| 【発明の名称】 |
ポリビニルアルコールフィルムの膨潤方法と装置及び偏光フィルムの製造方法並びに偏光板 |
| 【発明者】 |
【氏名】能勢 由香梨
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| 【要約】 |
【課題】ポリビニルアルコール(PVA)フィルムの膨潤方式として、内部に対する膨潤水の浸透、内部の可塑剤の溶出除去がより完全に行われて、厚さ方向の膨潤が均一化され、この結果膨潤後の厚さ方向の染色が均一に行われて、高偏光特性を有する偏光フィルム及び偏光板を製造可能なものを提供する。
【解決手段】仕切り壁15を介して前槽12と後槽13に区画した膨潤槽11の膨潤水14中に、PVAフィルム10を搬送案内するガイドローラ18、19を設置するとともに、前槽12の膨潤水14中にPVAフィルム10を超音波振動させる超音波振動子21、22を設置し、かつ超音波振動子21、22と仕切り壁15の間に、PVAフィルム10の超音波振動部に沿って前方側に流動する水流を形成可能に吐水する給水管23、24を設置する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリビニルアルコールフィルムを、複数のガイドローラを介して膨潤槽内の膨潤水中を搬送する過程において、膨潤水とともに超音波振動させることを特徴とする、ポリビニルアルコールフィルムの膨潤方法。 【請求項2】 ポリビニルアルコールフィルムを低張力のもとで搬送することを特徴とする、請求項1記載のポリビニルアルコールフィルムの膨潤方法。 【請求項3】 膨潤水とポリビニルアルコールフィルムの超音波振動を、フィルム通行窓付き仕切り壁を介して前後に区画した膨潤槽の前槽内の膨潤水中の搬送過程において行うことを特徴とする、請求項1又は2記載のポリビニルアルコールフィルムの膨潤方法。 【請求項4】 ポリビニルアルコールフィルムを複数のガイドローラを介して膨潤槽内の膨潤水中に、膨潤水とともにポリビニルアルコールフィルムを超音波振動させる超音波振動発生手段を設置してなる、ポリビニルアルコールフィルムの膨潤装置。 【請求項5】 フィルム通行窓付き仕切り壁を介して前槽と後槽に区画した膨潤槽内の膨潤水中に、ポリビニルアルコールフィルムを搬送する複数のガイドローラを設置し、かつ膨潤槽の前槽内の膨潤水中に、ポリビニルアルコールフィルムを超音波振動させる超音波振動発生手段を設置してなる、ポリビニルアルコールフィルムの膨潤装置。 【請求項6】 前槽内の膨潤水中の超音波振動発生手段と仕切り壁の間又は後槽内の膨潤水中の仕切り壁のフィルム通行窓の後方部に、ポリビニルアルコールフィルムの超音波振動部に沿ってポリビニルアルコールフィルムの反搬送側に流動する膨潤水流を形成可能に膨潤水を吐出する給水管を設置してなる、請求項5記載のポリビニルアルコールフィルムの膨潤装置。 【請求項7】 請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルアルコールフィルムの膨潤方法を介して膨潤したポリビニルアルコールフィルムを、二色性物質で染色した後、延伸することからなる、偏光フィルムの製造方法 【請求項8】 請求項4〜6のいずれかに記載のポリビニルアルコールフィルムの膨潤装置を介して膨潤したポリビニルアルコールフィルムを、二色性物質で染色した後、延伸することからなる、偏光フィルムの製造方法 【請求項9】 請求項7又は8に記載の偏光フィルムの製造方法を介して製造した偏光フィルムの両面又は片面に、保護フィルムを貼り付けてなる偏光板。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 この発明は、液晶ディスプレー(LCD)の主要部材である偏光フィルム(偏光子)の製造の際に、第1ステップとして、基材としてのポリビニルアルコールフィルム(以下「PVAフィルム」と略称する)を膨潤水(純水)を介して膨潤するための膨潤方式及び該膨潤方式により膨潤したPVAフィルムによる偏光フィルムの製造方法、並びに前記により製造した偏光フィルムに保護フィルムを貼り付けて形成する偏光板に関する。 