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【発明の名称】 クレーンの免震構造
【発明者】 【氏名】岡野 茂

【要約】 【課題】簡単な構造で、クレーンの安定性を高めつつ地震の揺れを効率良く吸収し得、ロッキング現象の発生に伴う脱輪、並びに走行レールのスパンの広がりによる脚部の股裂きを伴う脱輪や脚部の座屈等を防止し得るクレーンの免震構造を提供する。

【解決手段】走行レール14を少なくとも片側二本ずつのレールとし、該各レール上に走行車輪ユニット16を介して脚部5を立設し、片側のレール上に配置された走行車輪ユニット16だけでも自立可能とすると共に、走行車輪ユニット16と脚部5との連結部に変位吸収手段17を介装する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レール上を走行可能な脚部を有するクレーンの免震構造であって、
走行レールを少なくとも片側二本ずつのレールとし、該各レール上に走行車輪ユニットを介して脚部を立設し、片側のレール上に配置された走行車輪ユニットだけでも自立可能とすると共に、走行車輪ユニットと脚部との連結部に変位吸収手段を介装したことを特徴とするクレーンの免震構造。
【請求項2】
変位吸収手段を、エネルギー吸収効率が高く且つ反発力が小さい弾性体で構成した請求項1記載のクレーンの免震構造。
【請求項3】
変位吸収手段を積層ゴムで構成した請求項1記載のクレーンの免震構造。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、走行レール上を走行可能なコンテナクレーンやジブクレーン等のクレーンの免震構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は一般的なコンテナクレーンの一例を示す概略図であって、図中、1は岸壁2に繋留されたコンテナ船であり、該コンテナ船1と岸壁2との間でコンテナクレーン3により吊荷としてのコンテナ4が荷役されるようになっている。
【0003】
図示するコンテナクレーン3においては、岸壁2に敷設された走行レール14上を転動する車輪15によって走行可能な脚部5の上方に、陸側に位置するガーダ6aと、海側に張り出すブーム6bとが設けられ、該ガーダ6aとブーム6bに沿ってトロリー7が、機械室11内の横行ドラム13によるロープ牽引方式により横行可能に設置されている。
【0004】
前記トロリー7には、コンテナ4を把持するための吊具としてのスプレッダ8がヘッドブロック9を介して巻上ロープ10により懸吊されており、該巻上ロープ10を機械室11内の巻上ドラム12により巻き上げたり巻き下げたりすることで前記スプレッダ8が昇降されるようになっている。
【0005】
而して、例えば、コンテナクレーン3を用いてコンテナ船1上からコンテナ4を荷揚げする場合には、コンテナ船1上に横行させたトロリー7からスプレッダ8を吊り降ろしてコンテナ4を把持せしめ、次いで、スプレッダ8を巻き上げてトロリー7を岸壁2上の吊り降ろし位置まで横行させ、その後、スプレッダ8を巻き下げてコンテナ4を岸壁2上の所定位置に吊り降ろすという一連の操作が行われることになる。
【0006】
ところで、近年、日本各地において大きな地震が発生しており、なかでも、平成7年1月に発生した兵庫県南部地震の際には、工場や港湾施設において、クレーンの大きな被害が発生しており、又、近未来において、東海地震や関東地震の発生が心配されていることから、クレーンの耐震性を向上することが研究され、さまざまな制振構造や免震構造が開発されている。
【0007】
尚、クレーンの制振構造の一例を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特許第3565294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5に示されるようなコンテナクレーン3やその他のジブクレーン等のように背が高く且つ重心の高いクレーンの場合には、大きな地震が起こると、特に、クレーンの走行方向と直角な横行方向において、クレーンの脚部5が四股を踏むように左右交互に浮き上がる、いわゆるロッキング現象が発生し、浮き上がった側の脚部5が着地する際、元の位置に戻らずに少し内側にずれ、その結果、車輪15が走行レール14から離脱し、大掛かりな復旧作業が必要となることがあった。
【0009】
又、大地震発生時には、岸壁2におけるケーソン(図示せず)の移動に伴う走行レール14のスパンの広がりによる強制変位が発生し、クレーンの脚部5の股裂きを伴う脱輪や脚部5の座屈等が発生する虞もあった。
【0010】
