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【発明の名称】 剛体電車線用の架台及び剛体電車線
【発明者】 【氏名】奥 剛司

【氏名】尾嶋 正樹

【氏名】藤原 拓身

【要約】 【課題】トロリ線をより強固に保持できる剛体電車線用の架台と剛体電車線を提供する。

【解決手段】剛体電車線1は、架台10と、架台10に保持されるトロリ線200と、架台10を締め付ける締付機構300(ボルト301及びナット302)とを有する。架台10は、剛性を有する取付片11と、一端側が開閉可能なように取付片11に一体化された脚片12とを具える。脚片12は、トロリ線200を挟持する爪部15を有するイア部14と、イア部14と取付片11とを繋ぐ連結部13とを有する。イア部14は、締付機構300が配置されると共に、イア部14においてボルト301の頭部及びナット302が配される側面(締付力の作用面)と爪部15の外側面(第一外側面15b)とを同一面としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性を有する取付片と、一端側が開閉可能なように前記取付片に一体化された一対の脚片とを具え、両脚片を締付機構で締め付けることで、両脚片の一端側に設けられた爪部にてトロリ線を保持する剛体電車線用の架台であって、
前記各脚片は、前記爪部を有するイア部と、このイア部と取付片とを連結する連結部とからなり、
前記イア部には、爪部よりも連結部側に締付機構が配され、この締付機構の締付力が作用する作用面を有し、
前記締付機構の配置箇所から爪部に至るまでの範囲において少なくとも一方のイア部の幅がこのイア部と同一脚片に設けられる連結部の幅よりも大きく、
爪部の外側面の少なくとも一部は、前記作用面と同一面上にあることを特徴とする剛体電車線用の架台。
【請求項2】
締付機構は、両イア部を貫通するボルトと、このボルトに螺合するナットであり、イア部には、前記ボルトの嵌合孔が設けられ、
爪部の先端同士を結ぶ直線と嵌合孔の中心軸との間の距離が20mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の剛体電車線用の架台。
【請求項3】
イア部の幅は、両脚片を締付機構にて締め付けたとき、両イア部の対向面間に実質的に隙間ができない大きさであることを特徴とする請求項1に記載の剛体電車線用の架台。
【請求項4】
両イア部の対向面にはそれぞれ、突起を有しており、対向する両突起は、両脚片を締付機構にて締め付けたとき、接するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の剛体電車線用の架台。
【請求項5】
突起は、締付機構の配置箇所よりも連結部側に設けられることを特徴とする請求項4に記載の剛体電車線用の架台。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の架台と、架台に保持されるトロリ線と、架台を締め付ける締付機構とを具えることを特徴とする剛体電車線。
【請求項7】
締付機構は、両イア部を貫通するボルトと、このボルトに螺合するナットであり、ボルトは、一端がイア部の作用面から突出するように配され、
トロリ線の断面において、トロリ線のコーナー部と突出したボルトの端部とを結ぶ直線がトロリ線の摺動面の延長面に対して40°以上の傾きを有することを特徴とする請求項6に記載の剛体電車線。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電車の給電に用いられるトロリ線の保持を行う剛体電車線用の架台、及びこの架台を具える剛体電車線に関するものである。特に、トロリ線をより強固に保持することができる剛体電車線用の架台、及び剛体電車線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下鉄や新交通システムなどで利用されている剛体電車線として、例えば、図3に示すいわゆる両イア型のもの(以下、両イア型と呼ぶ)がある(特許文献1,2図3参照)。この剛体電車線100は、断面がT字状の架台101に一対のイア102を介してトロリ線210を保持する構成である。架台101は、地下鉄トンネルの天井や側壁などの構造物に碍子金具を介して取り付けられる取付片101aと、この取付片101aに直交する脚片101bとを具える。イア102はそれぞれ、断面]状で、その一端側に爪部102aを具え、爪部102aにおいて先細りした先端部分をトロリ線210に設けられた溝210aに嵌合してトロリ線210を掛止する。これら一対のイア102は、脚片101bにおいて取付片101aから離れる側の両側に、脚片101bの端部から爪部102aが突出するように配置される。剛体電車線100は、爪部102aでトロリ線210を掛止した状態で、脚片101b及びイア102の中間部に貫通させたボルト321にナット322を螺合してイア102を締め付けることにより、トロリ線210の保持を行う。
