| 【発明の名称】 |
3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの保存安定性の向上方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】古俣 武夫
【氏名】秋葉 進也
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| 【要約】 |
【課題】医薬・農薬の中間体として、機能性材料の製造原料または合成中間体として有用な、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの保存安定性を向上し、工業原料として保存及び流通が可能にする方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法によれば、有用性の高い3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加する操作によって、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの保存安定性を飛躍的に向上することができる。さらに蒸留するという容易な方法で回収することが可能であり、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを長期間、98%以上の高純度に保つことが可能である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド 【化1】
に水を添加することを特徴とする、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの保存安定性の向上方法。 【請求項2】 請求項1において、水の量が式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド100gに対して、0.1gから80gであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 請求項1または2において、水を添加する際の温度を−30℃〜50℃とすることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 以下の3工程からなる、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの再生方法。 第1工程:式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド 【化2】
に、水を添加し、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物を形成する工程。 第2工程:該組成物を、空気もしくは窒素雰囲気下にて保存する工程。 第3工程:上記保存後の該組成物を、蒸留することにより、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを回収する工程。 【請求項5】 3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物が、式[2]で表される3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オール 【化3】
であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。 【請求項6】 請求項4において、水の量が式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド100gに対して、0.1gから80gであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。 【請求項7】 請求項4乃至6の何れかにおいて、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加し、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物を形成する(第1工程)際、水を添加する際の温度を−30℃〜50℃とすることを特徴とする、請求項4乃至6の何れかに記載の方法。 【請求項8】 請求項4において、該組成物を、空気もしくは窒素雰囲気下にて保存する(第2工程)際、保存する際の温度を−30℃〜30℃とすることを特徴とする、請求項4に記載の方法。 【請求項9】 式[2]で表される3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オール。 【化4】
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの保存安定性の向上方法および再生方法に関する。 【背景技術】 【0002】 3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドは、医薬、農薬の中間体として、また含フッ素重合体等の機能性材料の製造原料または合成中間体として極めて重要な化合物であるため、これまで多くの製造方法が報告されてきた。 非特許文献1には3,3,3−トリフルオロプロペンを硝酸水銀(II)と氷酢酸などを用いて3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノールへと誘導し、これをクロム酸ナトリウムにより3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに酸化する方法が開示されている。特許文献1には、3,3,3−トリフルオロプロペンをパラジウム塩の存在下、水と反応させることで3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを製造する方法が開示されている。非特許文献2にはヨウ化トリフルオロメチルをエチルビニルエーテルに付加させ、加水分解することによって3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを製造する方法が開示されている。特許文献2においては、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、パラジウム塩と酢酸ナトリウム、そして氷酢酸を用いて酢酸3,3,3−トリフルオロプロペニルへと変換し、これを加水分解することによって3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを製造する方法が開示されている。 特許文献3においては、(アルキル)3,3,3−トリフルオロプロペニルエーテルを、ヨウ化水素酸水溶液を用いて加水分解して3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを製造する方法が開示されている。特許文献4では1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、Rが炭素数1〜4のアルコール(ROH)中で反応させ、CF3CH=CHORもしくはCF3CH(OR)2へと変換し、引き続いて特許文献3の方法と同様に、加水分解して3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを製造する方法が開示されている。特許文献5では、酢酸ビニルへの塩化トリフルオロメタンスルホニルの付加により、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピルアセテートを製造し、これを硫酸で加水分解して3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを製造する方法が開示されている。 また、非特許文献3では、トリフルオロメチル基含有エナミンであるジメチル−[1−(2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロペニル)]アミンを硫酸マグネシウム水和物存在下28日間反応させて3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを製造する方法が開示されている。 