トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F02 燃焼機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの

【発明の名称】 内燃機関のノック判定装置
【発明者】 【氏名】竹村 優一

【氏名】金子 理人

【要約】 【課題】内燃機関のノック判定装置において、ノック発生によるノック判定値の上昇を抑制しつつ、運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇に対しては、これに追従させてノック判定値を上昇させることができるようにする。

【解決手段】ノックセンサの出力信号から求められる振動強度が連続してノック判定値を超える回数を判定し、この回数が所定値未満であれば、ノックによる振動強度の上昇と判断して、ノック判定値の更新(振動強度分布の統計的指標の更新)を禁止する。一方、振動強度が連続してノック判定値を超える回数が所定値以上であれば、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇と判断して、ノック判定値の更新(振動強度分布の統計的指標の更新)を許可することで、運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇に追従させてノック判定値を上昇させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のノック振動を検出するノックセンサと、
内燃機関の運転中に所定のサンプル周期で前記ノックセンサの出力信号から振動強度を算出する振動強度算出手段と、
前記振動強度のデータを統計的に処理して振動強度分布の統計的指標を算出する分布判定手段と、
前記振動強度分布の統計的指標に基づいてノック判定値を設定するノック判定値設定手段と、
前記振動強度を前記ノック判定値と比較してノックの有無を判定するノック判定手段と を備えた内燃機関のノック判定装置において、
前記分布判定手段は、前記ノック判定値を超える大きな振動強度のデータを前記統計的指標の算出に使用しないようにする手段と、前記振動強度が連続的に前記ノック判定値を超える回数又は頻度が所定値以上となったときに前記ノック判定値を超える大きな振動強度のデータも前記統計的指標の算出に使用する手段とを備えていることを特徴とする内燃機関のノック判定装置。
【請求項2】
前記分布判定手段は、前記振動強度分布の統計的指標として、前記振動強度分布の中央値、平均値、ばらつき指標のいずれか1つ以上を算出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のノック判定装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ノックセンサの出力信号から求められた振動強度をノック判定値と比較してノックの有無を判定する内燃機関のノック判定装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1(特許第2605805号公報)に示すように、ノックセンサの出力信号から算出された振動強度の対数変換値の分布(以下「振動強度分布」という)を判定し、この振動強度分布からノック判定値を演算するようにしたものがある。このノック判定値の演算方法を図2に基づいて説明すると、振動強度分布の形状を評価する統計的指標となる中央値VMEDと標準偏差σを算出し、この標準偏差σをu倍(一般には3倍)した値を中央値VMEDに加算してノック判定値を求めるようにしている。
ノック判定値=VMED+u×σ
【特許文献1】特許第2605805号公報(第3頁〜第4頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ノック判定値は、エンジン運転条件が同じであれば、ノックが発生しているか否かにかかわらず、同じ判定値を取ることが望ましい。しかし、ノックの振動強度は、ノック無し時の振動強度分布の上限の振動強度よりも大きくなるため、ノックが発生すると、振動強度分布が変化して、振動強度分布の形状を評価する統計的指標(中央値VMEDと標準偏差σ)が変化し、その結果、この統計的指標に基づいて算出するノック判定値が大きくなる方向に変化する。このため、ノック発生頻度が多くなるほど、ノック判定値が大きくなって、実際にノックが発生しているのにそのノックを検出しにくくなる現象が発生する。
【0004】
このような現象を避けるために、ノック判定値を超える大きな振動強度のデータは、振動強度分布の統計的指標の算出に使用しないようにすることが考えられている。
しかし、ノック無し時でも振動強度のレベルが常にほぼ一定になるとは限らず、エンジン運転条件の急変(例えばアイドル状態からの急加速、可変バルブタイミングの急変等)やノイズの重畳等により振動強度のレベルがステップ的に上昇することがある。従って、振動強度分布の統計的指標を算出する際に、ノック判定値を超える大きな振動強度のデータを使用しない状態をいつまでも継続すると、エンジン運転条件の急変やノイズ等により振動強度のレベルがステップ的に上昇した場合でも、ノック判定値を全く更新できなくなってしまい、振動強度のレベルが定常的にノック判定値を超えてしまう可能性がある。