【0003】
上記剛体電車線100は、構造物に取り付けられる架台と、トロリ線を直接把持するイアとが別部材となっているため、部品点数が多く、施工性や点検容易性の点で改善が望まれる。これらの点を改善した剛体電車線として、例えば、特許文献1図5に示す構成のもの、具体的には、架台と一体にイアを具えるものがある(以下、従来技術1と呼ぶ)。この剛体電車線は、一対の脚片を取付片に直交するように一体に具え、脚片はそれぞれ、端部に設けられる爪部を有するイアと、このイアと取付片とを繋ぐ連結部とからなる。そして、この剛体電車線は、両イア間の間隔を開き、トロリ線を挟むようにイアを閉じ、両連結部の中間部にボルト及びナットを配置して両脚片を締め付けることで、トロリ線を保持する。
【0004】
しかし、従来技術1の剛体電車線では、取付片の中間部に可撓部を設け、この可撓部を屈曲させて両イア間の間隔の開閉を行う構成のため、架台接続用の部品点数が多くなったり、トロリ線の着脱の作業性が悪いという問題がある。また、この剛体電車線では、両脚片をボルト及びナットにて締め付けても、脚片同士が接触せず、脚片間に空洞を有する状態であると共に、トロリ線の端面(集電シューに摺接する摺動面との対向面)がイアに覆われず、上記空洞に露出された状態である。この空洞には、地下水や雨水などの水が溜まり易く、上記露出箇所がこの水に接することから、この水によりトロリ線の表面部が腐食して、イアとトロリ線との接触抵抗が増大し、トロリ線の電気的性能が低下する。
【0005】
これらの点を改善した剛体電車線として、例えば、図4に示すものがある(特許文献1図1,2、特許文献2図5参照)。図4に示す剛体電車線110も従来技術1と同様に架台と一体にイアを具える構成であり、架台111は、剛性のある取付片111aと、この取付片111aに直交する一対の脚片111bとからなり、脚片111bはそれぞれ、端部に設けられる爪部114を有するイア113と、このイア113と取付片111aとを繋ぐ連結部112とからなる。この剛体電車線110は、連結部112の中間部に配されるボルト331及びナット332にて両脚片111bを締め付けていない状態では、イア側が自動的に開くように構成されており、取付片111aを屈曲させることなく、脚片111bの開閉動作を行うことができる。また、連結部112において取付片側の幅をボルト331が配される中間部の幅W111よりも小さくして、脚片111bが可撓性を有するようにし、脚片111bの開閉動作を行い易くしている。更に、この剛体電車線110は、両脚片111bをボルト331及びナット332にて締め付けた際、連結部112において中間部からトロリ線210の端面に接する端部に至るまでの範囲に亘って対向面間に隙間ができないようにして(特許文献1段落0017記載参照)、トロリ線210の腐食による電気的性能の低下を抑制している。なお、この剛体電車線110は、ナット332を緩めて両イア113間の間隔を開き、トロリ線210を挟むようにイア113を閉じてナット332を締め付けることで、トロリ線210を保持する。
【0006】
【特許文献1】特開2000-313255号公報(図1〜3,5)
【特許文献2】特開2004-90836号公報(図3,5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記剛体電車線110は、イアと架台とが一体の構成であることで、両イア型の剛体電車線100と比較して部品点数が少なく、施工や点検が行い易い。しかし、剛体電車線110では、両イア型の剛体電車線100と比較して、トロリ線の保持力が小さくなることがある。
【0008】
剛体電車線110では、連結部112の最大幅W111をイア113の最大幅W110よりも小さくし、連結部112の外側にイア113が突出するように脚片111bを形成している。このように脚片111bを形成することで、脚片の幅を一様にした場合と比較して架台材料の削減や軽量化を図ることができる。しかし、脚片111bをこのような形状とすることで、ボルト331及びナット332をトロリ線側により近づけて配置することに限界がある。トロリ線の保持力を高めるには、できるだけトロリ線の近くにボルト及びナットを配置して、ボルト及びナットによる締め付け力を爪部に十分に作用させることが挙げられる。つまり、ボルトの嵌合孔の中心軸と爪部の先端同士を結ぶ直線との間の距離Sをできるだけ小さくすることが望まれる。ところが、剛体電車線110では、イア113が連結部112よりも突出していることからトロリ線210にボルト331及びナット332を近付けようとすると、ボルト331の頭部やナット332がイア113に接触してしまう。そのため、剛体電車線110における距離S110を両イア型の剛体電車線100における距離S100と同等以下とすることが難しい。従って、図4に示す剛体電車線110は、両イア型の剛体電車線100と比較してトロリ線の保持力が小さい。
