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【発明の名称】 体積ホログラム記録用感光性組成物、及びそれを用いた記録媒体ならびに体積ホログラム形成方法
【発明者】 【氏名】水谷 謙三

【氏名】佐藤 晶彦

【氏名】川畑 政巳

【氏名】住吉 岩夫

【要約】 【課題】高屈折率変調を有し、なおかつ耐熱性に優れた体積ホログラムを与える感光性組成物およびそれを用いた体積ホログラム製法を提供する。

【解決手段】レーザー光またはコヒーレンス性の優れた光の干渉によって生じる干渉縞を屈折率の異なる縞として記録するのに使用される体積ホログラム記録用感光性組成物に於いて、該組成物が、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光またはコヒーレンス性の優れた光の干渉によって生じる干渉縞を屈折率の異なる縞として記録するのに使用される体積ホログラム記録用感光性組成物に於いて、該組成物が、
(a)常温で液状であるカチオン重合性化合物、
(b)ラジカル重合性化合物、
(c)上記のレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光に感光して成分(b)を重合させる光ラジカル重合開始剤系、および
(d)70℃未満では重合を開始せず、同温度以上の加熱によりカチオン重合開始能を発現する、ベンジルアンモニウム塩系化合物であるカチオン重合開始剤系
の各成分を含むもの、または上記(a)〜(d)成分に加えて高分子結合材を含むこと(ただし、該組成物が置換基を有してもよい芳香環または複素環を分子内に有するエポキシ化合物、芳香環および複素環を本質的に分子内に有しない重合可能なエチレン性不飽和基を1つ以上有する化合物、芳香環および複素環を分子内に有しない高分子結合材およびカチオン重合開始剤系を含有する場合を除く。)を特徴とする、体積ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項2】
成分(a)の平均屈折率が成分(b)のそれより低い請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ラジカル重合性化合物(b)が9,9−ジアリールフルオレン骨格を有し、常温で液体である請求項1記載の組成物。
【請求項4】
上記のレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光に対しては低感光性であり、別の波長の光に感光して成分(a)を重合させる光カチオン重合開始剤系(e)をさらに含有する請求項1記載の組成物。
【請求項5】
紫外線吸収剤を更に含有する請求項1記載の組成物。
【請求項6】
同一または異なる2つの透明な支持体の間に請求項1の組成物からなる記録層を有する体積ホログラムの記録媒体。
【請求項7】
請求項6の記録媒体にレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光の干渉によって生じる干渉縞を露光し、続いて該記録媒体を加熱処理する体積ホログラムの記録方法。
【請求項8】
請求項6の記録媒体にレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光の干渉によって生じる干渉縞を露光し、続いて該記録媒体への紫外および/または可視域の光の全面露光と加熱処理を同時または逐次に行う体積ホログラムの記録方法。
【請求項9】
紫外および/または可視域の光の全面露光工程で発生する熱を利用して加熱処理を行う請求項8の記録方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、体積ホログラム記録用感光性組成物及びそれを用いた記録媒体ならびに体積ホログラムの記録方法に関する。より詳しくは本発明は、屈折率変調ならびに耐熱性の優れたホログラムを与える体積ホログラム記録用感光性組成物及びそれを用いてホログラムを容易に製造できる体積ホログラムの記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは波長の等しい2つの光(物体光と参照光)を干渉させて物体光の波面を干渉縞として感光材料に記録したもので、このホログラムに元の参照光と同一条件の光を当てると干渉縞による回折現象が生じ、元の物体光と同一の波面が再生できる。
【0003】
干渉縞の記録形態によりホログラムはいくつかの種類に分類されるが、近年、干渉縞を記録層内部の屈折率差で記録するいわゆる体積ホログラムが、その高い回折効率や優れた波長選択性により、三次元ディスプレーや光学素子などの用途に応用されつつある。
【0004】
このような体積ホログラムを記録する材料としては、従来から芸術分野で使用されているハロゲン化銀や重クロム酸ゼラチンを使用したものが一般的である。しかしながら、これらは湿式現像や煩雑な現像定着処理を必要とすることからホログラムを工業的に生産するには不適であり、記録後も吸湿などにより像が消失するなどの問題点を有している。
【0005】
これらの問題点を解決するために、フォトポリマーを使用して単純な乾式処理だけで体積ホログラムを作製することが米国特許第3,658,526号、同第3,993,485号などで提案されている。また、フォトポリマーによるホログラムの推定形成メカニズムについても、「応用光学(APPLIED OPTICS)」(B.L.ブース(B.L.Booth),第14巻,No3,PP593−601(1975)及びW.J.トムリンソン(W.J.Tomlinson),E.A.チャンドロス(E.A.Chandross)など,第15巻,No.2,PP534〜541(1976)などに記載されている。しかしながらこれらの技術は、ホログラムの最も重要な性能である屈折率変調が前述の従来技術には及ばなかった。
【0006】
近年、屈折率変調の優れたフォトポリマー材料として、特開平5−107999号に記載されている屈折率の異なるラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物を併用するフォトポリマー材料が提案されている。この材料を用いると、乾式処理でしかも比較的屈折率変調の大きい体積ホログラムが得られるものの、50℃〜100℃といった熱のかかる環境下では経時で回折効率が低下したり、再生波長が変化したりする問題点があった。したがって、これらの問題点を解決し、熱のかかる環境下でも初期の性能を保持する体積ホログラムの出現が望まれている。
【特許文献1】米国特許第3,658,526号
【特許文献2】米国特許第3,993,485号
【特許文献3】特開平5−107999号
【非特許文献1】「応用光学(APPLIED OPTICS)」(B.L.ブース(B.L.Booth),第14巻,No3,PP593−601(1975)
【非特許文献2】W.J.トムリンソン(W.J.Tomlinson),E.A.チャンドロス(E.A.Chandross)など,第15巻,No.2,PP534〜541(1976)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高屈折率変調を有し、なおかつ耐熱性に優れた体積ホログラムを与える感光性組成物及びそれを用いた体積ホログラムの製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明はレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光の干渉によって生じる干渉縞を屈折率の異なる縞として記録するのに使用される体積ホログラム記録用感光性組成物に於いて、該組成物が、
(a)常温で液状であるカチオン重合性化合物、
(b)ラジカル重合性化合物、
(c)上記のレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光に感光して成分(b)を重合させる光ラジカル重合開始剤系、および
(d)熱潜在性を有するカチオン重合開始剤系
の各成分を含むことを特徴とする、体積ホログラム記録用感光性組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は上記組成物を用いた記録媒体および体積ホログラムの記録方法を提供する。更に、本発明は上記組成物を用いて得られたホログラムを提供する。
【0010】
本発明で用いられるカチオン重合性化合物(a)は、レーザー光またはコヒーレンス性の優れた光の照射(以下、第1露光という)によって後述のラジカル重合性化合物(b)を重合させた後、その次に行う加熱処理あるいは全面露光(以下、後露光と言う)によって組成物中の熱潜在性を有するカチオン重合開始剤系(d)や光カチオン重合開始剤系(e)から発生したブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合するものである。カチオン重合性化合物(a)としては、ラジカル重合性化合物(b)の重合が終始比較的低粘度の組成物中で行なわれる様に常温液状のものを用いる。そのようなカチオン重合性化合物(a)としては、例えば「ケムテク・オクト・(Chemtech.Oct.)」(J.V.クリベロ(J.V.Crivello)、第624頁、(1980)]、特開昭62−149784号公報、日本接着学会誌[第26巻、No.5,第179−187頁(1990)]などに記載されているような化合物が挙げられる。
【0011】
カチオン重合性化合物(a)の具体例としては、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、パラt−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、1,2,5,6−ジエポキシ−4,7−メタノペルヒドロインデン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3',4'−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4',5'−エポキシ−2'−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、ビニル−2−クロロエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、及び式
【0012】
【化1】


