| 【発明の名称】 |
成膜装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】西山 英俊
【氏名】阿部 淳博
【氏名】平塚 亮一
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| 【要約】 |
【課題】磁気テープ上に形成した金属磁性膜が薄くなり抵抗損失が大きくなったとしても、成膜速度を高め、製品不良を招くこと無く、プラズマCVDにより金属磁性膜に保護膜を成膜する。
【解決手段】テープ状基板1上に形成された磁性膜1a上にプラズマ反応によって保護膜1bを成膜する成膜装置10は、磁性膜1aに保護膜1bを形成するためのプラズマ反応空間を形成する反応室11と、反応室11内に保護膜1bを形成するための反応ガスを供給する反応ガス導入部12と、反応室11内に設けられており磁性膜1aとの間にプラズマを発生させる陽極電極31と、反応室11の外部に設けられ、磁性膜1aに対して非接触で電子流を供給する電子供給源34,35と、電子供給源34,35から磁性膜1aに対して供給する電子流の電流量を制御する制御部36とを備える。制御部36は、電子供給源34,35から磁性膜1aに対して供給する電子流の電流量を、陽極電極31に対して供給される電流量以上に制御する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被成膜体上に形成された金属薄膜上にプラズマ反応によって保護膜を成膜する成膜装置において、 上記金属薄膜に保護膜を形成するためのプラズマ反応空間を形成する反応室と、 上記反応室内に上記保護膜を形成するための反応ガスを供給して当該反応室を所定の圧力に保持するガス供給源と、 上記反応室内に設けられており上記金属薄膜との間にプラズマを発生させる陽極電極と、 上記反応室の外部に設けられ、上記金属薄膜に対して非接触で電子流を供給する電子供給源と、 上記電子供給源から上記金属薄膜に対して供給する電子流の電流量を制御する制御部とを備え、 上記制御部は、上記電子供給源から上記金属薄膜に対して供給する電子流の電流量を、上記陽極電極に対して供給される電流量以上に制御することを特徴とする成膜装置。 【請求項2】 テープ状の被成膜体が巻き付けられた状態で回転し、当該テープ状の被成膜体を長手方向に走行させる主ロールと、 上記テープ状の被成膜体を上記主ロールに送り出す送出部と、 上記テープ状の被成膜体を上記主ロールから巻き取る巻取部とを備え、 上記主ロールは、上記テープ状の被成膜体が巻き付けられる周面と上記反応室の開口部分とが対向するように配置されていると共に、上記金属薄膜側が上記反応室に対向するように上記テープ状の被成膜体を走行させることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。 【請求項3】 上記電子供給源は、上記主ロール上の上記テープ状の被成膜体に対して電子流を供給することを特徴とする請求項2記載の成膜装置。 【請求項4】 上記主ロールの送出部側及び巻取部側に電子供給源を備え、 上記制御部は、上記送出部側の電子供給源から供給される電子流の電流量と、上記巻取部側の電子供給源から供給される電子流の電流量とを、それぞれ上記陽極電極に対して供給される電流量の1/2以上とすることを特徴とする請求項2記載の成膜装置。 【請求項5】 1つの上記主ロールに対して上記テープ状の被成膜体の長手方向に並んだ複数の反応室が設けられていると共に、各反応室の上記送出部側及び上記巻取部側に電子供給源が設けられていることを特徴とする請求項2記載の成膜装置。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、磁気テープ等の被成膜体上に形成された金属薄膜上に保護膜を成膜するプラズマCVD法等を用いる成膜装置に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、記録媒体である磁気テープの分野では、高記録密度の要請に応え、蒸着法やスパッタ法等によりコバルト(Co)等の強磁性体をフィルム状ベースに成膜した、所謂蒸着テープが、酸化物磁性粉を有機バインダに混入して塗布する塗布型テープに置き換えられつつある。