| 【発明の名称】 |
リン捕集材及びその製造方法並びにリン捕集方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】山中 昭司
【氏名】川越 弘
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| 【要約】 |
【課題】工場排水や生活排水中の比較的高濃度のリン含有排水から、河川や湖沼,海水中の低濃度のリン含有水までを対象とし、これらの中のリンを効率よく、再利用可能な形で回収するために、リン酸基含有化合物と選択的に反応して沈殿を生じる化合物を分子レベルで高分子化合物に高分散して不溶化し、再生利用可能なリン捕集材を製造する。次に、捕集したリンを高純度に容易に回収することができる新規なリン捕集材とその製造方法及びリン捕集方法を提供する。
【解決手段】本発明のリン捕集材は、水溶性若しくは水分散性のZr化合物又は水溶性若しくは水分散性のTi化合物と水溶性高分子化合物とを用いて架橋反応と熱処理によって不溶化したリン捕集材である。これに粘土鉱物等の層状珪酸塩を加えて3物質間の架橋体を形成させたものもある。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水中のリン化合物を捕集するリン捕集材であって、 リン捕集機能を有するジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上を高分子化合物と複合化させて不溶化してなることを特徴とする再生利用可能なリン捕集材。 【請求項2】 前記ジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上と前記高分子化合物とを膨潤性層状珪酸塩の層間に介在させると共に、ジルコニウム化合物又はチタン化合の一種以上と前記高分子化合物及び前記膨潤性層状珪酸塩とを複合化させて不溶化してなる請求項1に記載の再生利用可能なリン捕集材。 【請求項3】 前記膨潤性層状珪酸塩が、モンモリロナイト,ヘクトライトなどのスメクタイトに属する天然珪酸塩鉱物又は合成スメクタイトである請求項2に記載の再生利用可能なリン捕集材。 【請求項4】 前記ジルコニウム化合物又はチタン化合物が、塩化ジルコニル,硫酸ジルコニル,硝酸ジルコニル,酢酸ジルコニル,炭酸ジルコニルアンモニウム,キレート系ジルコニウム,アミノカルボン酸系ジルコニウム,水酸化ジルコニウムゾル,ジルコニアゾル,三塩化チタン,四塩化チタン,硫酸チタン,酸塩化チタン,乳酸チタン,ペルオキソチタネート,キレート系チタネート,チタニアゾルの群から選ばれた水溶性若しくは水分散性のジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上である請求項1乃至3のいずれかに記載の再生利用可能なリン捕集材。 【請求項5】 前記高分子化合物が、ポリビニルアルコール,エチレンビニルアルコール,ポリアクリル酸,ポリアクリルアミド,ポリアリルアミン及びカルボキシメチルセルロース,これらポリマーの共重合体及びブロックポリマーの群から選ばれた水溶性高分子化合物の1種以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の再生利用可能なリン捕集材。 【請求項6】 前記高分子化合物として、請求項5に記載の高分子化合物の1種以上からなる繊維を用いて形成した高分子紙又は不織布を用いてなる請求項5に記載の再生利用可能なリン捕集材。 【請求項7】 水中のリン化合物を捕集する再生可能なリン捕集材の製造方法であって、 リン捕集機能を有するジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上と高分子化合物とを複合化反応させて不溶化させることを特徴とする再生利用可能なリン捕集材の製造方法。 【請求項8】 前記ジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上と高分子化合物を複合化させ不溶化する際に膨潤性層状珪酸塩を加えることを特徴とする請求項7に記載の再生利用可能なリン捕集材の製造方法。 【請求項9】 前記膨潤性層状珪酸塩が、モンモリロナイトやヘクトライトなどのスメクタイトに属する天然珪酸塩鉱物又は合成スメクタイトである請求項8に記載の再生利用可能なリン捕集材の製造方法。 