| 【発明の名称】 |
微小検体回収機構および微小検体回収方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】村椿 良司
【氏名】高沢 義昭
【氏名】中川 泰伸
【氏名】中島 晴記
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| 【要約】 |
【課題】マイクロウェル基板上の各ウェル内からそれぞれ目的とする微小検体のみを効率よく回収することができる回収機構および回収方法の提供。
【解決手段】微小検体回収機構において、マイクロウェル基板上の個々のマイクロウェルの外周に、微小検体が入り込めない幅寸法の溝部が、ウェル中心外周に向かう方向に沿って1本以上形成され、ウェル内の微小検体を吸引するためのノズルの先端の最小外径が前記マイクロウェル内径より大きく、且つ前記ノズル先端の最大外径が前記マイクロウェル周りの溝部最外端上に形成される外周円の直径寸法より小さいものとした。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のマイクロウェルを備えたマイクロウェル基板上の個々のマイクロウェル内から、それぞれ微小検体をノズルにより吸引する微小検体回収機構において、 各マイクロウェルの外周に、前記微小検体が入り込めない幅寸法の溝部が、ウェル中心から外周に向かう方向に沿って1本以上形成され、 前記ノズルの先端の最小外径が前記マイクロウェル内径より大きく、且つ前記ノズル先端の最大外径が前記マイクロウェル周りの溝部最外端上に形成される外周円の直径寸法より小さいことを特徴とする微小検体回収機構。 【請求項2】 前記ノズルのノズル孔内を微加圧および微減圧する圧力微調整手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の微小検体回収機構。 【請求項3】 複数のマイクロウェルを備えたマイクロウェル基板上の個々のマイクロウェル内からそれぞれ微小検体をノズルにより吸引する微小検体回収方法において、 ノズル孔内を毛細管力とつり合う微加圧状態とする工程と、 該微加圧状態のノズルの先端を検体回収対象のマイクロウェル表面に押し当ててから、ノズル孔内の前記微加圧状態の解除によって生じる毛細管力によりあるいは負圧にすることにより該マイクロウェル内の微小検体をノズル孔内に吸い上げる工程と、 微小検体吸い上げ後のノズル孔内を微加圧しつつ該ノズル孔内に細胞を保持した状態でノズル先端を前記マイクロウェル表面から離脱させる工程と、を備えたことを特徴とする微小検体回収方法。 【請求項4】 前記ノズル孔内を微加圧状態とする工程の前に、ノズル孔内に液体を吸引保持しておく液保持工程を備えたことを特徴とする請求項3に記載の微小検体回収方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、マイクロウェル基板からノズルを用いて各ウェル内の微小検体を回収するための回収機構および回収方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年のDNAやタンパク質解析技術の向上に伴い、シングルセルレベルの研究も盛んになっているが、細胞を扱う上でいかに迅速に且つ大量に処理し解析をするかが重要な要素となっており、従って解析装置や分析機器なども高速・高精度・高密度・小型化が進んできている。 【0003】 現在、細胞の解析には、半導体製造技術を応用して形成された小さな窪み(マイクロウェル)が多数設けられた基板からなる細胞チップが利用されている。この細胞チップは、例えばそれぞれ細胞が1個が入るマイクロウェルが数センチ角内に数十万個配置されており、これら各ウェルに細胞が1個ずつ配置され、一度に数十万個の細胞について解析が行われるものである。 【0004】 このように分析後の細胞やその他タンパク質等の微小検体を各ウェルから回収するには、まず手動で行う場合は顕微鏡下でガラスキャピラリーを使用して回収するマイクロマニュピレーション方法がある。この方法では、リアルタイムで回収状況を確認できるメリットがあることから、多くの研究で利用されている。しかしこのようなマイクロマニュピレーション方法では、作業者に熟練が要求され、負担が大きく、また作業者によっては熟練度に個人差が生じてしまう。 