| 【発明の名称】 |
多層織物及び摩擦材並びにフィルター |
| 【発明者】 |
【氏名】堀 藤夫
【氏名】川端 昌隆
【氏名】鈴木 厚
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| 【要約】 |
【課題】複数層の織り組織が結合糸で結合されて層間剥離を防止することができ、必要層数より少ない数の緯入れ機構を使用することで織成可能な多層織物を提供する。
【解決手段】二重織りを構成するように配列された経糸及び緯糸で織られた織り組織12が複数層に配列され、織り組織12を構成する隣接する緯糸の間を通過するように、かつ織物の厚さ方向に折り返すように配列された結合糸13a,13bで複数層の織り組織12が結合されている。経糸、緯糸及び結合糸には、マルチフィラメント繊維束が使用され、50〜100デニールのものが使用されている。一組の二重織りの上側の層を構成する経糸は、下側の層を構成する緯糸の上側を通るように配置され、二重織りの下側の層を構成する経糸は、上側の層を構成する緯糸の下側を通るように配置されている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも二重織りを構成するように配列された経糸及び緯糸で織られた織り組織が複数層に配列され、前記織り組織を構成する隣接する緯糸の間を通過するように、かつ織物の厚さ方向に折り返すように配列された結合糸で複数層の織り組織が結合されている多層織物。 【請求項2】 前記二重織りを構成するように配列された経糸及び緯糸のうち、一組の二重織りの上側の層を構成する経糸は、下側の層を構成する緯糸の上側を通るように配置され、二重織りの下側の層を構成する経糸は、上側の層を構成する緯糸の下側を通るように配置され、前記上側の層を構成する緯糸及び下側の層を構成する緯糸は、前記結合糸により経糸の配列方向への移動が規制された状態で交互に配置されている請求項1に記載の多層織物。 【請求項3】 前記織り組織は、二重織りに対応する構成の経糸及び緯糸のみで構成されている請求項1又は請求項2に記載の多層織物。 【請求項4】 前記二重織りに対応する構成の層は、複数組設けられている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の多層織物。 【請求項5】 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の多層織物に熱硬化性樹脂が含浸硬化されるとともに外形加工が施されて形成された摩擦材。 【請求項6】 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の多層織物で構成されたフィルター。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、多層織物及び摩擦材並びにフィルターに関する。 【背景技術】 【0002】 湿式クラッチ又は湿式ブレーキ等に使用される湿式摩擦材として、層間剥離を確実に防止することができ、摩擦材として使用した際の弾力性の低下を抑制することができる摩擦材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の摩擦材は、50デニール以下のマルチフィラメント繊維束で形成するとともに、各層の緯糸の織り密度が3本/mm以上となるように、経糸及び緯糸で織成された複数層の織り組織を結合糸で結合した三次元織物に熱硬化成樹脂が含浸硬化されている。 【0003】 また、重量物吊り上げベルトとして、鞘部と芯部とを備えた合成繊維の芯入り袋織物からなる帯体を2枚上下に重合縫着して構成した吊り上げベルトが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。 【特許文献1】特開2004−182911号公報(明細書の段落[0048]〜[0050]、図1) 【特許文献2】実開昭62−173378号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 特許文献1の摩擦材を構成する三次元織物(多層織物)は、複数層の織り組織が結合糸で結合されているため、層間剥離を確実に防止することができる。