| 【発明の名称】 |
カーボンナノチューブを含有する炭素繊維強化炭素複合材料 |
| 【発明者】 |
【氏名】沖野 不二雄
【氏名】伊藤 克博
【氏名】遠藤 守信
【氏名】柳澤 隆
|
| 【要約】 |
【課題】高機械強度とともに、高弾性、高耐熱性、良熱伝導性及び良導電性など、優れた特性を持つ構造材として有用な炭素繊維強化炭素複合材料を提供する。
【解決手段】縮合多環多核芳香族樹脂とカーボンナノチューブとの混合物を、炭素繊維に混合して炭素化した炭素繊維強化炭素複合材料である。この炭素繊維強化炭素複合材料は、JISR7222に規定される三点曲げ試験による強度が500MPa以上である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 縮合多環多核芳香族樹脂とカーボンナノチューブとの混合物を、炭素繊維に混合して炭素化したことを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材料。 【請求項2】 請求項1に記載の炭素繊維強化炭素複合材料において、JIS R7222に規定される三点曲げ試験による強度が500MPa以上であることを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材料。 【請求項3】 該縮合多環多核芳香族樹脂がタールピッチ系の芳香族化合物とグリコール類の縮重合化合物であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化炭素複合材料。 【請求項4】 該カーボンナノチューブがカップスタック型カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化炭素複合材料。 【請求項5】 該炭素繊維がポリアクリロニトリル系炭素繊維であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化炭素複合材料。 【請求項6】 カーボンナノチューブとの混合共存下で、芳香族化合物とグリコール類を縮重合し、得られた該カーボンナノチューブと縮合多環多核芳香族樹脂との混合物を、炭素繊維に含浸し、焼成して炭素化することを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材料の製造方法。 【請求項7】 該カーボンナノチューブがカップスタック型カーボンナノチューブであって、超音波を照射して有機溶剤に分散してから、該芳香族化合物とグリコール類を混合共存させ前記縮重合することを特徴とする請求項6に記載の炭素繊維強化炭素複合材料の製造方法。 【請求項8】 前記縮重合に際し、p−トルエンスルホン酸を触媒として添加することを特徴とする請求項6に記載の炭素繊維強化炭素複合材料の製造方法。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、機械的特性、耐熱性、導電性に優れ、例えばロケットや宇宙船など宇宙関連装置の構造材料等に有用な炭素繊維強化炭素複合材料に関するものである。 【背景技術】 【0002】 炭素繊維強化炭素複合材料は高熱伝導性で耐熱性、耐熱衝撃性に優れた軽量材であって、宇宙用耐熱構造材、核融合炉壁材等の耐熱部品、及び耐熱慴動材として航空機等の過酷な使用条件のブレーキ材への応用が期待されている。特許文献1には、炭素繊維にピッチ原料を含浸させた後、炭化した炭素繊維強化炭素複合材料が記載されている。 【0003】 かかる炭素繊維強化炭素複合材料は、カーボンナノチューブを含有させることで、機械強度、剛性、熱伝導性及び導電性などの特性の改善が報告されている。特許文献2は、熱硬化型イミドオリゴマーにカーボンナノチューブを添加して熱硬化させることにより、電気伝導性の付与、弾性率や強度の向上、及び耐熱性を向上させたポリイミド複合材料を開示している。特許文献3には、芳香族ポリアミド中に単層カーボンナノチューブを分散させた芳香族ポリアミド複合材料が記載されている。 【0004】 【特許文献1】特開平11−302086号公報 【特許文献2】特開2004−250646号公報 【特許文献3】特開2005−521779号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 宇宙開発などにともない、構造材料の機械特性や耐熱性に対する要求はとどまるところがない。そのような状況下において、本発明は、高機械強度とともに、高弾性、高耐熱性、良熱伝導性及び良導電性など、優れた特性を持つ構造材として有用な炭素繊維強化炭素複合材料を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 前記の目的を達成するためになされた本発明の請求項1に記載の発明は、縮合多環多核芳香族樹脂とカーボンナノチューブとの混合物を、炭素繊維に混合して炭素化したことを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材料である。 