トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般

【発明の名称】 ブースターセクションのアーク抑制システム,方法
【発明者】 【氏名】安喰 浩司

【氏名】兎束 哲夫

【要約】 【課題】従来例のような高価な絶縁階級の高いサイリスタ等のスイッチを用いずに、安価に構成でき、長期間に渡り故障せず、メンテナンスも容易な構成でアークの発生を防止することが可能なブースターセクションのアーク抑制システム,方法を提供する。

【解決手段】本発明のブースターセクションのアーク抑制システムは、負き電線に2次側が介挿され、トロリー線に1次側が介挿された吸上変圧器を有するBTセクションにおいて、電気車のパンタグラフと、トロリー線との間のアークの発生を防止するアーク抑制システムであり、吸上変圧器の2次側の端子間に設けられたスイッチ素子と、1次側または2次側と磁気結合した電圧測定用巻線と、1次側または2次側からの電磁誘導により、電圧測定用巻線に発生する誘導起電力を測定し、測定電圧値を出力する電圧測定部と、測定電圧値に基づいて、スイッチ素子のオン/オフ制御する開閉制御部とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負き電線に2次側が介挿され、トロリー線に1次側が介挿された吸上変圧器を有するBTセクションにおいて、電気車のパンタグラフと、トロリー線との間のアークの発生を防止するアーク抑制システムであり、
前記2次側の端子間に設けられたスイッチ素子と、
1次側または2次側と磁気結合した電圧測定用巻線と、
前記1次側または2次側からの電磁誘導により、前記電圧測定用巻線に発生する誘導起電力を測定し、測定電圧値を出力する電圧測定部と、
該測定電圧値に基づいて、前記スイッチ素子のオン/オフ制御する開閉制御部と
を有することを特徴とするアーク抑制システム。
【請求項2】
前記開閉制御部が、前記測定電圧値と予め設定された閾値とを比較し、測定値が閾値以下であることを検出した場合、スイッチ素子をオン状態とすることを特徴とする請求項1記載のアーク抑制システム。
【請求項3】
前記吸上変圧器の1次側または2次側のいずれかに設けられ、吸上変圧器に流れる負荷電流を測定し、測定電流値として出力する電流測定部を有し、
前記開閉制御部が前記測定電流値と測定電圧値とに基づいて、前記スイッチ素子のオン/オフ制御することを特徴とする請求項1に記載のアーク抑制システム。
【請求項4】
前記開閉制御部が、前記測定電圧値と予め設定された閾値とを比較し、測定電圧値が閾値以下であることを検出し、かつ前記測定電流値と設定された閾値とを比較し、測定電流値が所定の閾値を超えたことを検出した場合、スイッチ素子をオン状態とすることを特徴とする請求項3記載のアーク抑制システム。
【請求項5】
負き電線に2次側が介挿され、トロリー線に1次側が介挿された吸上変圧器を有するBTセクションにおいて、電気車のパンタグラフと、トロリー線との間のアークの発生を防止するアーク抑制方法であり、
前記1次側または2次側からの電磁誘導により、前記1次側または2次側と磁気結合した電圧測定用巻線に発生する誘導起電力を測定し、測定電圧値を出力する電圧測定過程と、
該測定電圧値に基づいて、前記前記2次側の端子間に設けられたスイッチ素子をオン/オフ制御する開閉制御過程と
を有することを特徴とするアーク抑制方法。
【請求項6】
前記開閉制御過程において、前記測定電圧値と予め設定された閾値とを比較し、測定値が閾値以下であることを検出した場合、スイッチ素子をオン状態とすることを特徴とする請求項5記載のアーク抑制方法。
【請求項7】
前記吸上変圧器の1次側または2次側のいずれかに設けられた電流測定部により、吸上変圧器に流れる負荷電流を測定して、測定電流値として出力する過程を有し、
前記開閉制御過程において、前記測定電流値と測定電圧値とに基づいて、前記スイッチ素子のオン/オフ制御することを特徴とする請求項5に記載のアーク抑制方法。
【請求項8】
前記開閉制御過程において、前記測定電圧値と予め設定された閾値とを比較し、測定電圧値が閾値以下であることを検出し、かつ前記測定電流値と設定された閾値とを比較し、測定電流値が所定の閾値を超えたことを検出した場合、スイッチ素子をオン状態とすることを特徴とする請求項7記載のアーク抑制方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電気鉄道のき電回路におけるブースターセクションにおけるトロリー線とパンタグラフとの間にて発生するアークを抑制するアーク抑制システム,方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交流電車(電気車200)を駆動するための交流き電方式としては、単巻変圧器き電方式(以下、ATき電方式)と、本発明が対象とする吸上変圧器き電方式(以下、BTき電方式)とがある。