その結果、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇をノック頻発状態と誤判定してしまう可能性がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、ノック発生によるノック判定値の上昇を抑制しつつ、運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇に対しては、これに追従させてノック判定値を上昇させることができ、ノックの判定精度を向上させることができる内燃機関のノック判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、内燃機関のノック振動を検出するノックセンサと、内燃機関の運転中に所定のサンプル周期で前記ノックセンサの出力信号から振動強度を算出する振動強度算出手段と、前記振動強度のデータを統計的に処理して振動強度分布の統計的指標を算出する分布判定手段と、前記振動強度分布の統計的指標に基づいてノック判定値を設定するノック判定値設定手段と、前記振動強度を前記ノック判定値と比較してノックの有無を判定するノック判定手段とを備えた内燃機関のノック判定装置において、前記分布判定手段は、前記ノック判定値を超える大きな振動強度のデータを前記統計的指標の算出に使用しないようにする手段と、前記振動強度が連続的に前記ノック判定値を超える回数又は頻度が所定値以上となったときに前記ノック判定値を超える大きな振動強度のデータも前記統計的指標の算出に使用する手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
現在の電子制御化が進んだ内燃機関の制御システムでは、ノック検出状態に応じて点火時期を制御するため、ノックは散発的に発生するだけである。これはノックが連続的に発生しないように点火時期が制御されるためである。これに対して、エンジン運転条件の急変やノイズの重畳等により振動強度のレベルがステップ的に上昇する場合は、ノック発生時とは異なり、振動強度のレベルが連続的に大きくなる。
【0008】
このような特徴に着目して、本発明は、振動強度が連続的にノック判定値を超える回数又は頻度を判定し、この回数又は頻度が所定値以上であるか否かで、運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇と、ノックによる振動強度の上昇とを区別する。要するに、振動強度が連続的にノック判定値を超える回数又は頻度が所定値未満であれば、ノックによる振動強度の上昇と判断して、ノック判定値を超える大きな振動強度のデータを統計的指標の算出に使用しないようにすることで、ノック判定値の更新を禁止して、ノック発生によるノック判定値の上昇を抑制し、ノック発生時にノックを検出しにくくなる現象を回避する。
【0009】
一方、振動強度が連続的にノック判定値を超える回数又は頻度が所定値以上であれば、運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇と判断して、ノック判定値を超える大きな振動強度のデータも統計的指標の算出に使用することで、ノック判定値の更新を許可して、運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇に追従させてノック判定値を上昇させる。これにより、運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇をノックと誤判定することを防止する。
【0010】
この場合、請求項2のように、振動強度分布の統計的指標として、振動強度分布の中央値、平均値、ばらつき指標のいずれか1つ以上を算出するようにすれば良い。ここで、ばらつき指標は、振動強度分布全体の標準偏差σ、分散V、或は、振動強度分布の中央値以下の領域の標準偏差(ばらつき指標)のいずれを用いても良い。これらの統計的指標を用いれば、精度の良いノック判定値を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、モータ10によって開度調節されるスロットルバルブ15とスロットル開度を検出するスロットル開度センサ16とが設けられている。
【0012】
更に、スロットルバルブ15の下流側には、サージタンク17が設けられ、このサージタンク17には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ18が設けられている。また、サージタンク17には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド19が設けられ、各気筒の吸気マニホールド19の吸気ポート近傍に、それぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁20が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ21が取り付けられ、各点火プラグ21の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0013】
一方、エンジン11の排気管22には、排出ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する三元触媒等の触媒23が設けられ、この触媒23の上流側に、排出ガスの空燃比を検出する空燃比センサ24が設けられている。また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ25と、ノック振動を検出するノックセンサ28と、エンジン11のクランク軸が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ26が取り付けられている。このクランク角センサ26の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0014】
