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【発明の名称】 運転者状態判定装置及び運転支援装置
【発明者】 【氏名】田口 敏行
【氏名】榊原 清美
【氏名】畠山 直
【氏名】脇田 敏裕
【課題】運転者の運転者状態をより詳細に判別できるようにする。

【解決手段】覚醒度を反映する運転者情報、注意集中度を反映する運転者情報、及び運転能力を反映する運転者情報の中から選択された少なくとも2つの運転者情報を検出し、検出された各運転者情報の運転者個人の平均値及び標準偏差と、車両運転状態または外部環境状態を示す車両・運転環境情報とに基づいて、運転者状態を判定するための運転者状態判定閾値を決定し、検出された各運転者情報、及び決定された運転者状態判定閾値に基づいて、運転者状態を判定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
覚醒度を反映する運転者情報、注意集中度を反映する運転者情報、及び運転能力を反映する運転者情報の中から選択された少なくとも2つの運転者情報を検出する運転者情報検出手段と、
前記運転者情報検出手段で検出された各運転者情報の運転者個人の平均値及び標準偏差を記憶する運転者情報データベースと、
車両運転状態または外部環境状態を示す車両・運転環境情報を検出する車両・運転環境情報検出手段と、
前記運転者情報データベースに記憶された運転者個人の平均値及び標準偏差と、前記車両・運転環境情報検出手段で検出された車両・運転環境情報とに基づいて、運転者状態を判定するための運転者状態判定閾値を決定する判定閾値決定手段と、
前記運転者情報検出手段で検出された各運転者情報、及び前記判定閾値決定手段で決定された運転者状態判定閾値に基づいて、運転者状態を判定する運転者状態判定手段と、
を含む運転者状態判定装置。
【請求項2】
前記覚醒度を反映する運転者情報は、脳波、心拍状態、開眼時に対して一定以上眼を閉じている時間の割合を表す閉眼時間割合、顔部画像の顔表情情報より計測され眠気状態を表す顔表情眠気値、及び運転者が申告した自己申告眠気値の少なくとも1つであり、
前記注意集中度を反映する運転者情報は、頭部加速度、頭部画像、及び頚部筋電図の少なくとも1つにより計測された運転者の頭部動揺量より得られる頭部振動伝達率と、視線の方向により計測される運転者の注意集中対象との少なくとも一方であり、
前記運転能力を反映する運転者情報は、基準操舵量と操舵量とにより求められる低周波数操舵量、アクセルペダル操作量、ブレーキペダル操作量、車線幅方向の車両位置の変動を示す車両ふらつき度、及び前車との車間距離維持のためのアクセルペダル操作量またはブレーキペダル操作量の少なくとも1つである請求項1記載の運転者状態判定装置。
【請求項3】
前記車両・運転環境情報は、車速、車両の加速度、車両の角加速度、前車と自車との車間距離、自車の前方画像情報、天候、時刻、運転時間、並びに道路種別及び交通量を含むカーナビゲーションからの道路情報の少なくとも1つである請求項1または請求項2記載の運転者状態判定装置。
【請求項4】
外部からの操作によって前記運転者状態判定閾値を変更する判定閾値変更手段を更に設けた請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の運転者状態判定装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の運転者状態判定装置と、
前記運転者状態判定手段で判定された運転者状態に応じた運転支援の種類及びタイミングで、運転支援手段を制御する運転支援制御手段と、
を含む運転支援装置。
【請求項6】
外部からの操作によって前記運転支援手段による運転支援を選択的に実行させる運転支援選択手段を更に設けた請求項5記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記運転支援手段は、
運転支援を表す情報を呈示する情報呈示手段、
リラックス、リフレッシュ、覚醒、または注意喚起のために、マイナスイオン、香り、酸素、音、及び振動の少なくとも1つを発生する発生手段、
リラックス、リフレッシュ、覚醒、または注意喚起のために、車内の温度を制御する温度制御手段、
リラックス、リフレッシュ、覚醒、または注意喚起のために、シートベルトの張力を制御するシートベルト張力制御手段、
及び運転能力低下を補うための車両運動制御を行う車両運動制御手段の少なくとも1つを含む請求項5または請求項6記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記運転支援制御手段は、前記情報呈示手段を制御して、注意喚起警報を含む情報の呈示タイミング、呈示時間、呈示する情報の大きさ、呈示する情報の形状、呈示する情報の色の少なくとも1つの変更、走行速度低減の呈示、渋滞情報を含む事前情報の呈示、自車周辺危険情報の呈示、事故多発地点の呈示、及び、休憩の勧め及びそのための情報呈示の少なくとも1つを行う請求項7記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記運転支援制御手段は、前記発生手段を制御して、マイナスイオン、香り、酸素、音、及び振動の少なくとも1つの発生タイミング、発生量、発生時間、及び発生種類の少なくとも1つを制御する請求項7記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記運転支援制御手段は、前記温度制御手段を制御して、車内の温度の変更タイミング、変更量、変更方向、及び変更時間の少なくとも1つを制御する請求項7記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記運転支援制御手段は、前記シートベルト張力制御手段を制御して、前記シートベルトの張力の大きさ、張力を変更するタイミング、及び変更時間の少なくとも1つを制御する請求項7記載の運転支援装置。
【請求項12】
前記運転支援制御手段は、前記車両運動制御手段を制御して、車両運動制御のタイミング、車両制御量、車両制御方向、及び車両制御時間の少なくとも1つを制御する請求項7記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者状態判定装置及び運転支援装置にかかり、特に、運転者に関する指標を用いて運転者状態を判定する運転者状態判定装置、及びこの運転者状態判定装置を利用した運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の不注意な状態を判定する従来技術として、ハンドル静止段階とハンドル静止段階に続くやや慌しいハンドル操作を識別し、不注意の重大度を判断する技術(例えば、特許文献1)や、動作パラメータ(操舵角、アクセルペダル位置、ブレーキペダル位置、運転者の着座状態、及び姿勢の少なくとも1つを含むパラメータ)から、運転者の不注意さの度合いを検出する技術(例えば、特許文献2)等が知られている。
【0003】
また、注意に関わる運転者状態を判定する従来技術としては、運転者の視線方向の頻度と運転操作量とを検出して運転者状態(車線の維持運転状態、漫然運転状態、わき見運転状態、及び車線変更の意図を示す運転状態の少なくとも1つの状態)を検出する技術が知られている(例えば、特許文献3)。