【0009】
上記保持力の問題に加え、図4に示す剛体電車線110では、電気的性能が低下する恐れがある。
【0010】
上述のように剛体電車線110では、連結部112の幅を部分的に細くしているため、脚片111bを締め付けた際、取付片側の連結部112間にしずく型の空洞115が設けられる。この空洞115には、地下水や雨水などの水が溜まり易いが、上述のように剛体電車線110では、脚片111b間に隙間ができないようにしているため、電気的性能の低下を抑えられる。しかし、脚片111bにおいてその中間部からトロリ線210の端面に接する端部に至るまでの範囲に亘って対向面全面を接触させることは実際上難しく、この範囲において脚片111b間に僅かながら隙間が生じて、トロリ線の表面部を腐食させる恐れがある。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その主目的は、トロリ線を強固に保持することができる剛体電車線用の架台を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記架台を具える剛体電車線を提供することにある。更に、本発明の別の目的は、上記トロリ線の保持力の向上に加えて電気的性能の低下を防止することができる剛体電車線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、締付機構による締付力がトロリ線を挟持する爪部により効果的に作用することが可能な構成とすることで、上記主目的を達成する。本発明剛体電車線用の架台は、剛性を有する取付片と、一端側が開閉可能なように取付片に一体化された一対の脚片とを具え、両脚片を締付機構で締め付けることで、両脚片の一端側に設けられた爪部にてトロリ線を保持するものである。各脚片は、上記爪部を有するイア部と、このイア部と取付片とを連結する連結部とからなる。イア部は、爪部よりも連結部側に締付機構が配され、この締付機構の締付力が作用する作用面を有する。また、イア部の締付機構の配置箇所から爪部に至るまでの範囲において少なくとも一方のイア部の幅は、このイア部と同一脚片に設けられる連結部の幅よりも大きくする。そして、爪部の外側面の少なくとも一部を上記締付機構の作用面と同一面上に設ける。
【0013】
本発明者らは、トロリ線の保持力をより向上させるために種々検討し、以下の知見を得た。従来技術1の剛体電車線や図4に示す従来の剛体電車線では、連結部にボルト及びナットを配置しているため、ボルト及びナットの配置箇所から爪部までの距離が大きくなり爪部に伝達される締付力が低減される。特に、これら二つの剛体電車線では、連結部に対してイアを突出するように設けているため、ボルト及びナットを連結部に配置せざるを得ない。また、これら二つの剛体電車線では、上述のようにボルト及びナットの配置位置と爪部の位置とが離れていることに加えて、ボルト及びナットによる締付力が爪部に直接的に作用し難い。これらの剛体電車線では、ボルト及びナットによる締付力が直接作用するのが連結部の側面であるため、連結部の側面と段差があるイアの側面には、直接的に締付力が作用しない。従って、これらの剛体電車線では、爪部に伝達されるまでに締付力のロスが大きくなり、トロリ線をより強固に保持することが難しい。これらの知見に基づき、本発明架台では、イア部に締付機構を配する構成とすると共に、爪部の外側面を締付力の作用面と同一面上となるように構成する。この構成により、本発明架台及びこの架台を具える本発明剛体電車線は、締付力をより効率よく爪部に伝達して、トロリ線の保持力の向上を図ることができる。以下、本発明をより詳しく説明する。
【0014】
本発明架台は、トロリ線を保持するための剛体電車線用の架台である。トロリ線は、代表的には断面がほぼ梯形の長尺線で、集電シューに摺接する摺動面と、両側面と、架台への接合面とを有する。両側面には、長手方向に沿って溝が形成され、この溝に後述するイア部の爪部が嵌め込まれ、この状態でイア部を締付機構で締め付けることでトロリ線が保持される。このようなトロリ線は、純銅又は銅合金からなるもの、その他、これらの表面に錫などの金属めっきを施したものなどが使用される。
【0015】
本発明架台は、取付片と一対の脚片とを有する長尺材として構成される。そのうち、取付片は、構造物に取り付けられる箇所である。構造物としては、地下鉄の場合、トンネルの天井や側壁、モノレールやニュートラムなどの新交通システムの場合、走行軌道の側壁などが挙げられる。通常、取付片は、このような構造物に碍子金具を介して固定される。取付片の断面形状は、矩形が代表的である。この取付片は、後述する脚片の開閉動作に関わらず屈曲することがない程度の剛性を有するものとする。このような架台は、アルミニウム合金にて形成するとよい。
【0016】
