| 【発明の名称】 |
摺動部材及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】若林 優輔
【氏名】櫻井 茂行
【氏名】秋田 秀樹
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| 【要約】 |
【課題】建設機械、産業機械等の高面圧の摺動条件下においても、摺動初期のなじみ性の効果を有し、長期に渡って低摩擦を持続することができる摺動部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】摺動面を有する摺動部材1であって、前記摺動面の表面組織をフェライト4とマルテンサイト3とに混合組成した基地組織を有する母材2と、前記母材2の摺動面に露出しているフェライト4に打ち込まれた固体潤滑材の粒子6による固体潤滑材粒子塊部7とを備える。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 摺動面を有する摺動部材であって、前記摺動面の表面組織をフェライトとマルテンサイトとに組成した基地組織を有する母材と、前記母材の摺動面に露出しているフェライトに打ち込まれた固体潤滑材の粒子による固体潤滑材粒子塊部とを備えたことを特徴する摺動部材。 【請求項2】 摺動面を有する摺動部材であって、前記摺動面の表面組織をフェライトとマルテンサイトとで組成した基地組織を有する母材と、前記母材の摺動面に露出しているフェライトに打ち込まれた固体潤滑材の粒子による固体潤滑材粒子塊部と、前記摺動面に形成した低摩擦コーティング層とを備えたことを特徴する摺動部材。 【請求項3】 摺動面を有する摺動部材の製造方法であって、前記摺動部材となる母材の前記摺動面の表面組織をフェライトとマルテンサイトとで組成した基地組織に組成し、前記母材の摺動面に露出しているフェライトに固体潤滑材の粒子を打ち込んで、固体潤滑材粒子塊部を形成したことを特徴する摺動部材の製造方法。 【請求項4】 摺動面を有する摺動部材の製造方法であって、前記摺動部材となる母材の前記摺動面の表面組織をフェライトとマルテンサイトとで組成した基地組織に組成し、前記母材の摺動面に露出しているフェライトに固体潤滑材の粒子を打ち込んで、固体潤滑材粒子塊部を形成し、その後、前記摺面に低摩擦コーティング層を形成したことを特徴する摺動部材の製造方法。 【請求項5】 請求項1又は2に記載の摺動部材を摺動部に備えたことを特徴とする機器。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、摺動部材及びその製造方法に係わり、更に詳しくは、初期なじみ性が良く、低摩擦を長期間維持することができる耐面圧用の摺動部材及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、摺動を伴う金属製の摺動部材の摺動面の摺動特性を向上させるために、金属製の摺動部材の摺動面に潤滑膜を設ける方法が知られている。その一例として、二硫化モリブデンのような固体潤滑剤粉末を、摺動部材の摺動面に噴射して、摺動面に付着させる方法がある(特許文献1参照。)。 【0003】 【特許文献1】特開2004−60619号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 摺動部材を構成する母材の基地組織は、一般的に高周波焼入れ、浸炭焼入れ等の焼入処理で形成されるマルテンサイトに組成されおり、その硬度は、HV500〜800である。これに対して、固体潤滑材として用いられる二硫化モリブデン粒子の硬度は、モース硬度1(≒HV50)である。 【0005】 このため、摺動部材における高周波焼入れ、浸炭焼入れ等の焼入処理された摺動面に、固体潤滑材を噴射させると、前述したように、固体潤滑材の硬度が処理対象となる摺動部材の摺動面の硬度より低いため、固体潤滑材は、摺動部材の摺動面に付着する形態となっている。 【0006】 上述した摺動部材を、建設機械,産業機械等に使用されるポンプ、モータ等の油圧機器の例えばピストン、シリンダのような高面圧下になる摺動箇所に用いた場合、摺動初期のなじみ性では効果があるが、長期的には摺動部材の摺動面の表面から固体潤滑剤が剥離してしまうため、摺動部材の摺動面を長期に渡って低摩擦状態に維持するのは困難である。 【0007】 また、摺動部材が油中環境下で用いられている場合には、摺動部材の摺動面から剥離した固体潤滑剤は、潤滑油に混入するので、これにより、摺動部材の摺動面を低摩擦に維持できることが知られているが、摺動部材に対して、油量を多く用いている機器では、その低摩擦効果が十分に得られないという憾みがある。 