ATき電方式は、図10に示すように、単巻変圧器103の中性点をレール100に接続し、一端をトロリー線101に接続し、他端をき電線102に接続した単相3線式の回路方式である。
ここで、単巻変圧器103の巻数比は、任意に設定することができるが、一般に1:1を使用し、き電電圧Eを、例えば30kV(または22kV)とすると、き電用変電所104の送出電圧2Eを、60kV(または44kV)としている。
【0003】
一方、BTき電方式は、図11に示すように、レール100から大地への漏れ電流によって、近傍の通信線等に生ずる通信誘導を低減させるため、1次・2次の巻線比が1:1の比率の吸上変圧器106(帰電流を吸上げるBooster TransformerすなわちBT)を所定の距離単位(例えば、4km)に設けて、レール100に、トロリー線101から電気車200を介して流れる帰電流を吸上げ、負き電線105に流し込む方式である。ここで、隣接するBTセクションの中間地点及びき電用変電所の直近にて負き電線105とレール100とを吸上線115により接続する。
また、BTき電方式は、BTのトロリ側端子間の短絡を避けるため、トロリー線101にブースターセクション107を設ける必要がある。ここで、BTき電方式において、ブースターセクションとして代表的な構成は、トロリー線の引き留め箇所の平行部分におけるトロリー線相互の離隔空間を絶縁に用いたものである。
【0004】
このため、電気車200がBTを通過する際、パンタグラフにて、ブースターセクションの絶縁を一時的に短絡し、再度絶縁状態になる際に、負荷電流の一部を遮断するため、ブースター(BT)セクションとパンタグラフとの間にアークが発生する。
電気車200がBTセクション107を通過する際に、電気車200のパンタグラフにより、このBTセクション107の絶縁区間がショートされ、再度絶縁状態になる瞬間にパンタグラフで遮断する電流を遮断電流、また、再度絶縁状態になった瞬間に、BTセクション間に発生する電圧を回復電圧と定義し、発生するアークの規模はこの遮断電流と回復電圧との大きさにより表現される。
【0005】
遮断電流の発生原理としては、図12に示すように、電気車200がBTセクション107を通過する際、電気車200のパンタグラフがBTセクション107の絶縁区間を短絡すると、トロリー線101に介挿された吸上変圧器106の1次側の端子間が短絡することとなり、吸い上げ変圧器106がレールからの電流吸い上げの機能を失う。
したがって、図12に示すように、電気車200に流れる負荷電流はパンタグラフを介して、電流I1の経路と電流I2の経路とに、それぞれのインピーダンス比により分流することになる。
図12に示すように、電気車200がき電用変電所104から遠ざかる方向に走行している場合、パンタグラフにより電流I1を遮断することになり、この電流I1が遮断電流である。
【0006】
また、回復電圧の発生原理としては、図13に示すように、電気車200がBTセクション107を通過する際に、パンタグラフによりBTセクションを短絡し、再び絶縁状態となった瞬間に、負荷電流Iの全てが図示する経路で負き電線105に流れ、負き電線105のインピーダンスにより、それぞれ電圧I・ZNF1と電圧I・ZNF2とが発生する。ここで、ZNF1が吸上変圧器106と、変電所側の吸上線との間の負き電線インピーダンスであり、ZNF2が吸上変圧器106と変電所からみてBTの遠方側にある吸上線との間の負き電線インピーダンスである。
【0007】
この発生する電圧は、吸上線箇所108を電位基準とした電圧であるため、吸上線箇所108のレール電位を無視すると、負き電線105の対地電圧となる。
また、吸上線箇所108から遠い箇所ほど負き電線108における対地電圧が高くなるため、BTセクション107の領域で最も高くなり、BT2次側(負き電線側)端子間にはI・(ZNF1+ZNF2)の電圧が発生する。
そして、吸上変圧器106は1次側と2次側の巻数比が1:1であるため、BT2次側に発生した電圧はBT1次側(トロリー線側)に誘起され、BTセクション107の端子間に発生する電圧、すなわち回復電圧となる。
【0008】
上述した回復電圧が、アーク電圧に対して高ければ、電気車200のパンタグラフとBTセクション107の端子との間に発生したアークは継続し、アークが伸長して回復電圧よりもアーク電圧が高くなるとアークは消弧する。
そして、鉄道における輸送力の増強に伴って、き電系統の負荷電流も増加する傾向にあり、BTセクションを通過する際のアークの発生が問題となってきている。