蒸着テープは、真空チャンバ内で、Co等の蒸気をフィルム状ベースに直接付着させ、磁性膜として成膜したテープであり、塗布型テープでは必須のバインダを不要としている。このため、蒸着テープは、薄膜の磁性膜を高充填度で形成することができ、高域特性の改善、高記録密度化、テープ薄形化等を達成することができる。また、蒸着テープは、デジタルビデオやコンピュータのデータバックアップ用テープとして、更なる高記録密度、高信頼性、低価格化をもたらすことができる。これに伴い、デジタルビデオやコンピュータに使用される磁気ヘッドも、従来のインダクティブ型からトラックピッチを更に狭めることができる磁気抵抗効果型ヘッド(以下、MR(Magneto-Resistive head)ヘッドと言う。)に置き換えられつつある。インダクティブ型ヘッドでは、磁性膜の電磁変換特性に、信号取り出しのための高出力が要求されるが、MRヘッドでは、それ程高い出力が必要にならず、従って、蒸着テープの磁性膜の厚みは従来に比べて約1/3の60nm程度で足りることになる。 【0003】 より高い記録密度化の要請に伴い、蒸着テープ側での異常放電、異物付着による異常部分は、相対的に大きなエラーとなるので、異常放電や異常部分の発生をより確実に防止できるような成膜装置や成膜方法が切望される。また、保護膜には、MRヘッドと記録層との間のスペーシングロスを低減するために、一層の薄膜化が要求されると同時に、硬度をより高め、且つ摩擦係数を低くすることによって耐久性を向上させる要請もあり、欠陥の無い均一な厚さの実現が望まれる。 【0004】 ところで、蒸着テープの保護膜には、ダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCとも言う)が広く使用される。DLCは、主にスパッタ法やプラズマCVD法によって成膜される。スパッタ法は、真空中で電離したアルゴンイオンによってカーボンターゲットの炭素原子を叩き出すが、炭素原子のスパッタリング収率、すなわち1つのイオンによって弾き出されるターゲット原子の割合が極めて低く、生産性はプラズマCVD法に比べて劣る。 【0005】 また、プラズマCVD法は、電界や磁界を用いて発生したプラズマのエネルギーを利用し、反応ガス(原料ガス)の分解、合成等の化学反応を引き起こして成膜する化学的プロセスであり、優れた特性のDLC膜を得ることができる。プラズマCVD装置の一形態として、DC方式がある。DC方式では、真空チャンバ内で、被成膜体に予め成膜された磁性膜を陰極とし、磁性膜と、反応室内に配設された陽極の放電電極との間でプラズマ放電を発生させ、磁性膜上に保護膜を堆積する。この方式は、構造的にもシンプルで、工業的大量生産に適している。しかしながら、上述したように、MRヘッド用テープは高出力を必要としないため磁性膜が薄く、この電気抵抗が従来よりも増大しているので、DC方式のように、磁性膜を陰極としたプラズマ放電では放電電流が低減し、その結果、蒸着テープに保護膜を形成する際の成膜速度が低下する傾向がある。 【0006】 そこで、成膜速度を高めるために、反応室を拡張し、或いは、反応室の設置数を増やす等、成膜有効面積を拡大する手法が試みられている。また、放電電圧を高くし、反応室内の圧力を高くし、或いは、反応ガスに混入するアルゴンガスの割合を増やす等で、反応ガスの活性化を促進する等の手法も試みられている。何れの手法を採用する場合でも、蒸着テープ表面の磁性膜に流れる電流、すなわち磁性膜と反応室内の放電電極との間の放電電流(プラズマ放電電流)を増大させることが必要である。 【0007】 しかしながら、上述のように放電電圧を高くする等によって、放電電流を無理に増大させて成膜速度を高めようとすると、安定なグロー放電からアーク放電を引き起こし、蒸着テープの磁性膜を損傷する等の結果を招く。また、増大する放電電流を逃がす方法として、抵抗器を介して蒸着テープに接触させた金属ローラにより、蒸着テープから正電荷を除去する方法もある。しかしながら、この方法では、磁性膜と金属ローラとの接触面で、ピンポイント状のスパークが発生することがあり、その場合、蒸着テープを損傷し、製品不良を招くことになる。