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【発明の名称】 複合剛体トロリー及びそれを用いた摩耗検知方法
【発明者】 【氏名】篠原 和徳

【氏名】田野井 智

【要約】 【課題】摺接材の摩耗管理を容易に行うことができる複合剛体トロリー及びそれを用いた摩耗検知方法を提供するものである。

【解決手段】本発明に係る複合剛体トロリーは、ステンレス鋼からなる摺接材1とアルミニウムからなるトロリー部本体2とを圧接してクラッド化したトロリー部3を備えており、摺接材1の、摺動面6と反対側のアルミニウム圧接面7に、その長手方向に沿って、かつ、摺接材1の摩耗限界厚さと同じ又はほぼ同じ深さの摩耗検知用溝部5を設けたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼からなる摺接材とアルミニウムからなるトロリー部本体とを圧接してクラッド化したトロリー部を備えた複合剛体トロリーにおいて、前記摺接材の、摺動面と反対側のアルミニウム圧接面に、その長手方向に沿って、かつ、摺接材の摩耗限界厚さと同じ又はほぼ同じ深さの摩耗検知用溝部を設けたことを特徴とする複合剛体トロリー。
【請求項2】
前記摩耗検知用溝部を複数本平行に設けた請求項1記載の複合剛体トロリー。
【請求項3】
ステンレス鋼からなる摺接材の、摺動面と反対側のアルミニウム圧接面に、その長手方向に沿って、かつ、摺接材の摩耗限界厚さと同じ又はほぼ同じ深さの摩耗検知用溝部を設けた複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法において、前記摺動面の摩耗により摺動面が前記摩耗検知用溝部に達し、摩耗検知用溝部に充填された前記トロリー部のアルミニウムが摺動面に露出することで摩耗限界線が現れ、この摩耗限界線の出現により摩耗限界を検知することを特徴とする複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法。
【請求項4】
ステンレス鋼からなる摺接材の、摺動面と反対側のアルミニウム圧接面に、その長手方向に沿って、かつ、摺接材の摩耗限界厚さと同じ又はほぼ同じ深さの摩耗検知用溝部を複数本平行に設けた複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法において、前記摺動面の摩耗により摺動面が前記摩耗検知用溝部に達し、少なくとも1つの摩耗検知用溝部に充填された前記トロリー部のアルミニウムが摺動面に露出することで摩耗限界線が現れ、この少なくとも1つの摩耗限界線の出現により摩耗限界を検知することを特徴とする複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法において、前記摺動面に現れた摩耗限界線の幅により、前記摺接材の残存厚さを検知することを特徴とする複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼からなる摺接材と、アルミニウムからなる導電母線とを有する複合剛体トロリー及びそれを用いた摩耗検知方法に関し、特に摩耗限界の検知が可能な複合剛体トロリー及びそれを用いた摩耗検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の複合剛体トロリーは、図4に示すように、耐摩耗性の高いステンレス鋼からなる摺接材1と導電性の良好なアルミニウムからなるトロリー部本体2を圧接によりクラッド化してトロリー部3とし、このトロリー部3をアルミニウム架台4にカシメて両者を結合してなるものである。摺接材1の表面(アルミニウム圧接面と反対側の面)が摺動面6となる。
【0003】
従来、複合剛体トロリーの摩耗管理は、トロリー部3の摺接材1の残存厚さを超音波厚さ計等で測定し、初期値(初期厚さ)からの摩耗量を算出することによって行われていた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−220858号公報
【特許文献2】特許第2503570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような方法による摩耗管理では、摺動面6において摺接材1の残存厚さを長手方向に連続して測定することは困難であることから、夜間等の限られた作業時間内に測定できる範囲が限定されてしまい、全路線を調査(摩耗検査)するには極めて長い時間を必要とするという問題があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、摺接材の摩耗管理を容易に行うことができる複合剛体トロリー及びそれを用いた摩耗検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ステンレス鋼からなる摺接材とアルミニウムからなるトロリー部本体とを圧接してクラッド化したトロリー部を備えた複合剛体トロリーにおいて、前記摺接材の、摺動面と反対側のアルミニウム圧接面に、その長手方向に沿って、かつ、摺接材の摩耗限界厚さと同じ又はほぼ同じ深さの摩耗検知用溝部を設けたことを特徴とする複合剛体トロリーである。