負荷電流が大きくなるほど、遮断電流と回復電圧が大きくなるので発生するアークも大きくなり、トロリー線の摩耗・溶断、さらには電気車のパンタグラフの消耗と激しい損傷の原因となる。
【0009】
このため、従来よりアークの発生を防止する機構が、き電回路に設けられている。例えば、図14に示すNFコンデンサ方式は、負き電線105にNF(負荷き電)コンデンサ110を設けることにより、遮断電流を減少させて、アークの発生を抑制している。
すなわち、負き電線105において、吸上変圧器106の2次側で、電気車200の進行方向の端子と吸上線Bとの間にNFコンデンサ110(例えば、1.8〜2.5Ω)を直列に介挿する。
これにより、電気車200からみると、吸上線115B側の帰電流経路の回路インピーダスが減少するので、吸上線115B側に流れる電流が増加し、吸上線A側に流れる電流が減少、すなわち、吸上線115A側に流れる遮断電流が減少するため、アークの発生を抑制することができる。
【0010】
しかしながら、上述したNFコンデンサ方式においては、負荷電流が大きい場合には十分にアーク発生量を抑制することができず、アークの発生の対策として、不十分である。
上述した不具合を解決するため、列車が通過するタイミングを検出し、BTセクションを短絡して、アークの発生を防止するBT短絡方式がある(例えば、特許文献1参照)。
すなわち、図15に示すように、超音波センサ300により列車がBTセクションに接近したことを検知し、制御器301がサイリスタスイッチ302をオン状態として、吸上変圧器106の1次側(トロリー線101側)の端子を短絡し、電気車200が通過したことを検出すると、制御器301はサイリスタスイッチ302をオフ状態とし、BTセクション107の端子を開放する。
【0011】
上述したように、電気車200がBTセクション107を通過する際に、所定の期間において、BTセクション107における端子が短絡されているため、遮断電流と回復電圧との双方を減少させることができ、アークの発生を効率的に防止することができる。
【特許文献1】特開平08−216741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1のアーク抑制システムにおいては、BTセクションの端子を短絡するため、すなわちトロリー線を短絡することになるため、サイリスタスイッチ302の絶縁階級は20号(20000V)を必要とし、機器が大型化するとともに高価なものとなる。
さらに、従来のアーク抑制システムは、超音波センサにより、通過物の検出を行っているため、電気車のみでなく、気動車通過に際してもサイリスタスイッチをオン/オフ制御することとなり、不必要なBT短絡が発生する。また、列車全体が通過する間BTが短絡となるので、BT短絡時間が長くなり、通信誘導に対し悪影響を及ぼす可能性がある。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、従来例のような高価な高い絶縁階級のサイリスタ等のスイッチを用いずに、安価に構成でき、長期間に渡り故障せず、メンテナンスも容易な構成でアークの発生を防止することが可能な故障点標定システム,方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のアーク抑制システムは、負き電線に2次側が介挿され、トロリー線に1次側が介挿された吸上変圧器を有するBTセクションにおいて、電気車のパンタグラフと、トロリー線との間のアークの発生を防止するアーク抑制システムであり、前記2次側の端子間に設けられたスイッチ素子と、1次側または2次側と磁気結合した電圧測定用巻線と、前記1次側または2次側からの電磁誘導により、前記電圧測定用巻線に発生する誘導起電力を測定し、測定電圧値を出力する電圧測定部と、該測定電圧値に基づいて、前記スイッチ素子のオン/オフ制御する開閉制御部とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明のアーク抑制システムは、前記開閉制御部が、前記測定電圧値と予め設定された閾値とを比較し、測定値が閾値以下であることを検出した場合、スイッチ素子をオン状態とすることを特徴とする。
【0016】
本発明のアーク抑制システムは、前記吸上変圧器の1次側または2次側のいずれかに設けられ、吸上変圧器に流れる負荷電流を測定し、測定電流値として出力する電流測定部を有し、前記開閉制御部が前記測定電流値と測定電圧値とに基づいて、前記スイッチ素子のオン/オフ制御することを特徴とする。
【0017】
本発明のアーク抑制システムは、前記開閉制御部が、前記測定電圧値と予め設定された閾値とを比較し、測定電圧値が閾値以下であることを検出し、かつ前記測定電流値と設定された閾値とを比較し、測定電流値が所定の閾値を超えたことを検出した場合、スイッチ素子をオン状態とすることを特徴とする。
