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【発明の名称】 電気二重層キャパシタ電極用炭素材の原料油組成物
【発明者】 【氏名】田野 保

【氏名】大山 隆

【氏名】藤永 逸平

【氏名】尾野 秀樹

【氏名】藤井 政喜

【要約】 【課題】合成ピッチを製造することなく、高い静電容量を再現性良く発現しえる電気二重層キャパシタの電極用炭素材を提供し得る組成を有する原料油組成物を見いだす。

【解決手段】電気二重層キャパシタ電極用の炭素材を製造するための原料油組成物であって、原料油組成物を薄層クロマトグラフィー法により展開して得られる飽和成分、アロマ成分、レジン成分及びアスファルテン成分のうち、飽和成分が25質量%以上であり、アスファルテン成分が16質量%以下であり、原料油組成物の平均分子量が960以下であり、かつ、原料油組成物の芳香族炭素分率(fa)が0.22〜0.72であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気二重層キャパシタ電極用の炭素材を製造するための原料油組成物であって、原料油組成物を薄層クロマトグラフィー法により展開して得られる飽和成分、アロマ成分、レジン成分及びアスファルテン成分のうち、飽和成分が25質量%以上であり、アスファルテン成分が16質量%以下であり、原料油組成物の平均分子量が960以下であり、かつ、原料油組成物の芳香族炭素分率(fa)が0.22〜0.72であることを特徴とする原料油組成物。
【請求項2】
前記アロマ成分が、35質量%以上である請求項1に記載の原料油組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の原料油組成物を炭化処理して得られる電気二重層キャパシタの電極用炭素材となる原料炭組成物。
【請求項4】
前記原料炭組成物は、黒鉛類似の微結晶炭素を有することを特徴とする請求項3に記載の原料炭組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の原料炭組成物を賦活処理した電気二重層キャパシタの電極用炭素材。
【請求項6】
前記賦活処理は、アルカリ金属化合物を用いた賦活処理であることを特徴とする請求項5に記載の電気二重層キャパシタの電極用炭素材。
【請求項7】
前記賦活処理は、500〜1000℃の温度範囲にて行われることを特徴とする請求項5または6に記載の電気二重層キャパシタの電極用炭素材。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の電極用炭素材を含む電極を備えることを特徴とする電気二重層キャパシタ。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ(以下、EDLCと称す)電極用の炭素材を製造するための原料油組成物に関し、特に、高い静電容量を再現性良く発現し得る炭素材を製造するための原料油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、EDLC電極用炭素材の製造方法としては、原料炭(ピッチ)を直接または炭化(乾留)処理後にアルカリ賦活する方法が挙げられる。
【0003】
原料ピッチを直接賦活化する方法では、静電容量が20F/cc台のEDLCしか得られないという問題がある。これに対して、乾留後に賦活化する方法では、高い静電容量が得られることが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2002−25867)には、多層グラファイト微結晶が発達した易黒鉛化炭を700〜850℃で乾留し、か焼炭を得、得られたか焼炭を苛性アルカリと共に800〜900℃で処理し、次いで残存するアルカリを除去することで、黒鉛類似の微結晶炭素を有し、比表面積が270m2/g以下で、かつその微結晶炭素の層間距離d002が0.360〜0.380である非多孔性炭素の製造方法が開示され(請求項8)、この方法で得られる炭素電極を用いたEDLCでは、29F/cc以上の高い静電容量が得られている。具体的には、石油系ニードルコークスや不融化処理したピッチを原料として650〜850℃で窒素気流中で2〜4時間熱処理(か焼)し、賦活化処理した炭素材料を用いている。
【0005】
