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【発明の名称】 アリルクロライドの製造方法。
【発明者】 【氏名】矢野 昌也

【要約】 【課題】プロピレンと塩素ガスを反応させてアリルクロライドを製造する際に、反応生成ガスの冷却器の腐食がなく、長期間、安定してアリルクロライドを製造する方法を提供する。

【解決手段】本発明は、プロピレンと塩素ガスを反応させてアリルクロライドを製造する方法において、反応生成ガスの冷却器の反応生成ガスとの接触面を、Cr元素が20.0〜22.5重量%およびMo元素が12.5〜14.5重量%を含有するNi基合金製の部材で構成することを特徴とするアリルクロライドの製造方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンと塩素ガスを反応させてアリルクロライドを製造する方法において、反応生成ガスの冷却器の反応生成ガスとの接触面を、Cr元素が20.0〜22.5重量%およびMo元素が12.5〜14.5重量%を含有するNi基合金製の部材で構成することを特徴とするアリルクロライドの製造方法。



【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンと塩素ガスを反応させてアリルクロライドを製造する際に、反応生成ガスの冷却器の腐食がなく、長期間、安定してアリルクロライドを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アリルクロライドの製造方法として、ニッケル製またはニッケル−クロム合金であるインコネル製の反応器を使用し、過剰のプロピレンと塩素ガスとを高温で反応する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この反応では、カーボンが発生し、反応器内面や反応生成ガスの冷却器の内面に固着する。
このカーボンの固着を少なくするために、反応生成ガスの冷却器の内面を、ニッケル製やインコネル、インコロイ、ハステロイ等のニッケル基合金で構成することが知られている(特許文献2参照。)。
【0003】
しかしながら、反応器内面や反応生成ガスの冷却器の内面をこれらの金属材料で構成しても完全にカーボンの固着を防止することができず、定期的に除去する必要がある。反応器内面に固着したカーボンは剥離し易く、容易に除去できるが、冷却器に固着したカーボンはジェット洗浄等によって除去している。
【0004】
これらの金属材料で構成した反応生成ガスの冷却器を使用して、反応生成ガスの冷却およびカーボン除去のための洗浄を繰り返していると、冷却器の管板や管内面に応力腐食割れが発生し、更新等の対策が必要になる。従って、反応生成ガスの冷却器を構成する部材として、より耐食性の材料が望まれている。
【特許文献1】特表平11−505834号公報
【特許文献2】特開昭60−252434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、プロピレンと塩素ガスを反応させてアリルクロライドを製造する際に、反応生成ガスの冷却器の腐食がなく、長期間、安定してアリルクロライドを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、プロピレンと塩素ガスを反応させてアリルクロライドを製造する際の反応生成ガスの冷却器を構成する部材について鋭意検討した結果、反応生成ガスの冷却器の反応生成ガスとの接触面をCr元素が20.0〜22.5重量%およびMo元素が12.5〜14.5重量%を含有するNi基合金製の部材で構成することによって、より腐食されなくなり、長期間、安定してアリルクロライドを製造することが可能になることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、プロピレンと塩素ガスを反応させてアリルクロライドを製造する方法において、反応生成ガスの冷却器の反応生成ガスとの接触面を、Cr元素が20〜22.5重量%およびMo元素が12.5〜14.5重量%を含有するNi基合金製の部材で構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によって、プロピレンと塩素ガスを反応させてアリルクロライドを製造する際に、反応生成ガスの冷却器の腐食がなく、長期間、安定してアリルクロライドを製造することができ、その産業上の利用価値は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
プロピレンと塩素の反応は約1〜1.5kg/cmGの圧力、約450〜510℃の温度で、塩素に対するプロピレンのモル比が約3〜6で行われる。反応生成ガスは、通常、常温程度まで冷却し、高沸点物を分離し、主にアリルクロライド、未反応プロピレン及び副生塩化水素からなるガスを蒸留塔に供給し、塔底からアリルクロライドを、塔頂からプロピレン及び塩化水素を分離する。蒸留塔は、通常、圧力が約0.5〜2kg/cmG、塔頂温度がプロピレンが一部液化する約−30〜−40℃、塔底温度がアリルクロライド混合物の沸点以下の約70℃程度で運転される。
塔頂からのプロピレンは、通常、含有する塩化水素を水に吸収させて分離し、反応に循環使用される。塔底からアリルクロライドは、必要により蒸留によって精製される。
【0010】
上記の反応生成ガスの冷却は、冷却器として熱交換器または急冷設備を用いて行われる。
通常、熱交換器に導入し、約450〜510℃の反応生成ガスのエネルギーを約150〜250℃まで回収する。
エネルギーの回収方法としては、反応生成ガスで水を加熱してスチームとして回収する、熱媒体を加熱して回収して利用する等の方法が採用される。
【0011】
約150〜250℃まで冷却された反応生成ガスは、更に熱交換器または急冷設備で常温近くまで冷却される。急冷設備としては、急冷塔が用いられ、冷却は反応生成ガスに冷却した凝縮液を接触させて行われる。
反応生成ガスは更に常温程度に冷却され上記の蒸留塔に供給される。
【0012】
上記の反応によってカーボンが発生し、上記の冷却器に次第にカーボンが固着する。このカーボンを定期的に除去する必要があり、通常、ジェット洗浄によって除去される。
【0013】
本発明においては、反応生成ガスの冷却器の反応生成ガスとの接触面を、Cr元素が20〜22.5重量%およびMo元素が12.5〜14.5重量%を含有するNi基合金製の部材で構成するが、接触面全体をこのNi基合金で形成してもよいし、Ni基合金をクラッドして形成しても良い。
【0014】
このNi基合金の具体例としては、下記組成のものが挙げられ、これはハステロイ(商標登録)C−22として市販されている。
Cr:20.0〜22.5重量%、Mo:12.5〜14.5重量%、Co:2.5重量%以下、V:0.35重量%以下、Fe:2.0〜6.0重量%、W:2.5〜3.5重量%、C:0.015重量%以下、Si:0.08重量%以下、Mn:0.5重量%以下、P:0.02重量%以下、S:0.02重量%以下、Ni:残部
【0015】
従来使用されているハステロイとしては、ハステロイB、ハステロイC等が挙げられるが、ハステロイBはCrを1重量%以下含み、Moを26〜30重量%含むものであり、本願で使用するNi基合金とCrおよびMo等の含有量を異にし、ハステロイCはCrを14.5〜16.5重量%、Moを15〜17重量%含むものであり、本願で使用するNi基合金に比べてCrが少なく、Moを多く含有するものである。
また、インコネルは、Moを量が10重量%以下含むものであり、本願で使用するNi基合金に比べてMo含有量が少ないNi基合金である。インコロイは、Moを事実上含有しておらず、本願で使用するNi基合金に比べてMo含有量が少ないNi基合金である。
【0016】
同じNi基合金であっても、Crおよび/またはMo含有量が異なると応力腐食割れに対する感受性が異なる。
従来使用されているNi基合金が応力腐食割れを発生させる理由は以下のとおりと考えられる。
固着したカーボン層内にHClが含まれ、これがジェット洗浄時に低濃度の塩酸水溶液となり、部材がカーボンと塩酸水溶液の両方に接触することになる。カーボンの接触により部材の電位が上昇し、通常、全く問題ない低濃度の塩酸環境で応力腐食割れの感受性を持ってしまうためである。
これに対して、本願で使用するNi基合金はこの環境下における応力腐食割れの感受性が低いため、殆ど応力腐食割れを起こさないものと考えられる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明方法を実施例により更に詳細に説明するが、実施例は一態様にすぎず、これにより本発明方法が限定されるものではない。
【0018】
参考例1
応力腐食割れの原因が、部材がカーボンと塩酸水溶液の両方に接触し、カーボンの接触により部材の電位が上昇し、応力腐食割れの感受性が高くなるためと考えられ、耐食材料の選定のため、表1に示すNi基合金について応力腐食割れの加速試験を行った。
合金Aは、本願で使用するNi基合金、合金Bは従来のハステロイCの改良材であるハステロイC−276に相当するNi基合金である。
【0019】
【表1】