で表わされる化合物が挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。
【0013】
本発明に使用するラジカル重合性化合物(b)は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。またラジカル重合性化合物(b)の平均屈折率は上記カチオン重合性化合物(a)のそれよりも大きいことが好ましい。化合物(b)の平均屈折率が化合物(a)のそれ以下の場合は、屈折率変調が不十分となり好ましくない。
【0014】
ラジカル重合性化合物(b)の具体例としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート、ジフェン酸(2−メタクリロキシエチル)モノエステル、ベンジルアクリレート、2,3−ジブロムプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、N−ビニルカルバゾール、2−(9−カルバゾリル)エチルアクリレート、トリフェニルメチルチオアクリレート、2−(トリシクロ[5,2,102・6]ジブロモデシルチオ)エチルアクリレート、S−(1−ナフチルメチル)チオアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジフェン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、2,3−ナフタリンジカルボン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、4,5−フェナントレンジカルボン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、ジブロムネオペンチルグリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,3−ビス[2−アクリロキシ−3−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)プロポキシ]ベンゼン、ジエチレンジチオグリコールジアクリレート、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジプロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)スルホン、及び上記におけるアクリレートをメタクリレートに変えた化合物、更には特開平2−247205号公報や特開平2−261808号公報に記載されているような分子内に少なくともS原子を2個以上含む、エチレン性不飽和二重結合含有化合物が挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。
【0015】
本発明のラジカル重合性化合物(b)はまた、9,9−ジアリールフルオレン骨格を有し、かつ常温で液状であり、分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和二重結合を有するものであってもよい。これを用いた場合、高屈折率変調が得られやすい。9,9−ジアリールフルオレン骨格を有し、かつ常温で液状であるラジカル重合性化合物は式
【0016】
【化2】