【請求項10】 前記ジルコニウム化合物又はチタン化合物が、塩化ジルコニル,硫酸ジルコニル,硝酸ジルコニル,酢酸ジルコニル,炭酸ジルコニルアンモニウム,キレート系ジルコニウム,アミノカルボン酸系ジルコニウム,水酸化ジルコニウムゾル,ジルコニアゾル,三塩化チタン,四塩化チタン,硫酸チタン,酸塩化チタン,乳酸チタン,ペルオキソチタネート,キレート系チタネート,チタニアゾルの群から選ばれた水溶性又は水分散性のジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上である請求項7乃至9のいずれかに記載の再生利用可能なリン捕集材の製造方法。 【請求項11】 前記高分子化合物が、ポリビニルアルコール,エチレンビニルアルコール,ポリアクリル酸,ポリアクリルアミド,ポリアリルアミン及びカルボキシメチルセルロース,これらポリマーの共重合体及びブロックポリマーの群から選ばれた水溶性高分子化合物の1種以上である請求項7乃至10のいずれかに記載の再生利用可能なリン捕集材の製造方法。 【請求項12】 前記請求項9に記載のジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上を、前記請求項11に記載の水溶性高分子化合物の1種以上の溶液に溶解又は分散させ、これを室温から250℃、好ましくは100℃〜160℃において加熱乾燥して不溶化する請求項10又は11に記載の再生利用可能なリン捕集材の製造方法。 【請求項13】 前記高分子化合物を、水及びアルコール類,グリコール類,アセトン,ホルムアミドの1種以上を主成分とする溶媒に溶解してなる高分子化合物溶液を用いる請求項7乃至12のいずれかに記載の再生利用可能なリン捕集材の製造方法。 【請求項14】 請求項11に記載の高分子化合物の1種以上の繊維で形成した紙又は不織布を請求項10に記載のジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上の水溶液又は分散液中に浸漬するか、又は、前記高分子化合物の紙又は不織布の表面に前記ジルコニウム化合物又はチタン化合物の水溶液又は分散液を散布又は塗布した後、前記高分子化合物の紙又は不織布を50℃から250℃、好ましくは100℃〜160℃において加熱して不溶化することを特徴とする再生利用可能なリン捕集材の製造方法。 【請求項15】 水中のリン化合物を捕集するリン捕集方法であって、 前記請求項1乃至6のいずれかに記載のリン捕集材を、リン酸基化合物を含有する水溶液に接触させることにより、該リン捕集材によってリンを捕集し、その後、該リン捕集材をアルカリ洗浄することにより再生し、繰り返し使用するようにしてなることを特徴とするリン捕集方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、河川や湖沼、海水や排水等の水中のリンを捕集するためのリン捕集材に関する。再生して繰り返し利用可能なことを特徴とするリン捕集材とその製造方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 リンは肥料や各種工業用原料として重要な材料であって、長年に亘って大量に使用され大量に排出されてきた。その結果として、河川や海洋が富栄養化して赤潮の大量発生や水域生態系の破壊等の環境問題を起こす原因となっているだけでなく、このまま放置すれば、近未来において、資源の枯渇が間違いなく、現実の問題となる。そこで、排水中のリン回収が急務の課題となり、各方面で研究開発がなされているが、実用化には至っていない。 【0003】 開発中のこれらのリン除去技術には、排水中にリン酸或いは有機リン化合物として含有されている比較的高濃度のリン化合物を、微生物を用いて捕集する方法(HS法やMAP法)がある。この方法では、排水中のリン化合物は、汚泥中に濃縮されて捕集されるが、この汚泥処理が新たな問題となっている。一方、河川や湖沼中の低濃度のリン化合物については、リン捕集材を用いて捕集することにより河川や湖沼の浄化を図る方法も提案されている。例えば、水酸化アルミニウム,水酸化鉄,リン鉱石等のリン吸着作用を有する物質とゼオライトとを水溶性高分子ゲル内に包括固定化してリン捕集材となし、これを用いて河川や湖沼中の低濃度のリンとアンモニアとを同時に除去する方法(特許文献1参照)や、リン捕集成分である炭酸カルシウムをベントナイト(粘土鉱物)とを水溶性高分子化合物と混合して乾燥することにより耐水性化してリン捕集材となし、これを用いて河川や湖沼中の低濃度のリンを除去する方法(特許文献2参照)がある。低濃度のリン捕集に関しては、環境水の浄化が目的であり、リンを回収して利用することは検討されていない。 【0004】 一方、リンは前述の通り、各種工業原料として重要な物質であり、しかも、生物の営みに不可欠な物質であって、その重要性は年々増加の傾向にあるにも拘わらず、我が国は100%輸入に頼っている。