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【発明の名称】 リン酸化オリゴ糖を含有する醸造酒
【発明者】 【氏名】永島 俊夫

【氏名】塚本 篤

【氏名】野田 高弘

【氏名】齋藤 勝一

【氏名】福島 道広

【氏名】島田 謙一郎

【氏名】橋本 直人

【氏名】韓 圭鎬

【要約】 【課題】安定感のある天然素材であって、しかも食物繊維と比類し得る生理活性を有する素材として馬鈴薯澱粉に着目し、新規な醸造酒を提供する。

【解決手段】リン酸化オリゴ糖を含有する醸造酒であって、該リン酸化オリゴ糖の濃度が200ppm以上であることを特徴とする醸造酒、並びに、リンの濃度が600ppm以上である馬鈴薯澱粉を原料として用い、該馬鈴薯澱粉を麦芽及び水に添加して糖化することにより糖化液を製造する糖化工程と、該糖化液に酵母を添加してアルコール発酵を行う発酵工程と、を備える醸造酒の製造方法により解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸化オリゴ糖を含有する醸造酒であって、
該リン酸化オリゴ糖の濃度が200ppm以上であることを特徴とする醸造酒。
【請求項2】
前記リン酸化オリゴ糖は、馬鈴薯澱粉を由来とすることを特徴とする請求項1に記載の醸造酒。
【請求項3】
前記馬鈴薯澱粉は、そのリンの濃度が600ppm以上である請求項2に記載の醸造酒。
【請求項4】
前記馬鈴薯澱粉は、その平均粒径が30μm以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の醸造酒。
【請求項5】
前記醸造酒が、ビール又は発泡酒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の醸造酒。
【請求項6】
リンの濃度が600ppm以上である馬鈴薯澱粉を原料として用い、該馬鈴薯澱粉を麦芽及び水に添加して糖化することにより糖化液を製造する糖化工程と、
該糖化液に酵母を添加してアルコール発酵を行う発酵工程と、
を備える醸造酒の製造方法。
【請求項7】
前記馬鈴薯澱粉は、その平均粒径が30μm以下である請求項6に記載の醸造酒の製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸化オリゴ糖を含む醸造酒に関し、詳細には、リンを高濃度に含む澱粉を原料として製造した醸造酒に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールの定義は、日本の酒税法によれば、(1)「麦芽、ホップ、水を原料として発酵させたもの(麦芽100%ビール)」、(2)「麦芽、ホップ、水及び米その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの。ただし、その原料中の当該政令で定める物品の重量の合計が、麦芽の重量の10分の5を超えないものに限る」と規定されている。ここで、「米その他の政令で定める物品」とは、米、とうもろこし、高粱、馬鈴薯、澱粉、糖類又はカラメルである。そして、上記(1)又は(2)の条件を満たすもののみがビールであり、それ以外は発泡酒に分類される。
【0003】
従って、ビールや発泡酒の原料に種々のものを用いてそれらの味や色などを変えることが可能になる。例えば、原料に各地の農産物を用いることでビールや発泡酒の個性や付加価値を付与したり、地域の特色を出すことができるようになる。その結果、地域産業の活性化にもつながる可能性がある。
【0004】
また、消費者の健康志向の高まりを受けて、種々の機能を付加したビールや発泡酒が開発されている。例えば、糖質又はプリン体を削減した発泡酒が上市され、健康を気遣う消費者を中心に大きな市場を形成している。
【0005】