ところが、特許文献1の多層織物を織成するには、織物の層数分の緯入れ機構が必要になる。 【0005】 一方、特許文献2に記載の重量物吊り上げベルトの構成を摩擦材に適用して、袋織り組織の織物を縫合した物を摩擦材の基材とすれば、袋織りの織物を必要層数の半分の数重ねて縫合することで摩擦材の基材とすることができる。しかし、袋織り組織の織物を縫合するため、ミシン針により各層を構成する糸にダメージを与える。特に織物を摩擦材として使用する場合、表面(摩擦面)へのダメージは、摩擦係数の低下や耐久性劣化につながる。また、緻密な織物を複数層縫合すると、ミシン針が折れ易く、表面の糸を傷める。 【0006】 本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、複数層の織り組織が結合糸で結合されて層間剥離を防止することができ、必要層数より少ない数の緯入れ機構を使用することで織成可能な多層織物を提供することにある。また、第2の目的はその多層織物を使用した摩擦材又はフィルターを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 前記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、少なくとも二重織りを構成するように配列された経糸及び緯糸で織られた織り組織が複数層に配列され、前記織り組織を構成する隣接する緯糸の間を通過するように、かつ織物の厚さ方向に折り返すように配列された結合糸で複数層の織り組織が結合されている。この発明では、複数層の織り組織が結合糸で結合されているため、層間剥離が防止される。また、経糸及び緯糸は二重織りと同様な織成で織物が織られるため、多層織物の層数より少ない緯入れ機構を備えた織機で織成することができる。また、織物全体として緯糸が二重織りの織物の場合に比較して密に配置され、クッション性が向上する。 【0008】 請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記二重織りを構成するように配列された経糸及び緯糸のうち、一組の二重織りの上側の層を構成する経糸は、下側の層を構成する緯糸の上側を通るように配置され、二重織りの下側の層を構成する経糸は、上側の層を構成する緯糸の下側を通るように配置されている。また、前記上側の層を構成する緯糸及び下側の層を構成する緯糸は、前記結合糸により経糸の配列方向への移動が規制された状態で交互に配置されている。この場合、結合糸がない状態では厚さ方向において重なった状態に配置される緯糸が、結合糸の存在により厚さ方向において重なった状態に配置されずに、織物の厚さ方向及び経糸の配列方向にずれた状態で配置される。そのため、織物全体として緯糸が二重織りの織物の場合に比較して密に配置され、クッション性が向上するとともに、せん断力による層間のずれが起こり難くなり、織物の形状安定性が増す。 【0009】 請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記織り組織は、二重織りに対応する構成の経糸及び緯糸のみで構成されている。この発明の多層織物は、多層織物の層数の半分の数の緯入れ機構を備えた織機で織成することができる。 【0010】 請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記二重織りに対応する構成の層は、複数組設けられている。この発明の多層織物では、緯糸層が4層以上となる。 【0011】 請求項5に記載の発明の摩擦材は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の多層織物に熱硬化性樹脂が含浸硬化されるとともに外形加工が施されて形成されている。この発明では、摩擦材の耐久性が向上するとともに形状安定性も向上する。 【0012】 請求項6に記載の発明のフィルターは、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の多層織物で構成されている。この発明では、フィルターとして使用した際に耐久性が確保される。