これら各種センサの出力は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)27に入力される。このECU27は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御プログラムを実行することで、燃料噴射弁20の燃料噴射量や点火プラグ21の点火時期を制御する。
【0015】
更に、このECU27は、後述する図3及び図4のノック判定ルーチンを実行することで、各気筒の点火毎にノックセンサ28の出力信号から振動強度を算出して、その振動強度をノック判定値と比較してノックの有無を判定し、ノック有りと判定したときに点火時期を遅角補正してノックを抑制し、ノック無しの状態が続いたときに点火時期を進角補正するというノック制御を行うことで、聴感で許容できるノック音の範囲内で点火時期を進角させてエンジン出力や燃費を向上させるようにしている。
【0016】
ここで、振動強度の算出方法は、所定のノック判定区間におけるノックセンサ28の出力信号のピーク値を対数変換した値を振動強度として算出すれば良い。この他、所定のノック判定区間におけるノックセンサ28の出力信号の積分値を対数変換した値を振動強度として算出するようにしても良い。このように、ノックセンサ28の出力信号のピーク値(又は積分値)を対数変換した値を振動強度として用いると、ノック無し時の振動強度分布がほぼ正規分布になる。
【0017】
また、ノック判定値は、次のようにして算出される。
まず、図2に示すように、振動強度分布の特徴を表す統計的指標である中央値VMEDと、この中央値VMEDより振動強度が小さい領域の標準偏差σ(ばらつき指標)を後述する近似的な統計処理により算出する。
【0018】
そして、この振動強度分布の中央値VMEDに標準偏差σのu倍の値を加算してノック判定値を求める。
ノック判定値=VMED+u×σ (uは定数)
ここで、定数uは、ノック判定値が振動強度分布の上限付近の値となるように適合するのが好ましく、一般には、定数uを3に設定すれば良いと思われるが、エンジン毎のばらつき度合、振動強度分布の形状や要求されるノック検出感度等によっては、定数uを3以外の値(例えば2、2.5、3.5、4等)に設定した方が良い場合もある。
【0019】
上述したように、エンジン運転中は、各気筒の点火毎にノックセンサ28の出力信号から振動強度を算出して、その振動強度をノック判定値と比較してノックの有無を判定し、ノック有りと判定したときに点火時期を遅角補正してノックを抑制し、ノック無しの状態が続いたときに点火時期を進角補正するというノック制御が行われる。このため、図6に示すように、ノックは散発的に発生するだけである。これはノックが連続的に発生しないように点火時期が制御されるためである。
【0020】
これに対して、エンジン運転条件の急変(例えばアイドル状態からの急加速、可変バルブタイミングの急変等)やノイズの重畳等により振動強度のレベルがステップ的に上昇する場合は、ノック発生時とは異なり、振動強度のレベルが連続的に大きくなる(図7参照)。
【0021】
このような特徴に着目して、本実施例では、振動強度が連続してノック判定値を超える回数を判定し、この回数が所定値以上であるか否かで、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇と、ノックによる振動強度の上昇とを区別する。要するに、振動強度が連続してノック判定値を超える回数が所定値未満であれば、ノックによる振動強度の上昇と判断して、ノック判定値を超える大きな振動強度のデータを統計的指標(中央値VMED、標準偏差σ)の算出に使用しないようにすることで、ノック判定値の更新を禁止して、ノック発生によるノック判定値の上昇を抑制し、ノック発生時にノックを検出しにくくなる現象を回避する。
【0022】
一方、振動強度が連続してノック判定値を超える回数が所定値以上であれば、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇と判断して、ノック判定値を超える大きな振動強度のデータも統計的指標の算出に使用することで、ノック判定値の更新を許可する。これにより、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇に追従させてノック判定値を上昇させて、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇をノック頻発状態と誤判定することを防止する。
【0023】
以上説明した本実施例のノック判定は、ECU27によって図3及び図4のノック判定ルーチンに従って次のようにして実行される。図3及び図4のノック判定ルーチンは、各気筒のノック判定区間終了毎に起動される。本ルーチンが起動されると、まずステップ101で、所定のノック判定区間におけるノックセンサ28の出力信号のピーク値(又は積分値)を検出する。この後、ステップ102に進み、このピーク値(又は積分値)を対数変換した値を振動強度として算出する。このステップ102の処理が特許請求の範囲でいう振動強度算出手段としての役割を果たす。
【0024】
この後、ステップ103に進み、前回のノック発生/ノック無しの判定時からの燃焼回数をカウントする燃焼回数カウンタNをカウントアップする。本ルーチンでは、後述する図4のステップ117〜120の処理によって、所定燃焼回数K2に達するまでの間に振動強度がノック判定値を超えた回数が所定回数K3を越えているか否かで、ノック発生/ノック無しを判定する。
【0025】
燃焼回数カウンタNのカウントアップ後、ステップ104に進み、振動強度分布の中央値VMEDに標準偏差σのu倍の値を加算してノック判定値を求める。
ノック判定値=VMED+u×σ (uは定数)
