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【発明の名称】 スライド操作装置
【発明者】 【氏名】加藤 浩二郎

【要約】 【課題】重量化や長大化を招くことなく、移動体を摺動支持する移動ガイドの損傷を防止する。

【解決手段】移動体70のゴンドラ71が、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79に対して摺動自在にされる。メインケース10の底板部11の前部からはレール部18が上方に立ち上がっている。摘み部81の非操作状態においては、移動体70の下側突起部70aは、メインケース10の底板部11に対して所定間隔を保って近接対向し、係合突部76、77とレール部18とも所定間隔を保っている。摘み部81に対して、上側ガイドバー78に沿った方向とは異なる方向に加えられた力により移動体70が変位するとき、下側突起部70aと底板部11、あるいはレール部18と係合突部76、77との当接により、移動体70の過剰な変位が規制される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱体と、
前記箱体の長手方向に沿って該箱体内に設けられた長尺の移動ガイドと該移動ガイドの両端を支持するガイド支持部とから構成される移動体保持機構部と、
前記箱体内において前記移動体保持機構部の前記移動ガイドに摺動自在に保持された移動体と、
前記箱体内における前記移動体の前記移動ガイドに沿った方向の位置を検出する位置検出手段と、
前記移動体に固定的に設けられた操作用の摘み部と、
前記箱体に対して固定的で且つ前記移動ガイドと平行な部分であって、前記摘み部の非操作状態において前記移動体の所定部分に対して所定間隔を保って近接するストッパ部とを有し、
前記摘み部に対して、前記移動ガイドに沿った方向とは異なる方向に加えられた力により前記移動体の前記所定部分が変位して前記ストッパ部に当接し得るように構成され、
前記移動体の前記所定部分が前記ストッパ部に当接したときに、前記所定部分の変位が規制されると共に、前記移動ガイドに沿った方向とは異なる方向に加えられた力が解除されると前記所定部分と前記ストッパ部との間隔が前記摘み部の非操作状態時における前記所定間隔に復帰するように構成されたことを特徴とするスライド操作装置。
【請求項2】
前記移動体保持機構部は、前記移動ガイドの弾性変形及び/又は前記ガイド支持部による前記移動ガイドの前記両端の変位の許容によって、前記移動体を前記移動ガイドに沿った方向とは異なる方向に対して変位可能に保持するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のスライド操作装置。
【請求項3】
前記移動体保持機構部は、前記移動体が前記移動ガイドに沿った方向に直交する平面内で回転変位可能に前記移動体を保持するように構成され、前記ストッパ部は、前記移動体の前記所定部分の回転方向への変位を規制するものであることを特徴とする請求項1または2記載のスライド操作装置。
【請求項4】
前記移動体の前記所定部分と前記ストッパ部の少なくとも一方に、両者間に摺接抵抗を発生させるための抵抗発生部が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライド操作装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、摘み部の手動操作によって箱体内において移動体を移動させ、ボリューム等のパラメータ設定に用いるフェーダ装置等のスライド操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミキサ等に搭載されるフェーダ装置等のスライド操作装置が知られている(下記特許文献1、2参照)。スライド操作装置は一般に、移動体が箱体内を移動するように構成される。例えば、移動体に固定された摘み部を持って、手動操作によって移動体を移動させることができる。そして、移動する移動体の位置を検出し、その位置に基づいて、ボリューム等の各種パラメータが設定される。
【0003】
移動体は、一般に、箱体の長手方向に沿って箱体内に設けられた丸棒状等の移動ガイドに摺動自在に係合することで、移動ガイドに案内されて箱体の長手方向に移動可能に構成される。
【特許文献1】登録実用新案第3102188号公報
