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【発明の名称】 LXRアゴニスト
【発明者】 【氏名】渡辺 雄一郎

【氏名】松田 隆行

【氏名】三浦 徹

【要約】 【課題】新規なLXRアゴニスト、及び該LXRアゴニストを有効成分として含みアテローム性動脈硬化症や動脈硬化症等の予防及び/又は治療のための医薬を提供する。

【解決手段】下記の一般式(1):
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1):
【化1】


〔式中、XはCH2又は酸素原子を示し;Yは-C(=NOH)-R1、-CO-R1、-COO-R1、-NHCO-R1、又はアリールアミノ基を示し;R1は水素原子又はC1-6アルキル基を示し;nは1又は2の整数を示す〕で表される化合物及びその塩、並びにそれらの水和物及びそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる物質を含むLXRアゴニスト。
【請求項2】
Yが-C(=NOH)-R1、-CO-R1、-COO-R1、-NHCO-R1、又はフェニルアミノ基であり、R1がC1-6アルキル基である請求項1に記載のLXRアゴニスト。
【請求項3】
XがCH2であり、Yが-C(=NOH)-R1、-CO-R1、又は-NHCO-R1であり、nが1又は2の整数であり、R1がC1-6アルキル基である請求項1に記載のLXRアゴニスト。
【請求項4】
R1がメチル基である請求項2又は3に記載のLXRアゴニスト。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のLXRアゴニストを有効成分として含む医薬。
【請求項6】
ヒトを含む哺乳類動物のコレステロール代謝異常に起因する疾患の予防及び/又は治療に用いる請求項5に記載の医薬。
【請求項7】
コレステロール代謝異常に起因する疾患がアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、又は高コレステロール血症である請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のLXRと1又は2以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態の請求項5ないし7のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項9】
請求項1に記載の式(1)において、Xが酸素原子であり、Yが-C(=NOH)-R1であり、R1がC1-6アルキル基(好ましくはメチル基)であり、nが2である化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくはそれらの溶媒和物。
【請求項10】
2−[[4−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]アミノ]−3−モルホリノ−1,4−ベンゾキノン若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくはそれらの溶媒和物。
【請求項11】
請求項1に記載の式(1)において、XがCH2であり、Yがアリールアミノ基(好ましくはフェニルアミノ基)であり、nが2である化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくはそれらの溶媒和物。
【請求項12】
2−[[4−(フェニルアミノ)フェニル]アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノン若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくはそれらの溶媒和物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はナフトキノン誘導体を有効成分とする新規なLXRアゴニストに関するものである。本発明のLXRアゴニストを含む医薬は、例えば、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、及び高コレステロール血症等の予防及び/又は治療のための医薬として使用可能である。
【背景技術】
【0002】
肝臓X受容体(LXR)はリガンド及び機能がともに不明なオーファンレセプターとしてクローニングされ、その後の研究から、22−R−ヒドロキシコレステロールをはじめとするオキシステロール類の一部がリガンドとして作用することが報告された核内受容体である(非特許文献1、非特許文献2、及び非特許文献3)。LXRは同じ核内レセプターであるRXRとヘテロ二量体を形成し、標的遺伝子の転写をリガンド依存的に調節する。哺乳類では二種のLXR遺伝子(α及びβ)が存在しているが、その発現分布は2遺伝子間で大きく異なり、LXRαは肝臓、小腸、及び脂肪組織などのコレステロール代謝に関わる組織に特異的に発現しているのに対して、LXRβは普遍的に発現しており、調べられたほぼ全ての組織に発現している(非特許文献4及び非特許文献5)。
【0003】
LXR欠損マウスに高コレステロール食を与えると脂肪肝、血中のLDLコレステロール濃度上昇、及びHDLコレステロール濃度低下などの症状を示すことが報告されており(非特許文献6及び非特許文献7)、LXRがコレステロール代謝において重要な役割を果たしていることが強く示唆されている。また、肝臓及び小腸などでは正常なLXRα及びβの機能を持ち、マクロファージではLXRα及びβが欠損している動脈硬化モデルマウスの症状を解析することにより、マクロファージにおけるLXRα及びβの活性が動脈硬化の罹患率に強い影響を及ぼすことが明らかにされている(非特許文献8)。
【0004】
