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【発明の名称】 発光性カーボンナノホーン構成体と光線力学治療抗癌剤
【発明者】 【氏名】飯島 澄男

【氏名】湯田坂 雅子

【氏名】張 民 芳

【氏名】宮脇 仁

【要約】 【課題】生体内での拡散を抑え、標的作用を持たせることができ、親水性を高めることもできる、光線力学治療用の抗癌剤として有用な、さらには光、電子機能材としての技術展開も可能とされる、新しい光技術手段を提供する。

【解決手段】<A>開孔カーボンナノホーンに発光物質が内包されている発光性カーボンナノホーン構成体、または、<B>カーボンナノホーンの集合体において、開孔、未開孔、もしくは開孔と未開孔のカーボンナノホーンの間隙に発光物質が付着されていることを特徴とする発光性カーボンナノホーン構成体とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開孔カーボンナノホーンに発光物質が内包されていることを特徴とする発光性カーボンナノホーン構成体。
【請求項2】
カーボンナノホーンの集合体において、開孔、未開孔、もしくは開孔と未開孔のカーボンナノホーンの間隙に発光物質が付着されていることを特徴とする発光性カーボンナノホーン構成体。
【請求項3】
光吸収にともなって発光する発光物質が内包もしくは付着されていることを特徴とする請求項1または2の発光性カーボンナノホーン構成体。
【請求項4】
生体透過性の波長600〜850nmの光を吸収する請求項3の発光性カーボンナノホーン構成体。
【請求項5】
生体内溶存酸素を励起して一重項酸素を発生可能な波長650〜800nmの光を発光する請求項1から4のいずれかの発光性カーボンナノホーン構成体。
【請求項6】
発光物質はフタロシアニン類のうちのいずれかであることを特徴とする請求項4または5の発光性カーボンナノホーン構成体。
【請求項7】
開孔カーボンナノホーンの開孔縁部の官能基もしくは開孔または未開孔カーボンナノホーンの外壁部に親水性分子を結合もしくは吸着させて、癌細胞あるいは腫瘍組織以外の細胞や組織では捕捉されないようにしていることを特徴とする請求項1から6のいずれかの発光性カーボンナノホーン構成体。
【請求項8】
開孔カーボンナノホーンの開孔縁部の官能基もしくは開孔または未開孔カーボンナノホーンの外壁部に、癌細胞あるいは腫瘍組織に特異的に捕捉される分子を結合もしくは吸着させていることを特徴とする請求項1から7のいずれかの発光性カーボンナノホーン構成体。
【請求項9】
結合もしくは吸着させている分子が、たんぱく質、ポリペプチド、DNA、リン脂質、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類および界面活性剤のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項7または8の発光性カーボンナノホーン構成体。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかの発光性カーボンナノホーン構成体を有効成分として含有することを特徴とする光線力学治療抗癌剤。
【請求項11】
発光物質がZnフタロシアニンであることを特徴とする請求項10の光線力学治療抗癌剤。
【請求項12】
BSA(Bovine Serum Albumine) が結合もしくは吸着されていることを特徴とする請求項10または11の光線力学治療抗癌剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、光線力学治療による抗癌剤等の医療用、あるいは光・電子材料等として有用な、新しい発光性カーボンナノホーン構成体と、これを有効成分とする光線力学抗癌剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、癌細胞や腫瘍組織を消滅させるための処分として、光照射により溶存酸素を一重項に励起して反応させる光線力学治療(Photo-Dissociation Therapy)と、この光線力学治療のための手段として、照射された光を吸収して発光し、溶存酸素を一重項酸素に励起することのできるZn(亜鉛)フタロシアニンが注目されている(たとえば非特許文献1および2参照)。
【0003】
しかしながら、このZnフタロシアニンをはじめとするフタロシアニン類は水に溶けないため、これをリポソーム内に入れたり、化学修飾を行って水溶化することが試みられている。
【0004】
だが、このような試みがなされていても、癌細胞あるいは腫瘍組織に特異的に作用させるという標的作用を持たせることは難しく、生体内全体への分散によって正常な細胞や組織をも破壊してしまうという問題点が解消されていない。