また、メソフェーズピッチを不融化処理後、炭素化処理し、アルカリ賦活によりEDLC電極用活性炭を製造するため、塊状メソフェーズピッチを粉砕、不融化処理、炭化処理、アルカリ賦活する方法(特許文献2(特開2001−52972))、また、軟化点が150〜350℃、H/Cが0.5〜0.9,光学異方性含有率が50%以上である原料ピッチを熱処理(400〜800℃)し、平均粒径5〜90μmに粉砕した後、賦活化(400〜900℃)する方法(特許文献3(特開2002−93667))が提案されている。これらの方法では、30F/cc以上の高い静電容量を有する電気二重層キャパシタの電極用炭素材料が製造される。但し、これらの方法では、静電容量の再現性が低く、安定的に高容量を発現できないという欠点があり、これを解決するために、特許文献4(特開2004−182504)では、X線回折によって測定されるc軸方向の結晶子厚さLc(002)が5.0nm以上のピッチを炭素化処理し、次いで賦活化する方法が提案されている。このような特性を有する原料ピッチは、合成ピッチが好ましく、少なくとも1個のアルキル置換基を有する縮合多環炭化水素を原料としてフッ化水素及び三フッ化ホウ素の存在下、100〜400℃で重合することで得られ、また、ナフタレンピッチやアントラセンピッチ等のアルキル置換基を有さない安価なピッチに前記合成ピッチを5質量%以上添加することが提案されている。
【0006】
また、特許文献5(特開2003−51430)には、黒鉛類似の層状結晶構造を有する微結晶炭素を含む原料炭を600〜900℃に加熱し、その後賦活処理する方法が開示され、その際使用する原料炭として、X線回折により求められる層間距離d002が0.343nm以下であり、かつ、X線回折により求められる微結晶炭素の結晶子の大きさLc002が3.0nmである原料炭組成物を使用することで、30F/cc以上の静電容量を有するEDLCが得られている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−25867(請求項8)
【特許文献2】特開2001−52972
【特許文献3】特開2002−93667
【特許文献4】特開2004−182504
【特許文献5】特開2003−51430
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来法では、高い静電容量が得られるものの、原料ピッチのロット間格差により、再現性良く所望の特性、特に高い静電容量を再現性良く発現できないという問題がある。特許文献4では、再現性が確保されるものの、合成ピッチを製造する必要があり、コスト的に不利である。
【0009】
また、前記特許文献5には、「硫黄や金属等の不純物を含まず、かつ、適度な芳香族性を有する重質炭化水素を適切な条件でコーキングすることによって得ることができる。」との記載がある([0054])。さらに、『「適度な芳香族性を有する重質炭化水素」は、例えば、石油系重質油の流動接触分解装置のボトム油や減圧蒸留装置の残さ油、芳香族化合物のタールのようなものが挙げられる。例えば、原料炭の石油コークスはこのような重質炭化水素を用い、ディレードコーカーで加圧下、熱処理することで得られる。』との記載があるが、具体的な組成については何ら検討されていないのが実情である。
【0010】
本発明の目的は、合成ピッチを製造することなく、高い静電容量を再現性良く発現しえる電気二重層キャパシタの電極用炭素材を提供し得る組成を有する原料油組成物を見いだすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一般に、原料炭を製造するための原料油組成物は、飽和成分、アロマ成分、レジン成分及びアスファルテン成分の4成分を主に含むものである。本発明者らは、この原料油組成物の各成分について、電気二重層キャパシタの電極用炭素材を提供するにあたり、最適な組成範囲が存在することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、電気二重層キャパシタ電極用の炭素材を製造するための原料油組成物であって、原料油組成物を薄層クロマトグラフィー法により展開して得られる飽和成分、アロマ成分、レジン成分及びアスファルテン成分のうち、飽和成分が25質量%以上であり、アスファルテン成分が16質量%以下であり、原料油組成物の平均分子量が960以下であり、かつ、原料油組成物の芳香族炭素分率(fa)が0.22〜0.72であることを特徴とする原料油組成物に関する。
【0013】