LXRの標的遺伝子として同定された遺伝子群のうちの多くの遺伝子(ABCA1,ABCG1,ApoE,CETP,及びLPL)はコレステロール逆輸送(RCT)に関わる遺伝子である。従って、LXRアゴニストは、これらの遺伝子発現を上昇させ、コレステロール逆輸送経路を活性化して、それにより末梢からのコレステロール流出を増加させ、HDLコレステロールを増加させるとともに動脈硬化病変のコレステロール含量を減少させるものと期待されている。例えば、LXRアゴニストを投与した高脂肪食負荷LDL受容体欠損マウスにおいて、HDLコレステロール上昇、VLDL及びLDLコレステロール低下、及び動脈硬化病変部位面積の減少が報告されている(非特許文献9)。また、高コレステロール血症やアテローム性動脈硬化症等の疾患への関与も報告されている(特許文献1及び特許文献2)。
【0005】
LXRアゴニストの具体例としては、ベンゾフラン-5-酢酸誘導体(特許文献5)、2-アミノキナゾリン-オン誘導体(特許文献6)、テトラヒドロキノリン誘導体(特許文献7)、テトラヒドロカルバゾール誘導体(特許文献8)、イソキノリノン誘導体(特許文献9)、及びナフタレン誘導体(特許文献10)が知られている。また、芳香族アミノアルコール誘導体であるGW3965(特許文献3記載の実施例16)、ベンゼンスルホンアミド誘導体であるT0901317(特許文献4記載の実施例12)などLXRアゴニスト作用を有するいくつかの化合物において高コレステロール血症及び動脈硬化症の治療薬としての有用性が報告されている。しかしながら、臨床的に開発又は使用されているLXRアゴニストは未だ存在せず、新規で有用なLXRアゴニストのさらなる提供が求められている。
【0006】
一方、ナフトキノン誘導体についてガン等の増殖性疾患に対する作用(特許文献11)が報告されているが、LXRアゴニスト作用に関する報告、あるいはアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、及び高コレステロール血症に対する予防及び/又は治療効果に関する報告はない。
【非特許文献1】Janowskiら、Nature ,383, pp.728-731, 1996
【非特許文献2】Lehmannら、J. Biol. Chem., 272, pp.3137-3140, 1997
【非特許文献3】Fuら、J. Biol. Chem., 276, pp.38378-38387, 2001
【非特許文献4】Auboeufら、Diabetes, 46, pp.1319-1327, 1997
【非特許文献5】Luら、J. Biol. Chem., 276, pp.37735-37738, 2001
【非特許文献6】Peetら、Cell, 93, pp.693-704, 1998
【非特許文献7】Albertiら、J. Clin. Invest., 107, pp.565-573, 2001
【非特許文献8】Tangiralaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99, pp.11896-11901, 2002
【非特許文献9】Terasakaら、FEBS Lett., 536, pp.6-11, 2003
【非特許文献10】Levinら、Arterioscler Thromb. Vasc. Biol., 25, pp.135-142, 2005
【非特許文献11】Izvestiya Akademii Nauk, Seriya Khimicheskaya, 6, pp.1086-8, 1994
【非特許文献12】Sibirskii Khimicheskii Zhurnal, 2, pp.65-72, 1993
【非特許文献13】Izvestiya Sibirskogo Otdeleniya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskikh Nauk, 3, pp.46-50, 1990
【非特許文献14】Izvestiya Sibirskogo Otdeleniya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskikh Nauk, 5, pp.136-42, 1982
【特許文献1】特表2002-539155号公報
【特許文献2】特表2004-509161号公報
【特許文献3】国際公開WO2002/24632パンフレット
【特許文献4】国際公開WO2000/54759パンフレット
【特許文献5】国際公開WO2003/82192パンフレット
【特許文献6】国際公開WO2004/24161パンフレット
【特許文献7】国際公開WO2004/72046パンフレット
【特許文献8】米国特許公開2005/215577号公報
【特許文献9】国際公開WO2004/58717パンフレット
【特許文献10】国際公開WO2005/23188パンフレット
【特許文献11】国際公開WO2000/77609パンフレット
【特許文献12】米国特許公開2003/232801号公報
【特許文献13】国際公開WO2002/077609パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、新規なLXRアゴニストを提供することにある。
また、本発明の別な課題は、上記LXRアゴニストを有効成分として含む医薬であって、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、及び高コレステロール血症等の予防及び/又は治療のために有用な医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、下記一般式(1)で表されるナフトキノン誘導体が優れたLXRアゴニスト作用を有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明により、下記の一般式(1):
【化1】


〔式中、XはCH2又は酸素原子を示し;Yは-C(=NOH)-R1、-CO-R1、-COO-R1、-NHCO-R1、又はアリールアミノ基を示し;R1は水素原子又はC1-6アルキル基を示し;nは1又は2の整数を示す〕で表される化合物及びその塩、並びにそれらの水和物及びそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる物質を含むLXRアゴニストが提供される。
【0010】