そのため、磁性膜に複数の導通ローラを接触させることによって電気抵抗を低減するような不良削減への取り組みもあったが、製品不良の発生を有効に防止することはできなかった。また、蒸着テープの磁性膜の状態、磁性膜の局所的な場所、蒸着テープのロット等により、電気抵抗が微妙に変化する問題もあるため、放電電流の変化によって、成膜厚さや品質にバラツキが生じるおそれがある。 【0008】 更に、プラズマCVD法で保護膜を形成した蒸着テープには、正電荷が帯電するので、正電荷の影響により、蒸着テープをローラに良好に巻き取れないという問題もあった。 【0009】 かかる問題点を解決すべく、本出願人は、特許文献1及び特許文献2のように、プラズマCVDによる成膜時に、非接触で電子流を蒸着テープに対して供給することにより反応室での放電電流の効率を良した成膜装置を提案している。 【0010】 しかしながら、近年、蒸着テープの磁性膜はより薄くなっているため、電子流が流れる際の磁性層の抵抗損失が大きくなり、効率的にプラズマ放電ができなくなり、保護膜を形成することが困難となってきた。そこで、更なる効率的なプラズマ放電による保護膜の形成手法が必要となってきた。 【0011】 【特許文献1】特開2001−32070号公報 【特許文献2】特開2002−327277号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 本発明は、かかる実状に鑑みてなされたものであって、磁気テープ等の被成膜体に形成した金属薄膜がより薄くなり抵抗損失が大きくなったとしても、成膜速度を高め、製品不良を招くこと無く、上記金属薄膜上に保護膜することができる成膜装置を提供することを目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0013】 本発明に係る成膜装置は、被成膜体上に形成された金属薄膜上にプラズマ反応によって保護膜を成膜する成膜装置において、上記金属薄膜に保護膜を形成するためのプラズマ反応空間を形成する反応室と、上記反応室内に上記保護膜を形成するための反応ガスを供給して当該反応室を所定の圧力に保持するガス供給源と、上記反応室内に設けられており上記金属薄膜との間にプラズマを発生させる陽極電極と、上記反応室の外部に設けられ、上記金属薄膜に対して非接触で電子流を供給する電子供給源と、上記電子供給源から上記金属薄膜に対して供給する電子流の電流量を制御する制御部とを備える。上記制御部は、上記電子供給源から上記金属薄膜に対して供給する電子流の電流量を、上記陽極電極に対して供給される電流量以上に制御する。 【発明の効果】 【0014】 本発明に係る成膜装置では、被成膜体上に形成された金属薄膜に対して非接触で電子流を供給し、その電子流の電流量を陽極電極に対して供給される電流量以上に制御しながら、被成膜体上に形成された金属薄膜上にプラズマ反応によって保護膜を成膜する。これにより、被成膜体に形成した金属薄膜が薄くなり抵抗損失が大きくなったとしても、成膜速度を高め製品不良を招くこと無く、保護膜することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 以下、本発明が適用されたプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いた成膜装置について説明をする。 【0016】 図1に示す本発明が適用された成膜装置10は、図2に示す非磁性のテープ状基板1上に形成された磁性膜1a上に、プラズマCVD法により、DLC(Diamond like Carbon)の保護膜1bを成膜する装置である。テープ状基板1は、例えば厚みが10μm程度であり、PET、アラミド等の高分子材料からなり、真空蒸着によりCo-O金属磁性膜である磁性膜1aが一方の面に形成されている。 【0017】 成膜装置10は、図1に示すように、プラズマ反応のための空間を形成する反応室11を内部に有する真空チャンバ20を備えている。また、真空チャンバ20には、反応室11内にプラズマ反応のための反応ガスを導入する反応ガス導入部12と、真空チャンバ20内のガスを排気する排気部13とが設けられている。真空チャンバ20内は、反応ガス導入部12及び排気部13により、成膜に必要な一定の圧力に保持され、また、不要なガスが廃棄される。 