両脚片は、押出などにより上記取付片と一体に形成される。これら脚片はそれぞれ、対向配置される対向面と、この対向面に対向し、外側に配される側面とを具える。また、これら脚片はそれぞれ、一端側が開閉可能であり、この一端側でトロリ線を挟み、この状態で締付機構により締め付けられることでトロリ線を保持する。このような各脚片は、取付片から離れる一端側にトロリ線を挟むイア部を有し、取付片とイア部との間に連結部を有する。特に、これら脚片は、締付機構により締め付けられていないとき、イア部側が自動的に開くように構成する。この構成により、締付機構を締め付けたり、緩めたりといった簡単な操作で脚片の開閉を行うことができ、トロリ線を容易に着脱できる。
【0017】
イア部は、その端部に爪部を有する。爪部は、トロリ線の溝に嵌合される先細り形状の先端を有する。また、イア部は、トロリ線を保持するための締付機構が配されて直接的に締め付けられる箇所であり、締付機構の締付力が作用する作用面を有する。締付機構は、上記爪部よりも連結部側に配する。例えば、締付機構をボルト及びナットとする場合、イア部において爪部よりも連結部側にボルトが貫通させる嵌合孔を設けておき、イア部の側面にボルトの頭部及びナットを配置するとよく、同嵌合孔や側面が締付機構の配置箇所となる。また、イア部の側面は、締付機構の締付力が直接作用する作用面となる。そして、本発明では、上記爪部の外側面の少なくとも一部が締付力の作用面と同一面上となるようにイア部を形成する。この構成により、爪部には、上記作用面と同一面上にある外側面に締付機構の締付力が直接的に伝えられるため、従来と比較してより大きな把持力を有することができ、トロリ線の保持力をより強固にできる。爪部の外側面のうち、トロリ線の溝に嵌合する先端と対向する面の一部を上記作用面と同一面上になるようにすることが好ましく、より好ましくは、この対向面の全面を上記作用面と同一面となるようにする。
【0018】
上記のように本発明では、爪部に直接的に締付力が作用する構成とすることで、従来の剛体電車線と同様の位置に締付機構を配置した場合と比較しても、トロリ線の保持力を向上することができる。また、本発明では、イア部に締付機構を配する構成とすることで、図4に示す従来の剛体電車線と比較して、締付機構をトロリ線に近づけて配置することができる。具体的には、同一のトロリ線を保持する場合において、図4に示す従来の剛体電車線では、爪部の先端同士を結ぶ直線と、連結部に設けられたボルト用の嵌合孔の中心軸との間の距離S110が20〜25mm程度であるのに対し、本発明架台を具える剛体電車線では、上記距離を15mm以下とすることができる。このように締付機構をトロリ線のより近くに配置することで、本発明は、締付力をより効率よく爪部に伝達することができ、トロリ線の保持力の更なる向上を図ることができる。
【0019】
上述のように本発明では、締付機構による大きな締付力がイア部に作用するため、イア部は、ある程度の幅(締付方向における距離)を有することが好ましい。特に、イア部において締付機構の配置位置から爪部に至るまでの範囲は、締付力が最も作用する箇所であるため、幅広であることが好ましい。そこで、本発明では、上記範囲において、少なくとも一方のイア部の幅をこのイア部と同一脚片に設けられている連結部の幅よりも大きくする。つまり、一方のイア部の幅を連結部の幅と同様とし、他方のイア部の幅を連結部の幅よりも大きくしてもよいし、両イア部の幅を連結部の幅よりも大きくしてもよい。前者は、双方のイア部の幅が異なる非対称な形状の脚片となるため、トロリ線の保持力がアンバランスになることが考えられる。そこで、後者において両脚片を対称な形状とすると、両脚片に作用する力を爪部にバランスよく作用させることができ、トロリ線を安定して保持できる。また、イア部の幅は、連結部の幅よりも広ければ、上記範囲において部分的に大きさが異なっていてもよいが、上記範囲においてイア部の全長に亘って均一的な幅であることが好ましい。端的に言えば、図4に示す従来の剛体電車線において、イアの側面と、連結部における締付機構が配される箇所の側面とが同一面(面一)となるように連結部の幅を調整することで、本発明架台を構築することができる。
【0020】
また、上記締付機構の配置位置から爪部に至るまでの範囲においてイア部の幅は、両脚片を締付機構で締め付けた際、両イア部の対向面同士がほぼ接するように、つまり、対向面間に実質的に隙間ができないように構成すると、後述する連結部間に設けられる空隙に雨水や地下水などの水が溜まっても、この水が対向面間を伝ってトロリ線側に流出する量を低減できる。更に、両対向面にそれぞれ突起を設け、両脚片を締付機構にて締め付けたとき、これら対向する両突起が接するように構成すると、上記空隙に溜まった水のトロリ線側への流出をより効果的に防止できる。このような突起は、上記対向面の任意の箇所に、その長手方向に沿って設けるとよい。但し、締付機構の配置箇所、例えば、ボルトの嵌合孔形成箇所は除く。好ましくは、締付機構の配置箇所よりも連結部側、特に、上記空隙が形成される箇所の近傍に設けると、締付力が十分に作用して突起同士を接触させ、水の流出を防止できる。このような突起は、各対向面に一つずつ(つまり、両対向面で一対)でも、二つ以上(同複数対)設けてもよい。突起の形状は、締付機構により締め付けた際に突起同士が接触し、水などの液体がトロリ線側に流出することを抑制できれば特に問わない。例えば、断面半円弧状、断面矩形状などが挙げられる。加えて、イア部は、トロリ線の接合面が接する接触面を有するように構成し、イア部とトロリ線との間に隙間が設けられないようにすることが好ましい。上記隙間があると、この隙間に雨水や地下水などの水が溜まり、この水に接触することでトロリ線が腐食して電気的性能の劣化を招く恐れがある。