これら公知の文献においては、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの保存安定性の向上方法および再生方法に関する記述はない。 【特許文献1】特開昭63−63633号公報 【特許文献2】米国特許5,777,184号公報 【特許文献3】米国特許2,715,144号公報 【特許文献4】米国特許6,111,139号公報 【特許文献5】特表2003−522743号公報 【非特許文献1】Journal of Fluorine Chemistry、第30巻、153頁〜158頁 1985年(オランダ国) 【非特許文献2】Zhurnal Organicheskoi Khimii、第25巻、第7号、1376頁〜1380頁 1989年(ソ連) 【非特許文献3】Izvestiya Akademii Nauk、Seriya Khimicheskaya、第5号、1069頁〜1071頁 1997年(ロシア国) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 従来、本発明にて用いる3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドが、それ自身、必ずしも安定な化合物ではなく、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド 【0004】 【化5】
がさらに反応して得られた、式[3]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド三量体 【0005】 【化6】
や、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドが酸化されることにより得られる、式[4]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、 【0006】 【化7】
さらに、単一もしくは複数の構造不明の化合物(この構造不明の化合物を以下、「不純物」と定義する)、が生成し、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの純度が低下し、長期間の貯蔵が困難であるといった問題があった。さらに、一度生成したこれら化合物は、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに戻すことが困難であった。 このようなことから、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを工業原料として大量に使用するために、安定かつ長期間の保存に耐え得る方法が求められていた。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、このような保存中の品質劣化を回避するため、鋭意検討を行った。その結果、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加する(以下、水を添加する工程を「第1工程」とも呼ぶ)ことで、その保存安定性が飛躍的に向上することを見いだし、上記課題が解決することを見出した。 本発明者らは、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加することで、前述の式[3]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド三量体、式[4]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、そしてその他の生成が劇的に抑えられ、さらには長期間保存しても、これらの生成量が抑制され、高い純度で保存可能であることを見出した。 本発明では、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加することで、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物を得るが、その組成物には3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド自身が水和した後に、更に二量化した構造の、式[2]で表される3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オール 【0008】 【化8】
が主として存在していることが見出された(スキーム1参照)。 【0009】 【化9】
スキーム1に示すように、式[2]で表される3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールが、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドとの可逆的な変換が可能である性質を見出した。この化学平衡が式[2]に傾いていることで、従来、多く生成することで問題になっていた、前述の式[3]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド三量体、式[4]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、その他不純物の生成が、劇的に抑制できるものと推測される。 さらに、本発明者らは水を添加して得た、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物を、蒸留することにより、出発原料である式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドが容易に回収できるという知見を得た。 すなわち、本発明では、以下の工程、 (1)式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに、水を添加し、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物を形成する工程(第1工程) が必須の要素であるが、本発明では、この第1工程を基礎とし、この第1工程に以下の2工程、 (2)第1工程で得られた該組成物を、空気もしくは窒素雰囲気下にて保存する工程(この工程を「第2工程」と呼ぶ) (3)上記保存後の該組成物を、蒸留することにより、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを回収する工程(この工程を「第3工程」と呼ぶ) を任意に組み合わせて実施することができる。これにより、長期間保存しても高純度で保つことが可能である。本発明は3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの、工業原料として保存及び流通を可能にする極めて有用な方法である。 すなわち、本発明は、[発明1]〜[発明9]を骨子とする、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの保存安定性の向上方法および再生方法を提供する。 [発明1]式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加することを特徴とする、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの保存安定性の向上方法。 [発明2]発明1において、水の量が式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド100gに対して、0.1gから80gであることを特徴とする、発明1に記載の方法。 [発明3]発明1または2において、水を添加する際の温度を−30℃〜50℃とすることを特徴とする、発明1または2に記載の方法。 [発明4]以下の3工程からなる、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの再生方法。 