【0007】 同じく本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の炭素繊維強化炭素複合材料において、JIS R7222に規定される三点曲げ試験による強度が500MPa以上であることを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材料である。 【0008】 請求項3に記載の発明は、該縮合多環多核芳香族樹脂がタールピッチ系の芳香族化合物とグリコール類の縮重合化合物であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化炭素複合材料である。 【0009】 請求項4に記載の発明は、該カーボンナノチューブがカップスタック型カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化炭素複合材料である。 【0010】 請求項5に記載の発明は、該炭素繊維がポリアクリロニトリル系炭素繊維であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化炭素複合材料である。 【0011】 請求項6に記載の発明は、カーボンナノチューブとの混合共存下で、芳香族化合物とグリコール類を縮重合し、得られた該カーボンナノチューブと縮合多環多核芳香族樹脂との混合物を、炭素繊維に含浸し、焼成して炭素化することを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材料の製造方法である。 【0012】 請求項7に記載の発明は、該カーボンナノチューブがカップスタック型カーボンナノチューブであって、超音波を照射して有機溶剤に分散してから、該芳香族化合物とグリコール類を混合共存させ前記縮重合することを特徴とする請求項8に記載の炭素繊維強化炭素複合材料の製造方法である。 【0013】 請求項8に記載の発明は、前記縮重合に際し、p−トルエンスルホン酸を触媒として添加することを特徴とする請求項8に記載の炭素繊維強化炭素複合材料の製造方法である。 【発明の効果】 【0014】 本発明の炭素繊維強化炭素複合材料は、機械強度とともに、弾性、耐熱性、熱伝導性及び導電性の面で非常に優れた特性を持つ構造材を実現した。特に機械強度においては、驚異的な500MPa以上を達成できた。1000MPaまで達成できる。そのため、宇宙用耐熱構造材、核融合炉壁材の耐熱部品、航空機や車両等のエンジン部材、あるいはブレーキ材、スキー板、釣り竿、ゴルフクラブのシャフトとして利用し、極めて高性能なものにできる。この炭素繊維強化炭素複合材料は、焼成工程前に加圧成形をするため、同一形状の部品を大量生産するのに適している。 【発明を実施するための好ましい形態】 【0015】 本発明を実施するための好ましい形態を以下に説明する。 【0016】 本発明の炭素繊維強化炭素複合材料は、図1のフローチャートに示す、1〜6の投入原材料および中間製品、ステップ101〜105の工程によって製造され、成形品7として完成する。 【0017】 同図に示すように、カップスタック型カーボンナノチューブ(以下、「CSCナノチューブ」という)1をα−メチルナノフタレンに添加し、ステップ101で超音波を照射して分散処理を行う。α−メチルナノフタレンは、CSCナノチューブが再凝集することを抑制する。この分散液に重合単量体としてのコールタールピッチおよびp−キシリレングリコールを加え、さらに触媒としてp−トルエンスルホン酸を添加し、不活性ガス雰囲気下で加温撹拌して縮重合反応を行う。下記化学反応式Iにしたがって反応する。 【0018】 【化1】
【0019】 すると、中間原料製品としてのCSCナノチューブと縮合多環多核芳香族樹脂(COPNA:Condensed Polynuclear Aromatic Resin)との複合体樹脂(以下、「CSCナノチューブ/COPNA複合体樹脂」、或いは単に「複合体樹脂」という)5ができる。 【0020】 ステップ103で、この複合体樹脂5を溶媒(例えばクロロホルム)に溶解した溶液を、ポリアクリロニトリル系炭素繊維6に含浸させる。ステップ104では、この含浸体を若干の張力をかけながら乾燥させた後、ステップ105で濃硫酸に浸漬して表面を炭化させ表面硬化をさせる。これを型枠に挟み込み加熱加圧して成形をした(ステップ106)後、ステップ107で加熱焼成して複合体樹脂を全体的に炭素化する。すると、本発明の炭素繊維強化炭素複合材料が成形品7として完成する。 【0021】 CSCナノチューブ/COPNA複合体樹脂中のCSCナノチューブと縮合多環多核芳香族樹脂との重量比率は3:97〜5:95が好ましい。CSCナノチューブ/COPNA複合体樹脂とこれを含浸させる炭素繊維の重量比率は30:70程度が好ましい。 