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【発明の名称】 |
耐食性アルミニウム合金材 |
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【氏名】柳澤 佳寿美 【氏名】鶴野 招弘 【氏名】桑原 敏幸 |
【課題】ラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下において、腐食発生の起点となるCuを含むアルミニウム合金材の耐食性を向上することを目的とする。
【解決手段】合金元素としてCuを含むアルミニウム合金材の表面にキサントゲン酸塩処理が施された上で、更にカルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩が被覆されているものとし、Cuを含むアルミニウム合金材であっても、自動車のラジエータチューブなどとして、ラジエータクーラントに対する耐食性を向上させる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 合金元素としてCuを含むアルミニウム合金材の表面にキサントゲン酸塩処理が施された上で、更にカルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩が被覆されていることを特徴とする耐食性アルミニウム合金材。 【請求項2】 合金元素としてCuを含むアルミニウム合金芯材の表面にキサントゲン酸塩処理が施された上で、更にカルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩が被覆されており、この芯材の片面に、更にろう材がクラッドされていることを特徴とする耐食性アルミニウム合金材。 【請求項3】 前記アルミニウム合金材が輸送機のラジエータチューブ用である請求項1または2に記載の耐食性アルミニウム合金材。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、自動車などの輸送機のアルミニウム合金製のラジエータチューブに用いられて好適な耐食性アルミニウム合金材に関するものである。 【背景技術】 【0002】 自動車などの輸送機の車体軽量化のため、従来から使用されている銅合金材に代わって、ラジエータチューブにもアルミニウム合金材の適用が増加しつつある。そして、これらアルミニウム合金製ラジエータチューブには、管内面の防食のために、多層化させたクラッド材からなる耐食性アルミニウム合金材が用いられている。 【0003】 この耐食性アルミニウム合金材は、一般的には、ろう材、芯材、犠牲材から構成される。この内、犠牲材にはZnを含んで犠牲陽極効果を有するアルミニウム合金材が用いられる。これに対して、芯材には、必要強度の確保のために、合金元素としてCuを含むアルミニウム合金材が用いられる。 【0004】 一方、ラジエータクーラントには、従来から、エチレングリコールなどの水溶性有機媒体を主成分とし、これに水や市販の防錆剤などを適宜含んだクーラントが使用されている。しかし、これらクーラント中のエチレングリコールなどの水溶性有機媒体は、必然的に経時劣化 (分解) し、アルミニウム合金材に対し腐食性を有する、グリコール酸や蟻酸などの酸を生成する。このため、前記犠牲材や芯材などのアルミニウム合金材が、これらの酸により腐食されやすくなるという問題がある。 【0005】 このため、従来から、アルミニウム合金材表面をカルボン酸処理すること(特許文献1参照)や、アルミニウム合金材表面の酸化皮膜を水酸化物(ベーマイト)主体のものとすること(特許文献2参照)などが提案されている。 【0006】 また、ラジエータクーラントに、カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩を添加剤として含ませて、アルミニウム合金材に対するグリコール酸や蟻酸などの酸のアタックを抑制し、アルミニウム合金溶出量を抑えて、アルミニウム合金材ラジエータクーラントの寿命延長を図ることも提案されている(特許文献3参照)。 【特許文献1】特開2001−316836号公報(全文) 【特許文献2】特開平成8−269753号公報(全文) 【特許文献3】特開2003−342559号公報(全文) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 これら従来のアルミニウム合金材表面の防錆処理には一定の効果がある。但し、前記した通り、ラジエータチューブのクラッド材の芯材アルミニウム合金材には、必要強度確保のために、合金元素として銅 (以下、Cuと言う) が含まれている。このようなCuを含むアルミニウム合金材では、一般的にもCuを起点とした表面腐食発生が懸念され、ラジエータチューブのクラッド材の芯材アルミニウム合金材でも、この点は例外ではない。 【0008】 この点、前記したラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下において、しかも腐食発生の起点となるCuを含むアルミニウム合金材に対して、前記従来の防錆処理が耐食性向上効果を満たすかどうかは不明である。 