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セシウム吸着剤と放射性核種除去方法 - 特開2007−271306 | j-tokkyo
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【発明の名称】 セシウム吸着剤と放射性核種除去方法
【発明者】 【氏名】小川 尚樹

【氏名】田村 和久

【氏名】小華和 治

【氏名】衣笠 敦志

【氏名】上村 一秀

【氏名】神吉 秀起

【要約】 【課題】廃液に含まれる放射性核種のうち、水溶性のセシウム(Cs)とストロンチウム(Sr)については、効果的な除去手段がなく、無機系の吸着材による吸着除去が行われているが、吸着材の交換コストがシステムの運転費を押し上げる原因となっている。

【解決手段】放射性核種を含有する廃液を、脱窒菌又はセシウム蓄積菌で処理してセシウムを吸着除去するセシウム除去工程を含んでなる放射性核種の除去方法を提供する。この放射性核種の除去方法は、好ましくは、上記セシウム除去工程後の廃液を、キトサンを充填した吸着カラムに通してストロンチウムを吸着除去する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱窒菌を含んでなるセシウム吸着剤。
【請求項2】
放射性核種を含有する廃液を、脱窒菌又はセシウム蓄積菌で処理してセシウムを吸着除去するセシウム除去工程を含んでなる放射性核種の除去方法。
【請求項3】
上記セシウム除去工程で処理後の廃液を、キトサンを充填した吸着カラムに通してストロンチウムを吸着除去する請求項2に記載の放射性核種の除去方法。
【請求項4】
上記セシウム除去工程で処理中の廃液、又は上記セシウム除去工程で処理する前又は処理後の廃液を、真核生物で処理してストロンチウムを吸着除去するストロンチウム除去工程を含んでなる請求項2に記載の放射性核種の除去方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉施設、核燃料の再処理工場等から発生する、放射性核種を含有する廃液、特にセシウム、又はセシウムとストロンチウムを含有する廃液の処理方法に関する。
【0002】
原子炉施設、核燃料の再処理工場等からの廃液には、種々の放射性核種が含まれているため、蒸発濃縮法,イオン交換法,凝集沈澱法等の処理方法を組み合わせることにより、廃液中の放射能濃度を原子炉等規制法に定める値以下にして、環境中へ放出している。
廃液中に溶解している種々の放射性物質をキチン又はキトサンに吸着して除去する処理する方法も報告されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−68893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
廃液に含まれる放射性核種のうち、水溶性のセシウム(Cs)とストロンチウム(Sr)については、効果的な除去手段がなく、現状では、無機系の吸着材による吸着除去が行われているが、吸着材の交換コストがシステムの運転費を押し上げる原因となっている。
また、上記のようにキチンやキトサンを用いる方法もあるが、キチンやキトサン単独による除去法より安価で、効果的な除去手段が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、脱窒菌を含んでなるセシウム吸着剤を提供する。
また、本発明は、放射性核種を含有する廃液を、脱窒菌又はセシウム蓄積菌で処理してセシウムを吸着除去するセシウム除去工程を含んでなる放射性核種の除去方法を提供する。この放射性核種の除去方法は、好ましくは、上記セシウム除去工程で処理後の廃液を、キトサンを充填した吸着カラムに通してストロンチウムを吸着除去する。また、この放射性核種の除去方法は、好ましくは、上記セシウム除去工程で処理する前又は処理後の廃液を、カビなどの真核生物で処理してストロンチウムを吸着除去する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明で用いる脱窒菌は、特開平9−234492号公報に記載されているように、排水中のアンモニウムイオンを窒素ガスに分解する生物化学的方法として、硝化菌と組み合わせて用いられる公知の微生物である。
好気性硝化菌がアンモニウムイオンを酸化して硝酸イオンとした後、嫌気性脱窒菌は、水素供与体の存在下で硝酸イオンを還元して窒素にする。水素供与体としてメタノールを用いると、下記式(1)で表される。
NO3- + 5/6CH3OH → 5/6CO2 + 1/2N2 + 7/6H2O + OH- ..(1)
この反応には脱窒菌が作用し、また充分なるメタノールが必要である。水素供与体は、炭素源して微生物の栄養ともなるが、メタノールに限らず、メタノール以外のアルコール、糖類、有機酸が用いられる。
本発明者らは、脱窒菌がセシウムの吸着剤として効果があることを見出したものである。
【0006】
本発明に用いるセシウム蓄積菌(Rhodococcusロドコッカス)は、土壌中や活性汚泥中に広く存在する公知の微生物である。従属栄養細菌であり、有機物を好気的に資化して増殖する。微生物が一般的に有するカリウム輸送ポンプ(微生物が生育の必須元素であるカリウムを菌体内に取り込む機構)を介してセシウムが微生物内に蓄積されることがTomioka et al. Appl. Environ. Microbiol., 60, 2227-2231, 1994に示唆されている。
【0007】
本発明に用いるカビ等の真核生物は、Hebeloma属に属する微生物による吸着除去が知られている。カビ等は、菌糸を成長させて増殖するため、細胞表面積が大きいことから、細胞表面にストロンチウム等の元素を吸着する能力を有する。本微生物も細胞表面にストロンチウムを吸着することによって、廃液から除去することができる。Riesen TK et al., Environ. Pollut., 93, 1-8, 1996を参照。