【0021】
一方、連結部は、取付片とイア部とを一体化するための箇所であり、取付片に対してイア部、締付機構、トロリ線を支持するのに必要な強度を確保できれば、軽量化及び材料削減のために断面積を小さくすることが好ましい。そこで、本発明では、連結部の幅をイア部の幅よりも狭くする。連結部の幅を小さくすることで、イア部の開閉動作を容易にすることも可能である。また、連結部は、幅を小さくすることに加えて、両脚片を締付機構で締め付けた際、両連結部間に空隙ができるように取付片に配されると、イア部の開閉動作をより容易にすることができる。つまり、両イア部間は、隙間ができないように、両連結部間は、隙間ができるように脚片を構成することが好ましい。
【0022】
他方、本発明剛体電車線は、上記本発明架台と、架台に保持されるトロリ線と、架台を締め付ける締付機構とを具える。締付機構は、両脚片を締め付けて両イア部間にトロリ線を保持できる構成であればよく、例えば、両イア部を貫通するボルトと、このボルトに螺合されるナットとを有するものが好適に利用できる。この締付機構によれば、ナットの締め付けにより両イア部間を締め付け、ナットを緩めることで両イア部間の間隔を開くことができる。
【0023】
締付機構に利用されるボルト及びナットは、通常、ボルトの頭部や端部及びナットが脚片の側面から突出して配される(図3,4参照)。そのため、ボルトやナットの配置箇所がトロリ線に近過ぎると、車両に具える集電シューなどの集電部材が揺動した際に集電部材がボルトやナットに接触して、トロリ線や集電部材を損傷したり、最悪の場合、事故に至る恐れがある。本発明は、上述のようにイア部に締付機構を配置可能とするため、締付機構の位置をトロリ線のより近くにすることができるが、近過ぎると上記集電部材の揺動による不具合が生じる恐れがある。従って、ボルト及びナットは、この不具合を防止可能な位置に配されることが好ましい。具体的には、締付機構をボルト及びナットとし、ボルトの一端がイア部の作用面から突出するように配される場合、トロリ線の断面において、トロリ線のコーナー部と突出したボルトの端部とを結ぶ直線がトロリ線の摺動面の延長面に対して40°以上の傾きを有するようにボルトの配置位置を調整する。つまり、上記直線と延長面とがつくる角(以下、後退角と呼ぶ)が40°以上となるようにボルトの配置位置の調整を行うことが好ましい。
【0024】
本発明剛体電車線は、通常、支持機構を用いて構造物に取り付けられて利用される。また、本発明剛体電車線は、トロリ線の摺動面が下向きとなるように配されるいわゆる縦置き型、トロリ線の摺動面が横向きとなるように配されるいわゆる横置き型のいずれにも利用できる。
【発明の効果】
【0025】
上記構成を具える本発明架台及びこの架台を具える本発明剛体電車線は、長期に亘りトロリ線をより強固に安定して保持することができる。また、本発明剛体電車線は、トロリ線の腐食を防止して、電気的特性の劣化を抑制することができる。更に、本発明剛体電車線は、集電部材の揺動によるトロリ線や集電部材の損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
《実施例1》
図1(A)は、本発明剛体電車線の断面図、(B)は、従来の剛体電車線の断面図である。なお、この断面は、剛体電車線の長手方向(図1において紙面と直交する方向)に垂直に切断した面である。また、図1(B)に示す従来の剛体電車線120は、図4に示す剛体電車線110と把持するトロリ線の大きさが異なるだけであり、基本的な構成は同様であるため説明を省略し、剛体電車線110の構成部材に対応する剛体電車線120の部材を剛体電車線110と同一の符号で示す。
【0027】
<全体構成>
剛体電車線1は、架台10と、架台10に保持されるトロリ線200と、架台10を締め付ける締付機構300とを有する。架台10は、剛性を有する取付片11と、一端側(図1(A)において右側)が開閉可能なように取付片11に一体化された脚片12とを具える。トロリ線200は、両脚片12の一端側に設けられた爪部15に挟まれ、この状態で両脚片12を締付機構300により締め付けることで架台10に保持される。締付機構300は、脚片12に挿通配置されるボルト301と、このボルト301に螺合するナット302とを有する。このような剛体電車線1は、図示しない碍子金具(支持機構)を介して構造物に支持される。特に、剛体電車線1の特徴とするところは、爪部15を具えるイア部14に締付機構300を配置させると共に、イア部14においてボルト301の頭部及びナット302が配される側面(締付力の作用面)と爪部15の外側面(第一外側面15b)とを同一面としている点にある。以下、各構成を詳しく説明する。
