| 【発明の名称】 |
香味を調整した麦芽使用発酵飲料の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】金井 秀樹
【氏名】多田 信雄
【氏名】西田 有司
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| 【要約】 |
【課題】麦汁中の有機酸含有量を調節し、それにより麦芽使用発酵飲料の香味の調整を行う麦芽使用発酵飲料の製造方法、ならびに麦芽使用発酵飲料の香味の調整方法を提供すること。
【解決手段】乾燥発芽大麦を組織ごとに分画し、有機酸の含有量が低い麦汁となる画分、及び/又は、有機酸の含有量が高い麦汁となる画分を使用し、麦汁中の有機酸含有量の制御を行うことにより香味の調整を行うことを特徴とする麦芽使用発酵飲料の製造方法であり、有機酸の含有量が低い麦汁となる画分が、内皮層画分、穀皮画分、幼芽画分及び麦芽根画分であり、有機酸の含有量が高い麦汁となる画分が胚乳画分である麦芽使用発酵飲料の製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 乾燥発芽大麦を組織ごとに分画し、有機酸の含有量が低い麦汁となる画分、及び/又は、有機酸の含有量が高い麦汁となる画分を使用し、麦汁中の有機酸含有量の制御を行うことにより香味の調整を行うことを特徴とする麦芽使用発酵飲料の製造方法。 【請求項2】 有機酸の含有量が低い麦汁となる画分が、胚乳画分、穀皮画分、幼芽画分及び麦芽根画分である請求項1に記載の麦芽使用発酵飲料の製造方法。 【請求項3】 有機酸の含有量が高い麦汁となる画分が内皮層画分である請求項1に記載の麦芽使用発酵飲料の製造方法。 【請求項4】 有機酸の含有量が高い麦汁となる胚乳画分、及び/又は、有機酸の含有量が低い麦汁となる内皮層画分を使用する請求項1に記載の麦芽発酵飲料の製造方法。 【請求項5】 麦芽使用発酵飲料の原料として、有機酸の含有量が低い麦汁となる胚乳画分を、水とホップを除く原料中に30重量%〜100重量%使用することにより香味の調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の麦芽使用発酵飲料の製造方法。 【請求項6】 麦芽使用発酵飲料の原料として、有機酸の含有量が高い麦汁となる内皮層画分を、水とホップを除く原料中に5重量%〜70重量%使用することにより香味の調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の麦芽使用発酵飲料の製造方法。 【請求項7】 麦芽使用発酵飲料の原料として、有機酸の含有量が高い麦汁となる内皮層画分を、水とホップを除く原料中に5重量%〜25重量%使用することにより香味の調整を行うことを特徴とする請求項6に記載の麦芽使用比率が25%以下である麦芽使用発酵飲料の製造方法。 【請求項8】 香味調整される麦芽使用発酵飲料が、ビールまたは発泡酒である請求項1〜7のいずれかに記載の麦芽使用発酵飲料の製造方法。 【請求項9】 請求項1〜8に記載の何れかの製造方法により製造された麦芽使用醗酵飲料。 【請求項10】 麦芽使用発酵飲料がビールまたは発泡酒である請求項9に記載の麦芽発酵飲料。 【請求項11】 乾燥発芽大麦を組織ごとに分画し、有機酸の含有量が低い麦汁となる画分、及び/又は、有機酸の含有量が高い麦汁となる画分を使用し、麦汁中の有機酸含有量の制御を行うことを特徴とする麦芽使用発酵飲料の香味の調整方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、麦芽使用発酵飲料の原料である乾燥発芽大麦を組織別に分画し、分画した組織別画分により麦汁中における有機酸の含有量の制御を行い、香味を調整した麦芽使用発酵飲料の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 麦芽使用発酵飲料に含まれる有機酸は、製麦・仕込工程での原料、及び発酵工程での酵母代謝から由来することが知られている。