【非特許文献1】Brazilian Journal of Medical and Biological Research 2004, 37, 273-284
【非特許文献2】Cancer Research 2001, 61, 7495-7500
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のとおりの背景から、従来の問題点を解消し、生体内での拡散を抑え、標的作用を持たせることができ、親水性を高めることもできる、光線力学治療用の抗癌剤として有用な、さらには光、電子機能材としての技術展開も可能とされる、新しい光技術手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
【0007】
第1:開孔カーボンナノホーンに発光物質が内包されている発光性カーボンナノホーン構成体。
【0008】
第2:カーボンナノホーンの集合体において、開孔、未開孔、もしくは開孔と未開孔のカーボンナノホーンの間隙に発光物質が付着されている発光性カーボンナノホーン構成体。
【0009】
第3:光吸収にともなって発光する発光物質が内包もしくは付着されている上記の発光性カーボンナノホーン構成体。
【0010】
第4:生体透過性の波長600〜850nmの光を吸収する上記の発光性カーボンナノホーン構成体。
【0011】
第5:生体内溶存酸素を励起して一重項酸素を発生可能な波長650〜800nmの光を発光する上記いずれかの発光性カーボンナノホーン構成体。
【0012】
第6:発光物質はフタロシアニン類のうちのいずれかである上記の発光性カーボンナノホーン構成体。
【0013】
第7:開孔カーボンナノホーンの開孔縁部の官能基もしくは開孔または未開孔カーボンナノホーンの外壁部に親水性分子を結合もしくは吸着させて、癌細胞あるいは腫瘍組織以外の細胞や組織では捕捉されないようにしている上記いずれかの発光性カーボンナノホーン構成体。
【0014】
第8:開孔カーボンナノホーンの開孔縁部の官能基もしくは開孔または未開孔カーボンナノホーンの外壁部に、癌細胞あるいは腫瘍組織に特異的に捕捉される分子を結合もしくは吸着させている上記いずれかの発光性カーボンナノホーン構成体。
【0015】
第9:結合もしくは吸着させている分子が、たんぱく質、ポリペプチド、DNA、リン脂質、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類および界面活性剤のうちの少なくとも1種である発光性カーボンナノホーン構成体。
【0016】
第10:発光性カーボンナノホーン構成体を有効成分として含有する光線力学治療抗癌剤。
【0017】
第11:発光物質がZnフタロシアニンである上記の光線力学治療抗癌剤。
【0018】
第12:BSA(Bovine Serum Albumine) が結合もしくは吸着されていることを特徴とする上記の光線力学治療抗癌剤。
【発明の効果】
【0019】
上記のとおりの本発明によれば、従来の問題点を解消し、生体内での拡散を抑え、標的作用を持たせることができ、親水性を高めることもできる、光線力学治療用の抗癌剤として有用な、さらには光、電子機能材としての技術展開も可能とされる、ナノカーボン物質を利用した新しい光技術手段が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0021】
本発明における「カーボンナノホーン」については、通常は、個々のホーン形状体が集合してホーン形状の閉鎖点部が外方に向いた「ダリア状」等の形態や複数個のホーン形状体が数個以上集合した形態を構成したものとして考慮される。
【0022】
すなわち以後の説明においては複数形態を示す「NHs」と略記載されるものとして定義される。そしてこれらのNHsは、その側部や頂部に開孔を有していてもよい。この開孔は、NHsを構成するホーン形状体の1個以上の各々に形成されたものであることを意味している。
【0023】
本発明においては、発明者が開発した方法をはじめとして各種の方法により製造されたカーボンナノホーン(NHs)が使用対象とされてよい。そして、開口部の形成についても、酸素を作用させる発明者らの開発した方法等が適宜に採用される。
【0024】
本発明においては、このような公知もしくは各種の方法により製造されたカーボンナノホーン(NHs)であって、しかも開口部を有し、あるいは有していないもの、さらには許容される範囲での官能基を結合しているものであってよい。
【0025】
本発明の発光性カーボンナノホーン構成体は、以上のようなカーボンナノホーンについて、
<A>集合体を形成しているカーボンナノホーンの開孔カーボンナノホーン形状部の少なくとも一つに発光物質が内包されている、または、