又、本発明はこの原料油組成物から得られる原料炭組成物、さらに、該原料炭組成物を賦活して得られる電気二重層キャパシタの電極用炭素材、該炭素材を含む電気二重層キャパシタに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、出発原料油組成を適切に調整することで、高い静電容量を再現性良く発現するEDLC電極用炭素材が、合成ピッチを製造することなく安定的に得られ、30F/cc以上の高い静電容量を有するEDLCの提供が可能となる。
【0015】
特に本発明では、出発段階の原料油組成をEDLC電極用炭素材として最適化できるため、その組成の調整が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の原料油組成物とは、該原料油組成物を薄層クロマトグラフィー法により展開して得られる飽和成分、アロマ成分、レジン成分及びアスファルテン成分の合計100質量%うち、飽和成分が25質量%以上であり、アスファルテン成分が16質量%以下であり、原料油組成物の平均分子量が960以下であり、かつ、原料油組成物の芳香族炭素分率(fa)が0.22〜0.72であることを特徴とする原料油組成物である。
【0017】
飽和成分は、好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは35質量%以上である。又、アスファルテン成分はより少ない方が好ましく、好ましくは12質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である。さらに、faは0.25以上が好ましく、さらに0.30以上がより好ましい。そして、平均分子量は700以下が好ましく、600以下がより好ましい。飽和成分が25質量%より少なくなると、相対的にアロマ成分が多くなる傾向があり、アロマ成分が多くなりすぎると芳香族炭素分率(fa)が上記の上限値を超える場合がある。又、レジン成分が多くなると分子量が大きくなり、上記規定の平均分子量を超える場合がある。
【0018】
上記条件を満たすため、アロマ成分は35質量%以上が好ましく、40質量%以上が好ましい。又、アロマ成分は70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。
【0019】
原料油としては、石油系重質油の流動接触分解装置のボトム油や減圧蒸留装置の残渣油(VR)、芳香族化合物のタールのようなものが挙げられる。本発明では、これらを適宜混合することにより、本発明に規定の組成の原料油組成物を調製する。例えば、適宜組み合わせた後、その一部をサンプリングして、本発明に規定の条件を満たした原料油については、次の炭化処理工程に移行させ、条件を満たさない原料油については再調製して、本発明に規定の組成を満たしたもののみを次の炭化処理工程に供するようにすればよい。
【0020】
なお、原料油組成物には、硫黄や金属等の不純物を極力含まないことが好ましいことはいうまでもない。
【0021】
次に、本発明における各成分の組成比、平均分子量及びfa値の測定方法について説明する。
【0022】
[組成比分析]
本発明において、原料油の各成分の組成比は、TLC−FID法により測定したものである。TLC−FID法とは、薄層クロマトグラフィー(TLC)により試料を飽和成分、アロマ成分、レジン成分及びアスファルテン成分に4分割し、その後、水素炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector: FID)にて各成分を検出し、各成分量の全成分量に対する百分率をもって組成成分値としたものである。測定には、ダイアヤトロン社(現三菱化学ヤトロン社)製の「イアトロスキャンMK−5」(商品名)を用いた。
【0023】
まず、試料0.2g±0.01gをトルエン10mlに溶解して、試料溶液を調製する。予め空焼きしたシリカゲル棒状薄層(クロマロッド)の下端(ロッドホルダーの0.5cmの位置)にマイクロシリンジを用いて1μlスポットし、ドライヤー等により乾燥させる。次に、このクロマロッド10本を1セットとして、展開溶媒にて試料の展開を行う。展開溶媒としては、第1展開槽にヘキサン、第2展開槽にヘキサン/トルエン(20:80)、第3展開槽にジクロロメタン/メタノール(95/5)を使用した。展開後のクロマロッドをイアトロスキャンにセットし、各成分量を測定する。
【0024】
[平均分子量]