【0018】
本発明のアーク抑制方法は、負き電線に2次側が介挿され、トロリー線に1次側が介挿された吸上変圧器を有するBTセクションにおいて、電気車のパンタグラフと、トロリー線との間のアークの発生を防止するアーク抑制方法であり、前記1次側または2次側からの電磁誘導により、前記1次側または2次側と磁気結合した電圧測定用巻線に発生する誘導起電力を測定し、測定電圧値を出力する電圧測定過程と、該測定電圧値に基づいて、前記2次側の端子間に設けられたスイッチ素子をオン/オフ制御する開閉制御過程とを有する。
【0019】
本発明のアーク抑制方法は、前記開閉制御過程において、前記測定電圧値と予め設定された閾値とを比較し、測定値が閾値以下であることを検出した場合、スイッチ素子をオン状態とすることを特徴とする。
【0020】
本発明のアーク抑制方法は、前記吸上変圧器の1次側または2次側のいずれかに設けられた電流測定部により、吸上変圧器に流れる負荷電流を測定して、測定電流値として出力する過程を有し、前記開閉制御過程において、前記測定電流値と測定電圧値とに基づいて、前記スイッチ素子のオン/オフ制御することを特徴とする。
【0021】
本発明のアーク抑制方法は、前記開閉制御過程において、前記測定電圧値と予め設定された閾値とを比較し、測定電圧値が閾値以下であることを検出し、かつ前記測定電流値と設定された閾値とを比較し、測定電流値が所定の閾値を超えたことを検出した場合、スイッチ素子をオン状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、電気車が通過するタイミングを電気的に検出し、吸上変圧器の2次側にスイッチ素子設けて、2次側の端子を短絡制御してアーク抑制の処理を行うので、短絡制御する負き電線の電圧(例えば、対地3000V)がトロリー線の電圧(例えば、対地20000V)に比較して低いため、従来例のような高価な高い絶縁階級のサイリスタ等のスイッチ素子を用いずに、アーク抑制システムを安価に構成することができる。
また、本発明によれば、上述したように、スイッチ素子対地間に印加される電圧が低いため、スイッチ素子を頻繁にオン/オフ制御しても、長期間に渡り故障することなく、介挿された負き電線の電圧が低いため、スイッチ素子の交換等のメンテナンスも容易とする構成を実現することができる。
【0023】
さらに、本発明によれば、電気車のパンタグラフが吸上トランスの1次側の端子を短絡させた状態(電圧測定用巻線による電圧値の測定)と、BTセクションを電気車が通過した状態(吸上変圧器の1次または2次側に流れる電流値の測定)とを検出して、上記スイッチ素子のオン/オフ(開閉)制御するため、確実に電気車がBTセクションを通過するタイミングのみオン状態とすることができ、BT短絡時間を最低限とすることでBT短絡が通信誘導に与える影響を回避することができる。
また、本発明は、電気車に流れる負荷電流により、電気車の通過を電気的に検知するため、従来のアーク抑制システムのように、気動車または電気車の動力車でない編成車両が通過しても、開閉器の開閉制御を行ってしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の構成としては、BTき電方式を用いて、BTセクションを電気車が通過した際に、BTセクションとパンタグラフとの間で発生するアークを、BTセクションにおける吸上変圧器の低電圧側に接続されている2次側の端子を、電気車の通過を電気的に検知して短絡することにより、上記アークの発生を抑制するシステムとされている。
すなわち、本願発明は、負き電線に2次側が介挿され、トロリー線に1次側が介挿された吸上変圧器を有するBTセクションにおいて、電気車のパンタグラフと、トロリー線との間のアークの発生を防止するアーク抑制システムであって、吸上変圧器の2次側の端子間に設けられたスイッチ素子(開閉器)と、吸上変圧器の1次側または2次側と磁気結合した電圧測定用巻線と、吸上変圧器の1次側または2次側からの電磁誘導により、電圧測定用巻線に発生する誘導起電力を測定し、測定電圧値を出力する電圧測定部と、測定電圧値に基づいて、スイッチ素子のオン/オフ制御する開閉制御装置とを有している。
【0025】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態によるアーク抑制システムを図面を参照して説明する。図1は交流き電方式におけるBTき電方式の系統構成例に対し、上記一実施形態のアーク抑制システムを用いた概念図である。