一方で、醸造工程中で糖化時に麦芽の各酵素反応促進や麦汁濾過時に麦粕の渋味成分抑制・色調上昇抑制、煮沸時における蛋白質凝固適正化等のためにpH調整剤が使用されており、この時のpH調整剤として用いる酸も有機酸の濃度に影響を与えるとされている。一般的にはpH調整剤の酸(以下、pH調整酸と記す)は、乳酸、リン酸が使用されている。乳酸は穏やかでやわらかい酸味、リン酸はしまりのある酸味と言われている。 【0003】 原料由来の有機酸としては、麦芽中の主要有機酸であるクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸等であり、酵母代謝由来の有機酸としてはピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸が主に生成される。これらの有機酸は酒類の香味へ大きな影響を与えるものであって、重要な設計品質の一つとされている。麦芽使用発酵飲料に含まれる有機酸は、総量及び構成する酸の組成により香味特徴が異なってくる。そのため、麦芽使用発酵飲料の有機酸濃度や組成を調整することで、様々な香味特徴をもつ製法が検討されている。 【0004】 原料由来である有機酸の制御として、クエン酸は製麦工程で浸麦時に大きく減少し、発芽から焙燥にかけて増加する。リンゴ酸は浸麦から発芽にかけて緩やかに減少し、焙燥で増加する。また、コハク酸は浸麦以降増加し、乳酸も緩やかに増加することが知られている(非特許文献1)。 【0005】 一方、酵母の代謝に由来する有機酸を制御する方法としては、(1)酵母の栄養源としてアンモニウム塩を添加することによって有機酸量を制御する製法(特許文献1)、(2)酵母の栄養源である有機窒素源を添加することによって有機酸を制御する製法(特許文献2)、(3)仕込条件を調整して麦汁中に形成される遊離アミノ態窒素量を制御し、リンゴ酸及びコハク酸等の有機酸量を調整する製法(特許文献3)、(4)酵母添加量及び発酵条件の調整によりリンゴ酸及びコハク酸量を制御する製法(特許文献4)、(5)プロテアーゼ添加により麦汁アミノ酸を制御しリンゴ酸、コハク酸量等を調節する製法(特許文献5)、(6)プロテアーゼ添加及び発酵工程前のアミノ酸添加により有機酸量を制御する製法(特許文献6)といった方法が試みられていた。 しかしながら、上記の方法は、いずれも高度の経験を必要とするものであって、必ずしも簡便な手段であるとはいえない問題点があった。 【0006】 【特許文献1】特平開11−318425号公報 【特許文献2】特平開11−178564号公報 【特許文献3】特平開10−52251号公報 【特許文献4】特平開10−57044号公報 【特許文献5】特開平10−117760号公報 【特許文献6】特平開10−225287号公報 【特許文献7】WO2004/106483号公報 【非特許文献1】「醸造物の成分」財団法人 日本醸造協会 第XI章 有機酸 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上記現状に鑑み、本発明者等は、麦芽使用発酵飲料の香味に大きな影響を与える有機酸の制御について、簡便に行い得る方法を検討し、原料である乾燥発芽大麦の各組織部分を分離、分画し、その特性を検討して、それをベースに各分画された組織画分を適宜選択し、組み合わせ配合して原料として使用することにより、麦芽使用比率を広げた麦芽使用発酵飲料の原料由来の有機酸を制御し得るのではないかと考えた。 【0008】 すなわち、本発明者等は、乾燥発芽大麦の各組織に着目し、乾燥発芽大麦を組織別に分離することによって、有機酸含量に特徴のある画分に分けることができる点に注目した。そのうえで、これらの画分および分画前の全粒麦芽や麦芽根の配合量を加減することによって、発酵前の麦芽使用発酵飲料中における乾燥発芽大麦由来の有機酸をコントロールできるとのではないかと考えた。 