第1工程:式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに、水を添加し、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物を形成する工程。 第2工程:該組成物を、空気もしくは窒素雰囲気下にて保存する工程。 第3工程:上記保存後の該組成物を、蒸留することにより、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを回収する工程。 [発明5]3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物が、式[2]で表される3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールであることを特徴とする、発明4に記載の方法。 [発明6]発明4において、水の量が式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド100gに対して、0.1gから80gであることを特徴とする、発明4に記載の方法。 [発明7]発明4乃至6の何れかにおいて、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加し、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物を形成する(第1工程)際、水を添加する際の温度を−30℃〜50℃とすることを特徴とする、発明4乃至6の何れかに記載の方法。 [発明8]発明4において、該組成物を、空気もしくは窒素雰囲気下にて保存する(第2工程)際、保存する際の温度を−30℃〜30℃とすることを特徴とする、発明4に記載の方法。 [発明9]式[2]で表される3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オール。 【発明の効果】 【0010】 本発明の方法によれば、医農薬中間体として有用性の高い化合物である、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加することにより、保存安定性を飛躍的に向上することができる。さらに蒸留することにより容易に回収可能であり、これにより3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを長期間、98%以上の高純度に保つことが可能である。3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの工業的な使用を容易にするという効果を奏する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0011】 以下、本発明につき、詳細に説明する。本発明は、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加することを特徴とする、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの保存安定性の向上方法である。また、以下の工程、 (1)式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに、水を添加し、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物を形成する工程(第1工程) が必須の要素であるが、本発明では、この第1工程を基礎とし、この第1工程に以下の2工程、 (2)第1工程で得られた該組成物を、空気もしくは窒素雰囲気下にて保存する工程(この工程を「第2工程」と呼ぶ) (3)上記保存後の該組成物を、蒸留することにより、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを回収する工程(この工程を「第3工程」と呼ぶ) を、任意に組み合わせる(以下、3つの工程からなるこの方法を、「3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの再生方法」と呼ぶ)ことによってなる。ここで本明細書では、第1工程、第2工程、第3工程について順次説明する。 【0012】 まず、第1工程について説明する。本発明において反応原料として用いる、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドは、前述した特許文献、非特許文献に記載の従来公知の方法により得ることができる。 本発明において用いる水の添加量は、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド100gに対し、通常0.1g〜80gであり、好ましくは、2g〜50g、更に好ましくは3g〜20gである。0.1gより水の添加量が少ない場合には、十分な安定化効果が得られないので好ましくない。また、80g以上の水を加えても同様の安定化効果は期待できるが、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド回収時に回収率が低下するばかりでなく、生産性の面からも好ましくない。実際の反応においては、必要十分な水を添加するための方法として、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドおよび水の適切な量を秤量し、混合する。 また、本工程で用いる式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドは、それ自身、水分を含有している場合でも、水分の含有量が式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド100gに対し、0.1gより少ない場合には、十分な安定化効果が得られない(後述の比較例1−2参照)ので、安定化効果を得るためには別途、水を添加し、前述の添加量にすることが好ましい。 【0013】 水を添加する際の温度は、通常、−30℃〜55℃だが、好ましくは−30℃〜50℃の範囲である。3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドは沸点が低い(沸点55℃)為、55℃を超えないことが好ましい。3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドと水とを一時に混合することもできるが、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドまたは水の一方を反応器に予め投入した後、もう一方を逐次的あるいは連続的に導入すると、反応温度の上昇を抑えやすく、好ましい。 本発明では、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドおよび水の適切な量を秤量し、反応器内にて混合した後、空気もしくは窒素雰囲気下にて保存する。また、水を添加する際の行う反応器に関しては特に制限はなく、当業者が適宜選択することができる。 次に、第2工程について説明する。本発明における、水を添加した後の保存について、保存する際の温度は通常、−50℃〜90℃、好ましくは−30℃〜60℃で、さらに好ましくは−30℃〜30℃の範囲である。 また、保存する際の圧力については特に制限はないが、空気もしくは窒素、アルゴン等の不活性ガスを導入して常圧下で保存を行うか、あるいは密閉して加圧条件で保存を行うことができる。原料である3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドは低沸点である事から、本工程を実施する際の重要な点は、これらを液体または固体の状態とすることである。これを達成するために適当な温度と圧力が選ばれる。 室温ないしそれ以下の温度で保存する場合、空気もしくは不活性ガス雰囲気下、常圧下で保存することができ、それが簡便であるから特に好ましい。本実施例1−6において空気存在下、常圧下にて−10℃〜25℃の範囲にて保存することは、好ましい実施態様の一つである。 