【0005】 そこでこのような作業者の熟練や負担が軽減されるものとして、ウェルからの微小検体の回収を装置による自動で行う方法も試されている。このような自動装置としては、例えば、光学システムを用いてノズル先端位置を高精度に計測しこの位置情報に基づいてノズル先端をウェル中心に位置決めし、細胞を回収するものがある(例えば、特許文献1参照。)。 【0006】 【特許文献1】特開2005−49197号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上記のように高精度な位置決めでノズル先端をウェル上部に移動させて微小検体を回収する方法においては、通常、ノズル先端とマイクロウェル基板表面との距離を、周囲より目的以外の細胞が入り込まない程度の隙間を開けて流れをつくり狙った微小検体を吸い上げていた。 【0008】 しかしながら、この方法では、ある程度は目的の微小検体を回収することは可能ではあるが、ウェル周囲液の流れが、ウェル底にある微小検体に直接作用しないため、回収できない場合があった。 【0009】 また、図4に示すように、マイクロウェル基板21の所定ウェル22上にノズル30の先端を位置決めして該ウェル22内の細胞等の微小検体Sを吸引すると、基板21の表面に沿った水溶液の流れが水平方向から生じてしまうため、特に細胞の場合は通常は球体状で存在しているが実際は不定形物質で状況に応じて形状が変化してしまい、球体状における直径サイズ以下の僅かな隙間にでも入り込むことが可能であり、ノズル先端32と基板21表面との隙間を最小限に抑えたとしても、周囲の浮遊細胞や場合によっては隣のウェル内の細胞まで吸引してしまい、回収後の処理の負担になることがあった。 【0010】 本発明の目的は、上記問題点に鑑み、マイクロウェル基板上の各ウェル内からそれぞれ目的とする微小検体のみを効率よく回収することができる回収機構および回収方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0011】 上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る微小検体回収機構は、複数のマイクロウェルを備えたマイクロウェル基板上の個々のマイクロウェル内から、それぞれ微小検体をノズルにより吸引する微小検体回収機構において、各マイクロウェルの外周に、前記微小検体が入り込めない幅寸法の溝部が、ウェル中心から外周に向かう方向に沿って1本以上形成され、前記ノズルの先端の最小外径が前記マイクロウェル内径より大きく、且つ前記ノズル先端の最大外径が前記マイクロウェル周りの溝部最外端上に形成される外周円の直径寸法より小さいことを特徴とするものである。 【0012】 また、請求項2に記載の発明に係る微小検体回収機構は、請求項1に記載の微小検体回収機構において、前記ノズルのノズル孔内を加圧および減圧する圧力微調整手段を備えたものである。 【0013】 請求項3に記載の発明に係る微小検体回収方法は、複数のマイクロウェルを備えたマイクロウェル基板上の個々のマイクロウェル内からそれぞれ微小検体をノズルにより吸引する微小検体回収方法において、ノズル孔内を毛細管力とつり合う微加圧状態とする工程と、該微加圧状態のノズルの先端を検体回収対象のマイクロウェル表面に押し当ててから、ノズル孔内の前記微加圧状態の解除によって生じる毛細管力によりあるいは負圧にすることにより該マイクロウェル内の微小検体をノズル孔内に吸い上げる工程と、微小検体吸い上げ後のノズル孔内を微加圧しつつ該ノズル孔内に細胞を保持した状態でノズル先端を前記マイクロウェル表面から離脱させる工程と、を備えたものである。 【0014】 さらに、請求項4に記載の発明に係る微小検体回収方法は、請求項3に記載の微小検体回収方法において、前記ノズル孔内を微加圧状態とする工程の前に、ノズル孔内に液体を吸引保持しておく液保持工程を備えたものである。 【発明の効果】 【0015】 本発明の微小検体回収機構においては、マイクロウェルの外周に微小検体が入り込めない幅寸法の溝部を一本以上形成することによって、ノズル先端からウェル内の微小検体を吸い上げる際に、周囲の浮遊細胞や隣のウェル内の微小検体を吸い込んでしまうような基板表面に沿った水平方向の水溶液流れを生じることなく、溝部の深さ方向に沿った略垂直方向の液体流れを形成して目的の微小検体のみを吸引回収できるという効果がある。 