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【発明の名称】 アルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材
【発明者】 【氏名】安田 均

【氏名】田渕 宏

【氏名】白石 瑞樹

【要約】 【課題】高温下で大気と接触した状態でも消耗しにくいアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材を提供する。

【解決手段】本発明のアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材は、Fe含有量が0.2質量%以下、表面の気孔面積率が22%以下であることを特徴とする。本発明のアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材で構成された陰極(1)を用い、この陰極(1)と該陽極(2)との間に、陰極(1)側から順に精製アルミニウム層(B1)、精製電解浴層(B2)および陽極母合金溶湯層(B3)が形成された三層電解法精製炉(3)を用い、前記陽極母合金溶湯層(B3)に原料アルミニウム(B)を供給しつつ、前記陰極(1)へ向けて前記陽極(2)から直流電流を通電することにより精製アルミニウム(A)を前記精製アルミニウム層(B1)に析出させて、精製アルミニウム(A)を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe含有量が0.2質量%以下、表面の気孔面積率が22%以下であることを特徴とするアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材。
【請求項2】
陰極および陽極を備え、該陰極と該陽極との間に、陰極側から順に精製アルミニウム層、精製電解浴層および陽極母合金溶湯層が形成された三層電解法精製炉を用い、前記陽極母合金溶湯層に原料アルミニウムを供給しつつ、前記陰極へ向けて前記陽極から直流電流を通電することにより精製アルミニウムを前記精製アルミニウム層に析出させて精製アルミニウムを製造する方法であり、
前記陰極が、請求項1に記載のアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材で構成されていることを特徴とする前記精製アルミニウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材に関する。
【背景技術】
【0002】
原料アルミニウム(B)を精製して純度99.9質量%以上の精製アルミニウム(A)を製造する方法として、三層電解法が知られている〔非特許文献1:「アルミニウムの製品と製造技術」、社団法人軽金属学会、2001年10月30日発行、第117頁、非特許文献2:「軽金属の研究と技術のあゆみ」、軽金属学会、1991年11月30日発行、第194頁〜第196頁〕。
【0003】
この方法は、図1に示すようにアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材からなる陰極(1)および陽極(2)を備え、この陰極(1)と陽極(2)との間に、陰極(1)側から順に精製アルミニウム層(B1)、精製電解浴層(B2)および陽極母合金溶湯層(B3)が形成された三層電解法精製炉(3)を用い、原料アルミニウム(B)を陽極母合金溶湯(B3)に供給しつつ、陰極(1)に向けて陽極(2)から直流電流(I)を通電することにより、精製アルミニウム層(B1)に精製アルミニウム(A)を析出させて、精製アルミニウム(A)を製造する方法である。
【0004】
かかる方法において、精製アルミニウム層(B1)、精製電解浴層(B2)および陽極母合金溶湯層(B3)は、それぞれ直流電流(I)の通電により750℃〜800℃の高温に加熱されて溶融状態となっている。また、陰極(1)は通常、大気に曝されている。このため、陰極(1)を構成する黒鉛材としては、高温下、大気圧中で消耗のより少ないものが求められている。
【0005】
【非特許文献1】「アルミニウムの製品と製造技術」、社団法人軽金属学会、2001年10月30日発行、第117頁
【非特許文献2】「軽金属の研究と技術のあゆみ」、軽金属学会、1991年11月30日発行、第194頁〜第196頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明者は、高温下、大気中で消耗のより少ないアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、Fe含有量が0.2質量%以下、表面の気孔面積率が22%以下であることを特徴とするアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材は、高温下、大気中での消耗がより少ないので、より長期間に亘り、三層電解精製法による精製アルミニウムの製造において、陰極として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材は、Fe含有量が0.2質量%以下、好ましくは0.15質量%以下である。Fe含有量が0.2質量%を超えると、局部的な消耗が生じ易くなる。
【0010】
表面の気孔面積率は22%以下、好ましくは20%以下である。気孔面積率が22%を超えると、局部的な消耗が生じ易くなる。
【0011】
本発明のアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材は、固有抵抗値が6μΩm以下であることが好ましい。固有抵抗値が6μΩmを超えると、陰極(1)として使用した場合に、陰極の発熱によるエネルギーのロスが大きくなる。
