| 【発明の名称】 |
ポリアミド溶融紡糸パック用充填材 |
| 【発明者】 |
【氏名】佐藤 優樹
【氏名】山本 浩房
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| 【要約】 |
【課題】溶融ボリアミド通過時の紡糸パック内充填材の崩壊によるポリマー劣化を十分に抑制でき、染色均一性に優れたポリアミド繊維を取得可能なポリアミド溶融紡糸パック用充填材を提供する。
【解決手段】ボリアミドを溶融紡糸する際に紡糸パック内に充填される充填材であって、円形度0.70以上、平均粒子径が30μm〜400μmであることを特徴とするポリアミド溶融紡糸パック用充填材。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ボリアミドを溶融紡糸する際に紡糸パック内に充填される充填材であって、円形度0.70以上、平均粒子径が30μm〜400μmであることを特徴とするポリアミド溶融紡糸パック用充填材。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、ボリアミドを溶融紡糸する際に紡糸パック内に充填される充填材の改良に関するものである。さらに詳しくは、溶融ボリアミド通過時の紡糸パック内充填材の崩壊によるポリマー劣化を十分に抑制でき、染色均一性に優れたポリアミド繊維を取得可能なポリアミド溶融紡糸パック用充填材に関するものである。 【背景技術】 【0002】 ナイロン6繊維やナイロン66繊維のような一般的なポリアミド繊維は、溶融紡糸によって製糸されている。 【0003】 すなわち、エクストルーダーあるいは熱板によって溶融されたポリアミドをギアポンプで計量した後、紡糸パック内のポリマー通路を通過させ、糸切れ抑制のために充填材により異物分散し、フィルターにより濾過した後、口金孔より吐出させる。その際に紡糸パック内に充填する充填材としては、アルミナ系粒子やステンレス系粒子が汎用性が高いことから一般的に用いられているが、この場合には、これらの充填材表面の金属成分が活性点となって溶融ポリマーの分解あるいは3次元化が促進されるといった欠点があった。 【0004】 この充填材表面が原因となるポリマー分解等の欠点は、紡糸パック取付後の初期に通過する溶融ポリマー部分において特に多く生じるものである。そして、この時に得られたボリアミド繊維は、ポリマー分解物の含有が多くなるために、強伸度低下や酸性染料での染色により淡染状態となる。 【0005】 したがって、このような紡糸開始直後のボリアミド繊維を安定製糸時の繊維と混同して用いた場合には、得られる布帛において染色斑が現れるという問題があった。特に、このようなボリアミド繊維とポリウレタン系弾性繊維とを交編した布帛の場合は、布帛の寸法や形態を安定化させるため染色仕上げに先立って緊張下で高温熱セット(例えば190℃、1分間の乾熱熱セット)することが必要であるため、この熱セットにより紡糸開始直後の繊維は過酸化物が分解してポリアミド分子鎖を攻撃し、急激な重合度低下や、官能基、特にアミノ末端基の変化が生じる。この結果、アミノ末端基が大きく関与する酸性染料に対する染色性が大幅に低下し、布帛は筋状の染色斑が極めて目立つような淡染状態になるという問題があった。 【0006】 これらの問題を解決する手段としては、溶融紡糸パックを取付後、ポリマーを長時間押し流してこれを廃棄する方法があるが、この場合には製品収率が大幅に悪化するという問題があり、実用的な解決手段とはなり得なかった。 【0007】 また、前記の問題を解決するために、紡糸パック中の濾過部材の表面を熱硬化性シリコンでコーティングする方法(例えば、特許文献1,2参照)、および溶融ポリマーと接触する濾材表面にSi、Ti、Zr、Al、W、B、Ta、及びGeの何れかの金属酸化物、窒化物あるいは炭化物からなる被膜を形成する合成繊維用溶融紡糸方法(例えば、特許文献3参照)が提案されており、これらの方法によれば、パック取付後の初期に通過する溶融ポリマーの劣化による淡染スジや糸切れ抑制にかなりの効果が得られている。しかし、これらの方法では充填材の形状は規制されておらず、溶融ポリマーの通過時に充填材が崩壊した場合には、活性面露出によるポリマー劣化が発生するため、パック取付後初期に通過する溶融ポリマー劣化の問題は依然解決されず残されていた。また、崩壊により微小化した充填材がフィルターを通過し、糸中へ混入することで糸切れの溶融紡糸糸切れが多発するという問題も残されていた。 【特許文献1】特開昭60−181307号公報 【特許文献2】特開昭60−181308号公報 【特許文献3】特開平10−273810号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。 