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【発明の名称】 高層建築物
【発明者】 【氏名】林 三雄

【氏名】浜田 公也

【氏名】傅 金華

【氏名】武菱 邦夫

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度のプレキャストコンクリート部材をPC緊張材で縦方向に圧着接合して成る連層形式のプレキャストプレストレストコンクリートコア壁を建築物の平面視中央部に備えたことを特徴とする高層建築物。
【請求項2】
前記建築物の外周をフレーム構造としたことを特徴とする請求項1記載の高層建築物。
【請求項3】
前記フレーム構造が、高強度のプレキャストコンクリート造の柱および梁をPC緊張材で圧着接合して成る架構であることを特徴とする請求項1又は2記載の高層建築物。
【請求項4】
前記コア壁は建物の高さの1/3より下層の階における層の30%〜70%の水平力を負担する断面とし、外周フレームより曲げ剛性の大きい断面としたことを特徴とする請求項2又は3記載の高層建築物。
【請求項5】
前記コア壁は圧縮域の剛性低下を生じない断面及び配筋を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の高層建築物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、高層建築物に関する。さらに詳しくは、プレキャストプレストレストコンクリート(PCaPC)コア壁を用いた、耐震架構を備えた高層建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明において、「高層」の建築物とは、高さ31mを超える建築物をいい、高さ60mを超える超高層建築物を含む。また、「PCa」とは、プレキャストコンクリートをいい、「PCaPC」とは、プレキャストプレストレストコンクリートをいう。さらに、「PCaPC圧着工法」とは、PCa部材或いはPCaPC部材をPC緊張材で圧着接合して架構を形成する工法のことをいう。
【0003】
従来からコア壁を用いた高層建築物が知られている。このような従来の構造物では、コア壁は現場打ちの鉄筋コンクリート(RC)構造、外周フレームはRC構造或いは鉄骨(S)構造で構成されているものが殆どである。(例えば特許文献1参照)。
【0004】
構造物に作用する地震時水平力の多くはRCコア壁が負担するので、このような技術では、RCコア壁の耐震性能が建築物全体の耐震性能に及ぼす影響が大きい。従って、RCコア壁における強度および靭性の確保が必要になる。RCコア壁の強度を確保するためには、コア壁の断面内に多量の鉄筋を配筋したり、コア壁脚部の曲げモーメントを低減させるために最上階に曲げ戻し用の巨大な梁や制震装置を付加している。また、靭性の確保のためには、多量の横拘束筋を配筋したり、鉄板で外周を補強したりしている。しかしながら、RC構造では地震後に残留変位が生じることが特徴であり、これを本質的に変えることはできない。
【0005】
また、限られたコア壁の断面中に多量の鉄筋を配置することは、施工を煩雑化し、現場打ちコンクリートの品質を低下させるおそれがある。
【0006】
一方、従来のプレストレストコンクリート(PC)構造は、高耐力を付与しやすい特徴を持つことから、主に比較的大スパンの梁または大荷重を支える梁を持つ低層建物に適用されてきた。
【0007】
また、PC構造の概念に含まれるPCaPC圧着工法による構造は、履歴エネルギーの消費が小さく、地震動による応答変形は大きくなるが、残留変形は小さくなる特徴を持っている。しかし、PCaPC圧着法はコア壁を備えた耐震構造には未だに適用されていない。
【非特許文献1】日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸)2000年8月 P515〜516『曲げと捩りを受ける鉄筋コンクリート コ型開断面耐震の強度と変形性状 その1 実験概要と破壊性状』
【非特許文献2】日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸)2000年8月 P517〜518『曲げと捩りを受ける鉄筋コンクリート コ型開断面耐震の強度と変形性状 その2 強度と変形性状』
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