【0009】 更に、前記特許文献3などの、カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩を添加剤として含ませたラジエータクーラントも、腐食発生の起点となるCuを含むアルミニウム合金材に対して耐食性向上効果を満たすかどうかは不明である。 【0010】 本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、特にラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下において、しかも腐食発生の起点となるCuを含んだ場合でも、耐食性に優れたアルミニウム合金材を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 この目的を達成するために、本発明耐食性アルミニウム合金材の要旨は、合金元素としてCuを含むアルミニウム合金材の表面にキサントゲン酸塩処理が施された上で、更にカルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩が被覆されていることである。 【0012】 また、この目的を達成するために、本発明耐食性アルミニウム合金材の別の要旨は、合金元素としてCuを含むアルミニウム合金芯材の表面にキサントゲン酸塩処理が施された上で、更にカルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩が被覆されており、この芯材の片面に、更に、ろう材がクラッドされていることである。 【発明の効果】 【0013】 本発明は、合金元素としてCuを含むアルミニウム合金材の表面に、先ず、通常ザンセートと称されるキサントゲン酸塩処理を施す。その上で、前記特許文献3に開示された、カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩を、特許文献3のようなラジエータクーラントの添加剤としてではなく、アルミニウム合金材の側に被覆して用いる。 【0014】 これによって、特にラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下において、腐食発生の起点となるCuを含むアルミニウム合金材に対しても、大きな耐食性向上効果を有することができる。 【0015】 これは、本発明におけるキサントゲン酸塩処理と、カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩の被覆との相乗効果によるものである。事実、後述する実施例のように、キサントゲン酸塩処理のみでは、また、カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩の被覆のみでは、特にラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下において、腐食発生の起点となるCuを含むアルミニウム合金材に対して大きな耐食性向上効果を有することができない。 【発明を実施するための最良の形態】 【0016】 (キサントゲン酸塩) 先ず、本発明におけるキサントゲン酸塩処理について説明する。キサントゲン酸塩であるザンセートは、代表的には、ナトリウムエチルザンセートがあり、アルキル基(Rの部分)を有するキサントゲン酸の塩である。この他、ナトリウムメチルザンセート、カリウムエチルザンセート、カリウムメチルザンセート、などの種類がある。 【0017】 このザンセートは、浮遊選鉱における硫化鉱物の捕集剤として、また、分析化学における銅(黄色)、モリブデン(赤色)の定色反応試薬として周知である。即ち、このザンセートは、金属と反応して難溶性塩を生成する性質が周知であり、この性質を利用して、前記分離や検出に利用されている。 【0018】 本発明においても、このザンセートの金属と反応して難溶性塩を生成する性質を利用する。但し、本発明においては、アルミニウム合金材表面のCu (Cu原子群) が多く存在している部分に対してこのザンセートを反応させ、Cuの活性を喪失させて、Cuを起点とする腐食を防止する点に特徴がある。 【0019】 合金元素としてCuを含むアルミニウム合金材の表面には、Cuが析出乃至固溶した形で存在すると考えられる。ラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下では、これら合金材表面におけるCuが多く存在している部分とそれ以外の部分との境界領域におけるアルミニウムが、前記酸と優先的に反応して、溶解して孔食が生じる。そしてこの孔食が起点となって腐食が拡大していく。このため、ラジエータクーラント中では、Cuを含むアルミニウム合金材は、Cuを含まないアルミニウム合金材に比して、耐食性が著しく劣る。 【0020】 Cuを含むアルミニウム合金材表面とキサントゲン酸塩を接触させた場合、キサントゲン酸塩は、合金材表面に存在するCuと選択的に反応して、難溶性塩を生成する。そして、この難溶性塩がアルミニウム合金材表面に存在するCuを被覆(マスキング)する。実際に、例えば、Cuイオンを含む水溶液 (青色) にキサントゲン酸塩水溶液 (無色) を混ぜると、難溶性塩の沈殿 (黄色) が生じる。 【0021】 このように、難溶性塩となったCuは基本的に不活性であり、ラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下でも、これらグリコール酸や蟻酸などの酸とは反応しない。