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【発明の名称】 塩基性多糖類を含有する免疫測定法用検体処理液組成物及びキット、並びにこれらを用いる免疫測定法
【発明者】 【氏名】小笠原 真也

【氏名】瀧澤 和幸

【要約】 【課題】免疫測定法において、測定反応場における粘性成分の軽減もしくは除去を行い、これにより感度、特異性及び迅速性といった性能を上昇させることを目的とする。

【解決手段】免疫測定法において、検体中に含まれる粘性成分を塩基性多糖類と接触させる事によって、粘性成分と塩基性多糖類との複合体を形成させ、これを何らかの手段により除去することにより、測定反応場における粘性成分の軽減もしくは除去を行うことができ、これにより免疫測定法の感度、特異性及び迅速性等を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性多糖類を含有する免疫測定法用検体処理液組成物。
【請求項2】
該塩基性多糖類がジエチルアミノエチルデキストランである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
無機塩類及び界面活性剤より成る群より選択される少なくとも1種類の化合物を更に含む請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
該無機塩類が01(1A)族、02(2A)族、13(3B)族から成る群より選択される金属塩類の少なくとも1種類である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
該界面活性剤がポリアルキレンオキサイド誘導体である、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
該塩基性多糖類を、0.01〜10%(w/v)の範囲で含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物の免疫測定法における使用。
【請求項8】
検体中の分析対象物を免疫反応を利用して測定する免疫測定法において、検体を塩基性多糖類と接触させることを特徴とする、上記免疫測定法。
【請求項9】
検体を塩基性多糖類と接触させた後、検体を含む溶液から不溶成分を除去することを特徴とする、請求項8記載の免疫測定法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含む、免疫測定法用キット。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原抗体反応のような免疫反応を用いて検体中の分析対象物を検出する免疫測定法において使用する免疫測定法用検体処理液組成物、それを含むキット、およびその使用法に関する。前記組成物により、測定時の擬似反応の要因となる検体中の粘性成分の含量を軽減もしくは除去し、そのことによって抗体もしくは抗原等への非特異的な結合を抑えて、分析対象物を正確に且つ迅速に検出または定量することができる。
【背景技術】
【0002】
免疫反応の特異性を利用して試料中の分析対象物を免疫学的手法により検出または定量する分析方法として免疫拡散法、酵素免疫測定法、凝集法等種々の方法論が実用化されている。(免疫拡散法: Annu Rev Microbiol.1960;14:161-76 "Intepretation of immunodiffusion tests." Growle AJ , 酵素免疫測定法: Biochimie.1972;54(7):837-42 "Enzyme-Immunoassay for the measurement of antigens using peroxidase conjugates." Avrameas S , Guilbert B,Biochem Biophys Res Commun.1972 May 26;47(4):846-51 "Homogeneous enzyme immunoassay, A new immunochemical technique." Rubenstein KE, Schneider RS, Ullman EF,J Biochem (Tokyo).1973 Jun;73(6):1319-21 "Enzyme immunoassay of insulin by fluorimetry of the insulin-glucoamylase complex." Ishikawa E ,
Biomedicine.1973 Jul 20;19(7):314-7 "A method of enzyme immunoassay." Masseyeff R , Maiolini R , Bouron Y ,凝集法:Med Dosw Mikrobiol. 1950;2(2):167-8 "Evaluation of agglutination reaction in infectious mononucleosis." Chojnowski J , Stetkiewicz S ,Rass Int Clin Ter. 1950 Jul 15;30(13):382-6 "Serology and diagnosis of cancer , an agglutination reaction." Castelli V , Gaggini V ,J Pathol Bacteriol. 1951 Jan;63(1):179-80 "The recognition and titration of antibodies to chemical substances by the agglutination reaction." Coombs RR , Mynors LS , Wild F ,J Indiana State Med Assoc. 1951 Apr;20(7):248-57 "Agglutination reaction in diagnosis of enteric infections." Singh B ,)