PCaPC圧着工法による構造は、上述のように、履歴エネルギーの消費が小さく、地震動による応答変形が大きい傾向にあるが、残留変形が極めて小さいことが一般的に知られている。従来のRCコア壁を用いた耐震架構構造物では、地震後に残留変形が生じてしまい、コア壁に大きなダメージが残される。
【0009】
本発明はこのような問題点を解決し、すぐれた耐震性能を有し、施工工期も短縮することができる高層建築物を提供することを目的とするものである。
【0010】
本発明者らは、PCaPC圧着工法による高層コア壁の実験を行い、力学的特性の把握および履歴特性モデルを検証し、高層PCaPCコア壁構造を可能にする技術を開発した。本発明は、このような新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、高強度のプレキャストコンクリート部材をPC緊張材で縦方向に圧着接合して成る連層形式のプレキャストプレストレストコンクリートコア壁を建築物の平面視中央部に備えたことを特徴とする高層建築物である。すなわち、高層建築物の架構を、高強度のPCa部材をPC緊張材で圧着して構築されたコア壁で構成するものとする。
【0012】
上記高層構築物において、前記建築物の外周をフレーム構造とすると好適である。ここでフレーム構造とは、柱・梁を網目状のラーメン架構とした構造を云う。
【0013】
本発明のコア壁は建物高さの1/3より下層の階においては、層の30%〜70%の水平力を負担できる断面とするとよい。コア壁は建物の耐震性確保と経済性の両面から、適切な設計が要求される。高層の建物全体のうち、建物の高さの1/3より下層の階において、適正に水平力を負担するような断面を確保することが好ましい。この高さ1/3より下層の階における水平力負担割合を全体構造の30%〜70%とするとよい。さらに好ましくは50〜70%とするとよい。この負担割合の値が30%未満または70%超では、経済性の面から適切とは云えなくなる。
【0014】
また、本発明のコア壁は、高次モードが及ぼす影響を少なくするために、外周フレームに較べて大きい剛性を持つ断面とする。さらに、靭性を確保するために圧縮域の剛性低下を生じないような断面および配筋とする。
【0015】
PC圧着工法による構造物は、高強度コンクリートを用いプレストレスを導入することによって、部材を小さく軽量化することができるため、高層建築物の架構の施工にも適している。
【0016】
前記フレーム構造を、高強度のプレキャストコンクリート造の柱および梁をPC緊張材で圧着接合して構成した架構とすれば、架構全体がより残留変形の小さな構造物となるので、好ましい。すなわち、外周フレームをコア壁と同様の性質を持つPCaPC構造の柱および梁で構成することによって、一層好適な高層建築物を得ることが出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高層建築物の平面視中央部に、高強度のプレキャストコンクリート(PCa)部材をPC緊張材で縦方向に圧着接合することにより組み立てられたPCaPCコア壁を備える構造としたので、施工性がよく耐久性能が向上した耐震架構を得ることができる。
【0018】
また、外周のフレームは、高強度のプレキャストコンクリート(PCa)造の柱および梁をPC緊張材で圧着接合することにより組み立てられた架構とし、上記PCaPCコア壁と併用することにより、残留変形が小さく、架構構成部材の断面が小さい高層建築物の築造が可能となる。
【0019】
また、高強度のプレキャスト部材を用いることにより、従来工法に較べて、高い施工性から工期の短縮が可能となり、また、高い品質から耐久性能が向上し建物の長寿命化が可能になる等の優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、高強度のプレキャストコンクリート部材をPC緊張材で縦方向に圧着接合して成る連層形式のプレキャストプレストレストコンクリートコア壁を建築物の平面視中央部に備えている。
【0021】
このようなPCaPCコア壁を用いると、残留変形が非常に小さく、コア壁が受ける損傷も軽微である。また、コア壁をプレキャストコンクリート部材とすることにより、高強度で高品質の部材を工場或いはサイトで製作することができる。従来、場所打ちコンクリートで施工するRCコア壁では、配筋の煩雑さおよび品質低下の懸念があったが、これを解消することができる。さらに、コンクリートを高強度することが比較的容易であり、またPC緊張材の強度は鉄筋に比べ高いから、コア壁の断面を小さくすることができ、鋼材量も少なくすることができる。