【0018】 反応室11の内部では、磁性膜1a自身が陰極として機能してプラズマ反応が発生することにより、テープ状基板1上に形成された磁性膜1a上にDLCからなる保護膜1bが成膜される。反応ガスとしては、エチレン、プロピレン、アセチレン、トルエン等の炭化水素ガスとアルゴンガスの混合で成り立つプロセスガスである。反応室11は、例えば、石英、パイレックスガラス(登録商標)、プラスチック等の絶縁材や、表面が絶縁処理された金属材料によって形成されている。 【0019】 また、真空チャンバ20内には、反応室11の上方に、テープ走行系14が設けられている。テープ走行系14は、円柱又は円筒状の冷却ローラ21と、冷却ローラ21の上方に配設される円柱又は円筒状の送出ローラ22及び巻取ローラ23と、複数のガイドローラ24,25,26,27,28,29とを備えている。 【0020】 冷却ローラ21は、軸21aを中心に、図1中矢印A方向に回転する。冷却ローラ21は、その側面にテープ状基板1が巻き付けられている。冷却ローラ21は、巻き付けられたテープ状基板1磁性膜1aの裏面側が周面に接触して支持している。冷却ローラ21は、テープ状基板1が巻き付けられている周面の一部分(例えば、中心角の約1/4程度の範囲の側面部分)が反応室11の開口部に対向し、反応室11の開口を覆って反応室11内に略密閉空間を形成している。これにより、反応室11の内部では、磁性膜1a自身が陰極として機能して、プラズマ反応を発生させることができる。また、冷却ローラ21は、液状の冷媒が内部を循環することによって表面が冷却されており、接触支持したテープ状基板1を冷却し、テープ状基板1が成膜時のプラズマ輻射熱で変形や損傷しないように保護している。 【0021】 このような冷却ローラ21は、モータ等の駆動源によって軸21aを中心に回転することにより、周面に巻き付けられているテープ状基板1を、磁性膜1aを反応室11に対面させた状態で、長手方向に走行させることができる。 【0022】 送出ローラ22は、テープ状基板1の長手方向の一端を保持しており、磁性膜1bが成膜された後(保護膜1bが成膜される前)のテープ状基板1が巻回されている。巻取ローラ23は、テープ状基板1の一端と長手方向の反対の他端を保持しており、磁性膜1b上に保護膜1bが成膜された後のテープ状基板1が巻回される。 【0023】 ガイドローラ24〜29は、走行方向が変更する位置に設けられ、テープ状基板1が掛け渡されている。ガイドローラ24〜29は、1つを除き、絶縁材料から構成されている。ガイドローラ24〜29の内、周面が磁性膜1bと直接接触している1つのガイドローラ(ここでは、ガイドローラ26)は、導電材料から構成されており、アースに電気的に接続されている。このため、このガイドローラ26は、磁性膜1bをアース(電気的なグランド)と電気的に接続している。 【0024】 このようなテープ走行系14では、送出ローラ22、冷却ローラ21、巻取ローラ23の順でテープ状基板1が掛け渡されており、送出ローラ22に巻回されているテープ状基板1が順次に冷却ローラ21に供給され、冷却ローラ21上で走行したテープ状基板1が巻取ローラ23により順次巻き取られる。このように、テープ走行系14では、送出ローラ22、冷却ローラ21及び巻取ローラ23がそれぞれ所定の方向(例えば図中矢印B,A,Cの方向)に回転することにより、掛け渡されているテープ状基板1を走行させる。 【0025】 真空チャンバ20の反応室11の内部には、陽極電極31が設けられている。陽極電極31は、真空チャンバ20の外部に配置された直流電源32のプラス側に、オン/オフ切り換え可能に接続されている。直流電源32のオン時には、反応室11の上方を覆うように配置されているテープ状基板1上の磁性膜1aとの間に、+500V〜+2000Vの電圧が印加される。また、陽極電極31の形状は、反応ガスの透過を良好にし、電界が均一になるようにするために、例えばメッシュ状に構成されている。陽極電極31の使用材料としては、例えば銅を挙げることができるが、導電性を有する金属であれば何れでも良く、例えばステンレス鋼、黄銅(真鍮)、金(Au)等であっても良い。 