ここで、振動強度分布の中央値VMEDと標準偏差σは、前回又はそれ以前の本ルーチンの実行時に後述する図4のステップ111〜116の処理により更新された値が用いられる。このステップ104の処理が特許請求の範囲でいうノック判定値設定手段としての役割を果たす。
【0026】
この後、ステップ105に進み、振動強度をノック判定値と比較し、振動強度がノック判定値以下と判定されれば、後述する図4のステップ111〜116の処理により振動強度分布の中央値VMEDと標準偏差σを近似的な統計処理により更新する。
【0027】
一方、上記ステップ105で、振動強度がノック判定値を超えていると判定されれば、ステップ106に進み、所定燃焼回数K2に達するまでの間に振動強度がノック判定値を超えた回数をカウントするuσ超えカウンタNsgmをカウントアップして、ステップ107に進み、振動強度が連続してノック判定値を超えた回数をカウントする連続uσ超えカウンタNseqをカウントアップする。
【0028】
そして、次のステップ108で、連続uσ超えカウンタNseqのカウント値(振動強度が連続してノック判定値を超えた回数)が所定回数K1を超えたか否かを判定し、所定回数K1を超えていなければ、ノックによる振動強度の上昇と判断して、後述する図4のステップ117に進む。この場合は、図4のステップ111〜116の振動強度分布の中央値VMEDと標準偏差σの更新処理が行われない。従って、ノックによる振動強度の上昇と判断された場合、ノック判定値を超える大きな振動強度のデータは、振動強度分布の中央値VMEDと標準偏差σの更新処理に使用されず、ノック発生によるノック判定値の上昇が抑制される。
【0029】
これに対して、上記ステップ108で、連続uσ超えカウンタNseqのカウント値(振動強度が連続してノック判定値を超えた回数)が所定回数K1を超えていれば、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇と判断して、ステップ109に進み、連続uσ超えカウンタNseqをリセットして(Nseq=0)、図4のステップ111〜116の処理により振動強度分布の中央値VMEDと標準偏差σを近似的な統計処理により更新する。従って、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇が発生した場合は、ノック判定値を超える大きな振動強度のデータも中央値VMEDと標準偏差σの更新処理に使用される。その結果、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇が発生した場合は、その振動強度のステップ的なレベル上昇に追従してノック判定値が上昇する。
【0030】
上述したように、振動強度がノック判定値以下の場合や、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇が発生した場合は、図4のステップ111に進み、振動強度分布の中央値VMEDと今回の振動強度とを比較し、今回の振動強度が振動強度分布の中央値VMEDよりも大きければ、ステップ112に進み、現在の中央値VMEDに所定値C1を加算した値(VMED+C1)を新たな中央値VMEDとする。また、今回の振動強度が中央値VMED以下であれば、ステップ113に進み、現在の中央値VMEDに所定値C1を減算した値(VMED−C1)を新たな中央値VMEDとする。このように、振動強度と中央値VMEDとの大小関係により、中央値VMEDを±C1ずつ更新することで、中央値VMEDの更新値を速やかに適正値に収束させる。
【0031】
この後、ステップ114に進み、今回の振動強度が振動強度分布の中央値VMEDからVMED−σの範囲内(VMED−σ<振動強度≦VMED)であるか否かを判定し、今回の振動強度が中央値VMEDからVMED−σの範囲内に存在すれば、ステップ115に進み、現在の標準偏差σから所定値C2の2倍の値を減算した値(σ−2×C2)を新たな標準偏差σとする。また、今回の振動強度が中央値VMEDからVMED−σの範囲に存在しなければ、ステップ116に進み、現在の標準偏差σに所定値C2を加算した値(σ+C2)を新たな標準偏差σとする。上記ステップ105〜116の処理は、特許請求の範囲でいう分布判定手段としての役割を果たす。
【0032】
つまり、図5に示すように、振動強度分布が正規分布になると仮定すると、振動強度分布の中央値VMEDからVMED−σの範囲内に存在する頻度とそれ以外の領域に存在する頻度は、1:2の割合になるため、今回の振動強度が中央値VMEDからVMED−σの範囲内に存在すれば、σ−2×C2を新たな標準偏差σとし、今回の振動強度が中央値VMEDからVMED−σの範囲に存在しなければ、σ+C2を新たな標準偏差σとするという処理を繰り返すことで、標準偏差σの更新値は、振動強度分布が正規分布になると仮定した場合の標準偏差とほぼ等しくなる。
【0033】
尚、中央値VMEDと標準偏差σの初期値は、予め設定された所定値又は学習値(前回のエンジン停止時の記憶値)に設定しても良いし、0であっても良い。いずれの場合でも、エンジン始動後から数秒程度で、中央値VMEDと標準偏差σの更新値が適正値に収束する。
【0034】
中央値VMEDと標準偏差σの更新後、ステップ117に進み、燃焼回数カウンタNのカウント値が所定燃焼回数K2(例えば200回)以上であるか否かを判定し、所定燃焼回数K2未満であれば、ノック発生/ノック無しの判定を行わずに本ルーチンを終了する。一方、燃焼回数カウンタNのカウント値が所定燃焼回数K2以上であれば、ステップ118に進み、uσ超えカウンタNsgmのカウント値(振動強度がノック判定値を超えた回数)が所定回数K3を越えているか否かを判定し、所定回数K3を越えていれば、ステップ119に進み、“ノック発生”と判定し、所定回数K3を超えていなければ、ステップ120に進み、“ノック無し”と判定する。この後、ステップ121に進み、燃焼回数カウンタNとuσ超えカウンタNsgmを共にリセットして本ルーチンを終了する。上記ステップ105〜110、117〜121の処理が特許請求の範囲でいうノック判定手段としての役割を果たす。