この図において、BTき電方式は、すでに従来例でも述べたように、図におけるき電用変電所(または電鉄用変電所,交流変電所とも言う)104が、内部のき電用変圧器により受電する三相電圧を適切な単相電圧(例えば、交流22kV)に変換・降圧し、トロリー線101に供給し、電気車200を介してレール100に流れ込む交流の負荷電流を、吸上線を介してレール100から負き電線105に吸上変圧器106の吸上げ効果により吸い上げ、負き電線105を電流帰路として、き電用変電所104に戻る方式である。
第1の実施形態の構成は、開閉制御装置1,電圧測定部2,開閉器3及び電圧測定用巻線4とを有している。
また、ここで、開閉器3は、サイリスタ,VCB(真空遮断器)などが用いられる。
【0026】
次に、図2を用いて第1の実施形態のBTき電回路に対する接続を説明する。図2は本発明の第1の実施形態によるアーク抑制システムの構成例を示すブロック図である。この図2に示すように、BTセクション107において、トロリー線101は所定の間隔に絶縁するため、隔離空間を有した状態で一旦分離されており(端子C及び端子D間に、トロリー線101の配線が存在しない、この部分がBTセクションとなる)、各BTセクションで隔離空間を有して分離されたトロリー線101は、吸上変圧器106の1次側が介挿されて電気的に接続されている。
【0027】
また、吸上変圧器106の2次側はBTセクション107において、負き電線105に介挿され、1次側はBTセクション107において、トロリー電線101に介挿されている。ここで、図2のA及びBは負き電線105に介挿する際の接続に用いる、吸上変圧器106の2次側の端子を示し、C及びDはトロリー線101に介挿する際の接続に用いる、吸上変圧器106の1次側の端子を示している。
【0028】
電圧測定部2は、吸上変圧器106の2次側の端子Aと端子Bの間に生じる端子間電圧を、電圧測定用巻線4により測定し、所定の時間範囲(例えば、数m秒)内の測定結果として測定電圧値を出力する。
開閉器3は、吸上変圧器106の2次側の端子Aと端子Bとの間に介挿されている。
開閉制御装置1は、上記電圧測定部2から測定電圧値を入力し、この測定電圧値が予め設定された閾値電圧以下である場合に上記開閉器3をオン状態とし、閾値電圧を超える場合に開閉器3をオフ状態とする。
【0029】
本発明のアーク抑制システムにおいては、BTセクション107がパンタグラフにて短絡されたときに、上記開閉器3が2次側の端子(端子A及びB)間を短絡することにより、吸上変圧器106の端子A及びB間を短絡するため、従来例に示したI・(ZNF1+ZNF2)の電圧値を有する回復電圧が生成されることがなく、アークの発生は大きく抑制される。
したがって、本発明のアーク抑制システムによれば、BTセクションを電気車200が通過する際、パンタグラフでBTを短絡し、電車の進行に伴い再度絶縁状態となる瞬間に、従来例にて発生していたBTセクションとパンタグラフ間のアークの発生を抑制することができる。
【0030】
ここで、電気車200がBTセクション107を通過する際、電気車200のパンタグラフがトロリ線101の離隔空間で構成されるBTセクション107をパンタグラフが短絡した場合、吸上変圧器106の2次側の端子A及び端子Bとの端子間電圧、すなわち、上記測定電圧値はほぼ「0」となり、電気車200がBTセクションに存在する場合と、トロリー線101が電気車200に電力を供給していない場合、すなわち、近傍に電気車200が全く存在しない場合とが検出される。
上記閾値電圧は、実際に電圧測定部2により電圧値の測定を行い、ノイズ等を考慮して、電気車200が通過して短絡したときに測定される電圧の例えば2倍(その区間の走行に対応して適時調整する)に設定する。
また、開閉制御装置1は、測定電圧値が「0」となることを検出して開閉器3をオン状態とするようにしてもよい。
【0031】
次に、図1,図2及び図3を用いて、本発明の第1の実施形態の動作を説明する。図3は、BTき電回路における各部の電圧値または電流値の時間変化を示す波形図である。
図3において、BT電圧は電圧測定部2が測定した測定電圧値を示し、BT電流は吸上変圧器106Bに流れる電流を示している。
時刻t0〜時刻t1において、電気車200がBTセクション107Aと、BTセクション107Bとの間を走行しているため、BTセクション107Bにおいて短絡は起こっておらず、吸上変圧器106Bの端子A及び端子Bとの端子間電圧(BT電圧)は、主として吸上変圧器106Bと吸上変圧器106Bに隣接する変電所側の吸上線間の負き電線105に負荷電流が流れることによる、負き電線での電圧降下に起因している。
また、き電変電所104からみて、BTセクション107Bよりも遠方に電気車200が存在する場合、BTセクション107Bに接続される負荷き電線105には負荷電流が流れるため、吸上変圧器106Bの端子A及びB間の端子間電圧には所定の電圧、すなわち閾値電圧を超える電圧値が生じている。