【0008】
請求項2の発明は、前記摩耗検知用溝部を複数本平行に設けた請求項1記載の複合剛体トロリーである。
【0009】
請求項3の発明は、ステンレス鋼からなる摺接材の、摺動面と反対側のアルミニウム圧接面に、その長手方向に沿って、かつ、摺接材の摩耗限界厚さと同じ又はほぼ同じ深さの摩耗検知用溝部を設けた複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法において、前記摺動面の摩耗により摺動面が前記摩耗検知用溝部に達し、摩耗検知用溝部に充填された前記トロリー部のアルミニウムが摺動面に露出することで摩耗限界線が現れ、この摩耗限界線の出現により摩耗限界を検知することを特徴とする複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法である。
【0010】
請求項4の発明は、ステンレス鋼からなる摺接材の、摺動面と反対側のアルミニウム圧接面に、その長手方向に沿って、かつ、摺接材の摩耗限界厚さと同じ又はほぼ同じ深さの摩耗検知用溝部を複数本平行に設けた複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法において、前記摺動面の摩耗により摺動面が前記摩耗検知用溝部に達し、少なくとも1つの摩耗検知用溝部に充填された前記トロリー部のアルミニウムが摺動面に露出することで摩耗限界線が現れ、この少なくとも1つの摩耗限界線の出現により摩耗限界を検知することを特徴とする複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法において、前記摺動面に現れた摩耗限界線の幅により、前記摺接材の残存厚さを検知することを特徴とする複合剛体トロリーを用いた摩耗検知方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複合剛体トロリーのステンレス鋼からなる摺接材が所定量摩耗すると、摺動面に摩耗限界線が現れるので、その摩耗限界線を目安にして容易に摩耗管理を行うことができる。また、摩耗限界線の観察は、特殊な装置を必要とすることなく、摺動面と対面した正面から目視により行うことができるので、摩耗状態の管理が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態を添付図面により説明する。
【0014】
本発明の好適一実施の形態に係る複合剛体トロリーの断面図を図1に示す。図1(a)は摩耗前の状態、図1(b)は摩耗後の状態を示す。
【0015】
本実施の形態に係る複合剛体トロリーは、図1(a)に示すように、ステンレス鋼からなる摺接材1とアルミニウムからなるトロリー部本体2とを圧接してクラッド化したトロリー部3を備えており、摺接材1の、摺動面6と反対側のアルミニウム圧接面7に摩耗検知用溝部5を設けたことに特徴がある。
【0016】
この摩耗検知用溝部5は、摺接材1の長手方向に沿って、かつ、摺接材1の摩耗限界厚さと同じ(又はほぼ同じ)深さに形成される。また、この摩耗検知用溝部5にはトロリー部本体2の一部が充填され、摩耗検知用溝部5はアルミニウムで埋められる。
【0017】
本実施の形態に係る複合剛体トロリーは、以下の手順で製造される。
【0018】
先ず、摺接材1のアルミニウム圧接面7に、予め摺接材1の摩耗限界厚さと同じ深さの摩耗検知用溝部5を形成しておく。この摺接材1とトロリー部本体2とを圧接によりクラッド化してトロリー部3を形成することにより、トロリー部本体2の一部が塑性変形して摺接材1の摩耗検知用溝部5に食い込み、この摩耗検知用溝部5にアルミニウムが充填される。また、この圧接により、図1(a)の要部拡大図を図2に示すように、摺接材1の幅方向(図2中では左右方向)両端に形成された溝部11に、同じくトロリー部本体2の幅方向両端に形成された爪部12がそれぞれ噛み合い、摺接材1とトロリー部本体2とが固定される。
【0019】
このトロリー部3の窪み部15にアルミニウム架台4の先端部16を嵌め込み、トロリー部3の窪み部15に臨む側壁部17,17を窪み部内側に折り曲げ、トロリー部3とアルミニウム架台4とをカシメて両者を結合することで、複合剛体トロリーが得られる。アルミニウム架台4の先端部16は、根本側よりも先端側の方が拡径されたテーパ状に形成されており、これによって、カシメ結合による結合度合いがより高くなる。
