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【発明の名称】 メタノール合成用触媒及び当該触媒の製造方法、並びにメタノールの製造方法
【発明者】 【氏名】藤元 薫
【氏名】藤本 健一郎
【氏名】山根 典之
【課題】製造原料中に水、二酸化炭素等が少量存在しても活性低下の度合いが低く、低温、低圧で、連続反応において安定的にメタノールを得る。

【解決手段】一酸化炭素、二酸化炭素のいずれか、及び水素を含む原料ガスを反応させてメタノールを製造する方法であって、アルカリ金属ギ酸塩に加えて、Cu、Mg、Na、Pdを含有する触媒、及びアルコール類の存在下に反応を行い、メタノールを得ることを特徴とするメタノールの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素、二酸化炭素の少なくともいずれか、及び水素を含む原料ガスと、溶媒としてのアルコールの存在下で反応を行うギ酸エステルを経由するメタノール合成用触媒であって、アルカリ金属ギ酸塩に加えて、Cu、Mg、Na及びPdを含有する触媒を有することを特徴とするメタノール合成用触媒。
【請求項2】
前記アルカリ金属ギ酸塩がギ酸カリウムであることを特徴とする請求項1に記載のメタノール合成用触媒。
【請求項3】
一酸化炭素、二酸化炭素の少なくともいずれか、及び水素を含む原料ガスと、溶媒としてのアルコールの存在下で反応を行うギ酸エステルを経由するメタノール合成用触媒であって、アルカリ金属ギ酸塩に変化し得るアルカリ金属系触媒に加えて、Cu、Mg、Na及びPdを含有することを特徴とするメタノール合成用触媒。
【請求項4】
前記アルカリ金属ギ酸塩に変化し得るアルカリ金属系触媒が、アルカリ金属炭酸塩であることを特徴とする請求項3に記載のメタノール合成用触媒。
【請求項5】
前記Naが炭酸塩又はギ酸塩としてCu/MgOの固体触媒に担持されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のメタノール合成用触媒。
【請求項6】
前記PdがCu/MgOの固体触媒に担持されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のメタノール合成用触媒。
【請求項7】
前記Pdの担持量が前記Cu、Mg、Na及びPdを含有する触媒を基準に0.001〜1mass%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のメタノール合成用触媒。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のメタノール合成用触媒の製造方法であって、前記Cu/MgOの固体触媒を調製した後、該固体触媒にNa、Pdを担持することを特徴とするメタノール合成用触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のメタノール合成用触媒の製造方法であって、前記Cu/MgOを共沈法で調製した後、Cu/MgOにNa及びPdを含浸法で担持することを特徴とするメタノール合成用触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項5〜7に記載のメタノール合成用触媒の製造方法であって、前記Cu/MgOを共沈法においてpH=8〜11の範囲で一定に保ちながら調製することを特徴とするメタノール製造用触媒の製造方法。
【請求項11】
一酸化炭素、二酸化炭素の少なくともいずれか、及び水素を含む原料ガスを反応させてメタノールを製造する方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒、及びアルコール類の存在下に反応を行い、ギ酸エステル及びメタノールを生成すると共に、生成したギ酸エステルを水素化してメタノールを製造することを特徴とするメタノールの製造方法。
【請求項12】
一酸化炭素、二酸化炭素の少なくともいずれか、及び水素を含む原料ガスを、請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒、及びアルコール類の存在下に反応を行うことで得られた生成物を反応系から分離した後、該生成物中のギ酸エステルを水素化分解触媒で水素化してメタノールを製造することを特徴とするメタノールの製造方法。
【請求項13】
前記アルカリ金属ギ酸塩に替えて、反応中にアルカリ金属ギ酸塩に変化し得るアルカリ金属系触媒を用いることを特徴とする請求項11又は12に記載のメタノールの製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属ギ酸塩がギ酸カリウムであることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載のメタノールの製造方法。