【特許文献2】特開2002−8907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のスライド操作装置においては、手動操作時に摘み部に加えられる力が、移動ガイドの長手方向に沿ったもののみであれば問題ないが、実際には、移動ガイドの長手方向に直交する方向(摘み部を押し込む方向、あるいは箱体の幅方向)にも力が加わることがある。その場合においても移動ガイドが破損等しないように、通常、移動ガイドは頑強に作られている。そのため、移動ガイドが太く、重くなり、スライド操作装置の重量化、長大化を招くという問題があった。
【0005】
また、通常、移動ガイドと移動体との摺動が非常に滑らかなように構成されているため、仮に、移動ガイドの長手方向に直交する方向に対して大きな力を加えていたとしても、操作者はそれに気が付きにくく、一層大きな力を加えてしまうことも想定される。また、不用意に摘み部に手や物が触れることで過大な力が加わることもある。そのため、過大な力によって移動ガイドが損傷するおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、重量化や長大化を招くことなく、移動体を摺動支持する移動ガイドの損傷を防止することができるスライド操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の請求項1のスライド操作装置は、箱体と、前記箱体の長手方向に沿って該箱体内に設けられた長尺の移動ガイド(78、79)と該移動ガイドの両端を支持するガイド支持部(20、21、22、23)とから構成される移動体保持機構部と、前記箱体内において前記移動体保持機構部の前記移動ガイドに摺動自在に保持された移動体(70)と、前記箱体内における前記移動体の前記移動ガイドに沿った方向の位置を検出する位置検出手段(73)と、前記移動体に固定的に設けられた操作用の摘み部(81)と、前記箱体に対して固定的で且つ前記移動ガイドと平行な部分であって、前記摘み部の非操作状態において前記移動体の所定部分(70a、76、77)に対して所定間隔を保って近接するストッパ部(11、18)とを有し、前記摘み部に対して、前記移動ガイドに沿った方向とは異なる方向に加えられた力により前記移動体の前記所定部分が変位して前記ストッパ部に当接し得るように構成され、前記移動体の前記所定部分が前記ストッパ部に当接したときに、前記所定部分の変位が規制されると共に、前記移動ガイドに沿った方向とは異なる方向に加えられた力が解除されると前記所定部分と前記ストッパ部との間隔が前記摘み部の非操作状態時における前記所定間隔に復帰するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記移動体保持機構部は、前記移動ガイドの弾性変形及び/又は前記ガイド支持部による前記移動ガイドの前記両端の変位の許容によって、前記移動体を前記移動ガイドに沿った方向とは異なる方向に対して変位可能に保持するように構成される(請求項2)。
【0009】
また、好ましくは、前記移動体保持機構部は、前記移動体が前記移動ガイドに沿った方向に直交する平面内で回転変位可能に前記移動体を保持するように構成され、前記ストッパ部は、前記移動体の前記所定部分の回転方向への変位を規制するものである(請求項3)。
【0010】
さらに、好ましくは、前記移動体の前記所定部分と前記ストッパ部の少なくとも一方に、両者間に摺接抵抗を発生させるための抵抗発生部(91、92、93、94)が設けられる(請求項4)。
【0011】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によれば、重量化や長大化を招くことなく、移動体を摺動支持する移動ガイドの損傷を防止することができる。
【0013】
請求項2によれば、摘み部にかかる力と略同じ方向への移動体の変位を適切量に規制して、移動ガイドの損傷を防止することができる。
【0014】
請求項3によれば、移動体の回動による変位を効果的且つ適切量に規制して、移動ガイドの損傷を防止することができる。
【0015】
請求項4によれば、操作感触を積極的に変化させて、過剰な力がかかっていることを操作者に認識させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスライド操作装置の斜視図である。このスライド操作装置の筐体である箱体は、メインケース10とサブケース40とを組み付けてなる。図2は、本スライド操作装置においてサブケース40を取り外した状態を示す斜視図である。図3(a)はメインケース10の斜視図、図3(b)は移動体の斜視図である。
【0018】
図2に示すように、このスライド操作装置の上記箱体内には、移動体70が、いずれも丸棒状の上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79と共に収容されると共に、メインケース10の上部には、断面コ字状の長尺部材50が設けられる。長尺部材50の一端側にはモータ59が設けられる。