【0022】 ステップ107における焼成の温度は約1000℃で実施できる 【実施例】 【0023】 以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0024】 (実施例1) α−メチルナフタレン6mlにCSCナノチューブ(GSIクレオス社製)を3重量%になるように添加して、超音波分散処理を3時間行なった。コールタールピッチ25g、p−キシリレングリコール17g、およびα−メチルナフタレン/カップスタック型カーボンナノチューブ混合液に触媒として、p−トルエンスルホン酸2.3gを加え、アルゴン雰囲気下、反応温度140℃で3時間させ縮重合し、CSCナノチューブ/COPNA複合体樹脂を作製した。 【0025】 このCSCナノチューブ/COPNA複合体樹脂4gをクロロホルム10mlに溶解した溶液を、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(東レ株式会社製:M55JB)0.7gに含浸し、150g/cm2の張力を掛けながら、一昼夜乾燥した。この複合体樹脂含浸炭素繊維を濃硫酸に5分間浸し、表面硬化を行った後、一昼夜乾燥させた。これを金型に入れ、200℃、500kgF/cm2で2時間加熱圧縮成型を行なった。金型から取り出し、アルゴン雰囲気下で昇温速度250℃/hで1000℃まで加熱して、炭素化を行い、炭素繊維強化炭素複合材料の成形品が得られた。 【0026】 得られた炭素繊維強化炭素複合材料は、図2に示す断面写真のように、炭素繊維間を縮合多環多核芳香族樹脂が埋め、更に縮合多環多核芳香族樹脂中にカップスタック型カーボンナノチューブが分散した状態で炭素化している。 【0027】 (実施例2) 実施例1と同一に作製したCSCナノチューブ/COPNA複合体樹脂4gをクロロホルム10mlに溶解した溶液を、実施例1で使用したのと同一のポリアクリロニトリル系炭素繊維0.7gに含浸し、150g/cm2の張力を掛けながら、一昼夜自然乾燥した。この複合体樹脂含浸炭素繊維を濃硫酸に5分間浸し、表面硬化を行った後、一昼夜乾燥させた。これを金型に入れ、実施例3と同一条件で加熱圧縮成型、および加熱焼成炭素化を行い、炭素繊維強化炭素複合材料の成形品が得られた。 【0028】 (比較例) カップ型カーボンナノチューブを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維強化炭素複合材料を作製した。 【0029】 (三点曲げ試験) 実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた炭素繊維強化炭素複合材料をそれぞれ、直径20mm、長さ100mmの丸棒に成型して試験片とし、JIS R7222に準じ、JIS B7733に準じた測定装置によって三点曲げ試験を行なった。 【0030】 図3に示すとおり試験片1(直径D=20mm)を水平な支え棒12・13(棒間距離L)上に置き、試験片1の中央に置いた荷重棒11を一定荷重速度2mm/分で鉛直に加え、たわみδを測定した。その測定結果を図3に示す。 【0031】 試験片1が破壊したときの最大荷重Wmaxと、そのときのたわみδから、曲げ強度σ=8WmaxL/πD3、曲げ弾性率E=4WmaxL3/3πD4Lを算出し、結果を表1に示す。 【0032】 【表1】
【0033】 図4および表1から明らかなとおり、カップスタック型カーボンナノチューブを含む炭素繊維強化炭素複合材料は、含まないものに比べ、強度が約3倍になっていることがわかった。 【図面の簡単な説明】 【0034】 【図1】本発明を適用する炭素繊維強化炭素複合材料の製造工程を示すフローチャートである。 【0035】 【図2】本発明を適用するカップスタック型カーボンナノチューブを含有する炭素繊維強化炭素複合材料の断面写真である。 【0036】 【図3】三点曲げ試験を示す図である。 【0037】 【図4】実施例および比較例で作製した炭素繊維強化炭素複合材料の三点曲げ試験の結果を示す図である。 【符号の説明】 【0038】 1は試験片、11は荷重棒、12・13は支え棒である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】504180239 【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
|
| 【出願日】 |
平成17年10月31日(2005.10.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100088306 【弁理士】 【氏名又は名称】小宮 良雄
【識別番号】100126343 【弁理士】 【氏名又は名称】大西 浩之
|
| 【公開番号】 |
特開2007−119318(P2007−119318A) |
| 【公開日】 |
平成19年5月17日(2007.5.17) |
| 【出願番号】 |
特願2005−315973(P2005−315973) |
|