【0026】 また、真空チャンバ20内には、テープ状基板1の磁性膜1aに対して非接触で電子流を供給する2つ電子供給源34,35が設けられている。電子供給源34,35は、真空チャンバ20の外部の制御部36によって、出力される電子流の電流量が制御されている。電子供給源34,35は、非接触でテープ状基板1の磁性膜1aに電子流を供給する。例えば、電子供給源34,35は、例えば熱電子を引き出し電極で取り出す方法により、非接触で電子流を磁性膜1aに供給する。 【0027】 2つの電子供給源34,35は、テープ状基板1の走行方向に対して、反応室11に並んで配置されている。一方の電子供給源34は、テープ走行方向の上流側に配置され、他方の電子供給源35はテープ走行方向の下流側に配置されている。また、電子供給源34,35は、反応室11の外部であるがなるべく近接した位置(例えば2mm程度)に配置されることが望ましい。 【0028】 制御部36は、電子供給源34,35から磁性膜1aに対して供給される電子流の電流量を制御する。具体的には、直流電源32から陽極電極31へ供給される電流の電流量を検出し、電子供給源34,35の2つの合計の電流量が、直流電源32から陽極電極31へ供給される電流の電流量以上となるように制御をする。 【0029】 以上のように構成された成膜装置10の動作について説明すると、先ず、成膜をする前に、磁性膜1aが成膜されたテープ状基板1を送出ローラ22に巻回した状態でテープ走行系14に装着すると共に、テープ状基板1を送出ローラ22から冷却ローラ21及び巻取ローラ23へ掛け渡し、セットアップを行う。そして、保護膜1bの成膜の動作を行う。 【0030】 具体的に、成膜時には、テープ走行系14がテープ状基板1を、送出ローラ22から冷却ローラ21、絶縁ガイドローラ28を経由して、巻取ローラ23に向けて一定速度で送る。この際、冷却ローラ21によって反応室11との対面位置に保持されたテープ状基板1の磁性膜1aと反応室11内の陽極電極31との間には、直流電源32から電圧が印加され、反応室11内でプラズマが発生する。これにより、反応室11に導入される反応ガスは、プラズマのエネルギーによって活性化し、活性化したガス分子がテープ状基板1上で基底状態に戻り、連鎖的に分子が繋がる。この際、一部の水素原子がH2ガス分子となって排気部13から排気され、アモルファス状のDLC膜が、テープ状基板1の磁性膜1a上に保護膜1bとして被着堆積する。また、反応室11から流出しても成膜に使われなかった反応ガスは、排気部13から真空チャンバ20外部に排気される。 【0031】 成膜に当たって、成膜装置10では、電子供給源34,35から磁性膜1aへの電子流を非接触で電子流を供給している。これにより、電子供給源34,35が無い場合、直流電源32から陽極電極31に対して供給される電流は、反応室11の内部のプラズマ、磁性膜1a、ガイドローラ26を経由して、アースに流れるが、ここでは、電子供給源34,35から供給される電子流の通過経路が、磁性膜1aからアースへの電流経路となる。したがって、成膜装置10では、ガイドローラからのアースのみを用いて磁性膜1aを流れる電流をアースに落とすのと同じ効果を、磁性膜1aに対して非接触で行うことができ、従来の接触式で問題となる接触部の電流集中による点状欠陥の発生を防止することができる。 【0032】 電子供給源34,35から磁性膜1aへ供給される電子流の電流量は、直流電源32から陽極電極31へ供給される電流の電流量以上となるように制御部36により制御がされている。ここで、図3は、横軸にエミッション電流値(電子供給源からの電子供給量)、縦軸に直流電源32から陽極電極31に流れる電流値を表したグラフである。各値ともエミッション電流値を0としたときの電流値の比として表している。なお、このときの測定条件としては直流電源32の電圧1200V,反応ガス,流量=エチレン/Ar,300sccm/75sccm、反応室11内部圧力30Pa、磁性膜1aのシート抵抗値は650〜740Ω/□)である。 【0033】 この結果から、直流電源32の電圧を一定とし、当該直流電源32から供給する電流値をより大きく取るためには、エミッション電流を大きく取れば良いことが分かる。