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【発明の名称】 カーボンナノ構造体の製造方法、触媒金属基材および触媒反応容器
【発明者】 【氏名】久貝 裕一

【氏名】日方 威

【要約】 【課題】高純度で長尺のカーボンナノ構造体を安定して製造することが可能なカーボンナノ構造体の製造方法を提供する。

【解決手段】密閉容器と、前記密閉容器の内部空間を第一の空間と第二の空間に仕切る触媒金属基材と、前記触媒金属基材を固定する固定部材と、を備えた触媒反応容器を用い、前記触媒金属基材は、前記第一の空間に接する第一の表面と前記第二の空間に接する第二の表面を有するように配置されており、かつ前記第二の表面の少なくとも一部に触媒粒子を備えており、前記第一の空間に少なくとも炭素を含む原料ガスを供給し、前記第一の表面から前記触媒金属基材の内部を通って前記第二の表面に達した炭素を、前記触媒粒子を基点としてカーボンナノ構造体に成長させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、前記密閉容器の内部空間を第一の空間と第二の空間に仕切る触媒金属基材と、前記触媒金属基材を固定する固定部材と、を備えた触媒反応容器を用い、
前記触媒金属基材は、前記第一の空間に接する第一の表面と前記第二の空間に接する第二の表面を有するように配置されており、かつ前記第二の表面の少なくとも一部に触媒粒子を備え、
前記第一の空間に少なくとも炭素を含む原料ガスを供給し、
前記第一の表面から前記触媒金属基材の内部を通って前記第二の表面に達した炭素を、前記触媒粒子を基点としてカーボンナノ構造体に成長させることを特徴とする、カーボンナノ構造体の製造方法。
【請求項2】
前記触媒金属基材は板状であって、その厚さは50μm以下である請求項1に記載のカーボンナノ構造体の製造方法。
【請求項3】
前記触媒粒子が、前記触媒金属基材の表面上に複数点在する請求項1または請求項2に記載のカーボンナノ構造体の製造方法。
【請求項4】
前記触媒粒子は、前記触媒金属基材と異なる物質からなる請求項1から請求項3のいずれかに記載のカーボンナノ構造体の製造方法。
【請求項5】
板状の触媒金属基材であって、少なくとも一方の表面に触媒粒子を備えている、カーボンナノ構造体製造用の触媒金属基材。
【請求項6】
密閉容器と、密閉容器の内部空間を第一の空間と第二の空間に仕切る触媒金属基材と、前記触媒金属基材を固定する固定部材と、を備える触媒反応容器であって、
前記触媒金属基材は、前記第一の空間に接する第一の表面と前記第二の空間に接する第二の表面を有するように配置されており、かつ前記第二の表面の少なくとも一部に触媒粒子を備えている、カーボンナノ構造体製造用の触媒反応容器。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノ構造体の製造方法と、カーボンナノ構造体の製造に使用する触媒金属基材および触媒反応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブに代表されるカーボンナノ構造体はその特性から、広い用途の応用が考えられている有望な材料である。しかしながらその製造の困難さから高純度かつ高効率で生産する方法の開発が望まれている。
【0003】
カーボンナノチューブを生成させる方法としては、ナノメートルレベルの直径を有する触媒粒子を用いて、アルコール系、炭化水素系等の原料ガスを加熱炉内で熱分解し、触媒粒子上にカーボン結晶を成長させてカーボンナノチューブとする熱分解法が考案されている。熱分解法には、塗布等によって基材上に触媒を担持させる方法や、気相中に触媒を浮遊させる方法等がある。
【0004】
たとえば特許文献1には、有機遷移金属化合物のガスとキャリアガスと有機化合物のガスとの混合ガスを800〜1300℃に加熱することにより浮遊状態で気相成長炭素繊維を生成する方法が提案されている。
【0005】
特許文献2には、基板上に触媒金属膜を形成する段階と、該触媒金属膜を蝕刻して分離されたナノサイズの触媒金属粒子を形成する段階と、熱化学気相蒸着装置内へカーボンソースガスを供給して熱化学気相蒸着法で分離されたナノサイズの触媒金属粒子毎にカーボンナノチューブを成長させて基板上に垂直に整列した複数個のカーボンナノチューブを形成する段階を含み、分離されたナノサイズの触媒金属粒子を形成する段階は、アンモニアガス、水素ガスおよび水素化物ガスからなる群から選択されたいずれか1つの蝕刻ガスを熱分解させて使用するガス蝕刻法によって行われるカーボンナノチューブの合成方法が提案されている。