また、平織りの織物を重ねた構成に比較して緯糸の織り密度が高いフィルターを得るのが容易になる。 【発明の効果】 【0013】 請求項1〜請求項4に記載の発明によれば、複数層の織り組織が結合糸で結合されて層間剥離を防止することができ、必要層数より少ない数の緯入れ機構を使用することで織成可能な多層織物を提供することができる。また、請求項5又は請求項6に記載の発明によれば、その多層織物を使用した摩擦材又はフィルターを提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。図1(a)は多層織物の構造を示す模式図、(b)は多層織物を構成する経糸、緯糸、結合糸が筬打ちを受けない状態で配置された場合の構造を示す模式図、(c)は結合糸がない通常の二重織りの構成を示す模式図である。図2〜図5は多層織物の織成状態を示す模式図、図6はシート状中間品から摩擦材を打ち抜いた状態の模式斜視図である。 【0015】 図1(a)に示すように、多層織物11は、上層の経糸U1x,U2x,U3x,U4x及び緯糸U1y,U2yと、中層の経糸M1x,M2x,M3x,M4x及び緯糸M1y,M2yと、下層の経糸L1x,L2x,L3x,L4x及び緯糸L1y,L2yとで構成される織り組織12が複数層(この実施形態では6層)に配列されている。上層、中層及び下層の織り組織12は、それぞれ二重織りを構成するように配列された経糸及び緯糸で織られ、複数層の織り組織12は、隣接する緯糸U1y,U2y、M1y,M2y、L1y,L2yの間を通過するように、かつ織物の厚さ方向に折り返すように配列された結合糸13a,13bで結合されている。各組織12は平織りで構成されている。二重織りを構成するように配列された経糸及び緯糸のうち、一組の二重織りの上側の層を構成する経糸U1x,U2x,M1x,M2x,L1x,L2xは、下側の層を構成する緯糸U2y,M2y,L2yの上側を通るように配置されている。また、二重織りの下側の層を構成する経糸U3x,U4x,M3x,M4x,L3x,L4xは、上側の層を構成する緯糸U1y,M1y,L1yの下側を通るように配置されている。 【0016】 図1(a)において、左側を多層織物11の前側とすると、二重織りを構成する際の各一組の緯糸U1y,U2y、M1y,M2y、L1y,L2yのうち、後側に配置される緯糸U2y,M2y,L2yは、前側に配置される緯糸U1y,M1y,L1yに対して一段低く配置されることにより、多層織物11は全体として6層に構成されている。 【0017】 図1(b)に示すように、織成時に筬打ちを行わずに各経糸U1x,U2x等、緯糸U1y,U2y等及び結合糸13a,13bを配列した場合、上層の経糸U1x,U2xは緯糸U1yに対して1本置きに同じ側を通るように配列され、経糸U3x,U4xは緯糸U2yに対して1本置きに同じ側を通るように配列される。同様に、中層の経糸M1x,M2xは緯糸M1yに対して1本置きに同じ側を通るように配列され、経糸M3x,M4xは緯糸M2yに対して1本置きに同じ側を通るように配列される。また、下層の経糸L1x,L2xは緯糸L1yに対して1本置きに同じ側を通るように配列され、経糸L3x,L4xは緯糸L2yに対して1本置きに同じ側を通るように配列される。 【0018】 結合糸13a,13bは前側の緯糸U1y,M1y,L1yと、後側の緯糸U2y,M2y,L2yとの間を通過するように配列される。この状態から各経糸U1x〜U4x、M1x〜M4x、L1x〜L4x及び結合糸13a,13bが引き締められるとともに筬打ちの作用により後側の緯糸U2y,M2y,L2yが前側の緯糸U1y,M1y,L1yに近づくように移動配置されると、図1(a)に示す構造となる。各組の二重織りの上側の層を構成する緯糸U1y,M1y,L1y及び下側の層を構成する緯糸U2y,M2y,L2yは、結合糸13a,13bにより経糸の配列方向への移動が規制された状態で交互に配置されている。 【0019】 一方、結合糸13a,13bの存在しない従来の二重織りでは、各経糸U1x〜U4x,M1x〜M4x,L1x〜L4xが引き締められるとともに筬打ちの作用により後側の緯糸U2y,M2y,L2yが前側の緯糸U1y,M1y,L1yに近づくように配置されると、図1(c)に示す構造となる。