しかるに、世界におけるリン可採埋蔵量は数十年で枯渇すると見積もられており、欧米諸国ではその資源確保が懸念され、既に米国では、リンの輸出を禁止している。 【0005】 【特許文献1】特開平7−8945号公報 【特許文献2】特開平11−216479号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 上記の排水や河川,湖沼中のリン除去方法やリン捕集方法は、環境問題の観点からの排水処理や河川,湖沼の浄化方法であって、資源問題の観点からのリン捕集方法ではない。従って、処理水の浄化は期待できるが、リン資源の回収の面では多くを期待し難い問題がある。即ち、排水処理設備から産出される汚泥にリンが濃縮されているとはいえ、リン以外の金属成分も多量に含んでおり、工業原料としてのリン資源としては不適切である。従って、焼却処理されるか埋め立て処理されているのが現状である。一方、前記特許文献1及び2によると、捕集したリン化合物を含むリン捕集材を、肥料や土壌改良材として山林や畑に散布することが、リンの回収利用方法として開示されているが、工業用原料としての回収には適していないことは明らかである。 【0007】 本発明は、係る背景の下になされたものであり、工場排水や生活排水中の比較的高濃度のリン含有排水から、河川や湖沼,海水中の低濃度のリン含有水までを対象とし、これらの中のリンを効率よく、再利用可能な形で回収するために、リン酸基含有化合物と選択的に反応して沈殿を生じる化合物を分子レベルで高分子化合物に高分散して不溶化し、再生利用可能なリン捕集材を製造する。次に、捕集したリンを高純度に容易に回収することができる新規なリン捕集材とその製造方法及びリン捕集方法を提供するものである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者は、リン捕集機能を有するジルコニウム化合物(Zr化合物)又はチタン化合物(Ti化合物)の1種以上を、高分子化合物とナノ複合化させて不溶化し、目的とする新規リン捕集材の開発に成功した。即ち、本発明は、Zr化合物又はTi化合物の1種以上を高分子化合物とナノ複合化させて不溶化してリン捕集材となすものである。このリン捕集材中のZr又はTiを水中のリン化合物と反応させ、リン酸化合物を生成させてリンを捕集した後に、アルカリ洗浄することによって容易に元の状態に再生される。 【0009】 尚、前記架橋反応させるに当たり、モンモリロナイトやヘクトライトなどのスメクタイト系膨潤性珪酸塩鉱物又は合成スメクタイトを添加混合して該層間に前記架橋反応物を介在させると共に該珪酸塩を架橋し、Ti化合物やZr化合物を更に高分散化することも可能である。ポリビニルアルコール(PVA)などの水溶性高分子が膨潤性珪酸塩層間を押し広げてインターカレーションすることはよく知られている。 【0010】 Zr化合物又はTi化合物としては、具体的には、塩化ジルコニル,硫酸ジルコニル,硝酸ジルコニル,酢酸ジルコニル,炭酸ジルコニルアンモニウム,キレート系ジルコニウム,アミノカルボン酸系ジルコニウム,水酸化ジルコニウムゾル,ジルコニアゾル,三塩化チタン,四塩化チタン,硫酸チタン,酸塩化チタン,乳酸チタン,ペルオキソチタネート,キレート系チタネート,チタニアゾルの群から選ばれた水溶性若しくは水分散性のZr化合物又はTi化合物の1種以上から選択するのが好ましく、更に、水溶性高分子化合物としては、具体的には、ポリビニルアルコール,エチレンビニルアルコール,ポリアクリル酸,ポリアクリルアミド,ポリアリルアミン及びカルボキシメチルセルロース,これらポリマーの共重合体及びブロックポリマーの群から選ばれた水溶性高分子化合物の1種以上から選択するのが好ましい実施態様である。更に、これらの有機化合物の繊維から形成された合成樹脂紙や不織布を用いて、リン捕集材を形成することも可能である。因みに、水酸基,アミノ基,カルボキシル基を有する高分子化合物はZr化合物やTi化合物と反応し、ZrやTiが高分子の側鎖を架橋して、水に難溶な三次元構造体を構築することはよく知られている。 【0011】 又、このリン捕集材は、リン捕集後はアルカリ洗浄することにより再生可能であるので、繰り返し使用することができ、再生時に回収されたリン酸塩水溶液は不純物を殆ど含有しないリン酸塩溶液であるから、リンが容易に濃縮分離可能となる。 【発明の効果】 【0012】 本発明によると、Zr又はTiは、容易にリン酸基化合物と結合すると共に、アルカリ洗浄することによって容易にリン酸を遊離してリン酸塩を生成分離させるので、リン捕集材の再生とリン酸基の分離によるリンの回収を容易に行うことが可能となる。