【0035】
以上説明した本実施例では、図6に示すように、ノックが発生している場合、振動強度がノック判定値を超える毎に、そのノック判定値を超える大きな振動強度のデータは、振動強度分布の中央値VMEDと標準偏差σの更新処理に使用されず、ノック判定値の更新が禁止される。これにより、ノック発生によるノック判定値の上昇が抑制される。これにより、ノック発生時にノックを検出しにくくなる現象が回避される。ノック制御により、ノックは散発的に発生するだけであるため、振動強度が連続してノック判定値を超えた回数をカウントする連続uσ超えカウンタNseqは、所定回数K1を超えることなく、リセットされる。
【0036】
一方、図7に示すように、エンジン運転条件の急変(例えばアイドル状態からの急加速、可変バルブタイミングの急変等)やノイズの重畳等により振動強度のレベルがステップ的に上昇すると、ノック発生時とは異なり、振動強度が連続してノック判定値を超えるため、振動強度が連続してノック判定値を超えた回数をカウントする連続uσ超えカウンタNseqが毎回カウントアップして、その連続uσ超えカウンタNseqのカウント値が所定回数K1(図7の例ではK1=3)を超えた時点で、ノック判定値を超える大きな振動強度のデータも中央値VMEDと標準偏差σの更新処理に使用され、ノック判定値の更新が許可される。その結果、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇が発生した場合は、その振動強度のステップ的なレベル上昇に追従してノック判定値が上昇する。これにより、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇をノックと誤判定することを防止する。
【0037】
尚、図3及び図4のノック判定ルーチンでは、振動強度が連続してノック判定値を超えた回数が所定回数K1を超えたか否かで、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇と、ノックによる振動強度の上昇とを区別するようにしたが、振動強度がノック判定値を超える頻度(例えば所定燃焼回数当たりの振動強度がノック判定値を超える回数)が所定値を超えたか否かで、エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇と、ノックによる振動強度の上昇とを区別するようにしても良い。
【0038】
また、本実施例では、振動強度分布の形状を評価する統計的指標となる中央値VMEDと標準偏差σ(ばらつき指標)を、近似的な統計処理により算出するようにしたので、振動強度分布の中央値VMEDと標準偏差σ(ばらつき指標)の更新速度ひいてはノック判定値の更新速度を高速化できるという利点があるが、本発明は、一般的な統計処理により振動強度分布の中央値VMEDと標準偏差σ(ばらつき指標)を算出するようにしても良い。また、ばらつき指標として、標準偏差σに代えて、例えば分散V(=σ2 )を用いるようにしても良い。
【0039】
また、本実施例では、ノック状態に応じた波形の信号を出力するセンサとして、シリンダブロックの振動を検出するノックセンサ28を用いるようにしたが、燃焼圧を検出する燃焼圧センサ(筒内圧センサ)をノックセンサとして用いるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例におけるエンジン制御システム全体の概略構成図である。
【図2】振動強度分布の中央値VMEDと標準偏差σとノック判定値の関係を説明する図である。
【図3】ノック判定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである(その1)。
【図4】ノック判定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである(その2)。
【図5】振動強度分布のうちの中央値VMEDより振動強度が小さい領域の標準偏差σの技術的意味を説明する図である。
【図6】ノックが発生している場合のノック判定処理を説明するタイムチャートである。
【図7】エンジン運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇が発生した場合のノック判定処理を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
【0041】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、15…スロットルバルブ、20…燃料噴射弁、22…排気管、27…ECU(振動強度算出手段,分布判定手段,ノック判定値設定手段,ノック判定手段)、28…ノックセンサ
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成17年9月16日(2005.9.16)
【代理人】 【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男


【公開番号】 特開2007−77968(P2007−77968A)
【公開日】 平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願番号】 特願2005−270648(P2005−270648)