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【発明の名称】 液晶性高分子組成物および液晶性光学フィルム
【発明者】 【氏名】真崎 仁詩

【氏名】片岡 健

【氏名】相園 啓文

【要約】 【課題】主鎖型液晶性高分子化合物と側鎖型液晶性高分子化合物とからなる相溶性の良い液晶性高分子組成物およびこれを用いた光学フィルムを提供する。

【解決手段】主鎖型液晶性高分子化合物と側鎖型液晶性高分子化合物から少なくともなり、該主鎖型液晶性高分子化合物がオルソ置換芳香族単位を含むポリエステルであり、側鎖型液晶性高分子化合物が水素結合可能な基を有する不飽和モノカルボン酸のエステルであることを特徴とする液晶性高分子組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖型液晶性高分子化合物と側鎖型液晶性高分子化合物から少なくともなり、該主鎖型液晶性高分子化合物がオルソ置換芳香族単位を含むポリエステルであることを特徴とする液晶性高分子組成物。
【請求項2】
前記側鎖型液晶性高分子化合物が水素結合可能な基を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶性高分子組成物。
【請求項3】
前記水素結合可能な基がカルボキシル基であることを特徴とする請求項2に記載の液晶性高分子組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの項に記載の液晶性高分子組成物を均一配向せしめて得られる液晶性光学フィルム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性高分子組成物および液晶性光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性高分子化合物は、液晶としての配向能と高分子化合物としての強度を併せ持つ特徴のある材料であり、スーパーエンジニアリングプラスチック、液晶ディスプレイ用光学フィルムの材料として有用である。液晶性高分子化合物は、主鎖型のものと側鎖型のものに大別でき、それぞれ工業的に重要な材料であるが、一長一短がある。
主鎖型液晶性高分子化合物は、長所としては、合成が容易でありコスト性に優れること、高い耐熱性を有することなどが挙げられる。短所としては、原料として使用できるのは2官能性のモノマーであり種類が限られるため、ひいては得られるポリマーの種類にも限界があること、配向後は主鎖方向の引っ張りには強い強度を有するものの主鎖に平行にクラックが入りやすいことなどが挙げられる。
一方、側鎖型液晶性高分子化合物は、合成には数段のステップを要しコスト的には不利であるが、側鎖には種々の構造単位を組み入れることが可能であることから、容易に機能性を有する基が導入できるなどポリマーデザインの上では有利である。強度面においては、全般に主鎖型液晶性高分子化合物に比べると柔軟であり、また主鎖の方向が液晶のダイレクターの配向方向と直交方向にあるなど、主鎖型液晶性高分子化合物と対照的な特徴を有している。従って、主鎖型液晶性高分子化合物と側鎖型液晶性高分子化合物を混合することにより、それぞれの短所を補い、単独では得られない優れた性能を有する材料が得られる可能性がある。しかしながら、一般に異種の高分子化合物同士の相溶化は容易ではなく、単独で特定の配向構造をとりうる液晶性の高分子化合物の場合、さらに相溶化は難しくなる。
【0003】
主鎖型液晶性高分子化合物や側鎖型液晶性高分子化合物それぞれについては、多くの成書や公開特許があり、例えば、液晶性高分子化合物全般については非特許文献1が挙げられ、主鎖型液晶性高分子化合物については特許文献1〜3などが挙げられ、側鎖型液晶性高分子化合物については特許文献4〜12などが挙げられる。しかしながら主鎖型液晶性高分子化合物と側鎖型液晶性高分子化合物の相溶化に関しては知見に乏しいのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−197629号公報
【特許文献2】特開平2−196819号公報
【特許文献3】特開平3−17121号公報
【特許文献4】特開平5−1117号公報
【特許文献5】特開平5−53097号公報
【特許文献6】特開平5−156018号公報
【特許文献7】特開平5−310943号公報
【特許文献8】特開平5−310896号公報
【特許文献9】特開平7−33885号公報
【特許文献10】特開2000−327720号公報
【特許文献11】特開2004−123597号公報
【特許文献12】特表平9−506666号公報
【非特許文献1】「ハンドブック・オブ・リキッド・クリスタルズ(Handbook of Liquid Crystals)」,(独国),第3巻,ウィリー・ブイシーエイチ(WILEY-VCH),1998年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、主鎖型液晶性高分子化合物と側鎖型液晶性高分子化合物とからなる相溶性の良い液晶性高分子組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究した結果、特定構造の主鎖型液晶性高分子化合物を用いることにより前記課題を解決し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の第1は、主鎖型液晶性高分子化合物と側鎖型液晶性高分子化合物から少なくともなり、該主鎖型液晶性高分子化合物がオルソ置換芳香族単位を含むポリエステルであることを特徴とする液晶性高分子組成物に関する。
本発明の第2は、前記の側鎖型液晶性高分子化合物が水素結合可能な基を有することを特徴とする本発明の第1に記載の液晶性高分子組成物に関する。
本発明の第3は、前記の水素結合可能な基がカルボキシル基であることを特徴とする本発明の第2に記載の液晶性高分子組成物に関する。
本発明の第4は、本発明の第1乃至第3のいずれかに記載の液晶性高分子組成物を均一配向せしめて得られる液晶性光学フィルムに関する。
【0007】
以下詳細について説明する。
本発明の液晶性高分子組成物は、主鎖型液晶性高分子化合物と側鎖型液晶性高分子化合物から少なくともなるものであり、それぞれについて説明する。
【0008】
まず主鎖型液晶性高分子化合物について説明する。
主鎖型液晶性高分子化合物としては、主鎖がエステル結合(−COO−)で連結されているものを挙げることができる。また、エステル結合のほかに、アミド結合(−CONH−)、イミド結合(−CO−N(−)−CO−)、エーテル結合(−O−)など他の結合を同時に主鎖中に有する化合物も本発明では使用することができる。
液晶性ポリエステルを構成する単位としては、ジカルボン酸単位、ジオール単位、オキシカルボン酸単位に大別でき、具体的に以下のような構造単位を例示できる。
【0009】
ジカルボン酸単位としては、例えば、以下の構造のものが挙げられる。
【化1】