【0032】
次に、時刻t1において、電気車200のパンタグラフが吸上変圧器106Bの1次側の端子C及びDを短絡する(BTセクション107Bの短絡)と、BT電圧は、短絡されたために電圧測定用巻線4に電圧が誘起されず、ほぼ「0」となり、電圧測定部2はこのBT電圧を電圧測定値として出力する。
そして、開閉制御装置1は、入力される測定電圧値が閾値電圧以下であることを検出し、開閉器3を閉じてオン状態とする。
このとき、開閉制御装置1は、所定の時間(例えば、100m秒)経過後に、時刻t2において開閉器3がオン状態となるように制御する。
この所定の時間は、電気車200のパンタグラフが吸上変圧器106Bの端子C及びDを短絡している時間に対応して、適時設定するものとする。
【0033】
次に、時刻t3において、電気車200がBTセクション107を通過、すなわち、電気車200のパンタグラフがBTセクション107を開放すると、このBTセクション107に対応した吸上変圧器106の負荷電流の吸上区間に入ることとなる。
このとき、開閉制御装置1は、時刻t2において開閉器3をオン状態としてから、内部のタイマで時刻の計数を開始している。
そして、開閉制御装置1は、予め設定された所定の時間が経過した後に、開閉器3を開いてオフ状態とする。
【0034】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態によるアーク抑制システムを図面を参照して説明する。図4は交流き電方式におけるBTき電方式の系統構成例に対し、上記第2の実施形態のアーク抑制システムを用いた概念図である。
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、吸上変圧器106Bの1次側または2次側に流れるBT電流をブッシングCTにより測定して、測定結果として測定電流値を出力する電流測定部5を設けた点である。他の第1の実施形態と同様な構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
また、第2の実施形態による開閉制御装置1は、測定電圧値と測定電流値とにより、開閉器3の開閉制御を行う。
【0035】
次に、図5を用いて第2の実施形態のBTき電回路に対する接続を説明する。図5は本発明の第2の実施形態によるアーク抑制システムの構成例を示すブロック図である。この図5に示すように、第1の実施形態と同様に、BTセクション107において、トロリー線101を所定の間隔に絶縁するため、気中離隔距離を有した状態で一旦分離されており、分離された各々のトロリー線は、吸上変圧器106の1次側端子に接続されている。
また、吸上変圧器106の2次側はBTセクション107において、負き電線105に介挿され、1次側はBTセクション107において、トロリー電線101に介挿されている。ここで、図5のA及びBは負き電線105に介挿する際の接続に用いる、吸上変圧器106の2次側の端子を示し、C及びDはトロリー線101に介挿する際の接続に用いる、吸上変圧器106の1次側の端子を示している。
【0036】
電圧測定部2は、吸上変圧器106の2次側の端子A及び端子B間に生じる端子間電圧を、電圧測定用巻線4により測定し、所定の時間範囲(例えば、数m秒)内の測定結果として測定電圧値を出力する。
電流測定部5は、BT電流を、吸上変圧器106の1次側または2次側、例えば図4においては1次側にて、ブッシングCT6により測定して、所定の時間範囲(例えば、数m秒)内の測定結果として測定電流値を出力する。
開閉器3は、第1の実施形態と同様に、吸上変圧器106の2次側の端子Aと端子Bとの間に介挿されている。
【0037】
開閉制御装置1は、上記電圧測定部2から測定電圧値を入力し、また電流測定部5から測定電流値を入力し、入力される測定電圧値及び測定電流値各々を、予め設定された閾値電圧または閾値電流と比較して、この比較結果により開閉器3の開閉制御を行う。
すなわち、開閉制御装置1は、測定電圧値が第1の実施形態と同様に閾値電圧以下であり、かつ測定電流値が第1の閾値電流を超えている場合のみ、開閉装置を閉じてオン状態とする。
一方、開閉制御装置1は、開閉器3がオン状態でかつ電流増加量が第2の閾値を超えた場合、開閉器3を開けてオフ状態とする。
【0038】
閾値電圧については第1の実施形態と同様であるため、説明を省略し、第1及び第2の閾値電流について説明する。
ここで、電気車200がBTセクション107を通過する際、トロリー線101の隔離空間を、電気車200のパンタグラフが短絡した場合、上記測定電流は負荷電流の1部が流れるため、所定の電流を閾値電流として設定していれば電気車200の通過を検知することができる。
【0039】