即ち、後側の緯糸U2y,M2y,L2yは、前側の緯糸U1y,M1y,L1yの下側に配置され、厚さ方向から見た場合、緯糸U1y,M1y,L1yと緯糸U2y,M2y,L2yとが重なった状態となる。 【0020】 結合糸13a,13bの合計本数は多層織物11に要求される性能により適宜設定されるが、例えば、経糸U1x〜U4xの合計本数の1/4の数に設定されている。 結合糸13aは、6層の織り組織12を一方側(図1(a)の上側)から貫くとともに他方側(図1(a)の下側)でそれぞれ折り返して、各織り組織12を他方側から貫くように配列されている。結合糸13bは、6層の織り組織12を他方側から貫くとともに一方側でそれぞれ折り返して、各組織12を一方側から貫くように配列されている。 【0021】 前記各経糸、緯糸及び結合糸には、マルチフィラメント繊維束が使用され、50〜100デニールのものが使用されている。繊維の材料としては、耐磨耗性の良いアラミド繊維、耐熱性の良い炭素繊維の単体あるいはアラミド繊維と炭素繊維とが混合されたものが使用される。 【0022】 次に前記のように構成された多層織物11の製造方法を説明する。多層織物は、例えば、2層織りのリボン織機を3層織りに改造するとともに、織り幅を拡げた織機で織成される。また、二重織りに類似する織り方を可能とするため、ヘルドの数も増加されている。 【0023】 二重織りに類似する組織12を3段同時に織成するため、図2に示すように、3本の経糸ビーム21,22,23が上下に3段に配置されている。各経糸ビーム21〜23からバックローラ24を介して送り出される経糸U1x〜U4x、M1x〜M4x、L1x〜L4xの開口毎に緯糸U1y,U2y、M1y,M2y、L1y,L2yの挿入(緯入れ)が行われるようになっている。上層(上段)の経糸開口に緯入れされる緯糸U1y,U2y、中層(中段)の経糸開口に緯入れされる緯糸M1y,M2y及び下層(下段)の経糸開口に緯入れされる緯糸L1y,L2yはそれぞれ同じ緯入れ機構(図示せず)により緯入れされる。即ち、緯入れ機構は多層織物11の層数の半分の台数設けられる。 【0024】 また、結合糸13a,13bは、経糸ビーム21〜23と同様の構成のビーム25から中段の経糸ビーム22のバックローラ24を介して送り出されるようになっている。結合糸13a,13bの合計本数は各経糸U1x等と同じ本数となるように一定間隔で配置される。結合糸13a,13bは、各経糸U1x〜U4x、M1x〜M4x、L1x〜L4xを開口するヘルド26a〜26d,27a〜27d,28a〜28dと独立して駆動されるヘルド29a,29bにより6層の織り組織12を結合するように折り返し状に配列されるようになっている。筬30は経糸U1x用のヘルド26aと織り前31との間に配置されている。 【0025】 結合糸13a,13bを移動させるヘルド29a,29bは、経糸L4x用のヘルド28dに対して織り前31と反対側に配置されている。ヘルド29a,29bは、結合糸13a,13bを経糸U1x〜U4xの開口及び経糸L1x〜L4xの開口への緯糸U1y,U2y及び緯糸L1y,L2yの挿入に支障とならないように移動させる。即ち、ヘルド29a,29bは、結合糸13a,13bとの係合部(ヘルドの目)が経糸U1x〜U4xの開口より上方と、経糸L1x〜L4xの開口より下方とで往復移動されるように構成されている。なお、ヘルドの目は図において黒丸で示されている(他のヘルドにおいても同様)。 【0026】 図2に示すように、先ず上層、中層及び下層の各経糸U1x,M1x,L1xを上側に配置し、他の経糸U2x〜U4x,M2x〜M4x,L2x〜L4xを下側に配置するように各ヘルド26a〜26d,27a〜27d,28a〜28dが配置される。また、結合糸13a用のヘルド29aの結合糸13aとの係合部が、経糸U1x,U2xの開口の上側に配置され、結合糸13b用のヘルド29bの結合糸13bとの係合部が、経糸L1x,L2xの開口の下側に配置された状態で、各経糸U1x,U2x等の開口に緯糸U1y,M1y,L1yが挿入される。 