【0010】
ジオール単位としては、例えば、以下の構造のものが挙げられる。
【化2】


【0011】
オキシカルボン酸単位としては、例えば、以下の構造のものが挙げられる。
【化3】


【0012】
本発明において用いる主鎖型液晶性高分子化合物としては、上記の構造単位から適宜選択して得られる液晶性ポリエステルを好ましく用いることができるが、構造単位には少なくともオルソ置換芳香族単位を含む必要がある。オルソ置換芳香族単位を導入することにより、結晶相など高次相を抑制することができるので側鎖型液晶性高分子化合物との相溶化において有利であり、また液晶性高分子化合物のガラス転移温度を上昇させることができフィルムにしたときの熱的安定性を高めることができる。かかるオルソ置換芳香族単位を導入することができる化合物としては、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基の2個がオルソ位に結合された化合物であればよく、それらから得られるオルソ置換芳香族単位としては、例えば、以下のようなものが例として挙げられる。
【0013】
【化4】


【0014】
主鎖型液晶性高分子化合物中の、ジカルボン酸単位、ジオール単位およびオキシカルボン酸単位の組成比としては、ジカルボン酸単位とジオール単位のモル比は通常0.8:1.2〜1.2:0.8、より好ましくは概略1:1である。オキシカルボン酸単位は、無添加の場合から単独ポリマーの場合まで、全構造単位中に占める割合は任意の値をとりうる。また、本発明に用いる主鎖型液晶性高分子化合物は、オルソ置換芳香族単位を含むことが組成物の熱的安定性、側鎖型液晶性高分子化合物との組成物にしたときの相溶性の観点からは必要であるが、オルソ置換芳香族単位を全く含まない場合でも、後述の側鎖型液晶性高分子化合物中の水素結合可能な構造単位により相溶性の向上を図ることができ用途によっては利用しうるものもある。
前記のオルソ置換芳香族単位の割合は、主鎖型液晶性高分子化合物中の全構成単位に対し、5〜50モル%の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜45モル%であり、特に好ましくは15〜40モル%の範囲である。
【0015】
主鎖型液晶性高分子化合物は、公知の溶融重縮合法、または溶液法により合成することができる。溶融重縮合法としては、カルボン酸とフェノール性のヒドロキシル基のアセチル化物との脱酢酸反応により行うことができる。ここでフェノール性ヒドロキシル基はあらかじめアセチル化しておいても良い。またフリーなヒドロキシル基から出発して、反応器内で無水酢酸によりアセチル化を行う方法を採用してもよい。
このような方法によって得ることができる液晶性ポリエステルとしては、具体的には以下のようなものを例として挙げることができる。ただし各構造単位の組成比は示していない。
【0016】
【化5】