そして、図12に示すように、電気車200がBTセクション107の吸上変圧器106の端子C及びDを短絡すると、端子Cおよび端子Dに負荷電流の1部の電流I2が流れる。
実際の測定結果からその区間における電流I2を求め、例えば、この数値の0.3倍を第1の閾値電流とする。
また、図7に示すように、BTセクション107を電気車200が通過すると、電気車200は変電所104からみると、BT106の遠方に位置するため、トロリー線101を介して、電流が電気車200に供給される。この電流はすべて吸上変圧器106の1次巻線に流れる。これに応じて吸上変圧器106の2次巻線にも全負荷電流に相当する電流が流れるので、BT電流は1次側および2次側とも増加する。
したがって、第2の電流閾値は、BT電流の増加分として、実際に測定した電気車200に流れる負荷電流の例えば5割の数値を設定することにより、電気車200がBTセクション107を通過したことを検知することができる。
【0040】
次に、図3,図4及び図8を用いて、本発明の第2の実施形態の動作を説明する。図8は、図3の時刻に対応したBTき電回路における各部の電圧値,電流値及び制御信号の時間変化を示すタイミングチャートである。
時刻t0〜時刻t1において、電気車200はBTセクション107Aと、BTセクション107Bとの間を走行しているため、BTセクション107Bの短絡は起こっておらず、吸上変圧器106の端子Aと端子Bの端子間電圧であるBT電圧は、主として吸上変圧器106Bを挟む両側の吸上線位置におけるレール100のレール電位の差に起因している。また、電気車200がBTセクション107Bの吸上変圧器106Bの対象区間に存在しないため、BT電流も流れていない。
このとき、開閉制御装置1は、入力される測定電圧値が閾値電圧を超えており、測定電流値が第1の閾値電流以下であるため、開閉器3を開いてオフ状態としている。
【0041】
次に、時刻t1において、電気車200のパンタグラフが吸上変圧器106Bの1次側の端子Cと端子Dを短絡すると、BT電圧は、短絡されたために電圧測定用巻線4に電圧が誘起されず、ほぼ「0」となり、電圧測定部2はこのBT電圧を電圧測定値として出力する。
また、電気車200のパンタグラフが吸上変圧器106の端子Cと端子Dを短絡することにより、端子Dを介して上記パンタグラフに負荷電流の一部が流れるため、BT電流が第1の閾値電流を超える所定の電流値にて流れる。
このとき、電流測定値5は、BT電流の測定値である電流測定値を開閉制御装置1へ出力する。
【0042】
そして、開閉制御装置1は、入力される測定電圧値が閾値電圧以下であり、かつ測定電流値が第1の閾値電流を超えたことを検出すると、開閉器3を閉じてオン状態とする。
このとき、開閉制御装置1は、所定の時間(例えば、100m秒)経過後に、時刻t2において開閉器3がオン状態となるように制御する。
この所定の時間は、電気車200のパンタグラフが吸上変圧器106の端子Cと端子Dを短絡している時間に対応して、適時設定するものとする。
【0043】
次に、時刻t3において、電気車200がBTセクション107を通過、すなわち、電気車200のパンタグラフが吸上変圧器106Bの端子Cと端子D(BTセクション107B)を開放すると、吸上変圧器106Bの負荷電流の吸上区間に入ることとなる。
このとき、電気車200は変電所104からみてBT106Bの遠方に位置するので、トロリ線を介して電気車200に供給される電流は全てBT106Bの1次側巻線に流れる。したがって、BT106Bの2次巻線にも全負荷電流に相当する電流がBT106Bと開閉器3の間で循環電流として流れる。したがって、電気車200がBTセクション107Bを短絡しているときと比較して、BT電流および開閉器電流は大きく増加する。よって第2の閾値を適当な値とすることで、この電流増加量を検知し、電気車がBTセクションを通過したことを判断できる。
【0044】
そして、開閉制御装置1は、開閉器が投入されオン状態にあるときにBT電流増加量が第2の閾値電流を超えていることを検出すると、開閉器3を開いてオフ状態とする。
また、図8に示すように、時刻t4におけるように、BT電流増加量を第2の閾値電流と比較することなく、開閉制御装置1は、開閉器3をオン状態としてから、またはオフ状態となる状態が検出されてから、内部のタイマで時刻を計数して、予め設定された所定の時間が経過した後に、開閉器3を開いてオフ状態とするように構成してもよい。
さらに、開閉器3をオン状態からオフ状態とする制御を、基本的に、BT電流増加量の第2の閾値電流と比較することにより行い、これが動作しなかったときの保証として、所定の時刻が経過したことにより、オン状態からオフ状態とする制御を行うようにしてもよい。
【0045】