【0028】
<トロリ線>
本例に示すトロリ線200は、錫めっき銅合金製又は錫めっき純銅製で、断面が梯形の長尺な給電線である。このトロリ線200は、集電シューに摺接する摺動面(図1(A)において右側面)と、両側面(同上下側面)と、摺動面の対向面でイア部14に接する接合面(同左側面)とを有する。両側面の摺動面側には長手方向に沿った溝200aが形成され、この溝200aは、架台10にてトロリ線200を保持するために、イア部14の端部に設けられた爪部15が係合されるもので、断面三角状である。摺動面と側面とでつくられるコーナー部は、丸めている。本例では、幅(側面間の最大距離):20mm、厚さ(接合面と摺動面間の最大距離):11.5mmのトロリ線である。
【0029】
<架台>
架台10は、トロリ線200を保持するためのアルミニウム合金製の長尺材で、取付片11に一体に一対の脚片12を具える。これら脚片12はそれぞれ、取付片11に対して直交するように配され、取付片11から離れる一端側にイア部14、取付片11に接続される他端側に連結部13を有し、取付片11の構造物固定面(図1(A)において左側面)に直交する中心線L1を中心として対称な形状である。
【0030】
取付片11は、断面矩形状であり、図示しない碍子金具で把持され、この碍子金具を介して剛体電車線1を構造物(天井や側壁など)に取り付けるために用いられる。図1では、いわゆる横置き型に配置された状態を示す。
【0031】
両脚片12はそれぞれ、イア部側が開閉可能な構成であり、両イア部14でトロリ線200を挟み、この状態で締付機構300を締め付けることでトロリ線200を保持する。各脚片12は、締付機構300にて締め付けていない状態において、イア部側が自動的に開かれるように構成している。具体的には、イア部側は、対向配置される爪部15の先端15a間の距離がトロリ線200の接合面よりも大きくなるように開く。この構成により、ナット302を緩めると、爪部15の先端15a間が接合面よりも大きく開いて、トロリ線200を簡単に取り外すことができ、ナット302を締め付けると、爪部15の先端15aがトロリ線200の溝200aに嵌め込まれてトロリ線200を強固に保持できる。
【0032】
イア部14はそれぞれ、断面がほぼ矩形状で、ボルト301の頭部又はナット302が配され、外側に配されるイア部側面と、イア部側面に平行する面で互いに対向配置されるイア部対向面と、トロリ線200の接合面に接する接触面とを具え、接触面は、イア部対向面に垂直に配される。一方のイア部側面には、ボルト301の頭部が配され、他方のイア部側面には、ナット302が配される。つまり、両イア部側面は、締付機構300の作用面となる。また、イア部14はそれぞれ、接触面から突出するように爪部15を具え、この爪部15は、イア部対向面側に向かって先細りする先端15aと、先端15aに対向する第一外側面15bとを有する。先端15aはそれぞれ、対向するように配される。また、第一外側面15bは、イア部側面(作用面)と同一面となるように構成している。各イア部14の中間部には、ボルト301が挿通配置される嵌合孔16が設けられている。各イア部対向面には、嵌合孔16よりも連結部側に断面半円弧状の突起17をイア部対向面の長手方向に沿って設けており、これら突起17は、両脚片12を締付機構300で締め付けた際、接するように設けている。なお、両脚片12を締付機構300で締め付けた際、突起17よりもトロリ線側のイア部対向面間には、図1(A)の丸囲みで示すように僅かな隙間ができる。この隙間は、雨水などの水が溜まりにくい僅かなものである。
【0033】
また、イア部14は、ボルト301の頭部及びナット302が配される箇所から爪部15に至るまでの範囲においてその幅(イア部側面とイア部対向面間の距離)W1が均一であり、その大きさは、締付機構300による締付力に十分耐え得る大きさとしている。この幅は、トロリ線の大きさに応じて適宜調整するとよい。なお、本例では、イア部側面と連結部側面とをつなぐ面を曲面とした。また、爪部15は、上述した第一外側面15bと、先端15aをつくる第二外側面と、この第二外側面と第一外側面15bとを繋ぐ第三外側面といった三つの平面からなる外側面を具える構成としたが、図1中に破線で示すように第三外側面を曲面としてもよい。
【0034】