【0004】
また、居眠り運転状態を目の開閉状態や操舵状態を用いて検出して警報を発し、警報を発してから警報を停止するまでの警報作動時間の長さに基づいて居眠り運転判定方法を変更する手段を備えた居眠り運転警報装置も知られている(例えば、特許文献4)。
【0005】
さらにまた、運転者の状態を視線方向、顔向きおよび顔の位置により判定し、判定結果をもとに、注意もしくは覚醒を促す警告覚醒処理手段を備えた車両制御装置も知られている(例えば、特許文献5)。
【0006】
ところで、安全運転に大きく関わる運転者状態において不適切な状態としては、覚醒低下による注意レベルの低下、運転への注意集中不足、及び運転能力低下がある。特許文献1の技術は、この不適切な状態のうち疲労及び覚醒低下による注意レベルの低下を対象とし、特許文献2はこの不適切な状態のうち運転への注意集中不足を対象としている。
【0007】
注意レベルの低下と注意集中不足とを比較すると、疲労及び覚醒低下による注意レベルの低下と、運転以外の操作及びわき見等による運転への注意集中不足とは異なる現象であり、必要な運転支援も異なると考えられるため、注意レベルの低下と注意集中不足とを区別して判定することが望ましい。
【特許文献1】特開2005−158077号公報
【特許文献2】特開2003−323700号公報
【特許文献3】特開2003−80969号公報
【特許文献4】特開2002−183900号公報
【特許文献5】特開2005−62911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2の技術は、ハンドル操作、アクセルペダル、及びブレーキペダルの各操作を指標として不注意な状態を検出しており、これらの指標は運転操作に関わるものであることから、走行状態(車速、交通量、道路形状等)によって変化するため、これらの指標のみで不注意状態を判定するのは困難である。このため運転操作に依存しない指標を用いることが望まれる。
【0009】
また、上記特許文献3の技術は、視線方向及びステアリング操作量を指標として検出することにより、漫然運転及びわき見運転等の不注意状態を判定する技術であるが、これらの指標は特許文献1及び特許文献2の各技術と同様に、運転操作に関わるものであり、走行状態によって変化するため、これらの指標のみで不注意状態を判定するのは困難である。このため運転操作に依存しない指標を用いるかまたは併用することが望まれる。
【0010】
上記特許文献4の技術では、警報を発してから警報を停止するまでの警報作動時間の長さに基づいて居眠り運転判定方法を変更しているが、居眠り運転判定基準を変更(適正化)するために実施する警報そのものがわずらわしく感じられる可能性があり、居眠り運転状態の判定方法変更の手段として不適切である。
【0011】
また、上記特許文献5の技術では、わき見や居眠り状態を検出し、その持続時間により警告手段や覚醒手段を決定して実施するものであるが、居眠り状態は軽度の覚醒低下から大幅な覚醒低下まで程度の違いがあり、一様ではない。また居眠り状態の持続時間と覚醒低下の程度あるいは運転能力低下は必ずしも一致するわけではない。このため居眠り状態の持続時間だけで状態を区別したり、危険度を判定したりして支援内容を決定するのでは、適切な支援(警告や覚醒)ができない可能性がある。
【0012】
本発明は、上記の問題を解消するためになされたもので、安全運転に大きく関わる運転者状態を覚醒度、注意集中度、及び運転能力の3つの要素に分けて、各々の要素を反映する少なくとも2つの運転者情報を検出し、検出した運転者情報の組み合わせに基づいて運転者状態を判定することにより、運転者状態をより詳細に判別できるようにした運転者状態判定装置を提供することを第1の目的とする。
【0013】
また、本発明は、上記の運転者状態判定装置を利用して、より詳細に判別した運転者状態を用いて運転支援を行うようにした運転支援装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記第1の目的を達成するために本発明は、覚醒度を反映する運転者情報、注意集中度を反映する運転者情報、及び運転能力を反映する運転者情報の中から選択された少なくとも2つの運転者情報を検出する運転者情報検出手段と、前記運転者情報検出手段で検出された各運転者情報の運転者個人の平均値及び標準偏差を記憶する運転者情報データベースと、車両運転状態または外部環境状態を示す車両・運転環境情報を検出する車両・運転環境情報検出手段と、前記運転者情報データベースに記憶された運転者個人の平均値及び標準偏差と、前記車両・運転環境情報検出手段で検出された車両・運転環境情報とに基づいて、運転者状態を判定するための運転者状態判定閾値を決定する判定閾値決定手段と、前記運転者情報検出手段で検出された各運転者情報、及び前記判定閾値決定手段で決定された運転者状態判定閾値に基づいて、運転者状態を判定する運転者状態判定手段と、を含んで構成されている。
【0015】
本発明では運転者状態を覚醒度、注意集中度、及び運転能力の3つの要素にわけ、少なくとも2つの要素を反映する運転者情報を検出し、検出した各運転者情報の運転者個人の平均値及び標準偏差と、車両・運転環境情報とに基づいて、運転者状態を判定するための運転者状態判定閾値を決定する。そして、検出された各運転者情報、及び決定された運転者状態判定閾値に基づいて、運転者状態を判定する。
【0016】
本発明では、覚醒度、注意集中度及び運転能力の各々の要素を反映する運転者情報の組合せに基づいて運転者状態を判別しているので、運転者状態を詳細に判別することができる。すなわち、本発明では、従来技術が主な対象としている集中状態、及び居眠り状態の他に、例えば、漫然状態(覚醒しているが注意集中が低い状態)、及び眠気と葛藤している状態(覚醒低下しているが注意集中が高い状態)を分離して判別することなどが可能となる。
【0017】
本発明では、覚醒度を反映する運転者情報は、運転操作に依存しない指標として、脳波、心拍状態、開眼時に対して一定以上眼を閉じている時間の割合を表す閉眼時間割合、顔部画像の顔表情情報より計測され眠気状態を表す顔表情眠気値、及び運転者が申告した自己申告眠気値の少なくとも1つを用いることができる。
【0018】
また、注意集中度を反映する運転者情報は、頭部加速度、頭部画像、及び頚部筋電図の少なくとも1つにより計測された運転者の頭部動揺量より得られる頭部振動伝達率と、視線の方向により計測される運転者の注意集中対象(運転か運転以外かを区別することができる)との少なくとも一方を用いることができる。この注意集中対象情報を加えると、より細かく運転者状態を判別することができる。
【0019】
また、運転能力を反映する運転者情報は、基準操舵量と操舵量とにより求められる低周波数操舵量、アクセルペダル操作量、ブレーキペダル操作量、車線幅方向の車両位置の変動を示す車両ふらつき度、及び前車との車間距離維持のためのアクセルペダル操作量またはブレーキペダル操作量の少なくとも1つを用いることができる。なお、低周波数操舵量としては、走行状態(特に速度及び道路形状)の影響を小さくするために2つの周波数帯域の比を指標にすることができ、例えば、基準操舵量と操舵量との比の自然対数により求められる低周波数操舵量比を用いることができる。