【請求項15】
前記反応中にアルカリ金属ギ酸塩に変化し得るアルカリ金属系触媒がアルカリ炭酸塩であることを特徴とする請求項14記載のメタノールの製造方法。
【請求項16】
前記アルコール類が第一級アルコールであることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項に記載のメタノールの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノール合成用触媒、及び該触媒の製造方法、並びにメタノールの製造方法に関する。さらに詳しくは、一酸化炭素、二酸化炭素のいずれかの炭素源と水素からメタノールを製造する際に、活性の高い触媒及びこれを用いて高効率で生成物を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、工業的にメタノールを合成する際には、メタンを主成分とする天然ガスを水蒸気改質して得られる一酸化炭素と水素(合成ガス)を原料とし、銅・亜鉛系等の触媒を用いて固定床気相法にて、200〜300℃、5〜25MPaという厳しい条件で合成される(非特許文献1)。反応機構としては以下に示すように、二酸化炭素の水素化により、メタノール、水が生成し、次いで生成水が一酸化炭素と反応し二酸化炭素と水素が生成(水性ガスシフト反応)する逐次反応であるとする説が一般的に受け入れられている。
【0003】
CO2 + 3H2 → CH3OH + H2O (1)
H2O + CO → CO2 + H2 (2)
CO + 2H2 → CH3OH (3)
本反応は発熱反応であるが、気相法では熱伝導が悪いために、効率的な抜熱が困難であることから、反応器通過時の転化率を低く抑えて、未反応の高圧原料ガスをリサイクルするという効率に難点のあるプロセスとなっている。しかし、合成ガス中に含まれる、水、二酸化炭素による反応阻害は受けにくいという長所を活かして、様々なプラントが稼働中である。
【0004】
一方、液相でメタノールを合成して、抜熱速度を向上させる様々の方法が検討されている。中でも、低温(100〜180℃程度)で活性の高い触媒を用いる方法は、熱力学的にも生成系に有利であり、注目を集めている(非特許文献2等)。使用される触媒はアルカリ金属アルコキサイドであるが、これらの方法では、合成ガス中に必ず含有される水、二酸化炭素による活性低下が報告され、何れも実用には至っていない(非特許文献3)。これは活性の高いアルカリ金属アルコキサイドが反応中に、低活性で安定なギ酸塩等に変化するためである。活性低下を防ぐためにはppbオーダーまで、原料ガス中の水、二酸化炭素を除去する必要があるが、そのような前処理を行うとコストが高くなり現実的ではない。
【0005】
本発明者らはこれまでに、水、二酸化炭素による活性低下が小さい触媒として、アルカリ金属アルコキサイドを除くアルカリ金属系触媒とアルカリ土類金属系触媒の一方又は双方を水素化分解触媒と共存させて使用する系を見出している(特許文献1)。これらの特許では、水素化分解触媒としてはCu/Mn、Cu/Re、Cu/MgO等が有効であると記載されている。しかし、その後の検討でこれら水素化分解触媒の活性を大きく上回るCu系触媒を見出した。
【特許文献1】特開2001-862701
【非特許文献1】J. C. J. Bart et al., Catal. Today, 2, 1 (1987)
【非特許文献2】大山聖一, PETROTECH, 18(1), 27 (1995)
【非特許文献3】S. Ohyama, Applied Catalysis A: General, 180, 217 (1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決することを目的とするものであり、メタノールの合成原料ガス中に二酸化炭素、水等が少量混在しても触媒の活性低下の度合いが低く、かつ、低温、低圧でギ酸エステル及びメタノールを合成することが可能な触媒及び該触媒の製造方法、並びに該触媒を用いた液相でのメタノールの合成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴とするところは、以下に記す通りである。
(1) 一酸化炭素、二酸化炭素の少なくともいずれか、及び水素を含む原料ガスと溶媒としてのアルコールの存在下で反応を行うギ酸エステルを経由するメタノール合成用触媒であって、アルカリ金属ギ酸塩に加えて、Cu、Mg、Na及びPdを含有する触媒を有することを特徴とするメタノール合成用触媒。
【0008】
(2) 前記アルカリ金属ギ酸塩がギ酸カリウムであることを特徴とする(1)に記載のメタノール合成用触媒。
【0009】