【0009】 そこで、本発明者らは、乾燥発芽大麦を工業的に組織毎に厳密に分画し(特許文献6)、それぞれの組織別画分を使用した麦汁中の有機酸成分を分析するだけでなく、得られた分画物が、麦芽発酵飲料を製造する際に、麦芽使用発酵飲料の有機酸含量にどのような影響を与えるかを詳細に検討した。 【0010】 その結果、乾燥発芽大麦を組織別画分に分離することによって、麦芽使用発酵飲料中の有機酸に影響を及ぼす成分の分画物を得られることを明らかにした。また、麦芽使用発酵飲料の原料として、実際に胚乳画分を配合して使用した場合には、原料由来の有機酸が低減すると考えられることからpH調整酸の影響が増し、また、pH調整酸を選択することで香味特徴の幅を広げた麦芽使用発酵飲料の製造ができることを確認し、本発明を完成させるに至った。 【0011】 したがって本発明は、原料である乾燥発芽大麦の各組織部分を分離、分画し、その特性を検討して、それをベースに各分画された組織部分を適宜選択し、組み合わせ配合して原料として使用することにより、麦芽使用発酵飲料の原料由来の有機酸を制御市、これにより香味を調整する麦芽使用発酵飲料の製造方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0012】 かかる課題を解決するための本発明は、その基本的態様として、以下の構成からなるものである。 (1)乾燥発芽大麦を組織ごとに分画し、有機酸の含有量が低い麦汁となる画分、及び/又は、有機酸の含有量が高い麦汁となる画分を使用し、麦汁中の有機酸含有量の制御を行うことにより香味の調整を行うことを特徴とする麦芽使用発酵飲料の製造方法; (2)有機酸の含有量が低い麦汁となる画分が、内皮層画分、穀皮画分、幼芽画分及び麦芽根画分である上記(1)に記載の麦芽使用発酵飲料の製造方法; (3)有機酸の含有量が高い麦汁となる画分が胚乳画分である上記(1)に記載の麦芽使用発酵飲料の製造方法; (4)有機酸の含有量が高い麦汁となる胚乳画分、及び/又は、有機酸の含有量が低い麦汁となる内皮層画分を使用する上記(1)に記載の麦芽発酵飲料の製造方法; (5)麦芽使用発酵飲料の原料として、有機酸の含有量が高い麦汁となる胚乳画分を、水とホップを除く原料中に30重量%〜100重量%使用することにより香味の調整を行うことを特徴とする上記(1)に記載の麦芽使用発酵飲料の製造方法; (6)麦芽使用発酵飲料の原料として、有機酸の含有量が高い麦汁となる内皮層画分を、水とホップを除く原料中に5重量%〜70重量%使用することにより香味の調整を行うことを特徴とする上記(1)に記載の麦芽使用発酵飲料の製造方法; (7)麦芽使用発酵飲料の原料として、有機酸の含有量が高い麦汁となる内皮層画分を、水とホップを除く原料中に5重量%〜25重量%使用することにより香味の調整を行うことを特徴とする上記(6)に記載の麦芽使用比率が25%以下である麦芽使用発酵飲料の製造方法; (8)香味調整される麦芽使用発酵飲料が、ビール、発泡酒、ウイスキー、または低アルコール発酵飲料である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の麦芽使用発酵飲料の製造方法。 【0013】 また、本発明は、別の態様として、 (9)上記の(1)〜(8)に記載の何れかの製造方法により製造された麦芽使用醗酵飲料; (10)麦芽使用発酵飲料がビール、発泡酒、ウイスキー、または低アルコール発酵飲料である上記(9)に記載の麦芽発酵飲料; であり、さらには、 (11)乾燥発芽大麦を組織ごとに分画し、有機酸の含有量が低い麦汁となる画分、及び/又は、有機酸の含有量が高い麦汁となる画分を使用し、麦汁中の有機酸含有量の制御を行うことを特徴とする麦芽使用発酵飲料の香味の調整方法; である。 