【0020】
本発明では、覚醒度を反映する運転者情報として閉眼時間割合を用いると共に注意集中度を反映する運転者情報として頭部振動伝達率を用いるか、または、覚醒度を反映する運転者情報として閉眼時間割合を用いると共に注意集中度を反映する運転者情報として頭部振動伝達率及び視対象割合を用いると効果的である。
【0021】
さらにまた、本発明では、覚醒度を反映する運転者情報として閉眼時間割合を用いると共に、運転能力を反映する運転者情報として低周波数操舵量を用いると効果的である。また、注意集中度を反映する運転者情報として頭部振動伝達率を用いると共に、運転能力を反映する運転者情報として車両ふらつき度を用いると効果的である。
【0022】
また、各運転者情報の運転者個人の平均値及び標準偏差と車両・運転環境情報とに基づいて決定した運転者状態判定閾値を用いて運転者状態を判定することにより、運転者個人に適合した運転者状態を判定することができる。運転者状態判定閾値は、車両・運転環境情報に応じて決定されているので、車両・運転環境に応じた運転者状態の判定を行うことできる。
【0023】
更に、本発明では検出した運転者個人の運転者情報データを蓄積し、これに基づいて演算した運転者状態判定閾値を用いているので、運転者個人の運転者情報データのレベル(平均値)や変動(標準偏差)に適合した運転者状態の判定を行うことができる。
【0024】
上記のように本発明の運転者状態判定装置によれば、運転者個人に適合すると共に、車両・運転環境に対応した的確な運転者状態の判定を行うことができる。
【0025】
また、上記第2の目的を達成するために本発明の運転支援装置は、上記運転者状態判定装置と、前記運転者状態判定手段で判定された運転者状態に応じた運転支援の種類及びタイミングで、運転支援手段を制御する運転支援制御手段と、を含んで構成されている。
【0026】
本発明の運転支援装置によれば、上記のように判定された運転者状態に対応して運転支援制御を行うことにより、不注意状況に応じた最適な運転支援を実施できる。逆に、運転環境に応じた良好な運転者状態の時には警報の呈示を遅くすること等により、不必要な支援による煩わしさを低減できる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の運転者状態判定装置によれば、覚醒度を反映する運転者情報、注意集中度を反映する運転者情報、及び運転能力を反映する運転者情報の少なくとも2つの運転者情報に基づいて運転者状態を判定しているので、運転者状態をより詳細に判別することができる、という効果が得られる。
【0028】
また、本発明の運転支援装置によれば、より詳細に判別した運転者状態に応じた運転支援を行うことができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の第1の実施の形態には、図1に示すように、覚醒度と注意集中度とを各々反映する運転者の複数の運転者情報を検出する運転者情報検出器10が設けられている。本実施の形態では、運転者情報として、覚醒度と注意集中度とを各々反映する複数の運転者情報を用い、これらの複数の運転者情報の組合せに基づいて運転者状態を詳細に判定することができる。
【0030】
第1の実施の形態では、覚醒度を反映する運転者情報として、開眼時に対して一定以上眼を閉じている時間の割合を表す閉眼時間割合、注意集中度を反映する情報として、頭部動揺量より求まる頭部振動伝達率が各々用いられている。
【0031】
このため、運転者情報検出器10は、図1に示すように、ドライバの頭部を顔面側から撮影するカメラ10A、カメラ10Aで撮影されたドライバの顔面画像から運転者の眼の閉眼時間を検出する閉眼時間検出器10B、カメラ10Aで撮影されたドライバの頭部画像から頭部加速度を頭部動揺量として検出する加速度検出器10C、及びシート尻下部の上下加速度を検出する加速度センサ10Dで構成されている。
【0032】
また、車両運転状態もしくは外部環境状態を示す情報である車両・運転環境情報を検出する車両・運転環境情報検出器12が設けられている。
【0033】
車両・運転環境情報としては、車速、車両加速度、車両角加速度、前車と自車との車間距離、自車の前方画像情報、天候、時刻、運転時間、及びカーナビゲーションからの道路情報(道路種別、及び交通量)の少なくとも1つを検出することができる。
【0034】
運転者情報検出器10、及び車両・運転環境情報検出器12は、コンピュータで構成された制御回路16に接続されている。制御回路16には、運転者情報のデータ、このデータの平均値及び標準偏差等を記憶する運転者情報データベース14が接続されると共に、運転支援手段20が接続されている。
【0035】
運転支援手段20としては、図1に示すように、音によって運転支援情報を呈示するスピーカ20A、画像等によって運転支援情報を呈示するカーナビゲーション等の情報呈示装置20B、シートベルト18を巻き取るリトラクタ(図示省略)を制御してシートベルト18の張力を制御するシートベルト張力制御装置20C、香りやマイナスイオンを発生させたり、酸素を出したり、車内の温度を調整する空調装置20D、及びシート尻下部に設けられシートを振動させるシート振動装置20Eが設けられている。また、制動力制御や操舵反力制御など車両運動制御を行う制御部(図示省略)を設け、運転能力低下時に制動力を上げるなど、運転能力低下を補うようにすることもできる。運転支援手段20としては、これらの少なくとも1つを設ければよい。
【0036】
制御回路16には種々の機能を実現するプログラムが記憶されており、制御回路で実現する機能を機能ブロック図で表すと、図2に示すように、運転者情報検出器10で検出されたデータに基づいて運転者情報を検出する運転者情報検出手段16D、車両・運転環境情報検出器12で検出されたデータに基づいて車両・運転環境情報を検出する車両・運転環境情報検出手段16E、運転者情報検出手段16Dで検出された運転者情報に基づいて運転者状態を判定する運転者状態判定手段16A、運転者情報データベース14に格納された情報と車両・運転環境情報検出手段16Eで検出された情報とに基づいて、判定閾値を決定する判定閾値決定手段16B、及び運転支援手段20を制御する運転支援制御手段16Cで表すことができる。
【0037】
以下、本実施の形態の制御回路におけるプログラムに従った制御について説明する。
【0038】
運転者情報検出手段16Dでは、運転者情報検出器10で検出されたデータに基づいて、図3に示す運転者の閉眼時間割合X(t)及び頭部振動伝達率Y(t)を検出し、運転者状態判定手段16Aに出力する。また、検出された閉眼時間割合X(t)及び頭部振動伝達率Y(t)を運転者を示す識別情報に対応させて運転者情報データベース14に蓄積すると共に、検出された情報及び蓄積された情報を用いて、運転者個人のレベル(平均値)及び変動(標準偏差)を演算し、蓄積された情報を更新する。
【0039】
ここで、閉眼時間割合X(t)は、開眼時に対して一定以上(例えば、80%以上)眼を閉じている時間の割合であり、図3に示すように、X(t)のレベルが高いほど眠気(覚醒低下)が大きいことを表している。
