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【発明の名称】 防凍セメント組成物及び防凍用セメント添加剤
【発明者】 【氏名】黒沢 亮平

【氏名】松浦 克治

【要約】 【課題】氷点下の外気温においても、セメントコンクリートが凍結することなく、正常な結晶反応を持続する。

【解決手段】ポルトランドセメント100重量部にポリカルボン酸カルシウム0.25重量部を添加して水セメント比を約26%としたグラウト用セメントミルク、セメントモルタルもしくは水セメント比20%のコンクリートを混練り後に氷点下の気温雰囲気において硬化させたところ、配合水は凍結することがなく、セメントミルクの流動性やコンクリートのスランプについても問題がなかった。また、圧縮強度も防凍添加剤を添加しない場合と同等の結果が得られた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸アルカリ金属またはポリカルボン酸アルカリ土類金属からなる防凍用セメント添加剤。
【請求項2】
請求項1において、アルカリ金属がカリウム、ナトリウム、リチウムのいずれか、または、アルカリ土類金属がカルシウムである防凍用セメント添加剤。
【請求項3】
請求項1または2において、四ホウ酸金属または亜硝酸金属のいずれか、または、両者を含む防凍用セメント添加剤。
【請求項4】
ポリカルボン酸カルシウムのメチル基の分子数がn=10以上である防凍用セメント添加剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの添加剤をセメントに配合した防凍セメント組成物。
【請求項6】
請求項5において、ポリカルボン酸金属の添加量が、セメントに対して0.05wt%以上である防凍セメント組成物。
【請求項7】
請求項5〜6のいずれかにおいて、四ほう酸金属または亜硝酸金属のいずれかまたは両者をセメントに対し2.0wt%以下添加した防凍セメント組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、外気温度が零下の条件下においても凍結しないセメント組成物及び防凍添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントを骨材及び水と混合する場合、外気温度条件が5℃以下では練り混ぜ及び施工が禁止されていた。それは、セメントが硬化する過程で正常な結晶構造が生成されず、結晶が生成される前に配合水が凍結するからであるとされていた。そのため、寒冷地でのコンクリートの冬季における施工は、コンクリート打設後に凍結しないようにするため、5℃以上に周囲を保つために加熱装置を必要とし、冬期間の施工は工事が遅延することが多かった。
【0003】
水は凍結すると体積が増加するため、セメント硬化体中の水分が凍結すると硬化体中に大きな膨張圧が発生し、凍結・融解を繰り返すことにより硬化体の組織を破壊し、セメント硬化体のひび割れや強度低下を引き起こす。このため、セメント混練物に独立気泡を連行させて硬化させ、硬化体中の水分の凍結による膨張圧を緩和し、耐凍結融解性を向上させることが行われており、3〜6%の空気量を硬化体中に連行させるのが適切であるとされており、空気量を増加させるため、セメント配合物に空気連行形混和剤を添加している。
【特許文献1】特開2004−91259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法は、配合水自体の凍結を防止するものでなく、万一、凍結したとしても強度低下を引き起こさないようにするものであり、対処療法でしかなかった。そこで、本発明は、寒冷地での外気温度条件が氷点下であっても、配合水自体が凍結しないようにし、加熱養生装置を使用することなくコンクリートの打設施工を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
セメントにポリカルボン酸アルカリ金属またはポリカルボン酸アルカリ土類金属を配合することによって、セメント混練物は氷点下の雰囲気においても凍結することがなく、かつ、施工性は従来のセメント混練物と変わらず、また、強度も低下することがない。
ポリカルボン酸金属の添加量は、セメントに対して0.05wt%以上で凍結防止効果が発揮される。
【0006】
ポリカルボン酸金属は、具体的には、ポリカルボン酸カルシウム、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリカルボン酸カリウム、及びポリカルボン酸リチウムである。
ポリカルボン酸カルシウムの場合、セメントの配合水を硬化に必要な結晶水領域(水セメント比:w/c=17〜30%)の範囲で施工に必要な流動性を確保することができるポリカルボン酸カルシウム−メチル結合で結晶構造がn=10以上のものを用いることが好ましい。
更に、亜硝酸金属、または、四ほう酸金属のいずれか、もしくは両方を添加することによって0〜−15℃において混練物は凍結せず、施工性が改善される。
亜硝酸金属若しくは四ほう酸金属の好ましい添加量は、セメントに対して2.0wt%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セメント混練物は、氷点下においても凍結することなく、耐凍結融解性に優れており、寒冷地におけるコンクリート工事を円滑に進めることができ、工期を計画通りに完了することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
グラウトの防凍性試験(試験例1〜5)
ポリカルボン酸金属の防凍添加剤としての効果を確認するため、ポリカルボン酸カルシウムの添加量を変えてグラウト用セメントミルクの混練物を調整し、ポリカルボン酸金属が耐凍結性をセメント配合物に与える添加剤であることを確認した。普通ポルトランドセメント100重量部に対してポリカルボン酸カルシウムを0.03〜2.50重量部添加し、水セメント比(w/c)26%とし、混練物を型枠内に打設し、打設後24時間、−3℃〜−15℃の氷点下の気温範囲の雰囲気で硬化させた。本発明の防凍添加剤の配合量と凍結防止効果についての試験結果を表1に示す。
【0009】
ポリカルボン酸カルシウムの添加量がセメントに対して0.03wt%では混練物は凍結したが、セメントに対して0.05wt%以上添加すると凍結することがなかった。また、グラウトとしての流動性、初期強度及び4週強度についても問題がなかった。その他の金属であるリチウム、ナトリウム、カリウムのポリカルボン酸塩についても防凍効果が得られた。
以上のことから、ポリカルボン酸金属をセメントに対して0.05wt%以上添加することによって、セメント混練物に防凍性が付与されることが確認された。
【0010】
【表1】