【0014】 すなわち、本発明は、麦芽使用発酵飲料の香味に多大な影響を与える有機酸の含有量の制御を、これまで何等検討されていなかった、乾燥発芽大麦を組織別に分画した画分を使用した場合におけ有機酸の含有量をベースに、その組織別画分を組み合わせ使用して、有機酸含有量の制御を行うことにより、麦芽使用発酵飲料の香味の調整を行う点に一つの特徴を有するものであり、極めて特異的なものである。 【発明の効果】 【0015】 本発明の発酵麦芽飲料の製造方法は、麦芽使用発酵飲料の主原料である乾燥発芽大麦を各組織別に分画し、得られた各組織画分の特性をベースにして、分画された組織部分を適宜組み合わせて配合し、麦汁中の有機酸量を制御し、pH調整酸の特徴が香味に反映することが可能になった。また、pH調整酸・麦芽使用比率の選択を行うことで、さらに幅広く様々な香味を特徴とした麦芽発酵飲料を製造することができる。 特に、分画した乾燥発芽大麦の各組織画分を、種々組み合わせることにより香味を調整した麦芽使用発酵飲料の原料として使用できる点は、消費者の好みに応じた種々の香味を有する麦芽使用発酵を提供することができることになり、その産業上の効果は多大なものである。 このような香味としては、例えば、しまりのある酸味、穏やかな酸味、後に残る酸味などを例示することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0016】 本発明は、上記したように、基本的には、麦芽使用発酵飲料の主原料である乾燥発芽大麦の各組織部分に分画し、得られた各組織画分の特性をベースにして、分画された組織画分を適宜組み合わせて配合し、麦汁中の有機酸を制御し、これにより簡便に香味を調整した麦芽使用発酵飲料を製造するものである。 【0017】 以下に本発明を、乾燥発芽大麦の各組織部分への分離手段、分離された各組織画分の特性を説明しながら、詳細に説明していく。 【0018】 本発明により提供される麦芽使用発酵飲料とは、麦芽を原料の全部または一部として使用して製造したアルコール含有飲料(蒸留したものも含む)及びアルコール非含有飲料をいう。具体的には、ビール、発泡酒、リキュール類、スピリッツ類、雑酒、ウイスキー、低アルコール麦芽使用発酵飲料(例えばアルコール分1%未満の麦芽使用発酵飲料)、ノンアルコール飲料等をあげることができる。なかでも、ビールや発泡酒において好適に用いられる。 【0019】 本発明により提供される麦芽使用発酵飲料について、原料となる麦芽を得る工程においては、大麦を水に浸して発芽させた後に乾燥させる工程を経る。したがって、本発明でいう乾燥発芽大麦とは、発芽した大麦を乾燥させたものを指す。 【0020】 乾燥発芽大麦は、組織学的には様々な組織から成り立っている。本発明においては、乾燥発芽大麦を組織毎に分画し、得られた組織画分を麦芽使用発酵飲料の原料として使用する。乾燥発芽大麦を組織毎に分画するに際しては、飲料の品質に特徴を与える特性を有する組織単位に画分することが肝要である。また、分画のし易さを考慮して、適宜、分画する組織単位を任意に選定することができる。 【0021】 そのなかでも、工業的な規模での分画のし易さや、麦芽使用発酵飲料の香味、品質等に与える特徴を考慮すると、乾燥発芽大麦を組織毎に分画する場合には、例えば特許文献7に記載される組織別の分画を行うのが好ましい。具体的には、麦芽根画分、穀皮画分、胚乳画分、内皮層画分、幼芽画分の5種類の分画に分けることが好ましい。 【0022】 それぞれの画分は、具体的には、例えば以下の方法により分画することができる。目的とする組織ごとに分画されたか否かは、得られた分画物を外観観察、顕微鏡観察、あるいは成分の分析をすることで確認することができる。 【0023】 麦芽根分画: 乾燥発芽大麦は、全粒麦芽(以後、単に麦芽ということもある)と麦芽根からなる。乾燥発芽大麦を脱根機に投入し、麦芽と麦芽根を分離し、麦芽根画分を得ることができる。脱根機としては、例えば回転スリットドラム(明治機械社製)を用いることができる。 