【0009】 したがって、本発明の目的は、溶融ボリアミド通過時の紡糸パック内充填材の崩壊によるポリマー劣化を十分に抑制でき、染色均一性に優れたポリアミド繊維を取得可能なポリアミド溶融紡糸パック用充填材を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0010】 上記目的を達成するために本発明によれば、ボリアミドを溶融紡糸する際に紡糸パック内に充填される充填材であって、円形度0.70以上、平均粒子径が30μm〜400μmであることを特徴とするポリアミド溶融紡糸パック用充填材が提供される。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、以下に説明するとおり、溶融ボリアミド通過時の紡糸パック内充填材の崩壊によるポリマー劣化を十分に抑制でき、紡糸糸切れを増加させることなく、染色均一性に優れたポリアミド繊維を取得することができる。 【0012】 そして、本発明のポリアミド溶融紡糸パック用充填材は、ポリアミド繊維と弾性繊維とが交編されかつ酸性染料で染色される経編用ポリアミド繊維を製造する場合に特に有効である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 以下、本願発明についてさらに詳細に説明する。 【0014】 本発明でいうポリアミドは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体であって、好ましくは、染色性、洗濯堅牢度、機械特性に優れる点から、主としてポリカプロアミドもしくはポリヘキサメチレンアジパミドからなるポリアミドである。ここでいう主としてとは、ポリカプロアミドではポリカプロアミドを構成するε−カプロラクタム単位として、ポリヘキサメチレンアジパミドではポリヘキサメチレンアジパミドを構成するヘキサメチレンジアンモニウムアジペート単位として、それぞれ80モル%以上であることをいい、さらに好ましくは90モル%以上であることをいう。その他の成分としては特に制限されないが、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミンなどの単位が挙げられる。 【0015】 本発明でいうポリアミドの重合度は、ポリアミド繊維あるいはその加工品の要求特性またはそれらを安定して得るために適当な範囲より適宜選択して良いが、98%硫酸相対粘度で2.0〜3.3の範囲が好ましい。 【0016】 本発明のポリアミド溶融紡糸パック用充填材(以下、単に充填材と呼ぶ。)の円形度は、0.70以上、特に好ましくは0.75以上であることが必要である。円形度がかかる範囲から外れる充填材の場合は、パック内のポリマー通過時に粒子への圧力が不均一にかかることに起因して充填材が崩壊し、活性面が露出することになり、ポリマー劣化が発生するため好ましくない。また、崩壊により微小化した充填材が濾過フィルターを通過し、糸中へ混入することにより糸切れの要因を招くことにもなるため好ましくない。 【0017】 かかる円形度の範囲であれば、ポリアミドの溶融紡糸が行われる350℃程度の温度においても長期間にわたって熱的に安定であれば充填材の材質は特に限定されるものではない。例としてはアルミナ系およびステンレス系等の粒状充填材やガラスビーズ等の球状充填材が挙げられる。 【0018】 なお、ここでいう円形度は次の方法で定義した値である。 【0019】 すなわち、充填材を拡大鏡で観察し、任意に100粒選びそれぞれの粒子について、面積S、周長Lから下記(a)式により円形度εを算出し、平均値を求め円形度とした。 円形度ε=4πS/L2 ・・・(a) 【0020】 本発明に使用する充填材の粒子径は、30〜400μm、特に好ましくは50μm〜300μmであることが必要である。粒子径が30μm未満では、溶融ポリマーの充填材通過時の圧力が高くなり、パック内の濾圧上昇が大きくなるため好ましくない。また、400μmを越えると、充填材が60%以上あっても溶融ポリマーや異物の分散性が悪化し製糸性が著しく悪化するため好ましくない。 【0021】 ここでいう粒子径とは、充填材を拡大鏡で観察し、任意に100粒選んだそれぞれの粒子について、外接円と内接円を描き、その直径の平均を算出し、100粒の平均値を表した値である。 【0022】 かくして、本発明の充填材を充填した紡糸パックを使用してボリアミドの溶融紡糸を行うことにより、溶融ボリアミド通過時の紡糸パック内充填材の崩壊によるポリマー劣化を十分に抑制でき、紡糸糸切れを増加させることなく、染色均一性に優れたポリアミド繊維を取得することができる。 【0023】 そして、本発明のポリアミド溶融紡糸パック用充填材は、ポリアミド繊維と弾性繊維とが交編されかつ酸性染料で染色される経編用ポリアミド繊維を製造する場合に特に有効である。 【実施例】 【0024】 以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。なお、本明細書中および実施例中の特性値の判定は、次のとおりに行った。 【0025】 1.染色布帛の明度(L値) カラーマシン(日本電色工業(株)社製Σ80色差計)を用いて、測定した。 【0026】 2.硫酸相対粘度 試料を98重量%硫酸に濃度1重量%となるように溶解し、オストワルド粘度計によって25℃の高温で流下時間を測定する。