しかしながら、既に開発されているクレーンの制振構造や免震構造の場合、動力や複雑な制御装置を必要とするものが多く、簡単な構造で前述の如き不具合を解消できるものの開発が望まれていた。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡単な構造で、クレーンの安定性を高めつつ地震の揺れを効率良く吸収し得、ロッキング現象の発生に伴う脱輪、並びに走行レールのスパンの広がりによる脚部の股裂きを伴う脱輪や脚部の座屈等を防止し得るクレーンの免震構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、走行レール上を走行可能な脚部を有するクレーンの免震構造であって、
走行レールを少なくとも片側二本ずつのレールとし、該各レール上に走行車輪ユニットを介して脚部を立設し、片側のレール上に配置された走行車輪ユニットだけでも自立可能とすると共に、走行車輪ユニットと脚部との連結部に変位吸収手段を介装したことを特徴とするクレーンの免震構造にかかるものである。
【0013】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0014】
前述の如く構成すると、大きな地震が起こったとしても、少なくとも片側二本ずつの走行レール上に走行車輪ユニットを介して脚部が立設され、片側のレール上に配置された走行車輪ユニットだけでも自立可能となっていることから、クレーンの安定性が高まっていることに加え、変位吸収手段によって地震の揺れが効率良く吸収されるため、クレーンの走行方向と直角な横行方向において、クレーンの脚部が四股を踏むように左右交互に浮き上がる、いわゆるロッキング現象が発生しにくくなり、走行車輪ユニットが走行レールから離脱することが回避される一方、大地震発生時に、岸壁におけるケーソンの移動に伴う走行レールのスパンの広がりによる強制変位が発生したとしても、クレーンの脚部の股裂きを伴う脱輪や脚部の座屈等が発生する心配もなくなる。
【0015】
前記クレーンの免震構造においては、変位吸収手段を、エネルギー吸収効率が高く且つ反発力が小さい弾性体で構成することが望ましい。
【0016】
又、前記クレーンの免震構造においては、変位吸収手段を積層ゴムで構成することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のクレーンの免震構造によれば、簡単な構造で、クレーンの安定性を高めつつ地震の揺れを効率良く吸収し得、ロッキング現象の発生に伴う脱輪、並びに走行レールのスパンの広がりによる脚部の股裂きを伴う脱輪や脚部の座屈等を防止し得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図5と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図5に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1に示す如く、走行レール14を少なくとも片側二本ずつのレールとし、該各レール上に走行車輪ユニット16を介して脚部5を立設し、片側のレール上に配置された走行車輪ユニット16だけでも自立可能とすると共に、走行車輪ユニット16と脚部5との連結部に変位吸収手段17を介装した点にある。
【0020】
本図示例の場合、前記走行車輪ユニット16は、脚部5を構成する四本の脚柱18の下端にそれぞれ、中ロッカービーム19を連結し、該中ロッカービーム19の走行レール14長手方向両端部にそれぞれ、走行レール14上方に配設される小ロッカービーム20を枢着し、該小ロッカービーム20にそれぞれ、前記走行レール14上を走行可能な二個ずつの車輪21を配設してなる構成を有している。尚、前記走行車輪ユニット16には、車輪21を回転駆動するためのモータ等の駆動装置22を装備してある。
【0021】
又、前記変位吸収手段17は、例えば、チェラストと称されるウレタンエラストマーの発泡体等のように、エネルギー吸収効率が高く且つ反発力が小さい弾性体23で構成することが望ましく、本図示例の場合、前記走行車輪ユニット16の中ロッカービーム19の上面に凹設した円形の凹溝24内に、ドーナツ形状とした前記弾性体23を充填し、該ドーナツ形状とした弾性体23の中心孔部25に、前記脚柱18下端に連結された脚座部材26を嵌入するようにしてある。尚、前記弾性体23の代わりに、前記円形の凹溝24内の円周方向複数箇所(例えば、四箇所)に、その半径方向へ延びる絞り付き油圧シリンダを配設して脚座部材26を支承することにより、前記変位吸収手段17を構成することも可能である。
【0022】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0023】
前述の如く構成すると、大きな地震が起こったとしても、少なくとも片側二本ずつの走行レール14上に走行車輪ユニット16を介して脚部5が立設され、片側のレール上に配置された走行車輪ユニット16だけでも自立可能となっていることから、コンテナクレーン3の安定性が高まっていることに加え、前記走行車輪ユニット16の中ロッカービーム19の凹溝24内に脚座部材26を外周から支承するように充填された変位吸収手段17の弾性体23によって、地震の揺れが効率良く吸収されるため、コンテナクレーン3の走行方向と直角な横行方向において、コンテナクレーン3の脚部5が四股を踏むように左右交互に浮き上がる、いわゆるロッキング現象が発生しにくくなり、走行車輪ユニット16の車輪21が走行レール14から離脱することが回避される一方、大地震発生時に、岸壁2におけるケーソン(図示せず)の移動に伴う走行レール14のスパンの広がりによる強制変位が発生したとしても、コンテナクレーン3の脚部5の股裂きを伴う脱輪や脚部5の座屈等が発生する心配もなくなる。