しかし、これらの手法を使用する際には、試料中に含まれる分析対象物以外の成分、特に検体中に存在する粘性成分の抗体もしくは抗原への非特異的な結合や測定法資材(抗体を結合させたラテックスや金コロイド等のコロイド標識抗体、酵素標識抗体など)の使用時の分散性が常に問題となり、これらが要因となって非特異的な反応を起こして擬似陽性反応を呈する場合があり、診断が正確に行えない場合があった(非特許文献1及び2参照)。
【0003】
【非特許文献1】J. Immunol. Methods, 1999, Jun 24 ; 226(1-2): 11-8 "Heparin in plasma samples causes nonspecific binding to histones on Western blot." Alcantara FF, Iglehart DJ, Ochs RL ,
【非特許文献2】J. Histochem. Cytochem., 1983, Dec; 31(12): 1419-21, "Nonspecific staining of mast cells by avidin-biotin-peroxidase complexes(ABC)." Bussolati G, Gugliotta P,
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は免疫測定法において試料中に含まれる粘性成分を、免疫測定を行なう前に、その含量の軽減もしくは除去を行うことにより、分析対象物以外の成分の非特異的な結合を軽減し、なお且つ免疫測定法用資材の分散能を高め、これらの効果によって正確且つ迅速な診断を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、免疫測定法において、一定の組成からなる免疫測定法用検体処理液(反応場溶液またはその前処理溶液)を用いることにより上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、塩基性多糖類を含有する免疫測定法用検体処理液組成物、を提供する。
上記組成物において、前記塩基性多糖類はジエチルアミノエチルデキストランであることが好ましい。
また、前記組成物は無機塩類及び界面活性剤より成る群より選択される少なくとも1種類の化合物を更に含むことが好ましい。
上記組成物において該無機塩類は01(1A)族、02(2A)族、13(3B)族から成る群より選択される金属塩類の少なくとも1種類であることが好ましく、該界面活性剤はポリアルキレンオキサイド誘導体であることが好ましい。
また上記組成物は、該塩基性多糖類を、0.01〜10%(w/v)の範囲で含有することが好ましい。
また、本発明の一つの実施態様として、上述した塩基性多糖類を含む免疫測定法用検体処理液組成物の免疫測定法における使用、を提供する。
また、本発明の他の実施態様として、検体中の分析対象物を免疫反応を利用して測定する免疫測定法において、検体を塩基性多糖類と接触させることを特徴とする免疫測定法を提供する。
上記免疫測定法において、更に、検体を塩基性多糖類と接触させた後、検体を含む溶液から不溶成分を除去することが好ましい。
また、本発明の他の実施態様として、上述したいずれかの組成物を含む免疫測定法キット、を提供する。
【発明の効果】
【0006】
免疫測定法において、本発明の塩基性多糖類を含む、免疫測定法用検体処理液を使用することにより、分析対象物以外の成分に起因する非特異的な反応を軽減させることができ、なお且つ免疫測定法用資材の検出反応時における分散能を高めることができ、分析対象物の正確な判定を行うことが可能となった。特に患者由来の脱離細胞性分、粘液成分などは捕捉試薬及び/あるいは検出試薬に吸着すると、擬似陽性の反応を呈する場合があるが、本発明の組成物、これを用いた免疫測定法及び免疫測定法用キットはこれらの非特異的な反応を軽減できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の免疫測定法用検体処理液組成物並びにその使用法について説明する。
本明細書において、免疫測定法用検体処理液組成物とは、免疫測定法において検出対象物を効率良く検出する為の反応過程またはその前処理過程において使用する溶液組成物を意味する。より具体的には、検体を洗浄、希釈したり、若しくは免疫反応を行うための反応場を与えるための溶液である。
【0008】