別の観点からは、本発明により、上記のLXRアゴニストを有効成分として含む医薬が提供される。本発明の医薬は、例えば、ヒトを含む哺乳類動物のコレステロール代謝異常に起因する疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、又は高コレステロール血症等の治療又は予防のための医薬として有用である。好ましくは、本発明の医薬は上記の有効成分と1又は2以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態で提供される。
【0011】
さらに別の観点からは、本発明により、上記のLXRアゴニスト又は上記の医薬の製造のための上記一般式(1)で表される化合物及びその塩、並びにそれらの水和物及びそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる物質の使用;及びアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、又は高コレステロール血症の予防及び/又は治療方法であって、上記のLXRアゴニスト又は上記の医薬の予防及び/又は治療有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が提供される。
【0012】
また、本発明により、上記の式(1)において、
Xが酸素原子であり、Yが-C(=NOH)-R1であり、R1がC1-6アルキル基(好ましくはメチル基)であり、nが2である化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくはそれらの溶媒和物;並びに
XがCH2であり、Yがアリールアミノ基(好ましくはフェニルアミノ基)であり、nが2である化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくはそれらの溶媒和物
が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により提供されるLXRアゴニストは、例えば、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、又は高コレステロール血症などの疾患の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一般式(1)において、XはCH2又は酸素原子を示すが、XがCH2であることが好ましい。
一般式(1)において、Y は-C(=NOH)-R1、-CO-R1、-COO-R1、-NHCO-R1、又はアリールアミノ基を示し、R1は水素原子又はC1-6アルキル基を示す。R1はC1-6アルキル基であることが好ましい。
R1が示すC1-6アルキル基としては、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなるC1-6アルキル基のいずれであってもよいが、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エメチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基が挙げられる。R1が示すC1-6アルキル基としてはメチル基が特に好ましい。
【0015】
アリールアミノ基としてはフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基などの単環性又は縮合多環性芳香族基でモノ置換されたアミノ基を挙げることができるが、フェニルアミノ基が好ましい。
Yとしては-C(=NOH)-R1、-CO-R1、-NHCO-R1、又はアリールアミノ基が好ましく、Yとしてさらに好ましいのは-C(=NOH)-CH3、-CO-CH3、アセチルアミノ基、又はアリールアミノ基である。
一般式(1)において、nは1又は2の整数を示す。nが1である場合にはXを含む環は5員環を形成し、nが2である場合にはXを含む環は6員環を形成する。
XがCH2であり、Yが-C(=NOH)-R1、-CO-R1、又は-NHCO-R1であり、nが1又は2の整数である組み合わせが好ましい。この組み合わせにおいてR1がC1-6アルキル基であることがさらに好ましい。
【0016】
一般式(1)で表される化合物のうち、好ましい化合物として、例えば2−[[4−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノン;2−[[4−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]アミノ]−3−モルホリノ−1,4−ベンゾキノン;2−[[4−(エトキシカルボニル)フェニル]アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノン;2−[(4−アセチルフェニル)アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノン;2−[(4−カルボキシフェニル)アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノン;2−[[4−(フェニルアミノ)フェニル]アミノ]−3−モルフォリノ−1,4−ベンゾキノン;2−[(4−アセチルフェニル)アミノ]−3−ピロリジノ−1,4−ベンゾキノン;2−[[4−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]アミノ]−3−ピロリジノ−1,4−ベンゾキノン;2−[[4−(アセチルアミノ)フェニル]アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノン;又は2−[[4−(フェニルアミノ)フェニル]アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノンなどを挙げることができる。
【0017】