【0019】
このスライド操作装置は、ミキサ等にフェーダ装置等として搭載されるものであり、搭載時の方向は定まっていない。そこで、以降、説明の便宜上、上下左右の方向は、摘み部材80の摘み部81を上側にしてサブケース40側からみたときの方向を基準として呼称することとする。従って、摘み部81側が上方、モータ59(図2参照)側が左方、図2の手前側が前方であるとする。
【0020】
図2、図3(a)に示すように、メインケース10は、底板部11、背面側の主板12、左側板13、右側板14、上板部15と、さらに底板部11の前部から上方に立ち上がったレール部18とを有する。また、上板部15の左右両端部は前方に延出し、長尺部材50を取り付けるための取り付け片16、16となっている。メインケース10は、金属板を折り曲げ成形してなり、一体に構成される。取り付け片16、16にはそれぞれ取り付け穴17が形成されている(図3(a)参照)。
【0021】
メインケース10の左側板13、右側板14にはそれぞれ、上側ガイドバー78を保持するための保持穴20、21が上側に、下側ガイドバー79を保持するための保持穴22、23が下側に、それぞれ形成されている。また、右側板14の保持穴21、23間には、貫通穴19が形成されている。さらに、図1、図3(a)に示すように、主板12における、メインケース10の長手方向中央には、ケーブル挿通穴24が形成されている。
【0022】
図4は、本スライド操作装置の平面図である。図2に示すように、長尺部材50は、メインケース10の取り付け片16の取り付け穴17(図3(a)参照)を介してネジ25、26によってメインケース10に固定される。図2、図4に示すように、長尺部材50の底部には、長手方向に沿って、摘み部材80が移動するためのスリット55が形成されている。また、長尺部材50の上部の左右両端部近傍には、取り付け片51、52が設けられている。完成した組立式スライド操作装置は、不図示のミキサ装置等のパネル板等を介して、取り付け片51、52の穴にネジ53、54でネジ止めされることで、ミキサ装置等に取り付けられる。
【0023】
図4に示すように、長尺部材50の左端部からは、モータ59の不図示の出力軸に取り付けられたプーリ56が突出している。長尺部材50の右端部にはベルト受けピン58が突設され、プーリ56とベルト受けピン58との間にゴムベルト57が巻回されている。摘み部材80には、ベルト取付部85が固定され、ベルト取付部85に、ゴムベルト57の1箇所が固定されている。これにより、モータ59の正逆回転によって、ゴムベルト57を介して摘み部81(乃至移動体70)が長尺部材50の長手方向に沿って往復移動する。例えば、シーンリコール等の際に、モータ59に駆動電流が与えられ、移動体70が自動的に所望位置に駆動される。このほか、ユーザは、摘み部81を持って、手動操作により移動体70を任意位置に動かすこともできる。なお、摘み部81には、ゴム製等の把持部を被装することができ、実際には、ユーザは、この把持部を把持して操作することになる。
【0024】
図5は、図4のA−A線に沿う断面図である。図2、図3(b)、図5に示すように、移動体70は、前側が開口した矩形の箱状に構成された樹脂製のゴンドラ71を有し、ゴンドラ71に摘み部材80が固定されてなる。ゴンドラ71の右側の縁部には、ケーブル逃げ部86が形成されている(図3(b)参照)。ゴンドラ71の左右の側部には、穴74、75が形成されている。穴74には、上側ガイドバー78が貫通し、穴75には下側ガイドバー79が貫通している。これにより、ゴンドラ71は、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79に対して摺動自在にされている。
【0025】
移動体70にはまた、基板72が取り付けられ、基板72には、フラットケーブル87が取り付けられている(図2、図5参照)。フラットケーブル87は、移動体70の動きに追従できるように、ゴンドラ71のケーブル逃げ部86を通じてメインケース10内に配設され、メインケース10のケーブル挿通穴24(図1、図3(a)参照)から外部に導出されている。
【0026】
ところで、図5に示すように、上側ガイドバー78の下面には、その長手方向の略全長に亘って、N極とS極とを細かく分極した磁極面88が設けられている。上側ガイドバー78の下面でもある磁極面88の下面は、平坦な面となっている。ゴンドラ71の穴74は、上側ガイドバー78の円形部分の形状に対応した円形である。ゴンドラ71と上側ガイドバー78の円形部分とは、摺動可能な程度にほとんど隙間無く嵌合しており、ゴンドラ71の上下及び前後方向の位置は上側ガイドバー78によって規制される。すなわち、上側ガイドバー78によってその移動の軌道が規定される。これにより、移動体70の安定した移動が確保され、ひいては移動体70の位置検出精度が高くなっている。