【0017】
次に側鎖型液晶性高分子化合物について説明する。
側鎖型液晶性高分子化合物は、柔軟な主鎖を有し、液晶性を発現する部位が主鎖からペンダント状にぶら下がったものである。該主鎖の種類でいうと、特に制限はないが、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルエーテル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。これらの中で合成の容易さ、多様な構造単位の導入という観点からはポリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。本発明においては、主鎖型液晶性高分子化合物との相溶性の向上のために、側鎖型液晶性高分子化合物は、液晶性発現のための構造単位と共に、水素結合可能な基を有する構造単位を含むことが好ましい。ここで、水素結合可能な基としては、カルボキシル基、芳香族に結合したフェノール性のヒドロキシル基、アミノ基が挙げられる。これらのうちで最も好ましいのはカルボキシル基であり、かかる水素結合性の官能基は液晶性の観点からは、芳香族に結合したものであることがより好ましい。本発明に用いられる側鎖型液晶性高分子化合物の例を(メタ)アクリレートの場合で示せば、下式(1)および(2)の構造単位から成る共重合ポリマーを挙げることができる。
【0018】
【化6】


【0019】
ただし、RおよびRは、それぞれ個別に、水素またはメチル基を表し、pおよびrは、それぞれ個別に、2〜12の整数を表し、QおよびQは、それぞれ個別に、単結合または以下の式(a)から選ばれる結合単位を表し、Qは単結合または以下の式(b)から選ばれる構造単位を表し、A、AおよびAは、それぞれ個別に、以下の式(c)から選ばれる構造単位を表し、Rは以下の式(d)から選ばれる構造単位を表し、qは1から12の整数を表す。
【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【0020】
側鎖型液晶性高分子化合物の合成は、式(1)および(2)に対応する、(メタ)アクリレート化合物を、溶媒中、ラジカル開始剤、アニオン重合剤などの触媒の共存下、共重合させることにより得ることができる。なお、式(1)および(2)以外の構造単位を導入するために、(メタ)アクリレート基やビニル基を有する他の化合物を共重合させることも可能である。通常、側鎖型液晶性高分子化合物の分子量は、数平均分子量で、3000〜200000、より好ましくは4000〜100000、特に好ましくは、5000〜50000である。3000より小さいと、主鎖型液晶性高分子化合物と混合した場合に、組成物として強度が不十分になる恐れがある。200000より大きいと、光学材料として用いるとき、流動性が悪いために十分な配向が得られないおそれがある。
【0021】
なお、式(1)の構造単位と式(2)の構造単位の割合は、モル比で、99:1〜40:60、より好ましくは95:5〜50:50、特に好ましくは90:10〜60:40である。99:1よりも式(2)の構造単位が少ない場合は、側鎖型液晶性高分子化合物中のカルボキシル基の量が少なくなり、主鎖型液晶性高分子化合物との相溶性が不十分になるおそれがある。また40:60より式(2)の構造単位が多い場合、側鎖型液晶性高分子化合物の液晶性が損なわれるおそれがある。
なお、側鎖型液晶性高分子化合物中の水素結合可能な基は、主鎖型液晶性高分子化合物との間に、必ずしも明確な水素結合が観測されるとは限らないが、そのような基のもつ電子の分極を通じ、主鎖型液晶性高分子化合物との相溶性の向上が達成される。
【0022】
本発明に用いられる側鎖型液晶性高分子化合物の例をより具体的に示せば、例えば、下式(3)〜(8)で表される各種のポリマーを挙げることができる。
【化11】