【0020】
試験方法は、低ひずみ速度引張試験法により、下記のとおり行った。
試験片の試験部の大きさ:長さ20mm×幅4mm×厚さ2mm
なお、試験片は下記の条件で予め鋭敏化熱処理を行った。
合金A:870℃×2時間、合金B:850℃×2時間
合金C:830℃×2時間、合金D:850℃×2時間
試験片表面は最終的にエメリー紙#400まで研磨した。
90℃の純水または1重量%塩酸溶液中に試験片を浸漬し、塩酸溶液の場合には電位をかけ、ひずみ速度0.83×10−6/秒で引張り、その時の応力と伸びを測定した。
結果を表2および図1〜図4に示す。図1は合金A、図2は合金B、図3は合金C、図4は合金Dの結果を示す。なお、電位は飽和甘こう電極基準(SCE)で示している。




【0021】
【表2】


【0022】
冷却器の環境を想定した1重量%塩酸溶液で電位を架けた状態において、合金Aは純水の場合の約95〜99%の破断伸びを示し、殆ど変わらないのに対して、合金Bでは約30%に、合金Cでは約46〜60%に、合金Dでは約64〜67%に低下している。
この結果は、合金Aは応力腐食割れの可能性が少なく、合金B〜Dは応力腐食割れの可能性があることを示している。
合金A〜Dは、同じCr、Moを多く含有するNi基合金であるが、その含有量の多少によって、応力腐食割れの可能性に影響している。
【0023】
実施例1
反応器にプロピレンと塩素ガス(プロピレン/塩素=4モル比)を供給して反応させた。得られた主成分としてアリルクロライド、プロピレンおよび塩化水素を含有する反応生成ガスを上記表1に記載の合金Aの部材で構成された第1冷却器で約490℃から約350℃に冷却した。更に合金Bの部材で構成された第2冷却器で約350℃から約200℃に冷却した。反応生成ガスは更に冷却後、蒸留によって、アリルクロライドを分離した。
約6ヶ月毎に開放して、第1冷却器に固着したカーボンをジェット洗浄で除去した。なお、第2冷却器にはカーボンは殆ど固着していなかった。
約2年間経過した時点で、第1冷却器には応力腐食割れは見られなかった。なお、第2冷却器にも応力腐食割れは見られなかった。
【0024】
比較例1
反応生成ガスを合金Bの部材で構成された一基の冷却器で約490℃から約190℃に冷却した以外は実施例1と同様に行った。
約2年間経過した時点で、冷却器の下管板近傍のチューブ内面に深さ約2mmの応力腐食割れが見られた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】参考例1における合金Aの試験結果を示す図である。
【図2】参考例1における合金Bの試験結果を示す図である。
【図3】参考例1における合金Cの試験結果を示す図である。
【図4】参考例1における合金Dの試験結果を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
【出願日】 平成18年6月15日(2006.6.15)
【代理人】 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆

【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨

【識別番号】100119471
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 雅之


【公開番号】 特開2007−332076(P2007−332076A)
【公開日】 平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願番号】 特願2006−165752(P2006−165752)