【0027】 次に筬30の筬打ち動作が行われた後、経糸U2x,M2x,L2x用の各ヘルド26b,27b,28bと、経糸U3x,M3x,L3x用の各ヘルド26c,27c,28cがそれぞれ駆動されて開口状態が変更される。また、ヘルド29a,29bが駆動されてヘルド29bの結合糸13bとの係合部は、経糸U3x,U4xの開口の上側に配置され、ヘルド29aの結合糸13aとの係合部は、経糸L3x,L4xの開口の下側に配置される。その状態で各経糸開口に緯糸U2y,M2y,L2yが挿入されて図3の状態になる。その後、筬30の筬打ち動作が行われる。 【0028】 次に経糸U1x,M1x,L1x用の各ヘルド26a,27a,28aと、経糸U3x,M3x,L3x用の各ヘルド26c,27c,28cがそれぞれ駆動されて開口状態が変更される。また、ヘルド29a,29bが駆動されてヘルド29aの結合糸13aとの係合部は、経糸U1x,U2xの開口の上側に配置され、ヘルド29bの結合糸13bとの係合部は、経糸L1x,L2xの開口の下側に配置される。その状態で各経糸開口に緯糸U1y,M1y,L1yが挿入されて図4の状態になる。その後、筬30の筬打ち動作が行われる。 【0029】 次に経糸U1x,M1x,L1x用の各ヘルド26a,27a,28aと、経糸U4x,M4x,L4x用の各ヘルド26d,27d,28dがそれぞれ駆動されて開口状態が変更される。また、ヘルド29a,29bが駆動されてヘルド29bの結合糸13bとの係合部は、経糸U3x,U4xの開口の上側に配置され、ヘルド29aの結合糸13aとの係合部は、経糸L3x,L4xの開口の下側に配置される。その状態で各経糸開口に緯糸U2y,M2y,L2yが挿入されて図5の状態になる。その後、筬30の筬打ち動作が行われる。 【0030】 次に経糸U2x,M2x,L2x用の各ヘルド26b,27b,28bと、経糸U4x,M4x,L4x用の各ヘルド26d,27d,28dがそれぞれ駆動されて開口状態が変更される。また、ヘルド29a,29bが駆動されてヘルド29aの結合糸13aとの係合部は、経糸U1x,U2xの開口の上側に配置され、ヘルド29bの結合糸13bとの係合部は、経糸L1x,L2xの開口の下側に配置される。その状態で各経糸開口に緯糸U1y,M1y,L1yが挿入されて図2の状態になる。 【0031】 以下、前記と同様に、上層、中層、下層の織り組織12の緯糸U1y,M1y,L1yの挿入と、緯糸U2y,M2y,L2yの挿入と、それらに対応する筬打ち動作、開口状態の変更とが順次行われる。そして、図1(a)に示す構成の多層織物11が製造される。 【0032】 前記のように構成された多層織物11は、熱硬化成樹脂であるフェノール樹脂を含浸させるとともに樹脂を硬化させた状態で、例えば、車両用オートマチックトランスミッションにおけるクラッチの摩擦材として使用される。 【0033】 図6に示すように、摩擦材を形成する際は、多層織物11にフェノール樹脂を含浸・硬化させて形成した中間製品であるシート15から、プレスにより円環状の摩擦材16が打ち抜き形成される。樹脂は多層織物11の空間を塞ぐのではなく、繊維の回りに付着して、摩擦材16は通気性が確保された状態に形成される。 【0034】 前記のように構成された摩擦材16は、一方の面が相手部材を押圧する状態に保持されて、その面と相手部材との摩擦により相手部材との相対移動を抑制するように作用する。織り組織12が細い繊維束でしかも織り密度が高く形成されているため、太い繊維束を使用した場合に比較して接触面積が増えて摩擦係数が大きくなり、相手部材に対する相対移動の抑制効果が高くなる。 【0035】 この実施形態では次の効果を有する。 (1)少なくとも二重織りを構成するように配列された経糸及び緯糸で織られた織り組織12が複数層に配列され、織り組織12を構成する隣接する緯糸U1y,U2y、M1y,M2y、L1y,L2yの間を通過するように、かつ織物の厚さ方向に折り返すように配列された結合糸13a,13bで複数層の織り組織12が結合されている。従って、複数層の織り組織12の層間剥離が防止される。また、二重織りと同様な織成で織物が織られるため、多層織物11の層数より少ない緯入れ機構を備えた織機で多層織物11を織成することができる。