【0012】
本発明のアルミニウム三層電解精製用陰極黒鉛材は、例えば図1に示すような三層電解法精製炉(3)の陰極(1)を構成する。
【0013】
図1に示す三層電解法精製炉(3)は、三層電解法による精製アルミニウム(A)の製造に用いられる炉であり、陰極(1)および陽極(2)を備えている。この陰極(1)と陽極(2)との間には、陰極(1)側から順に精製アルミニウム層(B1)、精製電解浴層(B2)および陽極母合金溶湯層(B3)が形成されている。
【0014】
陰極(1)は精製炉(3)の上部に、陽極(2)は精製炉(3)の底部に、それぞれ配置されており、精製アルミニウム層(B1)は陰極(1)に接し、陽極母合金溶湯層(B3)は陽極(2)に接している。
【0015】
陽極母合金電解溶湯(B3)の組成は、例えばAlが60質量%〜70質量、Cuが30質量%〜40質量%である。
【0016】
精製電解浴層(B2)の組成は、例えばAlF3が35質量%〜45質量%、BaF2が25質量%〜45質量%、CaF2が5質量%〜15質量%、NaFが5質量%〜20質量%である。
【0017】
このような三層電解法精製炉(3)を用いて、原料アルミニウム(B)を製造するには、原料アルミニウム(B)を陽極母合金溶湯層(B3)に供給しつつ、陰極(1)に向けて陽極(2)から直流電流(I)を通電すればよい。
【0018】
直流電流(I)は、陽極(2)から陽極母合金溶湯層(B3)、精製電解浴層(B2)および精製アルミニウム層(B1)をこの順に通過して陰極(1)に至る。精製アルミニウム層(B1)、精製電解浴層(B2)および陽極母合金溶湯層(B3)は、通常は陽極(3)から陰極(1)へ通電する直流電流による発熱により、例えば750℃〜800℃に加熱された溶融状態である。陽極(2)から陰極(1)への通電量は、陰極の単位面積あたりで、通常3A/cm2〜4A/cm2である。図1に示す炉(3)において、原料アルミニウム(B)は原料アルミニウム投入口(4)から投入される。この投入口(4)は、隔壁(5)により精製アルミニウム層(B1)および精製電解浴層(B2)と仕切られ、陽極母合金溶湯層(B3)と連通している。投入口(5)から投入された原料アルミニウム(B)は溶融状態となって陽極母合金溶湯層(B3)に供給され、直流電流(I)により溶融状態となり、精製電解浴層(B2)を通過しながら精製されてつつ、陰極(1)へ向けて精製アルミニウム(A)となって析出して、精製アルミニウム層(B1)を形成する。
【0019】
かくして精製アルミニウム層(B1)に析出した目的の精製アルミニウム(A)は、通常の方法、例えば精製アルミニウム層(B1)から汲み取る方法により取り出すことができ、取り出された精製アルミニウム(A)は通常、鋳造により冷却される。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
【0021】
なお、各実施例で用いた黒鉛材は以下の方法により評価した。
(1)Fe含有量
ICP発光分析法により求めた。
(2)表面の気孔面積率
電極面を研磨し、研磨面の光学顕微鏡写真(倍率100倍)から、画像解析装置〔Media Cybernetics社製「IMAGE-PRO PLUS」〕により、総面積に対する気孔部分の面積の割合を求めた。
【0022】
実施例1
黒鉛材〔(株)エスイーシー製、「黒鉛押出材GS−G低Fe品」を円柱状に加工し、図1に示すような三層電解法によるアルミニウム精製用の精製炉(3)の陰極(1)として用いた。この黒鉛材のFe含有量は0.12質量%であり、気孔面積率は18%であった。アルミニウムの溶融温度は750℃〜800℃とし、通電量は3.4A/cm2〜3.5A/cm2とした。299日後に、この陰極を取り出し、その下面を目視で観察したところ、平坦のままであった。
【0023】
比較例1
実施例1で用いた黒鉛材に代えて、製鋼用電気炉に使用するアーク電極用黒鉛材〔(株)エスイーシー製、「黒鉛押出し材GS−G普通品」を用いた以外は実施例1と同様に操作した。この黒鉛材のFe含有量は0.43質量%であり、気孔面積率は26%であった。257日後に、この陰極を取り出し、その下面を目視で観察したところ、ドーナツ状に窪んだ形状の局部的な消耗が生じていた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】三層電解法により精製アルミニウムを製造するための精製炉を示す模式図である。
【符号の説明】
【0025】
A:精製アルミニウム B:原料アルミニウム
B1:精製アルミニウム層 B2:精製電解浴層 B3:陽極母合金溶湯層
I:直流電流
1:陰極 2:陽極 3:三層電解法精製炉
4:原料アルミニウム投入口 5:隔壁
【出願人】 【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
【出願日】 平成19年2月9日(2007.2.9)
【代理人】 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆

【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨

【識別番号】100119471
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 雅之


【公開番号】 特開2007−247057(P2007−247057A)
【公開日】 平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願番号】 特願2007−30218(P2007−30218)