(3) 一酸化炭素、二酸化炭素の少なくともいずれか、及び水素を含む原料ガスと溶媒としてのアルコールの存在下で反応を行うギ酸エステルを経由するメタノール合成用触媒であって、アルカリ金属ギ酸塩に変化し得るアルカリ金属系触媒に加えて、Cu、Mg、Na及びPdを含有することを特徴とするメタノール合成用触媒。
【0010】
(4) 前記アルカリ金属ギ酸塩に変化し得るアルカリ金属系触媒が、アルカリ金属炭酸塩であることを特徴とする(3)に記載のメタノール合成用触媒。
【0011】
(5) 前記Naが炭酸塩又はギ酸塩としてCu/MgOの固体触媒に担持されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のメタノール合成用触媒。
【0012】
(6) 前記PdがCu/MgOの固体触媒に担持されることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のメタノール合成用触媒。
【0013】
(7) 前記Pdの担持量が前記Cu、Mg、Na及びPdを含有する触媒を基準に0.001〜1mass%であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のメタノール合成用触媒。
【0014】
(8) (5)〜(7)に記載のメタノール合成用触媒の製造方法であって、前記Cu/MgOの固体触媒を調製した後、該固体触媒にNa及びPdを担持することを特徴とするメタノール合成用触媒の製造方法。
【0015】
(9) (5)〜(7)に記載のメタノール合成用触媒の製造方法であって、前記Cu/MgOを共沈法で調製した後、Cu/MgOにNa、Pdを含浸法で担持することを特徴とするメタノール合成用触媒の製造方法。
【0016】
(10) (5)〜(7)に記載のメタノール合成用触媒の製造方法であって、前記Cu/MgOが共沈法においてpH=8〜11の範囲で一定に保ちながら調製することを特徴とするメタノール合成用触媒の製造方法。
【0017】
(11) 一酸化炭素、二酸化炭素の少なくともいずれか、及び水素を含む原料ガスを反応させてメタノールを製造する方法であって、(1)〜(7)のいずれかに記載の触媒、及びアルコール類の存在下に反応を行い、ギ酸エステル及びメタノールを生成すると共に、生成したギ酸エステルを水素化してメタノールを製造することを特徴とするメタノールの製造方法。
【0018】
(12) 一酸化炭素、二酸化炭素の少なくともいずれか、及び水素を含む原料ガスを(1)〜(7)のいずれかに記載の触媒、及びアルコール類の存在下に反応を行うことで得られた生成物を反応系から分離した後、該生成物中のギ酸エステルを水素化分解触媒で水素化してメタノールを製造することを特徴とするメタノールの製造方法。
【0019】
(13) 前記アルカリ金属ギ酸塩に替えて、反応中にアルカリ金属ギ酸塩に変化し得るアルカリ金属系触媒を用いることを特徴とする(11)又は(12)に記載のメタノールの製造方法。
【0020】
(14) 前記アルカリ金属ギ酸塩がギ酸カリウムであることを特徴とする(11)〜(13)のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【0021】
(15) 前記反応中にアルカリ金属ギ酸塩に変化し得るアルカリ金属系触媒がアルカリ炭酸塩であることを特徴とする(14)記載のメタノールの製造方法。
【0022】
(16) 前記アルコール類が第一級アルコールであることを特徴とする(11)〜(15)のいずれかに記載のメタノールの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明における、アルカリ金属ギ酸塩に加えて、Cu、Mg、Na、Pdを含有する触媒を共存させた系で、合成原料ガスである、一酸化炭素、二酸化炭素の少なくともいずれか及び水素から溶媒アルコールの存在下でメタノールを製造すると、低温、低圧で連続反応において安定的にメタノールを高効率で合成することが可能となった。また、合成原料ガス中に水、二酸化炭素等が少量混在しても触媒の活性低下の度合いが低いため安価でメタノールを製造することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、触媒及び溶媒を反応器を仕込み原料ガスを供給する半回分式の連続反応においてアルカリ金属ギ酸塩に加えて、Cu、Mg、Na、Pdを含有する触媒を用いると、一酸化炭素、二酸化炭素の少なくともいずれか、及び水素とアルコール類からメタノールの製造において、高収率で製造可能であることを見出し、本発明に至った。
【0025】
