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【発明の名称】 熱可塑性樹脂製多層シート
【発明者】 【氏名】熊谷 誠
【課題】二次成形後も艶消し状態を維持するとともに、その樹脂製多層シートを工程内リサイクルしても耐衝撃性の良好なABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)製多層シートを提供する。

【解決手段】ABS樹脂からなるベース層の片面又は両面に、不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合ゴムを含有するゴム成分を含むABS樹脂からなる表層を一体化する。ベース層を構成するABS樹脂には前記ゴム成分を含有せず、ベース層と表層の一体化は、共押出成形により実現できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)からなるベース層の片面又は両面に、不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合ゴムを含有するゴム成分を含むABS樹脂からなる表層を一体化したことを特徴とする熱可塑性樹脂製多層シート。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)を使用した二層もしくは三層の熱可塑性樹脂製多層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂製シートの表面を艶消しにするために、芳香族ポリエステル又はポリアミドのような結晶性樹脂及び炭酸カルシウム又はタルクなどの無機充填材を含有するスチレン系樹脂を押出成形する熱可塑性樹脂製シートが特許文献1に記載されている。また、二次成形後も艶消し状態を維持し耐衝撃性の良好な樹脂製シートとして、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)からなるベース層の表層に、ポリエステルや無機充填材を配合したAAS樹脂を一体化したAAS樹脂製多層シートが特許文献2に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−170984号公報
【特許文献2】特開2001−260280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、結晶性樹脂や無機充填材を含有するABS樹脂製シートは二次加工により艶が出る心配はないが、これらを含有しないABS樹脂製シートと比較して耐衝撃性が低下し脆くなりやすい。また、ABS樹脂からなるベース層の表層に、結晶性樹脂や無機充填材を配合したABS樹脂を一体化したABS樹脂製多層シートは、繰り返しこれをベース層の製造原料として再使用(工程内リサイクル)すると、工程内リサイクル材を含有しないABS樹脂製多層シートと比較して耐衝撃性が低下し脆くなりやすい。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、二次成形後も艶消し状態を維持するとともに、その樹脂製多層シートを工程内リサイクルしても耐衝撃性の良好なABS樹脂製多層シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るシートは、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)からなるベース層の片面又は両面に、不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合ゴムを含有するゴム成分を含むABS樹脂からなる表層を一体化したことを特徴とする。
【0007】
表層に不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合ゴムを含有するゴム成分を配合し前記ゴム成分を分散させることにより、光が乱反射して艶消し状態となり、かつ、表層の耐衝撃性の低下はほとんどみられない。これにより、この多層シートをベース層に工程内リサイクルしても耐衝撃性の低下はほとんどみられない。
【発明の効果】
【0008】
上述のように、本発明に係るシートは、ABS樹脂のベース層と、不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合ゴムを含有するゴム成分を含むABS樹脂からなる表層を組合せて二層ないしは三層のシートを構成したので、シート表面の光沢が消えた良好な艶消し状態を付与することができる。
また、材料自体が艶消しとなっているため、熱成形等の二次加工後も艶消しの状態を維持できる。さらに、不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合ゴムを含有するゴム成分を選択したので、表層の耐衝撃性の低下がほとんどみられず、これにより、この多層シートをベース層に工程内リサイクルしても耐衝撃性の低下はほとんどみられない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る熱可塑性樹脂製多層シートは、ABS樹脂のベース層と表層を共押出成形して、両層を一体化することができる。表層を構成するABS樹脂には不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合ゴムを含有するゴム成分を添加し、ベース層を構成するABS樹脂には前記材料を添加しない。表層に添加するゴム成分は、前記ゴム成分を予めABS樹脂に練り込んだマスターバッチを適宜使用してもよい。
【0010】
不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合ゴムは、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレン共重合ゴムなどが使用でき、これらを単独もしくは2種以上を組み合せて使用することができる。また、その他のゴム成分としては、例えば、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴムなどが使用でき、これらを単独もしくは2種以上を組み合せて使用することができる。
なお、シート表面に十分な艶消し状態を付与するためには、ゴム成分中の不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合ゴムの含有量は、20質量%以上が好ましい。また、艶消し状態の付与および耐衝撃性の点から、前記ゴム成分の平均粒径は、1〜5μmで分散していることが好ましい。
【実施例】
【0011】
以下、実施例により本発明を説明する。
実施例1
アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(日本ゼオン製、Nipol 1042)とスチレン−ブタジエン共重合ゴム(日本ゼオン製、Nipol 1502)を質量比40/60の割合で均一混合したゴム成分50質量%を予めABS樹脂(UMG・ABS製、CL)50質量%に練り込んだマスターバッチを準備する。このマスターバッチを20質量%含有するABS樹脂を表層とし、これを含有しないABS樹脂をベース層として、共押出成形により表層(0.3mm)とベース層(2.7mm)を一体化した二層シートを作製した。
【0012】
実施例2
実施例1のシートを粉砕して、ベース層へ50質量%工程内リサイクルした以外は、実施例1と同様にして二層シートを作製した。
【0013】
実施例3
実施例1のシートを粉砕して、ベース層へ100質量%工程内リサイクルした以外は、実施例1と同様にして二層シートを作製した。
【0014】
従来例1
タルク(竹原化学工業製、JR−61)5質量%とPET(ポリエチレンテレフタレート、三菱レーヨン製、PA−200)10質量%を含有するABS樹脂を表層とし、これを含有しないABS樹脂をベース層として、共押出成形により表層(0.3mm)とベース層(2.7mm)を一体化した二層シートを作製した。
【0015】
従来例2
従来例1のシートを粉砕して、ベース層へ50質量%工程内リサイクルした以外は、従来例1と同様にして二層シートを作製した。
【0016】
従来例3
従来例1のシートを粉砕して、ベース層へ100質量%工程内リサイクルした以外は、従来例1と同様にして二層シートを作製した。
【0017】
上記各シートのアイゾット衝撃値と表面光沢を測定した結果を表1に示す。測定方法は、以下に示すとおりである。
アイゾット衝撃値:作製した二層シートをJIS−K−1170の2号試験片に加工し、アイゾット衝撃試験機により試験片の吸収エネルギーを測定し、アイゾット衝撃値を計算した。
表面光沢:JIS−K−7105に基づき、光沢度測定装置により、二層シートの60度鏡面光沢度を測定した。
【0018】
【表1】


【出願人】 【識別番号】000001203
【氏名又は名称】新神戸電機株式会社
【出願日】 平成17年11月21日(2005.11.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2007−136906(P2007−136906A)
【公開日】 平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願番号】 特願2005−335110(P2005−335110)