【0024】 胚乳画分: 一般に、穀物の表層を研磨して、穀皮などを胚乳から分離することを「搗精」という。上記により麦芽根を分離して得た麦芽を搗精機により搗精することで、核部分にあたる胚乳画分と、周囲部分のいわゆる糠(ぬか)とに分離することができる。搗精の歩留まりは、胚乳画分と糠との分離が的確に行われるように、供する麦芽の品質を考慮して、適宜調整することができる。本発明においては、搗精の歩留まりの程度は50〜95%が好ましものであり、特に75〜85%程度が望ましい。 【0025】 内皮層画分: 本発明でいう内皮層画分とは、上記で得られた糠について、篩にかけることによって分離し、その結果、篩を通過した画分をいう。篩サイズは、糠の品質等により、分離が適合に行われるものを適宜選択できるが、例えば、目開き600〜850μm、特に710μm程度のものを用いるのが好ましい。かくして得られた内皮層画分にあっては、組織学的にみれば、果皮、種皮、アロイロン層と称される各組織が含まれる。しかしながら、これ以上の分離は工業的に困難を伴うこと、また、分画を行わなくても内皮層画分として独特の特徴を発揮することが判明した。したがって、本発明においては、内皮層画分をこれ以上の組織別に分画する必要はなく、上記で得られた内皮層画分をそのまま使用するのがよい。 【0026】 穀皮画分および幼芽画分: 上記した糠の篩い分けにより、篩上に残留した画分をアスピレーター処理することで、低比重区分と高比重区分に分けることができる。低比重区分として得られた部分が穀皮画分であり、高比重区分として得られた部分が幼芽画分である。このアスピレーターの操作条件は、穀皮画分と幼芽画分とを分離できるように適宜設定することができる。 【0027】 以上のようにして得られたそれぞれの組織別画分には、その特徴を損なわない範囲であれば、他の組織や未分離の画分が多少混入していてもよい。 これらの各組織分画としては、自ら分画した画分を用いても良いし、同等の品質のものであれば、例えば、市販品の組織分画品を用いても良い。 【0028】 なお、本発明でいう未分離画分とは、上述した5つの組織別画分のうち、2ないし4画分についての未分離の画分をいう。ただし、全粒麦芽は本発明では未分離画分とは言わないものとする。例えば、穀皮画分および幼芽画分の両方を麦芽発酵飲料の原料として用いることが好ましい場合には、これらの画分をそれぞれ用いることができ、またこれらの両画分についての未分離画分を適当量用いることでもよい。 【0029】 以上に記載した分画方法により、麦芽使用発酵飲料の主原料となる乾燥発芽大麦を各組織別に分画することができる。分画されたそれぞれの組織別の画分については、本発明者等の検討の結果、それぞれの特性を有し、麦芽使用発酵飲料の原料とした場合に、それぞれ特有の香味を与えるものであることが判明した。 【0030】 すなわち、上記した各組織画分を適宜選択、配合調整して、麦芽使用発酵飲料の原料として用いることにより、各種の麦芽使用発酵飲料について、有機酸の含量を制御することができる。 【0031】 そのなかでも本発明にあっては、その一つの具体的態様として、例えば、麦芽使用発酵飲料の原料として、有機酸の含有量が低い麦汁となる胚乳画分を、水とホップを除く原料中に50重量%〜100重量%使用することにより香味の調整を行うことを特徴とする麦芽使用発酵飲料の製造方法であり、この場合に他の組織画分を適宜配合使用し得ることはいうまでもない。 【0032】 また、別の具体的態様として、例えば、麦芽使用発酵飲料の原料として、有機酸の含有量が高い麦汁となる内皮層画分を、水とホップを除く原料中に5重量%〜70重量%使用することにより香味の調整を行うことを特徴とする麦芽使用発酵飲料の製造方法であり、この場合に他の組織画分を適宜配合使用し得ることはいうまでもない。 