<B>カーボンナノホーンの上記集合体において、開孔、未開孔、もしくは開孔と未開孔のカーボンナノホーン形状部の相互の間隙の少なくとも一部に発光物質が付着されている
ことを特徴としている。
【0026】
この場合の発光物質は、たとえば、Znフタロシアニン、AlCl:フタロシアニン、Gaフタロシアニン、Siフタロシアニン、Ruフタロシアニンなどのフタロシアニン類、あるいはポリフィリン類、クロリン(Chlorin)類など各種のものであってよい。これらは、外部からの照射光を吸収して発光するものであってよいし、あるいは照射光の吸収以外の、たとえば熱的刺激によって、あるいは圧力や化学反応によって発光するものであってもよい。
【0027】
なかでも、本発明においては、光線力学療法による抗癌作用を有する発光物質が好適に考慮されることになる。
【0028】
たとえば、本発明の発光性カーボンナノホーン構成体においては、上記<A><B>のいずれの場合であっても、以下のものが好適に考慮される。
【0029】
1)光吸収にともなって発光する発光物質が内包もしくは付着されている発光性カーボンナノホーン構成体。
【0030】
2)生体透過性の波長600〜850nmの光を吸収する発光性カーボンナノホーン構成体。
【0031】
3)生体内溶存酸素を励起して一重項酸素を発生可能な波長650〜800nmの光を発光する発光性カーボンナノホーン構成体。
【0032】
4)発光物質はZnフタロシアニン等のフタロシアニン類のうちのいずれかである発光性カーボンナノホーン構成体。
【0033】
そして、さらには、本発明においては、開孔カーボンナノホーンの開孔縁部の官能基もしくは開孔または未開孔カーボンナノホーンの外壁部に親水性分子を結合もしくは吸着させて、癌細胞あるいは腫瘍組織以外の細胞や組織では捕捉されないようにしている発光性カーボンナノホーン構成体と、開孔カーボンナノホーンの開孔縁部の官能基もしくは開孔または未開孔カーボンナノホーンの外壁部に、癌細胞あるいは腫瘍組織に特異的に捕捉される分子を結合もしくは吸着させている発光性カーボンナノホーン構成体が提供され、以上において結合もしくは吸着させている分子が、たんぱく質、ポリペプチド、DNA、リン脂質、PEG等のポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類および界面活性剤のうちの少なくとも1種である発光性カーボンナノホーン構成体が提供される。
【0034】
結合もしくは吸着されるこれら分子は、カーボンナノホーンに発光物質が内包もしくは付着された後に結合もしくは吸着させてもよいし、あるいは、発光物質の内包もしくは付着に先行してあらかじめカーボンナノホーンに結合もしくは吸着させてもよい。
【0035】
本発明の発光性カーボンナノホーン構成体を製造、調製するための手段としては、発光物質の溶液あるいは分散液を開孔、あるいは未開孔、もしくはその両者のカーボンナノホーン形状部を有するカーボンナノホーン混合し、液媒体を蒸発等により除去することによって可能とされる。あるいはまた、発光物質の気相蒸着による手段も考慮される。
【0036】
さらに上記の親水性向上等のための分子結合あるいは吸着も同様に液相処理によって簡便に実現されることになる。
【0037】
発光物質の内包もしくは付着の量や、上記分子の結合もしくは吸着の割合は、本発明の構成体の用途、使用態様に応じて適宜に定めることができる。
【0038】
そして、本発明においては、以上の構成体において、発光物質がZnフタロシアニンである光線力学治療抗癌剤が提供される。これによれば、フタロシアニンをナノホーン内に内包もしくはナノホーンの外壁に付着させることで、体内導入後にフタロシニアンが拡散しない。そして、ナノホーン外壁に標的分子を作用させることにより、フタロシニアン内包ナノホーンを患部にのみ選択的に供給できる。また、ナノホーン外壁またはナノホーン開口部のふちにある官能基に親水性の高い分子を付加することにより、患部以外での組織あるいは細胞に取り込まれることを防ぐことができる。
【0039】
特に、光吸収波長が600〜850nm、発光波長が約650−800nmの物質で分子量が小さくあるいは水に対する溶解性が低い分子の場合、NHox内部に内包することで、その効果を癌細胞あるいは腫瘍組織の消滅に使用できる。これにより、多種類の物質ががん治療に使用できるようになる。
【0040】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0041】
室温ならびにAr(760Torr)を気流下でグライファイトをCO2レーザーアブレーションすることによって、NHsを調製する(Chem. Phys. Lett., 1999, 309, 165に従う)。そしてO2気流中、570−580℃条件で10分間にわたりNHsを処理することによって開孔を有するカーボンナノホーン(NHox)を得る(Mol. Pharm. 2005, 2, 475に従う)。