【背景技術】 【0002】 PVAフィルムの膨潤は、PVAフィルム中に膨潤水を浸透して、PVAフィルム中の可塑剤(PVAフィルムの成形時に使用)を膨潤水中に溶出除去するとともに、PVAフィルムを易染状態にすること、すなわち染色に適した膨潤状態(水素分子の結合の解離整列を含む)することを主目的にしたもので、従来においては、PVAフィルムを比較的高い張力(例えば10〜15kg/m幅)のもとで複数のガイドローラを介して膨潤槽内の膨潤水中を例えば約1.5m/minの速度で搬送(案内)しながら膨潤水を自然浸透させる方式で行っている(例えば、特許文献1参照)。 【0003】 しかしながらこの従来のPVAフィルムの膨潤方式には、内部(中央部)に対する膨潤水の浸透が不完全になりやすく(これには、例えば10〜15kg/m幅のように比較的高い張力による延伸に伴う歪み変形等が影響していると考えられる)、このため内部の可塑剤の溶出除去が不十分で、表面部と内部の染色性能に差が生じやすいという染色性のムラの問題、すなわち厚さ方向の膨潤状態に差が生じやすいという膨潤ムラの問題が確認されている。このため膨潤に続く二色性物質(ヨウ素、二色性染料等)による染色が、表面部は高濃度、中央部が無染色又は低濃度というように厚さ方向において均一にならないという染色ムラの点から、最近のLCDの一層の特性アップ(高輝度化、高コントラスト化、高精細化等)の点から要求されているより均一な光学特性を有する偏光板を得るために必要な高偏光性能の偏光フィルムを製造することが難しい状況にある。 【特許文献1】特開平10−153709号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 この発明は、上記のような状況に鑑み、PVAフィルムの膨潤方式として、PVAフィルムの内部に対する膨潤水の浸透、内部の可塑剤の溶出除去が完全に近い状態に行われて、厚さ方向の膨潤状態が均一に近くなり、これにより膨潤に続く染色が厚さ方向においてより均一に行われて、高偏光特性を有する偏光フィルム並びに偏光板を製造可能なものを提供することを主要な課題としている。 【課題を解決するための手段】 【0005】 この発明によれば、まず、特許請求の範囲の請求項1に記載のように、PVAフィルムを、複数のガイドローラを介して膨潤槽内の膨潤水中を搬送する過程において、膨潤水とともに超音波振動させることを特徴とする、PVAフィルムの膨潤方法を提供する。 【0006】 請求項1に記載のPVAフィルムの膨潤方法においては、請求項2に記載のごとく、PVAフィルムを低張力のもとで搬送することが望ましい。 【0007】 また請求項1又は2に記載のPVAフィルムの膨潤方法においては、請求項3に記載のごとく、膨潤水とPVAフィルムの超音波振動を、フィルム通行窓付き仕切り壁を介して前後に区画した膨潤槽の前槽内の膨潤水中の搬送過程において行うことが望ましい。 【0008】 この発明によれば、請求項1又は2に記載のPVAフィルムの膨潤方法を実施するために、請求項4に記載のように、PVAフィルムを複数のガイドローラを介して膨潤槽内の膨潤水中に、膨潤水とともにPVAフィルムを超音波振動させる超音波振動発生手段を設置してなる、PVAフィルムの膨潤装置を提供する。 【0009】 また請求項3に記載のPVAフィルムの膨潤方法を実施するために、請求項5に記載のごとく、フィルム通行窓付き仕切り壁を介して前槽と後槽に区画した膨潤槽内の膨潤水中に、PVAフィルムを搬送する複数のガイドローラを設置し、かつ膨潤槽の前槽内の膨潤水中に、PVAフィルムを超音波振動させる超音波振動発生手段を設置してなる、PVAフィルムの膨潤装置を提供する。 【0010】 この請求項5に記載のPVAフィルムの膨潤装置においては、請求項6に記載のごとく、前槽内の膨潤水中の超音波振動発生手段と仕切り壁の間又は後槽内の膨潤水中の仕切り壁のフィルム通行窓の後方部に、PVAフィルムの超音波振動部に沿ってPVAフィルムの反搬送側に流動する膨潤水流を形成可能に膨潤水を吐出する給水管(膨潤水供給管)を設置することが望ましい。 【0011】 さらにこの発明によれば、請求項7に記載のように、請求項1〜3のいずれかに記載のPVAフィルムの膨潤方法を介して膨潤したPVAフィルムを、二色性物質で染色した後、延伸することからなる、偏光フィルムの製造方法を提供する。 【0012】 さらにまた請求項8に記載のように、請求項4〜6のいずれかに記載のPVAフィルムの膨潤装置を介して膨潤したPVAフィルムを、二色性物質で染色した後、延伸することからなる、偏光フィルムの製造方法を提供する。 