連結部13は、イア部14と取付片11とをつなぐ箇所であり、断面がほぼ矩形状で、外側に配される連結部側面と、連結部側面に平行する面で、二つの連結部13において互いに対向配置される連結部対向面とを有する。連結部13の幅(連結部側面と連結部対向面間の距離)W2はほぼ均一で、かつイア部14,締付機構300,トロリ線200を十分に支持可能な程度にイア部14の幅W1よりも小さくしている。これら連結部13は、両脚片12を締付機構300にて締め付けた際、連結部対向面間に比較的大きな空隙18が設けられるように離間されて取付片11に配される。このように連結部13の幅を狭くして、かつ離間させて取付片11に配することで、イア部側の開閉を容易とすると共に、架台材料の削減を実現する。この空隙18には、雨水などの水が溜まり易くなるが、剛体電車線1には、上述のように突起17を具えることで、空隙18からイア部対向面間に設けられる僅かな隙間に向かって上記水が流出することを防止できる。特に、本例では、突起17を連結部近傍に配しているため、より確実に流出を防ぐことができる。従って、剛体電車線1は、上記水によりトロリ線の表面部が腐食して、トロリ線とイア部との接触抵抗の増大による電気的特性の劣化を抑制することが可能である。なお、本例では、イア部側面と連結部側面とが異なる平面となるように、つまり段差を有するように脚片を構成したが、イア部側面と連結部側面とが同一平面上になる(面一になる)ように脚片を構成してもよい。
【0035】
<締付機構>
締付機構300は、両脚片12のイア部14に設けられる嵌合孔16を貫通するボルト301と、このボルト301に螺合されるナット302とを有する。ボルト301は、一方の脚片12のイア部側面に頭部が接する(本例では平座金を介して接する)ように、かつ他方の脚片12のイア部側面から端部が突出するように配される。この突出したボルト301の端部に(本例ではナット301とイア部側面との間に平座金及びばね座金を介して)ナット302を螺合して、脚片12の締め付けを行う。本例に示すボルト301は、脚片12を締め付けた状態においてナット302から端部が突出される長さを有するものである。そのため、このボルト301の突出部分と車両の集電部材との接触を防止するべく、トロリ線200のコーナー部と突出したボルト301の端部とを結ぶ直線L2と、トロリ線200の摺動面の延長面L3とがつくる後退角θが40°以上を満たし、かつできるだけトロリ線200の近くに締付機構300が配されるように、ボルト301及びナット302の大きさ、イヤ部14に設けた嵌合孔16の位置を選択する。具体的には、爪部15の先端15a同士を結ぶ直線L4と嵌合孔16の中心軸L5との間の距離S1を15mmとしている。このような締付機構300は、架台10の長手方向に所定の間隔で複数配される。
【0036】
上述のように剛体電車線1は、イア部14に締付機構300を配すると共に、爪部15の外側面(第一外側面)を締付機構300の作用面と同一面としたことで、締付機構300の締付力がより効率よく爪部15に伝達される。これに対し、図1(B)に示す従来の剛体電車線120では、連結部112に対してイア113を突出して設けると共に、ボルト311及びナット312を連結部112に配している。つまり、爪部114の外側面と締付力が作用する連結部112の側面とが同一面となっていない。そのため、爪部114に伝達される締付力は、剛体電車線1よりも小さくなる。
【0037】
また、剛体電車線1は、トロリ線200のより近くに締付機構300を配しているため、締付力を更に効果的に爪部15に作用させることができる。これに対し、図1(B)に示す従来の剛体電車線120では、連結部112に対してイア113を突出させて脚片111bを形成していることに加えて、イア113は、ボルト311及びナット312を配置可能な大きさを有していない。そのため、ボルト311及びナット312をトロリ線200に近づけることに限界がある。具体的には、爪部114の先端同士を結ぶ直線L4と嵌合孔の中心軸L5との間の距離S120が21mmであり、距離S1より大きい。
【0038】
これらのことから剛体電車線1は、従来の剛体電車線120と比較して、トロリ線の保持力をより強固にすることができる。
【0039】
また、剛体電車線1では、イア部対向面に突起17を設けていることで、空隙18に水が溜まっても、この水によりトロリ線が腐食して電気的特性が劣化することをより確実に防止することができる。
【0040】
《実施例2》
図2は、本発明剛体電車線の断面図であり、幅が狭いトロリ線を保持する例を示す。実施例1で示した剛体電車線は、比較的幅の広いトロリ線を具えた場合を説明したが、図2に示すようにトロリ線の幅が狭い場合は、イア部の大きさを適宜変更することで、実施例1で示した剛体電車線と同様にトロリ線の保持力の向上を図ることができる。具体的には、例えば、イア部の幅(イア部側面とイア部対向面間の距離)W3をトロリ線210の幅に応じて、図1に示す剛体電車線1のイア部14の幅W1よりも小さくすることが挙げられる。なお、連結部の幅(連結部側面と連結部対向面間の距離)W4は、図1に示す剛体電車線1の連結部13の幅W2と同等でよい。
【0041】