【0008】 本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、建設機械、産業機械等の高面圧の摺動条件下においても、摺動初期のなじみ性の効果を有し、長期に渡って低摩擦を持続することができる摺動部材及びその製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明は、上記目的を達成するために、第1の発明は、摺動面を有する摺動部材であって、前記摺動面の表面組織をフェライトとマルテンサイトとに組成した基地組織を有する母材と、前記母材の摺動面に露出しているフェライトに打ち込まれた固体潤滑材の粒子による固体潤滑材粒子塊部とを備えたことを特徴する。 【0010】 また、第2の発明は、摺動面を有する摺動部材であって、前記摺動面の表面組織をフェライトとマルテンサイトとで組成した基地組織を有する母材と、前記母材の摺動面に露出しているフェライトに打ち込まれた固体潤滑材の粒子による固体潤滑材粒子塊部と、前記摺動面に形成した低摩擦コーティング層とを備えたことを特徴する。 【0011】 更に、第3の発明は、摺動面を有する摺動部材の製造方法であって、前記摺動部材となる母材の前記摺動面の表面組織をフェライトとマルテンサイトとで組成した基地組織に組成し、前記母材の摺動面に露出しているフェライトに固体潤滑材の粒子を打ち込んで、固体潤滑材粒子塊部を形成したことを特徴する。 【0012】 また、第4の発明は、摺動面を有する摺動部材の製造方法であって、前記摺動部材となる母材の前記摺動面の表面組織をフェライトとマルテンサイトとで組成した基地組織に組成し、前記母材の摺動面に露出しているフェライトに固体潤滑材の粒子を打ち込んで、固体潤滑材粒子塊部を形成し、その後、前記摺面に低摩擦コーティング層を形成したことを特徴する。 【0013】 更に、第5の発明は、前記第1または第2の発明の摺動部材を摺動部に備えたことを特徴とする機器にある。 【発明の効果】 【0014】 本発明の摺動部材によれば、建設機械、産業機械等の高面圧の摺動条件下においても、その摺動面の摺動初期のなじみ性の効果を有し、長期に渡って低摩擦を持続することができるので、摺動部材の交換時期が長期化し、そのメンテナンス性を改善することができる。 【0015】 また、本発明の製造方法によれば、母材の組織中のフェライトの固体潤滑材粒子を打ち込むことにより、高面圧下で使用可能な摺動部材を提供することができるので、その製作費が安価であると共に、その短時間での製作が可能である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0016】 以下、本発明の摺動部材及びその製造方法の実施の形態を、図面を用いて説明する。 【0017】 図1は、本発明の摺動部材の表面の金属組織の一実施の形態を模式的に示す断面図である。この図1において、摺動部材1を構成する母材2は、その基地組織がマルテンサイト3とフェライト4との混合組織となっている。その母材2の表面(摺動面)5には、フェライト4が露出している。この母材2の表面5に露出したフェライト4には、例えば、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑材の粒径5〜20μm程度の粒子6が、打ち込まれて、固体潤滑材の粒子塊7が形成されている。母材2の表面5には、更に膜厚1〜10μm程度の例えば二硫化モリブデンの低摩擦層8が形成されている。 【0018】 母材2の表面の金属組織は、前述したように、マルテンサイト3とフェライト4の混合組織である。マルテンサイト3の硬度は、例えばHV500〜800であり、フェライト4の硬度は、HV≒50である。 【0019】 一方、噴射材として用いられる二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑材の粒子6の硬度は、HV40〜60である。このため、母材2の表面に固体潤滑材の粒子6を噴射させると、フェライト4には、上述したその硬度と固体潤滑材の粒子6のそれとが同等であることから、固体潤滑材の粒子6がフェライト4の内部に貫入して蓄積され、フェライト4における母材表面5の露出部分側に固体潤滑材の粒子塊7を形成する。 【0020】 上述した本発明の摺動部材の一実施の形態は、建設機械,産業機械に使用されるポンプ、モータ等の油圧機器におけるピストン、ピストンシュー、シリンダ、ロータ、カムプレート、バルブプレートのような高面圧下で使用される摺動箇所に用いることができる。