これに対し、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの沸点(55℃)以上の温度にて保存を行った場合、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドが気化することがある。この場合、原料である3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを液化させておくため、耐圧反応容器を用い、容器内を不活性ガス雰囲気にした後、密閉して加圧条件で反応を行うのが好ましい。ただし、55℃以上の温度で保存するメリットは少ない。 次に、第3工程について説明する。また、本発明では、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドおよび水の適切な量を秤量し、反応器内にて混合し保存した後、混合物を蒸留する事により、容易に3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを回収することができる。 蒸留装置に関しては特に制限はなく、当業者が適宜選択することができる。蒸留する温度及び圧力については、常圧もしくは減圧条件等、当業者が適宜選択できる。ここでは、常圧下、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドが留出する温度(3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの沸点:55℃)以上に加熱するか、または減圧下、対応する温度まで加熱することができるが、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの沸点が低いことや操作の簡便さなどから、常圧下にて行うことが好ましい。 例えば、常圧下、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの沸点以上の温度で蒸留を行う方法(後述の実施例4−6参照)は、水を含む反応系内から、該目的物のみを効率よく取り出すことが可能であることからも、特に好ましい態様の一つである。 本発明では、例えば本実施例1−6では、水を添加することにより式[3]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド三量体、式[4]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、そして不純物、これらの生成が、後述する比較例と比べ、格段と抑えられ、長期間(例えば、本実施例1−6では7日間)保存することができる。 さらに、本実施例4−6において、混合物を常圧下にて蒸留することで、高い回収率にて式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを得ることができる。 本発明では、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加することで、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物を得るが、その組成物の中には3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド自身が水和した後に、更に二量化した構造の、式[2]で表される3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールを生成する。常温で白色の固体であり、長期間常温で保存しても変質のない、安定性の高い化合物である。本発明では、前述のスキーム1に示すように、この化合物を反応系内に一部、または3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドが全て式[2]で表される3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールを生成させることで、前述の式[3]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド三量体、式[4]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、そして不純物、これらの生成が劇的に抑えることができる。 【0014】 式[2]で表される3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールは、それ自身、無溶媒の結晶であってもよいが、水に溶解して水溶液となっていてもかまわない。また、保存後、反応系内に式[2]で表される3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールを含む組成物を、蒸留することにより、容易に3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを回収することができる。 例えば本実施例4−6にて、水を添加し、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド/水の組成物を形成させ(第1工程)、空気存在下保存し(第2工程)、保存後、蒸留(沸点55℃)することで、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを高収率で容易に回収する(第3工程)ことは、好ましい実施態様の一つである。 このように、各工程を組み合わせることで、該目的物である、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを、高純度で回収することができる。 【実施例】 【0015】 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施態様に限られない。ここで、組成分析値の「%」とは、生成物を直接ガスクロマトグラフィー(GC)によって測定して得られた組成の「面積%」を表す。また、水分はカールフィッシャー水分計によって測定して得られた「重量%」を表す。 [実施例1−3]3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの保存安定性 3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加し、5wt%の水分を含む、三種類のサンプルを調製した。まず、室温(20℃)にて水を添加直後(実際には10分後)、1H−NMR、19F−NMR、13C−NMR、Massスペクトル、IR分析により分析したところ、式[2]で表される3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールが生成していることを確認した(変換率100%)。 1H−NMR(基準物質:TMS,溶媒:DMSO−d6) δ(ppm):2.49(4H,m), 5.20(2H,dt,J=8.0Hz,5.5Hz),6.63(2H,d,J=8.0Hz). 19F−NMR(基準物質:CFCl3,溶媒:アセトン−d6) δ(ppm):−62.70(6F,t,J=11Hz) 13C−NMR(基準物質:溶媒,溶媒:アセトン−d6) δ(ppm):41.84(q,J=27Hz),88.16(q,J=4.4Hz),126.49(q,J=275Hz). Massスペクトル 【0016】 【表1】
IR:3313、3224cm-1、1736cm-1(weak). さらに、そのまま二種類のサンプルをそれぞれ−10℃と25℃で保存し、1日後、3日後、そして7日後、ガスクロマトグラフィー(GC)により分析すると、以下の表2に示す結果が得られた。 【0017】 【表2】
