊容量により並列共振回路が構成され、伝搬定数が0となる周波数が存在し、いわゆる0次モード共振器を形成する。0次モード共振器では見かけ上伝導電流が流れないので、導体損によるQ値の劣化を防止するという効果を奏する(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】Anthony Lai, Christophe Caloz, and Tatsuo Itoh, 'Composite Right/Left-Handed Transmission Line Metamaterials,' Microwave Magazine, pp.34-50, September, 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の高周波共振器では、地導体と信号線路の間に比誘電率が2〜3程度のフッ素樹脂を挟んだ構成になっていたため、誘電体損によるQ値が劣化するといった問題があった。また、並列共振回路を構成するコンデンサは浮遊容量のみを用いているために、容量の大きなコンデンサを形成することが困難であり、設計の自由度が制限されるといった問題があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、誘電体損によるQ値の劣化を低減した高周波共振器および高周波発振器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる高周波発振器は、上面に凹部が形成され、凹部の底面部に1または複数個の凸部が形成された誘電体基板と、誘電体基板の少なくとも凹部底面部および凸部表面とにわたって形成された地導体と、凹部に対向するとともに凸部頂面から所定間隔をおいて配設された誘電体からなる支持体と、支持体に直列共振回路および並列共振回路を形成する信号線路とを備え、直列共振回路と並列共振回路とが所定数交互に縦続的に設けられた高周波共振器であって、信号線路は、凸部頂面に対向する部分の線幅を広げて所定面積を有するプレート状導体を形成し、このプレート状導体と凸部頂面の地導体間で前記並列共振回路のコンデンサを形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、誘電体基板と支持体に形成した信号線路との間に空気層を設けることにより誘電体損によるQ値の劣化を防止することができる。また、誘電体基板と信号線路との間の空気層により、低損失で、容量の大きなコンデンサを容易に得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1〜図4は、この発明を実施するための実施の形態1における高周波共振器を示すものである。図1は上面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図、図4はこの高周波共振器の等価回路図である。図1〜図4において、適宜の幅を有する矩形状をした誘電体基板1は、その上面の長手方向に沿って断面形状が逆台形をした一連の凹部を形成するとともに、この凹部の底面部に所定の高さをもちかつ頂面が所定の面積をもった凸部1aを所定数、所定間隔にて形成している。そして、少なくとも凹部の底面部と凸部1aとの全表面に導体膜をコーティングしてグランド電位となる地導体2が設けられる。また誘電体基板1の上面には、誘電体基板1の凹部と対向するようにして誘電体からなる支持体3が配設され、この支持体3の下面に、入力端子4および出力端子5を両端部に有するマイクロストリップ線路からなる信号線路6がパターン化して形成される。この信号線路6はいわゆる高周波共振回路を構成し、ストリップ導体間のギャップからなる直列コンデンサ7と高インピーダンス線路とからなる直列インダクタ8が直列接続された直列共振回路9と、並列コンデンサ10と並列インダクタ11とが並列接続された並列共振回路12とが組み合わされて必要な数だけ縦続接続されている。そして、並列共振回路12を構成する線路の一部の線幅を広げることにより所定の面積をもったプレート状導体13を形成し、このプレート状導体13を誘電体基板1に形成された凸部1aの頂面に対向して配置することによりこの凸部1a上面の地導体2との間で所定容量をもった並列コンデンサ10を構成し、また、その配線の一部と凸部1aの頂面に位置する地導体2との間を、導体を介して直接的に接続することにより所定の値を持った並列インダクタ11を形成する。
【0010】
また、図4において直列インダクタ8には信号線路6のインダクタ成分が含まれるものとし、並列コンデンサ10には浮遊容量が含まれるものとする。さらに、直列共振回路9の共振周波数をfs、並列共振回路12の共振周波数をfp、この高周波共振器の所望の共振周波数をfとした場合、(数1)または(数2)を満たすように直列コンデンサ7、直列インダクタ8、並列コンデンサ10、並列インダクタ11の各素子パラメータが設定されている。さらにまた、各素子は共振周波数fにおける波長に対して十分小さなサイズであり、素子内における信号の位相差は無視できるものとする。
【0011】
【数1】