この場合、低摩擦層8は、摺動における初期なじみ性に効果を発揮する。 【0021】 摺動部材1における表面の摺動にともなって、低摩擦層8が剥離すると、摺動部材1の表面組織は、マルテンサイト3と固体潤滑材粒子塊7とで構成される。この摺動面に露出した固体潤滑材粒子塊7は、フェライト4に貫入しているため、母材2への持続性が高い。 【0022】 このため、フェライト4に貫入した固体潤滑材の粒子塊7は、時間経過後も、摺動部材1の摺動面を低摩擦な摺動特性に持続することが可能であるので、この摺動部材1を使用した機器の長寿命化が可能になり、その信頼性を向上させることができる。また、摺動部材1の長寿命化に伴い、この摺動部材1の交換時期が延長され、その交換等のメンテナンス作業を軽減させることができる。 【0023】 次に、本発明の摺動部材の製造方法の一実施の形態を図2を用いて説明する。 まず、図2の(a)で示すように、摺動部材1における母材2の表面組織をマルテンサイトとフェライトの混合組織にする第1工程を説明すると、摺動部材1における母材2の材質は、一般的に炭素含有量0.77%以下の鋼(亜共析鋼)である。これを材質とする摺動部材1における母材2を、図2の(a)で示すように、炉焼入れ、高周波焼入れ、レーザ焼入れ、炎焼入れ等の熱処理を行う。 【0024】 図3は、本発明の説明に用いる鉄−炭素系平衡状態図で、その横軸は炭素含有量W(%)を、縦軸は温度T(℃)を示し、Aはオーステナイト組織を、Bはフェライトとセメンタイトとの組織を、更にCはオーステナイトとフェライトとの組織である。この図3におけるオーステナイトとフェライトとの組織Cの摺動部材1を、例えば焼入れの加熱温度をA1点以上A3点以下の範囲内で熱処理した後、水、油等によって冷却することで、摺動部材1における母材2の表面の金属組織を、マルテンサイト3とフェライト4との混合組織に組成することができる。 【0025】 摺動部材1における母材2の加熱温度TをA1点寄りに設定すると、摺動部材1における母材2の表面でのフェライト4の露出面積率を下げることができ、また加熱温度TをA3点寄りに設定すると、摺動部材1における母材2の表面でのフェライト4の露出面積率を上げることが可能である。 【0026】 次に、図2の(b)におけるフェライト4に固体潤滑材の粒子塊7を形成する第2工程を説明する。この固体潤滑材の粒子塊7は、フェライト4に固体潤滑材の粒子6を貫入させることにより、形成する。 【0027】 図4は、フェライト4に固体潤滑材の粒子6を噴射衝突させ装置の一例を示すもので、この図4において、図1と同符号のものは同一部分である。摺動部材1における母材2は、固定治具40に固定される。この固定治具40は、図示しない駆動機構によって図4の紙面上、上下方向(X方向),図4の紙面上、直角方向(Y方向)及び図4の紙面上、左右方向(Z方向)の3方向に移動可能である。 【0028】 固定治具40と対向する位置には、固体潤滑材の粒子6を噴射する噴射機41が配置されている。この噴射機41は、噴射材である固体潤滑材の粒子6を蓄積するタンク42と、このタンク42の下部に設けた噴射ノズル43と、この噴射ノズル43に連結した空気絞り部44を有する高圧空気供給管45とで構成されている。 【0029】 上記の噴射機41は、高圧空気を高圧空気供給管45に供給することにより、高圧空気は絞り部44で絞られて、加速され噴射ノズル43から摺動部材1における母材2の表面に噴出させる。 【0030】 この際、空気絞り部44により、その下流側が低圧になるので、タンク42内の固体潤滑材の粒子6は、噴射ノズル43内に逐次移動し、高圧空気と共に、噴射ノズル43から母材2の表面に噴出され、その表面に衝突する。そして、母材2の表面に露出しているフェライト4には、固体潤滑材の粒子6が貫入し、このフェライト4の部分を固体潤滑材粒子塊7に形成する。 【0031】 そして、固定治具40は、図示しない駆動機構によって図4の紙面上、上下方向(X方向),図4の紙面上、直角方向(Y方向)及び図4の紙面上、左右方向(Z方向)の3方向に移動させることにより、母材2の表面に露出しているフェライト4の大部分を、固体潤滑材粒子塊6に形成することができる。 【0032】 母材2の表面に衝突して付着、貫入しなかった固体潤滑材の粒子6は、回収装置によって回収し、母材2の表面に噴射使用すれば、固体潤滑材の粒子6の再利用が可能になり、資材費を軽減することができる。 【0033】 なお、上記の噴射機41としては、上記のものに限られず、例えば、市販のショットピーニング機またはサンドブラスト機でも使用可能である。 