免疫測定法用検体処理液組成物の基本組成としては、免疫学的手法による試料の検出または定量において通常使用されるバッファー類を使用できる。より具体的には、生理食塩水、リン酸緩衝性生理食塩水(PBS)、ゼラチン添加PBS、ウシ血清アルブミン(BSA)添加PBS、グッドの緩衝液、子牛インフュージョンブロス(VIB)、ハートインフュージョンブロス、イーグルの最小必須培地(EMEM)、BSA添加EMEMなどが挙げられるが、この限りではない。また、上記バッファー類は2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0009】
本発明の免疫測定法用検体処理液組成物は、塩基性多糖類を含むことが必須である。
本明細書において、塩基性多糖類とは、第一級、第二級あるいは第三級アミンを含む基またはアルキルアンモニウムまたはアンモニウム基を含む基を一つ以上有する糖重合体である。より好ましくは、-N+(R)nH(3-n) (nは0〜3であり、Rは水素または一価の脂肪族炭化水素である)で表されるアルキルアンモニウムまたはアンモニウム基を有する基で修飾された多糖類である。Rは脂肪族炭化水素であればいずれでもよいが、-(CH2)nCH3 (n=1〜12)が好ましく用いられる。他にも、イオン交換樹脂としてアニオン交換用に使用されている樹脂に適応可能な官能基は全て、本発明における塩基性多糖類の官能基として適する。これらの中で、本発明の効果の観点からは、特に、ジエチルアミノエチルデキストラン(DEAE-Dextrane)あるいはその誘導体が好ましい。
本発明の塩基性多糖類は、市販のもの(例えば、アマルシャムバイオサイエンス社製ジエチルアミノエチルデキストラン)を利用してもよく、また適宜合成してもよい。
塩基性多糖類の組成物中の含有量は、検体の性質、用いる抗体、抗原等の性質等を考慮して適宜決定することができるが、例えば、組成物中に0.01〜10%(w/v)の範囲で含有されることができる。
【0010】
検体の種類(例えば、患者由来の脱離・剥離細胞等あるいはそれらの細胞から放出された細胞成分、粘性成分、糖成分等を含むような検体)によっては、反応中に不要な凝集塊(凝集物)が形成され、これが非特異的な反応の原因となる場合があるが、塩基性多糖類はこれらの非特異反応の起因物質と共に複合体を形成し、これにより粘性成分等の非特異反応の起因物質の凝集を抑制し、非特異的反応を抑制することができると考えられる。
また、コロイド粒子を用いた免疫測定法に際しては、コロイド粒子同士の非特異的な凝集に起因する非特異的な反応・非特異的な判定結果が起こる場合があるが、塩基性多糖類は、これら凝集を抑制する凝集抑制剤としての作用も期待できる。
【0011】
本発明の免疫測定法用検体処理液組成物には、更に、無機塩類及び界面活性剤から成る群より選択された少なくとも1種類の化合物を含むことが好ましい。
無機塩類の添加量としては、0.005〜0.2Mの範囲程度であることが好ましく、より好ましくは50mM前後である。界面活性剤の添加量としては、0.1〜5%(v/v)の範囲程度であることが好ましい。
本発明の免疫測定法用検体処理液組成物は、塩基性多糖類、無機塩類、及び界面活性剤の3種類を含むものが本発明の効果の点において特に好ましい。
【0012】
添加する無機塩類としては、01(1A)族、02(2A)族、13(3B)族から成る群より選択される金属塩類であり、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の塩化物、臭化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0013】
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、及び両性界面活性剤のいずれでも使用することが出来るが、特に特異的(抗原抗体)反応への影響の少ないノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、ポリアルキレンオキサイド基を分子中に有するポリアルキレンオキサイド誘導体が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド基としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド基のアルキレンオキサイドの繰り返し数は、通常6〜20程度であり、6〜12が更に好ましい。ポリアルキレンオキサイド誘導体としては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリ・オキシエチレン−ポリ・プロピレン縮合物が挙げられる。特に好ましいポリアルキレンオキサイド誘導体としては、特異的反応への影響の少ないポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが挙げられる。
【0014】
上記組成物には保存剤、防腐剤等の添加剤を更に添加しても良い。防腐剤としては、アジ化ナトリウム等が挙げられる。また、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンや2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾロン系の防腐剤も使用可能である。
【0015】
本発明の免疫測定法用検体処理液組成物を免疫測定法に用いることにより、細菌、ウイルス、ホルモン、その他臨床マーカー等の様々な抗原、抗体等を正確且つ迅速に分析する事ができる。