例えば、図1に示すような反応プロセスで連続的にメタノールを製造し得る。半回分式反応器2にアルカリ金属ギ酸塩に加えて、Cu、Mg、Na、Pdを含有する固体触媒を溶媒アルコールと共に仕込み、合成ガス1を供給する。反応器出口の生成物(ギ酸エステル、メタノール)、未反応ガスの混合物3を冷却器4で冷却し、未反応ガス5、ギ酸エステルとアルコールの液体混合物6に分離する。後者は次段に設置した蒸留塔7においてギ酸エステル8、メタノール9に分離する。転化率が低い場合は未反応ガス5を再度半回分式反応器2に供給することも可能であるが、高収率で得られる場合は未反応ガスを合成ガス製造の熱源(燃料)として利用する。
【0026】
アルカリ金属ギ酸塩としてはギ酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸セシウム、ギ酸ルビジウム等が挙げられる。特にギ酸カリウムを用いると触媒活性が高くなり好ましい。
【0027】
また、アルカリ金属ギ酸塩に替えて、反応中にギ酸塩の形態を取り得るアルカリ金属系触媒を用いても良く、反応仕込み時の形態は特に限定されない。
【0028】
このようなアルカリ金属系触媒としては、例えば炭酸カリウムやカリウムメトキサイドが挙げられる。炭酸カリウムを用いた場合、以下に示す反応でギ酸カリウムに変化していると推察される。他の形態で仕込んだ場合も、安定なギ酸塩に変化するものと推察される。
K2CO3+H2O→2KOH+CO2 (4)
KOH+CO→HCOOK (5)
【0029】
上記アルカリ金属ギ酸塩あるいはアルカリ金属ギ酸塩に変化し得るアルカリ金属系触媒と共存させる固体触媒は、具体的にはCu/MgOX/Na/Pd(Xは化学的に許容し得る値)であり、例えば、Cu/MgOX/HCOONa/Pd(Xは化学的に許容し得る値)である。Cu/MgOXの調製は、含浸法、沈殿法、ゾルゲル法、共沈法、イオン交換法、混練法、蒸発乾固法などの通常の方法によれば良く、特に限定されるものではないが、共沈法によると好結果が得られやすい。共沈法で調製する際に一定に保つpHによって、CO転化率は大きく異なる。Cu/MgOXを調製する際のpHは8〜11が好ましく、より好ましくは8.5〜10.5であり、更に好ましくは9〜10である。pHが11を超える範囲については、高アルカリ雰囲気に保持する為に沈殿剤として使用するアルカリ性化合物の使用量が著しく増加する為、経済的でない。Cu/MgOXへのNa塩の担持方法は、上記の通常の方法によれば良く、特に限定されるものではないが、含浸法又は蒸発乾固法によると好結果が得られやすい。Cu/MgOXに対するNaの担持量は、効果を発現する最低量以上であり、特に限定されることは無いが、0.1〜60mass%の範囲が好ましく、より好ましくは1〜40mass%であり、更に好ましくは3〜30mass%である。また、担持するNa塩としてはギ酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが好ましい。これらのNa塩を担持することで触媒活性が増加する。また、Cu/MgOX/Naは、Cu/MgOXにおいてわずかに見られる経時的な活性低下を抑制することができる。よって、アルカリ金属炭酸塩の添加効果は、活性向上と活性低下抑制にある。
【0030】
Pdの担持方法も通常の方法によれば良く、特に限定されるものではないが、同様に含浸法、蒸発乾固法によると好結果が得られやすい。Cu/MgOX/Naに対するPdの担持量は、効果を発現する最低量以上であり、特に限定されることは無いが、0.001〜1mass%の範囲が好ましく、より好ましくは0.005〜0.5mass%、更に好ましくは0.01〜0.1mass%である。Pdを担持することによって、触媒活性が向上する。
【0031】
Na、Pdは上述のようにCu/MgOXへ逐次担持することが好ましいが、担持するNa塩とPdプレカーサーが同一の液体に溶解する場合、同時に担持することも可能である。また、Pdを先に担持することでCu/MgOX/Pdを調製し、次いでNa塩を担持することもできる。
【0032】
上述のCu、Mg、Na、Pdを含有する固体触媒は、主に生成ギ酸エステルの水素化分解において触媒作用を示すが、溶媒アルコールへのCO挿入反応にも触媒作用を示す。
【0033】
反応に用いるアルコール類としては、鎖状または脂環式炭化水素類に水酸基が付いたものの他、フェノール及びその置換体、更には、チオール及びその置換体でも良い。これらアルコール類は、第1級、第2級および第3級のいずれでもよいが、反応効率等の点からは第1級アルコールが好ましく、メチルアルコール、エチルアルコール等の低級アルコールが最も一般的である。
【0034】
反応は、液相、気相のいずれでも行うことができるが、温和な条件を選定しうる系を採用することができる。具体的には、温度70〜250℃、圧力3〜100気圧が好適な条件であり、より好ましくは温度120〜200℃、圧力15〜80気圧であるが、これらに限定されない。アルコール類は、反応が進行する程度の量があればよいが、それ以上の量を溶媒として用いることもできる。また、上記反応に際してアルコール類の他に、適宜有機溶媒を併せて用いることができる。