更に、麦芽、大麦、小麦を原料に使用せずにビール様アルコール飲料が製造されている。例えば、炭素源を含有するシロップと、大豆又はえんどう豆より得られた窒素源と、ホップと、水を原料として発酵前液を製造し、該発酵前液に酵母を使用して発酵させるビール様アルコール飲料の製造方法において、前記シロップを馬鈴薯から得る旨が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−124591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビール様アルコール飲料は種々の原料を用いることができるため、機能性を付加した商品が今後も開発されることが予想される。しかしながら、ビール又は発泡酒の味や風味を好む消費者は依然として多い。そのため、ビール及び発泡酒はビール様アルコール飲料と共に今後も消費が増加していくものと考えられる。
【0007】
しかしながら、ビールや発泡酒中には、血糖値上昇を引き起こす糖質や、尿酸値上昇を引き起こすプリン体が豊富に含まれている。そのため、ビール又は発泡酒を長期間にわたり多量に摂取し続けると、肝毒性等の疾患を引き起こす恐れがある。
【0008】
麦芽の代替原料のひとつとして、馬鈴薯澱粉がある。馬鈴薯は澱粉含量が約15%と高く、既に従来から馬鈴薯澱粉を分離する方法が工業的に確立しているため大量入手が容易であり、コストも安い。そのため、馬鈴薯澱粉は発酵原料に適しているといえる。また、馬鈴薯澱粉及び澱粉関連物質には種々の生理活性があることが知られている。
【0009】
そこで、本発明は、安定感のある天然素材であって、しかも食物繊維と比類し得る生理活性を有する素材として馬鈴薯澱粉に着目し、新規な醸造酒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ビール製造又は発泡酒製造の代替原料及び副原料について種々の検討を行った。その結果、従来より食品原料として大量に生産されており、安全性の高い天然素材である馬鈴薯澱粉を用いて醸造酒を製造すると、血糖値を低下させる機能を有する醸造酒を得ることができるとの知見を得た。さらに、血糖値を低下させる物質について検討を行ったところ、醸造酒中のリン酸化オリゴ糖が糖代謝を促進すること、及び、当該リン酸化オリゴ糖が所定量以上含まれている場合に上記効果が得られることが判明した。
【0011】
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、リン酸化オリゴ糖を200ppm以上含有する醸造酒を提供するものである。このような構成により、上記濃度のリン酸化オリゴ糖を含んだビール、発泡酒又はビール様アルコール飲料は、従来のビール等と比較して、飲用後の血糖値の上昇を抑制することができる。
【0012】
上記発明の好ましい態様は次の通りである。前記リン酸化オリゴ糖は、馬鈴薯澱粉を由来とすることが好ましい。
【0013】
前記馬鈴薯澱粉は、そのリンの濃度が600ppm以上であることが好ましい。
【0014】
前記馬鈴薯澱粉は、その平均粒径が30μm以下であることが好ましい。
【0015】
前記醸造酒が、ビール又は発泡酒であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、リンの濃度が600ppm以上である馬鈴薯澱粉を原料として用い、該馬鈴薯澱粉を麦芽及び水に添加して糖化することにより糖化液を製造する糖化工程と、該糖化液に酵母を添加してアルコール発酵を行う発酵工程と、を備える醸造酒の製造方法を提供するものである。このような構成により、リン酸化オリゴ糖を200ppm以上含有する醸造酒を製造することができる。該醸造酒は、前述の通り、従来のビール等と比較して、飲用後の血糖値の上昇を抑制することができる。
【0017】
上記発明の好ましい態様は次の通りである。前記馬鈴薯澱粉は、その平均粒径が30μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リン酸化オリゴ糖を200ppm以上含有する醸造酒により、従来のビール等と比較して、飲用後の血糖値の上昇を抑制することができるため、従来のビールや発泡酒の飲用を控えなければならない消費者や、健康であっても血糖値を気遣う健康志向の消費者も安心して飲用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、更に詳細に説明する。本実施形態に係る醸造酒は、既述の通り、リン酸化オリゴ糖を含有する醸造酒であって、該リン酸化オリゴ糖の濃度が200ppm以上である。
【0020】