【0027】
これに対して、ゴンドラ71の穴75は、上下方向にやや長い長穴になっている。従って、下側ガイドバー79は、製造誤差を吸収すると共に、ゴンドラ71の移動位置規制の補助的な役割を果たす。特に、移動体70が上側ガイドバー78を中心に回転しないように規制する振れ防止の機能を果たす。
【0028】
図2、図3(b)、図5に示すように、基板72の前面には、ホール素子を含むIC等で構成した磁気式のセンサ部73(またはMRセンサ)が配設されている。センサ部73は、上側ガイドバー78の直下において、上側ガイドバー78の磁極面88に対して僅かなギャップ(間隙)を有して磁極面88と対面している。
【0029】
移動体70の移動に伴って、センサ部73が上側ガイドバー78の磁極面88に対して移動すると、センサ部73は、磁極面88のN極とS極との極性の反転に対応するパルス信号を出力する。そして、このパルス信号の数により、移動体70の移動量を検出することができる。また、磁極面88の磁極は、例えば2列からなり、この磁極のパターンは上側ガイドバー78の長手方向にその位相が1/2π相当ずれており、移動体70の移動方向によってセンサ部73が位相のずれたパルス信号を出力する。従って、その位相ずれの正逆の方向により、移動体70の移動方向(右または左)が検出される。さらに、移動体70の移動前の位置の情報は、不図示の制御回路により常に記憶されており、移動体70の位置情報と、上記検出される移動量及び移動方向とから、移動体70の現在位置が検出される。手動操作においても、センサ部73によって移動体70の移動動作が検出されることはいうまでもない。
【0030】
図2に示すように、ゴンドラ71が上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79に係合した状態で、上側ガイドバー78、下側ガイドバー79は、それらの両端部がメインケース10の保持穴20、21、保持穴22、23に挿通されることでそれぞれ保持される。このとき、上側ガイドバー78は、その磁極面88が下方を向くように、回転方向の位置を設定しておく。
【0031】
サブケース40は、平面視コ字状に、樹脂で一体に形成される。サブケース40は、例えば、不図示の係合部同士を係合させることで、スナップフィットによってメインケース10に組み付けられる。
【0032】
図1に示すように、サブケース40の右側板41には、上側ガイドバー78、下側ガイドバー79に対応する切り欠き部42、43が形成されている。サブケース40の左側板は図示しないが、右側板41と左右対称に同様に構成される。切り欠き部43の幅は、下側ガイドバー79の外径とほぼ同じである。一方、切り欠き部42の幅は、磁極面88が下方を向いた状態の上側ガイドバー78の上下方向の厚み(上端と磁極面88の下面との距離)とほぼ同じになっている。これにより、サブケース40がメインケース10に組み付けられたとき、切り欠き部42は、磁極面88が下方を向いた状態で上側ガイドバー78の回転方向の位置を規制する(回り止め機能)。なお、上側ガイドバー78の回り止め機構は、サブケース40以外の部材に設けてもよく、例えば、ゴンドラ71の穴74、またはメインケースの10の保持穴20、21を、上側ガイドバー78の断面形状(下部に平坦部を有する円形)に形成してもよい。
【0033】
ここで、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79は、弾性に富んだ金属で構成され、移動体70に、上側ガイドバー78の長手方向以外の方向への力がかかると撓んで、移動体70が変位するようになっている。また、その力が解除されると、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79の撓み状態も解消される。
【0034】
図5に示すように、摘み部材80は、上端部である摘み部81から下方に延びる第1垂直部82と、第1垂直部82の下端から後方に水平に延びる水平部83と、水平部83の後端から下方に延びる第2垂直部84とからなり、一体に形成されている。摘み部材80は、金属でなり、ゴンドラ71に対してアウトサート成形、あるいは接着、あるいは嵌合等によって固定される。第2垂直部84は、ゴンドラ71の背板部71aに沿ってゴンドラ71の後部下端部でもある移動体70の下側突起部70aの位置まで延設されている。上記したベルト取付部85は、第1垂直部82に取り付けられている。
【0035】