【0012】
【数2】


【0013】
次に、このように構成された高周波共振器の動作について説明する。図4の等価回路に示すように、この高周波共振器は互いに隣り合う直列コンデンサ7と並列インダクタ11とからなる位相定数が正となる右手系伝送線路と、互いに隣り合う並列コンデンサ10と直列インダクタ8とからなる位相定数が負となる左手系伝送線路とが縦続接続される構成になっているために、共振周波数fで位相定数を0にすることが可能となる。従って、共振周波数fにおいて、信号線路6には見かけ上電流は流れなくなり、導体損が生じない0次モード共振器を形成する。従って、入力端子4に複数の周波数成分を持った入力信号を入力した場合、出力端子5からは周波数がf付近の位相差の小さい出力信号が得られる。
【0014】
また、このように構成された高周波共振器においては、直列共振回路9及び並列共振回路12を形成する信号線6と地導体2の間は所定高さの空間によって隔てられているために、この空間にフッ素樹脂よりも比誘電率の小さい空気層が存在することになり、誘電損による損失を低減し、高Qな高周波共振器を得ることができる。また、地導体2と信号線路6との間が空気層になっていることから、図2または図3に示すように並列インダクタ11を地導体2に接続することが容易となる。
【0015】
また、並列コンデンサ10は誘電体基板1に形成された凸部1a頂面の地導体2と信号線路6におけるプレート状導体13とのギャップによって構成されているため、誘電体基板1が凸部1aを有さない場合に比べて、導体間の距離を短くでき、並列コンデンサ10を大容量にすることが可能となり、各素子の設計の自由度が増すという効果を奏する。
【0016】
また、図2では誘電体基板1の凹部の底面部に形成された凸部1aがプレート状導体13に対向する位置よりも誘電体基板1の長手方向に延設され、この凸部1aの頂面に形成された地導体2に並列インダクタ11が接続される構成になっているが、図5および図6に示すように誘電体基板1の凹部の底面に形成された地導体2に並列インダクタ11を接続しても良い。このように、接続位置を変えることにより、並列インダクタ11の全長を変化させ、インダクタンス成分の大きさを調整することが可能となる。
【0017】
また、本実施の形態においては、信号線路6は支持体3の誘電体基板1と対抗する面に形成されているが、信号線路6を対向しない面に形成しても良い。この場合、並列インダクタ11は支持体3を貫通し地導体2と接続する。
【0018】
実施の形態2.
実施の形態1における高周波共振器は、グランドとして誘電体基板1の凹部底面部に設けた地導体2を使用する構成になっていたが、図7に示すように信号線路3を挟むように2本の平行なグランド線路14を支持体3に形成するような構成にしても実施の形態1と同様の効果が得られる。図7はこの発明の実施の形態2にかかる高周波共振器の上面図を示した図である。この場合、並列インダクタ11は地導体2に接続されるのではなく、グランド線路14に接続する構成にする。図8は図7のA−A断面を示す図であり、図9は図7のB−B断面を示す図である。
【0019】
図9に示すように、地導体2は、誘電体基板1と信号線路6が形成された支持体3との接合面を含む凹部の全表面に導体膜をコーティングすることにより形成され、この接合面の導体膜により支持体2に形成されたグランド線路14と直接接続するような構成になっている。また、図10は実施の形態2における変形例であり、地導体2とグランド線路14とはビアまたは線路によって接続されている。このような接続にすることによって、地導体2とグランド線路14を同電位にすることが可能となり、安定したグランド電位を得ることが可能となる。また、並列インダクタ11は支持体3の平面上に形成されることになるので、他の素子と一括してパターニングできるという効果を奏する。その他の構成および効果は、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0020】
また、本実施の形態においては、信号線路6を挟むように2本のグランド線路14が形成されているが、グランド線路14は片方のみの1本であっても良い。
【0021】
実施の形態3.
実施の形態1または実施の形態2における高周波共振器において、信号線路6は高次モードの周波数での表皮深さよりも薄くなるように構成してもよい。その他の構成は実施の形態1または実施の形態2と同様である。
【0022】
このように構成された高周波共振器においては、信号線路6は表皮深さよりも薄くなることにより、高インピーダンスの信号線路となる。従って、入力端子4から入力された信号のうち、0次モード以外の共振モードに対応する周波数の信号は導体損が増大し大きく減衰することになる。しかし、0次モード共振に対応する周波数、すなわち所望の共振周波数f付近の周波数の信号については、実施の形態1で説明したように、見かけ上電流が流れない構成になるので、信号線路6の抵抗による影響を受けない。従って、より高Qな高周波共振器を得ることが可能となる。
【0023】
実施の形態4.
図11は実施の形態1乃至実施の形態3のいずれかに記載の高周波共振器15を採用した高周波発振器を示す回路図である。すなわち高周波共振器15が雑音を増幅する電界効果トランジスタ16のゲート端子に接続されている。電界効果トランジスタ16のドレイン端子およびソース端子には、電界効果トランジスタ16が増幅した信号の一部を電界効果トランジスタ16に反射する第1のリアクタンス回路17、第2のリアクタンス回路18が接続され、第2のリアクタンス回路18の他端にはこの高周波発振器の発振波を出力する負荷抵抗19が接続されている。
【0024】
次にこのように構成された高周波発振器の動作について図12を用いて説明する。まず、この高周波発振器内の雑音が電界効果トランジスタ16によって増幅される。この増幅された信号の一部が、高周波共振器15、第1のリアクタンス回路17および第2のリアクタンス回路18から電界効果トランジスタ16へと反射され、増幅される。この動作を繰り返すことにより、高周波発振器は発振し、この発振波は負荷抵抗19に出力される。このときの発振周波数は(数3)および(式4)を満たす周波数である。
【0025】
【数3】