【0022】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1は実施例の30階建ての高層PCaPCコア壁構造物1の立面断面図を示す。図2はその高層PCaPCコア壁構造物の水平断面図を示す。コア壁10は柱20とは床23で繋がっており、この例ではコ字状断面の左右のコア壁10は境界梁11で繋がっている。
【0024】
外周フレーム20は柱21と梁22で構成されている。図3〜5はコア壁10の実施例を示すもので、図3に示すコア壁10aはコ字状断面を有し、図4に示すコア壁10bはL字状断面を有し、図5のコア壁10cはH形の断面形状を示すものである。コア壁10a,10b,10cにはPC緊張材12が配線されている。なお、断面内には縦筋および横筋が配筋されているが図3〜5ではこれらを省略している。PC緊張材10は、コア壁断面の端部は密に、中央部は疎に配列されている。
【0025】
図6はPCaPCコア壁の復元力特性30を示す模式的グラフ、図7はRCコア壁の復元力特性31を示す模式的グラフである。図6では、繰返し荷重に対して残留歪が非常に小さく、復元性に富むことが示されている。これに対して図7では残留歪が大きく、復元性が乏しく、ひび割れを生じやすい。
【0026】
本発明者らは、PCaPC圧着工法による高層コア壁の実験を行い、力学的特性の把握および履歴特性モデルを検証し、高層PCaPCコア壁構造を可能にする技術を開発した。実験に用いた試験体はモデル化されたコ型のPCaPCコア壁である。高層建築物の下層部におけるコア壁の力学性状を再現するため、試験体の頂部に曲げモーメント及び水平力を同時に加えた。
【0027】
図8はPCaPCコア壁試験体の実験結果を示すグラフで水平力−頂部変形の関係を示す履歴曲線40を示したものである。図9は場所打ちRCコア壁試験体の実験結果を示すグラフで場所打ちRCコア壁試験体の履歴曲線41を示したものである。両者の実験結果を比べると、図8のPCaPCコア壁は図9のRCコア壁よりも残留変形の少ない好適な履歴性状を示していることが明らかである。
【0028】
次に本発明の設計例を示す。
【0029】
図10はPCaPCコア壁を有する26階建の建物の設計例における、コア壁の水平力の負担率を示したものである。図10の横軸は建物各階の全水平力に占めるコア壁の負担する水平力の比(%)を示し、縦軸は建物の階を示している。図10から明らかなように、全高の1/3、すなわち9階よりも下層の階において、コア壁の負担する水平力は60%程度となっている。なお、この建物の25階のコア壁には逆せん断力が発生していることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例の高層PCaPCコア壁構造物の立面断面図である。
【図2】実施例の高層PCaPCコア壁構造物の平面図である。
【図3】PCaPCコア壁の断面図である。
【図4】PCaPCコア壁の断面図である。
【図5】PCaPCコア壁の断面図である。
【図6】PCaPCコア壁の復元力特性を示す模式的グラフである。
【図7】RCコア壁の復元力特性を示す模式的グラフである。
【図8】PCaPCコア壁試験体の実験結果を示すグラフである。
【図9】場所打ちRCコア壁試験体の実験結果を示すグラフである。
【図10】コア壁と外周フレームとの水平力負担率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0031】
1 高層PCaPCコア壁構造物
10,10a,10b,10c コア壁
11 境界梁
12 PC緊張材
20 外周フレーム
21 柱
22 梁
23 床
30 復元力特性
31 RCコア壁の復元力特性
40,41 履歴曲線
【出願人】 【識別番号】000112196
【氏名又は名称】株式会社ピーエス三菱
【識別番号】390034430
【氏名又は名称】小田急建設株式会社
【出願日】 平成18年3月27日(2006.3.27)
【代理人】 【識別番号】100079175
【弁理士】
【氏名又は名称】小杉 佳男

【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀


【公開番号】 特開2007−255166(P2007−255166A)
【公開日】 平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願番号】 特願2006−84733(P2006−84733)