【0040】
頭部振動伝達率Y(t)は、運転者の頭部動揺量のうち上下加速度において運転者に応じて決定された周波数帯域における加速度αhと、シート尻下部の上下加速度において加速度αhと同じ周波数帯域における加速度αsとから下記(1)式に示すように、加速度αsに対する加速度αhの比の自然対数より求められる。図3に示すように、頭部振動伝達率Y(t)のレベルが高いほど注意集中度が低い(視認の深さが浅い)ことを表している。
【0041】
Y(t)=ln(αh(t))−ln(αs(t)) …(1)
運転者情報データベースでは、運転者情報検出器10から入力された運転者情報データを、運転者個人のレベル(平均値)及び変動(標準偏差)のデータと共に記録し、記録された運転者個人のレベル(平均値)及び変動(標準偏差)のデータが更新される。
【0042】
運転者情報データベースの記録、更新された平均値(Xmean、Ymean)及び標準偏差(XSD、YSD)の各データは、判定閾値決定手段16Bにより読み出され、判定閾値の決定に使用される。また、判定閾値決定手段16Bには、車両・運転環境情報検出手段16Eで検出された車速、前車との車間距離、及びカーナビゲーションからの道路情報(道路種別)等の車両・運転環境情報が入力される。
【0043】
判定閾値決定手段16Bでは、車両・運転環境情報検出器12から入力された車両・運転環境情報に基づいて、下記表1に従って基準判定閾値(Xth、Yth)を決定し、運転者情報データベース14から入力された運転者個人のレベル(平均値)及び変動(標準偏差)に基づき、基準判定閾値(Xth、Yth)を補正した補正値(Xth*、Yth*)を算出して運転者状態判定手段16Aに出力する。
【0044】
【表1】


【0045】
表1に示すように、基準判定閾値(Xth、Yth)は、市街地道路、自動車専用道路(交通量が多く、かつ車間距離が短い)、自動車専用道路(交通量が少なく、かつ車速が低い)、及び山岳道路等の車両・運転環境情報に応じて定められている。
【0046】
表1の基準判定閾値を定義した際の運転者情報の平均値をMX0、MY0、標準偏差をSDX0、SDY0とすると、平均値MX、MY、標準偏差SDX、SDYを有する運転者では運転者状態判定閾値は次のXth*、Yth*ように補正される。
【0047】
th*=MX+SDX/SDX0(Xth−MX0) …(2)
th*=MY+SDY/SDY0(Yth−MY0) …(3)
ここで、運転者状態判定閾値Xthは、平均値MX0と標準偏差SDX0とによりMX0よりもa×SDX0大きい値として次の(4)式のように表わされる。
【0048】
th=MX0+aSDX0 …(4)
ただし、aは定数である。
【0049】
平均値MX、標準偏差SDXの運転者の判定閾値Xth*は、平均値MXと標準偏差SDXにより同様に以下の(5)式で表わされる。
【0050】
th*=MX+aSDX(aは定数)…(5)
ここで、aはXth、Xth*に共通の定数であり、(4)式よりa=1/SDX0(Xth−MX0)であるので、これを(5)式に代入すると上記(2)式が得られる。
【0051】
また、(3)式も次の式から同様に求められる。
【0052】
th=MY0+bSDY0
th*=MY+bSDY
ただし、bは定数である。
【0053】
運転者状態判定手段16Aでは、運転者情報検出手段16Dから入力されたデータX(t)及びY(t)を、判定閾値決定手段16Bから入力された運転者状態判定閾値補正値(Xth*、Yth*)と照合して図4に示すように運転者個人の運転者状態を判定し、運転支援制御手段16Cに出力する。
【0054】
図4の判定閾値を個人に適合させて補正した値に基づいた判定は、下記表2の注意指標と運転者状態との関係から定められている。
【0055】
【表2】


【0056】
眠気が低く、かつ注意集中度が低い場合は漫然状態と判断され、眠気が低く、かつ注意集中度が高い場合は集中状態と判断され、眠気が高く、かつ注意集中度が低い場合は居眠り状態と判断され、眠気が高く、かつ注意集中度が高い場合は眠気葛藤状態と判断される。このときの眠気が低いか高いかを判定する閾値、及び注意集中度が低いか高いかを判定する閾値は、図4に示すように判定閾値決定手段16Bで決定された補正値が用いられる。
【0057】
運転支援制御手段16Cでは運転者状態判定手段16Aで判定された運転者状態に応じて、下記表3に示す運転者状態と運転支援制御例に従って最適な運転支援の種類、タイミングを決定し、運転支援手段20に出力する。運転支援手段20では、スピーカ20Aから危険警報を放音して呈示するか、情報呈示装置20Bに危険警報を表示する等によって呈示するか、またはスピーカ20Aから危険警報を放音すると共に情報呈示装置20Bに危険警報を呈示する。また、必要に応じて空調装置20Dを駆動する。
【0058】
【表3】


【0059】
表3に示す運転支援制御例について説明する。居眠り状態と判定された場合は、危険情報の呈示を早めると共に休憩を勧める呈示を行い、眠気葛藤状態と判定された場合は、周辺危険情報の呈示を早めると共に覚醒のための香り(マイナスイオンと併用しても可)を呈示し、漫然状態と判定された場合は、前方危険警報の呈示を早めると共にリフレッシュのための香りを呈示し、集中状態と判定された場合には、危険警報の呈示を上記の場合より遅くする。
【0060】
なお、上記運転支援制御において、居眠り状態や眠気葛藤状態と判定された場合に、シートベルト張力制御装置20Cによりシートベルト18の張力を大きくしてもよい。このように、シートベルトの張力を制御する場合には、シートベルトの張力の大きさ、張力を変更するタイミング、変更時間等を、居眠り状態と眠気葛藤状態とで異ならせてもよい。
【0061】
また、空調装置20Dを駆動してマイナスイオン、香り、酸素、音、及び振動の少なくとも1つを発生させる場合には、運転者状態に応じて、その発生タイミング、発生量、発生時間、及び発生種類の少なくとも1つを変更するようにしてもよい。例えば、振動を発生させる場合には、発生量として振幅を変更してもよいし、発生種類として周波数を変更してもよい。
【0062】
また、空調装置20Dを駆動して覚醒のための冷風を送風し、車内の温度を低下させるようにしてもよい。このように温度を制御する場合には、変更タイミングや、変更量、変更方向(温度を上げるか下げるか)、変更時間(温度を変更した状態を継続する時間)等を運転者状態に応じて変更することができる。
【0063】
なお、本実施の形態では、覚醒度を反映する運転者情報として閉眼時間割合を用いる場合を例に挙げて説明したが、閉眼時間割合に代えて、脳波、心拍状態、顔部画像の顔表情情報より計測され眠気状態を表す顔表情眠気値、または運転者が申告した自己申告眠気値を用いるようにしてもよい。
【0064】
また、頭部画像から頭部動揺量を検出する例について説明したが、頚部筋電図により頭部動揺量を測定するようにしてもよい。
【0065】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0066】