リン酸化オリゴ糖の濃度が200ppm未満の場合、本発明の所望の血糖値上昇抑制効果を得ることができない。一方、リン酸化オリゴ糖の濃度が200ppm以上であれば、特に上限はなく、例えば、600ppmであっても血糖値上昇抑制効果が認められる。また、血糖値上昇抑制効果はリン酸化オリゴ糖の濃度に依存するため、血糖値の上昇を抑制するという観点からは、リン酸化オリゴ糖の濃度が高い醸造酒であることが好ましい。
【0021】
前記リン酸化オリゴ糖は、馬鈴薯澱粉を由来とすることが好ましい。馬鈴薯の澱粉は、他の原料由来の澱粉に比べて、リン含量が高い。例えば、代表的な澱粉であるコーンスターチのリン含量は、140ppm前後と非常に少ない。馬鈴薯澱粉には、リンが、アミロペクチン中のグルコース残基の3位と6位にエステル結合したリン酸基として存在し、馬鈴薯澱粉には、このリン酸基が他のいも類の澱粉に比べても多い。
【0022】
さらに、馬鈴薯澱粉は、馬鈴薯の品種によって、そのリン酸含量が異なり、低リン含量の澱粉を含有する品種と高リン含量の澱粉を含有する品種とに大きく分類できる。本実施形態では、所望の濃度のリン酸化オリゴ糖を有する醸造酒を製造するためには、馬鈴薯澱粉は、そのリンの濃度が600ppm以上であることが好ましい。
【0023】
リン濃度が600ppm以上である品種としては、例えば、とうや、ホッカイコガネ、ワセシロ、エニワ、キタアカリ、さやか、アーリースターチ、男爵薯、コナフブキ、トヨシロ、インカパープル、インカレッド、インカのめざめ、北海91号、北海92号及びキタムラサキ等を挙げることができる。
【0024】
馬鈴薯澱粉は、常法によりリン濃度が600ppm以上である澱粉を含有する馬鈴薯から製造されたものであることができる。
【0025】
馬鈴薯澱粉について、粒径で分画した粒子径の異なる澱粉には、リン含量に差異があることが知られている。一般的傾向として、平均粒子径が大きいほどリン含量は低く、粒子径が小さいほどリン含量は高い。本実施形態では、リン含量が高い馬鈴薯澱粉を用いて醸造酒を製造する方がリン酸化オリゴ糖の濃度が高くなることから、澱粉として平均粒子径が小さいものを用いることが好ましい。具体的には、馬鈴薯澱粉は、その平均粒径が30μm以下、好ましくは20μm以下であることが好ましい。なお、澱粉はα化する前の澱粉であり、平均粒子径は、α化する前の澱粉についてのものである。
【0026】
なお、平均粒子径が30μm以下、好ましくは20μm以下である分級澱粉を用いると、原料馬鈴薯澱粉のリン濃度が600ppm未満であっても、リン濃度を600ppm以上にできる場合があり、本実施形態における「リン濃度が600ppm以上の馬鈴薯澱粉」には、分級によってリン濃度が600ppm以上になった分級馬鈴薯澱粉も含まれる。
【0027】
前記醸造酒は、麦芽の風味を楽しむという観点からは、ビール又は発泡酒であることが好ましい。但し、麦芽を一切使用せずにビール様飲料としたいわゆる「第3のビール」に、リン酸化オリゴ糖が200ppm以上含まれていてもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係る醸造酒の製造方法について説明する。本実施形態に係る醸造酒の製造方法は、既述の通り、リンの濃度が600ppm以上である馬鈴薯澱粉を原料として用いる。なお、前記馬鈴薯澱粉は、醸造酒中のリン酸化オリゴ糖含量を高める観点から、その平均粒径が30μm以下、好ましくは20μm以下のものを原料として用いてもよい。
【0029】
まず、上記原料は加熱処理が施されα化される。α化された原料は、次に糖化処理がなされる。糖化は、例えば、50〜70℃、65〜90分の条件で行うことができる。なお、糖化温度と時間は、用いる糖化酵素の至適温度に応じて適宜設定される。
【0030】
麦芽はビール醸造又は発泡酒醸造に一般的に用いられる麦芽を使用することができ、その種類に特に制限はない。麦芽の配合量は、ビールを製造するか、発泡酒を製造するかによって適宜選択することができる。例えば、酒税法に定義するビールを製造するためには、麦芽重量が67重量%を超えるように調節される。
【0031】