【0017】
,R:少なくともどちらか一方の末端には、アクリロイル基またはメタクリロイル基などのラジカル重合性基を有し、この基とベンゼン環は少なくとも1つのオキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖、ウレタン結合、アミド結合などを介して結合している。
【0018】
〜Xの具体例:H、アルキル基(C〜C)、アルコキシ基(C〜C)、アミノ基、ジアルキルアミノ基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン基などで表される。
【0019】
これらの中で特にR、Rにおいてアクリロイル基またはメタクリロイル基がオキシエチレン鎖またはオキシプロピレン鎖を介してベンゼン環と結合しているものが好ましい。それらの具体例としては、9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシトリエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシテトラエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシジプロポキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジメチル)フルオレンおよび上記の「アクリロキシ」を「メタクリロキシ」に変えた化合物などがある。
【0020】
本発明に使用する光ラジカル重合開始剤系(c)は、ホログラム作製のための第1露光によって活性ラジカルを生成し、その活性ラジカルが、本発明の構成成分の1つである上記ラジカル重合性化合物(b)を重合させるような開始剤系であればよい。そのような光ラジカル重合開始剤系(c)としては、例えば米国特許第4,766,055号、同第4,868,092号、同第4,965,171号、特開昭54−151024号公報、同58−15,503号公報、同58−29,803号公報、同59−189,340号公報、同60−76735号公報、特開平1−28715号公報、特願平3−5569号及び「プロシーディングス・オブ・コンフェレンス・オン・ラジエーション・キュアリング・エイジア」 (PROCEEDINGS OF CONFERENCE ON RADIATION CURING ASIA)」(P.461〜477、1988年)等に記載されている公知な開始剤系が使用出来るがこの限りでない。
【0021】
尚、本明細書中「開始剤系」とは、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いることが出来る、ことを意味する。光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、最終的なホログラムに無色透明性が要求される場合(例えば、自動車等のヘッドアップディスプレーとして使用する場合)の増感剤としては、特開昭58−29803号公報、特開平1−287105号公報、特願平3−5569号に記載されているようなシアニン系色素の使用が好ましい。
【0022】
シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、本発明における後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することでホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明なホログラムが得られる。シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3'−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2'チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3',9−ジエチル−2,2'チアカルボシアニンベタイン、3,3',9−トリエチル−2,2'−チアカルボキシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3'−カルボキシメチル−2,2'−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3',9−トリエチル−2,2'−(4,5,4',5'−ジベンゾ)チアカルボシアニン・ヨウ素塩、2−[3−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)−1−プロペニル]−6−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)エチリデンイミノ]−3−エチル−1,3,5−チアジアゾリウム・ヨウ素塩、2−[[3−アリル−4−オキソ−5−(3−n−プロピル−5,6−ジメチル−2−ベンゾチアゾリリデン)−エチリデン−2−チアゾリニリデン]メチル]3−エチル−4,5−ジフェニルチアゾリニウム・ヨウ素塩、1,1',3,3,3',3'−ヘキサメチル−2,2'−インドトリカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3'−ジエチル−2,2'−チアトリカルボシアニン・過塩素酸塩、アンヒドロ−1−エチル−4−メトキシ−3'−カルボキシメチル−5'−クロロ−2,2'−キノチアシアニンベタイン、アンヒドロ−5,5'−ジフェニル−9−エチル−3,3'−ジスルホプロピルオキサカルボシアニンヒドロキシド・トリエチルアミン塩、2−[3−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)−1−プロペニル]−6−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)エチリデンイミノ]−3−エチル−1,3,5−チアジアゾリウム・ヨウ素塩が挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。
【0023】
シアニン系色素と組み合わせて用いてもよい活性ラジカル発生化合物としては、上記の特開昭58−29803号公報、特開平1−287105号公報、特願平3−5569号に記載されているようなジアリールヨードニウム塩類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム塩類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム塩類の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4'−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4'−ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウム、3,3'−ジニトロジフェニルヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネートなどが例示される。又2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)ー1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4'−メトキシ−1'−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが例示される。
【0024】
本発明で用いられる熱潜在性を有するカチオン重合開始剤系(d)は、熱の作用によりブレンステッド酸やルイス酸などの開始種を発生してカチオン重合性化合物の重合を開始できるものであれば特に限定されないが、下記のような熱潜在性を有するカチオン重合開始剤系の使用が好ましい:
【0025】
一般式、
【化3】