本実施の形態は、図5に示すように、第1の実施の形態に加えて、ドライバの視線及び顔向きを検出する検出器10Eを設けるようにしたものである。制御回路16の機能ブロック図は、図2と同様であるので図示を省略する。本実施の形態では、運転者情報として、覚醒度と注意集中度とを各々反映する複数の運転者情報を用い、これらの複数の運転者情報の組合せに基づいて運転者状態を詳細に判定する。本実施の形態では、覚醒度を反映する運転者情報として閉眼時間割合を用い、注意集中度を反映する運転者情報として頭部振動伝達率及び視対象割合を用いる。
【0067】
次に、第2の実施の形態の制御回路による運転支援制御について説明する。
【0068】
運転者情報検出手段16Dでは、運転者情報検出器10で検出されたデータに基づいて、図6に示す閉眼時間割合X(t)、運転者の頭部振動伝達率Y(t)、及び視対象割合Z(t)を検出し、運転者状態判定手段16Aに出力する。また、運転者情報データベース14にX(t)、Y(t)、及びZ(t)のデータを蓄積する。
【0069】
ここで、閉眼時間割合X(t)は、開眼時に対して一定以上(例えば、80%以上)眼を閉じている時間の割合であり、図6に示すように、X(t)のレベルが高いほど眠気(覚醒低下)が大きいことを表している。
【0070】
また、頭部振動伝達率Y(t)は、上記で説明したように、運転者の頭部動揺量のうち上下加速度において運転者に応じて決定された周波数帯域における加速度αhと、シート尻下部の上下加速度においてαhと同じ周波数帯数における加速度αsから次の(6)式により求められる値である。頭部振動伝達率Y(t)は、レベルが高い程注意集中度が低い(視認の深さが浅い)ことを表している。
【0071】
Y(t)=ln(αh(t))−ln(αs(t)) …(6)
そして、視対象割合Z(t)は、視対象を前方と前方以外の対象に分類し、各々の視線停留時間を集計した時間の割合である。前方への視線停留時間をEf(t)、前方以外の対象への視線停留時間をEn(t)とすると、以下の(7)式で表される。視対象割合Z(t)は、レベルが高い程注意が運転に集中していることを表している。
【0072】
Z(t)=Ef(t)/En(t)×100 …(7)
運転者情報検出手段16Dは、閉眼時間割合X(t)、頭部振動伝達率Y(t)、及び視対象割合Z(t)の各データを運転者情報データベース14に蓄積し、運転者個人のレベル(平均値)及び変動(標準偏差)のデータを演算し、記録されている平均値及び標準偏差データを更新する。記録及び更新された平均値(Xmean、Ymean、Zmean)、及び標準偏差(XSD、YSD、ZSD)の各データは、判定閾値決定手段16Bによって読み込まれる。
【0073】
車両・運転環境情報検出手段16Eでは、車両・運転環境情報検出器12で検出された車速、前車との車間距離、及びカーナビゲーションからの道路情報(道路種別)を取り込み、判定閾値決定手段16B及び運転支援制御手段16Cに出力する。
【0074】
判定閾値決定手段16Bでは、車両・運転環境情報検出手段16Eから入力された車両・運転環境情報に基づき、下記表4に従って基準判定閾値(Xth、Yth、Zth)を決定し、運転者情報データベース14から入力された運転者個人の平均値及び標準偏差に基づいて、基準判定閾値を補正した補正値(Xth*、Yth*、Zth*)を算出して運転者状態判定手段16Aに出力する。
【0075】
【表4】


【0076】
基準判定閾値(Xth、Yth、Zth)は、表1と同様に、市街地道路、自動車専用道路、及び山河道路等の車両・運転環境情報に応じて定められている。
【0077】
運転者状態判定手段16Aでは、運転者情報検出手段16Dから入力されたデータX(t)、Y(t)、及びZ(t)を、判定閾値決定手段16Bから入力された運転者状態判定闘値の補正値(Xth*、Yth*、Zth*)と照合して運転者状態を図6に基づいて判定し、運転支援制御手段16Cに出力する。
【0078】
本実施の形態では、運転者状態が、図7に基づいて、図4と同様に集中状態、漫然状態、眠気葛藤状態、及び居眠り状態のいずれかであるかを判定した後、集中状態及び眠気葛藤状態の各運転者状態について注意集中対象をZ(t)レベルで再度判定する。そして、Z(t)>Zth*のとき注意集中対象は運転と判定し、Z(t)<Zth*のとき注意集中対象は運転以外と判定する。
【0079】
運転支援制御手段16Cでは、運転者状態判定手段16Aで判定された運転者状態に応じて最適な運転支援の種類、タイミングを決定し、運転支援手段20に出力し、運転支援手段20によって次の表5に示すように運転支援を行う。
【0080】
【表5】


【0081】
表5の運転支援制御について説明すると、漫然状態、及び居眠り状態のときは、表3と同様に制御するが、眠気葛藤状態でかつ注意集中対象が運転のときは、周辺危険警報の呈示を早めると共に覚醒のための香りを呈示し、眠気葛藤状態でかつ注意集中対象が運転以外のときは、危険警報の呈示を早める。また、集中状態でかつ注意集中対象が運転のときは、危険情報の呈示を遅くし、集中状態でかつ注意集中対象が運転以外のときは、前方危険警報の呈示を早めると共に情報呈示装置等を用いて事故多発地点の案内を行う。
【0082】
なお、本実施の形態では、覚醒度を反映する運転者情報として閉眼時間割合を用いる場合を例に挙げて説明したが、閉眼時間割合に代えて、脳波、心拍状態、顔部画像の顔表情情報より計測され眠気状態を表す顔表情眠気値、または運転者が申告した自己申告眠気値を用いるようにしてもよい。
【0083】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、図8に示すように、第1の実施の形態の判定閾値決定手段に代えて、支援レベル選択手段16Fから入力された選択信号に応じて判定閾値を決定する判定閾値決定手段16Gを設けたものである。
【0084】
運転者情報検出手段16Dでは、第1の実施の形態と同様に、運転者の閉眼時間割合X(t)及び頭部振動伝達率Y(t)を検出し、運転者状態判定手段16Aに出力する。また、運転者情報データベース14にデータを蓄積する。
【0085】
ここで、閉眼時間割合X(t)は、上記と同様に、開眼時に対して一定以上(例えば80%以上)眼を閉じている時間の割合であり、X(t)が高いほど眠気(覚醒低下)が大きいことを表している。
【0086】
頭部振動伝達率Y(t)は、運転者の頭部動揺量のうち上下加速度において運転者に応じて決定された周波数帯域における加速度αhと、シート尻下部の上下加速度においてαhと同じ周波数帯域における加速度αSから上記の(1)式により求められる値である。Y(t)が高いほど注意集中度は低い(視認の深さが浅い)ことを表している。
【0087】
運転者情報データベース14では、運転者情報検出手段16Dから入力された運転者情報データを蓄積し、運転者個人のレベル(平均値)及び変動(標準偏差)のデータを記録・更新する。記録・更新された平均値(Xmean、Ymean)及び標準偏差(XSD、YSD)データを判定閾値決定手段16Gに出力する。
【0088】
支援レベル選択手段16Fでは、運転者が警報や支援を出す頻度を下記のように例えば、(1)〜(3)の3段階で選択する。この選択された結果は、判定閾値決定手段16Gに入力される。
【0089】