【0011】
無収縮モルタルの防凍性試験(試験例6〜7)
表2に示す配合の無収縮モルタルを水セメント比(w/c)28%、防凍添加剤のポリカルボン酸カルシウムをセメントに対して0.25wt%添加して混練りし、打設後24時間は、−1℃〜−10℃の氷点下の気温雰囲気とし、4週強度を測定するまでは、2℃〜−13℃の気温雰囲気で硬化させたところ、全く凍結することがなかった。流動性及び圧縮強度についても、問題がなかった。
【0012】
【表2】


【0013】
コンクリートの防凍性試験(試験例8〜9)
表3に示す配合で水セメント比(w/c)20%、防凍添加剤のポリカルボン酸カルシウムを早強ポルトランドセメントに対して0.25wt%、亜硝酸ナトリウム1wt%を添加して混練りし、打設後24時間は−5℃の雰囲気、その後、4週強度測定までは1℃〜−11℃の気温雰囲気で硬化させたところ、全く凍結することがなく、スランプ、及び空気量ともに通常のコンクリートとほぼ同じであり、圧縮強度も通常の早強ポルトランドセメントの通常の配合と同等であった。
【0014】
【表3】


【0015】
セメントミルクの流動性試験(試験例10〜12)
表1の結果から、ポリカルボン酸金属を添加するとグラウトの流動性が増大する傾向を示し、先流れ現象を起こして充填性が悪くなる恐れがあるので、適切な粘性を有するように、グラウト用セメントミルクの流動性を改善する目的で、亜硝酸ナトリウムまたは四ほう酸ナトリウムを添加してその効果を試験した。
普通ポルトランドセメント100重量部に防凍添加剤のポリカルボン酸カルシウムをセメントに対して0.2wt%添加し、水セメント比(w/c)26%のセメントミルクを調製した。このセメントミルクに、亜硝酸ナトリウムまたは四ほう酸ナトリウムをそれぞれ0.01から3.0wt%添加して混練りし、型枠内に打設し、雰囲気温度を−3℃〜−15℃の状態とし、防凍性、流動性、凍結温度及び圧縮強度を測定した。その結果を表4に示す。流動性改良剤を添加しない試験例10をコントロールとした。
【0016】
セメントミルクの流動性は、流動性改良剤を添加しない試験例10のJ14ロートによる流動性の測定結果は、4.3秒であった。試験例11に示すように、亜硝酸ナトリウムの添加量を増加させるにつれて流動性は低下するが、添加量が2.0wt%を超えて3.0wt%では、J14ロートの測定結果が8.1秒となり、流動性の低下が著しく、グラウトとしての施工性低下することが判明した。
四ほう酸ナトリウムを添加した試験例12においても、試験例11と同様に、添加量が2.0wt%を超えて3.0wt%で流動性が低下することが判明した。
また、凍結温度については流動性改良剤を添加してもしなくても大きな変動はなく、−18℃〜−21℃の範囲であった。外気温度−3℃〜−15℃で硬化させたセメントミルクの圧縮強度は、流動性改良剤の添加量が2.0wt%までは大きな低下を示さなかったが、この添加量を超えると、急激な強度低下を示した。
以上の結果から、亜硝酸ナトリウム、または、四ほう酸ナトリウムをセメントに対して2.0wt%以下を添加することによって、防凍性や圧縮強度の特性に悪影響を与えることなくセメントミルクの流動性を改善することが認められた。
【0017】
【表4】


【0018】
金属の影響試験(試験例13〜16)
ポリカルボン酸金属の金属が防凍性や流動性に対して与える影響を見るために表5に示すように、普通ポルトランドセメント100重量部、水セメント比20%のグラウト用セメントミルクの流動性及び圧縮強度を測定した。
その結果を表5に示す。金属がナトリウムやリチウム及びカリウムのポリカルボン酸金属を防凍添加剤として添加すると、カルシウムの場合に比較して粘度が高く、グラウトの流動性の指標であるJ14ロートによる測定結果の値(秒)が大きくなり、施工性に劣ることが判明した。また、圧縮強度においても、ポリカルボン酸カルシウムを添加した場合が格段に優れており、総合的にみて防凍添加剤としては、ポリカルボン酸カルシウムが実用的に優れていることが認められた。
【0019】
【表5】


【0020】
重合度の影響試験(試験例17〜21)
ポリカルボン酸カルシウムのメチル基の分子数を変えて防凍性及び流動性に対する影響を調べた。
普通ポルトランドセメント100重量部、水セメント比26%のグラウト用セメントミルクにメチル基の分子数(n)を5から100のポリカルボン酸カルシウム0.05重量部添加し、流動性をJ14ロートによって測定した。その結果を表6に示す。メチル基の分子数が5の試験例17ではセメントミルクの粘度が高く、J14ロートによる流動性は38.1秒であってグラウトとして実用的に使用は難しく、分子数が10では8.7秒であり、20秒以下の実用的な流動性が得られた。メチル基の分子数20以上でも同様に適度な流動性が得られた。
【0021】
【表6】


【出願人】 【識別番号】000170772
【氏名又は名称】黒沢建設株式会社
【出願日】 平成17年10月25日(2005.10.25)
【代理人】 【識別番号】100108327
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和


【公開番号】 特開2007−119268(P2007−119268A)
【公開日】 平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願番号】 特願2005−310168(P2005−310168)