【0026】
[式中、各Rは、同一でも異なってもよい−COR、−R、ヒドロキシ基、シアノ基又はアルキル基で置換されていても良いアミノ基を表わし、各Rは、同一でも異なってもよいH、−R又はハロゲン原子を表わし、Aは、
【0027】
【化4】


を表わし、
【0028】
各Rは、同一でも異なってもよい炭素数1〜12のアルキル(これらは互いに芳香環を形成しても良い)若しくはアルケニル基(これらは、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、炭素数1〜4のアルコキシ若しくはアルカノイルオキシ基で置換されていてもよい。)又はフェニル基(これは、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、アミノ、−NR、−R若しくは−OR基で置換されていてもよい。)を表わし、Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル若しくはシクロアルキル基を表わし、Rは、H、−R、−OR、ハロゲン原子又はニトロ基を表わし、XはAsF、SbF、BF、PF、ClO、FeCl、CFSO、RSO又はRCOOを表わす。]
で表わされる化合物、及び
【0029】
一般式、
【化5】


【0030】
[式中、各Rは、同一でも異なってもよいH、−R、炭素数2〜3のアルケニル基又は−Rを表わし、各Rは、同一でも異なってもよい−R、炭素数2〜3のアルケニル基又は−Rを表わし、各Rは、同一でも異なってもよいH、ヒドロキシ基、−R、−OR又は−Rを表わし、Rはフェニル基(これは、ハロゲン原子、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、−NHR、−R又は−OR基で置換されていてもよい。)を表わし、mは1〜4の整数を表わし、R及びXは前記と同義を表わす。]
で表わされる化合物、及び、
【0031】
一般式、
【化6】