【0033】 なかでも、麦芽使用比率が25%以下である麦芽使用発酵飲料に関して、麦芽使用発酵飲料の原料として、有機酸の含有量が高い麦汁となる内皮層画分を、水とホップを除く原料中に5重量%〜25重量%使用することにより香味の調整を行うことを特徴とする麦芽使用発酵飲料の製造方法であり、この場合に他の組織画分を適宜配合使用し得ることはいうまでもない。 【0034】 本発明が提供する麦芽使用発酵飲料においては、麦芽由来の成分の制御は、上述した方法により達成できるが、糖類や大麦などをはじめとする麦芽以外の原料を併用することにより、さらなる成分調整が可能である。また、糖化酵素をはじめとする各種酵素を必要に応じて別途添加してもよい。あるいは、糖化スターチなどのように最初から糖化された原料と組み合わせることもできる。さらに、このように成分調整をした原料にあわせて、粉砕、糖化、麦汁濾過、煮沸、醗酵の諸条件を設定することにより、更なる微調整を行うことが可能である。 【0035】 また本発明は、かかる麦芽使用発酵飲料の製造に関し、目的とする麦芽使用発酵飲料の香味の調製方法をも提供するものでもあり、その詳細は上記の説明から当業者に容易に理解しうるものである。 【0036】 また、本発明が提供する麦芽使用発酵飲料は、当該技術分野で汎用されている製造技術を用いて、所望のビール、発泡酒、リキュール類、スピリッツ類、雑酒、ウイスキー、低アルコール麦芽使用発酵飲料(例えばアルコール分1%未満の麦芽使用発酵飲料)、ノンアルコールの麦芽使用発酵飲料等へ製造することができる。なかでも、ビールや発泡酒において好適に用いられる。 【実施例】 【0037】 以下に、本発明を実施例により、さらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されない点に注意すべきである。 【0038】 試験方法: 本実施例で用いた試験項目および試験方法を以下に示す。特に断りのない限り、本実施例における試験方法はこれに準じた。 1.試験項目: a)エキス濃度、b)有機酸濃度、c)官能評価。 2.試験方法: a)エキス濃度については、SCABA法[改訂BCOJビール分析法(2004)8.3.4SCABA法]によって測定した。 b)麦汁の有機酸濃度については、高速液体クロマトグラフィー法に準じて測定した。分離はイオン排除クロマトグラフィーを使用し、検出は電気伝導度検出法を用いた。移動相溶液はp−トルエンスルホン酸を純水に溶解し、緩衝液には移動相溶液に溶解し、ろ過したものを使用した。試料の調整は親水性メンブランフィルターで濾過後、バイアルに入れ測定した。測定は分析カラム温度50℃、中和コイル温度40℃にセットし、移動相溶液及び緩衝溶液を圧力ベースラインが安定するまで流した後(0.8mL/分で約1時間)測定した。 c)官能評価については、訓練されたパネラー10名が、無臭の官能室で麦汁やビールを飲み、その結果を評価した。 【0039】 実施例1:乾燥発芽大麦の組織画分の分画方法 大麦を水に浸して発芽させた後に乾燥させて製造した乾燥発芽大麦から、脱根機(明治機械製)によって麦芽根と麦芽とに分離し、麦芽の分画は次のようにおこなった。 麦芽約500kgを搗精機(サタケ製作所製RMDB40A)で歩留まり80%まで搗精して、精白された画分(胚乳画分)と糠に分離した。このときの運転条件は、歩留まり100〜90%においては、回転数340rpm、電流値32A、スクリーン網目10メッシュ、歩留まり90〜80%においては、回転数320rpm、電流値30A、スクリーン網目11メッシュで行った。 【0040】 また、糠を集塵機で集めて、目開き710μmのシフタで篩って710μm以下の糠である内皮層画分と、701μm以上の糠に分離した。更に710μm以上の糠は、マルチアスピレーターで風選して、高比重区分(幼芽画分)と低比重区分(穀皮画分)に分離した。 このときの各分画物の重量比は、胚乳画分:内皮層画分:幼芽画分:穀皮画分=80:13:2:5であった。 【0041】 実施例2:組織画分の有機酸含量の評価 実施例1の方法で得られた組織画分と全粒麦芽について、各種有機酸の含量を測定した。組織画分または全粒麦芽をディスクミルにて微粉砕し、三角フラスコに粉砕物60gと水240mLを入れて、65℃にて2時間攪拌した。得られた溶液中の有機酸を測定し、各画分の単位重量当たりの有機酸量を算出した。その結果を表1に示した。 【0042】 【表1】