下側突起部70aは、ゴンドラ71の全幅(上側ガイドバー78の長手方向における幅)に亘って形成され、その下端面70aaが、メインケース10の底板部11の上面11aに対して近接対向している。下端面70aa及び上面11aは、いずれも全面に亘って平坦で且つ水平である。移動体70が移動行程におけるどの位置にあったとしても、摘み部81を操作者が何ら触っていない「非操作状態」においては、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79が撓まないため、下端面70aaと上面11aとが所定間隔を保つようになっている。下端面70aaと上面11aとは、摘み部材80に対して所定以上の力が下方にかかると当接し、移動体70がそれ以上下方へ変位することを抑止するストッパ機能を果たす。
【0036】
下側突起部70aにおいて、第2垂直部84の前後方向の位置は中央であり、摘み部材80に対して下方にかかる力が、下側突起部70aに直接的にかかるようになっている。これにより、摘み部材80に対して下方にかかる過剰な力を下端面70aaが効果的に受け止めることができる。
【0037】
底板部11及びレール部18は、移動体70が移動可能な範囲をカバーできる程度に、メインケース10の全長に近い長さまで延設されている(図2参照)。レール部18の前面18a及び後面18bは、いずれも平坦面であって垂直面であり、摘み部81の非操作状態においては、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79に対して平行である。
【0038】
図2、図3(b)、図5に示すように、ゴンドラ71の下端部の4隅に係合突部76、77が設けられている。係合突部76は前側、係合突部77は後側において、それぞれ左右両側に1つずつ形成される。図5に示すように、前後で対となっている係合突部76、77間に形成される凹部に、レール部18が遊嵌状態で係合している。移動体70が移動行程におけるどの位置にあったとしても、摘み部81の非操作状態においては、係合突部76の後面76aとレール部18の前面18a、及び、係合突部77の前面77aとレール部18の後面18bとが、それぞれ所定間隔を保って近接対向するようになっている。前面77a及び後面76aも、全面に亘って平坦で且つ垂直面である。
【0039】
後面76aと前面18aの当接、または前面77aと後面18bとの当接によって、移動体70の下部である係合突部76、77の前後方向への過剰な変位が規制される(図6で後述する)。従って、これらも、過剰な力に対する移動体70のストッパ機能を果たす。
【0040】
図6(a)〜(c)は、摘み部材80に対して過剰な力が加えられた場合に移動体70の動きが規制される状態を模式的に示すスライド操作装置の部分断面図である。
【0041】
摘み部81が適切に操作される場合は、操作力のほとんどが、上側ガイドバー78の長手方向(図1、図4に示すX方向)に沿ったものである場合である。この場合は、移動体70の下側突起部70aとメインケース10の底板部11とが当接することなく、また、レール部18と係合突部76、77とも当接することなく、移動体70が、操作に応じて上側ガイドバー78の長手方向に円滑にスライド移動する。
【0042】
しかしながら、スライド操作時において、摘み部81を下方に押し付ける力が強過ぎた場合は、図6(a)に示すように、移動体70のスライド移動と共に、下側突起部70aの下端面70aaと底板部11の上面11aとが摺接する。そして移動体70の下方への移動量が適切量に規制される。このとき、両者の摺接によって摩擦が生じ、操作者にとっては、操作が重くなったように感じられる。すなわち、摘み部81の操作感触が適切な操作状態の場合に比し異なることが認識される。そのことに気が付いた操作者が、下方への力を緩めて、下側突起部70aと底板部11とが離間すると、上記した適切なスライド操作の状態に復帰する。
【0043】
ちなみに、移動体70が下方に変位すると、まず、下側突起部70aと底板部11とが当接するので、レール部18の上端に、係合突部76、77間に形成される凹部の天井面が当接することはない。
【0044】
また、摘み部材80に対して前後方向(図1、図4に示すY方向)に力がかかると、その方向に、移動体70全体が変位する。スライド操作時においてそのような力がかけられた場合は、移動体70のスライド移動と共に、レール部18に、係合突部76の後面76aまたは係合突部77の前面77a(図5参照)が摺接する。この場合も、両者の摺接によって摩擦が生じ、操作者にとっては、操作が重くなったように感じられる。従って、そのようなY方向の力を緩めれば、適切なスライド操作の状態に復帰する。
【0045】