更に、エミッション電流値比=1、つまり、直流電源32から陽極電極31に流れる電流以上で、飽和する傾向となることが分かる。そこで、制御部36は、電子供給源34,35から磁性膜1aへ供給される電子流の電流量を、直流電源32から陽極電極31へ供給される電流の電流量以上となるように制御することによって、最適な成膜条件でプラズマCVDを行うことができるようにしている。 【0034】 なお、非接触による電子流の供給量を電源電流値以上にした場合、過剰電流分は、ガイドローラ26を介してアースに流れる。このため、例えば、突発的に発生するアーク放電により直流電源32に異常電流が流れることを防止することができる。 【0035】 また、成膜装置10では、反応室11の上流側と下流側にそれぞれ1つずつ、合計2つの電子供給源34,35を設けている。この場合、2つの電子供給源34,35から出力される電子流の電流量の合計が、直流電源32から陽極電極31に流れる電流値以上となるのみならず、それぞれが直流電源32から陽極電極31に流れる電流値の1/2以上となることが良い。これは、反応室11の上流側及び下流側の一方のみに電子流を流すよりも、両方に流した方が抵抗が並行換算され、磁性膜1aで生じる抵抗損失が最も小さくなるからである。 【0036】 また、成膜装置10では、2つの電子供給源34,35を設けているが、本発明では、2つに限らず、1又は3つ以上の電子供給源が設けられ、その合計の電流量が直流電源32から陽極電極31に流れる電流値以上であれば、その数は特に限定されるものではない。 【0037】 また、一般にプラズマCVD成膜装置の場合、生産性向上のためには成膜面積を大きくする必要がある。このため、冷却ローラ21を大径にし、反応室11との間を密に配置することが重要である。このようにした場合、磁性膜1aの抵抗ロスをより低くして効率よく放電電流を除去することが可能となる。 【0038】 また、成膜装置10では、真空チャンバ20内に1つの反応室11のみしか設けられていないが、図4に示すように、冷却ローラ21の周囲にテープ状基板1の長手方向に並んだ複数の反応室11a,11b,11cを設けても良い。この場合には、成膜装置10には、各反応室11a,11b,11cのそれぞれの上流側及び下流側に電子供給源37a,37b,37c,37dが設けられる。 【0039】 ところで、プラズマ反応が発生しているテープ状基板1の位置(すなわち、反応室11の位置)と電子流が供給されているテープ状基板1の位置(すなわち、電子供給源34,35の位置)とは、より近接している方が良い。陽極電極31とアースとの間の電気的抵抗をより小さくすることができるためである。すなわち、陽極電極31とアースとの間の電気的抵抗は、反応室11内部での陽極電極31と対向位置の磁性膜1aとの間に発生しているプラズマによる抵抗分と、磁性膜1aからアースまでの抵抗分とが合成したものと見ることができる。後者の抵抗分は、反応室11から磁性膜1aのアースまでの距離に依存する。ガイドローラのみによる接触式の場合は、テープ状基板1の走行経路上、冷却ローラ21から離れた場所に配置しなければならないのに対して、当該成膜装置10のように非接触による電子流を用いた場合は、冷却ローラ21上に配置することが可能となり、反応室11内に位置する磁性膜1bとアースとの間の抵抗を小さくすることが可能となる。このため、電子供給源34,35の配置として、反応室11により近い位置に配置することで、磁性膜1aの抵抗損失による電位の低下を抑制することができる。 【0040】 ここで、反応室11により近い位置に電子供給源34,35を配置すると良好な効果が得られることとの確認するため、次のような実験を行った。 【0041】 この実験では、電子供給源を、図5のように3つ配置した。すなわち、反応室11の近傍のテープ走行方向の下流側に配置された第1の電子供給源41と、反応室11から遠距離となるようにテープ走行方向の上流側に配置された第2の電子供給源42と、反応室11から遠距離となるようにテープ走行方向の下流側に配置された第3の電子供給源43とを設けた。なお、第2と第3の電子供給源42,43は、反応室11からの距離は等距離である。 