【0024】
こうして、簡単な構造で、コンテナクレーン3の安定性を高めつつ地震の揺れを効率良く吸収し得、ロッキング現象の発生に伴う脱輪、並びに走行レール14のスパンの広がりによる脚部5の股裂きを伴う脱輪や脚部5の座屈等を防止し得る。
【0025】
図4は本発明を実施する形態の他の例であって、図中、図1〜図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図1〜図3に示すものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図4に示す如く、走行車輪ユニット16と脚部5との連結部に介装される変位吸収手段17を積層ゴム27によって構成した点にある。
【0026】
前記積層ゴム27は、多数のゴム板と鋼板とを交互に積層した積層ゴム本体27aを、上フランジ27bと下フランジ27cとで挟持してなる構成を有しており、走行車輪ユニット16の中ロッカービーム19の上面に凹設した円形の凹溝24内に、前記積層ゴム27の下フランジ27cを固定すると共に、脚柱18下端に連結された脚座部材26の底面に、前記積層ゴム27の上フランジ27bを固定するようにしてある。
【0027】
図4に示す例においては、大きな地震が起こったとしても、少なくとも片側二本ずつの走行レール14上に走行車輪ユニット16を介して脚部5が立設され、片側のレール上に配置された走行車輪ユニット16だけでも自立可能となっていることから、コンテナクレーン3の安定性が高まっていることに加え、前記走行車輪ユニット16の中ロッカービーム19の凹溝24と、脚座部材26との間に介装された変位吸収手段17としての積層ゴム27によって、地震の揺れが効率良く吸収されるため、コンテナクレーン3の走行方向と直角な横行方向において、コンテナクレーン3の脚部5が四股を踏むように左右交互に浮き上がる、いわゆるロッキング現象が発生しにくくなり、走行車輪ユニット16の車輪21が走行レール14から離脱することが回避される一方、大地震発生時に、岸壁2におけるケーソン(図示せず)の移動に伴う走行レール14のスパンの広がりによる強制変位が発生したとしても、コンテナクレーン3の脚部5の股裂きを伴う脱輪や脚部5の座屈等が発生する心配もなくなる。
【0028】
こうして、図4に示す例の場合にも、図1〜図3に示す例の場合と同様、簡単な構造で、コンテナクレーン3の安定性を高めつつ地震の揺れを効率良く吸収し得、ロッキング現象の発生に伴う脱輪、並びに走行レール14のスパンの広がりによる脚部5の股裂きを伴う脱輪や脚部5の座屈等を防止し得る。
【0029】
尚、本発明のクレーンの免震構造は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、コンテナクレーンに限らず、走行レール上を走行可能なクレーンであればどのようなクレーンにも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明を実施する形態の一例を示す要部拡大平面図であって、図1のII部相当図である。
【図3】図2のIII−III矢視相当図である。
【図4】本発明を実施する形態の他の例を示す要部拡大側面図であって、図2のIII−III矢視相当図である。
【図5】従来における一般的なコンテナクレーンの一例を示す全体概要構成図である。
【符号の説明】
【0031】
3 コンテナクレーン(クレーン)
5 脚部
14 走行レール
16 走行車輪ユニット
17 変位吸収手段
18 脚柱
21 車輪
23 弾性体
24 凹溝
25 中心孔部
26 脚座部材
27 積層ゴム
27a 積層ゴム本体
27b 上フランジ
27c 下フランジ
【出願人】 【識別番号】000198363
【氏名又は名称】石川島運搬機械株式会社
【出願日】 平成17年8月26日(2005.8.26)
【代理人】 【識別番号】100062236
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 恒光

【識別番号】100083057
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 誠一


【公開番号】 特開2007−8719(P2007−8719A)
【公開日】 平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願番号】 特願2005−246354(P2005−246354)