【0008】
本発明に用いるキトサンは、好ましくは、キチンを脱アセチル化して得られ、Dグルコサミンがβ−1,4結合した多糖である。キトサンは、吸着機能を有し、廃液中の放射性核種を吸着できる。放射性核種を吸着したキトサンは、多糖であるため容易に焼却されて炭酸ガスとなり、放射性核種だけが残る。
ストロンチウムは揮発性がなく、焼却処分に適用できるため、キトサンを充填した吸着カラムに通して吸着除去できる。
【0009】
本発明の第一の態様を図1に示す。撹拌機13を備えた生物反応槽12において、放射性核種を含有する廃液11を、脱窒菌又はセシウム蓄積菌14aで処理してセシウムを吸着させる。このとき、脱窒菌又はセシウム蓄積菌とともにカビなどの真核生物14bを存在させ、同時にストロンチウムを吸着させることができる。脱窒菌とセシウム蓄積菌を共存させ、セシウム吸着剤とすることもできる。処理後の廃液は、固液分離手段15(例えば、沈殿槽、膜分離槽等の固液分離槽や分離膜)において処理水とセシウム及びストロンチウム含有汚泥に分離することができる。セシウム及びストロンチウム含有汚泥は、揮発性のセシウムを含むため、後述する特殊の焼却方法で焼却する。
第一の態様によれば、セシウム、ストロンチウムを安価で製造容易な微生物で除去することにより、高価な吸着材を用いることなく処理が可能となる。
【0010】
本発明の第二の態様を図2に示す。撹拌機23を備えた生物反応槽22において、放射性核種を含有する廃液21を、脱窒菌又はセシウム蓄積菌24で処理してセシウムを吸着させ、処理後の廃液を、固液分離手段25(例えば、沈殿槽、膜分離槽等の固液分離槽や分離膜)においてストロンチウム含有処理水とセシウム含有汚泥に分離する。ストロンチウム含有処理水は、キトサン樹脂27を充填した吸着塔26に通してストロンチウムを吸着除去できる。セシウム含有汚泥は、セシウムの揮発性のため、後述する特殊の焼却方法で焼却する。ストロンチウムを吸着した使用済みキトサン樹脂は、通常の焼却が可能である。
第二の態様によれば、最初にセシウムが吸着除去できるため、ストロンチウム除去の負荷の軽減が図れる。また、揮発性の程度が異なるセシウムとストロンチウムに分離できるため、特にストロンチウムの焼却が容易となり、吸着後の処分のコストの低減を図ることができる。
【0011】
本発明の第三の態様を図3に示す。撹拌機33を備えた生物反応槽32において、放射性核種を含有する廃液31を、真核生物34で処理してストロンチウムを吸着させ、処理後の廃液を、固液分離手段35(例えば、沈殿槽、膜分離槽等の固液分離槽や分離膜)においてセシウム含有処理水とストロンチウム含有汚泥に分離する。セシウム含有処理水は、撹拌機37を備え、脱窒菌又はセシウム蓄積菌38を含有する生物反応槽36に導入され、セシウムを吸着させ、処理後の廃液を固液分離手段39(例えば、沈殿槽、膜分離槽等の固液分離槽や分離膜)においてセシウム含有汚泥と処理水に分離する。
ストロンチウム含有汚泥は、通常の焼却炉で焼却できる。セシウムを含有した汚泥は、二次廃棄物として処理できる。
第三の態様によれば、最初にストロンチウムが吸着除去できるため、後段のセシウム除去の負荷の軽減が図れる。また、作業環境汚染(大気)の恐れがあるセシウムの焼却処理が不要となり、例えば、セメント固化し、ドラム缶に詰めて地中に埋設処理する等の処理が可能となるので、処理システムとしての成立性が高まると同時に、ストロンチウムを安価な微生物で除去することにより、運転費用の削減、二次廃棄物量の低減が可能となる。
【0012】
次に、揮発性のセシウムを含む微生物の焼却方法について記載する。
第一の態様ではセシウムとストロンチウムを含む汚泥が得られるが、この汚泥の焼却炉には、燃焼排ガスを導入できるセシウム回収スクラバーを設ける。これにより、揮発性セシウムはスクラバーで回収され、セシウムを除去されたガスが排出できる。焼却炉内には、ストロンチウムを含む焼却灰が残される。
また、セシウムを含む汚泥を酸素の不足した炭化炉で300℃程度の低温で蒸し焼きし、セシウムの炭化物とすることもできる。この炭化(無機化)処理は、ストロンチウムの存在下でも可能であり、ストロンチウムの炭化物も得られる。
【0013】
本発明において、焼却の容易さから第二の態様が特に好ましい。また、核燃料の再処理工場では、廃液中に含まれる多量の硝酸塩を窒素ガスとして排出するために、脱窒菌が使用されており、この脱窒菌を利用できる容易さからも脱窒菌が好ましい。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
図4に試験装置の概要を示す。容器には空気供給用あるいは窒素封入用の散気管、エアーポンプまたは窒素ガスボンベを接続し、吹き込んだガスは容器上部に設けた排気管より排出される。容器内に脱窒菌(活性汚泥)を投入し、その中に塩化セシウムをセシウム濃度が10mg/Lとなるように添加する。塩化セシウムはセシウム濃度1000mg/Lの溶液を予め調製し、その溶液を1/100容添加して10mg/Lとしてもよい。容器に蓋を取付け、空エアーポンプで空気を送りながら、容器内を好気的雰囲気(溶存酸素濃度として4mg/L以上)に維持しながら、一定時間(例えば24時間)反応させた(試験No.1)。試験No.2では空気の代わりに窒素ガスを送りながら、容器内を嫌気的雰囲気(溶存酸素濃度として0.2mg/L以下)に維持して同様に反応を行わせた。反応終了後の溶液を0.45μmのメンブレンフィルターを通してろ過を行い、上澄み液のセシウム濃度を測定した。セシウムの分析はICP(高周波誘導結合プラズマ発光分析装置)を用いて定量分析を行った。脱窒菌は、硝酸イオン含有廃液を還元処理している脱窒汚泥を使用した。試験温度は20〜25℃(室温)、試験時のpHは中性付近(5〜9)、脱窒菌(活性汚泥)の濃度は3,000〜10,000mg/L(活性汚泥濃度(MLSS)として)とした。セシウム吸着試験結果を表1に示す。
【0015】
【表1】