これらのうち、2−[[4−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノン;2−[(4−アセチルフェニル)アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノン;2−[(4−アセチルフェニル)アミノ]−3−ピロリジノ−1,4−ベンゾキノン;2−[[4−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]アミノ]−3−ピロリジノ−1,4−ベンゾキノン;2−[[4−(アセチルアミノ)フェニル]アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノン;又は2−[[4−(フェニルアミノ)フェニル]アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノンがより好ましい。もっとも、本発明のLXRアゴニストに含まれる化合物は上記に例示した特定の化合物に限定されることはない。
【0018】
一般式(1)で表される化合物は塩を形成する場合がある。塩の種類は特に限定されないが、例えば、酸付加塩又は塩基付加塩などが挙げられ、生理学的に許容される酸付加塩又は塩基付加塩が好ましい。塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩のような鉱酸の酸付加塩;安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、又は酢酸塩等の有機酸の酸付加塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの金属塩;アンモニウム塩;メチルアミン塩、エチルアミン塩、トリエチルアミン塩などの有機アミン塩;グリシン塩などのアミノ酸塩などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0019】
一般式(1)で表される化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合がある。一般式(1)で表される化合物又はその塩の任意の水和物又は任意の溶媒和物を本発明のLXRリガンドとして用いることができる。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、生理学的に許容される溶媒、例えばエタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、又はグリセリンなどが好ましい。
【0020】
上記一般式(1)で表される化合物は、例えば、特許文献12、特許文献13、及び非特許文献11〜14等に記載の方法又はそれらに類似の方法に従って製造することができる。得られた化合物は、必要に応じて再結晶法やカラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段を用いて精製することができる。また、必要に応じて、常法に従って所望の酸付加塩又は塩基付加塩に変換することも可能である。さらに、上記一般式(1)で表される化合物のうち一部の化合物については商業的に入手できるものもあり、例えばChemBridge Corporationから購入することができる。
【0021】
一般式(1)で表される化合物及びその塩、並びにそれらの水和物及び溶媒和物からなる群から選ばれる物質がLXRアゴニスト作用を有することは、実施例中の試験例に示す方法により当業者が容易に確認することができる。本明細書において「LXRアゴニスト」とは、LXRα又はLXRβのいずれか又は両方に対してリガンドとして結合する性質を有し、かつLXRの標的遺伝子(例えばABCA1,ABCG1,ApoE,CETP,及びLPLなど)のうちの少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを上昇させる作用を有する物質のことであり、コレステロール逆輸送経路を活性化して、それにより末梢からのコレステロール流出を増加させ、HDLコレステロールを増加させるとともに動脈硬化病変のコレステロール含量を減少させる作用を有する。従って、本発明のLXRアゴニストは、ヒトを含む哺乳類動物のコレステロール代謝異常に起因する疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、又は高コレステロール血症等の治療又は予防用の医薬の有効成分として有用である。
【0022】
本発明の医薬としては、上記のLXRアゴニストをそのまま使用してもよいが、本発明の医薬は、好ましくは一般式(1)で表される化合物及びその塩、並びにそれらの水和物及び溶媒和物からなる群から選ばれる物質とともに1又は2以上の製剤用添加物を含む医薬組成物として調製することができる。本発明の医薬の投与経路は特に限定されず、経口的又は非経口的に投与することが可能であり、治療目的などに応じて適宜選択できる。例えば、経口投与用の固形製剤、経口投与用の液体製剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、又は経皮吸収剤などのいずれの形態であってもよい。これらの投与形態に適した医薬組成物は公知の方法により製造できる。
【0023】
経口投与用固形製剤を調製する場合は、有効成分である上記の物質に賦形剤を添加し、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、又は矯臭剤等の製剤用添加物を1種又は2種以上加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、又はカプセル剤等として調製すればよい。製剤用添加物としては、例えば、当業界で一般的に使用されているものを使用することができる。より具体的には、賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、又は珪酸等が挙げられる。結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、又はポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、又は乳糖等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。矯味剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0024】