(1)お知らせモード:警報や支援が比較的多い
(2)ノーマルモード:通常の設定
(3)サイレントモード:警報や支援が比較的少ない
判定閾値決定手段16Gでは、支援レベル選択手段16Fで選択された支援レベルに基づいて、下記表6に従って基準判定閾値(Xth、Yth)を決定し、運転者情報データベース14から入力された運転者個人の平均値及び標準偏差に基づいて、補正値(Xth*、Yth*)を算出して運転者状態判定手段16Aに出力する。
【0090】
【表6】


【0091】
運転者状態判定手段16Aでは、運転者情報検出手段16Dから入力されたデータX(t)及びY(t)を判定閾値決定手段16Bから入力された運転者状態判定閾値補正値(Xth*、Yth*)と照合して運転者状態を判定し、運転支援制御手段16Cに出力する。
【0092】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0093】
本実施の形態は、図9に示すように、第1の実施の形態の加速度検出器10C及び加速度センサ10Dに代えて、操舵角を検出する操舵角センサ10Fを設けるようにしたものである。制御回路16の機能ブロック図は、図2と同様であるので図示を省略する。本実施の形態では、運転者情報として、覚醒度と運転能力とを各々反映する複数の運転者情報を用い、これらの複数の運転者情報の組合せに基づいて運転者状態を詳細に判定する。本実施の形態では、覚醒度を反映する運転者情報として閉眼時間割合を用い、運転能力を反映する運転者情報として低周波数操舵量を用いる。
【0094】
次に、第4の実施の形態の制御回路による運転支援制御について説明する。
【0095】
運転者情報検出手段16Dでは、運転者情報検出器10で検出されたデータに基づいて、図10に示す運転者の閉眼時間割合X(t)、低周波数操舵量比Y(t)を検出し、運転者状態判定手段16Aに出力する。また、運転者情報データベース14にX(t)及びY(t)のデータを蓄積する。
【0096】
ここで、閉眼時間割合X(t)は、第1の実施の形態と同様に、開眼時に対して一定以上(例えば、80%以上)眼を閉じている時間の割合であり、図10に示すように、X(t)のレベルが高いほど眠気(覚醒低下)が大きいことを表している。
【0097】
また、低周波数操舵量比Y(t)は、操舵角センサ10Fによって、2つの異なる周波数帯域の操舵量、すなわち、基準操舵量θ0(t)(周波数帯域f0)と操舵量θ(t)(周波数帯域f)とを測定し、以下の(8)式に示すように、基準操舵量θ0(t)と操舵量θ(t)との比率の自然対数により求められる値である。低周波数操舵量比Y(t)は、レベルが高いほど操舵の滑らかさ(操舵能力)が低下していることを示している。
Y(t)=ln(θ(t))−ln(θ0(t)) …(8)
【0098】
運転者情報検出手段16Dは、閉眼時間割合X(t)及び低周波数操舵量比Y(t)の各データを運転者情報データベース14に蓄積し、運転者個人のレベル(平均値)及び変動(標準偏差)のデータを演算し、記録されている平均値及び標準偏差データを更新する。記録及び更新された平均値(Xmean、Ymean)、及び標準偏差(XSD、YSD)の各データは、判定閾値決定手段16Bによって読み込まれる。
【0099】
車両・運転環境情報検出手段16Eでは、車両・運転環境情報検出器12で検出された車速、前車との車間距離、及びカーナビゲーションからの道路情報(道路種別)を取り込み、判定閾値決定手段16B及び運転支援制御手段16Cに出力する。
【0100】
判定閾値決定手段16Bでは、車両・運転環境情報検出手段16Eから入力された車両・運転環境情報に基づき、下記表7に従って基準判定閾値(Xth1、Xth2、Yth1、Yth2)を決定する。基準判定閾値(Xth1、Xth2、Yth1、Yth2)は、表1と同様に、市街地道路、自動車専用道路、及び山河道路等の車両・運転環境情報に応じて定められている。ここでは、閉眼時間割合X(t)及び低周波数操舵量比Y(t)に対してそれぞれ2つの判定閾値が決定される。
【0101】
【表7】


【0102】
更に、判定閾値決定手段16Bでは、運転者情報データベース14から入力された運転者個人の平均値及び標準偏差に基づいて、基準判定閾値を補正した補正値(Xth1*、Xth2*、Yth1*、Yth2*)を算出して運転者状態判定手段16Aに出力する。
【0103】
ここで、基準判定閾値の補正について詳述する。
表7の基準判定閾値を定義した際の運転者情報の平均値をMX0、MY0、標準偏差をSDX0、SDY0とすると、平均値MX、MY、標準偏差SDX、SDYを有する運転者では運転者状態判定閾値Xth1、Xth2、Yth1、Yth2は次のXth1*、Xth2*、Yth1*、Yth2*に補正される。
【0104】
th1*=MX+SDX/SDX0(Xth1−MX0) …(9)
th2*=MX+SDX/SDX0(Xth2−MX0) …(10)
th1*=MY+SDY/SDY0(Yth1−MY0) …(11)
th2*=MY+SDY/SDY0(Yth2−MY0) …(12)
【0105】
ここで、運転者状態判定閾値Xth1は、平均値MX0と標準偏差SDX0とによりMX0よりもa×SDX0大きい値として次の(13)式のように表わされる。
th1=MX0+aSDX0 …(13)
ただし、aは定数である。
【0106】
平均値MX、標準偏差SDXの運転者の判定閾値Xth1*は、平均値MXと標準偏差SDXにより同様に以下の(14)式で表わされる。
【0107】
th1*=MX+a1SDX(a1は定数)…(14)
ここで、a1はXth1、Xth1*に共通の定数であり、(13)式よりa1=1/SDX0(Xth1−MX0)であるので、これを(14)式に代入すると上記(9)式が得られる。
【0108】
また、(10)〜(12)式も次の式から同様に求められる。
【0109】
th2=MX0+a2SDY0、 Xth2*=MX+a2SDX (a2は定数)
th1=MY0+b1SDY0、 Yth1*=MY+b1SDY (b1は定数)
th2=MY0+b2SDY0、 Yth2*=MY+b2SDY (b2は定数)
【0110】
運転者状態判定手段16Aでは、運転者情報検出手段16Dから入力されたデータX(t)及びY(t)を、判定閾値決定手段16Bから入力された運転者状態判定闘値の補正値(Xth1*、Xth2*、Yth1*、Yth2*)と照合して運転者状態を図11に基づいて判定する。
【0111】
図11の判定閾値を個人に適合させて補正した値に基づいた判定は、下記表8の眠気と運転者状態との関係、及び表9の運転能力指標と運転者状態との関係から定められている。
【0112】
【表8】


【0113】
【表9】


【0114】
表8に示すように、X(t)が図11において0で示された領域に位置する場合には、覚醒低下はなく、眠気なしと判定され、1で示された領域に位置する場合には、覚醒低下があり、眠気があると判定され、2で示された領域に位置する場合には、大幅な覚醒低下状態であって、眠気は大きいと判定される。
【0115】