しかしながら、摘み部材80への操作力は、X方向、Y方向、上下方向(図1に示すZ方向)の力だけでなく、これらの力が複合される場合もある。さらには、摘み部材80をしっかり摘んで操作する場合等には、X、Y、Z方向だけでなく、力が摘み部材80に対して回転モーメントとしてかかる場合もあり得る。特に、X方向の軸を中心とした回転モーメントがかかるような操作がされた場合は、移動体70は、X方向の軸を中心とした回転変位(ローリング)をする。その場合の回転中心の位置は、操作態様によって変化する。このような場合であっても、レール部18と係合突部76、77との摺接によって移動体70の過剰な変位が規制される。
【0046】
例えば、図6(b)に示すように、摘み部材80の操作により、結果としてX方向の軸を中心とした時計方向の回転モーメントが移動体70にかかったとすると、移動体70は前方に倒れようとする。この場合は、レール部18に係合突部76が当接乃至摺接する。一方、これとは逆に反時計方向の回転モーメントが移動体70にかかったとすると、図6(c)に示すように、レール部18に係合突部77が当接乃至摺接する。いずれの場合も、移動体70の回動量が適切量に規制される。
【0047】
下側突起部70aと底板部11との当接、及びレール部18と係合突部76、77との当接は、多くの場合、「面当接」となるので、各面にかかる応力が分散され、各面の摩耗や損傷が抑制される。また、摘み部材80は、屈曲形成されており、第1垂直部82と第2垂直部84との間に水平部83を有する(図5参照)。そのため、仮に、下側突起部70aと底板部11とが当接しても、なおかつ操作者が下方への力を増した場合には、水平部83が撓むことで、第1垂直部82が下方に変位可能なようになっている。これにより、下側突起部70aと底板部11との当接時に生じる底板部11からの反力の上昇が若干緩やかになると共に、過剰な力が急激に加わった場合でも、摘み部材80がその力を吸収し、移動体70が故障しにくくなっている。
【0048】
ところで、下側突起部70aと底板部11とが当接するとき、あるいはレール部18と係合突部76、77とが当接するときには、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79は弾性によって撓んでいる。しかし、その撓み量は、弾性変形の範囲内であって、破断歪みが生じるよりも十分に小さい量となるように、上記した下側突起部70aと底板部11との所定間隔、及びレール部18と係合突部76、77との所定間隔が設定されている。なお、本実施の形態では、移動体70に下方への数キロ〜10キログラム程度の荷重がかかったときに、下側突起部70aが底板部11に当接するように設計されている。
【0049】
本実施の形態によれば、摘み部81に対して、上側ガイドバー78に沿った方向とは異なる方向に加えられた力により移動体70が変位するとき、下側突起部70aと底板部11、あるいはレール部18と係合突部76、77との当接により、移動体70の過剰な変位が規制される。しかも、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79は、移動体70を移動可能に弾性的に保持し、上側ガイドバー78に沿った方向とは異なる方向に対して移動体70を変位させられるように細く軽く構成され、それ自体の剛性はそれほど高くなくてもよい。よって、スライド操作装置の重量化や長大化を招くことなく、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79の損傷を防止することができる。
【0050】
しかも、移動体70と当接する底板部11及びレール部18の面は、上側ガイドバー78と平行であるので、移動体70のスライド移動行程におけるいずれの位置においても、過剰な力に対して移動体70のストッパ機能を果たし、操作感触を変化させることによって、過剰な力がかかっていることを操作者に認識させることができる。
【0051】
特に、摘み部材80への操作が、X方向、Y方向、Z方向の力だけでなく、回転モーメントとしてかかる場合においても、レール部18と係合突部76、77との当接により、移動体70の回転変位が規制されるので、多くの操作態様に対して上記ストッパ機能を果たし、移動体70の変位を適切量に規制することができる。しかも、係合突部76、77は、移動体70において、摘み部81の反対側である下側に位置するので、移動体70の回転変位に対してレール部18が規制力を効果的に発揮することができる。
【0052】