したがって、前記Cuを起点とする腐食機構が抑制され、Cuを含むアルミニウム合金材に対して、ラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下でも、耐食性向上効果を発揮することができる。 【0022】 (キサントゲン酸塩処理) しかも、キサントゲン酸塩処理によるこのような効果は、常温(室温)のキサントゲン酸塩の水溶液にアルミニウム合金材を浸漬あるいはキサントゲン酸塩の水溶液をアルミニウム合金材に散布乃至塗布するなど、至って簡便な処理によって発揮される。即ち、アルミニウム合金材表面とキサントゲン酸塩との接触は、常温(室温)で、しかも短時間で良い。また、キサントゲン酸塩の水溶液の濃度も、0.01質量%〜5質量%程度までの低濃度で可能であり、わざわざ高濃度とする必要は無い。 【0023】 (カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩の被覆処理) 次ぎに、このキサントゲン酸塩処理に続く、カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩の、アルミニウム合金材への被覆処理について説明する。 【0024】 カルボン酸基を4個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩は、アルミニウム合金材に被覆されて、ラジエータクーラントに対する防食性を有する。この効果は、前記した通り、キサントゲン酸塩処理が施されたアルミニウム合金材に対して発揮される。キサントゲン酸塩処理が施されていない、通常のアルミニウム合金材では、表面に存在するCuが、難溶性塩となっておらず、活性なままである。このため、カルボン酸基を4個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩がアルミニウム合金材に被覆されていても、前記Cuを起点とする腐食機構は生きており、被覆の隙間や欠陥をぬってCuを起点とする腐食機構が生じやすい。この結果、Cuを含むアルミニウム合金材に対して、ラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下では、耐食性向上効果が半減する。 【0025】 (脂肪族多価カルボン酸) 本発明において、カルボン酸基を4個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩における、上記脂肪族とは、脂肪族と脂環族の両者を含み、脂肪族と脂環族の両者を含めて、単に脂肪族と称する。 【0026】 本発明における脂肪族多価カルボン酸は、カルボン酸基を4 個以上含む必要がある。カルボン酸基が3 個以下の脂肪族カルボン酸および/ またはその塩では、クーラント主剤である水溶性有機媒体の劣化により生じた酸により、鉄、アルミニウム合金などの、エンジン、ラジエータ等の金属部材が溶解した場合、直ちにこれらのイオンと反応し、クーラントに不溶な化合物を生成してしまう。また、アルミニウム合金材に対する防錆効果も小さい。 【0027】 このようなカルボン酸基が3 個以下のものとしては、オクテン1イルコハク酸、安息香酸、セバシン酸およびその塩などが例示される。 【0028】 これに対して、カルボン酸基の数が多くなるに従い、アルミニウム合金材に対する防錆被覆効果が大きくなる。カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸は、カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸は、分子がイオンになりやすく、クーラント溶出金属と反応しても沈殿物を生じないという優れた特性を有する。また、アルミニウム合金材表面への吸着力が大きい。したがって、これらの相乗作用によって、アルミニウム合金材に対する防錆効果を有する。 【0029】 これらの作用効果をより強化するためには、カルボン酸基の数以外に、前記脂肪族多価カルボン酸の分子量が400 以上であることが好ましい。分子量が大きいほど、アルミニウム合金材表面を物理的に被覆する効果が生まれ、アルミニウム合金材に対する防錆効果が高まる。 【0030】 この分子量が400 未満の場合、クーラント組成条件や、クーラント使用温度や循環の際の攪拌強度など、クーラントにおける腐食条件が厳しくなる場合には、効果が充分発揮されない可能性も生まれる。 【0031】 これらの作用を有する、カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸としては、ポリカルボン酸またはそのカルボキシル基における誘導体若しくはそれらの塩などが例示される。 【0032】 このなかでも、前記効果が高く、好ましいポリカルボン酸としては、下記式1 で示されるポリエンポリカルボン酸またはそのカルボキシル基における誘導体若しくはそれらの塩である。 【0033】 【化1】