【0020】
次に、本実施の形態に係る複合剛体トロリーの作用を説明する。
【0021】
本実施の形態に係る複合剛体トロリーを移動電気機器用給電線として実用に供すると、経年使用により、図1(b)に示すように、摺接材1が徐々に摩耗してくる。
【0022】
摺接材1が所定量摩耗し、摺動面6の位置が摩耗検知用溝部5の底部(図1(b)中では上部)に達すると、摩耗検知用溝部5に充填されたアルミニウムが摺動面6に露出し、摩耗限界線8として現れる。言い換えると、摺接材1の残存厚さが、摩耗検知用溝部5の深さ(高さ)と同じになると、摩耗限界線8が出現する。
【0023】
摩耗限界線8(アルミニウム)と摺接材1(ステンレス鋼)とは材質が異なり、色調が異なるため、摩耗限界線8の認識、識別は容易である。この摩耗限界線8を目安にすることで、摩耗が摩耗限界に到達したことを容易に検知することができる。また、摩耗限界線8の検知、観察は、特殊な装置を用いなくても、摺動面6と対面した正面から目視により行うことができるので、摩耗状態の管理が容易である。さらに、摩耗限界線8の出現によって検知される摺接材1の残存厚さは、摩耗検知用溝部5の深さを変えることによって、自由に設定することができる。
【0024】
また、摩耗検知用溝部5の断面形状も特に限定するものではなく、図1(a)に示す三角形状、半円形状、台形状、四角形状等であってもよい。摩耗検知用溝部5の、摺動面6側を上にした時の断面形状を、三角形状、半円形状、台形状等にした場合には、摺動面6に出現した摩耗限界線8の幅により、摺接材1の残存厚さをより正確に検知することが可能である。具体的には、このような断面形状の摩耗検知用溝部5を有する場合、摺動面6に摩耗限界線8が初めて出現した時は、細線状の摩耗限界線8が観察されるが、摩耗がさらに進行すると、摩耗限界線8の幅が徐々に太くなる。この摩耗限界線8の幅は摩耗検知用溝部5の幅と対応しているため、摩耗限界線8の幅を正確に検知することにより、摩耗検知用溝部5の残り深さ、すなわち摺接材1の残存厚さを正確に検知することができる。
【0025】
また、本実施の形態においては、摩耗検知用溝部5が1本の場合について説明を行ったが、摩耗検知用溝部5の本数は特に限定するものではなく、複数本であってもよい。例えば、図3に示すように、摺接材1のアルミニウム圧接面7に、一定の間隔で、かつ、平行に2本の摩耗検知用溝部5を設けてもよい。図3に示す複合剛体トロリーは、圧接により設けたトロリー部3をアルミニウム架台4の窪み部18に嵌め込み、アルミニウム架台4の窪み部18に臨む側壁部19,19を窪み部内側に折り曲げ、トロリー部3とアルミニウム架台4とをカシメて両者を結合することで得られる。
【0026】
この図3に示した複合剛体トロリーにおいては、摺接材1が斜めに偏摩耗し、摺動面6が斜めになったとしても、少なくとも一つの摩耗検知用溝部5に充填されたアルミニウムが摩耗限界線8として摺動面6に現れるため、摩耗が摩耗限界に到達したことを確実に検知することができる。
【0027】
本実施の形態に係る複合剛体トロリーは、導体をパンタグラフによって集電するもので、大型クレーン、台車など大容量を必要とする移動電気機器用給電線として使用可能である。また、新交通システム、モノレール、地下鉄等の走行車両への給電線としても使用可能である。
【0028】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好適一実施の形態に係る複合剛体トロリーの断面図である。図1(a)は摩耗前の状態、図1(b)は摩耗後の状態を示す。
【図2】図1(a)の要部拡大図である。
【図3】図1(a)に示す複合剛体トロリーの一変形例である。
【図4】従来の複合剛体トロリーの断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 摺接材
2 トロリー部本体
3 トロリー部
5 摩耗検知用溝部
6 摺動面
7 アルミニウム圧接面
【出願人】 【識別番号】000005120
【氏名又は名称】日立電線株式会社
【出願日】 平成18年4月18日(2006.4.18)
【代理人】 【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄


【公開番号】 特開2007−283936(P2007−283936A)
【公開日】 平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願番号】 特願2006−114484(P2006−114484)