硫酸の流下時間に対する試料溶液の流下時間の比を標準試料によって相対粘度に換算した。 【0027】 3.アミノ末端基量 試料をフェノール/メタノール混合溶液に溶解し、1/50規定の塩酸水溶液でチモールブルーを指示薬として中和滴定する。その際の塩酸消費量からアミノ末端基量(10−5mol/g)を求めた。 【0028】 4.糸切れ 10t溶融紡糸した際に発生した糸切れ回数を1t当たり換算した。 【0029】 [実施例1] 98%硫酸相対粘度が2.7の酸化チタンを含まないナイロン6ポリアミドチップを290℃で溶融し、表1に示す予め熱硬化性シリコンでコーティングした球状充填材(円形度:0.95、平均粒径100μmのガラスビーズ)50gを充填した紡糸パックを用い、紡糸口金から21.5g/分で吐出し、冷却、給油、交絡付与を行った後に延伸倍率1.85倍で延伸、170℃で熱処理を行い、4300m/分で巻き取ることにより、50デシテックス、45フィラメントのポリアミド繊維を得た。 【0030】 得られたボリアミド繊維は、紡糸パック取付後のポリマー通過量1kgと50kgでそれぞれサンプリングし、これらの繊維を用いて筒編み地を作製した。筒編み地は熱収縮しないように金枠に固定し後、熱風送風式のオーブン中で190℃、1分の条件にて熱セットした。熱セット後に、カヤノールイエロー5GW、ポーラレッドBL、カヤノールブルー2RWをそれぞれ0.825owf%、0.0135owf%、0.345owf%の濃度のものを混合したものを用いて染色した。この時得られた染色布帛の明度、硫酸相対粘度、アミノ末端基量及び溶融紡糸時の糸切れ結果を表1に示す。 【0031】 [実施例2] 実施例1とは異なる円形度0.90、平均粒径100μmの粒状充填材を用いた以外は、実施例1と同様の溶融紡糸を行い、得られたポリアミド繊維にて実施例1と同様の評価を行った。評価結果について表1に示す。 【0032】 [実施例3] 実施例1とは異なる円形度0.70、平均粒径100μmの粒状充填材を用いた以外は、実施例1と同様の溶融紡糸を行い、得られたポリアミド繊維にて実施例1と同様の評価を行った。評価結果について表1に示す。 【0033】 [比較例1] 円形度0.60、平均粒径100μmの粒状充填材を用いた以外は、実施例1と同様の溶融紡糸を行い、得られたポリアミド繊維にて実施例1と同様の評価を行った。評価結果について表1に示す。 【0034】 [比較例2] 円形度0.90、平均粒径500μmの粒状充填材を用いた以外は、実施例1と同様の溶融紡糸を行い、得られたポリアミド繊維にて実施例1と同様の評価を行った。評価結果について表1に示す。 【0035】 [比較例3] 円形度0.95、平均粒径20μmの粒状充填材を用いた以外は、実施例1と同様の溶融紡糸を行った。結果、濾圧が高く紡糸することが不可能であった。 【0036】 【表1】
【0037】 表1の結果から明らかなように、本発明にかかる充填材は、パック取り付け後のポリマー通過量が1kg(紡糸開始直後)と50kg(紡糸安定製糸時)時点での繊維の硫酸相対粘度差、アミノ末端基量差が小さく、ポリマー劣化がなく、染色布帛においてもL値の差が1.0以下と染色均一性に優れているばかりか、糸切れも1回/t以下と良好である。 【0038】 一方、円形度が小さい充填材の場合(比較例1)は、アミノ末端基量の差が0.17と、合格基準である0.1以下より高く、ポリマー劣化が認められた。このパックを分解して充填材を取り出して観察したところ、確かに充填材の崩壊が認められた。また、染色布帛においてもL値の差が1.3と、合格基準である1.0以下より高く、肉眼でも染め差があり染色均一性に劣っていた。また、平均粒子径が大きい充填材の場合(比較例2)は、糸切れが頻発し製糸性に劣っていた。 【産業上の利用可能性】 【0039】 本発明の充填材を充填した紡糸パックを使用してボリアミドの溶融紡糸を行うことにより、溶融ボリアミド通過時の紡糸パック内充填材の崩壊によるポリマー劣化を十分に抑制でき、紡糸糸切れを増加させることなく、染色均一性に優れたポリアミド繊維を取得することができるため、ポリアミド繊維と弾性繊維とが交編されかつ酸性染料で染色される経編用ポリアミド繊維を製造する場合に特に有効な効果を得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003159 【氏名又は名称】東レ株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年2月22日(2006.2.22) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2007−224443(P2007−224443A) |
| 【公開日】 |
平成19年9月6日(2007.9.6) |
| 【出願番号】 |
特願2006−45460(P2006−45460) |
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