図2に示す剛体電車線2の基本的構成は、図1に示す剛体電車線1と同様であり、詳細は省略する。剛体電車線2は、架台20と、架台20に保持されるトロリ線210と、架台20を締め付ける締付機構300'とを有する。架台20は、剛性を有する取付片21と、一対の脚片22とを具える。脚片22は、トロリ線210の側面に設けられた溝210aに嵌め込まれる爪部25を有するイア部24と、イア部24と取付片21とを連結する連結部23とを具える。イア部24の幅W3は、連結部23の幅W4よりも大きくしている。また、爪部25は、イア部24の接触面(トロリ線210の接合面に接する面)から突出するように設けると共に、その第一外側面25bをイア部24において締付機構300'の締付力が作用する作用面(イア部側面)と同一面としている。イア部24の中間部には、締付機構300'であるボルト301'が貫通される嵌合孔26を具える。ボルト301'は、端部にナット302が螺合される。ボルト301'は、剛体電車線1に具えるボルト300と長さのみが異なるものを用いており、ナット302は、剛体電車線1と同様のものを用いている。また、トロリ線210のコーナー部と突出したボルト301'の端部とを結ぶ直線L2と、トロリ線210の摺動面の延長面L3とがつくる後退角θは40°以上である。イア部24の対向面には、両脚片22を締付機構300'で締め付けた際に接触する突起27を有する。また、両脚片22が締め付けられた際、連結部23の対向面間に比較的大きな空隙28がつくられるように連結部23を取付片21に配している。そして、剛体電車線2では、上述のようにトロリ線210の幅に応じて、イア部24の幅W3を実施例1の場合よりも狭くしている。このようにイア部の幅を変化させることで、本発明架台及び剛体電車線は、トロリ線の幅によらず、従来の剛体電車線よりもトロリ線をより強固に保持することができる。なお、図1に示す剛体電車線1と同様の幅を有するイア部とし、爪部25の先端25a間の距離やイア部の接触面の大きさを変更してトロリ線を保持するように構成してもよい。
【0042】
この剛体電車線2も実施例1と同様に、イア部24に締付機構300'を配すると共に、爪部25の外側面(第一外側面25b)を締付機構300'の作用面と同一面としたことで、締付機構300'の締付力がより効率よく爪部25に伝達され、図4に示す従来の剛体電車線110と比較して、トロリ線の保持力をより強固にできる。
【0043】
また、剛体電車線2は、トロリ線210により近づけて締付機構300'を配している。具体的には、爪部25の先端25a同士を結ぶ直線L4と嵌合孔26の中心軸L5との間の距離S2を15mmとしており、締付力を効果的に爪部25に作用させることができる。これに対し、図4に示す従来の剛体電車線110では、距離S110が21mmであり、距離S2より大きい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明架台及び剛体電車線は、地下鉄、モノレールや新交通システムといった電車の電力供給用部材として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(A)は、本発明剛体電車線の断面図、(B)は、従来の剛体電車線の断面図である。
【図2】本発明剛体電車線の断面図であり、トロリ線の幅が狭い例を示す。
【図3】従来の両イア型の剛体電車線の断面図である。
【図4】従来の剛体電車線の断面図であり、架台とイアとを一体に具える構成のものを示す。
【符号の説明】
【0046】
1,2 剛体電車線
10,20 架台 11,21 取付片 12,22 脚片 13,23 連結部 14,24 イア部
15,25 爪部 15a,25a 先端 15b,25b 第一外側面 16,26 嵌合孔 17,27 突起
18,28 空隙
100,110,120 剛体電車線 101,111 架台 101a,111a 取付片 101b,111b 脚片
102,113 イア 102a,114 爪部 112 連結部 115 空隙
200,210 トロリ線 200a,210a 溝
300,300' 締付機構 301,301',311,321,331 ボルト 302,312,322,332 ナット
【出願人】 【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【識別番号】502143308
【氏名又は名称】三井物産交通システム株式会社
【出願日】 平成17年10月11日(2005.10.11)
【代理人】 【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏


【公開番号】 特開2007−106182(P2007−106182A)
【公開日】 平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願番号】 特願2005−297007(P2005−297007)