【0016】 本発明の微小検体回収方法においては、目的の微小検体の吸引前および吸引後のノズル先端離脱前の微加圧状態によって、ノズル先端がマイクロウェル基板上の液中へ挿入される時も液中から引き上げられる時も周辺の浮遊細胞が毛細管力によりノズル孔内に吸い上げられることがなく、目的の微小検体のみを回収できるという効果がある。この効果は、上記本発明の微小検体回収機構を用いることによってその効果が相乗的に作用し、目的微小検体のみの回収をより一層確実に安定したものにできる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 請求項1に記載の本発明による微小検体回収機構においては、マイクロウェル基板上の各マイクロウェルの外周に、微小検体が入り込めない幅寸法の溝部を一本以上形成し、ノズル先端の最小外径をマイクロウェル内径より大きく、ノズル先端最大外径をマイクロウェル周りの溝部最外端上に形成される外周円の直径寸法より小さいものとすることによって、ノズル先端を対象とするマイクロウェル上に位置決めして該ウェル内の微小検体を吸い上げる際に、周囲のウェル内の微小検体を吸い込んでしまうような基板表面に沿った水平方向の水溶液流れを生じることなく、目的の微小検体のみを回収することができる。 【0018】 即ち、本発明の回収機構によれば、図1に示すように、複数個のウェル2が所定間隔で設けられたマイクロウェル基板1上に供給されている緩衝液等の液体は、それぞれ細胞等の微小検体が内部に配置されている各ウェル2内だけでなくその外周に形成された溝部3内にも充たされている。 【0019】 従って、この状態で、最大外径が各ウェル2周りの溝部3の最外端上に形成される外周円の直径寸法より小さく且つ最小外径が各ウェル2の内径より大きいノズル10の先端12を対象のウェル2上に当接させて目的の微小検体Sを吸引すると、ウェル2周辺の液体には、図中矢印で示すように溝部3の深さ方向に向かうと共に略垂直上方に向かう流れが生じ、従来のような基板1表面に沿った水平方向の流れが生じることがないため、周辺の浮遊細胞や隣のウェル2内の微小検体までを吸い込んでしまうことなく、目的の微小検体Sのみをノズル10のノズル孔11内に回収することができる。しかもこの略垂直方向に沿った流動が微小検体に効果的に作用するため、低い吸引圧でも容易にノズル孔内に微小検体を吸い上げることができる。 【0020】 このような微小検体Sの吸引時に略垂直方向の流れをウェル周りに形成するため溝部は、まず微小検体が入り込むことのない小さい幅寸法のものとする。また各ウェル外周にウェル中心から外周に向かう方向に沿って1本以上設けるものとした本発明の溝部は、各ウェル周りにできるだけ水平方向の液体流れを作らないためにはその本数が多いほど効果的となるが、隣接するウェルとの間で干渉が生じることなく製造が困難にならない配置および本数を適宜選択する。 【0021】 また複数本の溝部を設ける場合は、互いに等角度間隔でウェル周りに均一に設けてウェル全周に亘って水平方向の液体流れが生じ難い構成とするのが望まれる。例えば、2本の溝部をそれぞれ設ける場合には、ウェルの直径延長方向、一直線上にI型に配置され、基板の4本の溝部をそれぞれ設ける場合は互いに直交する2つの直線上に十字型に配置されることになるが、各直線を基板の辺縁やウェル列び方向に対して適度な角度で傾斜させる方向に沿わせればよい。 【0022】 また溝部は、上記のような略垂直方向の流れを良好に形成するために、ノズル吸引時にノズル先端の外周より溝部外側領域が露出していることが求められるため、溝部の長さは、ノズル外径に少なくともノズル位置制御の精度の倍程度を加えた長さにするなど、適宜設定する。 【0023】 また、このような溝部とウェルに対するノズル先端は、その先端形状がノズル孔形状を含み略真円であれば、単にノズル先端外径サイズを溝部最外端上に形成される外周円の直径寸法より小さくウェル内径より大きくすればよいが、ノズル先端外径が真円状でない場合は、ウェルおよび溝部に対して微小検体吸引時に略垂直方向に沿った液体流れが生じる位置関係が良好に得られるように、それぞれノズル先端の最大外径、最小外径を考慮して適宜調整する。