また、底板部11及びレール部18は、メインケース10の一部であるので、構成が簡単で、故障も少ない。なお、移動体70の変位を規制して上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79の損傷を防止することに限って言えば、底板部11及びレール部18は、メインケース10に対して固定的にされた部分であれば、別部材で構成してもよい。
【0053】
(第2の実施の形態)
図7(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るスライド操作装置の図6に対応する部分断面図である。実施の形態では、底板部11及びレール部18に摩擦発生部材を設けた点のみが第1の実施の形態と異なり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0054】
図7(a)に示すように、底板部11の上面11aにおいて、移動体70の下側突起部70aと当接する部分に、摩擦発生部材91を貼着等で設ける。また、レール部18の前面18a及び後面18bにおいても、係合突部76、77と当接する部分に、摩擦発生部材92、93を貼着等で設ける。摩擦発生部材91、92、93は、シート状部材であり、表面の面粗さが粗く構成されたものである。
【0055】
下側突起部70aと摩擦発生部材91との摺接、係合突部76、77と摩擦発生部材92、93との摺接によって、第1の実施の形態に比し、より大きい摩擦力が発生する。従って、摘み部81の操作感触の変化がより明確に現れる。本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏するだけでなく、操作感触を積極的に変化させて、過剰な力がかかっていることを操作者に一層明確に認識させることができる。
【0056】
なお、摩擦発生部材91、92、93を貼着するのではなく、底板部11の上面11a、レール部18の前面18a及び後面18b自体の面粗さを粗くすることによって、摩擦を発生させるようにしてもよい。
【0057】
なお、摘み部材80への操作うち、Z方向の操作に対する操作感触の変化を認識させることに主眼を置く場合は、摩擦発生部材91だけ面粗さを粗くし、摩擦発生部材92、93に代えて、面粗さを滑らかにした摩擦発生部材92、93と同じ形状の板部材を設けてもよい。この場合は、これらの板部材は、摘み部材80のX方向、Y方向へのがたつきを抑え、円滑な操作をやりやすくする役割を果たす。
【0058】
また、操作感触を変化させる観点からは、必ずしも摩擦のような力ではなく、何らかの抵抗を発生させるように構成してもよい。例えば、図7(b)に示すように、底板部11の上面を、上側ガイドバー78の長手方向に沿った波形等の凹凸面94としてもよい。これにより、移動体70のスライド移動時において、下側突起部70aが凹凸面94に当接すると、移動体70が振動し、摘み部81の操作感触が通常とは極めて異なったものとなるので、不適切な操作であることが直ちに認識されやすい。
【0059】
なお、上記した摩擦発生部材は、底板部11ではなく下側突起部70aに設けてもよく、同様に、レール部18ではなく係合突部76、77に設けてもよい。あるいは、対向する双方の面に設けてもよい。また、上記した凹凸面も、下側突起部70aの下面に設けてもよいし、底板部11と下側突起部70aの両者に設けてもよい。
【0060】
なお、上記第1、第2の実施の形態において、図7(c)に示すように、移動体70のゴンドラ71の上に、摘み部材80の水平部83と当接可能なストッパ部95を設けてもよい。下側突起部70aが底板部11に当接しても、なおかつ、摘み部81に下方への力が増した場合に、水平部83がストッパ部95に当接するように構成される。これにより、水平部83の損傷を防止することができる。
【0061】
なお、移動体70が下方に変位すると、まず、下側突起部70aと底板部11とが当接するように構成されたが、これに代えて、レール部18の上端に、係合突部76、77間に形成される凹部の天井面が当接することで、移動体70の下方への変位を規制するように構成してもよい。これによれば、係合突部76、77間に形成される凹部において、移動体70の下方及び前後方向の双方のストッパ機構を集中的に構成できるので、スライド操作装置をよりコンパクトにすることができる。
【0062】
また、下側突起部70aと底板部11とによるストッパ機構と、係合突部76、77間に形成される凹部の天井面とレール部18の上端とによるストッパ機構とを、双方設けて、両者がほぼ同時に当接するように構成してもよい。これによれば、移動体70の下方への変位を、より安定した姿勢のまま規制することができる。
【0063】