【0016】
本発明の免疫測定法において説明する。
本発明において、免疫測定法とは、抗体抗原反応のような免疫反応の特異性を利用して試料中の分析対象物を免疫学的手法により検出または定量する方法を意味する。
本発明の免疫測定法としては、免疫拡散法、酵素免疫測定法、凝集法等が挙げられる。本発明の方法は特に、フロースルーアッセイやラテラルフローアッセイなどの簡易迅速診断において有利に使用することができる。
【0017】
本発明の免疫測定法は、患者等から採取した検体を塩基性多糖類と接触させることを含む点に特徴を有する。すなわち、上述した塩基性多糖類を含む免疫測定法用検体処理液組成物中に、検体を溶解、または懸濁させる。これにより、塩基性多糖類と粘性成分等の非特異反応を起こす成分とが相互作用して、結果として非特異反応が軽減される。
また、塩基性多糖類と接触させた後、さらに不溶成分をいずれかの方法により検体溶液から除去することが好ましい。除去方法は、通常行われるいずれの方法によってもよいが、例えば、濾過、遠心、及び自然沈降などの方法が挙げられる。
【0018】
本発明の免疫測定法の一例として、例えば以下の工程を含む方法が挙げられる。
(1)患者から採取した検体を上述した免疫測定法用検体処理液組成物と混合し、塩基性多糖類と、検体中に含まれる粘性成分等とを接触させる。
(2)必要に応じ、濾過、遠心、自然沈殿等により、検体液から塩基性多糖類と粘性成分等との複合体を除去する。
(3)分析対象物を捕捉する為の捕捉試薬が固定化されている担体と、前記検体液とを接触させて、分析対象物を捕捉担体上に捕捉する。
(4)前記捕捉担体上に捕捉された分析対象物と標識化検出試薬とを反応させ、捕捉試薬−分析対象物−検出試薬の免疫複合体を形成させる、
(5)前記免疫複合体を検出する。
上記方法において、免疫測定法用検体処理液組成物中に、標識化検出試薬を予め含んでいてもよい。
【0019】
本発明の免疫測定法は、例えば、気道感染症診断で用いられる鼻腔吸引液や鼻腔ぬぐい液等の鼻汁や咽頭ぬぐい液、喀痰等の気道感染時にウイルスや細菌の増殖出現が確認され、ムチン様の粘性物質が免疫応答の結果、分泌され得るもの、あるいはヘパリンを含む血液・血清・血漿やムコタンパクを多く含む尿等の分析に用いることができる。
本発明の方法において分析対象物は限定されないが、例えば、細菌、ウイルス、ホルモン、その他の臨床マーカーが挙げられる。
より具体的には、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、HAV、HBc、HCV、HIV、EBV、ノーウォーク様ウイルス等のウイルス抗原、クラミジア・トラコマティス、溶連菌、百日咳菌、ヘリコバクター・ピロリ、レプトスピラ、トレポネーマ・パリダム、トキソプラズマ・ゴンディ、ボレリア、炭疽菌、MRSA等の細菌抗原、マイコプラズマ脂質抗原、ヒト繊毛性ゴナドトロピン等のペプチドホルモン、ステロイドホルモン等のステロイド、エピネフリンやモルヒネ等の生理活性アミン類、ビタミンB類等のビタミン類、プロスタングランジン類、テトラサイクリン等の抗生物質、細菌等が産生する毒素、各種腫瘍マーカー、農薬、抗大腸菌抗体、抗サルモネラ抗体、抗ブドウ球菌抗体、抗カンピロバクター抗体、抗ウェルシュ菌抗体、抗腸炎ビブリオ菌抗体、抗ベロトキシン抗体、抗ヒトトランスフェリン抗体、抗ヒトアルブミン抗体、抗ヒト免疫グロブリン抗体、抗マイクログロブリン抗体、抗CRP抗体、抗トロポニン抗体、抗HCG抗体、抗クラミジア・トラコマティス抗体、抗ストレプトリジンO抗体、抗ヘリコバクター・ピロリ抗体、抗β-グルカン抗体、抗HBe抗体、抗HBs抗体、抗アデノウイルス抗体、抗HIV抗体、抗ロタウイルス抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パルボウイルス抗体、抗RSウイルス抗体、抗RF抗体、病原微生物に由来する核酸成分に相補的なヌクレオチド等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0020】
上記方法において、捕捉試薬とは、分析対象物に特異的に結合し、分析対象物と複合体を形成するものを意味する。従って、分析対象物により捕捉試薬が異なることは当然であるが、一般には分析対象物が、細菌、ウイルス、ホルモン、その他の臨床マーカーの場合にはこれらに対し特異的に反応して結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、レセプター、リガンド等が挙げられる。その他、ウイルス抗原、ウイルス中空粒子、遺伝子組換えタンパク質等が挙げられる。
【0021】
上記方法において、検出試薬とは、分析対象物に特異的に結合し、分析対象物と複合体を形成し得るものである。これは直接または間接的に標識化され得るものである場合もあり、分析対象物と複合体を形成した後に、何らかの手段で検出を可能にする試薬を意味する。酵素で標識化された場合には、該酵素により触媒される反応により比色法、蛍光法等により検出可能な物質を生成する該酵素の基質を添加することにより複合体の検出を行う事ができる。標識化される前の検出試薬としては捕捉試薬について述べたものと同じものが挙げられる。また、標識は酵素、蛍光・発光性標識、磁性体標識、放射性同位元素、金属コロイド、ラテックス等が挙げられる。酵素標識を用いる場合には、使用される酵素としては例えば、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコース‐6‐リン酸脱水素酵素が挙げられる。