原料の添加量は、麦芽の添加量に応じて適宜設定されるが、麦芽の風味を残しつつ、リン酸化オリゴ糖含量を高めるという観点からは、原料の全量を基準(100重量%)とした場合に、60〜70重量%であることが好ましく、35〜65重量%であることがより好ましく、40〜60重量%であることが更に好ましい。
【0032】
糖化の終了後、原料と麦芽の混合液は濾過処理がなされ、粗糖化液を得る。なお、必要に応じて60〜70℃の温水(スパージ水)を濾過後の残渣(図示せず)に散布して麦汁(残余の糖化液)を得て、これを前記粗糖化液に混合することもできる。
【0033】
得られた粗糖化液はそのまま発酵させることもできるが、ホップを添加し、苦味と香味を付与することもできる。苦味付けのホップを添加する場合は、その添加後、60〜100分間煮沸される。これにより、糖化液中にホップの成分が抽出されると共に、糖化液中の過剰なタンパク質(酵素を含む)を沈殿させて有色醸造酒を清澄なものにすることができる。なお、ホップとしては、有色醸造酒に主に苦味を付与するビターホップと主に香りを付与するアロマホップがあるが、これらは単独でも、2種を混合して用いることもできる。
【0034】
煮沸により、ホップ粕や凝固したタンパク質が副生されるため、これらは濾過等により除去される。これにより、ホップの成分が抽出された糖化液が得られる。この糖化液は10〜20℃に冷却され、発酵タンクへ送られる。
【0035】
次に、糖化液は、酵母が添加されてアルコール発酵が行われる。以後、本工程以降の糖化液を「発酵液」という。
【0036】
酵母は、アルコール発酵を行うことができる酵母であれば特に制限はないが、ビール醸造用において一般的に用いられる上面発酵酵母又は下面発酵酵母を用いることができる。上面発酵酵母としては、例えば、サッカロマイセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等を挙げることができ、下面発酵酵母としては、例えば、サッカロマイセス カールスバージェンシス(Saccharomyces carlsbergensis)等を挙げることができる。
【0037】
発酵は、主としてエタノールの生産を行う一次発酵工程と、主として該一次発酵工程の後の発酵液の熟成を行う二次発酵工程とからなることが好ましい。
【0038】
一次発酵では、例えば、5〜10℃で8〜12日間発酵が行われる。これにより発酵液中の糖分を酵母が資化してエタノールの生産を行うほか、炭酸ガスの生成や香気成分の生成等が行われる。
【0039】
二次発酵では、例えば、0〜2℃で20〜40日間発酵が行われる。これにより、一次発酵の後の発酵液の熟成が行われるほか、残存エキスの発酵、一次発酵により発生した炭酸ガスの発酵液中への溶存、発酵液の若臭物質の排出、残存酵母及び混濁物質等の沈殿物の沈下等が行われる。
【0040】
このようにして得られた醸造酒は、リン酸化オリゴ糖の濃度が200ppm以上のビール又は発泡酒となる。
【実施例1】
【0041】
リン濃度が1125ppmである馬鈴薯澱粉70kg、麦芽105kg、水1.3klであるビールを以下の要領で製造した。
【0042】
(1)糖化
煮沸釜に用意した50℃の湯300Lに馬鈴薯澱粉70kgと麦芽20kgを溶かした後に加熱し、70℃に15分、100℃に10分間保持することにより生澱粉を糊化(α化)した。そして、煮沸釜に水450Lと麦芽85kgを加えて52℃で15分タンパク質分解を行った後、引き続き64℃で40分糖化し、さらに72℃で30分糖化を行うことにより、麦芽および馬鈴薯澱粉由来の糖質を含有する麦汁を得た。
【0043】
(2)濾過
糖化終了後、上記(1)で得られた麦汁をろ過槽に移し濾過することにより、1番麦汁を得た。1番麦汁を得た後、この1番麦汁の残渣にスパージ水(70〜80℃)を撒水して2番麦汁を得た。更にこの2番麦汁の残渣にスパージ水(70〜80℃)を撒水して3番麦汁を得た。そして、1番麦汁と2番麦汁と3番麦汁を混合することにより、粗糖化液を得た。
【0044】
(3)煮沸
(2)で得られた粗糖化液を煮沸釜で加熱し、90分間煮沸した。沸騰すると同時にビターホップとしてテトナング610gを加え、アロマホップとして煮沸開始60分後にカスケード320g、煮沸終了5分前にカスケード160g、煮沸終了と同時にカスケード100gを加え、煮沸を終了した。