なお、上記第1、第2の実施の形態において、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79は、保持穴20、21及び保持穴22、23によって固定的に保持され、移動体70のX方向(図1参照)以外の方向への変位は、専ら上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79の弾性によってもたらされるものであった。しかしながら、これに限るものではなく、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79を保持する機構自体に、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79をY方向またはZ方向への変位を許容する弾性保持機能等の機能を設けてもよい。
【0064】
すなわち、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79の損傷を防止する観点からは、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79とこれらを保持する保持機構とで、移動体70を変位可能に保持する「移動体保持機構部」を構成する場合、次のように構成してもよい。例えば、上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79自体の弾性変形、及び/又は、上記保持機構による上側ガイドバー78及び下側ガイドバー79の両端部の変位の許容によって、移動体70がX方向以外の方向へ変位可能に構成されたものであってもよい。
【0065】
なお、移動体70の安定スライド動作の観点では好ましくないが、上側ガイドバー78を断面矩形等として、移動体70が上側ガイドバー78を中心に回転しないように構成すれば、下側ガイドバー79は廃止してもよい。
【0066】
なお、本スライド操作装置は、ミキサのフェーダ装置に限られず、オルガンの音色設定に用いられるドローバー等に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスライド操作装置の斜視図である。
【図2】本スライド操作装置においてサブケースを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】メインケースの斜視図(図(a))及び移動体の斜視図(図(b))である。
【図4】スライド操作装置の平面図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】摘み部材に対して過剰な力が加えられた場合に移動体の動きが規制される状態を模式的に示すスライド操作装置の部分断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るスライド操作装置の図6に対応する部分断面図(図(a))、その変形例(図(b))、及び移動体の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10 メインケース(箱体の一部)、 11 底板部(ストッパ部)、 18 レール部(ストッパ部)、 20、21、22、23 保持穴(ガイド支持部)、 40 サブケース(箱体の一部)、 70 移動体、 70a 下側突起部(所定部分)、 73 センサ部(位置検出手段)、 76、77 係合突部(所定部分)、 78 上側ガイドバー(移動ガイド)、 79 下側ガイドバー(移動ガイド)、 81 摘み部、 91、92、93 摩擦発生部材(抵抗発生部)、 94 凹凸面(抵抗発生部)
【出願人】 【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
【出願日】 平成18年2月3日(2006.2.3)
【代理人】 【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚

【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡

【識別番号】100138922
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 夏紀

【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩

【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康


【公開番号】 特開2007−208119(P2007−208119A)
【公開日】 平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願番号】 特願2006−27060(P2006−27060)