【0032】
[式中、Rは、同一でも異なってもよい炭素数1〜20のアルキル(これらは互いに環と形成しても良い)もしくはアルケニル基(これらは、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、炭素数1〜4のアルコキシもしくは、アルカノイルオキシ基で置換されていてもよい。)又はフェニル基(これは、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、RもしくはOR基で置換されていても良い)を表わす]
で表わされる化合物が挙げられる。
【0033】
尚、本明細書中において「熱潜在性」とは、ある温度以上の加熱によりはじめて機能を発現する性質をいう。
【0034】
これらの中で、屈折率変調、耐熱性、耐光性の優れたホログラムを得るのに特に好ましいのは一般式[I]で表されるベンジルアンモニウム塩系化合物である。
【0035】
具体例としては、カチオン部としてN−ベンジル−N,N−ジメチルアニリニウム、N−(p−メトキシベンジル)−N,N−ジメチルアニリニウム、N−(p−メチルベンジル)−N,N−ジメチルアニリニウム、N−(p−t−ブチルベンジル)−N,N−ジメチルアニリニウム、N−(p−クロロベンジル)−N,N−ジメチルアニリニウム、N−(p−ニトロベンジル)−N,N−ジメチルアニリニウム、N−ベンジル−N,N−ジメチル−N−(p−トリル)アンモニウム、1−ベンジル−2−クロロピリジニウム、1−(p−メトキシベンジル)−2−クロロピリジニウム、1−(p−フェニルベンジル)−2−メチルピリジニウム、1−(p−メトキシベンジル)−2−シアノピリジニウムなどが挙げられ、これらのアニオン部としてはSbF、PF、BF、CFSO、CHSO、HSOなどが挙げられる。
【0036】
さらに組成物の貯蔵時の安定性を考慮した場合、70℃未満では反応しない熱潜在性を有するカチオン重合開始剤系の使用が好ましい。
【0037】
本発明では、上記の熱潜在性を有するカチオン重合開始剤系(d)に加えて、光カチオン重合開始系(e)を使用することもできる。本発明で用いられる光カチオン重合開始剤系(e)は、第1露光に対しては低感光性で、第1露光とは異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸あるいは、ルイス酸を発生し、これらが前記のカチオン重合性化合物(a)を重合させるような開始剤系であればよいが本発明においては、レーザー光またはコヒーレンス性の優れた光の照射でラジカル重合性化合物を重合する間は常温液状のカチオン重合性化合物がほとんど反応しないまま存在することが好ましく、これによって従来技術よりも大きい屈折率変調が得られると考えられる。したがって、光カチオン重合開始剤系としては第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。
【0038】
光カチオン重合開始剤系(e)としては、例えば「UV硬化;科学と技術(UV CURING:SCIENCE AND TECHNOLOGY)」(pp.23〜76、S.ピーター・パーパス(S.PETER PAPPAS)編集、ア・テクノロジー・マーケッティング・パブリケーション(A TECHNOLOGY MARKETING PUBLICATION)]及び「コメンツ・インオーグ.ケム.(Comments Inorg.Chem.)」(B.クリンゲルト、M.リーディーカー及びA.ロロフ(B.KLINGERT、M.RIEDIKER and A.ROLOFF)、第7巻、No.3、pp109−138(1988)]などに記載されているものが挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。
【0039】
本発明で用いられる特に好ましい光カチオン重合開始剤系(e)としては、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類あるいは鉄アレン錯体類等を挙げることができる。
【0040】
光カチオン重合開始剤系(e)としてのジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては、前記光ラジカル重合開始剤(c)で示したヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネートおよびヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホン酸塩、9,10−ジメトキシアントラセンスルホン酸塩などが挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−チオフェニルトリフェニルスルホニウムなどのスルホニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネートおよびヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロスルホン酸塩、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸塩などが挙げられる。
【0041】
本発明の感光性組成物には、必要に応じて高分子結合剤、熱重合防止剤、シランカップリング剤、着色剤、紫外線吸収剤などを併用してよい。高分子結合剤は、ホログラム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光あるいはコヒーレンス性の優れた光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。高分子結合剤は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性組成物と相溶性のよいものであれば良く、その具体例としては塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、アセチルセルロースなどが挙げられる。高分子結合剤は、その側鎖または主鎖にカチオン重合性基などの反応性を有していても良い。
【0042】
従来のような、光カチオン重合開始剤を用いた系に紫外線吸収剤を用いると、重合阻害を生じることになるが、本発明のような熱潜在性の開始剤系では、このような重合阻害が生じないため、紫外線吸収剤の併用を実現することができた。紫外線吸収剤は、通常耐候性を改良するために使用される公知のものが使用でき、具体的にはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、修酸アニリド系、ジシアノアクリレート系、トリアジン系、ベンゾエート系などの紫外線吸収剤を挙げることができるがこの限りではない。具体例としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[5−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−3−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル]ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシエチルオキシベンゾフェノン、2−エトキシ−2'−ドデシロキシオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2'−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、およびエチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。この中で、耐光性、相溶性などの点で特に好ましいのはベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤である。
【0043】