経口投与用の液体製剤を調製する場合は、有効成分である上記の物質に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、又は矯臭剤等の製剤用添加物を1種又は2種以上を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、又はエリキシル剤等として調製すればよい。矯味剤としては、例えば上記に挙げたものを私用することができ、緩衝剤としては、例えばクエン酸ナトリウム等を使用することができる。安定化剤としては、例えばトラガント、アラビアゴム、又はゼラチン等が挙げられる。
【0025】
注射剤を調製する場合は、有効成分である上記の物質にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、又は局所麻酔剤等の製剤用添加物を1種又は2種以上添加し、常法により皮下、筋肉及び静脈内注射剤を製造することができる。pH調製剤及び緩衝剤としては、例えばクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はリン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としては、例えばピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、又はチオ乳酸等が挙げられる。局所麻酔剤としては、例えば塩酸プロカイン又は塩酸リドカイン等が挙げられる。等張化剤としては、例えば塩化ナトリウム又はブドウ糖等が挙げられる。
【0026】
坐薬を調製する場合は、有効成分である上記の物質に公知の坐薬用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、又は脂肪酸トリグリセライド等を添加し、さらに必要に応じてツイーン(登録商標)等の界面活性剤等を添加して、常法により製造することができる。
【0027】
軟膏剤を調製する場合は、有効成分である上記の物質に通常使用される基剤、安定化剤、湿潤剤、又は保存剤等の製剤用添加物を1種又は2種以上必要に応じて添加し、常法により混合して製剤化すればよい。基剤としては、例えば流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、又はパラフィン等が挙げられる。保存剤としては、例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、又はp−ヒドロキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
本発明の医薬組成物の形態は上記に説明した特定の形態に限定されることはなく、例えば、常法により吸入剤、点眼剤、又は点鼻剤などの形態の医薬組成物を調製することもできる。
【0028】
本発明の医薬の投与量は特に限定されず、患者の年齢及び体重、予防及び/又は治療すべき疾患の症状、投与形態、及び投与回数等の条件に応じて適宜選択することができる。通常は成人に対して有効成分である一般式(1)で表わされる化合物の質量として1日あたり1〜1000mg程度を投与すればよい。上記の投与量を1回又は数回に分けて投与することが好ましい。
【0029】
一般式(1)で表される化合物のうち、例えば、Xが酸素原子であり、Yが-C(=NOH)-R1であり、R1がC1-6アルキル基(好ましくはメチル基)であり、かつnが2である化合物;並びにXがCH2であり、Yがアリールアミノ基(好ましくはフェニルアミノ基)であり、かつnが2である化合物は新規化合物である。より具体的には、2−[[4−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]アミノ]−3−モルホリノ−1,4−ベンゾキノン又は2−[[4−(フェニルアミノ)フェニル]アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノンなどの化合物を例示することができる。これらの新規化合物については、上記に説明した方法に従って製造することができ、また本明細書の実施例に具体的に記載された方法に従って製造することもできる。これらの化合物の塩のほか、これらの化合物若しくはその塩の水和物若しくは溶媒和物も本発明の範囲に包含される。また、これらの物質についてはLXRアゴニストとして用途のほか、その他の用途についても本発明の範囲に包含されることは言うまでもない。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1:2−[[4−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]アミノ]−3−モルフォリノ−1,4−ベンゾキノンの製造
2−[[4−(メチルカルボニル)フェニル]アミノ]−3−モルホリノ−1,4−ベンゾキノン(Sibirskii Khimicheskii Zhurnal, 2, pp.65-72, 1993)(50 mg, 0.133 mmol)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(19 mg, 0.266 mmol)及び酢酸ナトリウム(37 mg, 0.452 mmol)のエタノール(4 mL)‐水(0.4 mL)混合溶液を9時間加熱還流した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(展開溶媒 へキサン:アセトン=2:1)で精製し、2−[[4−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]アミノ]−3−モルホリノ−1,4−ベンゾキノン 33 mg (収率63 %)を濃緑色固体として得た。
融点:203−204℃
1H-NMR (CDCl3) δ:2.29 (3H, s), 3.23 (4H, t, J = 5.5 Hz), 3.40 (4H, t, J = 5.5 Hz), 6.87 (2H, J = 8.5 Hz), 7.24 (1H, s), 7.58 (2H, J = 8.5 Hz), 7.63 (1H, dt, J = 1,5, 7.6 Hz), 7.68 (1H, dt, J = 1.5, 7.6 Hz), 8.03 (2H, dd, J = 1.5, 7.6 Hz) 8.54 (1H, brs).