【0035】
得られるギ酸エステルは、蒸留等の常法により精製することができるが、そのままメタノールの製造に供することもできる。すなわち、ギ酸エステルを水素化分解してメタノールを製造しうる。
【0036】
水素化分解には水素化分解触媒が用いられ、たとえばCu、Pt、Ni、Co、Ru、Pd系の一般的な水素化分解触媒を用いることができるが、本発明のCu/MgOX/Na/Pdを使用することもできる。原料ガスとアルコール類からギ酸エステルとメタノールを生成させる前記反応系にこれらの一般的な水素化分解触媒を共存させておくことにより、メタノール選択率を増加させ効率良くメタノールを製造することも可能である。
【0037】
また、ギ酸エステル選択率が高い反応条件において、一段階でメタノールを製造することが困難な場合は、反応で得られた生成物を反応系から蒸留法等で分離した後、該生成物中のギ酸エステルを水素化分解触媒および水素を共存させて、水素化分解してメタノールを得ることも可能である。
【0038】
本発明の触媒を用いた方法では、原料ガス中の炭素源としてはCO2のみでもメタノールを得ることができるが、COのみの場合と比較すると活性は低い。また、炭素源としてCOを主成分とする原料ガス中に含有されるCO2、H2O濃度は、低いほど高収率でメタノールを得ることができるが、それぞれ1%程度含有しても、CO転化率、メタノール収率はほとんど影響を受けない。しかし、それ以上の濃度で含有するとCO転化率、メタノール収率は低下する。
【0039】
本発明におけるメタノールの製造方法は、次の反応式に基づくものと推定される(アルコール類が鎖状または脂環式炭化水素類に水酸基が付いたものである場合を例にとって示す)。
【0040】
ROH+CO→HCOOR (6)
HCOOR+2H2→CH3OH+ROH (7)
(ここでRはアルキル基を示す)
【0041】
したがって、メタノールの製造原料は、一酸化炭素と水素、二酸化炭素と水素の、少なくともいずれかであり、アルコール類は回収、再利用しうる。本発明方法によれば、原料ガス中に水、二酸化炭素が、少量存在していても、触媒の活性低下は小さい。
【0042】
尚、本発明における、アルカリ金属ギ酸塩に加えて、Cu、Mg、Na及びPdを含む触媒においては、液相で使用すると、アルカリ金属ギ酸塩は一部又は条件によっては全部が溶解して触媒として機能し、一方、Cu、Mg、Na及びPdを含む触媒は固体触媒として機能するため、反応系においては両者が分離しても触媒としての作用効果を奏することから、触媒を用意する際に、アルカリ金属ギ酸塩とCu、Mg、Na及びPdを含む固体触媒をそれぞれ反応系に投入、又は、両者を混合したものを反応系に投入して、本発明の触媒として用いても構わない。
【実施例】
【0043】
以下、実施例1〜3と比較例1により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。また、実施例を表に一覧化した。
【0044】
実施例1
内容積50mlのオートクレーブを用い、溶媒としてエタノール10mlに、ギ酸カリウム2.5mmolに加えて、Cu(NO3)2・3H2O、Mg(NO3)2・6H2Oを原料として共沈法でpH=10.0に保持しながらCu/MgOXを調製し、Cu/MgOX に対してNa2CO3(18.7mass%)、Pd(0.25mass%)を逐次含浸担持したCu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.25mass%)触媒1gを添加し、合成ガス(CO 32.40vol%、水素 64.58vol%、Ar 3.02vol%)を5MPa 充填して、160℃、5時間反応を行い、反応生成物をガスクロマトグラフで分析した。メタノール生成量75.2mmol、ギ酸エチル生成量2.1mmolであった。後述の比較例1記載のPdを担持しないCu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)と比較すると著しく高い活性を示した。
【0045】
実施例2
反応温度を180℃とする他は、実施例1に記載の方法で反応を行った。メタノール生成量56.4mmol、ギ酸エチル生成量1.1mmolであった。
【0046】
実施例3
反応温度を140℃とする他は、実施例1に記載の方法で反応を行った。メタノール生成量20.7mmol、ギ酸エチル生成量2.2mmolであった。
【0047】
実施例4
Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.25mass%)触媒の替わりに、Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.001mass%)触媒を添加する他は、実施例1に記載の方法で反応を行った。メタノール生成量53.1mmol、ギ酸エチル生成量1.8mmolであった。
【0048】
実施例5
Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.25mass%)触媒の替わりに、Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.005mass%)触媒を添加する他は、実施例1に記載の方法で反応を行った。メタノール生成量70.1mmol、ギ酸エチル生成量1.9mmolであった。
【0049】
実施例6
Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.25mass%)触媒の替わりに、Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.01mass%)触媒を添加する他は、実施例1に記載の方法で反応を行った。メタノール生成量81.9mmol、ギ酸エチル生成量2.2mmolであった。
【0050】
実施例7
Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.25mass%)触媒の替わりに、Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.025mass%)触媒を添加する他は、実施例1に記載の方法で反応を行った。メタノール生成量103.3mmol、ギ酸エチル生成量2.5mmolであった。
【0051】
実施例8
Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.25mass%)触媒の替わりに、Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.05mass%)触媒を添加する他は、実施例1に記載の方法で反応を行った。メタノール生成量101.5mmol、ギ酸エチル生成量2.3mmolであった。
【0052】
実施例9
Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.25mass%)触媒の替わりに、Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.1mass%)触媒を添加する他は、実施例1に記載の方法で反応を行った。メタノール生成量77.9mmol、ギ酸エチル生成量2.2mmolであった。
【0053】
比較例1
Cu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)/Pd(0.25mass%)触媒の替わりに、Pdを担持しないCu/MgOX/Na2CO3(18.7mass%)を添加する他は、実施例1に記載の方法で反応を行った。メタノール生成量42.1mmol、ギ酸エチル生成量2.3mmolであった。
【0054】
【表1】


上記の実施例、比較例より、アルカリ金属ギ酸塩と水素化分解触媒を使用する低温液相メタノール合成において、水素化分解触媒のCu/MgOX/Na2CO3はPdを少量担持すると活性が著しく増加することが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の低温液相メタノール合成を実施する反応装置である。
【符号の説明】
【0056】
1 合成ガス
2 半回分式反応器
3 生成物、未反応ガスの混合物
4 冷却器
5 未反応ガス
6 ギ酸エステルとメタノールの液体混合物
7 蒸留塔
8 ギ酸エステル
9 メタノール
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄エンジニアリング株式会社
【出願日】 平成19年1月31日(2007.1.31)
【代理人】 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤

【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬

【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次

【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
【公開番号】 特開2007−245139(P2007−245139A)
【公開日】 平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願番号】 特願2007−22125(P2007−22125)