【化12】


【化13】


【化14】


【化15】


【化16】


【0023】
さらに本発明に用いられる側鎖型液晶性高分子化合物は、膜にしたときの機械的強度の向上を目的に、上記の単位のほか、架橋性を有する側鎖単位など他の側鎖単位を有していても良い。架橋性の側鎖単位の種類としては、(メタ)アクリレートを例にとれば、主鎖の重合にはラジカル反応を利用するため、それとは反応性の異なるカチオン重合性の基が好ましい。カチオン重合性の基としては、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基などを挙げることができ、いずれも使用可能であるが、安定性や合成の容易さの観点からはオキセタニル基が最も好ましい。カチオン重合性基は、後架橋工程において、ラジカル重合性の基と比較して、酸素阻害の影響を受けにくいなどの長所も持つ。架橋性基を有する構造単位としては、例えば下記式(9)の構造単位を挙げることができ、前記式(1)および(2)と共に共重合ポリマーを形成することができる。
【0024】
【化17】


【0025】
ここで、Rは、水素またはメチル基を表し、sは2〜12の整数を表し、AおよびAは、それぞれ個別に、A、AまたはAと同じ構造単位群から選ばれる構造単位を表し、QおよびQは、それぞれ個別に、QまたはQと同じ構造単位群から選ばれる構造単位でを表し、Qは、Qと同じ構造単位群から選ばれる構造単位を表し、Rは、下記式(10)で示される構造単位を表す。
【化18】