【0026】
【数4】


【0027】
(数3)および(数4)において、Zrは電界効果トランジスタ16のゲート端子から高周波共振器15側を見たときのインピーダンス、Zaは電界効果トランジスタ16のゲート端子から電界効果トランジスタ16側を見たときのインピーダンスである。
【0028】
(数2)において、Za及びZrのQ値が高いほど、左辺の周波数に対する傾きは大きくなる。また(数2)の左辺の周波数に対する傾きが大きいほど、この高周波発振器の位相雑音は改善される。本実施の形態における高周波発振器は、実施の形態1乃至実施の形態3で述べた高Qな高周波共振器10を使用しているためZrのQ値は高くなり、低位相雑音の高周波発振器を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施の形態1を示す高周波共振器の上面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1を示す高周波共振器の等価回路図である。
【図5】この発明の実施の形態1を示す高周波共振器の上面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2を示す高周波共振器の上面図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【図9】図7のB−B断面図である。
【図10】図7のB−B断面図である。
【図11】この発明の実施の形態4を示す高周波発振器の構成図である。
【符号の説明】
【0030】
1 誘電体基板、1a 凸部、2 地導体、3 支持体、6 信号線路、7 直列コンデンサ、8 直列インダクタ、9 直列共振回路、10 並列コンデンサ、11 並列インダクタ、12並列共振回路、13 プレート状導体、14 グランド線路、15 高周波共振器、16 電界効果トランジスタ、17 第1のリアクタンス回路、18 第2のリアクタンス回路
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成17年8月4日(2005.8.4)
【代理人】 【識別番号】100113077
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 省吾

【識別番号】100112210
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 忠彦

【識別番号】100108431
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 加奈子

【識別番号】100128060
【弁理士】
【氏名又は名称】中鶴 一隆


【公開番号】 特開2007−43560(P2007−43560A)
【公開日】 平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願番号】 特願2005−226864(P2005−226864)