(式中、nは1〜5の整数、mは1または2の整数を各々意味する) 【0034】 ここで、上記式1中、m=2、n=1、またはm=2、n=2であることが好ましい。これらの好ましい化合物としては、特に、下記式2で示される(3Z、8Z、10E)−6−エチル−3、8、10トリデカトリエン−1、3、4、8、9−ペンタカルボン酸ペンタナトリウム塩、または下記式3で示される(3Z、8Z、13Z、15E)−6、11−ジエチル−3、8、13、15−オクタデカテトラエン−1、3、4、8、9、13、14−ヘプタカルボン酸ヘプタナトリウム塩の、1種または2種を含むことが例示される。 【0035】 【化2】
【0036】 【化3】
【0037】 これらの化合物は、醗酵産物由来の化合物 (合成も可能) として、また、国際公開番号WO99/46231号公報などで、また日本油化学会誌第48巻、第9 号(1999 、903 〜909 頁) などで、各々CF2399 (上記化学式2) 、CF2403 (上記化学式3)の略称で、製法を含め、界面活性剤や分散活性剤として公知なものである。 【0038】 ただ、これら記載した以外の脂肪族多価カルボン酸またはその塩であっても、前記本発明で規定する性能を有するカルボン酸は、本発明範囲に含まれる。 【0039】 (被覆方法) アルミニウム合金材表面に、これら脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩を被覆する方法は、脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩の水溶液に、キサントゲン酸塩処理されたアルミニウム合金材と接触させて行なう。この際、カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩は、0.1〜20質量%程度の濃度の水溶液とする。なお、前記キサントゲン酸塩処理されたアルミニウム合金材をこれらの水溶液と接触させる際に、合金材を乾燥するなどして、表面の水分を予め除去しておく必要は無い。 【0040】 上記接触は、常温(室温)のこれら脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩の水溶液にアルミニウム合金材を浸漬、あるいはこの水溶液をアルミニウム合金材に散布乃至塗布するなど、至って簡便な処理によって可能である。即ち、アルミニウム合金材表面と脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩との接触は、常温(室温)で、しかも短時間で良い。但し、脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩は、アルミニウム合金材表面を被覆する必要があるので、水溶液濃度は、処理が可能な5質量%以上のできるだけ高濃度とすることが好ましい。これら脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩の水溶液処理後のアルミニウム合金材は、乾燥するなどして、表面の水分を強制的に(積極的に)除去しておくことが好ましい。 【0041】 (アルミニウム合金材) 本発明では、ラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下において、腐食発生の起点となるCuを含むアルミニウム合金材を対象とする。このため、アルミニウム合金材の形状(圧延板材、押出形材、鍛造材)は問わない。また、アルミニウム合金材の成分組成も限定しない。ただ、クーラントの組成にもよるが、Cuは0.05質量% 以上の含有量で、上記クーラント中の腐食発生の起点となりうる。したがって、本発明では、対象となるアルミニウム合金材のCu含有量の目安を0.05質量% 以上とする。 【実施例】 【0042】 次に、本発明の実施例を説明する。アルミニウム合金製ラジエータチューブでの使用を想定し、アルミニウム合金材に対し腐食性を有するクーラント模擬液に、本発明アルミニウム合金材を浸漬した際の耐食性を評価した。 【0043】 アルミニウム合金材としては、試験材A として、ラジエータ管に使用される、Cuを含む1%Si-1%Cu-1.6%Mn- 残部Alからなるアルミニウム合金板 (厚み0.3mm 、20×60mm、重量10g)を用いた。また、比較のために、Cuを含まない (不純物としてのCu含有量が0.01% 程度の)0.5%Mn-残部Alからなるアルミニウム合金材も試験材B として試験した。 【0044】 試験したクーラント模擬液組成は、エチレングリコール30% 、水65% 、脂肪族カルボン酸合計添加量を固形分換算で1.5%とし、これにグリコール酸:5000ppm、蟻酸:1000ppmを各々添加したものとした(pH2.7) 。 【0045】 (前処理) 試験条件として、前記アルミニウム合金試験材を、先ず硝酸水溶液により脱脂後、苛性処理により表面酸化皮膜をエッチング除去後、更に硝酸水溶液によりデスマット処理する前処理を行なった。 【0046】 (キサントゲン酸塩処理) 次ぎに、これら前処理したアルミニウム合金試験材を、ナトリウムエチルザンセートの、表2 に示す0.01〜5 質量%の各濃度の水溶液(室温)に、共通して 1分間浸漬した。比較のために、キサントゲン酸塩処理しないアルミニウム合金試験材も準備した。 【0047】 (脂肪族多価カルボン酸処理) 更に、これらキサントゲン酸塩処理したアルミニウム合金試験材を、表1 にa 〜c で示す各脂肪族多価カルボン酸の、表2に示す0.1 〜10質量%の各濃度の水溶液(室温)に、共通して 1分間浸漬し、その後70℃の温度で5 時間乾燥させた。 