紫外線吸収剤とともに光安定剤を併用してもよい。光安定剤とは、一般にラジカル捕獲剤あるいはHALS(Hindered Amine Light Stabilizers)と呼ばれるもので、紫外線吸収剤と併用することで相乗効果が得られることが知られており、本発明においても任意に使用できる。
【0044】
本発明の感光性組成物の組成に於いて、組成物全重量に対し、成分(a)は5〜80wt%(特に30〜60wt%)、成分(b)は10〜80wt%(特に30〜60wt%)、光ラジカル重合開始剤系(c)は0.3〜8wt%(特に1〜5wt%)及び熱潜在性を有するカチオン重合開始剤系(d)は0.3〜8wt%(特に1〜5wt%)がそれぞれ好ましい。
【0045】
本発明の感光性組成物は通常の方法で調製されてよい。例えば上述の必須成分(a)〜(d)および任意成分をそのままもしくは必要に応じて溶媒(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒)を配合し、冷暗所にて例えば高速撹拌機を使用して混合することにより調製できる。
【0046】
本発明のホログラムの製造において記録層は上記感光性組成物を通常の方法によりガラス板、ポリエチンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、アクリル板、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネート板などの透明な支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥することにより形成することができる。塗布量は適宜選択されるが、例えば乾燥塗布量が1g/m〜50g/mであってよい。さらに通常は、この記録層の上に保護層としてポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネート板、ガラス板、アクリル板などを設けて使用される。このように中間層が本発明組成物による記録層である3層体を作製する別の方法として、例えば、どちらか一方に剥離しやすい処理が施されている2つのポリエチレンテレフタレートフィルムの間に記録層を形成しておき、使用時に片方のフィルムを剥離してその面を適当な支持体上にラミネートしてもよい。また例えば2枚のガラス板の間に本発明組成物を注入することもできる。
【0047】
このように作製された記録層は、レーザー光やコヒーレンス性に優れた(例えば波長300〜1200nm)による通常のホログラフィー露光装置による干渉縞露光によりその内部に干渉縞が記録される。この段階では未反応の重合性化合物が感光層に残存する。したがって経時で変化しない光学的性能を得るためには、この未反応の重合性化合物を硬化させる必要がある。そのためには上記の干渉縞露光に引き続き、熱潜在性を有するカチオン重合開始剤系が反応を開始する温度以上に加熱をする必要がある。この操作により未反応のカチオン重合性化合物を重合させ、干渉縞を固定することができる。上記の干渉縞露光の段階ではラジカル重合性化合物の重合が起こるが、感光層には未反応のカチオン重合性化合物に加えて未反応のラジカル重合性化合物が存在する場合がある。したがってこれらの未反応の重合性化合物の重合率を高めるためには、上記の干渉縞露光に引き続き、紫外線および/または可視域の光の全面露光と加熱処理を同時または逐次に行うことが望ましい。全面露光時に光源として高圧水銀灯やメタルハライドランプもしくはハロゲンランプを使用した場合、紫外線および/または可視域の光とともに熱線も放射される。したがって熱潜在性を有するカチオン重合開始剤系の反応温度以上に感光層が熱せられる条件下でこれら光源により全面露光することで、露光と加熱処理を同時に行うことができ経済的である。さらには光カチオン重合開始剤系(e)を感光層に配合しておくことで、全面露光時にカチオン重合性化合物の重合も惹起させることができるため、感光層の未反応化合物の重合率をさらに上げることができる。
【0048】
上記体積ホログラムは、例えばレンズ、回折格子、干渉フィルター、ヘッドアップディスプレー装置、一般的な三次元ディスプレー、光フアイバー用結合器、ファクシミリ用光偏光器、IDカードなどのメモリー材料、建築用窓ガラス、広告宣伝媒体などに使用できる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。後述の各実施例及び比較例で示される感光性組成物を用いて、以下の方法で試験板を作成し、露光して各ホログラムを得、この物性評価を以下の方法で行った。
【0050】
(試験板作成)
所定量の光ラジカル重合開始剤系成分とカチオン重合開始剤系成分を1.2gのn−ブチルアルコール、1.0gのメチルイソブチルケトン、0.2gのトルエンの混合液に溶解または分散した後、所定量のカチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物及びバインダーポリマーを加え撹はん、ろ過を経て感光液を得た。この感光液をアプリケーターを使用して16cm×16cmのガラス板上に塗布し、90度で5分間乾燥させた。さらに、その上に厚さ80μmのポリエチレンフィルム(東燃化学(株)LUPIC LI)をラミネート用ローラーを使用してラミネートし、この板を3〜4cm角に分割して試験板とした。
【0051】
(露光)
第1露光はアルゴンレーザーの514.5nm光を用いて行った。反射型ホログラムの記録方法の概略図を図1に示す。試験板面における1つの光束の光強度は1mW/cmとし、露光は30秒間行った。
第1露光終了後の後加熱あるいは後露光条件は後述の実施例の中で示す。
【0052】
(評価)
反射型ホログラムの回折効率は、島津自記分光光度計UV−2100と付属の積分球装置ISR−260によるホログラムの反射率から求めた。また、回折効率測定部分の膜厚は、フィッシャー社製膜厚測定器ベータスコープ850を用いて測定した。このようにした得られた回折効率と膜厚の値から、屈折率変調(干渉縞の屈折率変化の半分の値)を計算して求めた。計算式は「カップルド・ウエーブ・セオリー・フォー・シック・ホログラム・グレーティングス」(Coupled Wave Theory for Thick Hologram Glatings)(H.コゲルニク(H.Kogelnik),ベル・シスト・テク・J.(Bell Syst Tech.J.)第48巻、第2909−2947頁(1969))に記載されているものを用いた。屈折率変調の値は膜厚に依存せず、この値によって組成物の屈折率変調能が比較できる。
【0053】
耐熱性試験については、ホログラム試験板を100℃のフラン器に1000時間静置した後の回折効率の変化、回折ピーク波長の変化を調べた。
【0054】
耐光性については大日本プラスチック(株)製超促進耐候試験機アイ・スーパーUVテスターWタイプを使用して、ホログラムの試験板に波長が295nmから450nmの紫外線を60時間、連続照射したときのホログラムの試験板の回折効率の変化、回折ピーク波長の変化および色差を調べた。
【0055】
色差は、スガ試験機(株)のカラーコンピューターSM4−CH型を使用してJIS−K7103に基づく透過測定法により測定した。
【0056】
以下の各実施例及び各比較例の感光性組成物を調製し、前記の方法で各ホログラムを作成し、前記のようにして評価をおこなった。
【0057】
(実施例1〜3)
ここでは、種々の熱潜在性カチオン重合開始剤系(d)を用いて反射型ホログラムを作成した例を示す。ただし、第1露光は全て514.5nmで30秒間行い、次いで15W低圧水銀灯の光をポリエチレンフィルム側から1分間露光し、さらに120℃で5分間加熱してホログラムを作成した。低圧水銀灯露光による試験板の昇温はほとんど生じなかった。なお、カチオン重合性化合物(a)としてCAT−1、ラジカル重合性化合物(b)としてはA−BPHE、光ラジカル重合性開始剤系(c)としてはDYE−1とDPI・CFSOの組み合わせを用いた。
【0058】
表1に実施例1〜3に使用したホログラム記録用感光性組成物の組成及び配合量を示す。
【0059】
表2にホログラム評価結果と耐熱性試験の結果を示す。
【0060】
【表1】