これにより、リン捕集材から分離回収され且つ元の排水や河川や湖沼中のリン濃度から極めて高濃度に濃縮されたアルカリリン酸塩水溶液が得られるので、容易に常法によってリンの回収が可能となり、リン資源としての再利用が可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 以下に本発明について詳細に説明する。先ずリン捕集材について説明する。リン捕集材としては、前記特許文献1には、水酸化アルミニウム,活性アルミナ,水酸化鉄,鉄粉,鹿沼土,アロフェーン,骨炭,リン鉱石及びマグネシウムが上げられており、又、特許文献2には、炭酸カルシウムが上げられている。これらに水中のリン捕集機能があるとしても、本発明では使用できない。本発明で使用するリン捕集機能を有する材料としては3つの機能が要求される。即ち、第1に高分子化合物との複合化による架橋反応性であり、第2に水溶性又は水分散性であり、第3に再生可能性である。第1の機能は、リン捕集物質を高分子化合物と化学的に結合させて安定して保持させるための必須の要件であり、単に吸着等による物理的保持では、繰り返し使用される過程で水中に放出されてリン吸収剤の性能低下を招くことになる。第2の機能は、リン捕集材の製造上、水溶性高分子化合物と均一に混合させて、均一なリン捕集材を製造するために必要な機能である。第3の機能は、本発明の最も重要な機能であり、捕集したリンを回収してリン資源として再利用するために必要な機能である。上記特許文献1及び2に記載の物質は、一部に水溶性高分子との架橋性を有するものもあるが、全て非水溶性であって前記第2の機能を有しておらず、又、これらのリン酸化物は容易に元の状態に再生する事ができないので前記第3の機能を有していない。 【0014】 上記第1〜第3の機能を満足し、これに経済性を加味して選択された物質が、本発明で使用される水溶性Zr又は水分散性の高いZr化合物と水溶性Ti又は水分散性の高いTi化合物である。係る観点から選定された本発明で使用するリン捕集材原料としては、塩化ジルコニル,硫酸ジルコニル,硝酸ジルコニル,酢酸ジルコニル,炭酸ジルコニルアンモニウム,キレート系ジルコニウム,アミノカルボン酸系ジルコニウム,水酸化ジルコニウムゾル,ジルコニアゾル等の水溶性又は水分散性のZr化合物、三塩化チタン,四塩化チタン,硫酸チタン,酸塩化チタン,ペルオキソチタネート,キレート系チタネート,チタニアゾル等の水溶性又は水分散性のTi化合物が上げられる。 【0015】 次に水溶性高分子化合物について説明する。本発明で使用する高分子化合物としては、次の2つの機能が要求される。第1は水溶性であり、第2はZr化合物又はTi化合物との複合化による架橋反応性である。第1の機能は、前述の通り水溶性又は水分散性のZr化合物やTi化合物と均一に混合させて均一なリン捕集材を製造するために必要な機能であり、第2の機能は、リン捕集機能を有するZr化合物やTi化合物を不溶化して安定化させるために必要な機能である。係る観点から本発明で使用される水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA),エチレンビニルアルコール(EVOH),ポリアクリル酸(PAA),ポリアクリルアミド,ポリアリルアミン及びカルボキシメチルセルロース(CMC),これらポリマーの共重合体及びブロックポリマーが上げられる。中でも架橋性と経済性を考慮すると、PVAが好ましい材料である。 【0016】 次に、複合化(架橋反応)による不溶化について説明する。前述の水溶性高分子化合物に架橋剤としてZr化合物やTi化合物を添加すると共に加熱処理すると、ZrやTiが架橋点となってポリマー鎖のアルコール基やアミノ基,カルボン酸基と反応して架橋し、ポリマーの組織を3次元化して不溶化する。架橋反応による不溶化率は、Zr化合物やTi化合物と水溶性高分子材料の比率や加熱温度及びpH並びに化合物の組合せによって異なるので、高不溶化率を得るための最適条件は、試験等を通して適宜設定すればよい。一般には、室温、好ましくは50℃から250℃の温度域で乾燥・加熱することにより不溶化できるが、好ましくは100〜160℃の温度域を用いる。 【0017】 本発明においては、前記水溶性Zr化合物又は水溶性Ti化合物と水溶性高分子化合物の他に層状珪酸塩を添加混合して、これら3物質間で架橋反応を生じさせたリン捕集材もある。本発明で使用する層状珪酸塩は、天然に豊富に存在するモンモリロナイトやモンモリロナイトを主成分とするベントナイト等の粘土状鉱物が好適な原料である。