原料油の平均分子量は、蒸気圧平衡法により測定したものである。蒸気圧平衡法の概要は次の通りである。所定の温度に保持した溶媒の飽和蒸気中に2本のサーミスタを置き、一方に試料溶液を、他方に溶媒単体を滴下する。このとき、試料溶液は溶媒単体より蒸気圧が低いため、サーミスタ周辺雰囲気の蒸気が試料溶液上に凝縮する。このとき放出される潜熱により温度が上昇するので、この温度差をサーミスタの電圧差(ΔV)として求め、そして予め分子量既知の標準試料を用いて、モル濃度と電圧差(ΔV)の関係を求めた検量線より、試料溶液中の試料モル濃度を求め、平均分子量を算出する。本発明では、溶媒としてシクロヘキサンを用い、標準試料としてn−セタン(分子量:226.4)を用いた。
【0025】
[芳香族炭素分率(fa)]
芳香族炭素分率(fa)は、Knight法により求めたものである。Knight法では、炭素の分布を13C−NMR法による芳香族炭素のスペクトルとして3つの成分(A1,A2,A3)に分割する。ここで、A1は芳香族環内部炭素数、置換されている芳香族炭素と置換していない芳香族炭素の半分(13C−NMRの約40〜60ppmのピークに相当)、A2は置換していない残りの半分の芳香族炭素(13C−NMRの約60〜80ppmのピークに相当)、A3は脂肪族炭素数(13C−NMRの約130〜190ppmのピークに相当)であり、これらから、faは
fa=(A1+A2)/(A1+A2+A3
により求められる。13C−NMR法が、ピッチ類の化学構造パラメータの最も基本的な量であるfaを定量的に求められる最良の方法であることは、文献(「ピッチのキャラクタリゼーション II. 化学構造」横野、真田、(炭素、1981(No.105)、p73-81))に示されている。
【0026】
このようにして特定組成に調整された原料油組成物は、その後、公知の方法により、原料炭調製、賦活処理を経てEDLC電極用炭素材を調製する。
【0027】
<炭化処理>
上記所定の組成を有する原料油組成物は、従来公知の方法で炭化処理する。例えば、オートクレーブで、加圧下(例えば1MPa)、400〜600℃程度の温度で、数時間コーキングさせることにより、原料炭組成物が得られる。本発明の原料油組成物は易黒鉛化性を有しており、コーキング過程において、熱分解反応により生成した縮合多環芳香族が積層して黒鉛類似の微結晶炭素を含有する原料炭となる。特に本発明では、この黒鉛類似の微結晶炭素が原料炭組成物に含まれることが好ましい。
【0028】
<賦活処理>
EDLC電極用炭素材を得るためには、上記の原料炭組成物を賦活処理することにより得られる。この賦活処理は、従来公知の方法が適用でき、例えば、薬剤による賦活反応、ガスによる賦活反応が挙げられる。薬剤による賦活反応がより好ましく、特にアルカリ金属化合物を用いた賦活反応が好ましい。このようなアルカリ金属化合物を用いた賦活処理に依れば、アルカリ金属が黒鉛結晶の層間に侵入して反応することにより、得られる炭素材の比表面積がより向上する。
【0029】
アルカリ金属化合物としては、各種炭酸塩や水酸化物を用いることができ、具体的には炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムが挙げられる。中でも水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましく、特に水酸化カリウムが好ましい。また、これらのアルカリ金属化合物を2種以上併用(例えば、水酸化カリウムと水酸化ナトリウムとの併用)しても良い。
【0030】
賦活方法は、通常、アルカリ金属化合物等の賦活剤と原料炭組成物を混合し、加熱することにより行われる。原料炭組成物とアルカリ金属水酸化物等の賦活剤との混合割合は特に限定されるものではないが、通常、両者の質量比(原料炭組成物:賦活剤)が1:0.5〜1:10の範囲が好ましく、1:1〜1:5の範囲がより好ましい。一般に、アルカリ金属化合物等の賦活化剤が少なすぎると、賦活反応が十分に進行せず、必要な表面積を得ることができない場合があり、他方、賦活剤が多くなればなるほど比表面積は増大するものの、賦活におけるコストが増大すると共に賦活収率が低下し、さらに得られる炭素材の嵩密度が低下して単位体積あたりの静電容量が低下する傾向にある。
【0031】
また、賦活処理の際の加熱温度は、特に限定されないが、その下限は、通常500℃、好ましくは600℃であり、上限は通常1000℃、好ましくは900℃、特に好ましくは800℃である。
【0032】