【0042】 このような条件の元、第1の電子供給源41のみをOFFからONにし、第2及び第3の電子供給源42,43をONとした状態で、直流電源32から陽極電極31への電流(放電電流)を測定した。このときの測定条件としては直流電源32の電圧1200V,反応ガス,流量=エチレン/Ar,300sccm/75sccm、反応室11内部圧力30Paである。 【0043】 図6は、このときの測定結果を示す図であり、磁性膜1aの膜厚違いをシート抵抗値(Ω/□)で横軸に表記し、第1の電子供給源41のみをOFFからONにすることによる直流電源32から陽極電極31への電流(放電電流)の上昇率を縦軸に表した図である。 【0044】 第1の電子供給源41のみのON,OFFによる結果の違いは、電子供給源が反応室11に近づくことにより放電電流値が上昇することを示しており、陰極とする磁性膜1aのシート抵抗値が高い(磁性膜厚が薄い又は表面絶縁酸化層が厚い)場合に顕著な結果となっている。直流電源32から同一電圧を陽極電極31に印加した場合でも、磁性膜1aの抵抗減により電位差が小さくなり放電電流が上昇し、陽極電極31と磁性膜間での電位差は上昇することになる。放電電流のアップはプラズマ密度アップを意味し、成膜レート向上に結びつき、陽極電極31と磁性膜間の電位差アップは磁性膜表面部での電圧降下量のアップを意味し、磁性膜に突入するイオンの加速を増大させ膜質改善に効果がある。 【0045】 見方を変えて、電流値を一定として、電子供給源が反応室11に近い位置に設置された場合は、磁性膜の距離分の抵抗値減少により、直流電極32から磁性膜1aの表面上の電位差は変化せずに、電源電圧が降下することになり、実際にシート抵抗値230Ω/□において第1の電子供給源41のみをOFFからONにした場合は1200Vから11140Vへ降下することが確認された。 【0046】 以上のことより、電子供給源34,35を反応室11に近づけることで、電源電圧一定の条件では電流値アップと電位差アップによるレートアップ、膜質アップを行うことができ、電源電流一定の条件では、プロセス上重要な電極間の電位差を変えないで、設定電圧を低くすることができ異常放電を抑制することができる。これらの効果は磁性膜の表面抵抗値が高い場合ほど大きくなる。 【図面の簡単な説明】 【0047】 【図1】本発明が適用された成膜装置の構成を示す図である。 【図2】磁気テープの断面図である。 【図3】横軸に電子供給源からの電子供給量、縦軸に直流電源から陽極電極に流れる電流値を表した図である。 【図4】冷却ローラの周囲に複数の反応室が設けられた成膜装置の構成を示す図である。 【図5】電子供給源を反応室に近接したときの効果を確認するための実験に用いた成膜装置の構成を示す図である。 【図6】横軸にシート抵抗値、縦軸に直流電源から陽極電極への電流(放電電流)の上昇率を表した図である。 【符号の説明】 【0048】 1 テープ状基板、1a 磁性膜、1b 保護膜、10 成膜装置、11 反応室、12 反応ガス導入部、13 排気部、14 テープ走行系、21 冷却ロール、34,35 電子供給源、36 制御部
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002185 【氏名又は名称】ソニー株式会社
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| 【出願日】 |
平成17年8月18日(2005.8.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100067736 【弁理士】 【氏名又は名称】小池 晃
【識別番号】100086335 【弁理士】 【氏名又は名称】田村 榮一
【識別番号】100096677 【弁理士】 【氏名又は名称】伊賀 誠司
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| 【公開番号】 |
特開2007−51344(P2007−51344A) |
| 【公開日】 |
平成19年3月1日(2007.3.1) |
| 【出願番号】 |
特願2005−237833(P2005−237833) |
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