比較のために、表1 にd 〜g に示す、カルボン酸基が3 個以下の脂肪族カルボン酸塩の水溶液への浸漬も同じ条件で行なった。また、比較のために、上記キサントゲン酸塩処理しないアルミニウム合金試験材も脂肪族多価カルボン酸処理した。 【0048】 これら脂肪族カルボン酸処理したアルミニウム合金試験材を、各々室温の前記クーラント模擬液に24時間浸漬した。この際、クーラント模擬液はスターラーにて攪拌し、クーラント模擬液表面は空気と接触させるようにした。そして、この浸漬後のクーラント模擬液中のアルミニウム溶解量を測定し、アルミニウムの溶出量 (ppm)とした。これらの試験結果を下記表2 に示す。 【0049】 表2 から明らかな通り、発明例1 〜7 は、合金元素としてCuを含むアルミニウム合金材A の表面にキサントゲン酸塩処理が施された上で、更に、表1 に示すa 〜c で示すカルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸処理が施されている。この結果、アルミニウムの溶出量が少なく、耐食性に優れている。 【0050】 これに対して、表2 の各比較例は本発明の要件のいずれかが外れている。 比較例8 は、Cuを含まないアルミニウム合金試験材B を用いており、脂肪族多価カルボン酸処理が施されているものの、キサントゲン酸塩処理が施されていない。 比較例9 は、キサントゲン酸塩処理と脂肪族多価カルボン酸処理のいずれも施されていない従来例相当である。 比較例10は、脂肪族多価カルボン酸処理が施されているものの、キサントゲン酸塩処理がされていない。 比較例11は、キサントゲン酸塩処理が施されているものの、脂肪族多価カルボン酸処理がされていない。 比較例12〜15は、キサントゲン酸塩処理が施されているものの、表1 のd 〜g に示すカルボン酸基が3 個以下の脂肪族カルボン酸によって処理されている。 【0051】 この結果、比較例9 、10〜15は、アルミニウムの溶出量が発明例1 〜7 に比して著しく多く、耐食性に著しく劣っている。 【0052】 因みに、Cuを含まないアルミニウム合金試験材B を用いた比較例8 は、キサントゲン酸塩処理が施されていないにも係わらず、アルミニウムの溶出量 (ppm)が発明例1 〜7 に比して、あまり劣っていない。また、比較例9 のキサントゲン酸塩処理と脂肪族多価カルボン酸処理のいずれも施されていない従来例相当や、この比較例8 とアルミニウム合金試験材のみが相違する比較例10に比しても、アルミニウムの溶出量が少ない。したがって、これらの結果から、本発明が対象とするCuを含むアルミニウム合金材のクーラント中における腐食しやすさが裏付けられる。 【0053】 更に、上記各発明例の耐食性は、キサントゲン酸塩処理と、カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸および/ またはその塩の被覆との相乗効果によるものであることが裏付けられる。即ち、カルボン酸基を4 個以上含む脂肪族多価カルボン酸の被覆のみの比較例10では、また、キサントゲン酸塩処理のみの比較例11では、上記各発明例に比して、アルミニウムの溶出量著しく多く、耐食性に著しく劣っている。 【0054】 したがって、これらの結果から、ラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下において、Cuを含むアルミニウム合金材に対して大きな耐食性向上効果を有する本発明アルミニウム合金材の意義が裏付けられる。 【0055】 【表1】
【0056】 【表2】
【産業上の利用可能性】 【0057】 本発明によれば、ラジエータクーラント中のグリコール酸や蟻酸などの酸の存在する腐食環境下において、腐食発生の起点となるCuを含むアルミニウム合金材の耐食性を向上できる。この結果、アルミニウム合金製ラジエータに対して好適なアルミニウム合金材を提供することが可能となる。したがって、アルミニウム合金製ラジエータの普及による輸送機の軽量化や、ラジエータ用途へのアルミニウム合金材の拡大を図れる点で、工業的な価値が大きい。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001199 【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
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| 【出願日】 |
平成17年6月28日(2005.6.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089196 【弁理士】 【氏名又は名称】梶 良之
【識別番号】100104226 【弁理士】 【氏名又は名称】須原 誠
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| 【公開番号】 |
特開2007−9245(P2007−9245A) |
| 【公開日】 |
平成19年1月18日(2007.1.18) |
| 【出願番号】 |
特願2005−188731(P2005−188731) |
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