また、表9に示すように、Y(t)が図11においてAで示された領域に位置する場合には、運転能力低下はないと判定され、Bで示された領域に位置する場合には、ふらつきが発生または車間距離維持能力低下しており、運転能力が低下していると判定され、Cで示された領域に位置する場合には、車線逸脱または追突の可能性が大きく、運転能力低下は大きいと判定される。
【0116】
運転者状態判定手段16Aは、運転者状態を図11に示される9個の運転者状態(0−A状態〜2−C状態)のいずれかに判定し、判定結果を運転支援制御手段16Cに出力する。
【0117】
運転支援制御手段16Cでは運転者状態判定手段16Aで判定された運転者状態に応じて、下記表10に示す運転者状態と運転支援制御例に従って最適な運転支援の種類、タイミングを決定し、運転支援手段20に出力する。
【0118】
【表10】


【0119】
表10に示す運転支援制御例について説明する。0−A状態と判定された場合には、覚醒度低下はなく、運転能力の低下もないため、覚醒向上・維持や注意喚起のための運転支援はせず、前方の渋滞情報のみを呈示する。0−B状態と判定された場合には、運転能力に低下が見られ漫然状態であるため、周辺危険情報及び事故多発地点案内の呈示を行うと共に、周辺に対する注意を喚起するための情報呈示を早める。0−C状態と判定された場合には、眠気はないが、脇見運転等により運転能力が大幅に低下した可能性が高いため、前方危険情報や事故多発地点案内を呈示すると共に、前方に対する注意を喚起するための情報呈示を早める。また、車両運動制御において、制動力を上げ、運転能力低下をカバーする。
【0120】
1−A状態と判定された場合には、運転能力の低下はないが、眠気があるため、覚醒向上および維持のための振動や香り、あるいは酸素を発生させると共に、休憩誘導メッセージの呈示や事故多発地点案内の呈示を行う。1−B状態と判定された場合には、眠気があり運転能力も低下しているため、覚醒向上および維持のための振動や香り、あるいは酸素を1−A状態のときよりも長く発生させると共に、駐車を誘導してストレッチを行わせるためのメッセージを呈示し、周辺に対する注意を喚起するための情報呈示や車線逸脱警報の出力を早めに行う。1−C状態と判定された場合には、眠気があり運転能力が大幅に低下しているため、覚醒向上および維持のための振動や香り、あるいは酸素を1−B状態のときよりも長く発生させる。更に、路肩停車を誘導して覚醒のための体操を行わせるためのメッセージを呈示すると共に、周辺に対する注意を喚起するための情報呈示や車線逸脱警報の出力だけでなく、前方に対する注意を喚起するための情報や追突警報を早めに行う。更にまた、車両運動制御において、操舵反力を上げ、運転能力低下をカバーする。
【0121】
2−A状態と判定された場合には、運転能力低下はないが覚醒度低下が大きいため、覚醒向上および維持のための音や振動を発生させたり、冷風を出したりする。また、休憩を誘導するメッセージや、事故多発地点案内を呈示する。2−B状態と判定された場合には、覚醒度低下が大きく運転能力の低下もみられるため、2−A状態よりも長く覚醒向上および維持のための音や振動を発生させたり、冷風を出したりする。また、駐車を誘導してストレッチを行わせるためのメッセージを呈示し、周辺に対する注意を喚起するための情報呈示や車線逸脱警報の出力を早めに行う。2−C状態と判定された場合には、覚醒度低下および運転能力低下が大きいため、2−B状態よりも音量を大きくして覚醒向上および維持のための音を発生させたり、2−B状態よりも長く振動を発生させたり、冷風を出したりする。また、路肩停車を誘導して覚醒のための体操を行わせるためのメッセージを呈示すると共に、周辺に対する注意を喚起するための情報呈示や車線逸脱警報の出力だけでなく、前方危険情報や事故多発地点案内を早めに行う。更にまた、車両運動制御において、制動力及び操舵反力を上げ、運転能力低下をカバーする。
【0122】
なお、運転者状態に応じて音や香り、振動の発生時間や強さや大きさ、種類を変えてもよいし、情報を表示する場合には、その色や文字・記号の大きさを変えて目立ちやすくしてもよい。また、車両運動制御においても、制動力や操舵反力の大きさを調整するようにしてもよい。
【0123】
なお、運転能力を反映する運転者情報として、低周波数操舵量に代えて、アクセルペダル操作量やブレーキペダル操作量を用いるようにしてもよい。この場合には、図9に示すように、アクセルペダル操作量及びブレーキペダル操作量を検出するアクセル・ブレーキペダル操作量センサ10Gがアクセルペダル及びブレーキペダルに取り付けられる。この場合、アクセルペダル操作量を検出するアクセルペダル操作量センサのみ、またはブレーキペダル操作量を検出するブレーキペダル操作量センサのみを取り付けるようにしてもよい。また、車両・運転環境情報検出器12で検出された前車との車間距離と、アクセル・ブレーキペダル操作量センサ10Gの検出結果とに基づいて、前車との車間距離維持のためのアクセルペダル操作量またはブレーキペダル操作量を検出し、これを運転能力を反映する運転者情報として用いてもよい。
【0124】
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。
【0125】
本実施の形態は、図12に示すように、第1の実施の形態の閉眼時間検出器10Bに代えて、車両に搭載され、車両が走行する車線を含み車両周辺を撮影する車外環境用カメラ10Hと、車外環境用カメラ10Hで撮影された画像に基づいて、車線幅方向の車両位置の変動を示す車両ふらつき度を検出する車両ふらつき検出器10Jを設けるようにしたものである。
【0126】
図13は、本実施の形態における制御回路16の機能ブロック図であり、第3の実施の形態の図8の構成に加え、運転支援選択手段22が設けられている。運転支援選択手段22は、運転者自身が運転支援内容を予め選択するための手段であって、例えば、表示された運転支援内容の選択項目からボタン等により運転者状態に応じて実施させる運転支援内容を選択できるような構成になっている。
【0127】
本実施の形態では、運転者情報として、注意集中度と運転能力とを各々反映する複数の運転者情報を用い、これらの複数の運転者情報の組合せに基づいて運転者状態を詳細に判定する。本実施の形態では、注意集中度を反映する運転者情報として頭部動揺量より求まる頭部振動伝達率を用い、運転能力を反映する運転者情報として車両ふらつき度を用いる。
【0128】
次に、第5の実施の形態の制御回路による運転支援制御について説明する。
【0129】
運転者情報検出手段16Dは、運転者の頭部振動伝達率X(t)及び車両ふらつき度Y(t)を検出し、運転者状態判定手段16Aに出力する。また、運転者情報データベース14にX(t)及びY(t)のデータを蓄積する。
【0130】
ここで、頭部振動伝達率X(t)は、上記で説明したように、運転者の頭部動揺量のうち上下加速度において運転者に応じて決定された周波数帯域における加速度αhと、シート尻下部の上下加速度においてαhと同じ周波数帯数における加速度αsから次の(15)式により求められる値である。頭部振動伝達率X(t)は、レベルが高い程注意集中度が低い(視認の深さが浅い)ことを表している。
X(t)=ln(αh(t))−ln(αs(t)) …(15)
【0131】