【0045】
(4)沈殿除去
(3)の煮沸処理で副生したタンパク質の凝固物やホップの粕を除去するために、ワールプールに粗糖化液を移した。そして、タンパク質の凝固物やホップの粕を除去することにより糖化液を清澄化し、発酵用の糖化液を得た。
【0046】
(5)一次発酵
酵母は秋田今野商店社製の培養酵母ピルスナー(ミュンヘン工科大学、ヴァイエンシュテファンNo.34)109/mlレベル×20Lを使用した。
【0047】
発酵用の糖化液を冷却した後、発酵タンクに移し、上記酒母を糖化液に添加し、5〜10℃にて10日間、一次発酵を行った。
【0048】
(6)二次発酵
一次発酵が終了した発酵液を貯酒タンクに移し、最終的に発酵液の温度が1℃になるように温度を調整し、30日間、二次発酵を行った。二次発酵の終了後、瓶詰めを行い、所望のビール(高POビール)を得た。なお、得られたビールのリン酸化オリゴ糖(PO)濃度を測定したところ、600ppmであった。
【0049】
リン酸化オリゴ糖(PO)の分析は、Carbo Pac PA−100カラムを用いたDionex DX−300システムによるHPAEC分析により行った(Kamasaka, H, Uchida, M., Kusaka, K., Yamamoto, K., Yoshikawa, K., Okada, S., and Ichikawa, T. (1995) Biosci. Biotechnol. Biochem. 59, 1412-1416)。PO標準品は、ポスカム歯科用クリアドライより精製し、秤量、再溶解したものを標準溶液とした。サンプルについては醸造酒の原液に1:3の割合でエタノールを加え4℃一晩放置後、沈殿物を回収、再溶解したものをサンプル溶液として用い、PO標準溶液とサンプルのPO−2相当ピークを基に定量を行った。
【実施例2】
【0050】
リン濃度が1125ppmである馬鈴薯澱粉に替えて、リン濃度が644ppmである馬鈴薯澱粉を用いたこと以外は、実施例1と同様の要領でビール(低POビール)を製造した。なお、得られたビールのリン酸化オリゴ糖(PO)濃度を測定したところ、218ppmであった。
【0051】
[比較例1]
リン濃度が1125ppmである馬鈴薯澱粉に替えて、リン濃度が226ppmである甘藷澱粉を用いたこと以外は、実施例1と同様の要領でビール(甘藷ビール)を製造した。なお、得られたビールのリン酸化オリゴ糖(PO)濃度を測定したところ、極めて低い濃度(トレース)であった。
【0052】
[比較例2]
リン濃度が1125ppmである馬鈴薯澱粉に替えて、リン濃度が140ppmであるコーンスターチを用いたこと以外は、実施例1と同様の要領でビール(コーンビール)を製造した。なお、得られたビールのリン酸化オリゴ糖(PO)濃度を測定したが、極めて低濃度のため検出不能(N.D.)であった。
【0053】
[比較例3]
澱粉を用いず、麦芽100%としたこと以外は、実施例1と同様の要領でビール(ラガービール)を製造した。なお、得られたビールのリン酸化オリゴ糖(PO)濃度を測定したが、極めて低濃度のため検出不能(N.D.)であった。
【0054】
[試験例1]
実施例1及び2並びに比較例1〜3のビール及び5%アルコール水(比較例4)をサンプルとして、ビールがラットの血糖値に与える影響について検討した。なお、5%アルコール水(比較例4)のリン酸化オリゴ糖(PO)濃度を測定したが、極めて低濃度のため検出不能(N.D.)であった。
【0055】
1)実験動物及び飼育条件
実験動物は7週齢のF334/DuCrj雄ラット40匹を日本チャールズリバー社から購入した。飼育条件は室温23±1℃、湿度60±5%として、明暗周期12時間(明07:00、暗19:00)とした。ラットはプラスチックケージ内で個別に飼育した。ラットの取り扱いについてはGuide of the Care and Use of Laboratory Animalsに従って行なった。
【0056】
2)実験食及び投与実験
(a)実験食
実験食はAIN93Gを基本として正常食とした。これに0.5%コレステロール及び0.125%コール酸ナトリウムを添加した高コレステロール食を作成した。実験食の組成を表1に示す。
【0057】
【表1】