ノズル孔の内径については、対象とする微小検体の吸込みおよび排出がスムーズにできるサイズであれば良い。例えば、容易に変形し易い細胞を対象とする場合には必ずしも該細胞外径より大きくする必要なく、細胞と同じ径もしくは僅かに小さい径であっても問題なく細胞の吸引・排出を行うことはできる。 【0024】 なおウェル形状については、円柱状のものが一般的であるが、断面多角形状としてもよい。 【0025】 このようなウェルが多数設けられるマイクロウェル基板は、特に材質を限定するものではないが、例えばシリコンなどの半導体製造技術を利用できる材質を用いれば、高精度で高密度な基板製造が可能であるため、ウェル形状が円柱状でないものであっても容易に製造できる。 【0026】 一方、ノズルは、微小検体の吸引時にできるだけ基板表面との間に隙間無く当接した状態であるほど、周囲から目的物以外の浮遊細胞等の混入を防ぐことができるため、先端部が基板表面に押し当てられても破損が生じない強度を確保できるものが望ましい。例えばセラミック製のものであれば、加工精度や耐摩耗性に優れたノズルが得られる。 【0027】 また、ノズルの駆動系には、通常、微小検体や緩衝液の吸引、排出のためにノズル孔内の加圧、減圧する圧力調整手段が設けられているが、これらの圧力調整が微小レベルで行えるものとすれば、例えばノズル孔内に微小検体を吸引保持した状態で基板上の液中から離脱する際に液がノズルから落ちない程度、即ち毛細管力とつり合うように微加圧状態とすれば、離脱時に周囲の浮遊細胞を含む液体が吸い込まれることはなくなる。 【0028】 また、請求項3に記載の本発明による微小検体回収方法では、マイクロウェル基板上の各ウェルからそれぞれ微小検体を吸引回収する際に、ノズル孔内の圧力制御を微小レベルで行うことによって、目的とする検体のみをより確実に安定して回収することができるものである。 【0029】 即ち、本方法においては、ノズルによるウェルからの微小検体の吸い上げ工程の直前にノズル孔内を毛細管力とつり合う微加圧状態としておき、このノズル孔内微加圧状態にてノズルの先端を検体回収対象のマイクロウェル表面に押し当ててからノズル孔内の前記微加圧状態の解除によって生じる毛細管力によりあるいは負圧にすることにより該マイクロウェル内の微小検体をノズル孔内に吸い上げるものであるため、ノズル先端を基板上の液中に漬けた瞬間に、微加圧状態にあるノズル孔内に液表面上の浮遊細胞がノズル孔先端内に入り込むことがなく、目的の微小検体のみを吸引回収することが容易となる。 【0030】 次にノズル先端の離脱工程として、微小検体吸い上げ後のノズル孔内を微加圧しつつ該ノズル孔内に細胞を保持した状態でノズル先端を前記マイクロウェル表面から移動させることにより、基板表面の液中からノズル先端を引き上げる際にその液中の浮遊細胞を誤って吸引してしまうこともない。このように、ノズル孔内に目的の微小検体のみを保持したノズル先端を回収容器内に移動させ、最後にノズル孔内を適切に充分加圧することによって該容器内に微小検体を回収することができる。 【0031】 なお、ノズル孔内を微加圧状態とする工程の前に、予めノズル孔内に緩衝液やウェル周囲液等の液体を吸引して液保持状態としておけば、検体吸引時の吸入液量が少なくても、ノズル孔内は常にウェットな状態に保たれ、また吸引後の微小検体もノズル孔内の先端領域に留まるため、スポット時には微小検体を安定に且つ確実にノズルから排出することができる。またノズル孔内が常にウェットであると、乾燥によるノズル内壁面の状態変化やゴミ等の付着も防止でき、吸引時の流れの安定化や浮遊細胞の浸入防止の効果が期待できる。 【0032】 本発明の方法においては、微小検体吸い上げ工程の際のノズル孔内の加圧は微小レベルでよいため、このようなノズル孔内の液保持状態を維持することができる。言い換えれば、ノズル孔内の加圧は適量の液体が抜け落ちていかない程度の微小レベルに設定すれば良い。 【0033】 また、ウェル上でノズル孔内に微小検体を吸引回収する際には、ノズル孔内を減圧して強制的に吸引することもできるが、ノズル孔の毛細管力で充分微小検体を吸い上げることができる場合は、圧力調整することなくノズル孔に自吸させてもよい。