【0061】
【表2】


【0062】
いずれの例においても高回折効率で高屈折率変調の反射型ホログラムが得られた。また、耐熱性試験後にホログラムの回折ピーク波長はほとんど変化しなかった。
【0063】
(比較例1)
これは、実施例1〜3に対する比較例であり、熱潜在性カチオン重合性開始剤系の代わりに光カチオン重合開始剤であるTPS・SbFを用いる以外は全て実施例1〜3と同様にしてホログラムを作成した。
【0064】
表3に使用したホログラム記録用感光性組成物の組成及び配合量を示す。
【0065】
表4にホログラム評価結果と耐熱性試験の結果を示す。耐熱性試験後にホログラムの回折ピーク波長が大きく短波長シフトした。
【0066】
【表3】


【0067】
【表4】


【0068】
(実施例4〜6)
ここでは、表1の組成物を使用し、第1露光を514.5nmで30秒間行い、次いで120℃で5分間加熱し、さらに低圧水銀灯を用いてポリエチレンフィルム側から1分間露光してホログラムを作成した例を示す。(実施例4、5、6の組成はそれぞれ表1の実施例1、2、3と同じ)
【0069】
表5にホログラム評価結果と耐熱性試験の結果を示す。
【0070】
【表5】


【0071】
いずれの例においても高回折効率かつ高屈折率変調の反射型ホログラムが得られた。また、耐熱性試験後にホログラムの回折ピーク波長はほとんど変化しかなった。
【0072】
(比較例2)
これは、実施例4〜6に対する比較例であり、熱潜在性カチオン重合性開始剤系の代わりに光カチオン重合開始剤であるTPS・SbFを用いる以外は全て実施例4〜6と同様にしてホログラムを作成した。(組成は表4の比較例1に同じ)
【0073】
得られたホログラムは回折効率が55%と低く、なおかつ再生波長のピークが複数に分裂した。
【0074】
(実施例7〜9)
ここでは、表1の組成物を使用し、第1露光を514.5nmで30秒間行い、次いで高圧水銀灯(日本電池(株)製、実験用紫外線照射装置、FL−1001−2)を用いてポリエチレンフィルム側から1分間露光してホログラムを作成した例を示す。なお、高圧水銀灯の光の照射により試験板は115℃まで昇温した。(実施例7、8、9の組成はそれぞれ表1の実施例1、2、3と同じ)
【0075】
表6にホログラム評価結果と耐熱性試験の結果を示す。
【0076】
【表6】


【0077】
いずれの例においても高回折効率かつ高屈折率変調の反射型ホログラムが得られた。また、耐熱性試験後にホログラムの回折ピーク波長はほとんど変化しなかった。
【0078】
(比較例3)
これは、実施例7〜9に対する比較例であり、熱潜在性カチオン重合性開始剤系の代わりに光カチオン重合開始剤であるTPS・SbFを用いる以外は全て実施例7〜9と同様にしてホログラムを作成した。(組成は表4の比較例1に同じ)
【0079】
表7にホログラム評価結果と耐熱性試験の結果を示す。耐熱性試験後にホログラムの回折ピーク波長が大きく短波長シフトした。
【0080】
【表7】


【0081】
(実施例10〜12)
ここでは、表1の組成物を使用し、第1露光を514.5nmで30秒間行い、次いで高圧水銀灯(実施例7〜9で使用したものに同じ)を用いてポリエチレンフィルム側から1分間露光し、さらに120℃で5分間加熱してホログラムを作成した例を示す。なお、高圧水銀灯の光の照射により試験板は115℃まで昇温した。(実施例10、11、12の組成はそれぞれ表1の実施例1、2、3と同じ)
【0082】
表8にホログラム評価結果と耐熱性試験の結果を示す。
【0083】
【表8】


【0084】
いずれの例においても高回折効率かつ高屈折率変調の反射型ホログラムが得られた。また、耐熱性試験後にホログラムの回折ピーク波長はほとんど変化しなかった。
【0085】
(比較例4)
これは、実施例10〜12に対する比較例であり、熱潜在性カチオン重合性開始剤系の代わりに光カチオン重合開始剤であるTPS・SbFを用いる以外は全て実施例10〜12と同様にしてホログラムを作成した。(組成は表4の比較例1に同じ)
【0086】
表9にホログラム評価結果と耐熱性試験の結果を示す。耐熱性試験後にホログラムの回折ピーク波長が大きく短波長シフトした。
【0087】
【表9】