【0022】
本発明の免疫測定法キットは、上述した免疫測定法において用いることができるキットであり、本発明の塩基性多糖類を含む免疫測定法用検体処理液組成物を含むことを特徴とする。
本発明のキットは更に、患者から採取した検体中の分析対象物に特異的に反応する捕捉試薬、分析対象物と特異的に反応する標識化検出試薬を含んでいてもよい。
また、該捕捉試薬が担体上に固定されていてもよい。すなわち、本発明のキットは、捕捉試薬の代わりに、捕捉試薬が固定された担体を含んでいても良い。本発明において担体とは、分析対象物−捕捉試薬または標識化検出試薬−分析対象物−捕捉試薬の免疫複合体を捕集するための、ろ過フィルターの役割、捕捉試薬を固定化する支持体の役割、あるいは免疫複合体を検出するための標識物の反応、例えば酵素−基質反応を行なう反応場の役割を行なうものであり、通常、膜(メンブレン)状の形態を有する。
従って、担体(ろ過フィルター)の孔径(直径)または保留粒子径は、免疫複合体を捕集できる程度のサイズであることが必要である。例えば、0.2〜2.0μm、好ましくは0.2〜0.6μmである。また、担体の材質の例としては、不織布、紙、ガラス繊維、シリカ繊維、ニトロセルロース、セルロースエステル、ニトロセルロースとセルロースエステルの混合物、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ナイロン6,6、ポリエステル、コットン、ステンレススチール繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明のキットは、例えば、上述した担体を備えたアッセイ装置を含むものであってもよい。アッセイ装置は、いわゆる、フロースルー式メンブレンアッセイ法またはラテラルフロー式メンブレンアッセイ法を利用する装置であることが好ましい。フロースルー式メンブレンアッセイ法を利用するアッセイ装置の具体例は、例えば図5及び6に示されるような装置である。
図5は装置の平面図であり、図6は、図5のI−I’切断端面図である。図5及び6において、aは、調製した検体試料を滴下する開口部を有し、底面部に試料が通過するための穴(Aホール及びBホール)を備えたアダプターである。bは被測定物に特異的に結合する捕捉物質が結合したメンブレンであり、cは液体を吸収する部材である。
【0024】
本発明のキットはさらに必要により、洗浄液組成物、標識化検出試薬の標識が酵素標識である場合には、後述する酵素の基質、反応停止液等を含むことができる。
また、必要に応じて、キットの活性を検査するためのバッファーのみからなる陰性コントロール液、抗原性物質などの被測定物を含むバッファーからなる陽性コントロールを含んでいてもよい。さらに、滅菌綿棒等の検体採取器具を含んでいてもよい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づき更に具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
擬似粘性物質添加による非特異反応の確認(検出境界の設定)
粘性物質存在時の非特異反応を確認するため以下の実験を行った。非特異反応を擬似的に発生させるために擬似検体粘性成分としてコンドロイチン硫酸を用いた。コンドロイチン硫酸は、種々の生物の軟骨や皮膚、腱、心臓弁、大動脈、鞏膜のほか肺、脳、胃粘膜、尿などに存在しており、実際に粘性を有する検体における非特異反応を模倣している結果が得られる。
【0026】
検体を浮遊させる緩衝液は以下の組成とした。
使用した緩衝液組成
Tris-HCl(pH 7.0) 20mM
ウシ血清アルブミン 1%(w/v)
NaCl 50mM
ポリエチレングリコールモノ-p-イソオクチルフェニルエーテル
(Triton X-100、ナカライテスク製) 5%(v/v)
【0027】
インフルエンザウイルスを含まない条件下で、粘性物質としてコンドロイチン硫酸を上記緩衝液に浮遊させた。その溶液500μLと金コロイド標識抗インフルエンザ抗体A8.0OD520、50μLを混合し反応させた。一定時間反応後、フィルター(例えば、0.22μm)で濾過した後、フロースルー型アッセイ装置(図5及び6に記載と同じ構成のもの。)へ全量滴下した。液が膜部材に全て吸収された後、抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体Aを吸着させた部分の膜部材が金コロイドの色(例えば、赤色〜赤褐色)に着色していれば、粘性物質により非特異反応を呈したと判断した。色調の変化がなく膜部材の色のままであれば、非特異反応は起こってないと判断した。図1にコンドロイチン硫酸を添加しない場合と、2%(w/v)、4%(w/v)をそれぞれ添加した場合の結果を示した。
上記の操作をインフルエンザ抗体Bについても同様に行った。
【0028】
本発明の組成物を用いる方法は、簡易迅速診断を狙った診断法である為、最終的な検査の判定は目視判定で行なわれる。その為、図中の検出境界は、目視判定結果と検出スポット中の金コロイド密度(赤色の濃さ)によって決定した。すなわち、検出境界とは、検出スポット中の金コロイド相対密度がその境界値以下であれば陰性と、境界値以上であれば陽性と判断する判定境界値である。