これらは、スメクタイトに属する天然珪酸塩鉱物であるが、サポナイトやヘクトライト等の合成スメクタイトも使用可能である。これら3種の混合物の水溶液の場合には、前記層状珪酸塩の層間に水酸化ジルコニウムや水酸化チタニウムのポリカチオンが浸透して層状珪酸塩―Zr/Ti―高分子化合物の架橋体が得られるので、これを脱水したのち熱処理して固化させてリン捕集材として使用する。 【0018】 尚、実用上は、リン捕集材を適当な形状に成形する必要があるが、用途に応じてその形状の選択は自由である。例えば架橋反応を行った生成物をフィルムやファイバーとして成形して利用できる。セラミックハニカムや金属メッシュ等の適当な担体表面に被覆して乾燥或いは熱処理したり、固形化した後粉砕してペレットやハニカム状に成形したりすることも可能である。更に、前記高分子化合物の繊維を用いて成形した紙(合成樹脂紙)や不織布を用い、これを前記Zr化合物やTi化合物の水溶液又は分散液内に浸漬したり、該紙や不織布の表面に前記水溶液又は分散液を塗布又は散布したのち、前述の熱処理を施して架橋反応を生じさせて不溶化し、これをリン捕集材とすることも可能である。 【0019】 次に本発明の実施例について説明する。本願発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。 【実施例1】 【0020】 〔リン捕集材の製造〕 水溶性Zr化合物として塩化ジルコニル(ZrOCl2・8H2O)を用い、水溶性高分子化合物としてPVA(重合度1700,ケン化度98%)を用いた。先ず、0.5モル/lの塩化ジルコニル水溶液40mlに10wt%のPVA水溶液160mlを混合撹拌して均一混合物を形成し、エバポレータを用いて50〜60℃の熱水浴で体積が約半分になるまで濃縮した。この濃縮して得られた粘凋液中に24メッシュのステンレス金網を3回浸漬して該金網面に膜状に粘凋液をコーティングし、これを50℃で乾燥させ、この乾燥物を0.05モル/lのNaOH水溶液で洗浄し、乾燥物中に残留している塩素分を除去した後、更に150℃で1時間熱処理を行ってステンレス金網を担体とする膜状のリン捕集材(メッシュ成膜試料)を形成した。尚、ZrとPVAの架橋反応は、前記50〜60℃での濃縮工程や50℃での乾燥工程及び150℃での熱処理工程のいずれでも進行している。 【実施例2】 【0021】 〔高濃度リン酸溶液を用いたリンの捕集とリン捕集材の再生〕 実施例1で製造したリン捕集材を,0.1モル/lのリン酸(H3PO4)水溶液中に1時間浸漬し、これを十分に水洗して付着してリン酸水溶液を除去した後、0.05モル/lのNaOH水溶液に浸漬して捕集したリン酸をリン捕集材から溶出させると共に、リン捕集材の再生を行った。リン捕集量はNaOH水溶液のリン酸濃度をICP分析によって測定した。そして再生したリン捕集材は再び前記リン酸水溶液中に1時間浸漬し、前述の手順で捕集したリン酸の溶出とリン捕集材の再生及びリン捕集量の測定を繰り返し実施した。図1に繰り返し回数とリン捕集量の関係を示す。尚、このリン捕集と溶出メカニズムは、リン捕集材中の水酸化ジルコニウムがリン酸と反応してリン酸ジルコニウム〔Zr(HPO4)2〕様の非晶質の化合物を生成することによりリン酸水溶液中のリン酸を捕集し、これをNaOH水溶液に浸漬することによって、リン酸基はリン酸ナトリウム〔Na3PO4やNa2HPO4〕となって溶出し、Zr基は元の水酸化ジルコニウムに再生されると考えられる。 【0022】 図1から明らかなように、製膜に用いたZr−PVA複合乾燥膜1g当たり、初期に1.6ミリ当量(meq/g)以上のリン酸捕集量を示し、リン捕集材は10回の繰り返し使用においても1.3meq/gの捕集量を維持していた。その後、引き続き20回の繰り返し使用によってもこの捕集量を保持しており、充分に実用に耐えるリン捕集材であることが確認された。 【実施例3】 【0023】 〔低濃度リン酸溶液を用いたリンの捕集〕 実施例1で製造したリン捕集材を各種リン酸濃度の水溶液に浸漬してリン酸捕集量を実施例2と同様の方法によって測定した。その結果を表1に示す。 【0024】 【表1】