第1の実施形態がBTセクションの吸上区間に、電気車が存在しないときにも、開閉器をオン状態とする場合があるが、上述した第2の実施形態のアーク抑制システムは、BT電圧とBT電流との双方の値を閾値と比較して、開閉器の開閉制御を行うため、確実に電気車のパンタグラフが、BTセクションにおける吸上変圧器の1次側(トロリー線に介挿されている)の端子を短絡するタイミングを検知することができ、電気車がBTセクションを短絡したときのみ、開閉器をオン状態として、パンタグラフとBTセクションとの間のアークの抑制処理を行うことが可能となる。
【0046】
また、第2の実施形態において、既に設けられているBTき電回路に対応させるため、後付によりき電回路に接続することができる構成を、図9に示す。図9は第2の実施形態によるアーク抑制システムの変圧変流ユニットの構成例を示すブロック図である。
各BTセクションにて、電気車の走行方向に対して、吸上変圧器106の吸上区間の端子Bに接続された負き電線105に、端子R及び端子Qにより変圧変流ユニットを介挿する。
【0047】
上記変圧変流ユニット10は、すでに述べた電圧測定用巻線4とブッシングCT6とに対応する構成である。変圧変流ユニット10は、1次側の端子がそれぞれ端子A及び端子Bに接続された計器用変圧器9を有しており、端子Rと変圧変流ユニット10との配線に計器用変流器6が設けられている。
そして、電圧測定部2は、上記計器用変圧器9の2次側の端子間に誘起される電圧を測定し、測定結果を測定電圧値として出力する。
また、電流測定部5は、計器用変流器6から入力されるBT電流を、測定電流値として出力する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態によるアーク抑制システムを用いたBTき電方式のき電回路の構成例を示す概念図である。
【図2】第1の実施形態による図1のアーク抑制システムの構成例を示すブロック図である。
【図3】BTセクションの吸上変圧器にて測定される、電気車の位置におけるBT電圧とBT電流との波形を示す波形図である。
【図4】本発明の第2の実施形態によるアーク抑制システムを用いたBTき電方式のき電回路の構成例を示す概念図である。
【図5】第2の実施形態による図4のアーク抑制システムの構成例を示すブロック図である。
【図6】パンタグラフがBTセクションを短絡し、かつアーク抑制システムの開閉器を投入した際の負荷電流の流れる経路を示す概念図である。
【図7】アーク抑制システムの開閉器が投入(オン状態)となっており、かつパンタグラフがBTセクションを通過した際(直後)の負荷電流の流れる経路を示す概念図である。
【図8】第2の実施形態によるアーク抑制システムにおける動作を示すタイミングチャートである。
【図9】第2の実施形態によるアーク抑制システムの変圧変流ユニットを示すブロック図である。
【図10】交流き電方式(ATき電方式)のき電回路の構成を示す概念図である。
【図11】交流き電方式(BTき電方式)のき電回路の構成を示す概念図である。
【図12】パンタグラフがBTセクションを短絡した際、パンタグラフを介して流れる遮断電流によるアークの発生を説明する概念図である。
【図13】パンタグラフによるBTセクションの短絡が解消された際、発生する回復電圧によるアークの発生を説明する概念図である。
【図14】アーク抑制に用いられるNFコンデンサ方式によるアークの抑制を説明する概念図である。
【図15】ンタグラフがBTセクションを短絡した際に、吸上変圧器の1次側の端子を短絡することによるアークの抑制を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0049】
1…開閉制御装置 2…電圧測定部
3…開閉器 4…電圧測定用巻線
5…電流測定部 6…ブッシングCT
9…計器用変圧器 10…変圧変流ユニット
100…レール 101…トロリー線
104…き電用変電所 105…負き電線
106…吸上変圧器 107…BTセクション
102…き電線 103…単巻変圧器
108…吸上線箇所 110…NFコンデンサ
115…吸上線 200…電気車
300…センサ制御器 301…制御器
302…超音波センサ
【出願人】 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【出願日】 平成17年6月24日(2005.6.24)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆


【公開番号】 特開2007−1463(P2007−1463A)
【公開日】 平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願番号】 特願2005−184714(P2005−184714)