【0026】
上記、側鎖型液晶性高分子化合物と主鎖型液晶性高分子化合物は溶液中で混合、あるいは溶融状態で混練して混合して本発明の液晶性高分子組成物が得られる。側鎖型液晶性高分子化合物と主鎖型液晶性高分子化合物の混合割合は、用途にもよるので一概にはいえないが、質量比で、通常1:99〜99:1、好ましくは5:95〜95:5、さらに好ましくは10:90〜90:10である。側鎖型液晶性高分子化合物の量が1質量%未満、あるいは主鎖型液晶性高分子化合物の量が1質量%未満の場合には、両者を混合する効果が低く、フィルムや成形物にしたとき互いの短所を補えなくなるおそれがある。なお、本発明の液晶性高分子組成物は、側鎖型液晶性高分子化合物と主鎖型液晶性高分子化合物から少なくともなるものであるが、これら以外の材料を加えることもできる。かかる材料としては、液晶性または非液晶性の低分子化合物、前記低分子化合物に架橋性の基を導入した化合物、非液晶性の高分子化合物、溶液塗布の際の安定化のための界面活性剤、重合性の基を有する側鎖型液晶性高分子化合物を用いる際には、当該重合基の重合に適した重合開始剤などを挙げることができる。
【0027】
また、液晶性高分子組成物の配向構造にねじれを導入する場合には、主鎖型液晶性高分子化合物中に光学活性な構造単位を導入する、側鎖型液晶性高分子化合物中に光学活性な構造単位を導入する、あるいは光学活性な低分子または高分子の化合物を添加することができる。
【0028】
次に、本発明の液晶性高分子組成物を用いて、液晶性の光学フィルムを作製する方法を説明する。
フィルム化の方法としては、Tダイなどから溶融状態で押し出しフィルム化する方法、溶液にして適当な基板上に塗布する方法等を採用することができる。
特に光学用途向けのフィルムとして利用する場合、以下の方法によりフィルム化することが望ましい。なお、以下でいう「液晶性高分子組成物」とは、本発明で得られる主鎖型液晶性高分子化合物と側鎖型液晶性高分子化合物より少なくともなる液晶性高分子組成物を意味する。
【0029】
先ず、液晶性高分子組成物を溶融状態で基板上に塗布する方法、または液晶性高分子組成物の溶液を基板上に塗布する方法等により塗膜を形成する。基板上に塗布された塗膜は必要により、乾燥後、熱処理(液晶の配向)、配向固定化の工程に供する。
【0030】
前記溶液の調製に用いる溶媒に関しては、液晶性高分子組成物を溶解することができ、適当な条件で留去できる溶媒であれば特に制限は無く、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、イソホロンなどのケトン類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸メトキシプロピル、乳酸エチルなどのエステル類、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、あるいはこれらの混合系溶媒等を挙げることができる。
また、基板上に均一な塗膜を形成するために、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤等を溶液に添加しても良い。
【0031】
前記基板としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のフィルム基板を例示することができる。
【0032】
さらには、これらのフィルム基板を適度な加熱下に延伸する、フィルム面をレーヨン布等で一方向に擦るいわゆるラビング処理を行う、フィルム上にポリイミド、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤等の公知の配向剤からなる配向膜を設けてラビング処理を行う、酸化珪素等の斜方蒸着処理、あるいはこれらを適宜組み合わせるなどして配向能を発現させたフィルムを用いることもできる。
さらに基板としては、表面に規則的な微細溝を多数設けたアルミニウム、鉄、銅などの金属板や各種ガラス板等も使用することができる。
【0033】
塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であれば、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スピンコート法、印刷法などを挙げることができる。前記基板の上に液晶性高分子組成物の溶液を塗布した後は、そのままの状態で溶媒の揮発を待っても良いが、生産性を高めるためにヒーターや温風吹きつけなどの方法による溶媒除去(乾燥)工程を入れても良い。乾燥温度は、溶媒を除去できさえすれば特に制約はなく、溶媒の種類によるので一概に言えないが、通常30℃〜150℃、好ましくは40℃〜100℃である。塗布された膜の乾燥状態における膜厚は、所望とする膜厚に適宜調整可能であるが、通常0.1μm〜100μm、好ましくは0.2μm〜50μm、さらに好ましくは0.3μm〜20μmであることが光学用途として適している。
【0034】
続いて熱処理により液晶配向を形成させる。熱処理は液晶相発現温度範囲の所定の温度で加熱することにより、液晶性高分子組成物が本来有する自己配向能により液晶を配向させるものである。熱処理の条件としては、用いる液晶性高分子組成物の液晶相挙動温度(転移温度)により最適条件や限界値が異なるため一概には言えないが、通常50〜300℃、好ましくは100〜250℃の範囲である。あまり低温では、液晶の配向が十分に進行しないおそれがあり、また高温では、当該組成物が分解するおそれがある。また、熱処理時間については、通常3秒〜60分、好ましくは10秒〜30分の範囲である。3秒よりも短い熱処理時間では、液晶配向が十分に完成しないおそれがあり、また60分を超える熱処理時間では、生産性が極端に悪くなるため、どちらの場合も好ましくない。なお、熱処理は単一の温度で行うこともできるし、多段階で行うこともできる。例えば、最初はより高温で均一配向をまずすばやく達成させた後、より低い温度で処理してオーダーパラメーターを高める方法もとりうる。あるいは最初は液晶相のない等方性液体の状態にしてから温度を下げて、徐々に液晶相を形成させる方法をとることもできる。
【0035】