【0006】
特許文献3には、耐熱性の多孔質担体に触媒微粒子を分散担持させた基板上に炭化水素ガスをキャリアガスとともに送り、該炭化水素ガスの熱分解を利用して、単層カーボンナノチューブを気相合成する方法が提案されている。
【0007】
特許文献4には、加熱した金属に対し炭素源となるガスを流して、化学気相成長法により該金属表面にカーボンナノチューブを製造する方法であって、該金属の表面にあらかじめ酸化物の微結晶を生成することにより金属表面に微細な凹凸を形成する処理がほどこされていることを特徴とする方法が提案されている。
【特許文献1】特開昭60−54998号公報
【特許文献2】特開2001−20071号公報
【特許文献3】特開2002−255519号公報
【特許文献4】特許第3421332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1から4に記載されたような従来の方法では、カーボンナノチューブを製造するときに、カーボンナノチューブだけでなくアモルファスカーボンやグラファイト等が副生成物として生成されるという問題があった。また、触媒がアモルファスカーボン等で覆われてしまうことにより、カーボンナノチューブの成長が止まり、長さはせいぜい数mmであり、数cm以上に長尺化できないという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決し、高純度で長尺のカーボンナノ構造体を安定して製造することが可能な、カーボンナノ構造体の新規な製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、カーボンナノ構造体の製造に使用する触媒金属基材および触媒反応容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、密閉容器と、密閉容器の内部空間を第一の空間と第二の空間に仕切る触媒金属基材と、触媒金属基材を固定する固定部材と、を備えた触媒反応容器を用いてカーボンナノ構造体を製造する。触媒金属基材は、第一の空間に接する第一の表面と第二の空間に接する第二の表面を有するように配置されており、かつ第二の表面の少なくとも一部に触媒粒子を備えている。密閉容器の第一の空間に少なくとも炭素を含む原料ガスを供給し、第一の表面から触媒金属基材の内部を通って第二の表面に達した炭素を、触媒粒子を基点としてカーボンナノ構造体に成長させることによりカーボンナノ構造体を製造する(請求項1)。また、本発明は当該製造に用いる触媒金属基材(請求項5)と、触媒反応容器(請求項6)を提供する。
【0011】
従来は触媒への炭素の供給部分とカーボンナノ構造体の成長部分が分離されていなかったが、本発明では触媒金属基材において炭素を含む原料ガスの供給面(第一の表面)とカーボンナノ構造体の成長面(第二の表面)を別々にし、触媒粒子を基点としてカーボンナノ構造体を成長させている。このため、成長面がアモルファスカーボン等で覆われることが抑制され、高純度のカーボンナノ構造体を安定して成長させることができる。
【0012】
なお、本発明における「カーボンナノ構造体」とは、主として炭素からなるチューブ状、渦巻状、ホーン状、球状などのナノメートルレベルの微小構造体をさす。「カーボンナノ構造体」の例としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン等があげられる。
【0013】
さらに、本発明において「触媒金属基材の表面に触媒粒子が備わっている」とは、触媒金属基材から触媒粒子へ炭素が拡散可能なように、触媒粒子が触媒金属基材表面に固定されている状態をいう。例えば、触媒粒子が触媒金属基材から析出して付着している状態、触媒粒子が触媒金属基材に圧着されて密着した状態、触媒金属基材と触媒粒子の界面で化合物が形成されて固定された状態、などである。あるいは触媒金属基材と触媒粒子が接していなくても、炭素の拡散が十分に速い中間層を介して触媒粒子が固定されていても良い。
【0014】
また、本発明における触媒粒子の形状は特に限定されず、円柱状、角柱状、多面体状、球状、円錐状、角錐状など、いずれでもよい。また、大きさも特に限定されないが、10μm以下が好ましい。さらには大きさが1μm以下のナノ粒子であることが好ましく、カーボンナノ構造体と同程度の大きさの数nmであるとさらに好ましい。小さい方が、ナノサイズであるカーボンナノ構造体の成長の基点となりやすい。また、成長させるカーボンナノ構造体の大きさをそろえるためには、触媒粒子の大きさをそろえておくことが好ましい。
【0015】