【0042】
一方、Znフタロシアニン(ZnPc)をDMSOと混合し(濃度::5mg/50ml)、上澄みに得られる飽和溶液を分取した。次いで、上記のとおりの開孔処理したナノホーン(NHox)とZnPc−DMSO飽和溶液を混合する。24時間放置後、ろ過し、DMSOで洗浄する。DMSO蒸発させZnPc@NHoxが得られる。得られたZnPc@NHoxのTEM写真を図1に示した。ナノホーン内部にZnPcが内包されていることがわかる。
【0043】
内包ZnPc量は熱重量分析(TGA)によりもとめた。図2(a)は、TAGにおける重量減少曲線と重量減少を微分して得た曲線を示している。この図2(a)に示したようにZnPcはTGA600℃程度でZnOに変化し、それより高温側での重量減少はない。残留ZnOの量よりZnPc量をみつもることができる。図2(b)には、ZnPc@NHoxのTGAを示した。残留ZnOの量より、ZnPc@NHoxのZnPc量は約40%であることがわかる。図2(b)の100℃の重量減少は、DMSOの蒸発に起因する。
【0044】
図3(a)(b)ではDimethylanthracene(DMA)とZnPc@NHoxのエタノール溶液の吸収スペクトルを示し、図3(c)ではDMSOに分散させたZnPc@NHoxの10分間〜138時間の範囲での発光スペクトルを示している。図3(d)では、DMAとZnPc@NHoxをエタノール中で混合し650nmの光を0〜10分間照射した結果を示している。照射時間が長くなるに従い、DMAの光吸収が弱くなっている。これにより、650nmの光照射によりZnPcから730nmの波長の光が発光し、溶存酸素が一重項に励起し、一重項励起した酸素がDMAと反応したことがわかる。このとき、ZnPcの変質がないこともわかる。図3の結果により、ZnPc@NHoxが650nm光照射で波長730nmの光を発光し、溶存酸素を一重項励起することがわかった。即ち、ZnPc@NHoxが癌細胞または腫瘍組織にあれば、650nmの光を体外から照射して730nmの光を発光させ、溶存酸素を一重項励起させて、癌細胞及び腫瘍組織を破壊することが可能である。
【0045】
ZnPc@Nhoxが親水性をまし、かつ、癌組織で特異的とトラップされるように、BSA(Bovine Serum Albumin)をZnPc@NhoxのNhox外壁に物理吸着させた。吸着したことは、BSAの発光強度が弱くなったことによって確認した(図4)。この結果、水中でのZnPc@NHoxの分散性が向上した。
【0046】
ZnPc@NHoxの親水性を増加させることを目的として、界面活性剤(Tween20など)やポリエチレングリコールをNHox外壁に付着させた。この結果、水中での分散性が改善された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】ZnPc@NHの透過電子顕微鏡写真であって、ナノホーン内部にZnPcのクラスターがはいっていることを示唆している。
【図2】TGA測定結果であり、重量減少曲線と、重量減少曲線を微分して得た曲線を示し、(a)ZnPcのTGA結果、(b)はZnPc@NHoxのTGA結果を示している。
【図3】(a)Dimethylanthracene(DMA)と(b)ZnPc@NHoxのエタノール溶液の吸収スペクトル、(c)DMSOに分散させたZnPc@NHoxの発光スペクトル、(d)DMAとZnPc@NHoxをエタノール中で混合し650nmの光を照射した結果を示したものであって、照射時間が長くなるに従い、DMAの光吸収が弱くなっており、これにより、650nmの光照射によりZnPcから730nmの波長の光が発光し、溶存酸素が一重項に励起し、一重項励起した酸素がDMAの構造を損傷させたことがわかる。
【図4】ZnPc@NhoxとBSA(Bovine Serum Albumin)を水と混合した場合の発光を示したものであって、BSAの発光強度は、BSAの添加量とともに増加するが、その増加量は、ZnPc@NHoxが無いほうが大きく、これにより、BSAはZnPc@NhoxのNhox外壁に物理吸着されたことがわかる。
【出願人】 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【出願日】 平成18年1月31日(2006.1.31)
【代理人】 【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫


【公開番号】 特開2007−204405(P2007−204405A)
【公開日】 平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願番号】 特願2006−23799(P2006−23799)