【0025】 表1から明らかなように1ppmの低濃度のリン酸溶液からもリン酸の回収が可能なことが分かる。又、人工海水を用いて同様の試験を行ったが、繰り返し再生して使用しても捕集量に殆ど変化がなく、海水中からのリン回収の可能性も確認された。 【実施例4】 【0026】 〔層状珪酸塩を併用したリン捕集材の製造〕 層状珪酸塩としてNa型モンモリロナイト(イオン交換容量CEC=100meq/100g)に水とアセトン(水:アセトン=2:1)を添加混合して均一に分散させ1wt%のNa型モンモリロナイト分散液(Na−Mont分散液)を調整した。この分散液中に、別途調整した10wt.%のPVA水溶液を重量比でPVA/Mont=0.5の量を添加すると共に、0.1モル/lの塩化ジルコニル水溶液を過剰に添加して撹拌混合することにより、モンモリロナイトの層間にモンモリロナイトとZrとPVAの架橋体(Mont−Zr−PVA)を合成した。得られた懸濁液をアセトンにて洗浄しつつ遠心分離器にて固形分(Mont−Zr−PVA)を分離回収し、得られた固形分を120℃にて1時間加熱処理して不溶化したリン捕集材を製造した。 【実施例5】 【0027】 〔Mont−Zr−PVAによるリンの捕集と再生使用〕 0.1モル/lのオルトリン酸水溶液を調製し、これに実施例4で製造したリン捕集材の粉状体を添加して数時間撹拌し、リンの捕集を行った後、遠心分離してリン捕集材を回収し、充分水洗した後、0.05モル/lのNaOH水溶液を加えて撹拌し、リン捕集材の再生とリン酸の溶液中への溶出(リン酸の回収)試験を行った。溶液中に溶出したリン酸量はICPにより計測してリン捕集量を測定した。又、再生したリン捕集材を用いて同様の試験を複数回繰り返した。その結果を図2に示す。 【0028】 図2から明らかなように、本発明のリン捕集材は、同図の線(b)に示されている様に、6回の再生使用にも拘わらず、ほぼ一定したリン捕集量を示している。このことから、本発明に係るリン捕集材は、再生して繰り返し使用することが可能であることが分かる。因みに、同図の線(a)に示したデータは、実施例4におけるPVAを添加することなくMont−Zrの架橋体を合成して同様の手法で製造したMont−Zr架橋体によるリン捕集材を用いた試験例であり、1回目は高いリン捕集量を示すが、2回目、3回目とリン捕集量は次第に低下し、再生利用が不可能であることを示している。 【0029】 上記したモンモリロナイト(Mont)の層間における架橋体の形成とリン酸捕集等について説明する。Montの格子定数a×bは5.21Å×9.12Åであり、α-リン酸Zrの格子定数は5.30Å×9.08Åであって共に層状構造を有しており、面内での格子定数及び原子配列は酷似している。従って、Montの層間にリン酸Zr層を挿入して交互に積層複合化して架橋化することが可能である。図3のX線回折パターン図に示す通り、Na−Montの底面間隔は12.5Åである(図中(a)参照)が、この水酸化ジルコニウム架橋により底面間隔は約22Åに拡大している(図中(b)参照)。これにオルトリン酸を加えると底面間隔は19.4Åになり(図中(c)参照)、Zr−Mont架橋体にリン酸が反応していることが分かる。d=7.6Åの回折ピークは架橋体の結晶外部に生成したα-リン酸Zrによるものと考えられる。また、水洗の繰り返しにより底面間隔が12.6ÅのMontに戻っていること(図中(d)参照)から、層間のZrはリン酸Zrと共に溶出してしまい、Zr−Mont架橋体は水洗に対して不安定であるから再生使用には適さないことが分かる。このことは、前記図2の線(a)に示された試験結果とも一致している。 【0030】 これに対しMontにPVAを添加したものでは、図4のX線回折パターン図に示す通り、Montの底面間隔12.5Åから25Å(図中(a)参照)に膨潤している。これに塩化ジルコニル水溶液を添加してMont−Zr−PVAの架橋体を形成したものでは、底面間隔は24.9Å(図中(b)参照)と殆ど変化していないが、結晶性は向上していた。このMont−Zr−PVAの架橋体に水洗を繰り返しても底面間隔に殆ど変化はなく、再生使用が可能であることは、前記図2の線(b)に示された試験結果とも一致している。 【実施例6】 【0031】 〔リンの捕集と捕集材の繰り返し再生試験〕 実施例1にならってリン捕集材を製造し,リン酸溶液からのリン捕集とリン捕集材の再生試験を繰り返し行った。0.1モル/lのリン酸(H3PO4)水溶液中に、実施例1と同様な方法で製造したリン捕集材(メッシュ成膜試料)を室温で2時間浸漬した。取り出して水洗し、付着した余分なリン酸水溶液を除去した後、0.05モル/lのNaOH水溶液に浸漬して吸着したリン酸を捕集材から溶出させ、NaOH水溶液中に溶出したリン量をICP分析により測定した。リンを放出して再生されたリン捕集材は、再び前記のリン酸水溶液中に2時間浸漬し、上述の操作を繰り返すことにより、30回の繰り返し再生試験を行った。その結果を図5に示す。同図より明らかなように、実施例2をよく再現しており、さらに30回までの繰り返し再生試験に耐える性能を有することがわかった。