この場合、ノズル孔内の微加圧状態を解除するだけで毛細管力により簡単に微小検体の吸い上げが行えるため、操作工程が簡略化する。 【0034】 以上のような本発明による微小検体回収方法を、前述の本発明による微小検体回収機構において用いれば、相乗的に目的以外の微小検体の混入防止効果が発揮され、微小検体の単一での回収ができる。ここで微小検体とは、細胞やビーズなどの単一の回収が困難な粒径のもの一般をいう。 【実施例】 【0035】 本発明の一実施例による微小検体回収機構として、リンパ球を分析対象の微小検体とし、マイクロウェル基板上の各ウェルからそれぞれリンパ球をノズルで回収するための機構を図2に示す。図2(a)はそれぞれウェル内にリンパ球が配置された状態のマイクロウェル基板を上方から見た平面模式図である、(b)は対象ウェル上にノズル先端を位置付けた状態における(a)のB−B断面矢視図である。 【0036】 本実施例においては、対象微小検体が球体状で直径Rが約7μmのリンパ球の分析用として、それぞれ外接円径Wが9.5μmの断面六角形状の複数のウェル2を20μm間隔Zで備えたマイクロウェル基板1を用いるものである。この基板1は、シリコンを材質として半導体製造技術により高精度に高密度で製造することができる。 【0037】 各ウェル2の外周には、幅2μmの溝部3が2本、ウェル2の中心を通る一直線上にウェル中心から外周に向かう方向に沿ってそれぞれ設けられている。各ウェル2の溝部3は、両外端を結ぶ全長(両外端上に形成される外周円の直径寸法)Lが30μmであり、その前記ウェル中心を通る直線上の形成方向をウェル2の横並び方向(紙面左右水平方向)に対して60°傾斜したものとし、各溝部3が周囲の隣合うウェル2に干渉しないように形成した。 【0038】 また、本実施例における検体回収用のノズル10は、その先端12の外形状およびノズル孔11の内形状を略真円のものとし、ノズル先端外径Xを20μm、ノズル孔内径Yを15μmとした。 【0039】 この先端外径Xがウェル2周りの溝部3の前記全長Lより小さく且つウェル2の外接円径Wより大きいノズル10の先端12を対象のウェル2上に当接させた状態でウェル内リンパ球Sを吸引回収しようとした場合、基板1上には、図中矢印曲線で示すように、溝部3の深さ方向に向かうと共に略垂直上方に向かう液体流れが生じる。 【0040】 従って、従来のような基板1の表面に沿った水平方向の流れが生じることがないため、周辺の浮遊細胞や隣のウェル2内の微小検体までを吸い込んでしまうことなく、目的のリンパ球Sのみをノズル10のノズル孔11内に回収することができる。この際、垂直方向に沿った流動がリンパ球Sに作用して、低い吸引圧でも容易にノズル孔11内にリンパ球Sを吸い上げることができる。 【0041】 また本実施例においては、ノズル10に対してノズル孔11内を加圧、減圧する圧力調整手段に、微小な加圧、減圧調整が可能な圧力微調整機能を備えたものとした。 【0042】 以上の構成を備えた本微小検体回収機構において、図3に示すように、予めノズル孔内に液体を吸引保持しておく液保持工程を設けた方法に沿って前記リンパ球Sの回収を行った場合を以下に示す。図3(a)は各工程での状態を示す概略断面図であり、(b)は(a)における各工程の対応する圧力調整状態を示す線図である。 【0043】 まず液保持工程として、ノズル10を緩衝液B中に漬けてノズル孔11内に緩衝液Bを負圧によりあるいは自吸(毛細管力)により吸い上げる(過程(1))。次にノズル孔11内を緩衝液Bが抜け落ちていかない程度に毛細管力につり合う微加圧状態とすることによってノズル孔11内の先端部分にある程度の緩衝液Bを保持させる(過程(2))。 【0044】 次の微小検体(リンパ球S)の吸い上げ工程として、前記ノズル孔11内先端領域における緩衝液保持状態のまま、緩衝液Bが表面上に充たされたマイクロウェル基板1上へ移動させ、ノズル10を回収対象のウェル2上に位置決めした後ノズル先端12をそのウェル2上に押し当てる(過程(3))。そして前記ノズル孔11内を負圧にして該ウェル2内のリンパ球Sをノズル孔11内に吸い上げる(過程(4))。 