また、結合糸13a,13bがない状態では厚さ方向において重なった状態に配置される緯糸が、結合糸13a,13bの存在により厚さ方向において重なった状態に配置されずに、織物の厚さ方向及び経糸の配列方向にずれた状態で配置される。そのため、織物全体として緯糸が結合糸13a,13bの無い通常の二重織りの織物の場合に比較して密に配置され、クッション性が向上するとともに、せん断力による層間のずれが起こり難くなり、織物の形状安定性が増す。 【0036】 (2)織り組織12は、二重織りに対応する構成の経糸及び緯糸のみで構成されている。従って、多層織物11は、多層織物11の層数の半分の数の緯入れ機構を備えた織機で織成することができる。 【0037】 (3)二重織りに対応する構成の層は3組設けられており、多層織物11は、緯糸層が6層となる。従って、適度なクッション性を有する多層織物11を得やすい。 (4)結合糸13a,13bは、織り組織12の全ての層を貫通して多層織物11の厚さ方向において折り返すように配列されているため、多層織物11を織成する際のヘルド29a,29bの駆動方法が簡単になる。 【0038】 (5)各織り組織12が同じに形成されているため、表裏を確認せずに多層織物11を使用することができる。 (6)前記構成の多層織物11に熱硬化性樹脂が含浸硬化されて摩擦材16が製造されている。従って、摩擦材16の耐久性が向上するとともに、クッション性も向上する。 【0039】 (7)多層織物11を構成する繊維が炭素繊維の場合は、多層織物11から製造された摩擦材16の耐熱性が向上し、アラミド繊維の場合は耐摩耗性が向上する。 実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成してもよい。 【0040】 ○ 結合糸13a,13bは、多層織物11の表面と裏面とで折り返すように配列する代わりに、図7(a)に示すように、結合糸13aは上層の緯糸U1yと中層の緯糸M2yと対応する位置で折り返す配置とし、結合糸13bは中層の緯糸M1yと下層の緯糸L2yと対応する位置で折り返す配置としてもよい。また、図7(b)に示すように、結合糸13aは上層の緯糸U1yと中層の緯糸M2yと対応する位置で折り返す配置とし、結合糸13bは下層の緯糸L1yと中層の緯糸M2yと対応する位置で折り返す配置としてもよい。結合糸13a,13bが多層織物11の表面と裏面とで折り返す構成では、結合糸13a,13bの一方が切断されると、厚さ方向に配置された緯糸全体に対する締め付け力が弱くなる。しかし、中層の部分で折り返す構成では、結合糸13a,13bの一方が切断されても、中層より反対側の緯糸に対する締め付け力は確保される。 【0041】 ○ 多層織物11は、二重織りの層が上層、中層、下層の3層ではなく、図8(a)に示すように、上層及び下層の2層構造としたり、図8(b)に示すように、1層構造としてもよい。また、二重織りの層を4層以上としてもよい。 【0042】 ○ 多層織物11を構成する織り組織12は、二重織りを構成するように配置された経糸及び緯糸に加えて、通常の平織りを構成する経糸及び緯糸で形成される織り組織12が加えられていてもよい。通常の平織りで構成される織り組織12は、多層織物11の表面に配置されても、内部に配置されてもよい。また、1層に限らず複数層設けてもよいが、複数層設ける場合は、二重織りを構成する織り組織12で代替した方が織成が容易になる。 【0043】 ○ 多層織物11は、摩擦材16としての使用方法に限らず、例えば、フィルターとして使用してもよい。フィルターとして使用する場合は、捕集すべき異物の大きさにより経糸、緯糸及び結合糸を構成する繊維束の太さや織り組織の織り密度あるいは層数が設定される。 【0044】 ○ 多層織物11を構成する経糸、緯糸及び結合糸を全て同じ材質の繊維束で形成する必要はない。例えば、結合糸及び経糸に同じ材質の繊維束を使用し、緯糸に別の材質の繊維束を使用してもよい。 【0045】 〇 経糸、緯糸及び結合糸は、全て同じ太さの繊維束を使用する必要はなく、異なる太さの繊維束を使用してもよい。繊維束の太さを変更する場合、繊維束を構成するフィラメントの本数を変えても、本数は変えずにフィラメント自身の太さを変えてもよい。 