【0058】
対照区は、正常食又は高コレステロール食を、ゾンデを用い蒸留水と共に強制的に経口投与した。また、サンプル投与区では、高コレステロール食にゾンデを用いて各サンプル、即ち、高POビール(実施例1)、低POビール(実施例2)、甘藷ビール(比較例1)、コーンビール(比較例2)、ラガービール(比較例3)、5%アルコール水(比較例4)をそれぞれ強制的に経口投与した。なお、投与は、0週目から1週目までは0.5mlを、1週目から2週目までは1mlを、2週目から4週目までは2mlとした。
【0059】
(b)投与実験
7週齢のラット40匹を1週間市販の粉末を与えて予備飼育した後、各投与区で体重に有意差が出ないように8つの投与区に区分けを行なった。1つの投与区は5匹とした。実験期間は4週間とし、1匹のラットに1日当たり20gの実験食を給与し、水は自由摂取させた。サンプルの投与は上記に示すように行なった。投与期間終了後、ラットをネンブタール麻酔により殺して、迅速に心臓採血するとともに、肝臓及び盲腸の摘出を行なった。摘出した肝臓及び盲腸は冷生理食塩水で洗浄し、乾燥した濾紙で水分を除去して体重を測定した後、−80℃で凍結保存した。
【0060】
(c)試料採取、体重及び摂食量の計測
7日毎に体重、摂食量の計測を行なった。摂食量は給与量と残量の差から算出した。また、0,1,2,4週目に頸静脈採取を行なった。採血は一晩絶食させた後の空腹時に行い、得られた血液はエッペンルドフルチューブに入れ2時間室温で放置し、6000rpm、15分間遠心分離し、上澄みを血清とした。この血清は分析まで−30℃で保存した。
【0061】
(3)血清の糖質濃度の分析
血清中の血糖濃度の測定は第一化学薬品のクリニメイトGLU試薬キットを用いて酵素法により行なった。表2に、血清糖質濃度の投与期間を通しての変動を、リン酸化オリゴ糖(PO)濃度と共に示す。
【0062】
【表2】


【0063】
血清中の血糖濃度については、正常食及び高コレステロール食間での有意差は見られなかった。しかし、高POビール(実施例1)投与区及び低POビール(実施例2)投与区では他のビール投与区と比べて投与期間を通して血糖値が低下している傾向が見られ、特にラガービール(比較例3)投与区、5%エタノール(比較例4)投与区に比べ血糖値が有意に減少していた。このように、高リン及び低リンビール(実施例1及び実施例2)には血糖値を低下させる効果あることが判明した。
【0064】
なお、投与期間におけるラットの体重増加及び摂食量については、各投与区との間で有意な差は見られなかった。

【出願人】 【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
【識別番号】505434733
【氏名又は名称】十勝ビール株式会社
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人帯広畜産大学
【出願日】 平成17年11月22日(2005.11.22)
【代理人】 【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸

【識別番号】100080953
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 克郎

【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司


【公開番号】 特開2007−135545(P2007−135545A)
【公開日】 平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願番号】 特願2005−337795(P2005−337795)