熱処理などにより液晶配向が完成したのちは、当該配向を固定化する。固定化の方法としては、液晶性高分子組成物のガラス転移を利用して、熱処理後冷却してガラス状態で固定化することができるし、液晶性高分子組成物が重合性の官能基を有する場合には、架橋処理を行って固定化することもできる。
【0036】
なお、使用した前記基板が光学的に等方でない、あるいは最終的に目的とする使用波長領域において不透明である場合は、基板上に形成された液晶性高分子組成物の配向層を、別の光学的に等方なフィルムや最終的に使用される波長領域において透明なフィルムに転写した形態も使用し得る。該転写方法としては、例えば、特開平4−57017号公報や特開平5−333313号公報に記載されているように液晶フィルム層を粘・接着剤を介して、配向基板とは異なる他の透明なフィルム基板を積層した後に、必要により粘・接着剤に硬化処理を施し、該積層体から配向基板を剥離することで液晶性高分子組成物の配向層のみを転写する方法等を挙げることができる。
【0037】
前記透明なフィルム基板としては、例えば、フジタック(富士写真フィルム(株)製品)、コニカタック(コニカ(株)製品)などのトリアセチルセルロースフィルム、TPXフィルム(三井化学(株)製品)、アートンフィルム(JSR(株)製品)、ゼオネックスフィルム(日本ゼオン(株)製品)、アクリプレンフィルム(三菱レーヨン(株)製品)等が挙げられ、また必要によっては透明な基板として偏光板を使用することもできる。さらに、石英板やガラス板を使用することもある。なお、前記偏光板は保護層の有無を問わず使用することができる。
転写に使用される粘・接着剤は光学グレードのものであれば特に制限はなく、例えば、アクリル系、エポキシ樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ゴム系、ウレタン系およびこれらの混合物系や、熱硬化型および/または光硬化型、電子線硬化型等の各種反応性のものを挙げることができる。
【0038】
以上のようにして液晶性光学フィルムが得られ、該液晶光学フィルムは特に光学フィルムとして好適に用いることができる。特に液晶表示素子に適しており、得られる配向構造によって様々な用途があり、位相差フィルム、色補償フィルム、視野角改良フィルム、円偏光フィルム、旋光性フィルムとして用いることが可能である。
例えば、ネマチック配向もしくはねじれネマチック配向を固定化した光学フィルムは位相差フィルムとして機能し、STN型、TN型、OCB型、HAN型等の透過または反射型液晶表示装置の補償板として使用できる。コレステリック配向を固定化した光学フィルムは、輝度向上用の偏光反射フィルム、反射型カラーフィルタ、選択反射に起因する反射光の視角による色変化を生かした各種の装飾フィルムなどに利用できる。ネマチックハイブリッド配向を固定化したフィルムは、正面から見たときのリターデーションを利用して、位相差フィルムや波長板として利用でき、リターデーションの視角依存性の非対称性を生かして、TN型液晶表示装置の視野角改善フィルムに利用できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の液晶性高分子組成物は、主鎖型液晶性高分子と側鎖型液晶性高分子との相溶性が良好なため、両者を混合することにより、それぞれの短所を補い、単独では得られない優れた性能を有する材料が得られる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例で用いた各分析方法は以下の通りである。
(1)H−NMRの測定
化合物を重クロロホルムに溶解し、400MHzのH−NMR(Variant社製
INOVA−400)で測定した。
(2)GPCの測定
化合物をテトラヒドロフランに溶解し、東ソー社製8020GPCシステムで、TSK−GEL SuperH1000、SuperH2000、SuperH3000、SuperH4000を直列につなぎ、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて測定した。分子量の較正にはポリスチレンスタンダードを用いた。
(3)顕微鏡観察
オリンパス光学社製BH2偏光顕微鏡で液晶の配向状態を観察した。
【0041】
(実施例1)
下記の式(11)の主鎖型液晶性ポリマー1と式(12)の側鎖型液晶性ポリマー2を常法によって合成した。数平均分子量はそれぞれ、12000と10000であった。
なお、式(11)および式(12)のカッコ横の数字は各構造単位のモル組成比を表し、式(13)〜式(17)についても同様である。また式(14)中の*は不斉炭素を示す。
ポリマー1を8.0g、ポリマー2を2.0g秤りとり、90gのN−メチルピロリドンに60℃で加温しながら2時間かけて溶解させ、少量のフッ素系界面活性剤を添加してポリマー組成物の溶液を得た。次いで表面にラビング処理を施した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製)の上に、スピンコート法により溶液を塗布し、50℃のホットプレート上で乾燥させた。次に200℃で10分熱処理し、次いで冷却して、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にネマチック液晶相をガラス固定化した液晶フィルム1を得た。液晶フィルム1の膜厚は1.4μmであった。ポリエチレンテレフタレートフィルムは複屈折を有し好ましくないため、液晶フィルム1を紫外線硬化型の接着剤を介して、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム(株)製)に転写した。得られたトリアセチルセルロースフィルム上の液晶フィルム1は透明性が十分高く一軸性のネマチック配向しており、リターデーションは270nmであった。
このトリアセチルセルロースフィルム上の液晶フィルム1に、液晶フィルム1側を粘着剤を介して偏光板と貼り合わせ、トリアセチルセロースフィルム側を粘着剤を介してガラス板と貼り合わせて、耐久性試験用の試料を作製した。この試料を、80℃の高温槽に1時間投入し、次いで60℃、90RH%の高温高湿槽に1時間投入するというサイクルを30回繰り返す耐久性試験を行った。試験後のサンプルを顕微鏡で観察したところ、液晶の配向も外観もいずれも特に大きな変化は見られず、液晶フィルム1は耐久性の高いフィルムであることが分かった。
【0042】
【化19】