【0043】 各画分ごとに有機酸の種類や量に特徴があることが判明した。 【0044】 実施例3:組織画分を使用した麦汁有機酸含量の評価 組織画分の有機酸含量が異なる可能性があることから、全粒麦芽、組織画分を原料として麦汁を試作して有機酸量を評価した。 【0045】 実施例1の方法で分画した組織画分と全粒麦芽を用いて、コングレス麦汁の製造を行った。組織画分及び全粒麦芽をディスクミルにて微粉砕し、マッシュ用ビーカーに粉砕物60gと仕込み水240mLを入れて、常法を参考として糖化液を製造した。この時、pH調整酸は加えない。これを濾紙濾過し、測定用麦汁サンプルを得た。麦汁サンプルは組織画分と全粒麦芽の配合比率を変えて麦汁を製造した。また、組織分画と全粒麦芽に糖類を配合した時の検討を実施した。 その麦汁の有機酸の分析結果を下記表2に示した。各原料ごとに有機酸の種類や量に特徴のある麦汁が得られることが判った。 【0046】 【表2】
【0047】 実施例4:組織画分を利用したビール有機酸含量の評価 胚乳画分を使用したビール有機酸含量評価を目的として、胚乳画分のみを原料としてビールを製造した。また、胚乳画分には穀皮が存在しないため、穀皮を濾過層として濾過する濾過槽では麦汁の濾過ができないために、マッシュフィルターで濾過した。 【0048】 実施例1の方法で分画した組織画分を用いて、100Lスケールにてビールの製造を行った。組織画分をハンマーミルにて微粉砕し、仕込み釜に粉砕物9kgと仕込み水36Lを、仕込み槽に粉砕物21kgと仕込み水84Lを入れて、常法に従って糖化液を製造した。これをマッシュフィルターにて濾過を行い、得られた麦汁にホップを添加して煮沸した。次いで、麦汁を沈降槽に移して沈殿物を分離、除去したあと、約12℃に冷却した。この冷麦汁を、エキス濃度11.3%に加水によって調整した後、発酵槽に導入し、ビール酵母を接種・発酵して、ビールを製造した。また、対照として全粒麦芽のみを原料としたビールを製造し、そのビールについても同様の方法で製造した。 そのビールの有機酸の分析結果を下記表3に示した。 【0049】 【表3】
【0050】 上記で得られた、組織別画分を利用したビールの酸味官能評価をパネラーにより評価した。その結果を下記表4に示した。分画した原料を用いることで、有機酸に起因する香味に特徴のあるビールが得られた。 【0051】 【表4】
【0052】 実施例5:pH調整酸の違いによるビールの香味評価 実施例1の方法で分画した組織画分を用いて、100Lスケールにてビールの製造を行った。組織画分をハンマーミルにて微粉砕し、仕込み釜に粉砕物9kgと仕込み水36Lを、仕込み槽に粉砕物21kgと仕込み水84Lを入れて、常法に従って糖化液を製造した。これをマッシュフィルターにて濾過を行い、得られた麦汁にホップを添加して煮沸した。次いで、麦汁を沈降槽に移して沈殿物を分離、除去したあと、約12℃に冷却した。この冷麦汁を、エキス濃度11.3%に加水によって調整した後、発酵槽に導入し、ビール酵母を接種・発酵して、ビールを製造した。醸造工程で使用したpH調整酸はリン酸、乳酸とした。また、対照として全粒麦芽のみを原料としたビールを製造し、そのビールについても同様の方法で製造した。 そのpH調整酸の違うビールの酸味官能結果の結果を下記表4に示した。 【0053】 【表5】