【0045】 続くノズル先端12の離脱工程として、リンパ球Sを吸い上げた後のノズル孔11内を再び緩衝液Bが落ちない程度に微加圧してノズル孔11内にリンパ球Sを保持した状態とし、この微加圧状態を維持しつつノズル先端12を基板1上の液中から引き上げて離脱する(過程(5))。最後に、回収容器上へ移動し、ノズル孔11内を適宜加圧して回収したリンパ球Sを緩衝液Bと共に回収容器内に排出する。 【0046】 以上の方法では、リンパ球Sの吸引前および吸引後のノズル先端12離脱前の微加圧状態によって、ノズル先端12が基板1上の液中へ挿入される時も、液中から引き上げられる時も、周辺の浮遊細胞がノズル孔11内に吸い上げられることがなく、さらに前記溝部3を設けることによる液体流れの効果も加わって、確実に目的のリンパ球Sのみがノズル孔11内に吸引される。 【0047】 また、ノズル孔11内に予め緩衝液Bを保持しておくことにより、リンパ球S吸引時の吸入液量が少なくても、ノズル孔11内は常にウェットな状態に保たれ、また吸引後のリンパ球Sはノズル孔11内の先端領域に留まるため、スポット時にリンパ球Sを安定に且つ確実にノズル10から回収容器へ排出することができる。またこのようにノズル孔11内を常にウェットな状態にすることにより、乾燥によるノズル内壁面の状態変化やゴミ等の付着も防止して吸引時の流れの安定化や浮遊細胞の浸入防止効果をより一層向上できる。 【図面の簡単な説明】 【0048】 【図1】本発明による微小検体回収機構の作用を示す説明図であり、(a)はそれぞれウェル内にリンパ球が配置された状態のマイクロウェル基板を上方から見た平面模式図、(b)は対象ウェル上にノズル先端を位置付けた状態における(a)のA−A断面矢視図である。 【図2】本発明の一実施例による微小検体回収機構の構成を示す説明図であり、(a)はそれぞれウェル内にリンパ球が配置された状態のマイクロウェル基板を上方から見た平面模式図、(b)は対象ウェル上にノズル先端を位置付けた状態における(a)のB−B断面矢視図である。 【図3】図2の微小検体回収機構を用いた場合の本発明による回収方法を例示する工程図であり、(a)は(1)〜(6)の各過程の状態を示す概略模式図、(b)は(a)の各過程におけるノズル孔内の圧力制御の状態変化を示す線図である。 【図4】従来の微小検体回収機構の一例を示す説明図であり、(a)はそれぞれウェル内に細胞が配置された状態のマイクロウェル基板を上方から見た平面模式図、(b)は対象ウェル上にノズル先端を位置付けた状態における(a)のC−C断面矢視図である。 【符号の説明】 【0049】 1,21:マイクロウェル基板 2,22:マイクロウェル(ウェル) w:ウェル外接円径 R:リンパ球外径 3:溝部 d:溝幅 L:溝部両外端間全長 S:目的の微小検体(リンパ球) 10,30:ノズル 11,31:ノズル孔 12,32:ノズル先端 X:ノズル先端外径 Y:ノズル孔内径
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| 【出願人】 |
【識別番号】000132161 【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
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| 【出願日】 |
平成18年6月9日(2006.6.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100101432 【弁理士】 【氏名又は名称】花村 太
【識別番号】100092082 【弁理士】 【氏名又は名称】佐藤 正年
【識別番号】100099586 【弁理士】 【氏名又は名称】佐藤 年哉
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| 【公開番号】 |
特開2007−326072(P2007−326072A) |
| 【公開日】 |
平成19年12月20日(2007.12.20) |
| 【出願番号】 |
特願2006−160755(P2006−160755) |
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