【0046】 ○ 多層織物11の用途が、樹脂を含浸・硬化させて使用する場合は、多層織物11を構成する経糸、緯糸及び結合糸を無撚りの繊維束(マルチフィラメント)を使用する方が、樹脂の含浸が均一に行われ易いため好ましい。しかし、樹脂を含浸させずに、多層織物11の状態で使用する場合、例えば、フィルターとして使用する場合は、無撚りの繊維束ではなく撚り糸を使用する方が、耐久性の点から好ましい。 【0047】 ○ 多層織物11を織成する織機として、結合糸13a,13b用のビーム25を設けずに、経糸ビームを利用して、経糸ビームから結合糸13a,13bを繰り出すようにしてもよい。この場合、経糸と結合糸とは1回の筬打ちから次の筬打ちまでに繰り出される繊維束の長さが異なるため、それぞれ別の張力調整装置を設ける必要がある。 【0048】 ○ 前記実施形態では二重織りを構成する各組に対応して経糸ビーム21〜23を設けたが、経糸ビームの数は二重織りを構成する各組の数を設ける必要はなく、経糸ビームを1本として、多層織物11を構成する全ての経糸を1本の経糸ビームから繰り出す構成としても、多層織物11を織成することは可能である。 【0049】 以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。 (1)請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記結合糸は、多層織物を構成する全ての織り組織の層を貫通して折り返すように配列されている。 【0050】 (2)請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記二重織りに対応する構成の層は3組設けられ、前記結合糸は、多層織物の一方の面側から2組目までの前記層を貫通して折り返すように配列されるものと、多層織物の他方の面側から2組目までの前記層を貫通して折り返すように配列されるものとを有する。 【図面の簡単な説明】 【0051】 【図1】(a)は多層織物の構造を示す模式図、(b)は多層織物を構成する経糸、緯糸、結合糸が筬打ちを受けない状態で配置された場合の構造を示す模式図、(c)は結合糸がない通常の二重織りの構成を示す模式図。 【図2】多層織物の織成状態を示す模式図。 【図3】多層織物の織成状態を示す模式図。 【図4】多層織物の織成状態を示す模式図。 【図5】多層織物の織成状態を示す模式図。 【図6】シート状中間品から摩擦材を打ち抜いた状態の模式斜視図。 【図7】(a),(b)は別の実施形態における多層織物の構造を示す模式図。 【図8】(a),(b)は別の実施形態における多層織物の構造を示す模式図。 【符号の説明】 【0052】 L1y,L2y,M1y,M2y,U1y,U2y…緯糸、L1x,L2x,L3x,L4x,M1x,M2x,M3x,M4x,U1x,U2x,U3x,U4x…経糸、11…多層織物、12…織り組織、13a,13b…結合糸、16…摩擦材。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003218 【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機 【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成17年7月20日(2005.7.20) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100068755 【弁理士】 【氏名又は名称】恩田 博宣
【識別番号】100105957 【弁理士】 【氏名又は名称】恩田 誠
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| 【公開番号】 |
特開2007−23449(P2007−23449A) |
| 【公開日】 |
平成19年2月1日(2007.2.1) |
| 【出願番号】 |
特願2005−210407(P2005−210407) |
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