【0013】 またこの発明によれば、請求項9に記載のように、請求項7又は8に記載の偏光フィルムの製造方法を介して製造した偏光フィルムの両面又は片面に、保護フィルムを貼り付けてなる偏光板を提供する。 【発明の効果】 【0014】 特許請求の範囲の請求項1、2及び4に記載のこの発明に係るPVAフィルムの膨潤方法と装置によれば、PVAフィルムが膨潤槽内の膨潤水中を搬送中に、膨潤水とともに超音波振動を受けるため、膨潤水のPVAフィルム中への浸透が促進され、これによりPVAフィルム中の可塑剤の溶出除去が促進されて、厚さ方向の差が極小の状態の膨潤が迅速に行われる。このような均一に近い膨潤の結果、次の染色過程においては、二色性物質による染色がより均一に行われ、このためより優れた偏光特性を有する偏光フィルム、従って偏光特性が一段と優れた偏光板が得られる。 【0015】 また請求項3と5に記載のPVAフィルムの膨潤方法と装置によれば、膨潤槽の前槽において、上記のようなPVAフィルムの超音波振動によって、より均一に近い膨潤が迅速に行われるとともに、後槽においては、可塑剤の溶出濃度が極めて低い膨潤水のため、より効果的な膨潤が行われるので、PVAフィルムは、一段と厚さ方向の均一性が優れた膨潤状態で、膨潤槽を離れて、染色処理を受ける形になる。 【0016】 請求項6に記載のPVAフィルムの膨潤装置によれば、前槽において膨潤水中に溶出した可塑剤は、PVAフィルムの超音波振動部に沿う反搬送方向の膨潤水流によって、PVAフィルムの超音波振動部から離れるため、超音波振動部近傍の可塑剤の溶出濃度が低度に保持される。このため膨潤がより的確に行われる。 【0017】 さらに請求項7と8に記載の偏光フィルムの製造方法によれば、用いるPVAフィルムの膨潤状態が均一であるので、二色性物質の染色が均一に行われ、より優れた偏光特性を有する偏光フィルムを製造することができる。 【0018】 また請求項9に記載の偏光板によれば、一段と優れた偏光特性を有するので、LCDの高輝度化、高コントラスト化等の特性をアップすることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0019】 以下図面に基づいて、この発明に係るPVAフィルムの膨潤方式の好適な実施形態について説明する。 【0020】 図示した形態では、膨潤槽11は、前後方向の中間部に立設したフィルム通行窓16付きの仕切り壁15を介して、PVAフィルム10の導入側の前槽12と、PVAフィルム10の導出側の後槽13に区画されており、前槽12の前部の膨潤水14中には、上方のフィルム導入ローラ17から導入されるPVAフィルム10を後方に向かって転向案内するガイドローラ18が設置されている一方、後槽13の後部の膨潤水14中には、前槽12から仕切り壁15のフィルム通行窓16を通して後槽13に搬送されたPVAフィルム10を、上方のフィルム導出ローラ20に向かって転向案内するためのガイドローラ19が設置されている。 【0021】 また膨潤槽11の前槽12の前後方向の中間部の膨潤水14中には、後槽13に向かって搬送されるPVAフィルム10の上方部と下方部に、超音波振動発生手段としての上下一対の投げ込み型の超音波振動子21、22が設置されている。 【0022】 さらにこれらの各超音波振動子21、22と仕切り壁15の間には、PVAフィルム10に沿って前方に向かう膨潤水流を形成するために、超音波振動子21、22側に開口する多数の吐水孔(図示せず)を有する上下一対の給水管23、24が配設されている。 【0023】 この図示の実施形態においては、フィルム導入ローラ17を介して膨潤槽11内の膨潤水14中に低張力(例えば1.0〜1.5kg/m幅)で導入されるPVAフィルム10は各部が、前槽12の前後方向の中間部において、膨潤水14とともに順次超音波振動子21、22による超音波振動(周波数は例えば28KHz、40KHz)を受け、これにより膨潤水14の内部への浸透、内部の可塑剤の膨潤水14中への溶出が促進されて、均一でかつ完全に向かった膨潤が迅速に進行する。 