【0088】
(実施例13)
ここでは、実施例1の組成物にさらに光カチオン重合開始剤であるTPS・SbFを80mg添加した組成物を使用し、実施例10〜12と同じ工程でホログラムを作成した例を示す。
【0089】
表10にホログラム評価結果と耐熱性試験の結果を示す。高回折効率かつ高屈折率変調の反射型ホログラムが得られた。また、耐熱性試験後にホログラムの回折ピーク波長はほとんど変化しなかった。
【0090】
【表10】


【0091】
(実施例14)
ここでは、実施例1の組成物を使用し、第1露光を514.5nmで30秒間行い、次いで120℃で5分間加熱してホログラムを作成した例を示す。
【0092】
表11にホログラム評価結果と耐熱性試験の結果を示す。高回折効率かつ高屈折率変調の反射型ホログラムが得られた。また、耐熱性試験後にホログラムの回折ピーク波長はほとんど変化しなかった。
【0093】
【表11】


【0094】
(比較例5)
これは、実施例14に対する比較例であり、熱潜在性カチオン重合性開始剤系の代わりに光カチオン重合開始剤であるTPS・SbFを用いる以外は全て実施例14と同様にしてホログラムを作成した。(組成は表4の比較例1に同じ)
【0095】
得られたホログラムは回折効率が50%と低く、なおかつ再生波長のピークが複数に分裂していた。耐熱性試験については感光層の硬化が不十分でポリエチレンフィルムが剥離できなかったため実施できなかった。
【0096】
(実施例15〜17、比較例6)
ここでは、紫外線吸収剤を添加した感光性組成物を使用し、実施例10〜12と同じ工程でホログラムを作成し、性能評価と耐光性試験を行った例を示す。比較のために、熱潜在性を有するカチオン重合開始剤系を用いずに光カチオン重合開始剤(TPS・SbF)だけを使用した組成物(比較例6)についても実施した。
【0097】
表12に実施例15〜17、比較例6のホログラム記録用感光性組成物の組成とホログラムの評価結果および耐光性試験の結果を示す。表12における色差(△ELab)は、数値が小さい程色変化の少ないことを示す。
【0098】
【表12】


【0099】
いずれの実施例においても耐光性に優れた高回折効率のホログラムが得られたが、熱潜在性カチオン重合開始剤を使用せず光カチオン重合開始剤を使用した比較例6では、紫外線吸収剤により光カチオン重合開始剤の作用が阻害されて、結果的に回折ピークが2つに分裂し、さらに耐光性試験後のホログラムの回折効率の低下と回折波長の短波長シフトが大きく、記録層の変化が見られた。
【0100】
尚、上記実施例1〜17、比較例1〜6、及び表1〜表12において表記された化合物の略称は以下の通りである。
【0101】
熱潜在性カチオン重合開始剤系
・BA−1・・・N−(p−メトキシベンジル)−N,N−ジメチルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート
・BA−2・・・1−(p−メトキシベンジル)−2−クロロピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート
・BA−3・・・N−(p−メトキシベンジル)−N,N−ジメチルアニリニウムトリフルオロメチルスルホネート
【0102】
ラジカル重合性化合物
・A−BPHE・・・9,9−ビス(3−エチル−4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン
【0103】
カチオン重合性化合物
・CAT−1・・・ペンタエリスリトールにプロピレンオキシドを4モル付加したグリシジルエーテル(1分子あたりのグリシジル基数は3個。)
【0104】
光ラジカル重合開始剤
・DYE−1・・・3,9−ジエチル−3'−カルボキシメチル−2,2'−チアカルボシアニン、ヨウ素塩
・DPI・CFSO・・・ジフェニルヨードニウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩
【0105】
光カチオン重合性開始剤系
・TPS・SbF・・・チバガイギー社製、トリアリールスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート系化合物、商品名 UV16974
【0106】
紫外線吸収剤
・UVA−1・・・2−[5−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−3−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル]ベンゾトリアゾール
(チバガイギー社製、TINUVIN384)
・UVA−2・・・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバガイギー社製、TINUVIN1130)
【0107】
その他の成分
・P−1・・・メチルメタクリレート エチルアクリレート グリシジルメタクリレート共重合体(仕込比=11/79/10)
・MIBK・・・メチルイソブチルケトン
・BuOH・・・n−ブチルアルコール
・TL・・・・・トルエン
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】第1露光における反射型ホログラムの記録方法の概略図を示す。
【符号の説明】
【0109】
1:ガラス板
2:記録層
3:ポリエチレンフィルム
4:レーザー
5:レーザービーム
6:ミラー
7:ビームスプリッター
8:対物レンズ
9:レンズ
【出願人】 【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
【出願日】 平成18年10月30日(2006.10.30)
【代理人】 【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄

【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二

【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆

【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄

【識別番号】100126789
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 裕子


【公開番号】 特開2007−34334(P2007−34334A)
【公開日】 平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願番号】 特願2006−294541(P2006−294541)