本発明における触媒金属基材は板状であることが好ましい。板状とすることで、触媒金属基材の表裏の面を、第一の表面(原料ガスの供給面)と第二の表面(カーボンナノ構造体の成長面)とすることができ、密閉容器内部を仕切ることが容易となる。
【0016】
また、触媒金属基材を板状とする場合、厚さは50μm以下とすることが好ましい(請求項2)。厚さを50μm以下とすることにより、触媒金属基材の第一の表面から触媒金属基材の内部を通して第二の表面へ炭素を供給する際に、炭素が成長部に達するまでの時間が短縮され、製造コストを節約できる。
【0017】
また、触媒金属基材を板状とする場合、厚さは5μm以上とすることが好ましい。5μm以上とすることにより、触媒金属基材の強度が上がり、カーボンナノ構造体の製造工程において穴が開くなどの破損が生じる可能性が小さくなる。
【0018】
さらに、触媒金属基材は、鉄、コバルト、ニッケルのいずれか、又はこれらのうちの2種以上の合金からなることが好ましい。これらは炭素を含むガスを分解して炭素を析出し、カーボンナノ構造体を生成する触媒として適している材料である。このほか基材としては、炭素ガスを分解して炭素を析出する触媒である他の材料を使用することも可能である。なお、触媒粒子は、炭素であってもかまわない。成長させるカーボンナノ構造体は炭素であるので、当然炭素も成長の基点となりえるからである。
【0019】
本発明における触媒粒子は、触媒金属基材と異なる物質であることが好ましい(請求項4)。異なる物質であるほうが、特異点として触媒粒子のない基材表面部と組成や構造の差が大きくなり、カーボンナノ構造体が特異点を基点としてさらに成長しやすくなるためである。
【0020】
さらに、触媒粒子は、炭素と反応性が高くてカーボンナノ構造体が成長しやすいように、炭素が溶解する物質もしくは炭素と化合物を生成する物質であることが好ましい。具体的な物質としては、例えば、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、あるいはこれらの2種以上の合金、などが挙げられる。特に、カーボンナノ構造体を生成する触媒として作用する物質であることが好ましいので、鉄、コバルト、ニッケルのいずれか、又はこれらのうちの2種以上の合金であることが好ましい。なお、触媒粒子を触媒金属基材と異なる物質とする場合には、例えば触媒金属基材の材質を鉄としているときは、触媒粒子として鉄は選択しないことになる。
【0021】
また、触媒粒子は、触媒金属基材の表面上に複数点在することにより、複数のカーボンナノ構造体を同時に製造することができる(請求項3)。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、触媒粒子を基点としてカーボンナノ構造体を成長させる新規の製造方法が提供される。また、原料ガスの熱分解によって生じた炭素の触媒金属基材への溶解と触媒金属基材からの炭素の析出によるカーボンナノ構造体の成長が、触媒金属基材の異なる部位で生じるため、高純度で長尺のカーボンナノ構造体を安定して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(1)触媒金属基材の作製
金属基材表面に触媒粒子を備えさせる方法としては、塗布法、イオン打ち込み法、スパッタリング法、蒸着法、めっき法、などが考えられるが、ここでは塗布による方法を示す。
【0024】
まず、直径20mmφ、厚さ50μmで、純度が99.99%以上の鉄からなる円板状の金属基材1の片面に、粒径5μmのコバルト粉末を分散させたエチルアルコールを塗布した後、乾燥炉を用いて約100℃で乾燥させる。
【0025】
次に、真空中または不活性ガス中で、1400℃に加熱する。この加熱により、コバルト粒子が金属基材1の表面に付着する。
【0026】
図1は、このようにして作製した触媒金属基材の断面模式図である。板状の鉄製の金属基材1の一方の表面に、複数の触媒粒子2が備わっている様子が示されている。なお、図1では触媒粒子2が金属基材1の表面から突出しているが、表面付近に埋まった状態で表面は平坦であり、触媒粒子の一部が露出している状態でもかまわない。例えば、触媒粒子2を金属基材1より硬い材質とし、図1のように配置された触媒粒子2を、さらに硬質の板材で押すことにより触媒粒子2を金属基材1に埋め込み、その後金属基材1の表面を研磨して平坦にするなどの方法で製造することができる。
【0027】
(2)カーボンナノ構造体の作製
図2はカーボンナノ構造体の製造装置の断面模式図である。図2には、密閉容器23と加熱炉28の断面模式図が示されている。上記で作製した触媒金属基材24を、固定部材25で固定して、円筒状の密閉容器23内に設置する。