【0016】
試験結果より、脱窒菌は溶液中のセシウムを好気的条件下で95%、嫌気的条件下で85%除去できることがわかり、放射性物質含有廃液から放射能を除去する能力があることを確認できた。これらの結果は、放射能除去に多大の費用を要していた従来の吸着材に対して、同硝酸処理で大量に発生する余剰汚泥を再利用してセシウムの吸着に用いることも可能であることを示している。また、嫌気的条件下でセシウムの吸着が起こることから、硝酸処理が行われる脱窒槽内で硝酸処理と同時にセシウム吸着が起こること、好気的条件下でも吸着することから、脱窒槽の後工程に位置づけられる曝気槽内でもセシウムの吸着が起こることを示している。さらには、硝酸処理で大量に発生する脱窒汚泥(本来は余剰汚泥として脱水、焼却処理される)を充填した処理槽を新たに設けてセシウム吸着槽として利用することも可能である。元々、処分が必要な廃棄物として扱われる余剰汚泥を用いて放射性物質の吸着除去が可能となるため、処理にかかるコスト、吸着剤の購入費は大幅に低減することができる。
【0017】
実施例2
実施例1と同じ試験装置を用い、容器内に下水汚泥を投入し、蓋を開放したまま通気せずに放置、水面に活性汚泥に生育するカビを増殖させた。カビが発生した容器を良く攪拌して、液中にカビを均一に分散した後、塩化ストロンチウムをストロンチウム濃度が10mg/Lとなるように添加した。添加方法は実施例1のセシウム添加法と同じで良い。実施例1の試験No.1と同じ条件でカビ(+下水汚泥)とストロンチウムを反応させ、上澄み液のストロンチウム濃度を測定した(試験No.3)。試験No.4ではカビを発生させていない下水汚泥を用いて同様の測定を行った。そのストロンチウム(Sr)吸着試験結果を表2に示す。
【0018】
【表2】


【0019】
試験結果より、ストロンチウムは汚泥に吸着されるが、特にカビが存在する汚泥により吸着されることがわかった。このことからカビによってストロンチウムが溶液中より吸着除去できることがわかる。放射性廃液中のストロンチウムを汚泥(カビ)に吸着させることにより、従来の比較的高価な吸着材の使用量が削減、代用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一の態様による放射性核種の除去装置を示す図である。
【図2】本発明の第二の態様による放射性核種の除去装置を示す図である。
【図3】本発明の第三の態様による放射性核種の除去装置を示す図である。
【図4】本発明の放射性核種の吸着試験装置を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
11,21,31 廃液
12,22,32,36 生物反応槽
13,23,33,37 撹拌機
14a,24,38 脱窒菌又はセシウム蓄積菌
14b,34 真核生物
15,25,35,39 固液分離手段
26 吸着塔
27 キトサン樹脂
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成18年3月30日(2006.3.30)
【代理人】 【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一

【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一

【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男

【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文


【公開番号】 特開2007−271306(P2007−271306A)
【公開日】 平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願番号】 特願2006−94043(P2006−94043)