【0024】 ここで膨潤水14中に溶出した可塑剤は、給水管23、24の吐水孔から吐出される膨潤水(矢印参照)に基づいたPVAフィルム10に沿う前方への膨潤水流によって、PVAフィルム10の超音波振動部から前方に流れ、超音波振動部の近傍の膨潤水14の可塑剤の濃度が低くなるので、可塑剤の溶出はより効果的に行われる。 【0025】 上記のようにして、膨潤水14とPVAフィルム10の超音波振動による膨潤水14の浸透と可塑剤の溶出の促進により、迅速に膨潤状態が均一で完全な方向に向かいつつあるPVAフィルム10は、仕切り壁15のフィルム通行窓16を通して、後槽13に入ると、膨潤水14中を後方、そしてガイドローラ18を介して上方へ搬送案内される間に、膨潤水14の自然浸透による膨潤作用を受けるが、既に前槽12において相当量の可塑剤が溶出除去されているとともに、後槽13内の膨潤水14は汚染度(可塑剤の溶出濃度)が低いので、膨潤は均一でかつ完全な方向への仕上げの形で進行し、このような良好な膨潤状態でフィルム導出ローラ20を介して膨潤槽11外へ導出される。 【0026】 この後、PVAフィルム10は、二色性物質を収容する染色槽に導入して、染色加工をした後、延伸槽に導入して、延伸処理を施し、さらに定着処理や乾燥処理等を行って、偏光フィルムを製造する。 【0027】 この発明はこのほか、前槽内においてPVAフィルムに沿う膨潤水流を形成するための給水管を、後槽の膨潤水中の仕切り壁のフィルム通行窓近傍部に設けたり、後槽内の膨潤水の汚染度を低く保つために、後槽に新鮮な膨潤水の供給手段を付設するなど、種々の形態で実施することができる。 【実施例】 【0028】 ほぼ図1に準じて膨潤水中にガイドローラ、超音波振動子(周波数28KHz)、給水管を配置した膨潤槽とともに、染色槽、延伸槽、定着槽、乾燥装置を用いて、幅1100mm、厚さ80μのPVAフィルムを、その張力(約1.0〜1.5kg/m幅)や速度(約2.0〜2.5m/min)等を制御しながら、膨潤、ヨウ素染色、延伸、ヨウ素定着、乾燥の処理を行って、複数枚の偏光フィルムを製造し、これらの両面に保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを貼り付けて形成した複数の偏光板について、単体透過率、クロス率、偏光度(偏光率)を測定したところ、それぞれ平均値として、44.2、0.02及び99.98が得られた。 【比較例】 【0029】 比較のために、膨潤水中にガイドローラのみを配置した膨潤槽とともに、上記と同一の染色槽、延伸槽等を用いて、上記と同一のサイズのPVAフィルムを上記とほぼ同等の条件で膨潤、ヨウ素染色、延伸等の処理を行って、複数枚の偏光フィルムを製造し、それぞれの両面に保護フィルムを糊着して形成した複数の偏光板について、たところ、単体透過率、クロス率、偏光度を測定したところ、それぞれ平均値は、43.7、0.03及び99.96であった。 【図面の簡単な説明】 【0030】 【図1】この発明に係るPVAフィルムの膨潤方式の一実施形態の構成概要図である。 【符号の説明】 【0031】 10 PVAフィルム 11 膨潤槽 12 前槽 13 後槽 14 膨潤水 15 仕切り壁 16 フィルム通行窓 17 フィルム導入ローラ 18 ガイドローラ 19 ガイドローラ 20 フィルム導出ローラ 21 超音波振動子 22 超音波振動子 23 給水管 24 給水管
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| 【出願人】 |
【識別番号】505272526 【氏名又は名称】能勢 由香梨
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| 【出願日】 |
平成17年8月1日(2005.8.1) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100071995 【弁理士】 【氏名又は名称】井上 英朗
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| 【公開番号】 |
特開2007−51166(P2007−51166A) |
| 【公開日】 |
平成19年3月1日(2007.3.1) |
| 【出願番号】 |
特願2005−222392(P2005−222392) |
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