上記の実験結果から検出境界値を約24(RD/mm2)と決定した。なお、縦軸“密度”(RD/mm2)は相対密度(Relative Density)を示し、検出スポットのカウント数の密度をデンシトメトリー(バイオラッドラボラトリーズ(株)のデンシトメトリーシステム;デンシトメトリー:GS-800 Calibrated Densitometer、イメージングソフトウェアー:Quantity One)で算出した値である。よって、Mean Value × Num.Pixels / Area による算出によって出された値であり、単位はO.D.(530nm)/mm2である。
図1に示すとおり、2%(w/v)、4%(w/v)のコンドロイチン硫酸添加による非特異反応によって、サンプル中にインフルエンザウイルスが存在していないにもかかわらず、非特異反応がかなりの程度において観察された。
【0029】
実施例2
ジエチルアミノエチルデキストラン(DEAE-Dextrane)による非特異反応抑制効果の確認
DEAE-Dextraneを添加による粘性物質による非特異反応の抑制効果について以下のように検証を行った。
実施例1において使用したコンドロイチン硫酸を2%(w/v)の終濃度で添加した緩衝液と、これにさらにDEAE-Dextraneを2%(w/v)添加した緩衝液の2種類を準備して、実施例1と同様の実験を行った。その結果を図2に示す。
図2に示される通り、DEAE-Dextraneの添加によって非特異反応が軽減され誤判定を回避することができた。
【0030】
実施例3
DEAE-Dextraneを添加する事によって、粘性物質による非特異反応を抑制できる条件下で、実際のインフルエンザウイルスの検出可否について検証を行なった。実施例2で使用した2%(w/v)のコンドロイチン硫酸に起因する誤判定を回避する事が可能なDEAE-Dextrane濃度(終濃度2%(w/v))で、インフルエンザウイルスA及びBを含むサンプルを緩衝液に浮遊させた(それぞれ6〜15×1011pfu/mL)。その溶液500μLと、金コロイド標識抗インフルエンザ抗体8.0OD520、50μLを混合し反応させた。一定時間反応後、フィルター(例えば、0.22μm)で濾過した後、アッセイ装置(デバイス)へ全量滴下した。液が膜部材に全て吸収された後、抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体AまたはBを吸着させた部分の膜部材が金コロイドの色(例えば、赤色〜赤褐色)に着色していれば、サンプル中にインフルエンザウイルスが存在していると判定し、色調の変化がなく膜部材の色のままであれば、サンプル中にインフルエンザウイルスが存在していないと判定した。
図3,4に示される通り、DEAE-Dextraneの添加した本発明の組成物を用いると、インフルエンザウイルスを誤反応を起こさずに検出することが可能となった。また、インフルエンザウイルスA型、B型の亜型間での交叉反応も無く、誤判定なく、正確な検出・判定が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】インフルエンザウイルス検出における、コンドロイチン硫酸による擬似粘性成分に起因する非特異反応を示す。
【図2】ジエチルアミノエチルデキストランによる、コンドロイチン硫酸擬似粘性成分の非特異反応の軽減作用を示す。
【図3】A型インフルエンザ検出試薬によるインフルエンザウイルスの検出及び交叉反応を示す。
【図4】B型インフルエンザ検出試薬によるインフルエンザウイルスの検出及び交叉反応を示す。
【図5】本発明の方法に用いることのできる装置の一例(平面図)を示す。
【図6】図4のI−I’切断端面図である。
【符号の説明】
【0032】
a:調製した検体試料を滴下する開口部を有するアダプター
b:は被測定物に特異的に結合する捕捉物質が結合したメンブレン
c:液体吸収部材
A:試料が通過するための穴
B:試料が通過するための穴
【出願人】 【識別番号】591125371
【氏名又は名称】デンカ生研株式会社
【出願日】 平成17年10月31日(2005.10.31)
【代理人】 【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男

【識別番号】100084009
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信夫

【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤

【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治

【識別番号】100114007
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 孝二

【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき


【公開番号】 特開2007−121204(P2007−121204A)
【公開日】 平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願番号】 特願2005−316630(P2005−316630)