【0054】 以上の各実施例の記載から判明するように、麦芽使用発酵飲料の主原料である乾燥発芽大麦の各組織部分に分画し、得られた各組織画分の特性をベースにして、分画された組織画分を適宜組み合わせて配合し、麦汁中の有機酸を制御し、これにより簡便に麦芽使用発酵飲料の香味を調整し得ることが理解される。 【0055】 実施例6:ビールの試作(胚乳画分を使用) 実施例1の方法で分画した分画物を用いて、原料比率に全粒麦芽50%、胚乳画分50%を原料としたビール(試作品6−1)、及び全粒麦芽37%、胚乳画分30%、糖化スターチ33%を原料としたビール(試作品6−2)を試作した。 麦芽分画物はロールミルにて粉砕し、仕込み釜に粉砕物9kgと仕込み水36Lを、仕込み槽に粉砕物21kgと仕込み水84Lを入れて、常法に従って糖化液を製造した。このときpHは乳酸を添加して5.5に調整した。これをマッシュフィルターにて濾過を行い、麦汁に糖化スターチを添加し、加水によってエキス分を調整してからホップを添加して煮沸した。次いで、麦汁を沈降槽に移して沈殿物を分離、除去したあと、約12℃に冷却した。この冷麦汁を、エキス濃度11.3%に加水によって調整した後、発酵槽に導入し、ビール酵母を接種・発酵して、ビールを製造した。 得られたビールについて、香味評価を行った。その結果、発明品6−1では、まろやかな酸味が認められた。発明品6−2では、すっきりとした味わいであった。 【0056】 実施例7:発泡酒の試作(内皮層画分を使用) 実施例1の方法で分画した分画物を用いて、原料比率に全粒麦芽20%、内皮層画分5%、糖化スターチ75%を原料とした発泡酒(発明品7−1)、及び原料比率に内皮層画分25%、糖化スターチ75%を原料とした発泡酒(発明品7−2)を試作した。 麦芽分画物はロールミルにて粉砕し、仕込み釜に粉砕物9kgと仕込み水36Lを、仕込み槽に粉砕物21kgと仕込み水84Lを入れて、常法に従って糖化液を製造した。このときのpHは乳酸を添加して5.5に調整した。これをマッシュフィルターにて濾過を行い、麦汁に糖化スターチを添加し、加水によってエキス分を調整してからホップを添加して煮沸した。次いで、麦汁を沈降槽に移して沈殿物を分離、除去したあと、約12℃に冷却した。この冷麦汁を、エキス濃度11.3%に加水によって調整した後、発酵槽に導入し、ビール酵母を接種・発酵して、発泡酒を製造した。 得られた発泡酒について、香味評価を行った。その結果、発明品7−1ではおだやかな酸味が認められた。発明品7−2ではやや刺激の強い酸味が認められた。 【産業上の利用可能性】 【0057】 以上記載のように、本発明により、麦芽発酵飲料の主原料である乾燥発芽大麦の各組織部分に分画し、得られた各組織画分の特性をベースにして、分画された各組織画分を適宜配合することで麦汁の有機酸量を制御し、pH調整酸の特徴が香味に反映することが可能になった。また、pH調整酸・麦芽使用比率の選択でさらに幅広く様々な香味を特徴とした麦芽発酵飲料を製造することができる。 【0058】 したがって、消費者の好みに応じた香味を有する麦芽使用発酵飲料を提供することができることになり、産業上の利用性は多大なものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001904 【氏名又は名称】サントリー株式会社
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| 【出願日】 |
平成17年6月29日(2005.6.29) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083301 【弁理士】 【氏名又は名称】草間 攻
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| 【公開番号】 |
特開2007−6749(P2007−6749A) |
| 【公開日】 |
平成19年1月18日(2007.1.18) |
| 【出願番号】 |
特願2005−190121(P2005−190121) |
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