本発明では、このように賦活処理された後、通常、アルカリ洗浄、酸洗浄、水洗、乾燥、粉砕工程を経てEDLC電極用炭素材となる。賦活剤として、アルカリ金属化合物を使用した場合、炭素材中に残存するアルカリ金属の量については、EDLCとした場合に悪影響を及ぼす可能性のある水準よりも低い量(好ましくは1000ppm以下)であれば特に限定されないが、通常、例えば、洗浄排水のpHが7〜8程度になるように洗浄すると共に、できるだけアルカリ金属分を除去するように洗浄することが望ましい。また、粉砕工程は、公知の方法により行われ、通常、平均粒径0.5〜50μm、好ましくは1〜20μm程度の微粉体とされることが望ましい。
【0033】
次に、本発明のEDLCについて説明する。
【0034】
本発明のEDLCは、前記のように調製された電極用炭素材を含む電極を備えることを特徴とするものである。
【0035】
該電極は、例えば、電極用炭素材と結着剤、さらに好ましくは導電剤を加えて構成され、またさらに集電体と一体化した電極であっても良い。
【0036】
ここで使用する結着剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィン/ビニルエーテル共重合体架橋ポリマー等のフッ素化ポリマー、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等のビニル系ポリマー、ポリアクリル酸等が挙げられる。電極中における結着剤の含有量は特に限定されないが、電極用炭素材と結着剤の合計量に対して、通常0.1〜30質量%程度の範囲内で適宜選択される。
【0037】
導電剤としては、カーボンブラック、粉末グラファイト、酸化チタン、酸化ルテニウム等の粉末が用いられる。電極中における導電剤の配合量は、配合目的に応じて適宜選択されるが、電極用炭素材、結着剤及び導電剤の合計量に対して、通常1〜50質量%、好ましくは2〜30質量%程度の範囲内で適宜選択される。
【0038】
なお、電極用炭素材、結着剤、導電材を混合する方法としては、公知の方法が適宜適用され、例えば、結着剤を溶解する性質を有する溶媒を上記成分に加えてスラリー状としたものを集電体上に均一に塗布する方法や、あるいは溶媒を加えないで上記成分を混練した後に常温または加熱下で加圧成形する方法が採用される。
【0039】
また、集電体としては、公知の材質および形状ものを使用することができ、例えばアルミニウム、チタン、タンタル、ニッケル等の金属、あるいはステンレス等の合金を用いることができる。
【0040】
本発明のEDLCの単位セルは、一般に上記電極を正極及び負極として一対用い、セパレータ(ポリプロピレン繊維不織布、ガラス繊維不織布、合成セルロース紙等)を介して対向させ、電解液中に浸漬することによって形成される。
【0041】
電解液としては、公知の水系電解液、有機系電解液を使用することができるが、有機系電解液を用いることがより好ましい。このような有機系電解液としては、電気化学の電解液の溶媒として使用されているものを用いることができ、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、スルホラン誘導体、3−メチルスルホラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、グルタロニトリル、バレロニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、メチルフォルメート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等を挙げることができる。なお、これらの電解液を混合して使用してもよい。
【0042】
また、有機電解液中の支持電解質としては、特に限定されないが、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類等の各種のものが使用でき、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩、環状4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が挙げられ、(C254NBF4、(C253(CH3)NBF4、(C254PBF4、(C253(CH3)PBF4等が好ましいものとして挙げられる。電解液中のこれらの塩の濃度は、通常0.1〜5mol/l、好ましくは0.5〜3mol/l程度の範囲内で適宜選択される。
【0043】