【0031】
例2:2−[[4−(フェニルアミノ)フェニル]アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノンの製造
ピペリジン(15 mL)に2−クロロ−3−[[4−(フェニルアミノ)フェニル]アミノ]−1,4−ベンゾキノン(特開平8-113555号公報)(1.87 g, 5.00 mmol)を加え、100℃で一夜加熱した。反応溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 へキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、2−[[4−(フェニルアミノ)フェニル]アミノ]−3−ピペリジノ−1,4−ベンゾキノン 910 mg (収率 43 %)を赤褐色固体として得た。
融点:162−164℃
1H-NMR (CDCl3) δ:1.21-1.51 (6H, m), 3.00-3.23 (4H, m), 5.65 (1H, brs), 6.80-7.28 (10H, m), 7.59 (1H, dt, J = 1,6, 7.6 Hz), 7.64 (1H, dt, J = 1.6, 7.6 Hz), 8.96-8.03 (2H, m).
【0032】
試験例1:転写促進アッセイ
<プラスミドの構築>
ヒトLXRα及びLXRβ cDNAのリガンド結合ドメイン(LBD)を哺乳類発現ベクターpBIND(Promega)の酵母GAL4転写因子DNA結合ドメイン(DBD)に隣接して挿入することによって発現構築物を調製し、それぞれpBIND−LXRα/GAL4及びpBIND−LXRβ/GAL4を作製した。GAL4応答性リポーター構築物、pG5lucは、Promega社から入手できる公知のベクターであり、プロモーターに隣接して位置する5コピーのGAL4応答エレメントとルシフェラーゼリポーター遺伝子を含む。
【0033】
<アッセイ>
LXRα/GAL4又はLXRβ/GAL4ハイブリッド及びGAL4応答性リポーターベクター安定発現CHOK−1細胞を、5%C02の湿潤雰囲気下、37℃で、10%非働化処理ウシ胎児血清、100単位/mlペニシリンG及び100μg/ml硫酸ストレプトマイシンを含有するHAM−F12培地を入れた96ウェルプレートに20,000細胞/ウェルで播種した。24時間後、被検化合物を試験濃度範囲にわたって溶解した培地を添加し、細胞とともに24時間インキュベーションした。Bright−Gloルシフェラーゼアッセイ基質(Promega)を用いてルシフェラーゼ活性を測定することにより、試験化合物がLXRのLBDを介してルシフェラーゼ転写の活性化に及ぼす作用を測定した。ルシフェラーゼ活性の結果はDMSO対照群に対する誘導倍率として示した。比較化合物としてT0901317及びGW3965(それぞれ特許文献4の実施例12及び特許文献3の実施例16に記載されている)を同時に評価した。結果を表1に示す。表中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。
【0034】
【表1】




【0035】
本発明のナフトキノン誘導体は、いずれも優れたLXRアゴニスト活性を有していた。化合物1、4、8、及び9は対照薬のT0901317及びGW3965よりも強いLXRアゴニスト活性を有しており、化合物7及び10は対照薬GW3965よりも強いLXRアゴニスト活性を有していた。
【0036】
製剤例1(カプセル剤)
例1の化合物 30mg
微結晶セルロース 30mg
乳糖 57mg
ステアリン酸マグネシウム 3mg
全量 120mg
上記成分を常法により混合した後ゼラチンカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0037】
製剤例2(錠剤)
例1の化合物 30mg
でん粉 44mg
でん粉(のり用) 5.6mg
ステアリン酸マグネシウム 0.4mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 20mg
全量 100mg
上記成分を常法により混合し錠剤を得た。
【0038】
製剤例3(注射剤)
例1の化合物(100mg)及び塩化ナトリウム(900mg)を約80mLの注射用蒸留水に溶解して得られた溶液に注射用蒸留水を加えて総量100mLにした。この溶液を無菌濾過した後アンプル10本に分注し、シールして無菌の注射剤を得た。
【出願人】 【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
【出願日】 平成18年4月14日(2006.4.14)
【代理人】 【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス


【公開番号】 特開2007−284367(P2007−284367A)
【公開日】 平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願番号】 特願2006−111906(P2006−111906)