また、車両ふらつき度Y(t)は、車線幅方向の車両位置の変動を示す値であって、ここでは、車両ふらつき度Y(t)として車線内の車両位置(例えば車線幅の中心位置と車両幅の中心位置との距離)の標準偏差を算出する。車両ふらつき検出器10Jは、車外環境用カメラ10Hで撮影された画像に基づいて車線に対する車両位置を検出し、該標準偏差を算出する。この車両ふらつき度Y(t)のレベルが高いほど、操舵能力が低下していることを表している。
【0132】
運転者情報検出手段16Dは、頭部振動伝達率X(t)及び車両ふらつき度Y(t)の各データを運転者情報データベース14に蓄積し、運転者個人のレベル(平均値)及び変動(標準偏差)のデータを演算し、記録されている平均値及び標準偏差データを更新する。記録及び更新された平均値(Xmean、Ymean)、及び標準偏差(XSD、YSD)の各データは、判定閾値決定手段16Bによって読み込まれる。
【0133】
車両・運転環境情報検出手段16Eでは、車両・運転環境情報検出器12で検出された車速、前車との車間距離、及びカーナビゲーションからの道路情報(道路種別)を取り込み、判定閾値決定手段16B及び運転支援制御手段16Cに出力する。
【0134】
運転者情報データベース14では、運転者情報検出手段16Dから入力された運転者情報データを蓄積し、運転者個人のレベル(平均値)及び変動(標準偏差)のデータを記録・更新する。記録・更新された平均値(Xmean、Ymean)及び標準偏差(XSD、YSD)データを判定閾値決定手段16Gに出力する。
【0135】
支援レベル選択手段16Fでは、運転者が予め警報や支援を出す頻度を第3の実施の形態と同様に「お知らせモード」、「ノーマルモード」、及び「サイレントモード」の3段階で選択する。運転者により選択された結果は、判定閾値決定手段16Gに入力される。
【0136】
判定閾値決定手段16Gでは、支援レベル選択手段16Fで選択された支援レベルに基づいて、下記表11に従って基準判定閾値(Xth1、Xth2、Yth1、Yth2)を決定し、運転者情報データベース14から入力された運転者個人の平均値及び標準偏差に基づいて、補正値(Xth1*、Xth2*、Yth1*、Yth2*)を算出して運転者状態判定手段16Aに出力する。
【0137】
【表11】


【0138】
運転者状態判定手段16Aでは、運転者情報検出手段16Dから入力されたデータX(t)及びY(t)を判定閾値決定手段16Bから入力された運転者状態判定閾値補正値(Xth1*、Xth2*、Yth1*、Yth2*)と照合して運転者状態を判定し、運転支援制御手段16Cに出力する。
【0139】
運転支援制御手段16Cは、予め運転支援選択手段22で選択された選択結果に応じた運転支援を実施する。運転者は、運転者状態判定手段16Aで判定される運転者状態に応じて実施する支援内容を運転開始前に予め運転支援選択手段22で予め選択し、設定しておく。設定内容は、表10のように各運転者状態に応じて記憶しておく。このように、運転者自身が運転支援内容を選択できるため、より運転者個人に適合した運転支援を実施することができる。
【0140】
なお、上記各実施の形態では、覚醒度を反映する運転者情報、注意集中度を反映する運転者情報、及び運転能力を反映する運転者情報の中から選択された2つの運転者情報を検出して運転者状態を判定する例について説明したが、覚醒度を反映する運転者情報、注意集中度を反映する運転者情報、及び運転能力を反映する運転者情報の3つの運転者情報を検出して運転者状態を判定するようにしてもよい。また、運転者自身が、検出可能な運転者情報の中から運転者状態を判定するために用いる少なくとも2つの運転者情報を予め選択しておき、選択した運転者情報を用いるようにしてもよい。
【0141】
自動車運転において、覚醒低下による注意レベルの低下や、運転への注意集中不足、運転能力の低下は、ブレーキ等の反応遅れや歩行者等の見逃し、誤操作、判断ミスなどの原因となり危険であるが、以上説明したように上記各実施の形態によれば、運転者状態を走行状態に影響されることなく詳細に判別できる。例えば、集中状態、居眠り状態の他、漫然状態(覚醒しているが注意集中が低い状態)や眠気と葛藤状態(覚醒低下してるが注意集中が高い状態)等を分離して判別できる。
【0142】
また、運転者個人に適合させ、車両・運転環境状態に応じた方法で的確に判定できるので、その時の運転者状態に応じた最適な運転支援を実施することができる。逆に、運転環境に応じた良好な運転者状態の時には警報の呈示を遅くすること等により、不必要な支援による煩わしさを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す概略図である。
【図2】上記第1の実施の形態の制御回路の各部の機能を示す機能ブロック図である。
【図3】運転者の閉眼時間割合X(t)及び頭部振動伝達率Y(t)の時間変化を示す線図である。
【図4】判定された運転者個人の運転者状態の種別を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す概略図である。
【図6】閉眼時間割合X(t)、運転者の頭部振動伝達率Y(t)、及び視対象割合Z(t)の時間変化を示す線図である。
【図7】判定された運転者個人の運転者状態の種別を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態の制御回路の各部の機能を示す機能ブロック図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態を示す概略図である。
【図10】運転者の閉眼時間割合X(t)及び低周波数操舵量比Y(t)の時間変化を示す線図である。
【図11】判定された運転者個人の運転者状態の種別を示す図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態を示す概略図である。
【図13】上記第5の実施の形態の制御回路の各部の機能を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0144】
10 運転者情報検出器
10A カメラ
10B 閉眼時間検出器
10C 加速度検出器
10D 加速度センサ
10E 視線・顔向き検出器
10F 操舵角センサ
10G アクセル・ブレーキペダル操作量センサ
10H 車外環境用カメラ
10J 車両ふらつき検出器
12 車両・運転環境情報検出器
14 運転者情報データベース
16 制御回路
20 運転支援手段
20A スピーカ
20B 情報呈示装置
20C シートベルト張力制御装置
20D 空調装置
20E シート振動装置
【出願人】 【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
【出願日】 平成18年10月10日(2006.10.10)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
【公開番号】 特開2007−265377(P2007−265377A)
【公開日】 平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願番号】 特願2006−276353(P2006−276353)