(注1) ガスクロマトグラフィー条件 装置 SHIMADZU GC−2010 カラム DB−5 30m 0.53mm 膜厚1.5μm カラム温度設定 70℃ (5min.) 20℃/min. 270℃ (5.5min.) インジェクション温度 220℃ キャリアーガス He 線速 20s スプリット比 1/25 検出器 FID 240℃ 表2に示すように、実際に水を添加した直後に得られる、式[2]で表される、3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールは、ガスクロマトグラフィー装置に注入する際、GC装置に起因する熱(70℃〜270℃)により、全て、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに変換される。これにより、ガスクロマトグラフィーでは、水を添加することで得られた、式[2]で表される、3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールが、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドとして検出される。 表2では、式[3]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド三量体、式[4]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、そして不純物、これらの生成が、後述する比較例と比べ、格段と抑えられ、実施例1−3のいずれの場合も、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドが、98%以上の高い純度を長期間保つことが可能であることがわかる。 [比較例1−2] 実施例1−3と比べ、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドに水を添加しない他は温度条件、日数ともに同様に行った。二種類のサンプルの、10分後、1日後、3日後、そして7日後を、ガスクロマトグラフィーにより分析すると、以下の表3に示す結果が得られた。 【0018】 【表3】
表3に示すように、水を添加しない場合には、実施例1−3とは異なり、式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの純度が徐々に低下している。一方で、式[3]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド三量体、式[4]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、そして不純物の生成が増加していることがわかる。 式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドが、それ自身、水分を含有している場合でも、水分の含有量が式[1]で表される3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド100gに対し、0.1gより少ない場合には、十分な安定化効果が得られないことがわかる。 [実施例4]3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの再生 3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド40.0g(0.357mol、純度99.5%)および水6.43g(0.357mol)を100mlガラス製サンプルびんに入れ、良く振り混ぜ、冷蔵庫(5℃)に保存した。7日後、白色の固体が得られ、これを、1H−NMR、19F−NMR、13C−NMR、Massスペクトル、IR分析すると、式[2]で表される、3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールであることが判明した(純度99.5%、収量43.2g、収率98%)。 次に、得られた3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールを蒸留装置に移し、常圧にて蒸留(沸点55℃)することで、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド37.2g(純度99.5%、収率95%(3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールからの収率)、全収率93%(トリフルオロプロピオンアルデヒドからの収率))が再生された。 [実施例5]3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの再生 3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド40.0g(0.357mol、純度99.5%)および水20.0g(1.11mol)を100mlガラス製サンプルびんに入れ、良く振り混ぜ、冷蔵庫(5℃)に保存した。7日後、白色の固体が得られ、これを、1H−NMR、19F−NMR、13C−NMR、Massスペクトル、IR分析すると、式[2]で表される、3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールであることが判明した(純度99.5%、収量43.2g、収率98%)。 次に、得られた3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールを蒸留装置に移し、常圧にて蒸留(沸点55℃)することで、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド35.6g(純度99.5%、収率91%(3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールからの収率)、全収率89%(トリフルオロプロピオンアルデヒドからの収率))が再生された。 [実施例6]3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドの再生 3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド40.0g(0.357mol、純度99.5%)および水32.1g(1.78mol)を100mlガラス製サンプルびんに入れ、良く振り混ぜ、冷蔵庫(5℃)に保存した。7日後、白色の固体が得られ、これを、1H−NMR、19F−NMR、13C−NMR、Massスペクトル、IR分析すると、式[2]で表される、3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールであることが判明した(純度99.5%、収量43.2g、収率98%)。 次に、得られた3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールを蒸留装置に移し、常圧にて蒸留(沸点55℃)することで、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド34.8g(純度99.5%、収率89%(3,3,3−トリフルオロ−1−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1−オールからの収率)、全収率87%(トリフルオロプロピオンアルデヒドからの収率))が再生された。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002200 【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
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| 【出願日】 |
平成17年11月29日(2005.11.29) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100123401 【弁理士】 【氏名又は名称】花田 吉秋
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| 【公開番号】 |
特開2007−145766(P2007−145766A) |
| 【公開日】 |
平成19年6月14日(2007.6.14) |
| 【出願番号】 |
特願2005−343357(P2005−343357) |
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