EDLCのより具体的な構成は特に限定されないが、例えば、厚さ10〜500μmの薄いシート状またはディスク状の一対の電極(正極と負極)の間にセパレータを介して金属ケースに収容したコイン型、一対の電極をセパレータを介して捲回してなる捲回型、セパレータを介して多数の電極群を積み重ねた積層型等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
(i)原料炭組成物の調製
下記表1に示す組成の原料油をオートクレーブで、1MPa下、550℃、2時間 コーキングさせることにより原料炭組成物を得た。
【0046】
(ii)炭素材の製造
上記の原料炭組成物100質量部に対して水酸化カリウムが200重量部となるように混合し、窒素ガス雰囲気中、750℃で1時間賦活反応を進行せしめ、反応後に水洗及び酸洗浄(HClを使用)を繰り返し、炭素材中に残存する金属カリウムを除去し、乾燥してEDLC電極用炭素材を得た。
【0047】
(iii)電極の作製
平均粒径20μmに粉砕した上記炭素材80質量部にカーボンブラックを10質量部、ポリテトラフルオロエチレン粉末を10質量部加え、乳鉢でペースト状となるまで混錬した。次いで、得られたペーストを180kPaのローラープレスで圧延して、厚さ200μmの電極シートを作製した。
【0048】
(iv)セルの組立て
上記電極シートから直径16mmの円盤状ディスクを2枚打ち抜き、120℃、13.3Pa(0.1Torr)で2時間真空乾燥した後、露点−85℃の窒素雰囲気下のグローブボックス中にて、有機電解液(トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液、濃度:1モル/リットル)を真空含浸せしめた。次に、2枚の電極を各々正極、負極とし、両極間にセルロース系セパレータ(ニッポン高度紙工業社製、商品名:TF40−50、厚さ:50μm)、両端にはアルミ箔の集電体を取り付け、宝泉社製の2極式セルに組み込んで電気二重層キャパシタ(コイン型セル)を作製した。
【0049】
(v)静電容量の測定
上記コイン型セルに1F当たり2mAの定電流で2.7Vまで充電した。充電終了後30分2.7Vに保持した後、1mAの定電流放電を行った。そして、放電カーブにおいて、充電電圧の80%をV1、40%をV2、80%から40%まで電圧が降下するまでにかかる時間をΔT、放電電流値をIとしたとき、以下の式:
静電容量C[F]=IΔT/(V1−V2)
に従って静電容量C[F]を算出し、これを電極に含まれる活性炭の質量(正極、負極の合計)で割ると、質量あたり静電容量[F/g]が算出される。このF/gに、電極密度[g/cc]を掛けてF/ccを算出した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】


【0051】
本発明の規定を全て満たす実施例の原料油組成物では、いずれも30F/cc以上の高い静電容量が得られている。これに対し、各比較例では20F/cc前後の静電容量しか得られなかった。比較例1では、飽和成分が本発明の規定を満たさず、また、faも高くなっている。比較例2では、組成比及び平均分子量は本発明の規定を満たすものの、faが本発明の範囲外である。比較例3では、fa、アスファルテン成分及び分子量は本発明の規定を満たしているが、飽和成分が既定値よりも低い。比較例4では、アスファルテン成分が本発明の規定よりも多く、また、分子量も規定の範囲外である。このように、いずれか1つの条件でも満たさない場合には、30F/cc以上の高静電容量のキャパシタは得られないことが解る。
【出願人】 【識別番号】000004444
【氏名又は名称】新日本石油株式会社
【出願日】 平成17年6月21日(2005.6.21)
【代理人】 【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫

【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸

【識別番号】100120628
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 慎一

【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭


【公開番号】 特開2007−1784(P2007−1784A)
【公開日】 平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願番号】 特願2005−180637(P2005−180637)