【0034】 次に、上記の第2工程で処理された母材2の表面に、図2の(c)で示すように低摩擦層8を形成する第3工程を説明すると、固体潤滑材としての二硫化モリブデンを母材2の表面にコーティングする際には、スプレー、どぶづけ等の処理が用いられる。 【0035】 その理由は、母材2の表面温度が200℃以上に上昇すると、マルテンサイトが焼戻ってしまい、表面硬度が低下してしまうためからである。 【0036】 上述の工程によって、高面圧下で使用可能な摺動部材を製造することができる。そして、本発明の製造方法によれば、母材の組織中のフェライトに固体潤滑材の粒子を打ち込むことにより、高面圧下で使用可能な摺動部材を提供することができるので、その製作費が安価であると共に、その短時間での製作が可能である。 【0037】 なお、上記の製造方法において、噴射材である固体潤滑材の粒子6に混合材を混入して使用することも可能である。この混合材としては、フェライト4の硬度より高く、マルテンサイト3の硬度よりも低い金属、樹脂、ガラス等の粒子を使用することができる。噴射材に混合材を混入させることで、フェライト4への固体潤滑材の粒子6の貫入度、均一性を高めることができる。 【0038】 ただし、これらの混合材の含有量は10wt%を上回ると、摺動部材1の表面に形成した低摩擦層8を破壊、脱落させてしまうため、混合材の含有量は10wt%以下に抑えることが好ましい。混合材の粒径は1〜10μmが良い。この硬質粒子を含有することで加工速度を向上させることが可能であるからである。 【0039】 また、上述した製造方法における第3工程で、摺動部材1の表面に形成する低摩擦層8は、200℃以下での処理が可能なダイアモンド・ライク・カーボン(DLC)によるコーティングを行っても、本発明の摺動部材を製造することが可能である。また、低摩擦層8を、摺動初期の低摩擦に大きく効果を発揮する樹脂系のコーティング層に形成することも可能である。その材質として、アクリル系、ポリエチレン系、POM、ナイロン、PET,ポリアミド、ポリミド、フッ素樹脂等を使用することができる。 【0040】 また、上述の実施の形態においては、母材の熱処理を行う第1工程と、固体潤滑材粒子塊7を形成する第2工程と、低摩擦層8を形成する第3工程とで製造することを説明したが、摺動部材1がマルテンサイト3とフェライト4との組成された材料を使用する場合には、第1工程を省略することができる。 【0041】 上述の実施の形態においては、摺動部材1にける母材2の材質が、鋼である場合について説明したが、摺動部材1の表面が、黒鉛、マルテンサイト3、フェライト4で構成されるような鋳鉄でも、本発明の摺動部材を提供することができるとともに、その製造方法も同様に可能である。 【0042】 なお、上述の実施の形態においては、摺動部材1の表面に低摩擦層8を形成したが、固体潤滑材粒子塊7を摺動部材1の表面から突出させることにより、固体潤滑材粒子塊7が、摺動面の摺動初期のなじみ性の効果を発揮するので、本発明において、上記の低摩擦層8の形成を省略することも可能である。 【図面の簡単な説明】 【0043】 【図1】本発明の摺動部材の表面の金属組織の一実施の形態を模式的に示す断面図である。 【図2】本発明の摺動部材の製造方法の一実施の形態を示す工程図である。 【図3】本発明の製造方法における熱処理に関連する鉄−炭素平衡状態図である。 【図4】本発明の製造方法に用いる粒子噴射装置の一例の構成を示す図である。 【符号の説明】 【0044】 1 摺動部材 2 母材 3 マルテンサイト 4 フェライト 6 固体潤滑材の粒子 7 固体潤滑材粒子塊 8 低摩擦層
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005522 【氏名又は名称】日立建機株式会社
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| 【出願日】 |
平成17年11月14日(2005.11.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077816 【弁理士】 【氏名又は名称】春日 讓
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| 【公開番号】 |
特開2007−132491(P2007−132491A) |
| 【公開日】 |
平成19年5月31日(2007.5.31) |
| 【出願番号】 |
特願2005−328800(P2005−328800) |
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