繰り返し試験において、20回目以降のリン捕集容量(リン吸着量)は0.95meq/gでほぼ一定である。 【実施例7】 【0032】 〔チタン化合物を用いるリン捕集材の製造と再生試験〕 チタンテトライソプロポキシド(Ti(OC3H7)4)14.3 gを1 モル/l濃度の塩酸溶液240mlに加え(モル比でHCl/Ti=5)、室温で数時間撹拌した。チタンイソプロポキシドは加水分解により、最初はゲル状の白色沈殿を生じるが、撹拌を続けると塩酸により解膠し、透明な溶液が得られた。PVA(重合度2000,ケン化度98%)を5wt%含む水溶液にチタンイソプロポキシド塩酸溶液を加え混合した。この時、Ti/PVA重量比が0.3(30wt%)となるように混合量を調整した。得られた混合溶液を実施例1と同様に、24メッシュのステンレス製金網を用いて成膜し、50℃で乾燥、0.05モル/lNaOH水溶液で洗浄後、乾燥器を用いて100℃で30分、続いて120℃で1時間乾燥させた。同様にして、チタン含有量(Ti/PVA)を10wt%に調整した試料を合成した。30及び10wt%のTi含有試料をそれぞれ、Ti(30)−PVA及びTi(10)−PVAと標記する。 【0033】 ステンレスメッシュに成膜したTi―PVA試料について、リン酸の捕集試験を行った。試験にはリン濃度300ppmのリン酸溶液を用い、5時間浸漬した後、溶液の濃度変化から捕集量を測定した。その後、試料をよく水洗し、0.05モル/lNaOH水溶液にメッシュ試料を3時間浸漬し、溶液に溶出するリン酸量から脱着量を測定した。リン酸濃度の測定には、IPCを用いた。繰り返し試験は良好で、リンの捕集(吸着)と脱着量はよく対応している。5回までの繰り返し試験におけるリン脱着量から求めたリン捕集量の測定結果を図6に示す。この結果は、Ti―PVAがZr含有試料と同様に、リンの吸脱着に繰り返し使用できることを示している。Ti含有量の多いTi(30)−PVAは、含有量の少ないTi(10)−PVAに比較して、リン捕集容量(吸着量)が3倍以上に大きいことが分かった。 【実施例8】 【0034】 〔PVA紙を用いるリン捕集材の製造〕 PVA短繊維を原料に作られたPVA紙(市販のPVA紙で、部分的なホルマール化処理が施されているもの)を、約3cm角に裁断し、これを0.05モル/lZrOCl2・8H2O水溶液に浸し、約80℃で1時間加熱後、50℃で乾燥、0.05モル/lNaOH水溶液で洗浄した。その後、120℃で1時間加熱処理を行い、Zr−PVA複合体を作製した。この合成ではPVA紙は部分的に膨潤するが、溶解せず、紙の形状を保持している。Zrの含有量は、ZrOCl2・8H2Oの浸漬量を調整して、Zr/PVA重量比が約0.1となるようにした。得られたZr−PVA紙を用いて、リン酸の吸脱着試験を行った。Zr−PVA紙を300ppmのリンを含有するリン酸水溶液に12時間浸漬してリン吸着を行った後、水洗し、0.05モル/lNaOH水溶液に浸漬してリンを脱着した。リンの吸脱着量はICP及びイオンクロマトグラフを用いて測定した。 結果を図7に示す。5回までの吸脱着試験によって、吸着容量は約0.38meq/gであり、PVAを溶解して作製したメッシュ試料に比較して、容量は低いが、繰り返し特性は良好であり、PVA紙を用いても、性能のよい繰り返し利用可能なリン捕集材が製造できることが分かった。 【実施例9】 【0035】 〔亜リン酸の吸脱着試験〕 実施例1と同様な方法で作製したZr−PVAメッシュ試料を用いて、亜リン酸の吸脱着試験を行った。比較のため、同時に作製したメッシュ試料を用いて、リン酸の吸脱着試験を行った。結果を図8に示す。 溶液のリン濃度はリン酸、亜リン酸共に、約3,000ppmである。図8より明らかなように、リン酸および亜リン酸はよく似た吸脱着容量を示し、繰り返し使用できることが分かった。 【実施例10】 【0036】 〔人工海水中からのリンの捕集試験〕 実施例1と同様な方法で作製したZr−PVAメッシュ試料を用いて、海水中でのリン吸着試験を行った。人工海水(塩分3.4%、塩分の内訳:NaCl77.9%,MgCl2 9.6%,MgSO4 6.1%,CaSO4 4.0%,KCl2.1%)を調製し、リン酸を人工海水で希釈して、リンを10〜3,000ppmの濃度で含有する人工海水を調製し、リン捕集試験を行った。結果を表2に示す。表2に示すように、海水中でも、リン捕集量は共存イオンにより殆ど影響を受けないことが分かった。 【0037】 【表2】