【化20】


【0043】
(比較例1)
式(12)のポリマー2を用いず、式(11)のポリマー1のみで、実施例1と同様にしてトリアセチルセルロースフィルム上の液晶フィルム2を得た。液晶フィルム2は透明性が十分高く一軸性のネマチック配向しており、リターデーションは260nmであった。
次に実施例1と同様に耐久性試験用の試料を作製し、同様に耐久性試験を行った。その結果、液晶の配向には乱れは生じなかったものの、液晶フィルム2に微細なクラックが多数生じており、耐久性が液晶フィルム1より劣ることが分かった。
【0044】
(比較例2)
下記の式(13)の側鎖型液晶性ポリマー3(ホモポリマー)を常法により合成した。
ポリマー1を8.0g、ポリマー3を2.0g秤りとり、それ以降の操作は実施例1と同様にして、トリアセチルセルロースフィルム上の液晶フィルム3を作製した。液晶性フィルム3は外観で濁ったように見え、ヘイズ値は10と大きめであり、ポリマー1とポリマー3が十分相溶していないことが分かった。
【0045】
【化21】


【0046】
(実施例2)
下記の式(14)の光学活性な単位を含む主鎖型液晶性ポリマー4と式(15)の側鎖型液晶性ポリマー5を常法により合成した。数平均分子量はそれぞれ、8000と12000であった。
ポリマー4を7.0g、ポリマー5を3.0g秤りとり、90gの1,1,2,2−テトラクロロエタンに50℃で加温しながら2時間かけて溶解させポリマー組成物の溶液を得た。次いで表面にラビング処理を施した厚さ70μmのポリフェニレンサルファイドフィルムの上に、スピンコート法により溶液を塗布し、40℃のホットプレート上で乾燥させた。次に190℃で10分熱処理し、次いで冷却して、ポリフェニレンサルファイドフィルム上にコレステリック液晶相をガラス固定化した液晶フィルム4を得た。液晶フィルム4の膜厚は2.0μmであった。ポリフェニレンサルファイドフィルムは着色の上、複屈折を有して好ましくないため、液晶フィルム4を紫外線硬化型の接着剤を介して、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムに転写した。得られたトリアセチルセルロースフィルム上の液晶フィルム4は透明性が十分高く、緑色の光を選択反射した。
【0047】
【化22】


【化23】


【0048】
(実施例3)
下記の式(16)の比較的低分子量の主鎖型液晶性ポリマー6と式(17)の架橋基を有する側鎖型液晶性ポリマー7を常法により合成した。数平均分子量はそれぞれ、3500と6000であった。
ポリマー6を4.5g、ポリマー7を3.5g秤りとり、92gのテトラヒドロフランに40℃で加温しながら1時間かけて溶解させ、全液晶ポリマーに対し0.1質量%のフッ素系界面活性剤と側鎖型液晶性ポリマー7の重量に対して4質量%のカチオン光開始剤(旭電化工業社製SP−172)を添加してポリマー組成物の溶液を得た。
配向基板としては、ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−124)を厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム(株)製)にコーティングし、ラビング処理したものを用いた。
この基板上に上記ポリマーの溶液を、バーコート法により塗布し、40℃の温風で乾燥させ、次に140℃で5分熱処理し、次いで80℃の温度下で、高圧水銀灯ランプにより600mJ/cm(365nmにおけるエネルギー量)の紫外光を照射して、側鎖型液晶性高分子化合物中のオキセタニル基を重合させた。このようにしてネマチック液晶相を固定化した透明な液晶フィルム5を得た。液晶フィルム5の膜厚は0.9μmで、液晶層はハイブリッド配向をとっていた。液晶フィルム5をツイスティッドネマチック配向構造を有するTFT液晶ディスプレーに搭載したところ、ディスプレーの視野角が著しく改善された。
【0049】
【化24】


【化25】


【出願人】 【識別番号】000004444
【氏名又は名称】新日本石油株式会社
【出願日】 平成17年6月29日(2005.6.29)
【代理人】 【識別番号】100103285
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 順之


【公開番号】 特開2007−9021(P2007−9021A)
【公開日】 平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願番号】 特願2005−190196(P2005−190196)