【0028】
密閉容器23の内部は、触媒金属基材24により第一の空間21と第二の空間22に分離されており、炭素を含む原料ガスは第一の空間21に供給される。第一の空間21に接している第一の表面26には炭素が供給され、触媒金属基材24の内部を炭素が通って、第二の空間22に接している触媒金属基材24の第二の表面27に達し、触媒粒子29よりカーボンナノ構造体210が成長する。
【0029】
炭素を含むガスとしては、メタンガスやアセチレンガスなどの炭化水素ガスや、COガスなどが使用できる。また、原料ガスに、希釈のための不活性ガスや、酸化防止のための還元性ガスを混合することもできる。圧力、流量や、2種以上の混合ガスを供給するときの流量比は、カーボンナノ構造体の成長を制御するために適宜調整することができる。
【0030】
空間22に供給するガスは、不活性ガスだけでも良いが、カーボンナノ構造体の成長を促進するように2種以上の混合ガスを使用することもできる。特に、酸化を防止するため、水素ガスなどの還元性ガスを混合しても良いし、還元性ガスのみとしてもよい。また、結晶化促進のために、炭素を含むガスを微量混合してもよい。圧力、流量や、2種以上の混合ガスを供給するときの流量比は、適宜調整することができる。さらには、空間22にはガスを供給せずに、ロータリーポンプなどの真空ポンプで排気しつづけ、真空状態とすることもできる。
【0031】
カーボンナノ構造体を成長させるときの触媒反応容器の内部の温度は、炭素の鉄に対する溶解度が大きくなるように730℃以上とすることが好ましい。処理時間を長くして、連続的あるいは断続的に成長させることにより、長尺のカーボンナノ構造体を成長させることができる。加熱時間や温度などの成長条件は適宜調整することができる。
【0032】
カーボンナノ構造体の成長方法の一例を以下に示す。空間21に供給する原料ガスはCOガスとし、Arガスおよび水素ガスを混合する。空間21の圧力は1気圧とし、COガスの流量は300ml/分、Arガスの流量は300ml/分、水素ガスの流量は300ml/分とする。
【0033】
空間22に供給するガスはArガスと水素ガスの混合ガスで、圧力は1気圧とする。Arガスの流量は855ml/分、水素ガスの流量は45ml/分とする。
【0034】
上記のようにガスを供給した状態で、加熱炉28により触媒反応容器の内部の温度を880℃になるように加熱し、3時間保持することにより、触媒粒子29の先端よりカーボンナノ構造体210を成長させることができる。
【0035】
カーボンナノ構造体であることは、電子顕微鏡などで観察したり、ラマン分光をおこなう等で、確認することができる。
【0036】
上記に述べた方法は、触媒粒子を基点としてカーボンナノ構造体を成長させるという新規のカーボンナノ構造体の製造方法である。さらに、触媒がアモルファスカーボン等で覆われて成長が止まることがないため、長尺のカーボンナノ構造体を作製することができる。
【0037】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】触媒金属基材の断面模式図である。
【図2】カーボンナノ構造体の製造装置の断面模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1 金属基材、 2 触媒粒子
21 第一の空間、 22 第二の空間、 23 密閉容器
24 触媒金属基材、 25 固定部材
26 触媒金属基材の第一の表面、 27 触媒金属基材の第二の表面
28 加熱炉、 29 触媒粒子、 210 カーボンナノ構造体
【出願人】 【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【出願日】 平成18年2月21日(2006.2.21)
【代理人】 【識別番号】100102691
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 稔

【識別番号】100112117
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 幹雄

【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明


【公開番号】 特開2007−224433(P2007−224433A)
【公開日】 平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願番号】 特願2006−43736(P2006−43736)