【実施例11】 【0038】 [有機リンの捕集試験] 実施例1と同様な方法で作製したZr−PVAメッシュ試料を用いて、有機リン(リン酸エステル)の捕集試験を行った。表3に有機リンの種類と水溶液のリン濃度,処理時間(浸漬時間),吸着量(捕集量)を示す。リン吸着量はICPにより測定した。有機リンに対しても吸着容量があり,有機リンの有効な捕集材であることが明らかとなった。これにより、界面活性剤や難燃剤,生物起源の有機リンに対しても有望なリン捕集材であることが理解される。 【0039】 【表3】
【0040】 以上の説明は、水溶性Zr化合物及び水溶性Ti化合物として塩化ジルコニル及びチタンテトライソプロポキシドを用いた例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、前述した通り、他の水溶性Zr化合物や水溶性Ti化合物の使用が可能である。同様に、水溶性高分子化合物としてもPVAによる試験例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、前述した通り、ZrやTiと架橋反応を生じる他の水溶性高分子化合物の使用も可能である。要は、リン捕集能とアルカリ洗浄によるリン離脱能を有するZr又はTiと、これと架橋反応を生じる高分子化合物との任意の組合せであればよく、その組合せも特に限定されるものではない。 【0041】 又、アルカリ洗浄によってリン酸を離脱させて得られたリン酸水溶液は、不純物を殆ど含有しないアルカリリン酸塩水溶液であるので、産業上利用可能な形態としてのリン化合物として容易に回収することが可能となり、100%輸入に頼っているリン資源の回収によるリサイクルシステムの確立が容易となる。この意味で、本発明は、我が国の資源戦略上からも極めて有用な発明と言える。 【産業上の利用可能性】 【0042】 本発明は、水溶性Zr化合物又は水溶性Ti化合物と水溶性高分子化合物とを原料として安価に且つ容易にリン捕集材を製造することができ、しかも、従来のように使い捨てするものではなく再生使用可能なリン捕集材であるので、再生過程で生成するリン酸塩は新たなリン資源として有効に利用することができるから、排水中からのリン回収、河川や湖沼からのリン回収、更には海洋からのリン回収等に使用できる。従って、単に従来の環境問題や生態系保全の問題だけでなく、我が国のリン資源問題の解決に寄与する発明であるので、その社会的影響は大なるものがあり、各方面での利用が期待される。 【図面の簡単な説明】 【0043】 【図1】本発明に係るZr−PVA系のリン捕集材の再生利用回数とリン酸捕集量との関係の1例を示すグラフである。 【図2】本発明に係るモンモリロナイト−Zr−PVA系リン捕集材及び比較例としてのモンモリロナイト−Zr系リン捕集材の再生利用回数とリン酸捕集量との関係の1例を示すグラフである。 【図3】モンモリロナイト及びモンモリロナイト−Zr系架橋体のX線回折パターン図である。 【図4】モンモリロナイト−PVA系及びモンモリロナイト−Zr−PVA系のX線回折パターン図である。 【図5】本発明に係るZr−PVA系のリン捕集材の再生利用回数とリン酸捕集量との関係の他の実施例のグラフである。 【図6】本発明に係るTi−PVA系のリン捕集材の再生利用回数とリン酸捕集量との関係の1例を示す実施例のグラフである。 【図7】本発明に係るPVA紙を用いたリン捕集材の再生利用回数とリン酸捕集量との関係の1例を示すグラフである。 【図8】本発明に係るZr−PVA系のリン捕集材による亜リン酸とリン酸の捕集量とリン捕集材の再生利用回数との関係の1例を示すグラフである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】504136568 【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
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| 【出願日】 |
平成19年1月16日(2007.1.16) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100121795 【弁理士】 【氏名又は名称】鶴亀 國康
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| 【公開番号】 |
特開2007−216214(P2007−216214A) |
| 【公開日】 |
平成19年8月30日(2007.8.30) |
| 【出願番号】 |
特願2007−7471(P2007−7471) |
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